説明

パージ排ガスの処理方法及び水素源としての使用

【課題】水素とトリクロロシランとを反応させてポリシリコンを製造する工程から排出される副生塩化水素含有排ガス中の塩化水素を回収するために使用するパージガスとしての水素ガスを、処理して水素源として利用する方法を提供する。
【解決手段】(1)ポリシリコンの製造工程から排出された排ガスを活性炭層に通すことにより塩化水素を吸着し、(2)塩化水素が吸着保持された活性炭層にパージガスとしての水素ガスを通して吸着された塩化水素を脱着し、(3)脱着された塩化水素及び水素を含むパージ排ガスを、例えばPd/SiO触媒などの塩素化触媒を充填した塩素化塔に通ぜしめて含有する水素化クロロシランを四塩化ケイ素に転化し、(4)転化された四塩化ケイ素を含むパージ排ガスを水酸化ナトリウム水溶液などの塩化水素吸収液と接触せしめて塩化水素並びに四塩化ケイ素を除去する。この処理方法で得られたパージ排ガスは、ヒュームドシリカ製造などの他の製造工程のための水素源としての利用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素とトリクロロシランとを反応させてポリシリコンを製造する工程の後工程で使用される水素の再利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体あるいは太陽光発電用ウェハーの原料として使用されるシリコンを製造する方法は種々知られており、そのうちのいくつかは既に工業的に実施されている。その一つはシーメンス法と呼ばれる方法であり、通電加熱されたフィラメントに水素とトリクロロシランの混合ガスを供給し、化学気相析出法によりフィラメント上にシリコンを析出させてポリシリコンを得る方法である。シーメンス法によるポリシリコンの製造工程から排出される排ガスには、水素及び未反応のトリクロロシランの他に、反応の副生物である、モノシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素等のシラン化合物、および塩化水素等が含有されている。以下、本発明においては、トリクロロシランおよび当該シラン化合物を総称してシラン類という。
【0003】
上記シーメンス法によるポリシリコンの製造方法では、排ガスに含有される各ガス成分を分離してポリシリコンの製造に再循環させることが行われている。例えば、特許文献1には、ポリシリコンの製造工程から排出される副生塩化水素含有排ガスを、−10℃以下に冷却してシラン類の一部を凝縮除去する工程、該工程を経た排ガスを活性炭層に通過させて排ガス中のシラン類を吸着除去する工程、及び吸着除去工程を経た排ガスを特定の平均細孔半径をもつ活性炭層に通過させて塩化水素を吸着除去する工程を経て、排ガス中の水素を精製し、当該水素をポリシリコンの製造工程に循環させるポリシリコンの製造方法が開示されている。そして、塩化水素が吸着保持された活性炭層は、これにパージガスとして水素を使用して吸着された塩化水素を脱着させ、次いでこの脱着された塩化水素及び水素を含むパージ排ガスは、洗浄塔で塩酸等の酸性水に接触させることで、パージ排ガス中の塩化水素を酸性水に吸収させ、その後、この酸性水より塩化水素を回収することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−131491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1において、パージ排ガスを洗浄塔にて酸性水と接触させた後に排出される排ガスは主成分として水素を含有するガスであるが、塩酸等の酸性水に吸収されにくい不純物、例えばCHやPH等、更には洗浄塔から同伴される水分に含有される微量の塩化水素等の不純物を含有するため、該排ガスを他の反応工程における水素源として用いることは困難であると考えられており、これまで適切な処理を経て廃棄されてきた。
一方、洗浄塔を通過したこの排ガスを処理する際に、排ガスを通過する配管等の腐食や、配管に固体が析出することによる配管の閉塞等、処理設備の運転に支障が生じる場合があることが判った。
【0006】
ところで、シーメンス法によるポリシリコンの製造量が増大するにつれて、ポリシリコン製造工程より排出される排ガスが増加している。活性炭層による塩化水素の吸着除去能力には限界があるため、該排ガスの増加に対する対応として、上記活性炭層を複数並列に使用することが行われている。しかしながら、活性炭層が多数使用されるにつれて、塩化水素が吸着保持された活性炭層の再生処理、すなわち、パージガスとして水素を用いる活性炭層からの塩化水素の脱着の回数も増加しているため、パージ排ガスの排出量も増加し、この排ガスの有効な再利用方法の確立が望まれてきた。なお、塩化水素が脱着された活性炭は、ポリシリコン製造工程より排出される排ガスからの塩化水素の除去に再度使用されるため、上記パージガスとしては、排ガス中の成分ガスでもある水素が使用される。