説明

ヒトおよび/または動物の栄養のための組成物、その使用および酵母

【課題】本発明は、新規酵母株を含有する組成物に関する。
【解決手段】前記酵母株は、受託番号No.CNCM I−3856または受託番号No.CNCM I−3799の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託されたSaccharomyces cerevisiae株である。これらの株から生じる酵母および/またはSaccharomyces cerevisiae酵母の誘導体は、食品添加物、プロバイオティック、機能性食品、栄養補助食品、機能性成分、薬用化粧品、医薬有効成分などとして特に有用である。本発明はまた、ヒトおよび/もしくは動物の栄養における、または炎症性疾患の治療もしくは予防のための、前記対象物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび/または動物の栄養と健康の分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、新規酵母株および新規株から得られる新規酵母に関する。これらの酵母は、消化管の恒常性のためおよび/またはヒトまたは動物の消化管の障害を予防するおよび/または治療するために特に有用である。
【背景技術】
【0003】
たとえば国際公開広報第WO 2006/021965号に記載されているように、多くの微生物に関して、ヒトの消化管への有益な適用およびそれらの栄養面での恩恵に関して、既に文献で記載されている。
【0004】
これらの微生物は、プロバイオティックという用語で一般に表され、この用語は、このような作用によって、十分な量で投与された場合宿主に健康上の恩恵を提供することが可能な生きている微生物に対応している(joint FAO/WHO Expert Cunsultation Probiotics in food, FAO Food and nutrition paper Nr85, ISBN 92-5-105513-0)。
【0005】
微生物の経口投与から生じる恩恵は、使用される微生物株に極めて大きく依存するが、同時にその投与形態にも依存する。同じ種内で、使用される株によって、認められる作用は実際非常に変動的であり、たとえば病原性株(たとえば腸管毒素原性型または腸管出血性型)とNissle 1917 株のような有益な株との両方が認められるEscherichia coli種内のように(M. de Vrese ; P. R. Marteau. Probiotics and Prebiotics: Effects on Diarrhea. 2007, J. Nutr., 137(3 Suppl. 2), 803S-811S)、同じ種でも、ときには有益であり、ときには有害または中立的である。それゆえ現在のところ、所与の菌株に関して、その株の投与によりヒトの健康についての恩恵が与えられるかどうかを予測することは不可能であり、それどころかその可能性のある恩恵の性質またはその強さを予測することすら不可能である。
【0006】
いくつかの株の微生物は、特に酵母および乳酸菌において、胃腸管へのある種の有益な作用に関して既に認められている。しかしながら、胃腸管への完全な有益作用を得るためには、異なる性質のいくつかの株の同時投与を必要とするが多い(I. Goktepe ; V.K. Juneja ; M. Ahmedna (eds).Probiotics in Food Safety and Human Health 2006, CRC Taylor & Francis, ISBN I-57444-514-6)。
【0007】
さらに、多数の微生物、特に乳酸菌は、プロ炎症作用を有することが認められている。このプロ炎症作用は、たとえば自己免疫疾患または免疫不全において特に有害であり、望ましくないことが実証され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開広報第WO 2006/021965号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】joint FAO/WHO Expert Cunsultation Probiotics in food, FAO Food and nutrition paper Nr85, ISBN 92-5-105513-0
【非特許文献2】M. de Vrese ; P. R. Marteau. Probiotics and Prebiotics: Effects on Diarrhea. 2007, J. Nutr., 137(3 Suppl. 2), 803S-811S
【非特許文献3】I. Goktepe ; V.K. Juneja ; M. Ahmedna (eds). Probiotics in Food Safety and Human Health 2006, CRC Taylor & Francis, ISBN I-57444-514-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
酵母および/または酵母誘導体のある種の画分(fraction)が、消化管へ有益な作用を及ぼすことに関して知られている。
【0011】
たとえば、酵母由来のマンノプロテインは、病原体の接着を阻害するそれらの作用について記述されている。また、酵母の細胞壁はそれらの繊維作用について記述されている。しかし、Saccharomyces cerevisiae酵母には多くの株が存在しているが、それらのすべてが有益な作用または同じ作用を有するとは限らない。
【0012】
さらに、使用される株および投与される酵母形態によっても、作用は非常に変動的であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、健康面に対して予防的におよび/または特定病変もしくは機能不全に対して治療的に、または身体的および精神的な全般的健康状態に対して有益な作用を及ぼし得る微生物の新規株を得る必要性がある。
【0014】
本発明の態様は、それゆえ、受託番号No.CNCM I−3856の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託されたSaccharomyces cerevisiaeの新規株、および受託番号No.CNCM I−3799の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託されたSaccharomyces cerevisiae var. boulardiiの新規株である。
【0015】
本発明の態様はまた、受託番号No.CNCM I−3856の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託された株から得られるSaccharomyces cerevisiae酵母、および受託番号No.CNCM I−3799の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託された株から得られるSaccharomyces cerevisiae var. boulardii 酵母である。
【0016】
本発明のもう1つの態様は、受託番号No.CNCM I−3856の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託された株から得られるSaccharomyces cerevisiae酵母;および/または受託番号No.CNCM I−3799の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託された株から得られるSaccharomyces cerevisiae var. boulardii 酵母;および/または酵母抽出物、酵母細胞壁誘導体、酵母細胞壁グルカン、酵母細胞壁マンノプロテイン、酵母脂質画分、酵母核酸(RNA、DNA)画分から選択される少なくとも1つのSaccharomyces cerevisiae酵母誘導体;を含有する組成物である。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、ヒトおよび/または動物用の、補助食品および/またはプロバイオティックおよび/または機能性食品および/または栄養補助食品および/または機能性成分および/または薬用化粧品および/または医薬有効成分を調製するための前記組成物の使用である。
【0018】
さらに、本発明は、胃腸の快適性を改善することおよび/または腸内菌叢を改善することを目的とした食品組成物を調製するための、前記で定義した組成物の使用に関する。
【0019】
本発明の態様はまた、腸の障害、腸の機能障害、または胃腸疾患を治療および/または予防することを目的とした薬剤を調製するための、前記で定義した組成物の使用である。
【0020】
本発明の1つの態様は、痛覚過敏の状態によって示される腸の病変または障害を治療および/または予防することを目的とした薬剤を調製するための、前記で定義した組成物の使用である。
【0021】
最後に、本発明の最後の態様は、経口投与に適した形態で、前記で定義した少なくとも1つの酵母および/または少なくとも1つの酵母誘導体を含むキットである。
【発明の効果】
【0022】
本発明による組成物は以下の利点を有する:
−特にその乾燥形態で、胃腸管へのその作用を最適化することを可能にする、胃壁を通過するときに耐えて、生存する能力;
−抗炎症作用;
−プロ炎症作用が完全に消滅しているまたは非常にわずかしかないこと;
−腸の痛みを軽減する能力、および最後に
−病原性細菌および/または胃腸管、特に小腸および結腸の侵襲性を有する細菌による接着およびコロニー形成を予防し、低減する能力。
【0023】
この組合せの特徴を有する、そのような新規組成物は、これまで全く記述されていないかまたはまだ同定されていない。
【0024】
前記組成物は、それゆえ、極めて興味深い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例2において、ヒト大腸を模倣した人工消化系におけるScPro1酵母の生存量のモニタリングを示す。
【図2】図2は、実施例2において、大腸微生物叢へのScPro1酵母の作用を示す。
【図3】図3は、予防的モデルに対応する実施例5の実験1および2についてのマウス糞便中のCandida albicansの細胞数の推移を示す。
【図4】図4は、治療的モデルに対応する実施例5の実験1および2についてのマウス糞便中のCandida albicansの細胞数の推移を示す。
【図5】図5は、プレインキュベーションを伴うScPro1の量に依存したヒト腸上皮細胞へのEscherichia coli AIEC LF82細胞の残存接着のパーセンテージを示しており、酵母細胞を腸上皮細胞と共に1時間インキュベートした。実施例6に従ってAIEC LF82株による細胞の感染をScPro1酵母の存在下で実施した。
【図6】図6は、共インキュベーションを伴うScPro1酵母の量に依存したヒト腸上皮細胞へのEscherichia coli AIEC LF82細胞の残存接着のパーセンテージを示しており、実施例6に従って、酵母細胞およびEscherichia coli細胞を腸上皮細胞と共に同時に1時間インキュベートした。
【図7】図7は、実施例4において、ScPro1およびSCB1酵母の投与後の肉眼的Wallaceスコアによるマウス腸の炎症の強さの評価を示す。
【図8】図8は、実施例4において、ScPro1およびSCB1酵母の投与後の組織学的Amehoスコアによるマウスの腸上皮の炎症の強さの評価を示す。
【図9】図9は、実施例4において、単独でまたは組合せて投与されたScPro1およびSCB1酵母の投与後の肉眼的Wallaceスコアによるマウス腸の炎症の強さの評価を示す。
【図10】図10は、実施例4において、単独でまたは組合せて投与されたScPro1およびSCB1酵母の投与後の組織学的Amehoスコアによるマウス腸上皮の炎症の強さの評価を示す。
【図11】図11は、実施例7において、本発明による酵母または誘導体をヒト腸上皮細胞と接触させて、1時間後および3時間後のIL−10タンパク質をコードする遺伝子のmRNA発現レベルを示す。
【図12】図12は、実施例7において本発明による酵母または誘導体をヒト腸上皮細胞と接触させて、1時間後および3時間後の核受容体PPARαをコードする遺伝子のmRNA発現レベルを示す。
