ヒドロゲル関節形成装置
膨潤によってひずみ硬化され、骨形状へ適合することによって関節において適所に保持されるように順応する相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)ヒドロゲルを有する、関節形成装置が提供される。ひずみ硬化されたIPNヒドロゲルは、2つの異なるネットワークに基づき、それらは(1)末端基の重合によって化学的に架橋されて予備形成された親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの非シリコーンネットワーク、および(2)イオン化性モノマーの非シリコーンネットワークである。第2のネットワークは第1のネットワークの存在下において重合され化学的に架橋され、第1のネットワークと共に物理的架橋を形成した。IPN内では、第2のネットワーク中の化学的架橋度は、第1のネットワーク未満である。塩水溶液(中性のpH)を使用して第2のネットワークをイオン化および膨潤する。第2のネットワークの膨潤は第1のネットワークによって束縛され、IPN内の効果的な物理的架橋の増加が結果として生じる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルに関する。より詳細には、本発明は整形外科用人工器官のために有用な装置および材料に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患または損傷により、通常は平滑で滑らかな関節面を覆う軟骨は次第に悪化し、骨を露出させ、活動によって悪化し、安静によって軽減される関節痛を導く。今日、骨関節炎に罹患する患者には、2つの選択肢(疼痛を医学的に制御すること、または効果的ではあるが多大に骨を犠牲にする手術を受けること)のうちの1つのみがある。医学的管理は、体重減量、理学療法、および鎮痛薬および非ステロイド性の抗炎症薬の使用を含む。これらは疼痛の減少に効果的でありうるが治癒的ではない。他の選択肢は、軟骨の「失われた」コンポーネントを置換するグルコサミンまたはヒアルロナンのような薬物を含むが、米国での広汎な使用にもかかわらずそれらの有効性はなお疑問視される。医学的介入が成功せず患者の関節痛が耐え難くなるとき、手術が勧められる。関節全形成術は、関節の疾患部分が取り出され、新しい人工部分(まとめて人工器官と呼ばれる)により置換される外科手術手技である。この高度に効果的だが侵襲性手技において、侵された関節軟骨および下層にある軟骨下骨は、損傷を受けた関節から除去される。様々な置換システムが開発されており、典型的には超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および/または金属(例えばチタンまたはコバルトクロム)、最近になってセラミックスを含む。ある物は適所へねじで留められ、他のものは接合されるか、または骨成長を促進するような方法で処理される。これらの材料は関節全置換術の使用で成功し、重篤な変形性股関節症または変形性膝関節症に罹患する患者において、著しい疼痛軽減および機能改善を提供する。
【0003】
米国では毎年多数の患者が股関節全形成術(THA)を受け、それは寛骨臼に人工カップならびに大腿骨側上にボールおよびステムを移植することを含む。THAの目標は、可動性を増加させ、股関節機能を改善し、疼痛を軽減することである。典型的には、人工股関節は、置換が必要となるまでに少なくとも10〜15年間は耐久性がある。しかし外科手術手技としての成功にもかかわらず、THAは、多大な「骨の犠牲」を必要とする大腿骨骨頭全体の切除であるので、まだ最後の手段の治療と判断される。修正置換をしばしば困難にするのは大腿骨のこの主な改変である。この手技は高齢者(彼らは通常インプラントより生き延びない)において90%以上の残存率を有するが、インプラントの耐用年数はより若年のより活発な患者においては有意に短い。その結果として、より若年の患者は、耐用年数中で複数の困難な修正の可能性に直面する。摩耗粒子に起因する過度の摩耗および人工器官周囲の骨吸収に加えて、インプラントの周囲の応力遮蔽に誘導される骨吸収から結果として生じる人工器官の無菌性ゆるみを、インプラントが示すとき、修正が必要とされる。
【0004】
THAに前述の限定があるので、若年患者のためにあまり骨を犠牲にせず、THAを少なくとも5年以上延期できるという見込みのある選択肢を捜すように産業界は促された。治療改善のための1つのアプローチは、関節鏡視下の関節洗浄、デブリードマン、アブレージョン、および滑膜切除などのそれほど侵襲的でない外科手術手技を開発することだった。しかしながら、骨関節炎の治療のこれらの外科技術の相対的優位性はまだ論争の的になっている。THAに対する代替物は股関節「表面置換」であり、現在、新たなベアリング表面(メタル・オン・ポリエチレンよりもむしろメタル・オン・メタル)があるので、再び取り上げられるようになってきた。多数の患者はこの手技の有効性より生き延びることが予想されるが、股関節表面置換は後の股関節全置換術を可能にする大腿骨側上の十分な骨ストックを保護する。あいにく股関節表面置換を行なう医師によれば、可能な限りこの手技はまだ延期されるべきであるという極めて潜在的な欠点がある。メタル・オン・メタル表面置換において、大腿骨骨頭は適切に形作られ、次に大腿骨頚部を通した長い釘によって錨着される金属キャップにより覆われる。それは、キャップとカップとの間のより正確な嵌合を必要とし、その手技は、一般的に、大腿骨コンポーネントがより大きな直径であるために、従来の置換と比較して、寛骨臼のより多くの骨を犠牲にする。さらに表面置換手術は習得が難しく、THAよりも長くかかる。釘の周囲の骨吸収によって引き起こされた大腿骨頚部骨折が報告されており、またベアリング表面からの金属イオン放出の長期的影響はヒトにおいてまだ公知ではない。これらの合併症の結果として、今日の表面置換装置は、THAの場合のように、まだ股関節痛が耐え難い患者のみで示される。
【0005】
本発明は当該技術分野における必要性を検討し、関節形成装置の素地を形成する、膨潤を介してひずみ硬化される相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、およびこの装置の作製方法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、天然の軟骨の分子構造、そして同様に、弾性率、破壊強度、および潤滑表面を模倣する、膨潤を介してひずみ硬化される相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルに基づく骨温存関節形成装置を提供する。天然の軟骨のこれらの構造的特徴および機能的特徴の少なくともいくつかを模倣して、ヒドロゲルは、新規の骨温存の「生体模倣表面置換」関節形成手技の基本原理を形成する。軟骨のみを置換するようにデザインして、この材料は、潤滑な関節面および骨統合可能な骨界面を特色とする一組の柔軟で移植可能な装置として製作される。原理上は、本装置は身体中の任意の関節面について作製することができる。例えば、脛骨プラトーを覆う装置は、類似した骨の調製およびポリマーサイジングプロセスを必要とするだろう。股関節中の大腿骨骨頭を覆う装置については、キャップ型ヒドロゲル装置は大腿骨骨頭の輪郭を覆って緊密に嵌合し、男性用コンドームへのアナロジーが適切である。寛骨臼を裏打ちする装置については、女性用コンドームへのアナロジーが適切である。ポリマードームは寛骨臼唇を覆って伸張し、適所に嵌め込まれて、大腿骨骨頭との合わせ面を提供する。このように、患者の股関節の両側を修復することができ、キャップ・オン・キャップの関節連結が作成される。しかしながら、表面の1つのみが損傷を受けているならば、1つの側面のみをキャップすることができ、キャップ・オン・軟骨の関節連結が作成される。肩関節(同様にボール・アンド・ソケット関節)のためのキャップ型ヒドロゲル装置を生成するために、股関節のものに類似するプロセスが使用される。例えば、「女性用コンドーム」は関節窩の内側を裏打ちするように生成することができる。さらに、手、指、肘、足首、足、および椎間ファセットにおける他の関節のための装置もまた、この「キャッピング」概念を使用して生成することができる。遠位大腿骨の1つの実施形態において、遠位大腿骨ヒドロゲル装置の体積は、前十字靭帯および後十字靭帯を温存するが、骨の輪郭に従う。
【0007】
より具体的には、本発明は、膨潤によってひずみ硬化され、哺乳類関節中の天然または人工的に調製された骨の幾何学的形状(geometry)に適合することによって、哺乳類関節中で適所(in place)に保持するように順応する相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを有する関節形成装置を提供する。ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、2つの異なるネットワークに基づく。第1のネットワークは、末端基の重合によって化学的に架橋されて予備形成された親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの非シリコーンネットワークである。第2のネットワークはイオン化性モノマーの非シリコーンネットワークである。第2のネットワークは第1のネットワークの存在下において重合され化学的に架橋され、第1のネットワークと共に物理的架橋を形成する。相互貫入ポリマーネットワーク内では、第2のネットワーク中の化学的架橋度は、第1のネットワーク中の化学的架橋度より少ない。中性pHの塩水溶液は相互貫入ポリマーネットワーク中の第2のネットワークをイオン化し膨潤させるために使用される。第2のネットワークの膨潤は第1のネットワークによって束縛され、この束縛効果は、相互貫入ポリマーネットワーク内の効果的な物理的架橋の増加をもたらす。物理的架橋におけるひずみ誘起の増加は、増加した初期ヤング率を備えたひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークとして表わされ、それは、(i)純水中または塩水溶液中で膨潤させた親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの第1のネットワーク、(ii)純水中または塩水溶液中で膨潤させたイオン化されたモノマーの第2のネットワーク、または(iii)純水中で膨潤させた第1のネットワークおよび第2のネットワークの組合せによって形成された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルのいずれかの初期ヤング率よりも大きい。ひずみ(本明細書において膨潤によって誘導された)の結果として剛性率において観察された増加は、相互貫入ポリマーネットワーク内の物理的架橋の数の増加によって引き起こされる。本発明の目的のために、ひずみ硬化は、物理的架橋の数および適用されるひずみによる剛性率の増加として定義される。
【0008】
関節形成の装置は、骨界面領域、および骨界面領域の反対のベアリング領域を有する。骨界面領域は適合することによって特徴づけられ、哺乳類関節中の天然または人工的に調製された骨の幾何学的形状に固定させることができる。
【0009】
本発明の装置およびひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、以下の実施形態に従って、それら自体で、またはその任意の組合せにおいて変更することができるだろう。例えば、装置は、哺乳類関節においてヒドロゲル・オン・軟骨の関節連結(articulation)を形成する哺乳類関節の1つの側面上に移植することができる。装置は、ヒドロゲル・オン・ヒドロゲルの関節連結を形成する移植された装置から反対の関節面上に移植された第2の合わせコンポーネント(すなわち本発明において教示されるような別の関節形成装置)をさらに有することができるだろう。骨界面領域は、カルシウム含有およびリン酸塩含有の骨マトリックス骨成分に結合することができる。別の例において、骨界面領域は、骨形成に適応するように10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有することによって特徴づけられる。カルシウム含有およびリン酸塩含有の成分により骨界面領域を前被覆することができるかもしれない。さらに別の例において、化学的にまたは物理的に骨界面領域に生体分子を結合することができるだろう。
【0010】
骨界面領域が、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルで作製される代わりに、一例において、ベアリング領域に化学的に結合するポリマー材料で骨界面領域を作製できるだろう。この例において、ベアリング領域はひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルで作製される。別の例において、ベアリング領域および骨界面領域は装置のどちらの側面でも異なる組成物を有することができ、装置内で互いに物理的に統合されるか、または化学的および物理的に統合される。
【0011】
骨界面領域に接着性材料(生体分解性または非生体分解性)を結合することができ、次に骨界面領域を介して完全に装置を結合することができるだろう。別の例において、装置は、骨界面領域に化学的または物理的に結合されるカルシウム含有の無機物被覆を含むことができるだろう。
【0012】
さらに別の例において、装置の厚さプロファイルをもとの軟骨層の天然の厚さプロファイルに近似的に一致させることが望ましい。装置は主として凸面または凹面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応することができる。1つの例において、装置は主として凸面の骨受容面を覆って嵌合するように一回り小さく(undersize)、凸面の三次元骨受容面を覆う弾性縮小嵌合を生成する。装置は、移植の前に体液および体温ではない液体および温度において膨潤させた平衡体積まで膨潤させることができ、移植ならびに体液または/および体温への暴露に際して、膨潤させた平衡体積と比較して、より小さな平衡体積まで脱膨潤させることができ、それによって、より小さな平衡体積で、装置は前記の主として凸面の三次元骨受容面に対して縮小するかまたはそれを物理的に把持する。
【0013】
別の例において、装置は主として凹面の三次元骨受容面に対して嵌合するように一回り大きく(oversize)、主として凹面の骨受容面に対する弾性拡張嵌合に適応する。装置は、移植の前に体液および体温ではない液体および温度において乾燥または脱膨潤させた平衡体積まで少なくとも部分的に乾燥または脱膨潤させることができ、移植ならびに体液および/または体温への暴露に際して、乾燥または脱膨潤させた平衡体積と比較して、より大きな平衡体積まで膨潤させることができ、それによって、より大きな平衡体積で、主として凹面の三次元骨受容面に対して装置を拡張する。
【0014】
第1のネットワーク中の親水性の非イオン性マクロモノマーは、約275Da〜約20,000Da、約1000Da〜約10,000Da、または約3000Da〜約8000Daの間の分子量を有する。別の例において、イオン化性モノマーと親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーとの間のモル比が、1:1以上、または100:1より大きい。1つの例において、第1のネットワーク中の親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーはポリ(エチレングリコール)の誘導体であり、イオン化性モノマーはアクリル酸モノマーである。
【0015】
さらに別の例において、塩水溶液は約6〜8の範囲のpHを有する。さらに他の例において、第1のネットワークは、テレケリックマクロモノマーを乾燥重量で少なくとも約50%、少なくとも75%または少なくとも95%有する。さらに別の例において、第1のネットワークは、第1のネットワーク上にグラフトした親水性モノマーを有する。さらに別の例において、第2のネットワークは、第2のポリマーネットワーク上にグラフトした親水性マクロモノマーをさらに有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、少なくとも約1MPaの引張強度を有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、少なくとも約1MPaの初期平衡引張率を有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、少なくとも25%、35%または50%の平衡含水率を有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは塩水溶液に対する透過性があり、ヒドロゲルは1e-17〜1e-13 m4/N秒にわたる透過係数を有する。
【0016】
さらに別の例において、水溶液中でひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルのベアリング領域の摩擦係数は、0.2未満である。さらに別の例において、装置の1つの側面は二官能性架橋剤を使用して、別のポリマー材料、他の官能基、または生体分子により修飾される。1つの例において、骨細胞の増殖および/または接着を刺激するように生体分子を使用することができうる。さらに別の例において、装置は、隣接した関節面の凸面または凹面に適合するように収縮または膨潤させることを可能にする刺激応答性ポリマー材料を含む。
【0017】
本発明とその目的および利点は、図面と併用して以下の記述を読むことによって理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に従って、装置および解剖学的構造の概略図を示す。装置は2つのコンポーネントを有し、1つは関節の主として凸面の骨側面3上に配置されるバージョン1、およびもう1つは主として凹面の骨側面4上に配置されるバージョン2である。骨界面領域6は骨の統合および接着を確実にする。ベアリング領域5は、低摩擦係数を持ち、2つのコンポーネントの間の平滑な相対的な滑動および転動を可能にし、末端架橋された第1のネットワーク10のひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、イオン化された第2のネットワーク11および塩水溶液12で作製される。
【図2】本発明の実施形態に従って、装置の横断面図の概略図を示し、厚さBの移行帯7によって統合される、厚さAのベアリング領域5および厚さCの骨界面領域6を示す。ベアリング領域5および骨界面領域6は同一素材または異素材でありえるが、寸法A、BおよびCは、材料および装置詳述に基づいて変化する。
【図3】本発明の実施形態に従って、凸面(左側カラム、A1〜A3)および凹面(右側カラム、B1〜B3)の関節面のための錨着戦略の概略図を示す。接着層は最初にヒドロゲルを骨に錨着させることができるだろうが、接着層は石灰化しその中で新しい骨の増殖を可能にするので、ヒドロキシアパタイトは介在する足場を介して骨界面領域に結合して、天然の軟骨において見出されるものを模倣する石灰化骨界面を産出する。
【図4】骨3、4(カルシウムおよびリン酸塩)の無機成分がIPNヒドロゲル1、2の骨界面領域とどのように相互作用することができるか本発明の実施形態に従って表わした図である。1つの実施形態において、第2のネットワーク11(例えばポリ(アクリル酸))上のカルボン酸基は相互作用し、二価カルシウムイオンおよび負に荷電したリン酸イオンにより錯体を形成する。
【図5A】本発明の実施形態に従って股関節形成手技を示した図である。寛骨臼4aおよび大腿骨骨頭3aを露出する外した関節を示す。オスのヒドロゲル装置コンポーネント1aは大腿骨骨頭3a上に配置され、伸張そして嵌合を介して適所に保持される。同様に、寛骨臼装置コンポーネント2aは寛骨臼骨4a中に配置され、拡張性圧入嵌合を介して適所に保持される。
【図5B】本発明の実施形態に従って股関節形成手技を示した図である。コンポーネントが適所に移植された後に、関節が整復されることを表わす。
【図6A】本発明の実施形態に従って股関節形成の三次元バージョンを示した図である。大腿骨骨頭ヒドロゲル装置コンポーネント1aの側面図を示し、骨管に適応するくぼみ103も示される。
【図6B】本発明の実施形態に従って股関節形成の三次元バージョンを示した図である。大腿骨骨頭骨3aおよび大腿骨骨頭装置コンポーネント1aの横断面図を図示する。
【図6C】本発明の実施形態に従って股関節形成の三次元バージョンを示した図である。寛骨臼装置コンポーネント2aを図示する。
【図7】本発明の実施形態に従って両側(全関節形成術)または片側の半関節形成術を示した図である。この実施形態において、大腿骨装置コンポーネント1aは大腿骨骨頭骨3aを覆って伸張されるが、寛骨臼コンポーネント2aは寛骨臼くぼみ4a中に圧入嵌合される。骨界面領域6は多孔質であり骨成長を保証するようにヒドロキシアパタイトにより被覆され、ベアリング領域5は相対的な滑動を促進するように潤滑な特性を有する。さらに、加圧された関節液102により満たされるチャンバー101を形成する寛骨臼コンポーネント4a中のくぼみ100が提示され、チャンバーは2の装置コンポーネント1a、2aによって密封される。