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、塩化水素が吸着保持された活性炭層から、パージガスとして水素ガスを使用して吸着された塩化水素を脱着させた際に、排出される塩化水素及び水素を含むパージ排ガスから水素を効率的に回収して再利用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題に鑑み、配管等に析出する固体について分析を行った結果、この固体はシリカ及びその類縁体であり、特にシリカの類縁体は粘調な固体であることを確認した。かかる固体が配管等に付着した際には、これを除去するために配管を分解して洗浄する必要があり製造工程上問題であった。また、本発明者らは、上記シリカ及びシリカの類縁体は、パージ排ガス中に含有される微量の水素化クロロシラン(モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン)が前記洗浄塔を通過する排ガスに同伴され、圧縮機及び圧縮機に至る配管のいずれかの箇所において、排ガス中に含有される水分と反応することにより析出したものであるものと推測した。そこで、かかる水素化クロロシランをパージ排ガスから除去する方法について、さらに検討を行った結果、パージ排ガスを塩化水素吸収液と接触せしめる前に、水素化クロロシランを四塩化ケイ素に転化させ、この四塩化ケイ素を塩化水素と一緒に塩化水素吸収液で除去することにより、水素化クロロシランから副生するシリカ及びシリカの類縁体の副生を抑制し、粘調な固体の配管等への付着を防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明によれば、
(1)水素とトリクロロシランとを反応させてポリシリコンを製造する工程から排出された排ガスを活性炭層に通すことにより塩化水素を吸着する塩化水素吸着工程、
(2)塩化水素が吸着保持された活性炭層にパージガスとしての水素ガスを通して、吸着された塩化水素を脱着する塩化水素脱着工程、
(3)前記塩化水素脱着工程において脱着された塩化水素及び水素を含むパージ排ガスを塩素化工程に導いて、含有する水素化クロロシランを四塩化ケイ素に転化する塩素化工程、および
(4)前記塩素化工程おいて転化された四塩化ケイ素を含むパージ排ガスを塩化水素吸収液と接触せしめて塩化水素並びに四塩化ケイ素を除去する塩化水素除去工程、
を含むことを特徴とするパージ排ガスの処理方法が提供される。
【0010】
また、本発明者らは、前記パージガスとして用いる水素が高純度である点にも着目した。すなわち、ポリシリコンの製造工程において、半導体級等の極めて高純度のポリシリコンを製造させるためには、製造工程において流通する種々のガスは高純度であることが必要である。例えば、排ガスを精製するために用いる活性炭層から排ガス中への不純物等の混入を防止するという観点から、活性炭層から塩化水素を脱着する際に使用するパージガスの水素も、ポリシリコン製造工程に流通する水素ガスと同程度の高純度を要求される。
上記(1)〜(4)の工程を経た、塩化水素が除去されたパージ排ガスを回収したところ、かかる回収ガスは、極めて高純度の水素を含有するガスであることが判明した。さらに、この回収ガスを圧縮して、他の製造工程における水素源としての使用を検討した結果、例えば四塩化ケイ素と水素を火炎上で反応させる、所謂ヒュームドシリカの製造における水素源として使用できることを見出し、本発明の第2の発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明によれば、また、
上記パージ排ガスの処理方法で得られた、塩化水素並びに四塩化ケイ素が除去されたパージ排ガスを圧縮して他工程の水素源として供給することを特徴とするパージ排ガスの水素源としての使用が提供される。
上記パージ該ガスの水素源としての使用の発明において、圧縮後に水分を除去することが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、パージ排ガス中の水素化クロロシランを該排ガス中の塩化水素と反応させて四塩化ケイ素に転化させることによって、排ガス処理の際に析出する粘調な固体の副生を抑制でき、該固体による配管の閉塞や処理設備の運転の支障を防止することが可能となった。
この塩素化手段の採用により粘調な固体の副生を抑制する理由について、詳細は不明だが、以下のように推測している。Siの結合がすべてSi−Cl結合であって、水と容易に反応して三次元構造のシリカが形成しやすい四塩化ケイ素と比べて、水との反応性が低いSi−H結合を有する水素化クロロシランは、水と反応した場合、直鎖状のシリカ或いはシリカの類縁体が副生しやすく、かかる直鎖状の副生物が粘調な固体となるものと推測される。
【0013】