【図13】図13は、実施例7において本発明による酵母および/または誘導体をヒト腸上皮細胞と接触させて、1時間後および3時間後のIL−10タンパク質をコードする遺伝子のmRNA発現制御を示す。
【図14】図14は、本発明による酵母および/または誘導体の投与後のマウス腸上皮細胞における、IL−10タンパク質をコードする遺伝子の発現を示す(実施例4)。
【図15】図15は、本発明による酵母および/または誘導体の投与後のマウス腸上皮細胞における、核受容体PPARαをコードする遺伝子の発現を示す(実施例4)。
【図16】図16は、クローン病に罹患しているまたは罹患していない被験者の生検からの腸細胞を本発明による酵母および誘導体と接触させた後の、前記腸細胞による、pg/mlで測定したサイトカインIL−10の分泌量を示す(実施例8)。
【図17】図17は、クローン病に罹患しているまたは罹患していない被験者の生検からの腸細胞を本発明による酵母および/または誘導体と接触させた後の、前記腸細胞によって分泌される、pg/mlで測定したTNF−αサイトカインの量を示す(実施例8)。
【図18】図18は、ScPro1酵母のマンノプロテイン画分(EL 05およびEL 06)への1型線毛の結合能力を測定するための試験の結果を示す。
【図19A】図19Aは、酵母濃度を漸増して共インキュベーションした際のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存接着パーセンテージを示す(実施例6)。p<0.05、**p<0.01。
【図19B】図19Bは、それぞれ、酵母濃度を漸増して共インキュベーションした際のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存侵襲を示す(実施例6)。p<0.05、**p<0.01。
【図20A】図20Aは、それぞれ、漸増濃度のEL05酵母マンノプロテインとの共インキュベーションの間のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存接着(%)を示す(実施例6)。
【図20B】図20Bは、それぞれ、漸増濃度のEL05酵母マンノプロテインとの共インキュベーションの間のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存侵襲(%)を示す(実施例6)。
【図21A】図21Aは、それぞれ、漸増濃度の酵母とのプレインキュベーションの間のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存接着(%)を示す(実施例6)。p<0.05および**p<0.01。
【図21B】図21Bは、それぞれ、漸増濃度の酵母とのプレインキュベーションの間のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存侵襲(%)を示す(実施例6)。p<0.05および**p<0.01。
【図22A】図22Aは、それぞれ、漸増濃度のEL05酵母マンノプロテインとのプレインキュベーションの間のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存接着(%)を示す(実施例6)。p<0.05および**p<0.01。
【図22B】図22Bは、それぞれ、漸増濃度のEL05酵母マンノプロテインとのプレインキュベーションの間のT84細胞へのAIEC LF82株の平均残存侵襲(%)を示す(実施例6)。p<0.05および**p<0.01。
【図23】図23は、漸増濃度の瞬間乾燥ScPro1酵母とのプレインキュベーションの間の、CHO−K1およびCHO−K1/CEACAM6細胞へのAIEC LF82株の残存接着(%)を示す(実施例6)。p<0.05および**p<0.01。
【図24】図24は、クローン病に罹患している細胞の3つの試料の腸細胞の刷子縁へのAIEC LF82株または無線毛LF82−δfimH突然変異株の接着を示す(実施例6)。
【図25】図25は、健常ラットでの種々の酵母に関する痛覚閾値の測定(mmHgで測定)を示す(実施例9)。
【図26】図26は、内臓過敏症を有するラットでの種々の酵母に関する痛覚閾値の測定(mmHgで測定)を示す(実施例9)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ブタペスト条約の下で、受託番号No.CNCM I−3856の下に出願人によりCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(Institut Pasteur Paris)に寄託された株は、単に「ScPro1」と称する。
【0027】
同じくブタペスト条約の下で、受託番号No.CNCM I−3799の下に出願人によりCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(Institut Pasteur Paris)に寄託された株は、単に「SCB1」と称する。
【0028】
また、酵母抽出物、酵母細胞壁誘導体、酵母細胞壁グルカン、酵母細胞壁マンノプロテイン、酵母脂質画分、酵母核酸(RNA、DNA)画分およびそれらの混合物から選択されるSaccharomyces cerevisiae酵母誘導体は、単に「誘導体」と称する。
【0029】
プロバイオティックは、それらが十分な量で組み込まれた場合、伝統的な栄養効果を超えて健康、快適性および健全性に有益な作用を及ぼす生微生物を表すことが意図されている。
【0030】
栄養食品または栄養補助食品または機能性食品または薬用化粧品により、健康のために有益な作用を有するまたは生理的機能を改善することができる成分を含有する食品が意味される。
【0031】
補助食品により、正常な食事を完成させる目的を有する食品が意味される。補助食品は、単独でまたは少量ずつの組合せとして摂取された場合、栄養的または生理的効果を有する栄養素または他の物質の濃縮供給源である。
【0032】
特定の栄養供給を目的とした食品(DDAP(特定栄養補助食品))により、小児、幼児、スポーツマンのような十分に定義された集団グループを対象とする、特定の栄養上の目標を有する食品が意味される。
【0033】
本発明において言及する食品組成物は、補助食品またはDDAPであり得る。
【0034】
本発明の株は、出願人により、それらの多くの利点に関して、とりわけヒト消化管、特に小腸および結腸に対して、のみならず身体全般に対して有益な作用を誘導するそれらの能力に関して同定された。
【0035】
実際に、驚くべきことに酵母ScPro1および/またはSCB1および/または誘導体は、数多くの酵母株と異なり、抗炎症作用を誘導することができ、しかもこれはいかなるプロ炎症作用も伴わないことが認められた。
【0036】
実際に、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、抗炎症性シグナルに関与するインターロイキンIL−10の分泌上昇を生じさせる。さらに、乳酸菌型のプロバイオティック菌の作用とは異なり、ScPro1および/またはSCB1株および/または誘導体は、プロ炎症性サイトカインIL−12の合成を誘導しない。また、TNFαおよびIFNγプロ炎症性サイトカインの産生は、細菌プロバイオティックと比較して著明に低い。試験により、さらに、この酵母ScPro1のインビボでの抗炎症作用、特に大腸の炎症の半減および腸壊死の3分の1の低減が明らかにされた。
【0037】
さらに、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、その乾燥形態で、その生存または完全性へのいかなるマイナスの影響も伴わずに胃障壁を横断することができ、そしてこの酵母は大腸環境に定住しない。
【0038】
出願人は、初めてそして特に驚くべきことに、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体が、特にインビボでのラットモデルで、疼痛に対する抵抗性を高めることができることを明らかにした。
【0039】
これらの有益な作用に加えて、このScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、腸における病原性微生物および/または侵襲性を有する微生物のコロニー形成および/または侵襲を阻害することができる。このような酵母の投与により、大腸における腸内細菌の減少および抗生物質に対して耐性の腸内菌叢の減少が生じる。
【0040】
特に、Candida albicansによる腸内コロニー形成およびこの病原体によって引き起こされ、維持される炎症に対する予防および治療能力を示した。さらに、この酵母は、クローン病に罹患している患者からの回腸生検から単離されるEscherichia coli病原型の病原性株および/または侵襲性を有する株の接着力および侵襲力に対する阻害作用を有する。
【0041】
本発明によれば、このScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、生菌形態または生存可能形態で、好ましくは経口的に投与され得る。
【0042】
「生菌形態」または「生存状態」により、本発明では、その代謝が活性であるか、もしくは再活性化可能であるかまたは増殖することができる酵母が意味される。このような酵母は特に乾燥形態または新鮮形態の酵母である。
【0043】
典型的には、新鮮形態の酵母は、圧搾酵母または粉砕酵母として存在する。また、水相に懸濁した酵母としても存在でき、その場合は液体酵母と称される。この場合、酵母は、好ましくはカプセル化される。カプセル化方法および種々のタイプのカプセルが当業者に周知である。
【0044】
乾燥酵母形態の中で、瞬間乾燥形態または活性乾燥形態で存在し得る酵母が挙げられ得る。乾燥酵母により、約90%以上、好ましくは約92%〜96%の乾燥物質量を有するあらゆる酵母が意味される。
【0045】
乾燥酵母としては、冷凍または非冷凍であって、中間的な湿度を有する酵母がさらに挙げられ得る。
【0046】
瞬間乾燥酵母(すなわちインスタント乾燥酵母)は、主として産業従事者およびパン製造販売者向けである。他の適用および販路は、食品関連システム(薬学、アルコール発酵)に基づいて可能である。この乾燥酵母の特殊性は、粉に混ぜられる前に再水和を必要としない点にある。
【0047】
乾燥酵母は、ペースト状生成物(圧搾酵母または液体酵母)を活性なままで薄い乾燥バーミセリに変換することを可能にする、ホットエア勾配の作用による酵母の脱水によって得られる。この生成物は、ついで、安定化するために、無酸素状態に置かれる。
【0048】
活性乾燥酵母は、その発酵力を保持するために低温で乾燥された生存状態の酵母であり、非常に長く保存できる。活性乾燥酵母は小球として存在する。
【0049】
この酵母は、その生存能を保持しながらペースト状形態の酵母を乾燥生成物に変換することを可能にする、熱と機械的運動の共同作用による酵母の脱水から生じる。
【0050】
選択された活性酵母は、バイオマス(生存状態の酵母細胞)の押出および流動床での乾燥によって得られる。この活性乾燥酵母、すなわち生存状態の酵母細胞の高い含量を有する乾燥酵母は、一般に0.1μm〜2.5mmの直径および4〜8質量%の含水量を有する顆粒として存在する。
【0051】
これらの乾燥形態は、新鮮形態と比較してより良好な胃抵抗性を提供し、本発明による酵母の有益な作用を最適化するという利点を備える。本発明によれば、本発明による酵母は、好ましくは活性乾燥酵母の形態である。
【0052】
プロ炎症性サイトカインが炎症機構を刺激し、次にその炎症機構が、特に自己免疫疾患または免疫不全の症例において、数多くの臨床上の問題の原因となり得ることは一般に認識されている。
【0053】
そこで、本発明による酵母は、慢性または急性にかかわらず、また下痢または便秘に関連してもよく、関連しなくともよい、腸の疾患または炎症性障害を予防および/または治療するために使用され得る。
【0054】
最初の実施形態では、障害および疾患は下痢に関連してもよいし、関連しなくともよい。
【0055】
第二の実施形態では、障害および疾患は下痢に関連しない。特にScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、基本的に大腸の炎症によって特徴づけられる大腸炎を予防または治療するために有用であり得る。
【0056】
特に、この酵母は、慢性炎症性腸疾患(CIBD)、特に潰瘍性大腸炎、出血性直腸結腸炎、セリアック病またはクローン病を予防および/または治療することに良好に適合される。
【0057】