【図8】本発明の実施形態に従って膝に適用されたヒドロゲル装置を示した図である。遠位大腿骨装置コンポーネント1bは、緊密なソックスのように遠位大腿骨骨3b上に配置される。装置は、靭帯のための開口部またはくぼみを保持し、それゆえ、中央開口部111は十字靭帯に適応するが、外側開口部110は外側靭帯に適応する。遠位大腿骨装置コンポーネント1bは、緊密嵌合を介して最初に適所に保持され、この後開示されるヒドロゲル刺激プロセスによってさらに促進される。この実施形態において、脛骨プラトーヒドロゲル装置コンポーネント2bは、2つの別個の部分(1つは外側ファセットのためおよび1つは内側ファセットのため)を有する。ヒドロゲル装置コンポーネントは、骨内方成長を可能にして固定を確実にする多孔質骨界面領域6を保持する。
【図9A】本発明の実施形態に従って脛骨プラトー4bにヒドロゲル装置適用を示した図である。脛骨プラトー4bおよびファセット112の外側断面図を示す。
【図9B】本発明の実施形態に従って脛骨プラトー4bにヒドロゲル装置適用を示した図である。骨の穿孔によって外科的に作製されたくぼみ113を示し、移植の前のヒドロゲル装置コンポーネント2bをさらに図示する。
【図9C】本発明の実施形態に従って脛骨プラトー4bにヒドロゲル装置適用を示した図である。ファセット113のくぼみ中に挿入された脛骨ヒドロゲル装置コンポーネント2bを示す。
【図10】本発明の実施形態に従って、末端架橋マクロモノマーネットワーク10上に基づく相互貫入されたポリマーネットワーク、および緩衝塩水溶液12により膨潤させて浸透圧によりあらかじめ応力を加えたイオン化モノマーベースのネットワーク11の構造を示した図である。
【図11】本発明の実施形態に従って、IPNヒドロゲルの合成のための工程を示した図である。1.ヒドロゲルのための出発材料は、水16中に溶解された反応性官能末端基15を備えたテレケリックマクロモノマー13の溶液である。テレケリックマクロモノマーを重合して、水16中で膨潤させた第1の末端架橋ポリマーネットワーク10を形成する。2.水と混合した親水性のイオン化性モノマー14は、光開始剤および架橋剤と共に第1のポリマーネットワーク10に追加される(図示せず)。次に、親水性のイオン化性モノマーは第1のポリマーネットワーク10の存在下において光重合および架橋されて、第1のポリマーネットワークの存在下において第2のポリマーネットワーク11を形成する。これは、水16中で膨潤させたイオン化性の第2のネットワーク11により相互貫入された末端架橋ポリマーネットワーク10を有するIPNヒドロゲルの形成をもたらす。3.次に水吸収したIPNを、典型的にはpH7.4の水溶性塩含有溶液12中に浸漬し、平衡まで膨潤させて、IPNの含水率および剛性率の両方の同時増加を産出する。塩水溶液12中で膨潤させたこのIPNは、高度に架橋された第1のネットワーク10によってもたらされた束縛内で第2のネットワーク11の膨潤させることによって誘導されたひずみ硬化のために、純水16中で膨潤させたIPNと比較して、より高い引張弾性率を有する。
【図12A】モノマー17を使用して第1のネットワーク10を作製した後に、IPNがどのように調製されるかを本発明方法の工程の実施形態に従って示した図である。光開始剤および架橋剤の存在下における紫外線への暴露(図示せず)は、重合および架橋を導いてネットワーク10を形成し、(i)〜(ii)の移行によって図示される。(iii)〜(iv)において、第1のネットワークは、第2のネットワークの前駆体モノマー14、架橋剤(図示せず)および光開始剤(図示せず)により膨潤される。紫外線への暴露は、第1のネットワーク(10)の存在下において第2のネットワーク11の重合および架橋を開始してIPNを形成する。
【図12B】反応性末端基15を備えたマクロモノマー13を使用して、既存の第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子の存在下において、第1のネットワーク10を形成した後に、IPNがどのように調製されるかを本発明方法の工程の実施形態に従って示した図である。第1のポリマーコンポーネントおよび第2のポリマーコンポーネントの混合物を作製し、次に紫外線下でテレケリックマクロモノマー13、15を反応させて、第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワーク10を形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。
【図12C】モノマー17に基づく第1のネットワーク10および第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子からIPNがどのように形成されるかを本発明方法の工程の実施形態に従って示した図である。モノマー17およびマクロ分子の混合物を作製し、次に紫外線下でモノマーを反応させて第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワークを形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。
【図13】本発明の実施形態に従って、PEG−ジオールマクロモノマーからのテレケリックPEG−ジアクリラートの合成の概略図を示した図である。PEG−ジメタクリラートを生成するために、塩化アクリロイルの代わりにPEG−ジオールにより塩化メタクリロイルを反応させるだろう。
【図14】本発明の実施形態に従って、PEG−ジオールマクロモノマーからのテレケリックPEG−ジアクリルアミドの合成の概略図を示した図である。PEG−ジメタクリルアミドを生成するために、塩化アクリロイルの代わりにPEG−ジオールにより塩化メタクリロイルを反応させるだろう。
【図15】本発明の実施形態に従って、PEG−ジオールマクロモノマーからのテレケリックPEG−アリルエーテルの合成の概略図を示した図である。
【図16A】本発明の実施形態に従って、2つの異なるポリマー上に基づく第1のネットワーク10および第2のネットワーク11を備えたIPNを示した図である。
【図16B】本発明の実施形態に従って、第1のネットワーク10に付着されたグラフトコポリマー29および第2のネットワーク11中のホモポリマーを備えたIPNを示した図である。
【図16C】本発明の実施形態に従って、第1のネットワーク10中のホモポリマーおよび第2のネットワーク11中のグラフトコポリマー30を備えたIPNを示した図である。
【図16D】本発明の実施形態に従って、第1の10ネットワークおよび第2のネットワーク10、11の両方中にグラフトコポリマー29、30を備えたIPNを示した図である。
【図17A】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。張力下の応力ひずみプロファイル。
【図17B】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。拘束圧縮下の応力ひずみ。
【図17C】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。非拘束圧縮の応力ひずみプロファイル。
【図17D】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。引張クリープ実験におけるひずみvs時間。
【図18A】本発明の実施形態に従って、PEG(8.0k)/PAAのIPN、PEG(8.0k)−PAAコポリマー、PEG(8.0k)およびPAAネットワークについての真応力−真ひずみ曲線を示した図である。
【図18B】本発明の実施形態に従って、PEG(8.0k)/PAAのIPN、PEG(8.0k)−PAAコポリマーおよびPEG(8.0k)およびPAAネットワークについての正規化した真応力−真ひずみ曲線を示した図である。
【図19A】本発明の実施形態に従って、結果として生じたIPNの体積変化率に対する、第2のネットワーク前駆体溶液中のアクリル酸(AA)モノマーの質量分率の効果を示した図である。垂直な点線はIPN中のAAおよびエチレングリコール(EG)モノマー単位の等モル量の点を示すが、水平な点線はPEGネットワークおよびPEG/PAAのIPNが同一の体積を有するところを示す。
【図19B】本発明の実施形態に従って、IPN中のAAの質量分率に対するPEG/PAAのIPNの破壊応力およびヤング率の依存性を示した図である。垂直な点線はIPN中のAAおよびエチレングリコール(EG)モノマー単位の等モル量の点を示す。
【図20】本発明の実施形態に従って、重合の時間で異なる量のアクリル酸(AA)を備えた、単一ネットワークPEG(8.0k)ヒドロゲルおよびPEG(8.0k)/PAAのIPNの含水率の時間依存性を示す。ヒドロゲルを時間=0で乾燥状態において脱イオン水中で置き、次に等間隔で量った。
【図21】本発明の実施形態に従って、PBSおよび脱イオン水中のPEG(4.6k)/PAAのIPN、加えてPBSおよび脱イオン水中のPEGおよびPAA単一ネットワークの真応力vs真ひずみの曲線を示した図である。PEG(4.6k)ネットワークは水からPBSへの変化によって影響されない。矢印は、PBS中での平衡までの膨潤によってひずみ硬化された後のIPNの応力ひずみプロファイルにおける変化を示す。
【図22】本発明の実施形態に従って、架橋剤化学末端基の3つの異なる組合せによるが、PEG(分子量4.6k、水中の重量で50%)およびAA(水中で50%v/v)は同一の処方で、加えて同一の重合条件(光開始剤および架橋剤のモル濃度およびUV強度)および膨潤条件(pH7.4のPBS)で、調製されたPEG(4.6k)/PAAのIPNの応力ひずみプロファイルを示した図である。試料(A)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(B)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(C)は、PEG−ジアクリラートの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。
【図23A】本発明に従って、単純なPEG/PAAサンプル(ヒドロキシアパタイトのない)の、破壊端部(暗)および上面(明)を示す、SEMを示した図である。
【図23B】本発明に従って、ヒドロキシアパタイトを被覆したPEG/PAAサンプルの、破壊端部(暗)および上面(明)を示す、SEMを示した図である。
【図23C】本発明に従って、ヒドロキシアパタイトを被覆されたPEG/PAAのIPN(挿入図)のエネルギー分散型X線分光法(EDX)分析を示し、HAPを被覆したPEG/PAAの高倍率のSEMを示す挿入図により、HAPのものに類似したおよそ1.5〜1.6のカルシウム/リン比を示した図である。
【図23D】本発明に従がって、200nm直径HAPにより被覆されたPEG/PAAヒドロゲル上に増殖する骨芽細胞様細胞を示した図である。
【図24】本発明に従がって、未修飾シリカ(列A)上の、およびPEG/PAAのIPN(列B中に低倍率、および列C中に高倍率で)上の異なる直径(5μm、〜200nm、および20nm)のヒドロキシアパタイト被膜のSEMを示した図である。
【図25A】本発明に従って、モノマー18上に基づく介在ポリマー接着剤を介するIPNヒドロゲル10、11の骨への結合のための結合プロセス(凸面3または凹面4)を示した図である。UV、光開始剤および架橋剤に暴露したときにモノマーは反応して、IPNヒドロゲルおよび骨に、物理的に架橋されるか、または物理的および化学的に架橋される第3のネットワーク19を形成する。
【図25B】本発明に従って、反応性末端基20を備えたマクロモノマー21上に基づく介在ポリマー接着剤を介するIPNヒドロゲル10、11骨3および4への結合の結合プロセスを示した図である。マクロモノマーは反応して、IPNヒドロゲルに、および骨に、物理的に架橋されるか、または物理的および化学的に架橋される第3のマクロモノマーのネットワーク22を形成する。
【図26】本発明に従って、ネットワークの1つが錨着の介在するポリマーとして作用する半相互貫入ネットワークを示した図である。反応性末端基15を備えたテレケリックマクロモノマー13および物理的ネットワーク11または直鎖の溶液はともに混合され、UV感受性架橋性基23により前被覆および/または官能基化された骨表面3、4の上に流し込まれる。光開始剤の存在下における開始源(例えば紫外線)への暴露は、テレケリックマクロモノマーおよび被覆された/官能基化された骨表面の両方の上のこれらの架橋性基のフリーラジカル重合および架橋を導く。フリーラジカル重合および架橋の結果は右側に示される。テレケリックマクロモノマーの末端はネットワーク10を形成しており、骨の表面と共重合および結合する。直線状の第2のネットワークポリマーは、この第1のネットワーク内に物理的にトラップされ、第1の化学的に架橋されたネットワークに相互貫入する第2の物理的に架橋されたネットワーク11を形成する。
【図27A】本発明の実施形態に従って、所定時間の間の第3のネットワークモノマー24の相互拡散によって、先に存在するIPN内で第3のネットワークが部分的に相互貫入され、次にIPN10、11の存在下においてモノマーを重合する完全相互貫入ネットワークを示した図である。これはIPNヒドロゲルの1つの側面上に第3のネットワーク25を効果的に与え、それは他の側面とは異なる特性を有し、骨界面領域として有用な特性でありえる。
【図27B】本発明の実施形態に従って、重合されたものが骨界面材料として働くときに、第2のネットワークモノマー14が別のモノマー26と共に界面に共重合される完全相互貫入ネットワークを示した図である。先に存在する第1のネットワークを、第2のネットワークの前駆体モノマーと共に膨潤させる。材料の骨界面側面に、別の反応性モノマー26の前駆体溶液がある。これらのモノマーは、部分的に第1のネットワークのマトリックスに貫入する。UVへの暴露と同時に、モノマーは共重合し、ベアリング側面上に1つのタイプのIPN 10、11および骨界面側面上にもう一つのタイプのIPN 10、27を備えた材料を産出する。
【図27C】本発明の実施形態に従って、外部刺激を使用してIPNの第1のネットワーク内に第2のネットワークの組成勾配を生成することを示した図である。アクリル酸モノマーおよび非イオン性モノマー(例えばアクリルアミドモノマー、N−イソプロピルアクリルアミドモノマー、またはヒドロキシルエチルアクリレートモノマー)の混合物が使用される。第1のネットワーク10を、イオン化性モノマー14、非イオン性モノマー28、架橋剤および光開始剤(図示せず)の溶液中で浸漬し、次に電場をゲルに適用する。イオン化性モノマーのみがそれらの電荷のために電場に沿って動くだろう。イオン化性モノマー濃度勾配の形成の後に、ゲルをUVに暴露し、勾配は第2のネットワークゲル形成を介して固定される。結果は、ベアリング領域に局在した第2のネットワーク、および骨界面領域に局在した非イオン性の第2のネットワークを備えたIPNヒドロゲルである。
【図28】本発明の実施形態に従って、他の装置表面修飾戦略の2つの例を示した図である。この戦略は、装置中のネットワークの1つの前駆体と共重合させるために、ハロゲン化された(活性)酸(例えば塩化アクリロイル)(反応A)または活性エステル(例えばアクリロキシN−ヒドロキシスクシンイミド)(反応B)との反応によりアミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子または生体分子のアクリル化/メタクリル化を含む。これらの反応スキーム中のR基は、任意のアミン含有もしくはヒドロキシル含有の合成化学物質もしくはポリマー、タンパク質、ポリペプチド、増殖因子、アミノ酸、炭水化物、脂質、リン酸塩含有部分、ホルモン、神経伝達物質、または核酸でありえる。
【図29】本発明の実施形態に従って、IPNヒドロゲル表面119へ分子、マクロ分子および生体分子114を共有結合で付着させるために使用されるスペーサー116により結合された2つの末端基115、117を含むヘテロ二官能性架橋剤118を示した図である。
【図30】本発明方法の実施形態に従う、ベアリング領域において存在するものとは骨界面で異なる表面化学を達成する工程を示した図である。このアプローチは、ヒドロゲルの表面上の官能基の活性化、続いてアミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子、マクロ分子、または生体分子とのこれらの活性化官能基の反応を含む。好ましい実施形態において、IPN内のポリ(アクリル酸)上のカルボン酸基は活性化されて活性エステルを形成し、アミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子、マクロ分子、または生体分子と反応させたとき、続いてアクリルアミド結合を形成する。
【図31】ヒドロゲル上のカルボン酸官能基が活性化され、続いて塩酸ドーパミンと反応してドーパミンコンジュゲート表面を産出する、図30中で示される方法の具体的例を示した図である。反応Aにおいて、PEG/PAAヒドロゲルをエタノール中のジシクロヘキシルカルボジイミドおよびトリエチルアミンの溶液中に浸漬して、PAA上に存在するカルボン酸基を活性化する。塩酸ドーパミンおよびトリエチルアミンとの後続反応はドーパミンコンジュゲート表面を産出する。反応Bにおいて、PEG/PAAヒドロゲルをリン酸緩衝液中のN−ヒドロキシスクシンイミドおよびN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの溶液中に浸漬して、PAA中でカルボン酸を活性化する。DMFおよびトリエチルアミン中の塩酸ドーパミンとの後続反応はドーパミンコンジュゲートヒドロゲル表面を産出する。
【図32】骨上への配置後に(A)、pH、塩濃度、電場、または温度の変化などの外部刺激が、装置が囲む凸面型の骨の輪郭に適合するような収縮をもたらす(B)本発明の実施形態を示した図である。反対に、刺激された膨潤は、pH、塩濃度、電場、または温度の変化の結果として達成することができ、凹面関節面に対する拡張効果を生成する。刺激応答性ポリマーは本発明中で記述される方法により装置のベアリングおよび/または骨界面領域の中に組み入れられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、現行の関節置換技術の限界を克服するようにデザインされる「生体模倣」骨温存ヒドロゲル関節形成術装置(図1)である。装置は、哺乳類関節の凸面および凹面に対して全関節形成術(両方の側面)または半関節形成術(1つの側面)のいずれかで適合する、新規の軟骨様ヒドロゲル材料から作製された柔軟なインプラントを含む。装置は、身体の関節軟骨、椎間板(腰椎または頚椎)、滑液包、半月板、および関節唇構造の置換として提供するのに必要な高い圧縮強度および潤滑性を有する。
【0020】
典型的な可動関節中の本発明の鍵となる装置および解剖学的構造が図1において示される。哺乳類骨格中の大部分の関節は、「オス」(主として凸面軟骨表面3)、および「メス」(主として凹面軟骨表面4)を有する。この実施形態において、関節形成装置は、2つのコンポーネント(主として凸面骨表面3を覆って嵌合する1つのコンポーネント(1)、および主として凹面4の内側に嵌合するもう一つのコンポーネント2)を含む。装置の各コンポーネントは、もう一つの他のコンポーネントを反対のベアリング表面5と接触させるようにするベアリング表面5を保持する。装置の各コンポーネントは、骨上に装置の固定を可能にする骨界面領域6もまた保持する。装置が適用される関節に依存して、その形は平らなまたは湾曲した形態でありえ、例えば、大腿骨骨頭の軟骨を置換する装置は半球のキャップに類似しているが、脛骨プラトーの軟骨を置換する装置は浅い円形のディッシュに類似しうる。いくつかの場合には、装置の1つのコンポーネントが関節の他の側面に未処理で残される天然の軟骨と関節で連結されるように、装置の1つのコンポーネントのみが半関節形成として移植することができる。
【0021】
この装置概念は、身体中のほとんどいかなる関節に適用することができる。例えば、本発明が有用な可能性のある整形外科用装置のタイプは、股関節(大腿骨骨頭および/または寛骨臼)、膝(脛骨、大腿骨および/またはの膝蓋の態様)、肩、手、手指(例えば手根中手関節)、足、足首、および足指の全置換または部分置換もしくは表面置換を含む。それは椎間板またはファセットの置換または修復においてもまた有用である。膝において、ヒドロゲルは、半月板置換、または肘もしくは肩などの任意の関節中の軟骨もしくは滑液包または股関節および肩などの関節中の関節唇のための置換材料としてもまた提供することができる。
【0022】