また、従来、ポリシリコンの製造工程から排出される排ガス中の副生塩化水素は、塩化水素の吸着、水素による塩化水素の脱着、塩化水素の吸収及び回収工程を経て、有効利用が図られていた。一方、当該排ガス中の水素も、塩化水素を吸着除去することにより循環利用されていたが、吸着された塩化水素を脱着する際に排出されるパージ排ガス中の水素は未利用のまま廃棄されていた。本発明により、パージ排ガスから高純度の水素を効率的に回収して、これを他の製造工程における水素源として再利用することが可能となり、廃棄処分にかかるコストの大幅削減並びに製造コスト削減に寄与しうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水素とトリクロロシランとを反応させてポリシリコンを製造する工程から排出される副生塩化水素含有排ガス中の塩化水素を吸着し、次いで塩化水素が吸着保持された活性炭層から水素ガスでパージして塩化水素を脱着し、その際に排出される塩化水素及び水素を含むパージ排ガスを塩素化工程に導き、含有する水素化クロロシランを四塩化ケイ素に転化する塩素化工程を有することに特徴がある。
以下、本発明の処理方法について説明する。
【0015】
<ポリシリコンの製造>
本発明において、ポリシリコンを製造する工程とは、水素とトリクロロシランを反応させてポリシリコンを析出させる方法であり、その反応装置の構造や反応条件は特に制限されず、公知の反応装置及び反応条件を採用することができる。代表的な方法として、シーメンス法が挙げられる。シーメンス法とは、加熱基材としてシリコンフィラメントを用い、これを900〜1250℃となるように通電加熱し、ここにトリクロロシランを水素と共に供給することにより、フィラメント上にシリコンを析出させて成長したポリシリコンロッドを得る方法である。このポリシリコンを製造する工程で排出される排ガスとして、水素及び未反応のトリクロロシランの他に、反応の副生物である、モノシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素等のシラン化合物および塩化水素等を含む混合ガスが排出される(本発明では、以下、モノクロロシラン、ジクロロシラン、及びトリクロロシランを水素化クロロシランと総称し、水素化クロロシラン及び四塩化ケイ素をクロロシランと総称することもある)。
【0016】
<排ガスからのシラン類の除去>
上記製造工程から生じる排ガスを活性炭層に通すことにより排ガス中の塩化水素を活性炭に吸着せしめて、排ガスから塩化水素を除去することが可能となる。しかしながら、このシラン類は一般的に塩化水素よりも活性炭に対する吸着力が高い傾向があり、排ガスを直接活性炭層に通すことにより排ガス中の塩化水素の除去を行うことは、活性炭による塩化水素の除去効果が低く工業的に効率的とは言えない。従って、排ガス中の塩化水素の除去を効率良く行うという観点から、排ガスを活性炭層に通じる前にあらかじめシラン類を除去することが好ましい。
【0017】
排ガスからのシラン類の除去方法としては、特に制限されず公知の方法を適宜採用することができる。具体的なシラン類の除去方法としては、排ガスを冷却させてシラン類を凝縮させ排ガスより除去する凝縮除去法;活性炭による吸着除去法;凝縮除去法と吸着除去法を組み合わせる方法等が挙げられる。特に、凝縮除去法と吸着除去法とを組み合わせる方法は、排ガス中からのシラン類の除去効果が高いため好適である。
凝縮除去を行う際の排ガスの冷却温度はシラン類が凝縮する温度以下であれば良く、冷却装置の冷却能力等を勘案して適宜決定すれば良い。通常、排ガス中のシラン類を除去するための冷却温度としては、−10℃以下、好ましくは−30℃以下であれば十分である。また凝縮除去における圧カについても、シラン類が十分に除去可能であれば特に制限されず、凝縮除去装置の能力等を勘案して適宜決定すれば良い。通常、300kPaG以上、好ましくは500kPaG以上であれば十分である。
【0018】
活性炭による排ガス中のシラン類の吸着除去法は、例えば活性炭が充填された吸着塔に排ガスを通過させることによって行うことができる。この場合、活性炭との吸着力が高いシラン類が優先的に吸着されるため、当該充填塔より排出されるガスは主として水素及び塩化水素を含有するガスである。
シラン類吸着除去に用いる活性炭としては、シラン類が吸着除去することが可能であれば特に制限なく、公知の活性炭を用いることができる。活性炭は、種々の平均細孔半径を有するものが工業的に入手可能であるが、上記クロロシランを吸着除去するために用いる活性炭としては、平均細孔半径(R)が1×10−9m〜1×10−8mの・範囲にある活性炭を好適に用いることができる。なお、本発明における平均細孔半径(R)とは、水蒸気吸着法によって得られる細孔分布曲線において最大ピークを示す細孔半径を示す。
活性炭によるシラン類の吸着除去における吸着温度及び吸着圧力としては、シラン類が十分に吸着除去できる温度及び圧力であれば特に制限されず、シラン類の吸着除去を行う充填塔の能力を勘案して適宜決定すれば良い。一般的には、吸着温度は、−30〜50℃、好ましくは−10〜30℃、吸着圧力は、300kPaG以上、好ましくは500kPaG以上であれば十分である。
【0019】