これらの疾患は、特に、多発炎症カスケードに関与する免疫応答の増悪によって特徴づけられる。それゆえ、プロバイオティックおよび/または医療食品および/または機能性食品および/または栄養補助食品および/または薬用化粧品で、これらの疾患を予防または治療することの範囲内で、自身によって引き起こすプロ炎症作用ができる限り弱いことが重要である。
【0058】
本発明によるScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、それゆえ、これらの用途に特に適する。この酵母はいくつかの付加的な利点を有する。
【0059】
第一の利点は、疼痛に対する抵抗性を高める能力を有することである。第二は、特にクローン病に関して、この酵母が特に、この疾患に罹患している患者からのE. coli病原性株および/または侵襲性を有する株の接着力および侵襲力を阻害できることである。
【0060】
炎症性応答は、特にすべての病原性微生物の侵襲に起因し得る。
【0061】
それゆえ、本発明によるScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、病原性微生物および/または侵襲性を有する微生物、細菌のような原核生物、または真菌のような真核生物による腸のコロニー形成に起因する胃腸障害または疾患を予防または治療するのに優れた有効性を示す。
【0062】
胃腸障害または疾患は、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クローン病および出血性直腸結腸炎のような腸の慢性炎症性疾患であり得る。
【0063】
さらに、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、疼痛に対する抵抗性を高めることを可能にし、痛覚過敏の状態によって特徴づけられる腸病変または障害の予防的または治療的処置においても利点を有する。これらの病変または障害は、特に、慢性内臓痛を特徴とする機能性腸障害、慢性炎症性腸疾患(CIBD)または食物への不適応(食物アレルギー、食物不耐症等)であり得る。
【0064】
ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、痛覚過敏の予防的または治療的処置に特に適合しており、特に、その形態(便秘、下痢または両者の組合せ)にかかわりなく過敏性腸症候群(IBS)、またIBSの範囲に入らない慢性内臓痛[例えば、排便障害を伴わない機能性腹痛(FAPS:機能性腹痛)および食物不耐症およびセリアック病に関連する疼痛]の、予防的または治療的処置に特に適合される。
【0065】
ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体またはそれを含有する何らかの組成物は、それゆえ、この種の障害もしくは疾患に対する素因もしくは感受性を有する対象者において、予防的に、または治療的に(たとえば発作の間もしくはより長期間にわたって)使用され得る。本発明の組成物および方法は、このような対象者の苦痛を軽減し、これらの障害の症状または原因を緩和し得る。
【0066】
本発明によるこの酵母および/または誘導体が、疼痛、炎症、ならびに病原性微生物および/または侵襲性を有する微生物に対して起こす作用により、ヒトまたは動物の胃腸管では、健全性、健康および/または快適性が確実に改善する。
【0067】
本発明による組成物は、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または、酵母抽出物、酵母細胞壁誘導体、酵母細胞壁グルカン、酵母細胞壁マンノプロテイン、酵母脂質画分、酵母核酸(RNA、DNA)画分から選択されるSaccharomyces cerevisiae酵母の少なくとも1つの誘導体を、10〜6×1010CFU、好ましくは10〜2×1010CFU、または1mg〜10g、好ましくは1mg〜1gの範囲にわたる量で含有し得る。この量は、1回でまたは1日の間に数回に分けて摂取される1日量であり得る。
【0068】
好ましくは、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、10〜6×1010CFU(コロニー形成単位)、好ましくは10〜2×1010CFUの1日用量で治療用または非治療用として使用される。
【0069】
酵母および/または誘導体が、生菌形態であるが非成長状態(non-viable)である場合、治療用または非治療用における有用な1日用量は、1mg〜10g、好ましくは1mg〜1gから成る。1日有効用量は、1回、2回、3回または4回の摂取で投与され得る。
【0070】
本発明による酵母および/または誘導体またはそれを含有する組成物は、好ましくは経口的に投与される。前記酵母および/または誘導体またはそれを含有する組成物は、治療有効量で投与されてもよく、治療有効量とは、症状の少なくとも1つが軽減されるまたは抑制される量であることを意味する。
【0071】
ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体は、ヒトまたは動物の食品組成物に含有されてもよく、および/または経口投与に適した賦形剤または担体と共に投与されてもよい。
【0072】
ヒトの食品用の組成物は、液体、ペーストまたは固体であり得る。特に、前記組成物は、チーズ、バター、ヨーグルトまたはクリームのような乳製品、果汁、コンポートまたはフルーツゼリーのような果実ベースの製品、飲料または固形食料(たとえばスナック食品、ビスケット)または他の食品であり得る。この場合、組成物は、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体、ならびに食料または飲料の成分を含有する。
【0073】
ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体はまた、医薬組成物に含有され得る。医薬組成物は経口投与に適合している。この場合、医薬組成物は、ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体ならびに医薬製剤の製造のための認可された賦形剤群から選択される適切な担体を含有する。医薬組成物は、シロップもしくはバイアルのような液体として、または錠剤、軟カプセル、顆粒(包装物)、硬カプセルまたは粉末または他の適切な生薬形態として製剤され得る。
【0074】
ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体はさらに、特により一層完全な予防作用のために、他のプロバイオティックおよび/または他の機能性成分、特にプロバイオティック細菌と共に投与され得る。
【0075】
一例として、乳酸杆菌属、ビフィドバクテリウム属、ペディオコッカス属、プロピオン酸菌属またはロイコノストック属の乳酸菌が挙げられ得る。
【0076】
ScPro1酵母および/またはSCB1酵母および/または誘導体はまた、抗生物質、鎮痛薬、下痢止め薬、緩下剤およびそれらの混合物のような他の有効成分と共に投与され得る。
【実施例】
【0077】
本発明を、ここで、以下の実施例および図面を用いて説明するが、これらは例示として提供されるものであり、いかなる意味においても限定ではない。
【0078】
(実施例1)
[ヒト腸を模倣した人工消化環境におけるScPro1酵母および/またはSCB1酵母の生存]
(胃腸通過の間のScPro1酵母および/またはSCB1酵母の生存性の検討)
ScPro1酵母および/またはSCB1酵母を、ヒトの消化を模倣した人工消化環境において、特に胃腸通過の間の被験生存可能酵母の生存を調べることにより、インビボで試験し、検討した。
【0079】
活性乾燥酵母形態のScPro1の2つの試料および活性乾燥酵母形態のSCB1の2つの試料を試験した。
【0080】
両方の試料を、減圧下にて室温での保存期間によって区別する:6か月未満の経年化(aging)または2年間の経年化(aging)。
【0081】
・実験条件:
文献からのデータによって確立された実験条件に従い、透析と吸収によって消化生成物を除去して、胃が空の状態の健常ヒト成人における液体食料(水)の消化を再現する、TIM1(胃+小腸)と呼ばれる系において消化を実施した。各々の消化を5時間にわたって実施した。すべての消化を同じ一般的操作条件下で実施した。すなわち:
温度:
温度は37℃であった。
胃内容排出パラメータ:
胃内容排出は、以下のように表されるElashoff et al. (1982)によって定義された法則に従う:
F=t×2e{−(1/T)
[式中、Fは送達された食事画分を示し、tは時間であり、Tは食物を半分排出するための時間であり、bは曲線の様相を表すパラメータである。パラメータは、T=15分;b=1である]。回腸内容排出パラメータ:回腸内容排出は、修正Elashoffの法則
(消化の最後に排出が抑制されることを可能にするパラメータdの導入:
=F+d
に従う。パラメータは、T=150分;b=2.4;d=−10−7(図2参照)。
pH設定値:
胃(分/pH):0/6.0;10/3.2;20/2.4;40/1.8;60/1.6;90/1.5;300/1.5
十二指腸:6.4
空腸:6.9
回腸:7.2
胃液分泌:
HCl
ペプシン
リパーゼ
腸液分泌:
小腸の3つの部分におけるNaHCO
十二指腸中の胆汁抽出物
十二指腸中の膵液抽出物
透析/吸収:
腸キームスの「低分子量」分子の除去を、血液透析器を用いてTIM1の2つのレベル(空腸および回腸)で実施した。腸キームスの透析は、血漿に近い組成の塩類溶液に対して継続的に実施した。透析物を透析バッグに収集した。被験酵母の生存を観測するため、消化の間に消化管の種々のレベルで試料を採取した。
【0082】
酵母の計数は、標準的な微生物学的方法に従って実施し、10、20、30および45分目に胃で採取した試料、1時間にわたって蓄積された回腸出口で採取した試料、および最終残留物中で採取した試料に関して計数を実施した。
【0083】
計数の方法は以下の通りであった:
【0084】
各々の試料を速やかに滅菌生理食塩水(NaCl 8.5g/L)中で1:10の連続希釈に供した。次に各々の希釈溶液0.1mlを、ペトリ皿に分配したゲロース培地の表面に置いて広げた(一希釈あたり皿2枚)。ペトリ皿を35℃で48時間インキュベートした後、「コロニー形成単位(CFU)」の計数へと進んだ。
【0085】
胃内での酵母の生存率および小腸を出たときの酵母の生存率を測定するため、計数の結果をCFU/ml(生データ)および最初に導入した酵母の数に対する生存状態の酵母細胞のパーセンテージとして表した。
【0086】
以下の表は、胃において、5時間の消化後に回腸出口全体で、および5時間の消化後に系全体で各々の株について得られた理論上の生存率(100%の生存能である場合)および実際の生存率を要約する。
【0087】
【表1】

【0088】
・結論:
これらの結果は、実際に、ScPro1およびSCB1酵母についての卓越した胃腸生存率を明らかにする。
【0089】
(実施例2)
[ヒトの腸を模倣した人工消化環境におけるScPro1酵母の生存]
(大腸発酵の間のScPro1酵母の生存および腸内微生物叢へのそれらの影響の検討)
活性乾燥形態のScPro1酵母を、ヒトの消化を模倣した人工消化環境において、特に大腸発酵の間の生存可能な被験酵母の運命と環境的影響を調べることにより、インビトロで試験し、検討した。
【0090】
大腸発酵は、菌叢を維持するための順序づけられた培地供給による連続的な発酵に関する。この培地は、主として、消化管の上部では消化されない複雑な炭水化物化合物(デンプン、ペクチン、セルロースなど)、大なり小なり加水分解されたプロチド化合物およびムチンを含む。
【0091】
大腸培地も発酵槽から順次除去される。培地は、可溶性発酵生成物の連続的な除去を可能にする透析システムによってカバーされる。
【0092】
短鎖脂肪酸(SCFA)を分析するために透析物を収集する。培地を、特殊な発酵ガスによって創製した嫌気生活に維持し、培地は−300mV未満の酸化還元電位を有する。最後に、pHを6の設定ポイント値で制御する。
【0093】
各々の消化は以下を含んでいた:大腸に播種した後2〜3日間の、菌叢を安定化させるための期間、少なくとも毎日生成物を添加する処置期間(少なくとも3日間)、および3日間の処置停止期間。
【0094】
各々の実験の際に、以下のパラメータを追跡および/または記録した:
−酵母の生存能、
−種々の好気性菌および嫌気性菌集団の経過、
−主要発酵生成物(SCFAおよびガス)の経過、
−標準的な酵素活性の検出、ならびに
−温度、pHおよび酸化還元電位。
【0095】