この装置戦略は、骨を高度に犠牲にするかまたは局所欠損の修復のみに限定されるかのいずれかである現行の関節形成アプローチの限定により導かれたものである。続いて行なわれるインプラントによる重層は残存軟骨線維組織の分化を導く望まれない条件を引き起こすかもしれないので、残存する軟骨を除去する必要がありえ、損傷を受けた軟骨が外科医により取り除かれた後に、ヒドロゲル装置は損傷を受けた軟骨の適所に置かれる。装置自体は、1つの側面上に「ベアリング」領域5および「骨界面」領域6を含み、前者はもう一つのベアリング表面(本発明などの別の関節形成装置または並置される関節面上の天然の軟骨のいずれか)と関節で連結され、後者は下層にある骨と相互作用する。図2は、1つの側面がベアリング領域を含み、隣接した側面が骨界面領域を含む、装置の組成物の横断領域を図示する。2つの領域は同一素材または異素材を含むことができる。1つの実施形態において、2つの領域は1つかつ同一のIPNヒドロゲルを含むが、別の実施形態において、ベアリング領域はIPNヒドロゲルを含み、骨界面領域は、2つの材料の間に滑らかな移行帯7があるようにIPNヒドロゲルに統合される別のポリマーを含む。1つの実施形態において、ベアリング領域はIPNヒドロゲルから作製され、ヒドロゲル装置1、2の骨界面領域6は、ポリマーまたはポリウレタン、シリコーンゴム、誘導体もしくはその組合せなど(ヒドロゲルなどの他のポリマーとのコポリマーまたは相互貫入ネットワークなど)から作製され、装置は荷重に応答して伸張または圧縮し、隣接した骨上にまたはそのそばで引張応力または圧縮応力によって適所に物理的に保持されることを可能にする、優れた機械的特性を備える。ベアリング領域が装置の体積の大部分または一部のいずれかを構成することができるように、2つの領域の相対的な厚さは変更することができる。
【0023】
本装置は天然の関節軟骨の構造および機能を模倣する材料を含むという点で、「生体模倣」(すなわち、天然の軟骨の模倣)として記載することができる。天然の軟骨は、約75%の含水率のコラーゲンの中性硬質ネットワークを相互貫入するプロテオグリカン類の高度に負に荷電したネットワークからなっているが、好ましい実施形態において、ヒドロゲルは、少なくとも35%〜最大90%(好ましくは約70%)の含水率の、例えばポリ(エチレングリコール)マクロモノマーの中性硬質親水性末端架橋ネットワークを相互貫入するポリ(アクリル酸)の高度に負に荷電したネットワークからなる。これらの構造的な細部の模倣は、天然の軟骨の様に挙動する、硬いにもかかわらず高度に潤滑なベアリング材料の形成に重要であると考えられる。親水性末端架橋マクロモノマーおよび負に荷電した第2のネットワークの他の組合せは可能である。PEGおよびPAAは恐らく利用可能な最も生体適合性のある2つの親水性ポリマーである。例えば、PEGはタンパク質吸着に耐性があることが広く知られており、PAAはマクロファージ活性に対する防御的役割をインビボで有することが最近示された。PEGおよびPAAは通常は個別では弱いが、我々は、天然の軟骨の高い機械強度および弾性率、高い含水率、ならびに低い表面摩擦を模倣する材料の「ひずみ硬化された」IPNを生成する方法を開発した。天然の軟骨のように、ヒドロゲルは高い機械強度および機械率によって荷重を吸収し分配することができる。同時にそれは、高含水率および低表面摩擦のために、ちょうど新生組織のように滑りやすいベアリング表面として機能することができる。
【0024】
本発明のもう一つの革新的な態様は錨着戦略である(図3)。物理的手段、化学的手段および生物学的手段の組合せを使用して、装置を骨に錨着することができる。物理的錨着を達成するために、ヒドロゲル装置1および2の骨界面領域6は天然または人工的に調製した(例えばリーマー加工した)軟骨下骨のマイクロトポグラフィーと一致するように粗く多孔性に作製され、それはこの界面で表面領域および摩擦を増加させて、装置による骨の機械的連動を促進する。さらに、装置は与えられた関節面の天然の凸面および凹面に適合するように製作される。寛骨臼4aなどの凹面関節構造4の場合のための図3(B1〜B3)中で示されるように、装置は完全にかみ合うキャップ2aとして製作されるか、または凹面に対して拡張性嵌合を生成するようにわずかに一回り大きい。同様に、可能なものは、ソケットの外部溝の周囲の関節唇様構造を生成する寛骨臼コンポーネント(4a)の外縁の周囲の「唇」の存在であり、それは装置の位置および錨着をさらに支援するだろう。大腿骨骨頭などの凸面関節構造3の場合のための図3(A1〜A3)中で示されるように、ヒドロゲル装置1aは完全にかみ合うキャップとして製作されるか、または凸面を覆ってピッタリとした嵌合を生成するようにわずかに一回り小さい。ヒドロゲル装置1または2を確実にする前述の物理的手段を追加するために、多数の戦略を使用することができる。最初に、骨界面領域6は、(a)粗面、(b)多孔性表面、(c)細胞接着を促進する生体分子(カドヘリンまたはインテグリンなど)、または生体分子(例えばコラーゲン、骨形態形成タンパク質(BMP)、ビスホスホネート、骨形成タンパク質OP−I、オステオポンチン)を表面に連結すること、(d)骨誘導物質(天然のヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウムまたは精製コラーゲンなど)による表面被膜、または(e)セメントまたはグルーなどの結合剤の追加を含みうるが、これらに限定されない方法によって、下層にある骨への接着を促進する。これらの組合せもまた可能である。錨着プロセスは図3中の他のプロットにおいて図示される。
【0025】
1つの実施形態において、装置の骨界面領域6は隣接した骨と相互作用するように調製され、長期にわたる骨統合を介して錨着することを可能にする。図4において示されるこの実施形態バージョンにおいて、PEG/PAAのIPN骨界面領域6中のポリ(アクリル酸)中のカルボン酸11は再構築されているので、骨3中のカルシウムおよびリン酸塩の錯体を形成する。別の実施形態において、骨界面領域6は、移植の前にカルシウム含有無機成分(例えば、リン酸三カルシウム、または/およびヒドロキシアパタイト)により前被覆される。さらに別の実施形態において、骨界面領域として働く別のポリマー材料は、骨の内方成長および沈着および/または石灰化を介して装置を錨着する。したがって、錨着の生物学的方法は、石灰化層を介して成し遂げられる。これは、骨界面領域の孔内で連続的な骨成長および沈着のためのステージ、ならびに次には石灰化され生体人工合成界面を介して装置の錨着場所を設定する。下層にある骨と装置の骨統合によって骨と一体に動くこと、および関節内の軟骨のように機能することができ、継続的な骨再構築を介してよりよい接着を提供する。
【0026】
ヒドロゲルを完全に結合する硬化可能な接着剤の局部的な使用は、強固な手術中の錨着を達成する化学的手段を提供する。1つ実施形態において、接着剤は、セメント(例えば亜鉛カルボシレート(carbocylate)セメント)、樹脂、グルーまたは同種のものなどの歯科用接着剤または整形外科用接着剤でありえる。この接着剤は、装置のベアリング領域および骨との間の堅い結合を提供するものでありえる。硬化形態における接着剤は、多孔性もしくは非多孔性でありえるか、または生体分解性もしくは非生体分解性でありえる。分解性接着剤の場合において、骨界面領域に結合する新しい骨が形成されるので接着剤材料は徐々に崩壊する。この分解は、新しい骨が形成するのにかかる時間と一致するように移植された後に、約1〜約12週の期間にわたって起こる。非分解性接着剤の場合においては、骨は再構築されているにもかかわらず、接着剤それ自体が骨と結合し相互侵入する。
【0027】
別の実施形態において、骨界面領域は、ポリウレタン、シリコーンゴム、またはそれらの誘導体もしくは組合せなどの非ヒドロゲルポリマー(ヒドロゲルなどの他のポリマーとのコポリマーまたは相互貫入ネットワークなど)から部分的に作製され、材料は荷重に応答して伸張または圧縮し、隣接した骨上にまたはそのそばで引張応力または圧縮応力によって適所に物理的に保持されることを可能にする、優れた機械的特性を備える。かかるコンポジット材料は、ベアリング領域として潤滑なヒドロゲル(PEG/PAAなど)、および骨界面領域として非ヒドロゲルポリマー(ポリウレタンまたはシリコーンベースの材料など)を有する。
【0028】
本発明の1つ実施形態は、股関節形成装置としての適用である。この実施形態に従って、関節形成ヒドロゲル装置は、図5、6および7において示されるような大腿骨骨頭コンポーネント(1a)および寛骨臼コンポーネント(2a)を含む。両方のコンポーネントは、表1中で記述される特性を備えたPEG/PAA相互貫入ネットワークヒドロゲルを含み、この後記述されるプロセスによって作製される。
【0029】
【表1】
【0030】
全体の装置形状は、天然の軟骨の解剖学に類似している。損傷を受けた軟骨および表面的な骨層を除去するために大腿骨骨頭3aを外科的にリーマー加工した後に、大腿骨骨頭コンポーネント1aは、キャップ型を保持して大腿骨骨頭3a骨上に配置される。大腿骨骨頭コンポーネント1aの骨界面領域6は、大腿骨骨頭骨3aの曲率半径と比較して、わずかに一回り小さい曲率半径を有し、したがって、大腿骨コンポーネント1aは、大腿骨骨頭のまわりに緊密嵌合によって適所に保持することができる。より具体的に、そしてラテックス製コンドームへのアナロジーによって、取り付けられる骨よりもわずかに一回り小さいヒドロゲル装置大腿骨骨頭コンポーネント1aは、大腿骨骨頭3aを覆って引っ張られ、ヒドロゲル装置1a材料の伸張によって生成された張力によって適所に保持される。大腿骨骨頭コンポーネント1a材料が伸張可能であるので、それは大腿骨骨頭を覆って嵌合するように伸張することができる。この実施形態の1つバージョンにおいて、このキャップ型装置1aは、骨を外側面で360度および前額面で最大200度覆う。ここでその内側のスペースを占領する骨により、ヒドロゲル装置大腿骨骨頭コンポーネント1aは、完全にはその原寸に戻ることができず、それは装置1aが囲む骨3aを「抱き締める」ようにする。全プロセスは、装置1a開口部を開くことができる開創器具によって促進することができる。
【0031】
損傷を受けた軟骨および表面的な骨層を除去するために寛骨臼骨4aを外科的にリーマー加工した後に、寛骨臼コンポーネント2aは寛骨臼骨4a上に配置される。寛骨臼ヒドロゲル装置コンポーネント2aは半球のシェル型を保持し、その骨界面領域6は、寛骨臼骨4aソケットの曲率半径と比較して、わずかに一回り大きい曲率半径を有し、寛骨臼コンポーネント2aは、寛骨臼4aの内側の緊密な圧入嵌合によって適所に保持することができる。ヒドロゲル装置の寛骨臼コンポーネントは、天然の寛骨臼軟骨のものと一致し、1mm〜5mmの範囲内である厚さプロファイルを有することもまたできる。ヒドロゲル装置の寸法は、外科医によって使用されるリーマーの寸法に一致する。さらに、装置の端部は端応力集中を防ぐために丸くすることができる。
【0032】
すべての患者がほぼ完全な嵌合を有するように、異なるサイズの装置1、2のライブラリーは、関節サイズの広い範囲をカバーすることができる。手術時に、医師は、適切な寸法の装置を選択し移植するだろう。厚さは、必要ならば、関節面領域および/または患者の体重の変化とともに、関節適合因子に適応するように調整することができる(すなわち、関節が適合しないほど、より多い厚さが必要とされる)。
【0033】
装置の骨界面領域6は、10〜1000ミクロンの範囲内の孔径で多孔性である。骨界面領域は、ヒドロゲルの負の電荷、および図4中に示されるようなヒドロキシアパタイト結晶中に含まれるカルシウムイオンのために生成された結合の利用によって化学的に沈着される可溶性または不溶性のヒドロキシアパタイトの層により被覆される。移植の2〜12週間後に、孔は、骨およびヒドロゲル装置の相互侵入を達成する新しい骨組織により満たされる。
【0034】
大腿骨骨頭コンポーネント1aのベアリング領域5の表面は、寛骨臼コンポーネント4aのベアリング領域5の表面と同一の曲率半径を有し、寸法の一致したボール・イン・ソケット機構を達成し、したがって均一な接触応力の分布を産出する。さらに、チャンバー101が寛骨臼コンポーネント2aのベアリング側面と大腿骨コンポーネント1aとの間で形成されるように、寛骨臼コンポーネントのベアリング領域6aはその中央部においてくぼみ100を保持することができる。チャンバー101は関節荷重の無い時に液体102で満たされ、チャンバー101がベアリング領域5表面によって効果的に密封されるので、関節荷重が適用されれば、前記液体102は加圧され、加圧された液体102は、関節荷重のかなりの部分を吸収することができる。
【0035】
大腿骨コンポーネント1aは、図6Bおよび図7において示されるような可変的なシェル厚プロファイルを有することができ、装置厚は1mm〜5mmで変化しうる。それゆえ、接触応力がより高い最も厚いシェル領域がコンポーネント4の上部側にあるが、それは端部5に向かって徐々に漸減して関節の可動域を増加させて衝突から装置を保護する。大腿骨コンポーネント1aは上部側でくぼみ103も保持することができ、大腿骨骨頭骨を提供する任意の管に適応する。寛骨臼窩を外科的にリーマー加工して任意の軟組織を除去した後に、寛骨臼コンポーネント2aは、寛骨臼窩の内側に嵌合できるその凸側で突部を保持することができ、前記突部は、関節がさらされる継続的な圧縮と組み合わせて、インプラント移動が防止されるように、ヒドロゲル装置の寛骨臼コンポーネント4aの初期配置を確実にする。
【0036】
別の実施形態において、ヒドロゲル装置は膝関節に適用することができる。装置は、図8中に示されるような遠位大腿骨コンポーネント1bおよび脛骨プラトーコンポーネント2bを含む。遠位大腿骨コンポーネント1bは、全体の形においては天然の遠位大腿骨軟骨のものと類似する。それは、リバースエンジニアリング法を介して、一般的な順応可能な型または患者特異的幾何学的形状を有するようにあらかじめ作製することができる。コンポーネントはソックスのように骨上に配置される。膝関節を露出して、損傷を受けた軟骨層を外科的に除去した後に、遠位大腿骨コンポーネント1bを配置することができる。装置の特殊な開口部は靭帯挿入を可能にし、それゆえ、外側開口部110および中央開口部111は外側靭帯および十字靭帯にそれぞれ適応する。図32中でもまた検討されるように、装置は、pHの変化、塩濃度の変化または温度の変化のいずれかのために、ヒドロゲル刺激および後続する収縮を介して、適所に緊密に保持することができる。例えば、コンポーネント1bは、pH9環境において手術前に平衡化することができ、それは後に本出願中で検討されるような膨潤の増加を導く。体液による平衡および後続するpHの低下に際して、成分1bは収縮し、したがって遠位大腿骨3bの特定の幾何学的形状に適合するだろう。あるいはヒドロゲルは手術前に低い(体液と比較して)塩濃度溶液、例えば0.01M〜0.05Mにより手術前に平衡化することができ、移植および身体の塩濃度(例えば0.15M)による塩平衡に際して、塩濃度に対する材料の感受性を利用して、コンポーネントは遠位大腿骨3bの特定の幾何学的形状に適合する。このようにして、成分1bの初期固定は遠位大腿骨3b上で確実になる。
【0037】
脛骨プラトーコンポーネント2bは湾曲した円盤型を有することができ、一側性または両側性になりえ、すなわち、それは両方の脛骨プラトー4bファセット、または軟骨傷害の程度に依存して、外側ファセットまたは内側ファセットのいずれかを単純に覆うことができる。骨において脛骨プラトーコンポーネント2bを固定させることができる1つ方法は、図9中に示されるようなファセット面上にくぼみ113を外科的に生成することによる。くぼみ113はリーマー加工することによって、または例えばポンチにより局部的に軟骨下骨112を破砕することによって、作製することができる。インプラントがその中に圧入嵌合できるように、くぼみ113はそのような寸法を有し、例えば環状くぼみ113は、環状コンポーネント2bよりも1または2ミリメートル小さい直径を有することができる。
【0038】
両方のコンポーネントの骨界面領域6は、図29中で検討されるように、骨の接着および/または内方成長を促進するように表面上に連結された骨形態形成タンパク質を備えた多孔質である。微小破壊またはリーマー加工された骨は再生力のある特性を示し、骨とヒドロゲル装置との間の相互侵入は手術後最大12週間かかる。
【0039】
材料詳述
関節形成において使用される現行の材料は、機械的「ベアリング」として十分に機能するが、天然の軟骨と比較して、鍵となる材料特性の差が問題となる。プラスチック、金属およびセラミックスは水和されないので、それらはもっぱら血清/関節液の潤滑に依存し、ベアリング機能は表面粗度に加えて耐性にも依存する。界面の摩耗は、アブレージョンを介して摩耗残屑を最終的に産生する。摩耗産物は、典型的には、微粒子形態(例えばポリエチレン粒子)、またはイオン形態(例えば金属イオン)である。これらの両方は滑膜性関節における炎症のプロモーターであることが示され、内部臓器に移動することが見出された。さらに、金属が骨よりも有意に硬いので、それらは応力伝達を完全に変え、骨吸収または線維組織形成および最終的にインプラントの周囲の緩みを導く。研究者が、従来の整形外科用「ハードウェア」に関連した問題を回避するように探索した1つの方法は、「ソフトウェア」(軟質材料)の使用である。米国において利用可能なかかる1つのアプローチは「カーティセル(Carticel)」自己軟骨移植である。これは、患者の自身の軟骨細胞から再生させた軟骨により膝軟骨中の局所欠損を「埋立て」のに効果的であることが示された。発生下の組織工学によって作製された軟骨、細胞移植、および自己移植に関する多数の他のアプローチがある。現在までに、軟骨様の剛性および水和性の潤滑表面の同時の組合せは、材料工学において到達するべき得がたい一対の特性であった。
【0040】
本発明は、図10において図示される、第1のネットワーク10としての末端架橋マクロモノマー13の中性の架橋されたネットワークおよび第2のネットワーク11中のイオン化された架橋ポリマーに基づく相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)ヒドロゲルネットワークを有するヒドロゲル装置1を提供する。実施形態の1つにおいて、第1のネットワーク10は、定義された分子量を備えた末端架橋ポリ(エチレングリコール)マクロモノマーからなる。第2のネットワーク11は、これとは対照的に、ポリ(アクリル酸)(PAA)の緩く架橋されイオン化性ネットワークである。さらに、ヒドロゲルは塩水溶液12を含む。表1中で詳述されるように、pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水中で膨潤させたとき、このPEG/PAAのIPNは、高引張強度、高圧縮強度、および低摩擦係数を有する。
【0041】
PEGおよびPAAのホモポリマーネットワークは、両方とも比較的脆弱な材料である(前者は比較的脆性であり、後者が高度に順応性である)。しかしながら、2つのポリマーは、PEG上のエーテル基とPAA上のカルボキシル基との間の水素結合を介して錯体を形成することができる。このポリマー間の水素結合は、水溶液中のそれら相互の混和性を促進し、それは今度は、光学的に清澄で均質のポリマーブレンドを産出する。イオン化性ネットワーク(PAA、pKa=4.7)を緩く架橋することによって(稠密に架橋する代わりに)、そのネットワーク立体配置の大きな変化は、溶媒のpHを変化させることによって、中性のPEGネットワークに影響せずに誘導することができる。pH4.7以上の塩含有緩衝液中で、PAAネットワークは荷電および膨潤し、pH4.7以下の時にPAAネットワークはプロトン化および縮小する。
【0042】
図11は、本発明に記載のIPNヒドロゲルの合成のために必要とされる工程を示す。ヒドロゲルのための出発材料は、水16中に溶解された官能末端基15を備えたテレケリックマクロモノマー13の溶液である。テレケリックマクロモノマーは重合されて(図11a)、第1の水膨潤ポリマーネットワーク10を形成する。次に(図11b)、水16と混合した親水性イオン化性モノマー14を、光開始剤および架橋剤と共に第1のポリマーネットワーク10に追加する。親水性イオン化性モノマー14は次に光重合され、第1のポリマーネットワーク10の存在下において架橋して、第1のポリマーネットワーク10の存在下において第2のポリマーネットワーク11を形成する。これは水膨潤IPNヒドロゲルの形成をもたらす(図11b、右側)。次に、水吸収IPNをpH7.4の塩含有溶液12中に浸漬し(図11c)、平衡まで膨潤させ、IPNの含水率および剛性率の両方の同時の増加を産出する。図11c中に右側のIPNは、左側のIPNと比較して、より高い剛性率を有する。ひずみ(この場合膨潤によって誘導された)の結果としてのこの率の増加は、IPN内の物理的架橋の数の増加によって引き起こされると考えられる。本発明の目的で、「ひずみ硬化」は物理的架橋(絡み合い)の増加として定義される、適用された膨潤による剛性率の増加はひずみを誘導する。終末材料は浸透圧によりあらかじめ応力を加えられたIPNであり、それは増加した剛性および強度を示す。
【0043】
図12Ai−ivは、モノマー17を使用して第1のネットワーク10を作製した後、IPNがどのように調製されているかを本発明方法工程の実施形態に従って示す。光開始剤および架橋剤(図示せず)の存在下における紫外線への暴露は、(i)〜(ii)の移行によって図示されるように、重合および架橋を導いて、ネットワーク10を形成する。(iii)〜(iv)において、第1のネットワークは、第2のネットワークの前駆体モノマー14、架橋剤(図示せず)および光開始剤(図示せず)により膨潤される。紫外線への暴露は、第1のネットワーク10の存在下において第2のネットワーク11の重合および架橋を開始して、IPNを形成する。