凝縮除去されたシラン類或いは吸着された活性炭層より脱着せしめることで回収されたシラン類は、通常、蒸留によって精製され、必要に応じてポリシリコンを製造する工程における析出原料として再利用することも可能である。
【0020】
<排ガスからの塩化水素の除去>
ポリシリコンの製造工程から排出される排ガスは、活性炭層に通すことにより排ガス中の塩化水素を活性炭に吸着せしめ塩化水素を除去する。排ガス中のシラン類の除去方法として活性炭吸着法を用いた場合、活性炭との吸着力が高いシラン類が優先的に吸着され、排ガス中に含有する塩化水素は水素と共に排出される。従って、シラン類が除去された排ガスを、再度活性炭層に通すことにより、該排ガス中の塩化水素を活性炭に吸着せしめて排ガスから塩化水素を除去することが可能となる。
【0021】
排ガス中の塩化水素を吸着除去するために用いる活性炭としては、塩化水素を吸着除去することが可能であれば特に制限なく、公知の活性炭を用いることが可能である。活性炭は、種々の平均細孔半径を有するものが工業的に入手可能であるが、塩化水素を吸着除去するために用いる活性炭としては、平均細孔半径(R)が5×10−10m〜1×10−9mの範囲にある活性炭であれば十分であり、特に平均細孔半径(R)が5×10−10m〜8×10−10mの範囲にある活性炭を用いるのが、塩化水素の吸着除去能力が高いと言う点で好ましい。また、塩化水素の吸着除去に用いる活性炭の形状についても特に制限されず、粒状、ハニカム状、繊維状等の工業的に入手可能な形状の活性炭を用いることが可能である。特に粒状のものは、充填塔に充填させる際に、単位体積当りの充填量を多くすることが可能であるという点で好適である。
【0022】
塩化水素の吸着除去における吸着温度及び吸着圧力としては、塩化水素が十分に吸着除去できる温度及び圧力であれば特に制限されず、塩化水素の吸着除去を行う充填塔の能力を勘案して適宜決定すれば良い。一般的には、吸着温度は、50℃、好ましくは30℃以下の範囲、吸着圧力は、300kPaG以上、好ましくは500kPaG以上である。
排ガスを活性炭層に通過させる際の速度は、排ガス中の塩化水素が十分に吸着除去できる速度であれば特に制限されず、塩化水素の吸着除去を行う充填塔の能力を勘案して適宜決定すれば良い。一般的には、空間速度(SV)で表した場合、50〜500Hr−1、好ましくは50〜150Hr−1の速度であれば十分である。
活性炭層による塩化水素の吸着除去を行うことで、活性炭層から排出される排ガス中に含まれる塩化水素の量を0.01体積%以下に、より好適な操作条件下では0.005体積%以下にすることが可能である。
【0023】
上記活性炭層による塩化水素の吸着除去を工業的に連続操業する場合には、吸着塔を複数設けて、吸着工程と塩化水素の脱着・活性炭層の再生工程とを交互に実施して、吸着工程が連続するように運用する必要がある。例えば、2塔設置して1塔で吸着を行い、その間に他塔で脱着再生を実施する。或いは、3塔以上を設置して1塔を吸着、2塔を脱着再生としてもよい。さらに、4塔以上設置することも可能である。また、ポリシリコンの生産能カが大きい場合には、1塔当りの容量が大きい塔とすることも可能であるし、複数の塔を並列に使用することも可能である。複数の活性炭層を設置して、吸着工程と脱着再生工程を交互に切り替えて吸着工程が連続するように運用する際の、各活性炭層の吸着工程と塩化水素の脱着、活性炭層の再生工程の切り替えるタイミングについては、予め吸着工程、脱着工程の時間を設定し、所定時間経過した段階で吸着工程から脱着工程へ、或いは脱着工程から吸着工程へと切り替えることも可能であるし、活性炭層から排出される排ガスをガスクロマトグラフィーなどを用いて塩化水素の含有量を常時分析・監視し、所定の含有量となった段階で各工程を切り替えることも可能である。
【0024】
<活性炭層から排出された排ガス>
前記活性炭層から排出された排ガスは高純度の水素ガスであり、かかる排ガスは、前記ポリシリコンの製造工程の水素としてそのまま循環利用することが可能である。また、この排ガスは、後述するように、排ガス中の塩化水素を吸着保持させた活性炭層から塩化水素を脱着させる際のパージガスとしても、更に、四塩化ケイ素からトリクロロシランへの還元反応において使用する水素としても、或いは四塩化ケイ素を原料とするシリカの製造における水素源として使用することも可能である。
【0025】
<塩化水素の脱着>
前記排ガスから除去された塩化水素は、活性炭層において高濃度に凝縮された状態で吸着保持されており、該活性炭層から塩化水素の脱着を行うことで活性炭層が再生される。この再生された活性炭層は、副生塩化水素含有排ガスからの塩化水素の除去に再利用することが可能となる。塩化水素脱着は、塩化水素が吸着保持された活性炭層にパージガスとして水素ガスを流通させることで行う。この結果、活性炭層を流通して排出されるパージ排ガス中には、塩化水素及び水素が含有される。
【0026】