発酵は、セプタム付クリンプキャップによって閉じた60mlのペニシリンフラスコ中、大腸培地(培養培地プラス新鮮糞便菌叢)30ml上で実施した。酵母試料を培地30mlに添加した。
【0096】
大腸培地は、一方ではリン酸緩衝液中の新鮮糞便から生じる細菌懸濁液からなり、また他方では、人工大腸において大腸菌叢を培養するために使用される典型的な食物から成った。
【0097】
試験する生成物と大腸培地とを混合した後、フラスコに栓をし、クリンプした。
【0098】
これらの操作はすべて嫌気的フード(酸素を含まないガスの混合物)中で実施した。フラスコを24時間、回転インキュベーター(37℃、200rpm)に入れた。
【0099】
各々の生成物について、試験を2回実施した。さらに、4つの対照フラスコ(いかなる生成物も含まない)を同じ条件下で調製した。2つのフラスコは直ちに(初期時間)処理し、2つのフラスコは試験フラスコと同様にインキュベートした。
【0100】
24時間後に発酵を停止し、その後フラスコを処理した。
【0101】
発酵ガスの生成:発酵によって生成されるガスの容積をマリオットシステム(ペニシリンフラスコに含まれる加圧ガスによって推進される水の置換に基づく測定の原理)によって測定した。次にフラスコ中に存在するガスの分析をGPC(H、CO、CH、O)によって実施した。
【0102】
短鎖脂肪酸の生成:大腸内容物の最初の試料採取を実施した。その後、それを凍結するかまたは培養上清のSCFA濃度(揮発性短鎖脂肪酸)を測定するために直接処理した。この分析はGPCによって実施した。探索した代謝産物は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、イソカプロン酸およびヘプタン酸であった。
【0103】
微生物学的分析:大腸内容物の2回目の試料採取を実施し、総嫌気性菌叢、選択的好気性−嫌気性菌叢および真菌叢を計数するために直ちに処理した(還元希釈培地での1:10の連続希釈)。
【0104】
ScPro1酵母の生存に関する結果を図1に示す。この図の中で、各々の垂直の矢印はScPro1酵母の投与を指示する。
【0105】
ScPro1酵母は投与後3日目には良好な生存を示し、投与期間中の4日目から7日目までの間に強い死亡率を示すことが認められた。これは、この酵母が大腸環境に定着しないことを示す。
【0106】
微生物学的分析の結果を図2に示す。図2の結果は、ScPro1酵母の存在下での腸細菌の減少と、酵母の投与を停止した後の細菌の増加を示す。ScPro1酵母の投与期間中、抗生物質(クロラムフェニコール、ゲンタマイシン)に抵抗性の菌叢が有意に減少することも認められた。
【0107】
揮発性短鎖脂肪酸(SCFA)の生成へのScPro1酵母の作用に関する結果を以下の表に要約する(大腸培地中のmMで表している)。
【0108】
【表2】

【0109】
処理期間中、プロピオン酸塩に比べて酢酸塩の減少が幾分認められ、これは酢酸産生微生物叢の活性低下を示唆する。
【0110】
その他の観測したパラメータの中で、
ガス生成(量および割合)
総糖類および単糖類の濃度(長時間安定);ならびに
酵素活性
に対する処理の影響は認められなかった。
【0111】
(実施例3)
[サイトカイン産生の誘導に対するScPro1、SCB1酵母の影響の検討]
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)でのサイトカインの産生の誘導に対する生存状態のScPro1およびSCB1酵母の影響を検討した。
【0112】
ScPro1およびSCB1酵母を、ヒトPBMCにおいてIL−10、IL−12、TNFα、TNFδサイトカインの産生を誘導するそれらの能力に関して、瞬間乾燥形態および活性乾燥形態で試験した。
【0113】
ヒト末梢血単核細胞の調製
Transfusion Centreにおいて健常被験者から得た新鮮ヒト血液をPBS−Ca(GIBCO)で2倍に希釈し、Ficoll勾配(GIBCO)で精製した。20℃で400×gにて30分間遠心分離した後、末梢血単核細胞(PBMC)は血清中で輪層を形成した。PBMCを慎重に吸引し、PBS−Caを使用して50mlの最終容量で懸濁し、同じ緩衝液中で3回洗浄して、20℃で350×gにて10分間の遠心分離工程を実施した。次に、10%w/vのウシ胎仔血清(56℃で30分間不活性化)、1%w/vのL−グルタミン(GIBCO)およびゲンタマイシン(150μg/ml)(GIBCO)で富化した完全RPMI培地(GIBCO)を使用してPBMCを再懸濁した。PBMCを顕微鏡で計数し、2×10細胞/mlの濃度に調整して、24穴細胞培養皿(Corning,Inc.)に分配した(アリコート溶液1ml)。
【0114】
微生物学的製剤
一晩で生成されたLactobacillus、LactococcusおよびEscherichia coli(対照株)の培養物をpH7.2のPBS緩衝液で2回洗浄した後、2×10CFU/mlの濃度でPBSに再懸濁した。
【0115】
最初の実験で使用した酵母濃度は2×10CFU/mlであった。初期用量比較試験のために、2×10CFU/ml、2×10CFU/mlおよび2×10CFU/mlの作用を比較するため10:10の連続希釈を実施してうる。
【0116】
ヒト末梢血単核細胞のインキュベーション
これらの作業懸濁液10μLを、5%COと95%大気から成るガス混合物中で37℃にてインキュベートするように設定した、PBMCを含む皿のウェルに移した。24時間のインキュベーション後、上清を吸引し、2,000rpmで遠心分離して(エッペンドルフモデル)、取り出し、−20℃に保持した。
【0117】
対照は、グラム陽性菌(LactobacillusおよびLactococcus)、グラム陰性菌(Escherichia coli)および酵母を含まない緩衝液から成る。
【0118】
サイトカインの定量
サイトカインの発現レベルをELISAによって測定した。ELISAプレートを抗体で被覆し(一晩)、抗体をPBS/1%BSA(ウシ血清アルブミン)で飽和させた。公知の濃度のサイトカインで検量線を作成し、検出閾値は15.62〜2000pg/mlであった(一晩のインキュベーション)。TMB基質(テトラメチルベンジジン、Pharmingen2)でストレプトアビジン活性を測定することによって抗サイトカインの探索および定量を実施した。市販のPharmingenキットを製造者からの説明に従って使用した。4つのサイトカイン:3つのプロ炎症性サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL−12)および1つの抗炎症性サイトカイン(IL−10)を選択した。
【0119】
結果
5名の異なるドナーに関する4つのサイトカインの応答を1/1の酵母/PBMC比で評価した。
【0120】
培養上清中の4つの分泌サイトカインの定量の結果を以下の表Aに要約する。データは5名のドナーの定量からの平均値(Avg)として表している。表は、平均値の標準誤差の値(Sem)も示す。
【0121】
【表3】

【0122】
1)酵母ScPro1およびSCB1に関しては、参照細菌と異なり、PBMCによって誘導される非常に少量の、さらには検出不能の量のIL−12の産生が認められた。
2)実質的なレベルのIL−10が両方の生存状態の酵母について認められ、SCB1がScPro1よりも良好な成績を有することを示唆した。
3)IFNγおよびTNFαに関しては、ScPro1およびSCB1酵母の作用下で分泌される量は、種々の試験したプロバイオティック細菌と比較して明らかに少ない。
【0123】
結論:
−PBMCの存在下でのScPro1およびSCB1酵母が、プロバイオティック乳酸杆菌に関して伝統的に認められるものとは異なり、プロ炎症性サイトカインIL−12を誘導しないことは明白である。
−PBMCの存在下でScPro1およびSCB1酵母は実質的なレベルのIL−10(抗炎症性)を誘導する。
−ScPro1およびSCB1酵母の存在下でのPBMCによるIFN−γおよびTNF−αの分泌量はプロバイオティック細菌の存在下での分泌量よりも明らかに少ない。
【0124】
(実施例4)
[マウス化学物質誘発モデル(TNBS)により引き起こした大腸炎に対するScPro1およびSCB1酵母の保護作用の評価]
提案される動物モデルは現在使用されており、酵母の抗炎症作用を測定するために適合させた。
【0125】
6週齢のBalb/cマウスをこの試験において使用した。マウスを実験の1週間前に実験室条件に順化させ、水と食餌は自由に摂取させた。各々の試料を10匹のマウスの群に関して試験した。5%(w/v−1)のTNBSを含む自由摂取の飲料水を7日間与えるサイクルによって大腸炎を誘発させた。TNBSによる大腸炎の誘発の開始前の3日間およびTNBS処置の期間中(7日間)、1日1回強制給餌によって酵母を経口投与した。
【0126】
2つの試験群に加えて、生理食塩水だけを使用する対照群(陰性対照)を含めた。
【0127】
試験したパラメータは、処置後以下のとおりである:
【0128】
−腸炎症の肉眼的評価(Wallaceスコア)。充血、結腸壁の肥厚および潰瘍形成の程度のような炎症の重症度を明らかにする評価基準に依存して、0〜10の範囲でWallaceスコアシステムに従って肉眼的病変を評価するため、各々のマウスの結腸を解剖して顕微鏡下で検査した(倍率:×5)。
【0129】
−炎症の組織学的評価(Amehoスコア)。正確に肛門管から2cmの位置で採取した結腸の切片を使用して、炎症の浸潤度、びらん、潰瘍形成または壊死の存在および病変の深さと表面突起物に依存して0〜6の範囲にわたるAmehoスコアに従って組織学的評価を実施した。分解および腸病変の数量化は、2名の独立したオペレーターによって実施された。
【0130】
−IL−10およびPPARαをコードする遺伝子の発現の定量。これを行うため、全RNAを、製造者の指示に従ってRNeasyキット(Macherey Nagel,Hoerdt,France)を使用して結腸組織から単離した。メッセンジャーRNAの定量は分光光度計を使用して実施した。20〜50単位のRNアーゼ不含DNアーゼI(Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN, USA)により37℃で30分間処理した後、環状一本鎖DNAを合成するためにオリゴ−DTプライマー(Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN, USA)を使用した。メッセンジャーRNAを、インビトロでの試験のためにSYBRグリーンMaster Mix(Applera, Courtaboeuf, France)および特異的ヒトオリゴヌクレオチドを使用して(以下の表B参照)、GeneAmp Abiprism 700装置(Applera, Courtaboeuf, France)によって定量した。検量および非検量対照(calibrated and non-calibrated controls)を各々の試験に含めた。各々の試料を3回測定した。グリーンSYBRの色強度をAbiprism 7000 SDS(Applera, Courtaboeuf, France)ソフトウエアパッケージで分析した。すべての結果を、β−アクチンをコードする遺伝子に対して基準化する。
【0131】
【表4】

【0132】
ScPro1およびSCB1酵母を前述した標準的な予防モデルにおいて試験した。大腸菌を誘発する前の動物の体重の観測は、マウスに投与した酵母の製剤が非常に良好に耐容されることを示した。
【0133】
Wallaceスコアによって評価した腸炎症は、陽性対照と比較してScPro1酵母(活性乾燥酵母、1mg/日)およびSCB1酵母により60%低減した。SCB1酵母も炎症の低減を誘導した。また、Amehoスコアによって評価した腸壊死も、陽性対照と比較してScPro1酵母(瞬間乾燥酵母、1mgまたは100μg/日)により3分の1低減した。
【0134】
単独でまたは一緒に投与したScPro1およびSCB1酵母は、抗炎症性インターロイキンIL−10および核受容体PPARαをコードする遺伝子の発現のレベルを上昇させる。
【0135】
図7〜10は、種々の1日用量のScPro1およびSCB1酵母の優れた肉眼的WallaceおよびAmehoスコア値を明らかに示す。
【0136】
10μgおよび1mgの1日用量での、瞬間乾燥形態のScPro1およびSCB1酵母の肉眼的Wallaceおよび組織学的Amehoスコアをそれぞれ図7および8に示した。
【0137】
図7および8のグラフの各々の柱の数字は以下の要素を表す:
1は、TNBS単独を表し、
2は、TNBS+ScPro1(1mg)を表し、
3は、TNBS+ScPro1(100μg)を表し、
4は、TNBS+SCB1(1mg)を表し、
5は、TNBS+SCB1(100μg)を表す。
【0138】
100μg/日の用量で投与した瞬間乾燥ScPro1酵母は、肉眼的および組織学的レベルで病変を有意に低減することが認められ得る。
【0139】
100μgおよび1mgの1日用量で、瞬間乾燥形態または活性乾燥形態として単独でまたは組合せて摂取されたScPro1およびSCB1酵母の肉眼的Wallaceスコアおよび組織学的Amehoスコアをそれぞれ図9および10に示す。
【0140】
図14および15は、それぞれ、腸細胞における抗炎症性インターロイキンおよびPPARα核受容体をコードする遺伝子の発現レベルを示す。
【0141】
図9、10、14および15のグラフの各々の柱(ヒストグラム)の数字は以下の要素を表す:
1は、TNBS単独を表し、
2は、TNBS+瞬間乾燥ScPro1(100μg)を表し、
3は、TNBS+活性乾燥ScPro1(10μg)を表し、
4は、TNBS+活性乾燥SCB1(100μg)を表し、
5は、TNBS+活性乾燥ScPro1(1μg)を表し、
6は、TNBS+活性乾燥ScPro1(100μg)を表し、
7は、TNBS+活性乾燥ScPro1(100μg)+SCB1(100μg)を表す。
【0142】
結論:
活性乾燥形態のScPro1は肉眼的レベルで病変を有意に低減すること、ならびにScPro1とSCB1の組合せにより、肉眼的および組織学的レベルの両方で相乗的抗炎症作用が存在することが認められ得る。
【0143】
ScPro1およびSCB1は、100μgの用量で、抗炎症性インターロイキンIL−10をコードする遺伝子の発現レベルをそれぞれ2.9倍および3.1倍に上昇させた。ScPro1+SCB1の組合せ(ヒストグラムNo.7)はこの発現レベルを2.7倍に上昇させる(図14)。
【0144】
ScPro1およびSCB1は、100μgの用量で、PPARα核受容体をコードする遺伝子の発現レベルをそれぞれ1.5倍および1.6倍に上昇させた。ScPro1+SCB1の組合せ(ヒストグラムNo.7)はこの発現レベルを1.7倍に上昇させる(図15)。
【0145】
(実施例5)
[化学物質誘発性炎症のマウスモデルでの腸におけるCandida albicansのコロニー形成へのScPro1およびSCB1酵母の影響の検討]
この試験は、化学物質誘発性大腸炎のマウスモデルにおける病原性酵母Candida albicansの腸コロニー形成およびその炎症増強作用への、プロバイオティック型のScPro1およびSCB1酵母の投与の影響を測定することを目的とする。
【0146】
試験する酵母は瞬間乾燥形態である。
【0147】
・実験条件:
Balb/c株の雌性マウスは4〜6週齢である。0日目から14日目まで、化学物質による炎症の誘発のため、動物に飲料水中1.5%のDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)を与えた。
【0148】
3つの実験を実施した。
【0149】
最初の実験では、5日目に、PBS(リン酸緩衝液)200μL中5×10のScPro1酵母細胞をカニューレによってマウスに強制給餌した。この操作を19日間毎日反復した。0日目に、PBS200μL中5×10のC. albicans SC5314株の酵母細胞をカニューレによってマウスに強制給餌した。
【0150】
2番目の実験では、0日目に、PBS200μL中5×10のC. albicans SC5314株の酵母細胞をカニューレによってマウスに強制給餌した。4日後、マウスのバッチを、PBS200μL中5×10のScPro1酵母細胞の強制給餌に供した。この操作を14日間毎日反復した。
【0151】
3番目の実験では、0日目に、PBS200μL中5×10のC. albicans SC5314株の酵母細胞をカニューレによってマウスに強制給餌した。1時間後、マウスのバッチを、PBS200μL中5×10のScPro1酵母細胞の強制給餌に供した。この最後の操作を14日間毎日反復した。
【0152】
動物(実験1、2および3から)を以下の点に関して毎日観測した:
−糞便の硬さ、肛門出血、体重(臨床スコア)、
−PBS1ml中のホモジナイズした糞便1gの逆培養。各々10μLをCandida選択培地に播種した;37℃で24時間の培養後、C. albicans(青色に着色)およびS. cerevisiae(緑色に着色)のCFUを計数した。
−試験の終了時に動物を犠死させた。直ちに心臓穿刺によって血液を採取し、室温で傾瀉して、遠心分離によって血清を回収し、−80℃で保存した;結腸を採取し、4つの切片に分けて、そのうち3つを深凍結し、1つを組織学的試験のために固定液(4%PFA)に入れた。
【0153】
・結果:
図3に見られるように、最初の実験(予防作用試験)では、化学物質誘発性大腸炎のこのモデルにおいて、DSSの投与は4日目からC. albicansによる腸粘膜のコロニー形成を有意に上昇させることが認められた(DSS+Ca)。非常に興味深いことに、19日間のScPro1プロバイオティック酵母の投与は、DSSによって誘発されるC. albicansのコロニー形成を有意に低減することが認められる。
【0154】
図4に示すように、2番目の実験(治療試験)では、ScPro1またはSCB1プロバイオティック酵母の投与はDSSによって誘発されるコロニー形成を低減することが認められる。さらに、ScPro1酵母の作用は、14日目にDSSによる処置を停止した後も可視的である。
【0155】
・結論:
ScPro1酵母またはSCB1酵母の投与が、予防的条件下および治療条件下の両方で、C. albicansのコロニー形成を有意に低減することは明らかである。この保護作用は処置を停止した後も持続することに留意すべきである。
【0156】
(実施例6)
[クローン病に罹患している患者の回腸生検から単離されたE. coli病原性株の接着性および侵襲力に対するScPro1またはSCB1酵母または誘導体の阻害作用の検討]
生存状態の酵母ScPro1、SCB1および誘導体の、クローン病に罹患している患者の回腸生検から単離されたE. coli病原性株の接着性および侵襲力へのその阻害作用に関して試験した。
【0157】
クローン病(CD)に罹患している患者の回腸生検から単離された、接着性−侵襲性E. coliの意味でAIECと称される、E. coli株は、腸上皮細胞に接着し、侵襲することができる。
【0158】
クローン病に罹患している患者の慢性回腸病巣から単離されたLF82 E. coli株は、侵襲性細菌病原体のすべての特徴を有する。LF82株の接着−侵襲表現型の特徴づけならびにE. coli、赤痢菌属およびサルモネラ属において既に決定されている侵襲の遺伝的決定基の不在により、AIECと称される、クローン病に関連し得るE. coliの新しい病原性群の存在が定義されるに至った。マウスまたはヒトマクロファージによる食作用後、AIEC LF82株は、宿主細胞の完全性を保存しながら、広い空胞内で生存し、増殖する。感染後、マクロファージは有意の割合のTNFαを分泌する。AIEC株の有病率は、CDに罹患している患者の回腸病巣において36.4%である。
【0159】
真核細胞への細菌の接着工程は、アドヘシンと呼ばれる細菌の表面に存在するリガンドと、宿主の上皮細胞の表面で発現されるタンパク質、糖タンパク質または糖脂質性の受容体との間の特異的相互作用から生じる。細菌に関しては、1型線毛のFimH接着が腸上皮細胞へのAIEC細菌の接着に関与することが示された。細菌性FimHアドヘシンは、マンノース残基に富み、CDに罹患している患者の90%において回腸レベルで異常に高発現される糖タンパク質であるCEACAM6腸細胞受容体(CD66cまたはNCAとも称される)を認識する。
【0160】
実験条件:
培養した腸上皮細胞へのその接着性および侵襲力に関して特徴づけられたAIEC LF82株を原型株として使用した。
【0161】
AIEC LF82株で得られた結果を確認するため、この試験をCDに罹患している患者から単離された10のAIEC株に拡大した。
【0162】
マンノースとは独立した機構(Afa/Drアドヘシン)によって上皮細胞に接着するDAEC(びまん付着性大腸菌)C1845 E. coli株を、陰性対照として使用する。
【0163】
凝集試験
生存状態のScPro1およびSCB1酵母を使用して、AIEC細菌の存在下で、またはBoudeau et al. (2001 Mol Microbiol. 39:1272-84)に述べられている手順に従ってAIEC LF82株から調製した1型線毛の精製抽出物の存在下で、定量的凝集試験を実施した。規定酵母濃度および可変濃度の細菌または精製1型線毛を用いて凝集指数を決定した。
【0164】
凝集が認められないマンノプロテイン型の酵母画分の場合は、1型線毛の結合能力の測定をELISA手法によって実施した。
【0165】
これらの試験は通常マイクロプレートで実施される。酵母画分をマイクロプレート上に固定する。様々な希釈の精製1型線毛を酵母画分と接触させる。洗浄後、ウサギで得られた抗1型線毛抗体で1型線毛を検出する(Boudeau et al., 2001)。洗浄後、ペルオキシダーゼと結合した二次抗体を使用する。定量は、ペルオキシダーゼ(H)および発色剤(テトラメチルベンジジン)の基質を用いて、450ナノメートルの光学密度でマイクロプレートを読み取ることによって実施される。
【0166】
[ScPro1またはSCB1酵母により、腸上皮細胞の表面で発現されるCEACAM6受容体とAIEC細菌の相互作用を阻害するための試験]
使用する細胞:
インビトロ阻害試験(プレインキュベーションおよび共インキュベーション)のために、CEACAM6受容体を強く発現する、未分化T84腸上皮細胞を保持した。T84細胞を、50%Ham−F12(Life Technology)および熱によって脱補体化した10%ウシ胎仔血清を添加したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)基礎培地中37℃、5%CO下で培養した。この培地に、1%非必須アミノ酸(Life Technology)、1%グルタミン(Life Technology)、200U/Lのペニシリン、50mg/Lのストレプトマイシン、0.25mg/LのアンホテリシンBおよびMEM(最小必須培地)培地(Life Technology)用の1%のX−100ビタミン混合物を添加した。細胞を4×10細胞/ウェル/mlで播種し、37℃、5%CO下で48時間インキュベートした。次にT84細胞のカーペットをPBSで洗浄し、その後感染培地(DMEM/F12+10%FCS)1mlを各々のウェルに添加した。ルリア−ベルタニブロス(LB)中37℃でのAIEC LF82株の一晩培養物から、PBS中0.1のOD620を有する細菌懸濁液を調製した。感染培地中0.1のOD620の細菌懸濁液25μLを添加することにより、T84細胞を1細胞につき10細菌の感染多重度(MOI)に感染させた。24ウェルプレートを、CO富化大気下にて37℃で3時間インキュベートした。細菌の接着および残存侵襲が以下で述べるように達成される。
【0167】
CEACAM6を発現しないCHO−K1細胞およびCEACAM6を安定に発現するこれらの同じ遺伝的に修飾された細胞(CHO−K1/CEACAM6)による実験を行なった。CHO−K1細胞を、DMEM/F12培地、5%ウシ胎仔細胞血清、1%L−グルタミン、200U/Lのペニシリン、50mg/Lのストレプトマイシンおよび0.25mg/LのアンホテリシンB中で培養した。CHO−K1/CEACAM6細胞は、DMEM/F12培地、5%ウシ胎仔血清、1%L−グルタミンおよび600μg/mlのハイグロマイシン中で培養した。細胞を2×10細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種した。37℃で7〜8時間のインキュベーション後、培地を新しい培養培地と交換し、CEACAM6の発現を誘導するために5mM酪酸ナトリウムを添加する。トランスフェクトした細胞によるCEACAM6タンパク質の発現を観測するためにウエスタンブロット法を実施した。
【0168】
37℃で20〜24時間のインキュベーション後、細胞を漸増濃度の瞬間乾燥ScPro1酵母株と共に1時間インキュベートし(プレインキュベーション実験)、次に、先にT84細胞で実施した実験において使用した細菌/酵母比を観測するため、それらを20のMOI(4×10細菌/ウェル)で感染させた。37℃で3時間のインキュベーション後、以下で述べるように酵母の不在下または存在下で接着細菌を計数した。