【0044】
図12Bは、反応性末端基15を備えたマクロモノマー13を使用して、既存の第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子の存在下において第1のネットワーク10を形成した後に、IPNがどのように調製されているかを本発明方法工程の実施形態に従って示す。第1のポリマーコンポーネントおよび第2のポリマーコンポーネントの混合物を作製し、次に紫外線下でテレケリックマクロモノマー13および15を反応させて、第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワーク10を形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。図12Cは、モノマー17に基づく第1のネットワーク10、および第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子からIPNがどのように形成されるかを本発明方法工程の実施形態に従って示す。モノマー17およびマクロ分子の混合物を作製し、次に紫外線下でモノマーを反応させて、第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワークを形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。
【0045】
本発明の1つの実施形態において、グラフトされたポリマーを使用してIPNを形成する。図16Aは、第1のポリマーネットワーク10および第2のポリマーネットワーク11を備えた本発明に従う標準的IPNを示す。図16Bは、第1のポリマーネットワーク10が親水性ポリマー29でグラフトされるIPNを示す。前述のマクロモノマー、モノマー、またはマクロモノマーおよびモノマーの組合せの任意のものを使用して、グラフト構造を得ることができる。図16Cは、第2のポリマーネットワーク11が別の親水性マクロモノマー30でグラフトされるIPNを示す。図16Dは、第1のポリマーネットワーク10が親水性モノマー29によりグラフトされ、第2のポリマーネットワーク11が別の親水性マクロモノマー30によりグラフトされるIPNを示す。グラフトネットワークは、ネットワーク(大部分は1つのポリマーから作製されるが、第2のポリマーのグラフト鎖を有する)を産出する比率の2つのコンポーネントの水溶性混合物の重合によって作製される。
【0046】
任意の親水性テレケリックマクロモノマー13を第1のポリマーネットワーク10を形成するために使用できる。好ましい実施形態において、予備形成されたポリエチレングリコール(PEG)マクロモノマーは、第1のネットワーク(10)の素地として使用される。PEGは生体適合性があり、水溶液において可溶性であり、広範囲の分子量および化学構造を生ずるように合成することができる。二官能性グリコールのヒドロキシル末端基は架橋可能末端基15へと修飾することができる。これらのマクロ分子および生体マクロ分子に対する、末端基官能基または側鎖基官能基は、アクリレート(例えばPEG−ジアクリラート)、メタクリレート、ビニル、アリル、N−ビニルスルホン、メタクリルアミド(例えばPEG−ジメタクリルアミド)、およびアクリルアミド(例えばPEGジアクリルアミド)を含みうるが、これらに限定されない。例えば、PEGマクロモノマーは、ジアクリラート、ジメタクリラート、ジアリルエーテル、ジビニル、ジアクリルアミド、およびジメタクリルアミドなどの末端基により化学的に修飾することができる。テレケリックな架橋可能PEGマクロモノマーを産出する末端基機能化反応の例は、図13および14、15中に示される。これらの同様の末端基は、ポリカーボネート、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、多糖類(例えばデキストラン)、生体マクロ分子(例えばコラーゲン)、およびそれらの誘導体または組合せなどの他のマクロモノマーに追加することができる。第1のネットワーク10は、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドまたはポリウレタン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリカーボネート、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたはそれらの誘導体に基づくものを含むが、これらに限定されない他のポリマーの任意の数で共重合することもできる。
【0047】
好ましくは、第2のネットワーク11中の親水性モノマー14はイオン化性およびアニオン性(負に荷電可能)である。好ましい実施形態において、ポリ(アクリル酸)(PAA)ヒドロゲルはアクリル酸モノマーの水溶液から形成されて、第2のポリマーネットワークとして使用される。他のイオン化性モノマーは、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、およびそれらの誘導体または組合せなどの負に荷電したカルボン酸期またはスルホン酸基を含むものを含んでいる。第2のネットワークモノマー14は正に荷電しているかまたはカチオン性でもまたありえる。親水性モノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたはそれらの誘導体などの非イオン性でもまたありえる。これらは、メチルメタクリレートなどのあまり親水性でない種もしくはより疎水性のモノマーまたはマクロモノマーにより共重合することができる。これらのモノマーに基づいた、架橋された線状ポリマー鎖(すなわちマクロ分子)もまた、タンパク質およびポリペプチド(例えばコラーゲン、ヒアルロン酸またはキトサン)などの生体マクロ分子と同様に、第2のネットワーク11中でも使用することができる。
【0048】
水中の末端架橋可能なマクロモノマー13の水溶液への光開始剤の追加および紫外線に対する溶液の暴露は、PEGマクロモノマーの架橋をもたらし、第1のネットワーク10として働くPEGヒドロゲルを生ずる。第1のネットワークの内部で第2のネットワーク11を重合し架橋することは、IPN構造を生ずるだろう。フリーラジカル重合を介してIPNヒドロゲルを調製することは、型の使用によって図7、8中で図示されたものなどの所望される型のヒドロゲルを形成することができるという追加の長所を有する。好ましくは、第1のポリマーネットワークは、テレケリックマクロモノマー13、15を、乾燥重量で少なくとも50%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも75%含む。緩衝液および有機溶媒(またはその混合物)を含む他の溶液を使用して、第1のネットワークマクロモノマー13または第2のネットワークモノマー14を溶解することもできる。任意のタイプの適合性のある架橋剤、例えばエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート(またはジアクリラート)、トリエチレングリコールジメタクリラート(またはジアクリラート)、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール(またはジアクリラート)、ポリエチレングリコールジメタクリレートもしくはポリエチレングリコールジアクリラート、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、誘導体またはそれらの組合せなどを使用して、前述の第1のネットワーク10の任意のものの存在下において、第2のネットワーク11を架橋することができる。任意の数の光開始剤もまた使用することができる。これらは2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンを含むが、これらに限定されない。
【0049】
第1のネットワークのテレケリックマクロモノマーの例
アクリレートまたはメタクリレートの末端基を備えたテレケリックPEGマクロモノマー13は、以下の様式で合成することができる。PEGはトルエンを乾燥させ、THF(100gあたり550mL)中で再溶解し、窒素下で維持した。蒸留トリエチルアミン(OH基あたり2.5当量)を、この溶液へゆっくり追加した。次に、塩化アクリロイル(または塩化メタクリロイル)を、室温で30分にわたって滴下漏斗(THFにより希釈された)を介して追加した。反応(図13)を一晩進ませた。濾過を実行して形成された塩を除去した。溶媒の体積をロータバップ(Rotavap)を使用して減少さsw、ジエチルエーテル中で沈殿させた。抽出に対する代替として、セルロース膜を介する濾過もまた実行される。未精製産物は沈殿後に真空においてジエチルエーテルを乾燥させ、次にMeOH中で溶解し、ロータバップ中で乾燥した。それを次に水中で溶解し、膜を通して濾過し、最終的に凍結乾燥した。
【0050】
ネットワークはPEG−ジアクリルアミドからもまた形成された。PEG−ジオールは以下の手技を使用して、PEG−ジアクリルアミド(図14)に変換した。PEG分子量3400(100g、58.8mmol −OH)を窒素下で700mLトルエン中で共沸蒸留し、約300mLのトルエンを除去した。次にトルエンを完全に蒸発させ、次にPEGを無水テトラヒドロフラン中に再溶解した。トリエチルアミンは使用の前に蒸留された。溶液を窒素下の室温浴中で冷却し、次に氷浴中で冷却した。溶液が清澄になるまで、無水ジクロロメタンを追加した(約100mL)。次に、トリエチルアミン(24.6mL、176.5mmol)は滴下して撹拌しながら追加し、続いて13.65mmol塩化メシル(176.5mmol、OH末端基あたり3当量の過剰量)を滴下により追加した。反応はアルゴン下で一晩進行させた。溶液を清澄になるまで真空下で紙を通して濾過し、続いてジエチルエーテル中で沈殿させた。次に産物を濾過によって回収し、真空下で乾燥した。PEG−ジメシラート産物を、1Lボトル中の400mLの25%アンモニア水溶液へ追加した。ふたを緊密に閉じ、パラフィルムにより密封し、反応を室温で4日間力強く撹拌した。次にふたを除去してアンモニアを3日間蒸発させた。溶液のpHを1N NaOHにより13まで高め、溶液を100mLジクロロメタンにより抽出した。ジクロロメタンによる抽出のために、NaClを水相(〜5g)へ追加し、水相を150mLのジクロロメタンにより数回抽出した。ジクロロメタン洗浄物を合わせ、減圧下で濃縮した。産物をジエチルエーテル中で沈殿させ、真空下で乾燥した。次にPEG−ジアミン分子量3400(20g、11.76mmolアミン)を窒素下で400mLのトルエン中で共沸蒸留し、約100mLトルエンを除去した。次にトルエンを完全に蒸発させ、次にPEGを無水テトラヒドロフラン中に再溶解した。溶液を窒素下の室温浴中で冷却し、次に氷浴中で冷却した。トリエチルアミン(2.46mL、17.64mmol)を滴下して撹拌しながら追加し、続いて1.43mLの塩化アクリロイル(17.64 mmol)を滴下により追加した。反応(図14)は、窒素下で暗中で一晩進行させた。次に溶液を清澄になるまで真空下で紙を通して濾過し、続いてジエチルエーテル中で沈殿させた。産物を濾過によって回収し、真空下で乾燥した。次に産物を10gの塩化ナトリウムを含む200mLの脱イオン水中で溶解した。pHをNaOHによりpH6へ調整し、100mLのジクロロメタンにより3回抽出した(エマルジョンとして水相中で残存するある程度の産物がある)。ジクロロメタン洗浄物を合わせ、産物をジエチルエーテル中で沈殿させ、真空下で乾燥した。あるいはPEG−ジアクリルアミドを1回ジエチルエーテルから沈殿させ、MeOH中で再溶解し、MeOHを乾燥させ、次にセルロース膜(分子量カットオフ:3000)を通した水中の遠心濾過によって精製した。凍結乾燥を使用して所望産物に到達した。
【0051】
ジオール含有PEGマクロモノマーはアリルエーテルにも変換された。二官能性アリルエーテルマクロモノマーは、以下の手技(図15)を使用して、PEGから合成した。新鮮な無水テトラヒドロフラン(THF)(100mL)をPEG10gごとに追加した。この混合物をPEGが溶解するまで穏やかに加熱し、次に氷浴中で冷却し、その後水素化ナトリウムを複数の小分けでゆっくり追加した(PEG ReOH基について1.05モル当量のNaH)。H2ガスの放出の停止後、システムをアルゴンによりパージし、塩化アリルまたは臭化アリル(PEG OH基あたり1.1モル当量、THF中で1:10希釈した)を追加漏斗を使用して滴下して追加し、その後反応混合物(図15)を摂氏85度の油浴へ移して一晩還流した。真空濾過を使用して臭化ナトリウム副産物を除去し、回転蒸発を使用してTHFの濃度を減少させ、その後氷冷ジエチルエーテル(10:1v:vジエチルエーテル:THF溶液)を使用してPEG−アリルエーテル産物を溶液から沈殿させた。
【実施例】
【0052】
以下の記述は、第1のネットワーク10ポリマーとしてPEGおよび第2のネットワーク11ポリマーとしてPAAを有するひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルの例示的な実施形態を指す。IPNヒドロゲルは、UV開始フリーラジカル重合に基づく(2工程の)連続するネットワーク形成技術によって合成される。第1のネットワークのための前駆体溶液は、UV感受性フリーラジカル開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンまたは2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンのいずれかを有する、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、水または有機溶媒中で、50%w/vの典型的な濃度で溶解した精製テレケリックPEGで作製されている。使用されるテレケリックPEGマクロモノマーのタイプは、PEG−ジアクリラート、PEG−ジメタクリラート、PEG−ジアクリルアミド、およびPEG−ジアリルエーテルであった。他の実施形態において、いずれのネットワークも、熱開始反応および紫外線光の使用を含まない他のケミストリーなどの他の手段によって開始するフリーラジカル重合によって合成することができる。UV重合の場合において、前駆体溶液を透明な型の中に流し込み、室温の紫外線源下で反応させる。暴露に際して、前駆体溶液はフリーラジカル誘導のゲル化を受けて、水不溶性になる。型は、平衡膨潤した所望される寸法でヒドロゲルを産出するような方法で製作される。
【0053】
第2のネットワーク11を組み込むために、PEGベースのヒドロゲルを、光開始剤および架橋剤(体積で0.1%〜10%のトリエチレングリコールジメタクリラート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、N,N−メチレンビスアクリルアミド、またはN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド)を含むアクリル酸(10〜100%v/v)水溶液などの、第2のモノマー14溶液中に、室温で24時間浸漬する。次に膨潤させたゲルをUV源へ暴露し、第2のネットワーク11を第1のネットワーク10の内部で重合および架橋し、第2のネットワーク中の架橋度が第1のネットワークのもの未満であるIPN構造を形成する。好ましくは、第1のネットワークテレケリックマクロモノマー対第2のネットワークモノマーのモル比は、約1:1〜約1:5000に及ぶ。さらに好ましくは、第1のネットワーク対第2のネットワークの重量比率は、約10:1〜約1:10の範囲である。本発明の別の実施形態において、IPNは、第2のモノマー成分対第1のマクロモノマー成分が100:1以上のモル比を有する。
【0054】
光学的透明度、含水率、柔軟性および機械強度などのヒドロゲルの鍵となる特性は、第2のモノマータイプ、モノマー濃度および分子量および紫外線暴露時間などの様々な因子を変化させることによって制御することができる。次のセクションの実験の焦点は、このシステムにおいて観察された膨潤誘導性のひずみ硬化であり、第1のネットワーク10および第2のネットワーク11の架橋および膨潤の様々な条件下でそれがどのように現われるかを、一軸引張試験を介して試験することによる。膨潤データーを使用して、剛性率、真破断応力および真破断ひずみと相関するネットワークの平衡水分およびポリマー含量を計算する。結果は、ひずみ硬化が、バルク変形によって強化されるPEGネットワークとPAAネットワークとの間の物理的絡み合いに由来することを示す。水素結合を促進する条件下で(PAAのpKa、pHが4.7以下であるときに)、これらの絡み合いはPEGとPAAとの間のポリマー間錯体によって補強され、IPNの破壊強度の増加を導く。PAAのイオン化を促進する条件下で(pHが4.7を超え、塩を追加するときに)、膨潤PAAネットワークと静的テレケリックPEGマクロモノマーネットワークとの間の立体相互作用(すなわち物理的架橋)の増加は、剛性率の増加を導く。
【0055】
特定の実施形態において、第1のネットワーク10中のPEGの分子量の変化および第2のネットワーク11中のPAAポリマー含量の変化を有するIPNのアレイは、第1のネットワーク10中のジアクリラートの架橋および第2のネットワーク11中のトリエチレングリコールジメタクリラートの架橋に基づいて製作された。ヒドロゲルはすべて、光開始剤(モノマー14またはマクロモノマー15に関して1%v/vの濃度の2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン)を使用して、紫外線による光重合によって形成された。IPNが調製される前に、PEGおよびPAAに基づく単一ネットワークヒドロゲルを個別に合成して、各組成物のゲル形成を確認し、単一ネットワークの物理的特性を調査する。PEG単一ネットワークのために、PEGマクロモノマーの分子量が275〜14000の間の範囲で変化させたヒドロゲルが合成された。脱イオン水において膨潤させた場合、低分子量PEGマクロモノマーは脆性ゲルを生じるが、より高い分子量のPEG−DA(3400)から作製されたヒドロゲルは透明かつ柔軟であることが見出された。これらの結果に基づいて、PEGの異なる範囲の分子量(3400、4600、8000および14000)を、第1のヒドロゲルネットワークのためのマクロモノマーとして選択した。一連のIPNを、各タイプのPEGネットワーク内のPAAネットワークの重合および架橋によって合成した。単一ネットワークヒドロゲルと比較して、結果として生じたIPNは有意によい機械的特性を有した。
【0056】
IPN機械強度に対するテレケリックPEG−DAマクロモノマーの分子量の効果を調査するために、分子量3400Da、4600Da、8000Daおよび14000DaのPEG鎖を、アクリル酸重合条件を一定に保ちながら(モノマーに関して1%v/v架橋剤および1%v/v光開始剤を含む脱イオン水中で50%v/v)、第1のネットワークにおいて使用した。結果として生じるIPNを、脱イオン水中での含水率、引張特性およびメッシュサイズに関する特徴を調べた。表2中で示されるように、PEG−DAマクロモノマーの分子量の変化は、PEG−DA単一ネットワーク率の変化を導いた。この効果はPEG/PAAのIPNにおいて増大され、ネットワークがより低分子量のPEG−DAマクロモノマーから調製されるにつれて、IPN初期率および最終率はますますより高くなる。PEG分子量が8000を越えて増加した場合に強度の増加はほとんどないことが注目され、PEGとPAAのネットワークの間の架橋の分子量間の差異が強度促進のために重要であることを示す。さらに、PEGマクロモノマーの分子量は、応力−ひずみ曲線が初期率からひずみ硬化された最終率へ移行する臨界ひずみ(εcrit)に強く相関した。εcritはより低分子量のPEGマクロモノマーから調製されたIPNについてより小さく、これらのネットワークが変形に応答してより急速にひずみ硬化することを意味する。
【0057】
【表2】
【0058】