塩化水素脱着の条件は、塩化水素が活性炭層から脱着できる条件であれば特に制限なく、充填塔の能力等を勘案して適宜決定すれば良い。通常、10〜300℃、200kPaG以下の操作条件下で水素を流通しながら行う。特に、塩化水素の脱着効率を高めるためには、150℃〜250℃、100kPaG以下の操作条件下で水素を流通させることが好適である。活性炭層にパージガスとして水素を流通させる際の速度は、該活性炭層に吸着保持された塩化水素が十分に脱着できる速度であれば特に制限されず、充填塔の能力等を勘案して適宜決定すれば良い。一般的には、空間速度(SV)が、1〜50Hr−1、好ましくは1〜20Hr−1となる範囲から適宜決定すればよい。
【0027】
パージガスとして用いる水素の純度は特に制限されず、工業的に入手可能な水素をそのまま用いることが可能である。しかしながら、塩化水素を脱着させた活性炭層を、前記副生塩化水素含有排ガスからの塩化水素の除去に再利用する際に、該排ガスの活性炭層による汚染を抑制するという観点から、高純度の水素を用いることが好ましい。かかる水素としては、前記ポリシリコンを製造する工程に用いる水素、或いは副生塩化水素含有排ガスを活性炭層に通じて塩化水素を除去した排ガス等を好適に用いることができる。
【0028】
塩化水素脱着工程において排出されるパージ排ガスは、ガスクロマトグラフィー等の分析手段により、該排ガス中の塩化水素の含有量を測定することが可能である。これらの分析手段により、パージ排ガス中の塩化水素の含有量を常時分析・監視し、排ガス中に塩化水素が検出されなくなるまでパージガスの流通を行い、塩化水素脱着を行えば良い。
【0029】
<水素化クロロシランの塩素化工程>
本発明においては、上記塩化水素脱着工程より排出されるパージ排ガスを塩素化工程に導き、含有する水素化クロロシランを四塩化ケイ素に転化する塩素化工程を行うことを特徴とする。
上記水素化クロロシランを含むクロロシランの大部分は、後述する水素回収工程(塩化水素除去工程)において、塩化水素吸収液中の水と反応してシリカ或いはシリカの類縁体となってパージ排ガスと分離される。しかし、クロロシランの一部はパージ排ガスに同伴され、圧縮機及び圧縮機に至る配管のいずれかの箇所において、パージ排ガス中の水分と反応して、シリカ或いはシリカの類縁体が副生する。前記の通り水素化クロロシランから副生するシリカの類縁体は、粘調な固体である場合が多く、該固体による配管の閉塞や処理設備の運転の支障が生じやすい。従って、本発明では、水素化クロロシランを含有するパージ排ガスを塩化水素除去工程へ供給する前に、該水素化クロロシランをパージ排ガス中の塩化水素と反応させて四塩化ケイ素に転化させることで、上記粘調な固体の副生を抑制し、該固体による配管の閉塞や処理設備の運転の支障を防止するものである。
【0030】
本発明における塩素化工程は、代表的には、水素化クロロシランと塩化水素とを反応させて四塩化ケイ素に転化させる塩素化触媒が充填された塩素化塔に上記パージ排ガスを通過させることによって行うことができる。かかる塩素化触媒としては、水素化クロロシランを四塩化ケイ素に転化させることが可能な触媒であれば特に制限されず、公知の塩素化触媒を用いることが可能である。
【0031】
当該塩素化触媒の触媒成分として具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金等の第VIII族元素の金属やその塩化物等、アルミニウム、銅、チタン等の金属や塩化物が挙げられる。これらの触媒は単独で用いることも、或いは複数の触媒を組み合わせて用いることも可能である。さらには、上記触媒成分をシリカや活性炭等に担持させて用いることも可能である。
【0032】
塩素化を行う際の塩化水素と水素化クロロシランの供給モル比は、パージ排ガス中の水素化クロロシランが十分に四塩化ケイ素に転化される条件であれば特に制限されない。モル比[塩化水素/水素化クロロシラン]が、通常3以上あれば十分である。なお、パージ排ガス中には、塩化水素が平均で1〜50容量%程度含有されているので、パージ排ガス中の水素化クロロシランを塩素化するに十分な量の塩化水素が存在しているが、塩化水素の量が少ない場合には、他のパージ排ガスを混合する等により塩化水素の含有量を調整して塩素化塔に供給すれば良い。
【0033】
塩素化触媒とパージ排ガスとの接触時間については、水素化クロロシランが十分に四塩化ケイ素に転化される条件であれば特に制限されず、パージ排ガスの供給量等を勘案して適宜決定すれば良い。この接触時間は、通常5秒以上あれば十分である。さらに、塩素化触媒を充填する充填塔のL/D(触媒充填層長と触媒充填層径の比率)は、L/Dが大きいほど、同じ接触時間とするために必要とする触媒量が少なくなり効率的である。従って、塩素化反応を効率良く行うという観点から、L/Dは1〜10の範囲で採用するのが好ましい。
【0034】