【0169】
もう1つの実験は、疾病患者からの手術部分を使用した。クローン病に罹患している3名の患者の回腸生検からの腸細胞をPBS中で洗浄し、次に0、1.25、2.5または5mg/mlの瞬間乾燥ScPro1酵母株の存在下に、DMEM培地1ml、20%ウシ胎仔血清中で、2mlのエッペンドルフ管においてプレインキュベートした。管を37℃で15分間、回転による撹拌下に置き、その後腸細胞を、酵母の存在下でAIEC LF82株の一晩LB培養物50μLに感染させた。撹拌しながら3時間のインキュベーションを実施した。腸細胞をPBS中で2回洗浄し、次にスライドガラスと薄板の間に置いて、位相差顕微鏡で観察した。腸細胞の刷子縁に付着している細菌の計数を酵母の存在下または不在下で実施した。CEACAM6受容体における1型線毛の認識を利用しないAIEC細菌の基礎接着レベルを測定するため、無線毛突然変異型LF82−δfimHに関しても実験を行った。また、抗CEACAM6抗体の存在下で接着阻害実験を実施した。
【0170】
腸上皮細胞T84への細菌の接着および残存侵襲を測定するために使用した手順
細胞カーペットをPBS1mlで4回洗浄し、次に蒸留水中の1%Triton X−100 500μLと共に室温で5分間インキュベートすることによって細胞を溶解した。溶解産物を希釈し、その後、接着細菌数に対応するCFUの数を測定するため、LB−寒天ゲロースに塗布した。
【0171】
侵襲性細菌を計数するため、3時間の感染後に細胞カーペットをPBSで洗浄し、次に、細胞外細菌を破壊するため、100μg/mlのゲンタマイシンを含む感染培地1mlと共に1時間インキュベートした。細胞を溶解し、連続希釈して、LB−寒天ゲロースに塗布した後、侵襲性細菌を計数した。
【0172】
AIEC LF82株の接着および侵襲レベルを、酵母または酵母誘導体による処理に供していないAIEC LF82株に感染させた細胞と比較して分析した。
【0173】
すべての結果をR比によって表している:
R=ScPro1酵母の存在下での接着または侵襲性細菌の数/処理していない接着または侵襲性細菌の数。
【0174】
手順1:共インキュベーションモデル
接着および侵襲試験において、T84細胞および細菌懸濁液を前述したように調製した。酵母または酵母誘導体を定められた濃度でPBSに懸濁し、次にこの懸濁液25μLをT84細胞の感染培地(1ml)に添加した。その後直ちに細胞をMOI=10で細菌株に感染させた。細胞の存在下で、細菌/インキュベートした酵母の懸濁液をホモジナイズし、24ウェルプレートを37℃で3時間インキュベートした。細菌株の接着および侵襲レベルを、感染の間に酵母または酵母抽出物の不在下と存在下で前述したように測定した。酵母の不在下での細菌接着または侵襲レベル(100%)と酵母の存在下での細菌接着または侵襲レベルとの比率は、細菌の残存接着および侵襲レベルを示す。
【0175】
手順2:プレインキュベーションモデル
接着および侵襲試験において、T84細胞および細菌懸濁液を前述したように調製した。酵母または酵母誘導体の懸濁液を25μLの容量でT84細胞の感染培地(1ml)に添加した。酵母懸濁液をホモジナイズし、細胞の24ウェルプレートを37℃で1時間インキュベートした。このインキュベーション後、酵母の存在下で、T84細胞をMOI=10で細菌株に感染させ、これを37℃で3時間実施した。酵母の不在下での接着または侵襲を100%として、残存接着または侵襲パーセンテージを測定するため、酵母の存在下または不在下で接着および侵襲性細菌の計数を前述したように実施した。
【0176】
−CEACAM6の発現の確認
CEACAM6の存在を確認し、発現量を評価するため、培養細胞の各々のバッチに関して免疫細胞化学的標識化を実施した。細胞を滅菌ガラス薄板上で培養した。細胞カーペットをPBSで洗浄し、次にpH7.4の3%パラホルムアルデヒドにより室温で10分間固定した。細胞を、PBS−5%ウマ血清で1/100に希釈した抗CEACAM6モノクローナル抗体(クローン9A7、Genovac)と共に湿潤雰囲気中で1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を、PBS−5%ウマ血清で1/500に希釈した蛍光色素(FITC−抗マウス、Zymed)結合二次抗体と、湿潤雰囲気中で1時間接触させた。ガラス薄板をMoewiolでスライドガラス上に固定し、蛍光顕微鏡で観察した。
【0177】
−細胞傷害性の不在の確認
種々の用量の酵母によって誘導される細胞傷害性が存在しないことを、酵母/細胞またはFDL/細胞インキュベーション培地に乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を添加することによって試験した(Glasser et al., 2001)。
【0178】
結果:
LF82に関する凝集試験
培養ScPro1もしくはSCB1酵母(=新鮮形態)または乾燥形態(瞬間乾燥もしくは凍結乾燥形態)の前記酵母の存在下でLF82に関して得られた凝集力価を以下の表に要約しており、これは3〜5回の独立した実験の結果である:
【0179】
【表5】

【0180】
確実に、乾燥酵母、瞬間乾燥ScPro1および瞬間乾燥SCB1により、LF82株に関する良好な凝集結果が得られる。
【0181】
これらの酵母に関して、方法、特に乾燥方法の、その凝集能に対する良好な影響の有意性が示された。
【0182】
精製線毛に関する凝集試験
培養ScPro1酵母(=新鮮形態)または瞬間乾燥形態のScPro1酵母および(乾燥)SCB1酵母の存在下で精製線毛に関して得られた凝集力価を以下の表に要約する:
【0183】
【表6】

【0184】
この実験は、線毛−酵母相互作用が実際上凝集のために必要であることを確認する。線毛はマンノース構造を認識する性質を有するため、後者は、酵母上で認識され、観察された凝集現象に関与する構造である。最も良好な結果は、瞬間乾燥ScPro1酵母で得られる。
【0185】
ScPro1酵母のマンノプロテイン画分への1型線毛の結合能力を測定するための試験の結果
図18は、AIEC LF82株からの精製1型線毛が酵母マンノプロテインに特異的に結合することを明らかに示す。これらのマンノプロテイン(EL05およびEL06)の調製方法(熱的または酵素的方法)が、線毛の親和性定数にわずかに影響を及ぼすことが認められる。
【0186】
上皮細胞の表面で発現されるCEACAM6受容体とAIEC細菌との相互作用の阻害の結果
(1)共インキュベーションモデルにおいてT84腸上皮細胞へのAIEC LF82株の接着および侵襲を阻害する能力についての酵母または酵母抽出物の試料のスクリーニングの結果
瞬間乾燥ScPro1酵母(3.09×10酵母/mg)、乾燥ScPro1酵母(1.86×10酵母/mg)および瞬間乾燥SCB1酵母(5.83×10酵母/mg)ならびにEL05酵母のマンノプロテイン(乾燥形態)を検討した。
【0187】
比較として、Ultra−levure(登録商標)(Biocodex、2.054×10酵母/mg)を追加した。
【0188】
共インキュベーションモデルにおいて同じ数の酵母を用いた酵母の阻害力の比較
PBSで洗浄し、7,500rpmで15分間遠心分離した後、酵母試料をPBS中4×10酵母/mlの濃度で再懸濁した。PBS中での酵母の希釈は、1/2、1/10、1/20および1/100で実施した。
【0189】
3つの独立した実験を、手順1を用いて実施した。図19Aおよび19Bの結果(残存接着および残存侵襲)は、残存接着率および残存侵襲率の平均値として示しており、誤差バーは平均値の標準誤差に相当する。
【0190】
図19Aおよび19Bは、以下の結果が得られたことを示す:
【0191】
接着:
−瞬間乾燥ScPro1および乾燥ScPro1酵母は、T84細胞へのLF82株の接着を用量依存的に強力に阻害する。阻害は、瞬間乾燥ScPro1酵母については5×10酵母/mlから、乾燥ScPro1酵母については5×10酵母/mlから有意である。
−瞬間乾燥SCB1酵母は、その他の2つの酵母試料ほど強力に接着を阻害せず、1×10酵母/mlで45.7%の残存接着であったのに対し、瞬間乾燥ScPro1酵母および乾燥ScPro1酵母についての残存接着はそれぞれ18.7%および8%である。
【0192】
侵襲:
−瞬間乾燥ScPro1酵母は、1×10酵母/mlからAIEC LF82株によるT84細胞の侵襲を有意に阻害する。1×10酵母/mlで、残存侵襲率は16.3%である。
−乾燥ScPro1および瞬間乾燥SCB1酵母については、阻害作用はより遅延性であり、それぞれ1×10酵母/mlおよび5×10酵母/mlである。
【0193】
共インキュベーションモデルでのEL05マンノプロテインによる阻害試験
EL05酵母マンノプロテインを160mg/mlの濃度でPBSに懸濁した。PBS中で1/2、1/4、1/8、1/40の連続希釈を実施し、マンノプロテインの各々の懸濁液25μLを、手順1を用いて感染培地に添加した。
【0194】
3つの独立した実験を実施した。図20Aおよび20Bに示す結果(残存接着および残存侵襲)は、残存接着率および残存侵襲率の平均値として示しており、誤差バーは平均値の標準誤差に相当する。
【0195】
これらの図は、共インキュベーションモデルにおいてEL05酵母マンノプロテインがT84細胞へのAIEC LF82株の接着および侵襲を用量依存的に阻害する能力を有することを示す。
【0196】
(2)プレインキュベーションモデルにおいてT84腸上皮細胞へのAIEC LF82株の接着および侵襲を阻害する能力についての酵母または酵母生成物の試料のスクリーニング
共インキュベーションモデルについて使用したのと同じ酵母および画分の試料をこのプレインキュベーションモデルで使用した。
【0197】
プレインキュベーションモデルにおいて同じ数の酵母を用いた酵母の阻害力の比較
PBSで洗浄し、7,500rpmで15分間遠心分離した後、酵母試料をPBS中4×10酵母/mlの濃度で再懸濁した。PBS中での酵母の希釈を1/2、1/10、1/20および1/100で実施した。3つの独立した実験を、手順2を用いて実施した。
【0198】
図21Aおよび21Bに示す結果(残存接着および残存侵襲)は、残存接着率および残存侵襲率の平均値として示しており、誤差バーは平均値の標準誤差に相当する。
【0199】
T84細胞を酵母で前処理することにより、瞬間乾燥ScPro1および乾燥ScPro1株については5×10酵母/mlの用量からLF82株の接着の有意の阻害を得ることが可能である。しかし、この用量で、瞬間乾燥SCB1酵母では有意の阻害が認められなかった。
【0200】
T84細胞を酵母で前処理することにより、乾燥ScPro1酵母株に関して1×10酵母/mlの用量からLF82株の侵襲の阻害を得ることが可能である。
【0201】
5×10酵母/mlの用量から、3つの酵母試料はLF82株の侵襲の有意の低下を誘導する。
【0202】
プレインキュベーションモデルでのEL05マンノプロテインによる阻害試験
EL05酵母のマンノプロテインを160mg/mlの濃度でPBSに懸濁した。PBS中で1/2、1/4、1/8および1/40の連続希釈を実施し、マンノプロテインの各々の懸濁液25μLを、手順2を用いて感染培地に添加した。3つの独立した実験を実施した。図22Aおよび22Bの結果(残存接着および残存侵襲)は、残存接着率および残存侵襲率の平均値として示しており、誤差バーは平均値の標準誤差に相当する。
【0203】
EL05マンノプロテインは、2mg/mlの濃度からLF82株の接着および侵襲の用量依存的阻害を可能にする。
【0204】
プレインキュベーションモデルでのCEACAM6受容体を発現するまたは発現しないCHO−K1細胞へのAIEC LF82株の接着に対する酵母による阻害試験の結果
先に記述した手順2を用いて5つの独立した実験を実施した。
【0205】
図23は、25μg/mlの酵母とのプレインキュベーションから、CEACAM6/CHO細胞に関して認められたAIEC LF82株の接着の有意の阻害を示す。用量依存的阻害作用がこれらの細胞に関して認められる。
【0206】
AIEC LF82株の接着はCHO−K1細胞に対しても認められ、これは確実に、これらの細胞の表面で発現されるマンノシル化タンパク質の発現に起因する。しかし、瞬間乾燥ScPro1酵母とLF82株のプレインキュベーションは、非トランスフェクト細胞への接着が極めて有意に阻害されることを可能にする。