コポリマー構造ではなく相互貫入構造を形成する重要性について、PEG−co−PAAコポリマーヒドロゲルの合成および引張特性試験によって調査した。次に、その応力−ひずみプロファイルを、IPN、ならびにPEG単一ネットワークおよびPAA単一ネットワークのプロファイルと共に並置した。図18Aにおいて、PEG(8.0k)/PAAのIPNの代表的な真応力(σtrue)vs真ひずみ(εtrue)プロファイルは、PEG(8.0k)−PAAコポリマーならびにそれらの構成要素のPEG(8.0k)ネットワークおよびPAAネットワークのプロファイルと比較される。IPNは、コポリマーおよび単一ネットワークの4倍以上の破断応力のひずみ硬化挙動を示す。しかしながら、試験された材料の各々は異なる含水率を有するので、応力データーをポリマー含量に基づいて正規化して各々のヒドロゲル中の単位ポリマーあたりの真応力を決定した。図18Bにおいて、単位ポリマーあたりの真応力(単位ポリマーあたりのσtrue)は、PEG(8.0k)−DA、PAA、PEG(8.0k)/PAA、およびPEG(8.0k)−PAAコポリマーについての真ひずみに対してプロットされる。PEGの単一ネットワーク、コポリマーおよびIPNの初期率は同一である(単位ポリマーあたりのE0=0.91MPa)が、PAA単一ネットワークの初期率はより低い(単位ポリマーあたりのE0=0.55MPa)。PEGネットワークの破断点の近くで(εtrue〜0.6)、コポリマーは、同等の重量でできているPEG単一ネットワークおよびPAA単一ネットワークの間の中間の率で引き続き伸ばされる。最終的にそれはまた、2つの単一ネットワークのεbreak値の間の中間のひずみで破損する。全く対照的に、PEG/PAAのIPNは、PEGネットワークの破損点を越えて、率は30倍増加し、10.6MPaの単位固体あたりの平均最大応力下でεtrue〜1.0で破断する、劇的なひずみ硬化効果を示す。ポリマー含量について正規化せずに、IPN(20%固体)およびコポリマー(51%固体)についてσbreakは、それぞれ3.5MPaおよび0.75MPaである。
【0059】
ポリマー間の水素結合の役割を調査するために、ヒドロゲルを膨潤する液体のpHを変化させてPAAネットワークのイオン化状態を変化させた。PAAの平衡膨潤はpHの変化に対して感受性があるので、pHの変化がPEG/PAAのIPNの機械的特性に対する効果を有することが予想された。合成の後に、水膨潤PAA単一ネットワークおよびPEG(8.0k)/PAAのIPNを、pH 3〜6および0.05の一定のイオン強度(I)の緩衝液中に置いた。PAAネットワークおよびIPNの両方において、pHが3〜6に増加するにつれて平衡含水率は増加した(表2)。PAAネットワークの場合において、pH3および4で中程度に膨潤したが、pH5または6ではpKa(4.7)を超えたPAAのイオン化のために高度に膨潤した。IPNもまたpHに依存する異なるレベルの膨潤を達成し、pH3および4で中程度に膨潤したが、pH5または6でpKa(4.7)を超えたPAAのイオン化のために高度に膨潤した。pH3および4の両方で、IPNはPAA単独よりも低い平衡含水率を達成したことが注目される。酸性環境において水素結合を介するPEGおよびPAAの互いとの錯体が、よりコンパクトなそれほど水和性でない相互貫入ネットワーク構造を導くという事実によって、これは部分的に説明することができる。4.7を超えたpHでPAAがイオン化されるようになり、カウンターイオン(水と共に)がヒドロゲルに侵入するので、PEG鎖およびPAA鎖は解離して電荷中性を維持し、高い膨潤度を導く。それにもかかわらず、IPNは、PEGネットワークをPAA膨潤に配置する束縛のためにPAA単一ネットワークよりもわずかに低い程度(1.0〜1.5%)まで膨潤する。表2は、PEG/PAAのIPNの最大応力(σmax)または引張強度は、pH3(σmax=8.2MPa)の低膨潤状態において、pH 6(σmax=0.86 MPa)の高膨潤状態においてよりも、一桁大きいこともまた示す。類似する現象はPAAネットワークにおいて観察されるが、σmaxについての絶対値はpH3で0.38MPaおよびpH6で0.05MPaである。次にすべてのpHで、IPNはPAAネットワークよりも大きな引張強度を有し、この差はより低いpHで大きくなる。破断応力の差とは対照的に、IPNおよびPAAのネットワークの破断ひずみ値の傾向は、ほぼ等しく、εbreak値はpH3で〜1.2からpH6で〜0.55に変化する。この結果は、図18A〜Bにおいて行われた、IPNの伸長性がPAAネットワーク(PEG(0.6)よりも高いεbreak(0.9)を有する)の存在のためのように思われる観察を確かにする。IPN中にPAAネットワークが単に存在することは、ネットワークの一軸伸長性(IPNヒドロゲルが関節の荷重を支持するように使用されることを可能にする特性)を促進するように思われる。しかしながら最大応力データーのコンテキストにおいて(表2)、より高い伸長での荷重負担能力は、高pHで水素結合の非存在下よりも、低pHで水素結合の存在下においてより大きい。これとは対照的に、IPNネットワークおよびPAAネットワークの初期剛性率(E0)のpH依存性はそれほど分かりやすくない。pHが3から6に増加するにつれて、PAAネットワークの率は0.09MPaから0.05MPaへとわずかな低下を示す。一方、pHが3から6まで変化する場合、IPNの率は全く減少しないが、むしろ増加する。IPNのpH依存性は、pH4からpH5に移行するときに率がおよそ2分の1に低下するという、PAA単一ネットワークによって示された傾向に従わないことが注目される。率のこの減少は、PAA単一ネットワークの含水率の増加と相関する。さらに、含水率、およびその結果としてpHに基づくヒドロゲル体積または表面への依存性は、収縮または膨潤を利用する(pH)刺激感受性ヒドロゲル関節形成装置が、事前のセクションにおいて記述されているように、骨の内側またはその周囲の固定を順応させて確実にすることを可能にする。
【0060】
相対的なネットワーク率の結果をさらになお調査するために、IPN内のPAAの膨潤は最大化された。表2において示される実験データーは、IPNの率が膨潤増加によって負に影響されないことを示した。PEGネットワークは、追加のポリマー間相互作用およびIPN率の対応する増加を導く方法でPAAの膨潤に対する束縛として作用する。特に、PAA膨潤に対する中性のPEGネットワークの束縛効果の増加は、IPN中の物理的絡み合いの程度および数を増加し、今度は、IPNにおいて観察されたひずみ硬化挙動を導くだろう。この仮説を試験するために、第1のネットワーク分子量PEG 3400、4600および8000、ならびに一定のPAAネットワーク条件を有するIPNを、生理的条件下で最大の膨潤を誘導するために、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4、I=0.15)中に置いた。表2は、これらの各々の分子量を有するPEGマクロモノマーから調製されたネットワークについての平衡含水率および対応する膨潤比もまた、水膨潤IPNおよびPBS膨潤IPNの含水率で並置して示す。第1のPEGネットワークのサイズを3400Daから4600Daおよび8000Daに増加させることは、IPNが膨潤できる程度を増加させる。具体的には、イオン化した場合PEG(3.4k)/PAAのIPNは70%水のみまで膨潤するが、イオン化した場合PEG(4.6k)/PAAのIPNは77%水まで膨潤し、PEG(8.0k)/PAAのIPNは90%水まで膨潤する(PEG(8.0k)単一ネットワークとほぼ同じ含水率)。PEG(3.4k)ベースのIPNおよびPEG(4.6k)ベースのIPNの平衡含水率値は、それらの構成要素のPEG−DAネットワークの平衡含水率値(それぞれ、79.3%および84.5%)に近似しないことが注目される。
【0061】
ヒドロゲルの時間依存的含水率を、乾燥重量に対する膨潤重量の比に関して評価した。乾燥ヒドロゲルをリン酸緩衝生理食塩水に加えて水中でも量り、次に浸漬した。等間隔で膨潤したゲルを引き上げ、たたくようにして水気を取り、平衡に達するまで量った。平衡含水率(WC)のパーセンテージはヒドロゲルの膨潤重量および乾燥重量から計算した:
【数1】
式中、WsおよびWdはそれぞれ膨潤ヒドロゲル重量および乾燥ヒドロゲル重量である。
【0062】
図20は、PEGおよび第2のネットワーク中の2つの異なる量のアクリル酸(25%および50%)からなるIPNヒドロゲルの時間依存的膨潤挙動を示す。単一ネットワークIPNゲルをデシケーター中で乾燥し、脱イオン水中に置き、次に規定時間間隔で量った。両方のヒドロゲルにおいて、大部分の膨潤は5〜10分内に起こり、平衡膨潤は30〜40分以内に達成された。異なる含水率を有するヒドロゲルを得るために変化させたパラメーターは、PEGマクロノモノマー(macronomonomer)の分子量、第2のネットワーク中のPAAの重量分率、加えて第1のネットワークまたは第2のネットワークに追加された架橋剤(例えばトリエチレングリコールジメタクリラート、または低分子量PEG−DA)の量であった。
【0063】
表3は、第2のネットワークの調製に使用されるアクリル酸モノマーの濃度の変化の、PBS中のPEG/PAAのIPNの平衡含水率に対する効果を示す。一般に、アクリル酸モノマーのより高い濃度は、規定の架橋条件セットについて、より低い平衡含水率ならびにより高い剛性(引張率)および引張強度を有するヒドロゲルを導く。これらの成分から作製された本発明に記載のIPNヒドロゲルは、好ましくは、約15%〜95%の間の、およびより好ましくは約50%〜90%約の間の平衡含水率を有する。
【0064】
【表3】
【0065】
PEGの異なる分子量およびアクリル酸の異なる出発濃度が、異なる量の平衡含水率をもたらすので、ヒドロゲル中のPEGおよびPAAの最終量は、使用される出発PEGの分子量および使用されるアクリル酸の濃度に依存して変化する。本発明に従って作製されたPEGおよびPAAの重量比が変化する組成物の例は、表4中に示される。この表中のすべての組成物は、50%出発濃度の純水中で膨潤させた分子量8000DaのPEGマクロモノマーを使用して作製された。
【0066】
【表4】
【0067】
より稠密に架橋されたPEGネットワークの拘束内のPAAネットワークの膨潤(PEGマクロモノマーの分子量の低下による)は、結果として生じるIPN率の劇的な結果を有する。具体的には、図21は、より低い分子量(8000ではなく4600)によるPEGネットワークを使用してPAAが束縛されるときに、図18B中で示されたように、高pHに起因するひずみ硬化の促進がさらになお亢進されることを示す。より緊密に架橋されたIPNをリン酸緩衝生理食塩水中に置いて、PAAネットワークが99%以上イオン化される生理的条件(pH 7.4、イオン強度=0.15)下でそれらを調べた。PEG(4.6k)/PAAのIPNを最初に純脱イオン水(pH5.5、塩不含)中で平衡まで膨潤させ、次にリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4、I=0.15)のイオン化条件に切り替え、平衡まで再び膨潤させた。pH7.4への増加および塩の追加により、PAAネットワーク(しかしPEGネットワークではなく)は膨潤した。IPN内のこの差異的な膨潤の結果は、曲線の初期部分を含む応力ひずみプロファイルにおける劇的な上方への移行だった。言いかえれば、ひずみ硬化率だけでなく初期率においてもまた増加があった。従って、ひずみ硬化されたPEG/PAAヒドロゲルは、生理的なpH中の材料特性の適合性のあるセット(剛性、強度)を示し、関節形成装置のために適切な選択を与える。
【0068】
図22は、本発明の実施形態に従って、架橋剤化学末端基の3つの異なる組合せによるが、PEG(分子量4.6k、水中の重量で50%)およびAA(水中で50%v/v)の同一の処方で、加えて同一の重合条件(光開始剤および架橋剤のモル濃度およびUV強度)および膨潤条件(pH7.4のPBS)で、調製されたPEG(4.6k)/PAAのIPNの応力ひずみプロファイルを示す。試料(A)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(B)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(C)は、PEG−ジアクリラートの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。これらの結果は、代替の架橋戦略を使用して、本発明の本質に反することなく、テレケリックマクロモノマーベース第1のネットワークおよびイオン化された第2のネットワークに基づくひずみ硬化されたIPNを生成できることを実証した。
【0069】
PEG/PAAのIPNを、イオン強度(0.15M、0.30M、0.75Mおよび1.5M)の変化する一連のPBSの溶液中で平衡まで膨潤させ、それらの平衡含水率および応力−ひずみ関係を測定した。表2は、IPNの含水率が膨潤培地中のより高い塩濃度により減少する(I=0.15で90%を上回るものからI=1.5で78%未満まで)ことを示す。これは、緩衝液中の増加した塩がPAA鎖上の負電荷を遮り、静電反発力を減少させ、次にはネットワークを膨潤させるという事実によって引き起こされる。
【0070】
イオン強度は応力−ひずみ関係に対して中等度効果を有した。表2は、I=0.15からI=0.75におけるIPNの応力−ひずみ関係がほぼ等しかったことを示す。I=1.5の緩衝液中で膨潤させたIPNは、より高いひずみで破壊応力のわずかな促進を示した。より高い固体含量を備えたヒドロゲル(より高いイオン強度条件でのIPN)はより大きな機械強度を有するはずなので、この結果は含水率データーと一致している。最も高いイオン強度(I=1.5)の溶液中のIPNの最終率は、より低いイオン強度での最終率よりも高いようであることが注目される。しかしながら、差は小さく、統計的に有意であるとは分からなかった。
【0071】
PAAネットワークとPEGネットワークとの間の位相幾何学的相互作用の量を増加するために、PAAのポリマー含量をPEG(3.4k)の第1のネットワークの内部で変化させた。第2のネットワーク重合の時の溶液中のアクリル酸の体積分率は、重合の前に0.5〜0.8の間で変化させた。重合の後に、IPNはPBS中で平衡まで膨潤させた。結果として生じたヒドロゲルは異なる含水率を有し、PEG(3.4k)/PAA[0.8]のIPNにおいて62%からPEG(3.4k)/PAA[0.7]のIPNにおいて65%まで、およびPEG(3.4k)/PAA[0.5]のIPNにおいて77%である。アクリル酸濃度を増加したIPNはより低い含水率を有しており、それはPAAの高吸収性の観点から直観に反した結果であることが注目される。これらのIPNの含水率および引張特性は表3において示される。最も高いPAA含量のIPNは最も高い破断応力および率を有するが、最低のPAA含量のIPNは最低の破断応力および破断ひずみを有していた。特に、これらのサンプルについての初期率値は有意に変化し、PEG(3.4k)/PAA[0.5]において3.6MPaからPEG(3.4k)/PAA[0.7]のIPNにおいて12MPaまで、およびPEG(3.4k)/PAA[0.8]のIPNにおいて19.6MPaである。
【0072】
純水中のIPN膨潤に対するPAA含量の効果
PEG(4600)単一ネットワークを調製し、光開始剤および架橋剤の存在下において第2のネットワーク中のAAの濃度を変化させて吸収させた。次にAAで膨潤させたPEGネットワークに基づくIPNをUV開始重合によって形成した。次にIPNを型から取り出し、脱イオン水中に浸漬し、平衡まで達するようにした。次に、PEG単一ネットワークと比べたIPNの体積を測定し比較した。結果を図19中にプロットする。図19は、IPNの体積が第2のネットワーク中のAAモノマーの増加量により増加したことを示す。これはPAAが水を吸収するという理解と一致しており、したがってIPNにおいてPAA含量の増加は吸水増加を導くにちがいない。しかしながら、AA:EGモノマー比が1未満である場合IPNはPEG単一ネットワークに比べて脱膨潤し、AAがEGモノマーに対して過剰量である場合PEGネットワークに比べて膨張するという事実が注目される。
【0073】
AAモノマー含有量を変化させた同一のPEG/PAAのIPNを、一軸引張測定によって試験した。結果を図19中に示す。この図において、破壊応力およびヤング率の両方を、重合時のAA質量分率の関数としてプロットする。ヤング率はAA濃度の増加につれて緩やかで単調な増加を示した。これとは対照的に、破壊応力は、AA:EG比が1を越えて増加した場合、劇的な増加を示した。しかしながら、AAモノマー濃度が増加するにつれて破壊応力は単調な減少を示した。最終的に、PAAの第2のネットワークの光開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)および架橋剤(トリエチレングリコールジメタクリラート)の濃度を、PEG(4.6k)ネットワーク内の重合の最中に変化させ、結果として生じるPEG(4.6k)/PAAのIPNを、純水およびPBSの両方におけるそれらの機械的特性に関して研究した。結果を表5中に示す。
【0074】
【表5】
【0075】
イオン化性モノマーが第2のネットワークにおいて重要であることを実証するために、一連のIPNを、第2のネットワークにおけるイオン化性度を破壊した条件下で調製した。使用される第1の方法は、非イオン性モノマーとの第2のネットワークの共重合であった。第2のネットワーク中のAAモノマーは、HEAモノマーと比較して3つの異なる濃度(10:1、3:1および1:1)で混合した。脱イオン水中で膨潤させたヒドロゲルの一軸引張試験実験は、第2のネットワークにおいてAA:HEAが最高比率のPEG/P(AA−co−HEA)IPNが、機械強度の促進を表わすことを示した。具体的には、IPNの引張強度の変化は、AA:HEA比率が10:1から3:1に、1:1にそれぞれ減少した場合、9MPaから6MPaに、次に3.5MPaに減少した。言いかえれば、相対的なHEA含量がより高いIPNは、機械的特性の促進をほとんど示さなかった。この結果は、PAA中のイオン化性カルボキシル酸基の存在が本発明において重要な要素であることを実証する。
【0076】
実験の別のセットにおいて、PEGネットワークを、水酸化ナトリウムによる滴定によってpH5.5に部分的に中和されたAA溶液(光開始剤および架橋剤を含む)中に浸漬した。次にモノマーで膨潤したPEGネットワークを紫外線に暴露して、PEGネットワーク内に部分的に中和されたPAAネットワークを形成した。次に「前中和した」PEG/PAAのIPNをPBS中で洗浄し、一軸引張試験を行なった。重合前のAA溶液の中和、および次に第2のネットワークの形成が、同一の弾性率を備えるが、劇的に減少した破壊強度を備えたIPNを導くことが見出された、破断応力は、酸性条件下で調製し次にPBS緩衝液中で中和したIPNの場合において、約4MPaから約0.5MPaに減少した。このことは、ひずみ硬化されたIPNの生成において製作プロセスの重要性を示し、すなわち好ましい実施形態において、IPNが完全に形成された後に、緩衝塩水溶液による第2のネットワークのイオン化および膨潤を実行するべきである。
【0077】
これらの結果は、生理的なpHおよび塩濃度の緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)中で膨潤させた場合、PEG/PAAのIPNシステムがひずみ硬化し、次には高い値の初期剛性率により「予応力を加えられる」ようになることを実証する。これらの条件下のひずみ硬化は、緊密に架橋された中性のPEGネットワークが有する、イオン化されたPAAネットワークの膨潤に対する束縛効果の結果である。この束縛効果は、2つのネットワークの間の追加の物理的架橋を導き、IPNの初期ヤング率の増加として現われる。ヒドロゲルが到達できる引張率の値(12MPa、しかし約1〜約20MPaの間で調整可能)は、当該技術分野において報告されるものを上回る。ヒドロゲルの率(12MPa)は、天然の健康なヒト軟骨について報告された値の範囲であることが注目される。
【0078】
天然の軟骨は、実際には、コラーゲンおよび負に荷電したプロテオグリカン類を含む、無血管の「IPNヒドロゲル」である。比較すると、IPNヒドロゲルはPEGおよび負に荷電したPAAを含む。PEGはコラーゲンのアナログとして働き、その一方でPAAはプロテオグリカン類のアナログとして働く。天然の軟骨に対するこれらのIPNのこの基本構造類似性は、それらの機能的類似性の根拠であると考えられる。第1のネットワークによってもたらされる立体化学的束縛にカップリングして、高分子電解質によって生じた浸透圧は、軟骨のような、硬いにもかかわらず柔軟で高度に潤滑な表面を示す、「予応力が加えられた」材料を産出する。軟骨が示す低い摩擦係数について説明するために、多数の科学的なアプローチが展開されており、二相理論によって記述された液体−固体応力共有、および「涙ぐんだ潤滑」理論は、いくつかの代表的な例である。これらの理論に従って、材料が低摩擦になるように透過性であることは重要であり、透過係数および平衡率の組合せは、いわゆる「涙ぐんだ潤滑」を可能にするが、同時に、継続的または反復的な動的荷重下の過度の液体減少を防止するようなものである必要がある。ひずみ硬化されたIPNが、天然の軟骨に類似する透過性、負電荷、含水率および剛性を有するという事実に基づいて、天然の軟骨が任意の前述の機構を介して低表面摩擦係数を示すことと同じ根拠で、IPNが低表面摩擦係数を示すという仮説を立てる。
【0079】