パージ排ガスを塩素化塔に供給する際の供給温度、および供給圧力としては、水素化クロロシランが十分に四塩化ケイ素に転化される条件であれば特に制限されず、パージ排ガスの処理量、及び塩素化塔へのパージ排ガスの供給量等を勘案して適宜決定すれば良い。通常供給温度は80〜120℃、供給圧力は大気圧(0kPaG)〜100kPaGの範囲から適宜決定される。
【0035】
パージ排ガスを塩素化塔に通ぜしめることにより、該排ガス中の水素化クロロシランの含有量を1ppm未満とすることが可能である。塩素化塔を通じた後のパージ排ガス中には、四塩化ケイ素が平均で0〜1000ppm程度含有される。
【0036】
<塩化水素除去工程>
上記塩素化工程より排出されるパージ排ガスは、塩化水素及び水素に加えて四塩化ケイ素を含有している。本発明では、塩素化工程より排出されるパージ排ガスを塩化水素吸収液と接触せしめる塩化水素除去工程を設けることにより、該排ガス中の塩化水素並びに四塩化ケイ素を該吸収液に吸収させ、パージ排ガス中より除去する。なお、四塩化ケイ素は、本工程において、塩化水素吸収液中の水と反応しシリカ或いはシリカの類縁体となってパージ排ガスから分離される。
【0037】
塩化水素吸収液としては塩化水素を吸収する吸収液であれば、特に制限されず公知の塩化水素吸収液を用いることができる。かかる塩化水素吸収液として具体的には、塩酸水溶液等の酸性水溶液;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを溶解させたアルカリ性水溶液等;水などが挙げられる。これらの塩化水素吸収液のうち、中和反応により効率良くパージ排ガスからの塩化水素の除去が行えるという観点から、アルカリ水溶液が好適に用いられる。また、塩化水素吸収液として塩酸水溶液を用いた場合には、パージ排ガス中の塩化水素は、吸収液中に塩酸の形で含有されるため、塩化水素を吸収した液を放散・乾燥することで、例えば、トリクロロシラン製造における塩化水素として再利用することも可能である。
【0038】
パージ排ガスと塩化水素吸収液との接触方法は、両者が十分に接触し、該排ガス中の塩化水素を除去することが可能であれば特に制限されず、公知の気液接触方法を採用することが可能である。気液接触方法として、具体的には、エジェクター等のパージ排ガスと塩化水素吸収液との気液混合流を強制的に形成せしめる方法;スクラバ等のパージ排ガス流に塩化水素吸収液を散布する方法;塩化水素吸収液よりなる液相にパージ排ガスを直接吹き込む方法などが挙げられる。上記の気液接触方法のうち、スクラバ等のパージ排ガス流に塩化水素吸収液を散布する方法は、塩化水素吸収液と接触したパージ排ガスの排出が容易である点及び装置が簡便であるという点から好適である。
両者を接触させる際の温度については特に制限されず、使用する気液接触装置の能力等を勘案して適宜決定すれば良い。しかしながら、あまり温度が高すぎると、上記吸収液からの塩化水素や、酸、アルカリ等が放散しやすく、パージ排ガスに同伴される傾向にある。従って、上記パージ排ガスを塩化水素吸収液と接触させる際の温度は、10〜60℃の範囲が好適である。
【0039】
<パージ排ガスの水素源としての供給>
上記塩化水素除去工程を経ることによりパージ排ガス中の塩化水素並びに四塩化ケイ素をほぼ完全に除去することが可能とあり、当該パージ排ガスは、後述する他工程の水素源として再利用するのに十分な高純度の水素ガスとなる。ただし、塩化水素吸収液と接触することにより、パージ排ガスの圧力はほぼ大気圧と同等の圧力となるため、得られる水素ガスを他工程の水素源として供給する際には、水素を圧縮する必要がある。
【0040】
水素を圧縮する手段としては、特に制限されず、公知の圧縮手段を採用することが可能である。かかる圧縮手段として具体的には、遠心圧縮機、軸流圧縮機等のターボ圧縮機、レシプロ圧縮機、ダイヤフラム式圧縮機、スクリュー圧縮機、ロータリー圧縮機等の容積圧縮機などの圧縮手段が挙げられる。また、圧縮機の圧縮部に潤滑油を噴射させながら運転する給油式、或いは潤滑油を使用しない無給油式のいずれの圧縮機も好適に用いることが可能である。これらの圧縮手段の内、スクリュー圧縮機は、効率良く水素ガスの圧縮を行えるという点で、特に好適である。
給油式の圧縮機に用いられる潤滑油として、具体的には、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、ハロゲン化炭化水素系オイル、シリコーン系オイル等が挙げられる。尚、給油式の圧縮手段を採用した際には、圧縮後の水素ガスから潤滑油を分離して、他の製造工程における水素源として供給するのが一般的である。潤滑油の分離方法としては潤滑油が分離できる手段であれば特に制限されず、公知の分離手段を採用することが可能である。かかる分離手段として、具体的には、デミスターやオイルミストフィルター、活性炭等の分離手段が採用される。
【0041】
水素ガスの圧縮圧力は、他工程の水素源として使用可能な程度まで圧縮させれば特に制限なく、他工程における製造装置等への水素供給能力等を勘案して適宜決定すれば良い。通常、圧縮後の水素ガスの圧力が200〜600kPaGとなるまで水素ガスの圧縮を行えば十分である。一連の圧縮手段によって水素ガスは圧縮され、他の製造工程における水素源として供給することが可能となる。