【0207】
これは、すなわち、酵母が、細胞によって発現されるCEACAM6受容体へのLF82株の接着に干渉することを確認する。
【0208】
[プレインキュベーションモデルでの、クローン病に罹患している患者の腸細胞の刷子縁におけるAIEC LF82株の接着の阻害の結果]
図24は、実験の間に得られた平均接着指数を示し、それらは、漸増濃度の瞬間乾燥ScPro1酵母(mg/ml)の存在下もしくは不在下でまたは抗CEACAM6抗体の存在下で算定した。この図の結果によれば、瞬間乾燥ScPro1酵母株が存在する場合、AIEC LF82株の有意且つ用量依存的な減少が患者の腸細胞の刷子縁において報告される。酵母の5mg/mlの用量で、AIEC LF82株の残存接着は、抗CEACAM6抗体の存在下で認められたもの、または1型線毛を有さない突然変異株に関して認められたものと同様である。
【0209】
結論:
この試験から、以下のことが明らかになる:
−ScPro1およびSCB1酵母は、特に瞬間乾燥形態で、LF82株の凝集に対して強力な作用を有する;
−ScPro1およびSCB1酵母は、E. coliによる、ヒト上皮細胞(T84、回腸生検腸細胞)およびヒトCEACAM6受容体を発現するCHO細胞の接着および侵襲をインビトロで用量依存的に阻害することができる;
−マンノプロテインは、E. coliによる、ヒト上皮細胞(T84、回腸生検腸細胞)およびヒトCEACAM6受容体を発現するCHO細胞の接着および侵襲をインビトロで用量依存的に阻害することができる;
−インビトロで、ScPro1酵母は、強い勢力で、細胞の約80%を細菌感染から部分的に保護することができる。
【0210】
(実施例7)
[インビトロで培養したヒト腸上皮細胞における、IL−10およびPPARαをコードする遺伝子の発現へのScPro1、SCB1酵母および酵母誘導体の調節的役割の検討]
単独でまたは組み合わせて摂取されたScPro1およびSCB1酵母、および/または酵母画分のプロバイオティック性、ならびに特定腸受容体との相互作用によって炎症の誘発を阻害するそれらの能力を検討した。
【0211】
インビトロ試験
本発明による酵母および酵母誘導体の作用を、特に、2つの大腸癌細胞株CaCo−2(ATCC HTB−37)およびHT−29(ATCC HTB−38)に関するインビトロでの分析により、腸上皮細胞の種々の受容体に関して試験した。
【0212】
このために、以下の方法に従ってRNAを抽出することにより転写分析を実施した。
【0213】
細胞をトリゾールに溶解する。可溶性画分に関して、10Uのリボヌクレアーゼ阻害剤および10Uのデオキシリボヌクレアーゼを含む溶液200μLを添加することによってデオキシリボヌクレアーゼ工程を実施する。
【0214】
RNA10μgを、200Uの逆転写酵素、ジチオトレイトール、オリゴ−dT15およびデオキシリボヌクレオチドの存在下で逆転写した。
【0215】
cDNAを、特に以下の遺伝子:IL−10およびPPARαに関して、特異的センスおよびアンチセンスプライマーを使用して競合物質と同時に公知のポリメラーゼ連鎖反応手法(PCR)によって増幅する。
【0216】
1.25UのAmpli Taq Gold 5000の存在下で実施した40サイクルの増幅および3%アガロースゲル上での種々の試料の移動後、バンドの強度を画像分析装置によって測定する。
【0217】
結果を、内部標準であるβ−アクチンの10分子についてのmRNA分子の数で表す。
【0218】
図11に分類した結果は、酵母または誘導体を抗炎症性タンパク質IL−10をコードする遺伝子の腸上皮細胞と接触させた1時間後(参照番号A)および3時間後(参照番号B)の、mRNA発現値を含む。
【0219】
この図11において、以下の参照番号は、参照シグナルの4倍以上の初期発現レベルを示した被験酵母/酵母誘導体を表す:
3は、Saccharomyces cerevisiae酵母を表し、
5は、本発明のScPro1酵母を表し、
6は、Saccharomyces cerevisiae酵母の抽出物を表し、そして
12は、Saccharomyces cerevisiae酵母のRNA画分を表す。
【0220】
これらの結果は、実際に、本発明によるSaccharomyces cerevisiae酵母および酵母の誘導体が、1時間後に、抗炎症性サイトカイン、IL−10をコードする遺伝子の早期発現を誘導することを示す。
【0221】
実際上、未処置対照と比較して、本発明による酵母および誘導体についてのmRNA発現は縦座標の軸で4以上であり、この値は既に卓越した早期発現シグナルに対応する。
【0222】
他の結果を図13に示す。この図は、酵母誘導体の与えられる量に依存した、IL−10タンパク質をコードする遺伝子のmRNA発現の調節を示す。
【0223】
この図13では、1時間後(1h)と3時間後(3h)に発現を測定した。以下の参照番号で表される、本発明による酵母およびSaccharomyces cerevisiae抽出物の発現が認められる:
5は、本発明によるScPro1酵母を表し、
6は、Saccharomyces cerevisiae酵母抽出物を表し、
8は、Saccharomyces cerevisiaeの壁β−グルカンを表し、
9は、Saccharomyces cerevisiae酵母の酵母細胞壁マンノプロテインを表し、
11は、Saccharomyces cerevisiae酵母のDNA画分を表し、そして
12は、Saccharomyces cerevisiae酵母のRNA画分を表す。
【0224】
種々の濃度の酵母および/または誘導体に関して発現を測定した。
【0225】
図13における柱の色が濃いものほど、酵母/誘導体の濃度が高い。
【0226】
この図13の結果は、本発明によるSaccharomyces cerevisiae酵母抽出が抗炎症性サイトカイン(IL−10)のmRNAを早期に誘導することを示す。
【0227】
図12に分類した結果は、酵母または誘導体を、核受容体PPARαをコードする遺伝子の腸上皮細胞と接触させた1時間後(参照番号A)および3時間後(参照番号B)のmRNA発現値を含む。
【0228】
この図12において、以下の参照番号は、参照シグナルの3倍以上の遅延発現レベルを示した被験酵母/酵母誘導体を表す:
1は、活性乾燥形態の本発明によるSaccharomyces cerevisiae ScPro1酵母を表し、
4は、Saccharomyces cerevisiae酵母を表し、
5は、活性乾燥形態の本発明によるSaccharomyces cerevisiae ScPro1酵母を表し、
8は、Saccharomyces cerevisiae酵母壁の画分を表し、
9は、Saccharomyces cerevisiae酵母の壁β−グルカンの画分を表し、
10は、Saccharomyces cerevisiae酵母の酵母細胞壁マンノプロテインの画分を表し、
11は、Saccharomyces cerevisiae酵母のDNA画分を表し、そして
12は、Saccharomyces cerevisiae酵母のRNA画分を表す。
【0229】
これらの結果は、実際に、本発明によるSaccharomyces cerevisiae酵母および酵母の誘導体が、3時間後に、核受容体PPARαをコードする遺伝子の発現を遅延的に誘導することを示す。
【0230】
実際上、本発明による酵母および誘導体についてのmRNA発現は、縦座標の軸で3以上であり、この値は既に卓越した遅延型発現シグナルに対応する。
【0231】
(実施例8)
[クローン病に罹患している患者の生検から単離されたヒト腸上皮細胞における、IL−10およびTNF−αをコードする遺伝子の発現への酵母および酵母誘導体の調節的役割のエクスビボ試験]
サイトカイン、IL−10(抗炎症性)およびTNF−α(プロ炎症性)の分泌への酵母および/または酵母誘導体の影響を、クローン病に罹患しているまたは罹患していない患者の生検に関してエクスビボで試験した。
【0232】
腸生検を、クローン病に罹患しているまたは罹患していない患者から採取し、5%COを含む大気中37℃で、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したHBSS−CMF培地中に24時間置いた。洗浄後、生検をRPMI 1640培地中で酵母または酵母誘導体と4時間接触させた。ELISAによる分析のために上清を回収した。次にmRNAまたは全タンパク質を抽出するために生検を溶解した。
【0233】
サイトカインの分泌の確認を、細胞培養物の上清およびELISAによって抽出したタンパク質の免疫学的分析によって実施した。沈降緩衝液(v/v;75mMトリス、pH6.8;5%グリセロール;0.25%ブロモフェノールブルー;2%SDS、5%β−メルカプトエタノール)中95℃で5分間変性させたタンパク質を沈降させ(50μg)、10%ポリアクリルアミドゲル上で分解した。移動後、セミドライエレクトロトランスファー(Hoefer TE77、Amersham Pharmacia Biotech, Orsay, France)により16Vで1時間かけて、タンパク質をPVDF膜(Hybond-P, Amersham Pharmacia Biotech, Orsay, France)に移した。PPARαおよびIL−10を、1/500に希釈したヒト抗PPARαおよび抗IL−10ウサギポリクローナル抗血清によって検出し、Gel Analyst(CLARA VISION,Paris,France)ソフトウエアパッケージを用いてBiomax−MRフィルム(Kodak)での化学発光(E.C.L.Amersham Pharmacia Biotech, Orsay, France)によって定量した。
【0234】
図16および17は、それぞれIL−10およびTNF−αに関して得られた結果を示す。縦座標の軸は、pg/mlで測定したサイトカインの量を示す。各々の点は、急性期のクローン病に罹患している患者(黒い円)、クローン病の寛解期の患者(灰色の円)および健常被験者(白い円)に関する生検の測定に対応する。バーは測定の平均値を指示する。
【0235】
これらの図において:
−1は、活性乾燥形態の本発明によるSaccharomyces cerevisiae ScPro1酵母を表し、
−3は、Saccharomyces cerevisiae酵母を表し、
−8は、Saccharomyces cerevisiae酵母壁の画分を表し、
−11は、Saccharomyces cerevisiae酵母のDNA画分を表し、そして
−12は、Saccharomyces cerevisiae酵母のRNA画分を表す。
【0236】
図16において、本発明によるScPro1酵母は、健常患者および生理的食塩水だけの存在下で実施した測定に対応する陰性対照(−)と比較して、クローン病に罹患しているまたは寛解期の患者の上皮細胞による抗炎症性サイトカイン、IL−10の分泌を2倍に増加させる。
【0237】
図17は、本発明によるScPro1酵母が、クローン病に罹患しているまたは寛解期の患者の生検から単離された腸細胞によるプロ炎症性サイトカイン、TNF−αの分泌の増加を生じさせないことを示す。ScPro1またはその他の試験した酵母または酵母誘導体はいずれも、TNF−αの分泌を誘導しなかった。
【0238】
(実施例9)
[結腸直腸拡張のマウスモデルにおける酵母および酵母誘導体の鎮痛特性の検討]
(1)装置および方法
体重175〜200gの雄性Sprague Dawleyラット(Charles River,l’Arbresle,France)をこれらの試験において使用する。ラットを、実験の1週間前に動物飼育室条件に順化させる。1ケージにつき5匹の動物で飼育し、水と食餌は自由に摂取させる。すべての試験は、国際疼痛学会の研究および倫理的問題のための委員会(Committee for Research and Ethical Issues of the International Association for the Study of Pain)[6]の推奨に従って実施する。動物の不快を回避するまたは最小限に抑えるために注意を払う。
【0239】
(2)結腸の感受性の評価