PEG/PAAのIPNを定義する特色の1つが、高い(最先端の既存のヒドロゲルと比較して)引張剛性率であることを示ししてきた。PEG(3400)/PAA(70%)ヒドロゲル材料の引張応力ひずみ挙動は、弾性引張率が12MPaである図17A中に示される。図17Bは、二相性の定数を決定できる上述のヒドロゲルの拘束圧縮挙動を提示する。時間−ひずみ曲線から、凝集体平衡率は、Ha=1.56MPaであり、透過係数はK=2.4×10-14m4/N/秒であることが見出される。好ましい実施形態において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは10-18から10-12m4/Nsecにわたる透過係数を有する。ヒドロゲル非拘束圧縮挙動は図中に17C提示され、それから拘束圧縮強度は、80%を超える圧縮下の破損ひずみで、18MPaであることが見出された。ヒドロゲルの引張クリープ挙動もまた図17D中に図示される。軟骨に対するヒドロゲル材料の特性のセットの比較は、著しい類似性を示す。
【0080】
ピン・オン・ディスク型摩擦計実験によって、生理的な接触応力下のPBSおよび関節液におけるPEG/PAAヒドロゲルの摩耗率を測定した。ヒドロゲルを〜1Hz荷重頻度で3,000,000サイクルで試験し、線形摩耗率は、0.2μm/100万サイクルであり、約0.2m/年と等しいことが見出され、ベアリング領域5の厚みに基づいて、装置の摩耗寿命は一生涯の間十分であることが示唆される。材料は、動的な生理的な荷重条件下のゲル・オン・軟骨の立体配置においてもまた試験された。試験は、関節液およびウシ血清溶液中で、1Hzの摺動頻度で150,000サイクルおよび0.5〜1.5MPaの動的荷重で行なわれた。肉眼的な観察は、軟骨もPEG/PAAも、肉眼で識別可能な小繊維化または摩耗を示さないことを示した。
【0081】
錨着詳述
装置の初期錨着は、ヒドロゲル装置と下層にある骨との間のわずかなサイズ差によって提供される伸張そして嵌合の固定によって可能なものにする。ポリマーキャップは、骨に対するピッタリとした圧縮嵌合を生成して、大腿骨骨頭を覆って配置される。股関節ソケットなどの関節の凹面の場合において、わずかに一回り大きいメスのタイプインプラントは、関節の壁に対する拡張嵌合を生成する。
【0082】
装置の生物学的錨着は骨の無機成分との骨統合によって達成される。本発明において、カルシウムイオンおよびリン酸イオンは、図3中で示されるようなヒドロゲルのPAAコンポーネントに対するそれらの親和性を介してPEG/PAAのIPNに結合される。ヒドロキシアパタイト(HAP)は、カルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む骨および歯の主な無機成分であり、骨芽細胞増殖の公知のプロモーターである。歯科産業において、ポリカルボキシラートセメントを使用してエナメルに人工基質(例えば歯科キャップ)を接着する。これらのセメントの基本原理は、PAA鎖のカルボン酸基とHAPを構成するリン酸カルシウムマトリックスとの間の静電的相互作用である。2つの機構が提案され、1つは、カルボン酸基がHAP中のリン酸カルシウムを置き換えて本質的にマトリックスの中に「挿入」するものであり、他のもの(それは相乗的に機能しうる)は、カルシウムがイオンブリッジングによってHAPおよびPAAを架橋するものである。カルシウム含有骨成分がPEG/PAAのIPNに結合することができると示す実験において、ヒドロキシアパタイト(HAP)(公知の骨誘導骨ミネラル)をPEG/PAAのIPNの表面上に被覆した。様々なヒドロキシアパタイト粒子サイズはPEG/PAAに結合することができた。PEG/PAAヒドロゲルは、脱イオン水中でHAPの10%w/v水性懸濁物でインキュベートされ、これはヒドロゲルの表面上でのHAP粒子の目視可能な結合を導いた。異なる直径(20nm〜5μm)のHAP粒子の水性懸濁物中のヒドロゲルのインキュベーションにより、ヒドロゲル上に厚く不透明な表層を産出した。次にサンプルを、段階的なエタノール溶液中で処理することによって走査電子顕微鏡(SEM)分析のために調製した。エタノール中の浸漬により、HAPの物理吸着された目視可能な層が除去された。SEMは、ヒドロキシアパタイト被覆ヒドロゲル(図23b)vs非被覆ヒドロゲル(図23a)の表面形態における差を示した。エネルギー分散X線(EDX)分光法(図23c)は、ヒドロゲルの表面上に、ヒドロキシアパタイトの特性であるおよそ1.5〜1.6の比率でカルシウムおよびリン酸塩の存在を示した。SEM用に被覆したヒドロゲル(挿入図)から、HAP(200nmの直径を示す)がその表面に局在することが示された。粒子に対する生物学的応答もまた、ヒドロキシアパタイト被覆ヒドロゲル上の骨芽細胞様細胞(MG−63細胞株)の播種によって研究された(図23d)。骨芽細胞様細胞は200nm以上の直径のHAP被膜上に伸展および増殖する証拠が示された。
【0083】
HAPの異なるサイズの3つの粒子(20nm、200nmおよび5μm)を、ヒドロゲル上の表面被覆に対する粒子サイズの効果、また骨芽細胞様細胞による生物学的応答に対する効果を測定するために調べた。図24は、未修飾シリカ(列A)およびPEG/PAAヒドロゲル(低倍率および高倍率で、それぞれB(中央)およびC(下部)列に示される)の両方の上に使用される3つのタイプのHAPのSEM画像を示す。これらの画像は、ヒドロゲルの表面被覆が粒子直径に反比例したことを実証する。より小さな粒子は、より均一にかつ完全にヒドロゲル上に分布する。この表面修飾戦略は、無機ヒドロキシアパタイトとPAAの負電荷密度との間の静電的相互作用を利用する。ヒドロキシアパタイトを、身体への移植前に装置上に前被覆するか、または装置に隣接する骨が再構築されるのでインビボで被覆することができる。
【0084】
化学的錨着図25A〜Bは、本発明に従う個別のポリマー接着剤を介して骨に結合されるIPNネットワークを示す。先に存在するIPNヒドロゲル10、11は、UV感受性架橋性基により官能基化されるか、または全く処理されないのいずれかで、骨3、4を覆って配置される。ヒドロゲルと骨との間の界面で、反応性モノマー18またはマクロモノマー21の前駆体溶液がある。これらのモノマーまたはマクロモノマーは、部分的に相互貫入ポリマーネットワークのマトリックスに貫入する。重合の開始に際して、モノマーまたはマクロモノマーは重合および架橋し、下層にある表面へ結合されてヒドロゲルと物理的に絡み合うおよび/または化学的に結合される介在ポリマーを産出する。
【0085】
この錨着アプローチの1つ例において、脱イオン水中の95%のエタノール中で0.1%w/vの濃度のヘテロ二官能性架橋剤(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリラート)(pH4.5に調整して)を、あらかじめ洗浄および乾燥したウシ骨の表面上にはけで塗り、15分間乾燥させ、骨の無機マトリックス中のリン酸塩に反応させた。次に、PEG−ジメタクリラート(分子量1000Da)の25%w/v溶液を、光開始剤としての1%v/v 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンと共に調製し、次に、PEG/PAAのIPNヒドロゲルの骨界面面に広げた。次にIPNヒドロゲルの中にPEG−ジメタクリラート溶液を1時間拡散させた。次に骨をIPNヒドロゲル上のPEG−ジメタクリラート溶液の上に配置し、次に骨およびヒドロゲルは、均一な締付圧に達するように、ヒドロゲルの上に配置したバインダークリップおよびスライドグラス(厚さ1.0mm)をともに使用して締めた。次に試料を45秒間紫外線源(350nm)下に置いて、PEG−ジメタクリラートを硬化させた。結果としては、IPNの骨界面内に相互貫入されるPEG−ジメタクリラート接着剤を介して、PEG/PAAのIPNヒドロゲルはウシ骨試料に結合した(図25B)。骨に対するトリメトキシプロピルシリルメタクリレートの反応を介する骨上のメタクリレート基の存在のために、PEG−ジメタクリラート接着剤は骨の孔を満たしただけでなく、化学的に表面にも結合した。「骨プライマー」の別の例はイソシアナトトリメトキシシランであり、それは骨の無機部分との反応後に表面上の反応性イソシアネート基を産出し、装置自体の骨界面または接着剤のいずれかの上の官能基(ヒドロキシル、アミンまたはカルボン酸など)との反応に利用可能である。この方法は、他の架橋可能ポリマーに加えて下層にある骨のシラン官能基化の有無に関わらず使用することができる。
【0086】
図26は、本発明に従うネットワークの1つが錨着介在ポリマーとして働く半相互貫入ネットワークを示す。テレケリックマクロモノマー13、15および第2のネットワークポリマー11は、溶液中でともに混合され、UV感受性架橋性基23により前被覆および/または官能基化された骨表面を覆って流し込まれる。光開始剤の存在下における開始源(例えば紫外線)に対する暴露は、テレケリックマクロモノマーおよび被覆/官能基化された骨表面の両方の上のこれらの架橋性基のフリーラジカル重合および架橋を導く。フリーラジカル重合および架橋の結果は右側に示される。テレケリックマクロモノマーの末端15は重合し、骨の表面との物理結合的および/または化学結合を形成した。線状の第2のネットワークポリマー11はこの第1のネットワーク内に物理的にトラップされ、第1の化学的に架橋されたネットワーク10を相互貫入する第2の物理的に架橋されたネットワークを形成する。
【0087】
化学的表面修飾
本発明に記載の装置の実施形態は、2つの異なるポリマー組成物によるベアリング領域および骨界面領域を含む。一般に、このアプローチは、図2において記述されるような装置内の組成勾配を導く。図27Aは本発明の実施形態に完全相互貫入ネットワークを示し、そこでは第3のネットワーク前駆体は、所定時間の間のモノマーの相互拡散によって先に存在するIPN内に部分的に相互貫入され、次にIPNの存在下において重合および架橋される。これは、2つのネットワークのみ含む他の側とは異なる特性を有する、1つの側面上で効果的に骨界面領域として働くことができるIPNヒドロゲルの三重ネットワークを産出する。2つの側面の間の移行帯は第3のネットワークの重合前の第3のネットワークモノマーの拡散の深さによって決定される。
【0088】
図27Bは、本発明の別の実施形態の、骨界面材料として働く別のポリマーを有するネットワークの1つが界面に共重合される完全相互貫入ネットワークを示す。先に存在するホモポリマーネットワークは、第2のネットワークの前駆体モノマー14により膨潤される。材料の骨界面側に別の反応性モノマー26の前駆体溶液がある。これらのモノマーは、上層にある相互貫入ポリマーネットワークのマトリックスに部分的に貫入する。UVへの暴露に際して、モノマーは共重合し、ベアリング側面上に10および11を含む1つのタイプのIPN、ならびに骨界面側面上に10および27を含む別のタイプのIPNを備えた材料を産出する。2つの側面の間の移行は第3のネットワークの重合前の第3のモノマー26の拡散の深さによって決定される。
【0089】
本発明の別の実施形態は、外部刺激を使用して、図中で27C示されるようなIPNの第1のネットワーク内に第2のネットワークに組成勾配を生成することである。1つの例において、第2のネットワーク前駆体溶液のためのアクリル酸モノマーの単なる代わりに、イオン化性モノマー14(例えばアクリル酸)および非イオン性モノマー28(例えばアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドまたはヒドロキシルエチルアクリレートのモノマー)の混合物が使用される。イオン化性モノマーおよび非イオン化性モノマーの任意の組合せは、それらが互いに共重合することができる限り、共単量体として使用して勾配を生成することができる。第1のネットワーク10を、イオン化性モノマー14、非イオン性モノマー28、架橋剤および光開始剤(図示せず)の塩溶液中に浸漬し、次にゲルに電場(例えば電気泳動装置を使用して)を適用する。アクリル酸モノマーのみが電荷のために電場に沿って移動するだろう。アクリル酸濃度勾配の形成の後に、ゲルをUVに暴露し、勾配を第2のネットワークゲル形成を介して固定する。結果は、ベアリング領域に局在するポリ(アクリル酸)の第2のネットワーク、および骨界面領域に局在する非イオン性の第2のネットワーク(例えばポリ(温度感受性ポリマーのN−イソプロピルアクリルアミド)を備えたIPNヒドロゲルである。後に図32中で記述されるように、これはpHおよび温度の両方に応答性の装置を産出するアプローチである。
【0090】
図28は、本発明に記載の別の装置の表面修飾戦略の2つの実施形態を示す。この戦略は、ハロゲン化(活性)酸(例えば塩化アクリロイル)(図28、反応A)または活性エステル(例えばアクリロキシ−N−ヒドロキシスクシンイミド)(図28、反応B)による反応によって、アミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子または生体分子をアクリル化/メタクリル化して、装置中のネットワークの1つの前駆体とそれを共重合可能にすることを含む。これらの反応スキームにおけるR基は、任意のアミン含有もしくはヒドロキシル含有の化学物質もしくはポリマー、タンパク質、ポリペプチド、増殖因子、アミノ酸、炭水化物、脂質、リン酸塩含有の部分、ホルモン、神経伝達物質、または核酸でありえる。このプロセスの例は、図27BまたはCのいずれかに示されるプロセスによる、第2のネットワーク形成の最中に、塩化アクリロイルとのドーパミンの反応、およびコンジュゲートされたドーパミン分子のPEG/PAAヒドロゲルの表面への後続する付着である。塩酸ドーパミン(500mg、2.6mmol、1当量)をメタノール(10mL)に溶解し、新たに蒸留したトリエチルアミン(362μL、1当量)を追加した。塩化アクリロイル(210μL、1当量)をMeOH中に個別に溶解し、トリエチルアミン(1.1mL、3当量)を追加した。次に塩化アクリロイル溶液をドーパミン溶液に滴下して追加し、結果として生じる混合物は室温で一晩撹拌する(反応A)。反応の最中に形成された無色の沈殿は濾過によって除去した。ジエチルエーテル中の沈降は産物(アクリレート化ドーパミン分子)を導く(収率:85%)。同一の結果を達成する代わりの反応(反応B)において、塩酸ドーパミン(500mg、2.6mmol、1当量)をメタノール(10mL)中に溶解し、新たに蒸留したトリエチルアミン(362μL、1当量)を追加した。アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(440mg、1当量)をメタノール中に個別に溶解し、トリエチルアミン(1.1mL、3当量)を追加した。次にアクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液をドーパミン溶液に滴下して追加し、結果として生じる混合物を室温で一晩撹拌した。反応の最中に形成された無色の沈殿は濾過によって除去した。ジエチルエーテル中の沈降は産物を導く(収率:75%)。次に、結果として生じるコンジュゲートされた分子は、図27B中に示されるような個別の実験(反応Aのコンジュゲートを使用するもの、および反応Bのコンジュゲートを使用するもの)におけるアクリル酸ベースの第2のネットワークと共に界面に重合された。1%v/v 2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび1%v/vトリエチレングリコールジメタクリラートを含む50%v/vドーパミンアクリレート溶液を、50%v/vアクリル酸、1%2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび1%トリエチレングリコールジメタクリラートの溶液中で一晩膨潤させた後に軽く叩いて乾燥した、予備形成されたPEG−ジアクリラートネットワークの表面に広げた。ドーパミン−アクリレートモノマーがアクリル酸モノマーと混ざるように短時間放置した後に、膨潤したゲルをスライドグラスの間に置き、UVに暴露した。結果は、1つの側面上にPEG/PAAのIPNを備えたIPN、ならびに他の表面上にPEGおよびドーパミンコンジュゲートポリマーネットワークのIPNだった。これらとの間の移行帯において、PEGならびにPAAおよびドーパミンコンジュゲートポリマーのコポリマーのIPNがあった。この方法はIPN表面のコンジュゲートの様々なタイプを達成するために一般化することができる。
【0091】
本発明に記載の装置の別の実施形態は、ベアリング領域とは異なる特性を備えた骨界面領域を生成するために、あらかじめ製作された装置へ分子または生体分子を共有結合する。1つのかかる実施形態において、任意の適切な生体分子をIPNヒドロゲルに共有結合できる。別の実施形態において、合成ポリマーはIPNヒドロゲルに結合される。好ましくは、生体分子は、タンパク質、ポリペプチド、増殖因子(例えば表皮増殖因子)アミノ酸、炭水化物、脂質、リン酸塩含有部分、ホルモン、神経伝達物質、または核酸のうちの少なくとも1つである。低分子または生体分子の任意の組合せは使用することができ、それらは、薬物、化学物質、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質、脂質および核酸を含むが、これらに限定されない。このアプローチは、(a)アジドベンズアミドのペプチドまたはタンパク質の光開始付着と、(b)N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミド、ピリジルジスルフィド、イミドエステル、活性ハロゲン、カルボジイミド、ヒドラジドまたは他の化学的官能基によるヒドロゲルの光開始官能基化、続いてペプチド/タンパク質との反応と、(c)カルボニル含有ポリマーとのアミノオキシペプチドの化学選択反応とに、例えば依存しうる。これらの生体分子は例えば、骨細胞の接着または活性を促進することができる。1つの例において、スペーサーアーム116によって結合された反応性末端基115および117とのヘテロ二官能性架橋剤118(図29)を使用して、IPNヒドロゲル表面119を修飾する。1つのかかるクラスのヘテロ二官能性化学物質は、5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、またはそのスルホン化誘導体および/もしくはその鎖延長誘導体などのその誘導体などの、アジド活性エステルリンカーとして記載される。しかしながら、任意のカップリング戦略を使用して生物活性表面を備えたひずみ硬化されたIPNヒドロゲルを生成することができる。この実施形態の詳細な例は、1つの末端上にフェニルアジド基、および他の末端上にタンパク質結合性N−ヒドロキシスクシンイミド基を有する、ヘテロ二官能性架橋剤(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を介するPEG/PAAのIPN表面へのI型コラーゲンの付着である。置換されたフェニルアジドは光(250〜320nm、5分)により反応して、様々な共有結合の中に挿入される芳香族ニトレンを生成することが示されている。次にフェニルアジド基を介するヒドロゲルへのリンカーの付着は、N−ヒドロキシスクシンイミド基がタンパク質上の遊離アミンと反応することを可能にし、今度はヒドロゲル表面へそれらを連結する。PEG/PAAヒドロゲルの表面を軽く叩いて乾燥し、次に100μLのジメチルホルムアミド中の0.5%w/vの5−アジドニトロベンゾイルオキシN−ヒドロキシスクシンイミド溶液を、ゲル上に垂らして流し込み、その表面を覆って均一に広げる。次に換気フード下で溶媒を蒸発させてヒドロゲル上の架橋剤の沈着を確実にした。次に風乾したゲル表面を5分間紫外線に暴露して、ヒドロゲル表面にアジド基を反応させた。次に表面が官能基化されたゲルを、0.3%(w/v)のI型コラーゲン溶液(ビトロゲン(Vitrogen)社)中で16時間37℃のオーブン中でインキュベートして、ヒドロゲル表面上のN−ヒドロキシスクシンイミド部分に反応性タンパク質アミン基をカップリングした。最終的にゲルをPBS中でよく洗浄して、有機溶媒および未反応モノマーを除去した。表面上に連結されたタンパク質の存在をX線光電子分光法によって確認し、それによりヒドロゲル表面のアミド結合の存在が示され、タンパク質の存在が確認された。表6は、ゲルの表面上のコラーゲンの存在を示す定量的アミノ酸分析データーを示す。
【0092】
【表6】
【0093】
図30は、骨界面でベアリング領域におけるものとは異なる表面ケミストリーを達成する、本発明の別の実施形態を示す。このアプローチはヒドロゲルの表面上の官能基を活性化すること、続いてアミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子、マクロ分子または生体分子とこれらの活性化官能基を反応させることを含む。好ましい実施形態において、IPN内のポリ(アクリル酸)上のカルボン酸基は活性化されて活性エステルを形成し、これはアミン含有分子、マクロ分子または生体分子と反応させた場合に続いてアクリルアミド結合を形成する。この戦略の2つの例において、本発明に従うPEG/PAAのIPNヒドロゲルは、ドーパミン官能基により表面修飾された。反応Aにおいて、PEG/PAAヒドロゲルを、100体積%エタノールまで増加する量のエタノールを含むエタノール/水混合物により最初に洗浄した。次にヒドロゲルを、エタノール中でジシクロヘキシルカルボジイミド(0.1M)およびトリエチルアミン(0.2M)の溶液中に2時間浸漬した。塩酸ドーパミン(0.1M)およびトリエチルアミン(0.1M)の溶液を調製し、ゲル表面上に適用した。1時間後にヒドロゲルをエタノールにより、および次に100体積%水まで増加する量の水を含むエタノール/水混合物により洗浄した。いったんカルボン酸が形成されれば、結果として生じるヒドロゲルはアミド結合を介してヒドロゲル表面へドーパミン分子を付着した。この手技の代替において(図31、反応B)、PEG/PAAヒドロゲルは、リン酸緩衝液(10mM、pH6)中のN−ヒドロキシスクシンイミド(15mM)およびN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの溶液中に1時間浸漬した。緩衝液および水による洗浄後、ゲルの表面を、DMF(0.1M)およびトリエチルアミン(0.1M)中の塩酸ドーパミンの溶液に1時間暴露した。次にヒドロゲルをDMF、エタノールおよび水により洗浄して、すべての過剰材料を除去し、表面へ連結されたドーパミンを備えたヒドロゲルを産出した。これらの反応を使用して、カルボキシル基含有IPNの表面に接近可能なアミン官能基またはヒドロキシル官能基を備えた、任意の分子、マクロ分子または生体分子を連結することができる。次に結果として生じる表面修飾は、ベアリング領域として働く未修飾側面と共に、本発明の骨界面領域の素地として使用されるだろう。