【0042】
<水洗工程>
上記パージ排ガスから回収された水素ガスは、他工程の水素源として再利用するのに十分な高純度の水素ガスであるが、塩化水素吸収液との接触により、塩化水素吸収液からの水分が同伴されたり、塩化水素吸収液中の成分(酸、アルカリ等)を極微量含有することがあり、これらの成分が他の製造工程において問題となる場合がある。従って、塩化水吸収液との接触後に排出される水素ガスを圧縮する前に、上記塩化水素吸収液由来の成分を除去することを目的に、該水素ガスを水洗する水洗工程を設けることが好ましい。
水素ガスと水洗する水との接触方法は、水素ガスと水が十分に接触し塩化水素吸収液中の成分を除去することが可能であれば、特に制限されず公知の気液接触方法を採用することが可能である。気液接触方法として、具体的には、エジェクター等の水素ガスと水との気液混合流を強制的に形成せしめる方法;スクラバ等の水素ガスに水を散布する方法;水に水素ガスを直接吹き込む方法などが挙げられる。これらの気液接触方法のうち、スクラバ等の水素ガスに水を散布する方法は、水と接触した水素ガスの排出が容易である点及び装置が簡便であるという観点から好適である。また、これら液接触方法は単独で用いることも、気液接触方法を直列に接続して行うことも、更には、複数の気液接触方法を組み合わせて使用することも可能である。
【0043】
<脱湿工程>
パージ排ガスから回収された水素ガスは、塩化水素吸収液更には必要に応じて水洗工程を経たガスであるため、水分を微量含有している。従って、水素ガスに含有される水分が、他の製造工程において問題となる場合には、前出の圧縮後に水分を除去する脱湿工程を設けることが好ましい。
水素ガス中の水分を除去する手段としては、公知の除去手段を採用することができる。具体的には、水素ガスを冷却することにより水分を凝縮させて除去する手段;水素ガスをモレキュラーシーブスなどの乾燥剤の充填層を通過させることによって水分を除去する手段等が挙げられる。また、これらの水分除去手段は、単独で用いることも、同様の水分除去手段を直列に接続して行うことも、更には、複数の水分除去手段を組み合わせて使用することも可能である。この脱湿工程を設けることにより、水素ガス中の水分の含有量を100〜500ppm程度までに乾燥させることができる。
【0044】
<水素源としての利用>
本発明によりパージ排ガスから回収された水素ガスは十分な高純度の水素ガスであり、他工程の水素源として再利用することができる。例えば、四塩化ケイ素と水素を火炎上で反応させる、所謂ヒュームドシリカの製造における水素源として、或いは塩素と反応させて塩化水素を製造する際の水素源などとして使用することが可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0046】
実施例1
塩素化の検証実験を行った。φ10mm、高さ50mmの塩素化塔に、0.2wt%Pd/SiO触媒を1.5g充填した。ここに、塩化水素およびトリクロロシランを含む水素を通じた。温度、圧力、モル比(塩化水素/トリクロロシラン)および塩素化塔での滞在時間は、それぞれ80℃、0kPaG、8.0、および5sec.とした。このとき、トリクロロシラン反応率は100%であり、全量四塩化ケイ素に転換していた。
【0047】
実施例2
公知のシーメンス法のベルジャーを用いてポリシリコンの製造を行った。このとき、ポリシリコンの析出表面積は平均で約1200cmとし析出温度は1150℃とした。析出運転は代表的な排ガス組成が得られる条件下、すなわち水素30Nm/H、トリクロロシラン18kg/Hの混合ガスを4時間供給することによって析出を行った。反応圧力は50kPaGであった。
ベルジャーより排出された副生塩化水素を含有する排ガスは、熱交換器で冷却したのち、圧縮機で700kPaGまで加圧し、さらに−30℃に冷却してクロロシランの一部を凝縮除去した。凝縮除去後の副生塩化水素を含有するガスは、熱交換機によって冷熱を回収し、最終的にガス温度を10℃として、次工程のクロロシラン吸着除去工程に供給した。
【0048】
クロロシランの吸着除去工程では、平均細孔半径が1.2×10−9m、直径3〜5mmの粒状活性炭を15m充填した充填塔に、上記クロロシランを凝縮除去した副生塩化水素を含有する排ガスを空間速度(SV)10Hr−1で供給し、該ガスに残存するクロロシランを吸着除去した。その後該充填塔より排出されたガスを塩化水素の吸着除去工程に供給した。塩化水素の吸着除去工程では、平均細孔半径が8×10−10m、直径3〜5mmの粒状活性炭を15m充填した充填塔を2塔用意し、そのうちの1塔に、クロロシランを吸着除去した排ガスを空間速度(SV)10Hr−1で供給して塩化水素を活性炭に吸着させて除去した。
【0049】