動物の侵害受容を、行動応答を誘発するために必要とされる結腸内圧を測定することによって評価する。この圧は、結腸に導入されたバルーンの膨張による結腸直腸拡張によって生じる。行動応答は、動物の身体の後方部分の上昇および重症収縮に対応する明らかに目に見える腹部収縮によって特徴づけられる[7〜9]。ラットを揮発性麻酔薬(2%イソフルラン)で麻酔し、バルーン(Bourdu [8]によって述べられている手順に従って準備した)を、肛門から7cmの位置で、できるだけ侵襲性の少ない方法で直腸内経路によって挿入する。カテーテルを接着テープで尾の基部に取り付ける。5分後、ラットをプレキシガラス箱の中央に置き、カテーテルを電子バロスタット(Distender Series IIRTM,G & J Electronics)に接続する。疼痛反射の誘発までまたは80mmHgの限界圧に達するまで、漸増圧を継続的に適用する。
【0240】
(3)投与化合物
酵母を1日1回15日間、強制給餌によって投与した。
【0241】
結腸直腸拡張の30分前に、1mg/kgの用量で腹腔内注射したモルヒネを陽性対照として使用する。
【0242】
8つの群のラットを検討した:
−PBSを摂取した10匹の対照ラット、
−瞬間乾燥ScPro1(100μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号1)、
−活性乾燥ScPro1株(100μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号2)、
−SCB1株(100μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号3)、
−瞬間乾燥ScPro1株(50μg/日)+瞬間乾燥SCB1株(50μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号4)、
−モルヒネの1回注射(1mg/kg、拡張の30分前)を受けた10匹のラット(参照番号5)。
【0243】
(4)結果
図26は、一方では、単独で(参照番号1)またはSCB1株と組み合わせて(参照番号4)摂取された瞬間乾燥形態のScPro1酵母、および他方では、活性乾燥形態のScPro1酵母(参照番号2)が痛覚閾値を上昇させ、それにより、何も投与しなかったラットと比較して内臓痛の知覚を有意に低下させることを示す。
【0244】
以下の結果は、対照と比較してmmHgで示している:
−74.5±3.07対53.6±3.9、瞬間乾燥ScPro1株(参照番号1)に対してp=0.07、
−66.5±3.36対53.6±3.9、瞬間乾燥ScPro1株とSCB1株の組合せ(参照番号4)に対してp=0.04、
−72±2.59対53.6±3.9、活性乾燥ScPro1株(参照番号2)に対してp<0.01。
【0245】
他方で、この作用は、72±2.59mmHgの痛覚閾値を有する、lmg/kgの用量で使用したモルヒネ(参照番号5)によって誘導されるものと同等である。
【0246】
瞬間乾燥SCB1株も、健常ラットにおいて70.6±3.10mmHg、p=0.026の鎮痛作用を誘導する。
【0247】
[内臓過敏症を有するラットにおいて]
(1)装置および方法
体重175〜200gの雌性Sprague Dawleyラット(Charles River,l’Arbresle,France)を使用した。ラットを、実験の1週間前に実験室条件に順化させた。1ケージにつき5匹の動物で飼育し、水と食餌は自由に摂取させた。すべての試験は、国際疼痛学会の研究および倫理的問題のための委員会(Committee for Research and Ethical Issues of the International Association for the Study of Pain)[6]の推奨に従って実施した。動物の不快を回避するまたは最小限に抑えるため生活環境に関して多大の注意を払った。
【0248】
(2)酪酸塩での洗浄による結腸の過敏症の誘導
各々の洗浄に関して、カテーテル(2mmフォガーティ)を肛門から7cmの位置で結腸に導入し、動物に、1日2回3日間にわたって中性pH(pH6.9)の200mM酪酸ナトリウム溶液1mlを投与した。「健常」動物には食塩水を与えた。
【0249】
(3)本発明による酵母を用いた動物の処置
内臓過敏症を有する動物の10の群を使用した(各群につきn=10)。処置動物には、1日1回15日間、胃内への強制給餌によって酵母100μgを投与した。対照動物には、前記と同じ手順に従ってPBSを与えた。酵母はPBSの溶液に懸濁する。酪酸塩または食塩水の点滴注入を、1回目の強制給餌の7日後に開始し、3日間実施する。結腸過敏症を、経口経路による処置の開始の14日後、すなわち結腸点滴注入の7日前に測定した。
【0250】
(4)試験した動物の群
7つの群のラットを試験した。参照番号は図26に対応する:
−PBSを摂取した10匹のラット(対照)、
−瞬間乾燥ScPro1乾燥酵母(100μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号1)、
−活性乾燥ScPro1乾燥酵母(100μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号2)、
−瞬間乾燥SCB1酵母(100μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号3)、
−瞬間乾燥ScPro1(50μg/日)および瞬間乾燥SCB1(50μg/日)を摂取した10匹のラット(参照番号4)、
−モルヒネを摂取した10匹のラット(参照番号5)、
−フィブラートを摂取した10匹のラット(参照番号6)。
【0251】
(5)結果
まず最初に、対照ラットに関して、過敏症ラットに関する試験での痛覚閾値は健常ラットの閾値より下であることに留意すべきである。
【0252】
単独でまたはSCB1酵母と組み合わせて摂取された瞬間乾燥ScPro1酵母は、モデルにおいて興味深い鎮痛作用を示す。
【0253】
数値は以下のとおりである:
参照番号 mmHg
1 56.5±4.27 p=0.03
4 59±4.33 p=0.02
【0254】
本発明による酵母は、健常ラットで認められるのと同じ痛覚レベルの回復を可能にする。酵母によって誘導される鎮痛作用は、モルヒネによって誘導されるものに等しい。
【0255】
図26は、さらに、内臓過敏症を有するラットにおいて痛覚閾値を2倍に上昇させるフェノフィブラートの強力な鎮痛作用を示す(70±4.48 p=0.001)。
【0256】
この結果は、内臓痛の調節におけるPPARα受容体の役割を確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号No.CNCM I−3856の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託されたSaccharomyces cerevisiae株。
【請求項2】
受託番号No.CNCM I−3799の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託されたSaccharomyces cerevisiae var. boulardii株。
【請求項3】
受託番号No.CNCM I−3856の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託された株から得られるSaccharomyces cerevisiae酵母。
【請求項4】
受託番号No.CNCM I−3799の下にCollection Nationale de Cultures de Microorganismesに寄託された株から得られるSaccharomyces cerevisiae var. boulardii 酵母。
【請求項5】
請求項3における酵母;および/または請求項4における酵母;および/または酵母抽出物、酵母細胞壁誘導体、酵母細胞壁グルカン、酵母細胞壁マンノプロテイン、脂質酵母画分、酵母核酸(RNA、DNA)画分から選択される少なくとも1つのSaccharomyces cerevisiae酵母誘導体;を含有することを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項5において、前記酵母が乾燥形態または新鮮形態であることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項6において、前記酵母が瞬間乾燥形態または活性乾燥形態であることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項において、請求項3における酵母;および/または請求項4における酵母;および/または酵母抽出物、酵母細胞壁誘導体、酵母細胞壁グルカン、酵母細胞壁マンノプロテイン、脂質酵母画分、酵母核酸(RNA、DNA)画分から選択される少なくとも1つのSaccharomyces cerevisiae酵母誘導体;を10〜6×1010CFU、好ましくは10〜2×1010CFUで、含有することを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか一項において、1mg〜10g、好ましくは1mg〜1gの請求項3における酵母;および/または請求項4における酵母;および/または酵母抽出物、酵母細胞壁誘導体、酵母細胞壁グルカン、酵母細胞壁マンノプロテイン、脂質酵母画分、酵母核酸(RNA、DNA)画分から選択される少なくとも1つのSaccharomyces cerevisiae酵母誘導体;を含有することを特徴とする組成物。
【請求項10】
ヒトおよび/または動物用の、補助食品および/またはプロバイオティックおよび/または医療食品および/または栄養補助食品および/または機能性成分および/または薬用化粧品および/または医薬有効成分を調製するための、請求項5〜9のいずれか一項における組成物の使用。
【請求項11】
胃腸の快適性を改善するおよび/または腸内菌叢を改善することを目的とした食品組成物を調製するための、請求項5〜9のいずれか一項の組成物の使用。
【請求項12】
腸の障害、腸の機能障害または胃腸疾患を治療および/または予防することを目的とした薬剤を調製するための、請求項5〜9のいずれか一項の組成物の使用。
【請求項13】
痛覚過敏の状態によって示される腸の病変または障害を治療および/または予防することを目的とした薬剤を調製するための、請求項5〜9のいずれか一項の組成物の使用。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか一項において、前記酵母が乾燥形態または新鮮形態である組成物の使用。
【請求項15】
請求項14において、前記酵母が瞬間乾燥形態または活性乾燥形態である組成物の使用。
【請求項16】
請求項10〜13のいずれか一項において、1日用量で前記酵母および/または酵母誘導体が10〜6×1010CFU、好ましくは10〜2×1010CFU含有される組成物の使用。
【請求項17】
請求項10〜13のいずれか一項において、1日用量で前記酵母および/または酵母誘導体が1mg〜10g、好ましくは1mg〜1g含有される組成物の使用。
【請求項18】
経口投与に適した形態で、請求項3における酵母;および/または請求項4における酵母;および/または酵母抽出物、酵母細胞壁誘導体、酵母細胞壁グルカン、酵母細胞壁マンノプロテイン、脂質酵母画分、酵母核酸(RNA、DNA)画分から選択される少なくとも1つのSaccharomyces cerevisiae酵母誘導体;を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2011−509651(P2011−509651A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540156(P2010−540156)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001729
【国際公開番号】WO2009/103884
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(510178437)
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
【出願人】(510178448)ユニベルシテ・ドーヴェルニュ・クレルモン 1 (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D AUVERGNE CLERMONT 1
【出願人】(510178459)ユニベルシテ・デュ・ドロワ・エ・ドゥ・ラ・サンテ・リール・2 (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DU DROIT ET DE LA SANTE LILLE 2
【Fターム(参考)】