【0094】
刺激応答性ヒドロゲル関節形成装置
装置の体積変化を介する装置の移植は、特定のポリマーの刺激応答性の利用によって達成することができる。さらに、ベアリングおよび骨界面領域において異なるポリマー組成物を備えた装置の製作は、非応答性ポリマーの特定の有利な特質の維持ながら、または応答性ポリマーに新しい特質を導入することによって、装置の移植に対する追加のレベルの外部刺激を介する制御を提供する。この後は、刺激はヒドロゲル体積または形を調節する特性における特有の変化を指し、この変化は、身体の内部の環境と異なる環境において手術前にヒドロゲルを維持することによって引き起こされる。本発明の実施形態において、骨上に配置した後にA、pH、塩濃度、電場または温度の変化などの外部刺激は装置を収縮させてB、図32中で図示されるように、骨を囲む凸面型の輪郭に適合する。凹面関節については、刺激が装置を凹面に対して拡大させるように装置はデザインされる。高分子電解質は、pH、塩濃度および電場の変化に応答してさまざまな程度に膨潤/脱膨潤するヒドロゲルポリマーのクラスである。膨潤およびヒドロゲル装置サイズを制御するためにpHおよび塩を変化させることは、以下の様式で機能するだろう。1つの例において、装置は、キャップが凸面関節面よりもわずかに大きい状態においてあらかじめ膨潤され、次に関節上の配置後に、それは身体の内側に存在するpHまたは塩濃度での平衡後の変化によって、脱膨潤されるだろう。pH/塩濃度は、体外手段(手術前の浴槽中のインプラント/関節の浸漬など)によって変化させることができる。あるいは、それを移植し、周囲の体液(例えば関節液)のpHおよび塩濃度に応答して平衡膨潤を達成することができる。ポリ(エチレングリコール)/ポリ(アクリル酸)ネットワークなどの高分子電解質コンポーネント(例えばポリ(アクリル酸))を有する相互貫入ネットワークは、この点において特に有用だろう。この材料が、pH>7.4および/または身体の浸透圧未満の塩濃度で予膨潤され、関節面を覆って緩く配置されるならば、それは、しばらく身体の中で平衡化した後に、pHの減少および/または塩濃度の増加に応答して収縮し、下層にある骨の輪郭に適合するだろう。高分子電解質ベースのIPNの寸法は、装置を電気的に拡張する電場の適用によってもまた修飾することができる。電場が取り除かれた後に、装置は関節の上で再び収縮する。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)などの温度感受性ヒドロゲルは、約32℃よりも高い温度でそれらを縮小させるより低い臨界溶解温度を有する。これは、図32において図示されるように、NIPAAmベースの装置が移植時に関節を覆って緩く配置され、しばらく身体の中にあった後に、骨を囲む輪郭に適合するように収縮するという筋書きを可能にする。したがって、移植時に刺激を使用してヒドロゲル装置サイズをわずかに変えることは、それを手によってまたは道具により物理的に伸張せずにその配置を促進し、外科的な配置のためにそれほど侵襲的でないアプローチまたは関節鏡視下のアプローチを可能にする。
【0095】
変形および修飾
相互貫入ポリマーネットワークは、図25および27において検討されるように、2つもしくは複数のネットワークコンポーネントまたはポリマーコンポーネント(直鎖など)を有することができた。実施例は、「三重」もしくはさらに「四重」のネットワーク、または追加のポリマー鎖により相互貫入される二重のネットワークを含むが、これらに限定されない。さらに、ポリマーテザー(ポリ(エチレングリコール)鎖など)は、骨界面領域と連結された生体分子または付着されたポリマー材料との間に介在するスペーサーアームとして使用することができる。当業者が理解するように、本発明の原理から逸脱せずに、様々な変化、置換および改変を行なうか、またはそうでなければ実行することができるだろう。従って、本発明の範囲は以下の請求項およびそれらの法的な同等物によって決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルに関する。より詳細には、本発明は整形外科用人工器官のために有用な装置および材料に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患または損傷により、通常は平滑で滑らかな関節面を覆う軟骨は次第に悪化し、骨を露出させ、活動によって悪化し、安静によって軽減される関節痛を導く。今日、骨関節炎に罹患する患者には、2つの選択肢(疼痛を医学的に制御すること、または効果的ではあるが多大に骨を犠牲にする手術を受けること)のうちの1つのみがある。医学的管理は、体重減量、理学療法、および鎮痛薬および非ステロイド性の抗炎症薬の使用を含む。これらは疼痛の減少に効果的でありうるが治癒的ではない。他の選択肢は、軟骨の「失われた」コンポーネントを置換するグルコサミンまたはヒアルロナンのような薬物を含むが、米国での広汎な使用にもかかわらずそれらの有効性はなお疑問視される。医学的介入が成功せず患者の関節痛が耐え難くなるとき、手術が勧められる。関節全形成術は、関節の疾患部分が取り出され、新しい人工部分(まとめて人工器官と呼ばれる)により置換される外科手術手技である。この高度に効果的だが侵襲性手技において、侵された関節軟骨および下層にある軟骨下骨は、損傷を受けた関節から除去される。様々な置換システムが開発されており、典型的には超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)および/または金属(例えばチタンまたはコバルトクロム)、最近になってセラミックスを含む。ある物は適所へねじで留められ、他のものは接合されるか、または骨成長を促進するような方法で処理される。これらの材料は関節全置換術の使用で成功し、重篤な変形性股関節症または変形性膝関節症に罹患する患者において、著しい疼痛軽減および機能改善を提供する。
【0003】
米国では毎年多数の患者が股関節全形成術(THA)を受け、それは寛骨臼に人工カップならびに大腿骨側上にボールおよびステムを移植することを含む。THAの目標は、可動性を増加させ、股関節機能を改善し、疼痛を軽減することである。典型的には、人工股関節は、置換が必要となるまでに少なくとも10〜15年間は耐久性がある。しかし外科手術手技としての成功にもかかわらず、THAは、多大な「骨の犠牲」を必要とする大腿骨骨頭全体の切除であるので、まだ最後の手段の治療と判断される。修正置換をしばしば困難にするのは大腿骨のこの主な改変である。この手技は高齢者(彼らは通常インプラントより生き延びない)において90%以上の残存率を有するが、インプラントの耐用年数はより若年のより活発な患者においては有意に短い。その結果として、より若年の患者は、耐用年数中で複数の困難な修正の可能性に直面する。摩耗粒子に起因する過度の摩耗および人工器官周囲の骨吸収に加えて、インプラントの周囲の応力遮蔽に誘導される骨吸収から結果として生じる人工器官の無菌性ゆるみを、インプラントが示すとき、修正が必要とされる。
【0004】
THAに前述の限定があるので、若年患者のためにあまり骨を犠牲にせず、THAを少なくとも5年以上延期できるという見込みのある選択肢を捜すように産業界は促された。治療改善のための1つのアプローチは、関節鏡視下の関節洗浄、デブリードマン、アブレージョン、および滑膜切除などのそれほど侵襲的でない外科手術手技を開発することだった。しかしながら、骨関節炎の治療のこれらの外科技術の相対的優位性はまだ論争の的になっている。THAに対する代替物は股関節「表面置換」であり、現在、新たなベアリング表面(メタル・オン・ポリエチレンよりもむしろメタル・オン・メタル)があるので、再び取り上げられるようになってきた。多数の患者はこの手技の有効性より生き延びることが予想されるが、股関節表面置換は後の股関節全置換術を可能にする大腿骨側上の十分な骨ストックを保護する。あいにく股関節表面置換を行なう医師によれば、可能な限りこの手技はまだ延期されるべきであるという極めて潜在的な欠点がある。メタル・オン・メタル表面置換において、大腿骨骨頭は適切に形作られ、次に大腿骨頚部を通した長い釘によって錨着される金属キャップにより覆われる。それは、キャップとカップとの間のより正確な嵌合を必要とし、その手技は、一般的に、大腿骨コンポーネントがより大きな直径であるために、従来の置換と比較して、寛骨臼のより多くの骨を犠牲にする。さらに表面置換手術は習得が難しく、THAよりも長くかかる。釘の周囲の骨吸収によって引き起こされた大腿骨頚部骨折が報告されており、またベアリング表面からの金属イオン放出の長期的影響はヒトにおいてまだ公知ではない。これらの合併症の結果として、今日の表面置換装置は、THAの場合のように、まだ股関節痛が耐え難い患者のみで示される。
【0005】
本発明は当該技術分野における必要性を検討し、関節形成装置の素地を形成する、膨潤を介してひずみ硬化される相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、およびこの装置の作製方法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、天然の軟骨の分子構造、そして同様に、弾性率、破壊強度、および潤滑表面を模倣する、膨潤を介してひずみ硬化される相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルに基づく骨温存関節形成装置を提供する。天然の軟骨のこれらの構造的特徴および機能的特徴の少なくともいくつかを模倣して、ヒドロゲルは、新規の骨温存の「生体模倣表面置換」関節形成手技の基本原理を形成する。軟骨のみを置換するようにデザインして、この材料は、潤滑な関節面および骨統合可能な骨界面を特色とする一組の柔軟で移植可能な装置として製作される。原理上は、本装置は身体中の任意の関節面について作製することができる。例えば、脛骨プラトーを覆う装置は、類似した骨の調製およびポリマーサイジングプロセスを必要とするだろう。股関節中の大腿骨骨頭を覆う装置については、キャップ型ヒドロゲル装置は大腿骨骨頭の輪郭を覆って緊密に嵌合し、男性用コンドームへのアナロジーが適切である。寛骨臼を裏打ちする装置については、女性用コンドームへのアナロジーが適切である。ポリマードームは寛骨臼唇を覆って伸張し、適所に嵌め込まれて、大腿骨骨頭との合わせ面を提供する。このように、患者の股関節の両側を修復することができ、キャップ・オン・キャップの関節連結が作成される。しかしながら、表面の1つのみが損傷を受けているならば、1つの側面のみをキャップすることができ、キャップ・オン・軟骨の関節連結が作成される。肩関節(同様にボール・アンド・ソケット関節)のためのキャップ型ヒドロゲル装置を生成するために、股関節のものに類似するプロセスが使用される。例えば、「女性用コンドーム」は関節窩の内側を裏打ちするように生成することができる。さらに、手、指、肘、足首、足、および椎間ファセットにおける他の関節のための装置もまた、この「キャッピング」概念を使用して生成することができる。遠位大腿骨の1つの実施形態において、遠位大腿骨ヒドロゲル装置の体積は、前十字靭帯および後十字靭帯を温存するが、骨の輪郭に従う。
【0007】
より具体的には、本発明は、膨潤によってひずみ硬化され、哺乳類関節中の天然または人工的に調製された骨の幾何学的形状(geometry)に適合することによって、哺乳類関節中で適所(in place)に保持するように順応する相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを有する関節形成装置を提供する。ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、2つの異なるネットワークに基づく。第1のネットワークは、末端基の重合によって化学的に架橋されて予備形成された親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの非シリコーンネットワークである。第2のネットワークはイオン化性モノマーの非シリコーンネットワークである。第2のネットワークは第1のネットワークの存在下において重合され化学的に架橋され、第1のネットワークと共に物理的架橋を形成する。相互貫入ポリマーネットワーク内では、第2のネットワーク中の化学的架橋度は、第1のネットワーク中の化学的架橋度より少ない。中性pHの塩水溶液は相互貫入ポリマーネットワーク中の第2のネットワークをイオン化し膨潤させるために使用される。第2のネットワークの膨潤は第1のネットワークによって束縛され、この束縛効果は、相互貫入ポリマーネットワーク内の効果的な物理的架橋の増加をもたらす。物理的架橋におけるひずみ誘起の増加は、増加した初期ヤング率を備えたひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークとして表わされ、それは、(i)純水中または塩水溶液中で膨潤させた親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの第1のネットワーク、(ii)純水中または塩水溶液中で膨潤させたイオン化されたモノマーの第2のネットワーク、または(iii)純水中で膨潤させた第1のネットワークおよび第2のネットワークの組合せによって形成された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルのいずれかの初期ヤング率よりも大きい。ひずみ(本明細書において膨潤によって誘導された)の結果として剛性率において観察された増加は、相互貫入ポリマーネットワーク内の物理的架橋の数の増加によって引き起こされる。本発明の目的のために、ひずみ硬化は、物理的架橋の数および適用されるひずみによる剛性率の増加として定義される。
【0008】
関節形成の装置は、骨界面領域、および骨界面領域の反対のベアリング領域を有する。骨界面領域は適合することによって特徴づけられ、哺乳類関節中の天然または人工的に調製された骨の幾何学的形状に固定させることができる。
【0009】
本発明の装置およびひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、以下の実施形態に従って、それら自体で、またはその任意の組合せにおいて変更することができるだろう。例えば、装置は、哺乳類関節においてヒドロゲル・オン・軟骨の関節連結(articulation)を形成する哺乳類関節の1つの側面上に移植することができる。装置は、ヒドロゲル・オン・ヒドロゲルの関節連結を形成する移植された装置から反対の関節面上に移植された第2の合わせコンポーネント(すなわち本発明において教示されるような別の関節形成装置)をさらに有することができるだろう。骨界面領域は、カルシウム含有およびリン酸塩含有の骨マトリックス骨成分に結合することができる。別の例において、骨界面領域は、骨形成に適応するように10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有することによって特徴づけられる。カルシウム含有およびリン酸塩含有の成分により骨界面領域を前被覆することができるかもしれない。さらに別の例において、化学的にまたは物理的に骨界面領域に生体分子を結合することができるだろう。
【0010】
骨界面領域が、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルで作製される代わりに、一例において、ベアリング領域に化学的に結合するポリマー材料で骨界面領域を作製できるだろう。この例において、ベアリング領域はひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルで作製される。別の例において、ベアリング領域および骨界面領域は装置のどちらの側面でも異なる組成物を有することができ、装置内で互いに物理的に統合されるか、または化学的および物理的に統合される。
【0011】
骨界面領域に接着性材料(生体分解性または非生体分解性)を結合することができ、次に骨界面領域を介して完全に装置を結合することができるだろう。別の例において、装置は、骨界面領域に化学的または物理的に結合されるカルシウム含有の無機物被覆を含むことができるだろう。
【0012】
さらに別の例において、装置の厚さプロファイルをもとの軟骨層の天然の厚さプロファイルに近似的に一致させることが望ましい。装置は主として凸面または凹面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応することができる。1つの例において、装置は主として凸面の骨受容面を覆って嵌合するように一回り小さく(undersize)、凸面の三次元骨受容面を覆う弾性縮小嵌合を生成する。装置は、移植の前に体液および体温ではない液体および温度において膨潤させた平衡体積まで膨潤させることができ、移植ならびに体液または/および体温への暴露に際して、膨潤させた平衡体積と比較して、より小さな平衡体積まで脱膨潤させることができ、それによって、より小さな平衡体積で、装置は前記の主として凸面の三次元骨受容面に対して縮小するかまたはそれを物理的に把持する。
【0013】
別の例において、装置は主として凹面の三次元骨受容面に対して嵌合するように一回り大きく(oversize)、主として凹面の骨受容面に対する弾性拡張嵌合に適応する。装置は、移植の前に体液および体温ではない液体および温度において乾燥または脱膨潤させた平衡体積まで少なくとも部分的に乾燥または脱膨潤させることができ、移植ならびに体液および/または体温への暴露に際して、乾燥または脱膨潤させた平衡体積と比較して、より大きな平衡体積まで膨潤させることができ、それによって、より大きな平衡体積で、主として凹面の三次元骨受容面に対して装置を拡張する。
【0014】
第1のネットワーク中の親水性の非イオン性マクロモノマーは、約275Da〜約20,000Da、約1000Da〜約10,000Da、または約3000Da〜約8000Daの間の分子量を有する。別の例において、イオン化性モノマーと親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーとの間のモル比が、1:1以上、または100:1より大きい。1つの例において、第1のネットワーク中の親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーはポリ(エチレングリコール)の誘導体であり、イオン化性モノマーはアクリル酸モノマーである。
【0015】
さらに別の例において、塩水溶液は約6〜8の範囲のpHを有する。さらに他の例において、第1のネットワークは、テレケリックマクロモノマーを乾燥重量で少なくとも約50%、少なくとも75%または少なくとも95%有する。さらに別の例において、第1のネットワークは、第1のネットワーク上にグラフトした親水性モノマーを有する。さらに別の例において、第2のネットワークは、第2のポリマーネットワーク上にグラフトした親水性マクロモノマーをさらに有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、少なくとも約1MPaの引張強度を有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、少なくとも約1MPaの初期平衡引張率を有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは、少なくとも25%、35%または50%の平衡含水率を有する。さらに別の例において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは塩水溶液に対する透過性があり、ヒドロゲルは1e-17〜1e-13 m4/N秒にわたる透過係数を有する。
【0016】