充填塔への排ガスの供給を12時間行った後、次の通り供給ガスを水素ガスに切り替えて脱着操作を行った。塩化水素が吸着保持された活性炭の充填塔に、副生塩化水素を除去した水素ガスを、200℃、3kPaG、空間速度(SV)3Hr−1の速度で流通させて塩化水素の脱着を行った。充填塔より排出されたパージ排水素ガスをガスクロマトグラフィーにて分析したところ、塩化水素最大30容積%、四塩化ケイ素最大200ppm、ジクロロシラン最大30ppm、トリクロロシラン最大150ppmであった。
次いで、上記充填塔より排出されたパージ排ガスは、塩素化触媒として、0.2wt%Pd/SiO2触媒を充填した塩素化塔(L/D=5)に80℃、1kPaG、空間速度(SV)720Hr−1の速度で流通させた。塩素化塔から排出されたパージ排ガスをガスクロマトグラフィーにて分析したところ、塩化水素が最大30容積%、四塩化ケイ素が最大400ppmであった。なお、水素化クロロシランは検出されなかった。
塩素化塔から排出されたパージ排ガスをスクラバに供給し、pH13のNaOH水溶液を液ガス比50L/Nmで接触させた。スクラバより排出されたパージ排ガスを一定体積量吸収させた水のpHからクロロシランの濃度を求めたところ、該排ガス中のクロロシラン含有量は1ppm未満であった。
【0050】
スクラバより排出された水素ガスは、次いで水洗を行い、パラフィン系オイルを用いる油冷式スクリュー圧縮機にて450kPaGまで圧縮した。圧縮した水素ガスに含まれるオイルは、デミスター、オイルミストフィルター、及び活性炭を通して、含有されるオイルを除去した。その後オイルが除去された水素ガスには、モルキュラーシーブスを用いて水分を除去した。回収した水素の純度は99.99体積%以上であった。なお、上記デミスター、オイルミストフィルター上には、粘調な固体の析出は認められなかった。
【0051】
実施例3
テトラクロロシラン、実施例2で回収された水素、及び空気を体積比2:5:14で予混合した後、多重管バーナーを用いて円筒状反応器の上端より連続的に供給して燃焼反応を行った。尚、予混合したガスは多重管バーナーの内管から供給した。シールガスとして、外管から空気を、その内側から水素と空気の混合ガスを供給し、シリカを製造した。
このヒュームドシリカのBET比表面積、嵩密度、鉄濃度、アルミニウム濃度は、以下の通りであった。
BET比表面積:220m/g
嵩密度:25g/L
鉄濃度:1ppm未満
アルミニウム濃度:1ppm未満
【0052】
比較例1
実施例2において、活性炭の充填塔より排出されたパージ排ガスを塩素化塔に通じさせなかった以外は同様に実施してパージ排ガスの処理を行った。スクラバより排出された水素ガスの純度は、99.99%以上であったが、油冷式スクリュー圧縮機にて450kPaGまで圧縮した際に、デミスター、オイルミストフィルター上には、粘調な固体の析出が確認された。
【0053】
参考例1
ヒュームドシリカを製造するに当り、排ガスの代わりにバージンの水素ガス(純度99.99体積%以上)を使用した以外は、実施例3と全く同様の条件でヒュームドシリカを製造した。得られたヒュームドシリカの各種物性等は以下の通りであった。
BET比表面積:220m/g
嵩密度:25g/L
実施例3と参考例1の結果の比較から、本発明によれば、パージ排ガスから回収された水素を使用することにより、バージンの水素ガスを用いた場合と同等の平均粒径及び比表面積を有し、且つ高純度のヒュームドシリカが得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水素とトリクロロシランとを反応させてポリシリコンを製造する工程から排出された排ガスを活性炭層に通すことにより、塩化水素を吸着する塩化水素吸着工程、
(2)塩化水素が吸着保持された活性炭層にパージガスとしての水素ガスを通して、吸着された塩化水素を脱着する塩化水素脱着工程、
(3)前記塩化水素脱着工程において脱着された塩化水素及び水素を含むパージ排ガスを塩素化工程に導いて、含有する水素化クロロシランを四塩化ケイ素に転化する塩素化工程、および
(4)前記塩素化工程おいて転化された四塩化ケイ素を含むパージ排ガスを塩化水素吸収液と接触せしめて、塩化水素並びに四塩化ケイ素を除去する塩化水素除去工程、
を含むことを特徴とするパージ排ガスの処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の処理方法で得られた、塩化水素並びに四塩化ケイ素が除去されたパージ排ガスを圧縮して他工程の水素源として供給することを特徴とするパージ排ガスの水素源としての使用。
【請求項3】
圧縮後に水分を除去することを特徴とする請求項2に記載のパージ排ガスの水素源としての使用。

【公開番号】特開2011−139987(P2011−139987A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1758(P2010−1758)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】