さらに別の例において、水溶液中でひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルのベアリング領域の摩擦係数は、0.2未満である。さらに別の例において、装置の1つの側面は二官能性架橋剤を使用して、別のポリマー材料、他の官能基、または生体分子により修飾される。1つの例において、骨細胞の増殖および/または接着を刺激するように生体分子を使用することができうる。さらに別の例において、装置は、隣接した関節面の凸面または凹面に適合するように収縮または膨潤させることを可能にする刺激応答性ポリマー材料を含む。
【0017】
本発明とその目的および利点は、図面と併用して以下の記述を読むことによって理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に従って、装置および解剖学的構造の概略図を示す。装置は2つのコンポーネントを有し、1つは関節の主として凸面の骨側面3上に配置されるバージョン1、およびもう1つは主として凹面の骨側面4上に配置されるバージョン2である。骨界面領域6は骨の統合および接着を確実にする。ベアリング領域5は、低摩擦係数を持ち、2つのコンポーネントの間の平滑な相対的な滑動および転動を可能にし、末端架橋された第1のネットワーク10のひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、イオン化された第2のネットワーク11および塩水溶液12で作製される。
【図2】本発明の実施形態に従って、装置の横断面図の概略図を示し、厚さBの移行帯7によって統合される、厚さAのベアリング領域5および厚さCの骨界面領域6を示す。ベアリング領域5および骨界面領域6は同一素材または異素材でありえるが、寸法A、BおよびCは、材料および装置詳述に基づいて変化する。
【図3】本発明の実施形態に従って、凸面(左側カラム、A1〜A3)および凹面(右側カラム、B1〜B3)の関節面のための錨着戦略の概略図を示す。接着層は最初にヒドロゲルを骨に錨着させることができるだろうが、接着層は石灰化しその中で新しい骨の増殖を可能にするので、ヒドロキシアパタイトは介在する足場を介して骨界面領域に結合して、天然の軟骨において見出されるものを模倣する石灰化骨界面を産出する。
【図4】骨3、4(カルシウムおよびリン酸塩)の無機成分がIPNヒドロゲル1、2の骨界面領域とどのように相互作用することができるか本発明の実施形態に従って表わした図である。1つの実施形態において、第2のネットワーク11(例えばポリ(アクリル酸))上のカルボン酸基は相互作用し、二価カルシウムイオンおよび負に荷電したリン酸イオンにより錯体を形成する。
【図5A】本発明の実施形態に従って股関節形成手技を示した図である。寛骨臼4aおよび大腿骨骨頭3aを露出する外した関節を示す。オスのヒドロゲル装置コンポーネント1aは大腿骨骨頭3a上に配置され、伸張そして嵌合を介して適所に保持される。同様に、寛骨臼装置コンポーネント2aは寛骨臼骨4a中に配置され、拡張性圧入嵌合を介して適所に保持される。
【図5B】本発明の実施形態に従って股関節形成手技を示した図である。コンポーネントが適所に移植された後に、関節が整復されることを表わす。
【図6A】本発明の実施形態に従って股関節形成の三次元バージョンを示した図である。大腿骨骨頭ヒドロゲル装置コンポーネント1aの側面図を示し、骨管に適応するくぼみ103も示される。
【図6B】本発明の実施形態に従って股関節形成の三次元バージョンを示した図である。大腿骨骨頭骨3aおよび大腿骨骨頭装置コンポーネント1aの横断面図を図示する。
【図6C】本発明の実施形態に従って股関節形成の三次元バージョンを示した図である。寛骨臼装置コンポーネント2aを図示する。
【図7】本発明の実施形態に従って両側(全関節形成術)または片側の半関節形成術を示した図である。この実施形態において、大腿骨装置コンポーネント1aは大腿骨骨頭骨3aを覆って伸張されるが、寛骨臼コンポーネント2aは寛骨臼くぼみ4a中に圧入嵌合される。骨界面領域6は多孔質であり骨成長を保証するようにヒドロキシアパタイトにより被覆され、ベアリング領域5は相対的な滑動を促進するように潤滑な特性を有する。さらに、加圧された関節液102により満たされるチャンバー101を形成する寛骨臼コンポーネント4a中のくぼみ100が提示され、チャンバーは2の装置コンポーネント1a、2aによって密封される。
【図8】本発明の実施形態に従って膝に適用されたヒドロゲル装置を示した図である。遠位大腿骨装置コンポーネント1bは、緊密なソックスのように遠位大腿骨骨3b上に配置される。装置は、靭帯のための開口部またはくぼみを保持し、それゆえ、中央開口部111は十字靭帯に適応するが、外側開口部110は外側靭帯に適応する。遠位大腿骨装置コンポーネント1bは、緊密嵌合を介して最初に適所に保持され、この後開示されるヒドロゲル刺激プロセスによってさらに促進される。この実施形態において、脛骨プラトーヒドロゲル装置コンポーネント2bは、2つの別個の部分(1つは外側ファセットのためおよび1つは内側ファセットのため)を有する。ヒドロゲル装置コンポーネントは、骨内方成長を可能にして固定を確実にする多孔質骨界面領域6を保持する。
【図9A】本発明の実施形態に従って脛骨プラトー4bにヒドロゲル装置適用を示した図である。脛骨プラトー4bおよびファセット112の外側断面図を示す。
【図9B】本発明の実施形態に従って脛骨プラトー4bにヒドロゲル装置適用を示した図である。骨の穿孔によって外科的に作製されたくぼみ113を示し、移植の前のヒドロゲル装置コンポーネント2bをさらに図示する。
【図9C】本発明の実施形態に従って脛骨プラトー4bにヒドロゲル装置適用を示した図である。ファセット113のくぼみ中に挿入された脛骨ヒドロゲル装置コンポーネント2bを示す。
【図10】本発明の実施形態に従って、末端架橋マクロモノマーネットワーク10上に基づく相互貫入されたポリマーネットワーク、および緩衝塩水溶液12により膨潤させて浸透圧によりあらかじめ応力を加えたイオン化モノマーベースのネットワーク11の構造を示した図である。
【図11】本発明の実施形態に従って、IPNヒドロゲルの合成のための工程を示した図である。1.ヒドロゲルのための出発材料は、水16中に溶解された反応性官能末端基15を備えたテレケリックマクロモノマー13の溶液である。テレケリックマクロモノマーを重合して、水16中で膨潤させた第1の末端架橋ポリマーネットワーク10を形成する。2.水と混合した親水性のイオン化性モノマー14は、光開始剤および架橋剤と共に第1のポリマーネットワーク10に追加される(図示せず)。次に、親水性のイオン化性モノマーは第1のポリマーネットワーク10の存在下において光重合および架橋されて、第1のポリマーネットワークの存在下において第2のポリマーネットワーク11を形成する。これは、水16中で膨潤させたイオン化性の第2のネットワーク11により相互貫入された末端架橋ポリマーネットワーク10を有するIPNヒドロゲルの形成をもたらす。3.次に水吸収したIPNを、典型的にはpH7.4の水溶性塩含有溶液12中に浸漬し、平衡まで膨潤させて、IPNの含水率および剛性率の両方の同時増加を産出する。塩水溶液12中で膨潤させたこのIPNは、高度に架橋された第1のネットワーク10によってもたらされた束縛内で第2のネットワーク11の膨潤させることによって誘導されたひずみ硬化のために、純水16中で膨潤させたIPNと比較して、より高い引張弾性率を有する。
【図12A】モノマー17を使用して第1のネットワーク10を作製した後に、IPNがどのように調製されるかを本発明方法の工程の実施形態に従って示した図である。光開始剤および架橋剤の存在下における紫外線への暴露(図示せず)は、重合および架橋を導いてネットワーク10を形成し、(i)〜(ii)の移行によって図示される。(iii)〜(iv)において、第1のネットワークは、第2のネットワークの前駆体モノマー14、架橋剤(図示せず)および光開始剤(図示せず)により膨潤される。紫外線への暴露は、第1のネットワーク(10)の存在下において第2のネットワーク11の重合および架橋を開始してIPNを形成する。
【図12B】反応性末端基15を備えたマクロモノマー13を使用して、既存の第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子の存在下において、第1のネットワーク10を形成した後に、IPNがどのように調製されるかを本発明方法の工程の実施形態に従って示した図である。第1のポリマーコンポーネントおよび第2のポリマーコンポーネントの混合物を作製し、次に紫外線下でテレケリックマクロモノマー13、15を反応させて、第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワーク10を形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。
【図12C】モノマー17に基づく第1のネットワーク10および第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子からIPNがどのように形成されるかを本発明方法の工程の実施形態に従って示した図である。モノマー17およびマクロ分子の混合物を作製し、次に紫外線下でモノマーを反応させて第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワークを形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。
【図13】本発明の実施形態に従って、PEG−ジオールマクロモノマーからのテレケリックPEG−ジアクリラートの合成の概略図を示した図である。PEG−ジメタクリラートを生成するために、塩化アクリロイルの代わりにPEG−ジオールにより塩化メタクリロイルを反応させるだろう。
【図14】本発明の実施形態に従って、PEG−ジオールマクロモノマーからのテレケリックPEG−ジアクリルアミドの合成の概略図を示した図である。PEG−ジメタクリルアミドを生成するために、塩化アクリロイルの代わりにPEG−ジオールにより塩化メタクリロイルを反応させるだろう。
【図15】本発明の実施形態に従って、PEG−ジオールマクロモノマーからのテレケリックPEG−アリルエーテルの合成の概略図を示した図である。
【図16A】本発明の実施形態に従って、2つの異なるポリマー上に基づく第1のネットワーク10および第2のネットワーク11を備えたIPNを示した図である。
【図16B】本発明の実施形態に従って、第1のネットワーク10に付着されたグラフトコポリマー29および第2のネットワーク11中のホモポリマーを備えたIPNを示した図である。
【図16C】本発明の実施形態に従って、第1のネットワーク10中のホモポリマーおよび第2のネットワーク11中のグラフトコポリマー30を備えたIPNを示した図である。
【図16D】本発明の実施形態に従って、第1の10ネットワークおよび第2のネットワーク10、11の両方中にグラフトコポリマー29、30を備えたIPNを示した図である。
【図17A】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。張力下の応力ひずみプロファイル。
【図17B】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。拘束圧縮下の応力ひずみ。
【図17C】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。非拘束圧縮の応力ひずみプロファイル。
【図17D】本発明に従って、第2のネットワーク中に70%のアクリル酸の体積分率で調製されたPEG(3.4k)/PAAのIPNの機械的挙動を示した図である。引張クリープ実験におけるひずみvs時間。
【図18A】本発明の実施形態に従って、PEG(8.0k)/PAAのIPN、PEG(8.0k)−PAAコポリマー、PEG(8.0k)およびPAAネットワークについての真応力−真ひずみ曲線を示した図である。
【図18B】本発明の実施形態に従って、PEG(8.0k)/PAAのIPN、PEG(8.0k)−PAAコポリマーおよびPEG(8.0k)およびPAAネットワークについての正規化した真応力−真ひずみ曲線を示した図である。
【図19A】本発明の実施形態に従って、結果として生じたIPNの体積変化率に対する、第2のネットワーク前駆体溶液中のアクリル酸(AA)モノマーの質量分率の効果を示した図である。垂直な点線はIPN中のAAおよびエチレングリコール(EG)モノマー単位の等モル量の点を示すが、水平な点線はPEGネットワークおよびPEG/PAAのIPNが同一の体積を有するところを示す。
【図19B】本発明の実施形態に従って、IPN中のAAの質量分率に対するPEG/PAAのIPNの破壊応力およびヤング率の依存性を示した図である。垂直な点線はIPN中のAAおよびエチレングリコール(EG)モノマー単位の等モル量の点を示す。
【図20】本発明の実施形態に従って、重合の時間で異なる量のアクリル酸(AA)を備えた、単一ネットワークPEG(8.0k)ヒドロゲルおよびPEG(8.0k)/PAAのIPNの含水率の時間依存性を示す。ヒドロゲルを時間=0で乾燥状態において脱イオン水中で置き、次に等間隔で量った。
【図21】本発明の実施形態に従って、PBSおよび脱イオン水中のPEG(4.6k)/PAAのIPN、加えてPBSおよび脱イオン水中のPEGおよびPAA単一ネットワークの真応力vs真ひずみの曲線を示した図である。PEG(4.6k)ネットワークは水からPBSへの変化によって影響されない。矢印は、PBS中での平衡までの膨潤によってひずみ硬化された後のIPNの応力ひずみプロファイルにおける変化を示す。
【図22】本発明の実施形態に従って、架橋剤化学末端基の3つの異なる組合せによるが、PEG(分子量4.6k、水中の重量で50%)およびAA(水中で50%v/v)は同一の処方で、加えて同一の重合条件(光開始剤および架橋剤のモル濃度およびUV強度)および膨潤条件(pH7.4のPBS)で、調製されたPEG(4.6k)/PAAのIPNの応力ひずみプロファイルを示した図である。試料(A)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(B)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(C)は、PEG−ジアクリラートの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。
【図23A】本発明に従って、単純なPEG/PAAサンプル(ヒドロキシアパタイトのない)の、破壊端部(暗)および上面(明)を示す、SEMを示した図である。
【図23B】本発明に従って、ヒドロキシアパタイトを被覆したPEG/PAAサンプルの、破壊端部(暗)および上面(明)を示す、SEMを示した図である。
【図23C】本発明に従って、ヒドロキシアパタイトを被覆されたPEG/PAAのIPN(挿入図)のエネルギー分散型X線分光法(EDX)分析を示し、HAPを被覆したPEG/PAAの高倍率のSEMを示す挿入図により、HAPのものに類似したおよそ1.5〜1.6のカルシウム/リン比を示した図である。
【図23D】本発明に従がって、200nm直径HAPにより被覆されたPEG/PAAヒドロゲル上に増殖する骨芽細胞様細胞を示した図である。
【図24】本発明に従がって、未修飾シリカ(列A)上の、およびPEG/PAAのIPN(列B中に低倍率、および列C中に高倍率で)上の異なる直径(5μm、〜200nm、および20nm)のヒドロキシアパタイト被膜のSEMを示した図である。
【図25A】本発明に従って、モノマー18上に基づく介在ポリマー接着剤を介するIPNヒドロゲル10、11の骨への結合のための結合プロセス(凸面3または凹面4)を示した図である。UV、光開始剤および架橋剤に暴露したときにモノマーは反応して、IPNヒドロゲルおよび骨に、物理的に架橋されるか、または物理的および化学的に架橋される第3のネットワーク19を形成する。
【図25B】本発明に従って、反応性末端基20を備えたマクロモノマー21上に基づく介在ポリマー接着剤を介するIPNヒドロゲル10、11骨3および4への結合の結合プロセスを示した図である。マクロモノマーは反応して、IPNヒドロゲルに、および骨に、物理的に架橋されるか、または物理的および化学的に架橋される第3のマクロモノマーのネットワーク22を形成する。
【図26】本発明に従って、ネットワークの1つが錨着の介在するポリマーとして作用する半相互貫入ネットワークを示した図である。反応性末端基15を備えたテレケリックマクロモノマー13および物理的ネットワーク11または直鎖の溶液はともに混合され、UV感受性架橋性基23により前被覆および/または官能基化された骨表面3、4の上に流し込まれる。光開始剤の存在下における開始源(例えば紫外線)への暴露は、テレケリックマクロモノマーおよび被覆された/官能基化された骨表面の両方の上のこれらの架橋性基のフリーラジカル重合および架橋を導く。フリーラジカル重合および架橋の結果は右側に示される。テレケリックマクロモノマーの末端はネットワーク10を形成しており、骨の表面と共重合および結合する。直線状の第2のネットワークポリマーは、この第1のネットワーク内に物理的にトラップされ、第1の化学的に架橋されたネットワークに相互貫入する第2の物理的に架橋されたネットワーク11を形成する。
【図27A】本発明の実施形態に従って、所定時間の間の第3のネットワークモノマー24の相互拡散によって、先に存在するIPN内で第3のネットワークが部分的に相互貫入され、次にIPN10、11の存在下においてモノマーを重合する完全相互貫入ネットワークを示した図である。これはIPNヒドロゲルの1つの側面上に第3のネットワーク25を効果的に与え、それは他の側面とは異なる特性を有し、骨界面領域として有用な特性でありえる。
【図27B】本発明の実施形態に従って、重合されたものが骨界面材料として働くときに、第2のネットワークモノマー14が別のモノマー26と共に界面に共重合される完全相互貫入ネットワークを示した図である。先に存在する第1のネットワークを、第2のネットワークの前駆体モノマーと共に膨潤させる。材料の骨界面側面に、別の反応性モノマー26の前駆体溶液がある。これらのモノマーは、部分的に第1のネットワークのマトリックスに貫入する。UVへの暴露と同時に、モノマーは共重合し、ベアリング側面上に1つのタイプのIPN 10、11および骨界面側面上にもう一つのタイプのIPN 10、27を備えた材料を産出する。
【図27C】本発明の実施形態に従って、外部刺激を使用してIPNの第1のネットワーク内に第2のネットワークの組成勾配を生成することを示した図である。アクリル酸モノマーおよび非イオン性モノマー(例えばアクリルアミドモノマー、N−イソプロピルアクリルアミドモノマー、またはヒドロキシルエチルアクリレートモノマー)の混合物が使用される。第1のネットワーク10を、イオン化性モノマー14、非イオン性モノマー28、架橋剤および光開始剤(図示せず)の溶液中で浸漬し、次に電場をゲルに適用する。イオン化性モノマーのみがそれらの電荷のために電場に沿って動くだろう。イオン化性モノマー濃度勾配の形成の後に、ゲルをUVに暴露し、勾配は第2のネットワークゲル形成を介して固定される。結果は、ベアリング領域に局在した第2のネットワーク、および骨界面領域に局在した非イオン性の第2のネットワークを備えたIPNヒドロゲルである。
【図28】本発明の実施形態に従って、他の装置表面修飾戦略の2つの例を示した図である。この戦略は、装置中のネットワークの1つの前駆体と共重合させるために、ハロゲン化された(活性)酸(例えば塩化アクリロイル)(反応A)または活性エステル(例えばアクリロキシN−ヒドロキシスクシンイミド)(反応B)との反応によりアミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子または生体分子のアクリル化/メタクリル化を含む。これらの反応スキーム中のR基は、任意のアミン含有もしくはヒドロキシル含有の合成化学物質もしくはポリマー、タンパク質、ポリペプチド、増殖因子、アミノ酸、炭水化物、脂質、リン酸塩含有部分、ホルモン、神経伝達物質、または核酸でありえる。
【図29】本発明の実施形態に従って、IPNヒドロゲル表面119へ分子、マクロ分子および生体分子114を共有結合で付着させるために使用されるスペーサー116により結合された2つの末端基115、117を含むヘテロ二官能性架橋剤118を示した図である。
【図30】本発明方法の実施形態に従う、ベアリング領域において存在するものとは骨界面で異なる表面化学を達成する工程を示した図である。このアプローチは、ヒドロゲルの表面上の官能基の活性化、続いてアミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子、マクロ分子、または生体分子とのこれらの活性化官能基の反応を含む。好ましい実施形態において、IPN内のポリ(アクリル酸)上のカルボン酸基は活性化されて活性エステルを形成し、アミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子、マクロ分子、または生体分子と反応させたとき、続いてアクリルアミド結合を形成する。
【図31】ヒドロゲル上のカルボン酸官能基が活性化され、続いて塩酸ドーパミンと反応してドーパミンコンジュゲート表面を産出する、図30中で示される方法の具体的例を示した図である。反応Aにおいて、PEG/PAAヒドロゲルをエタノール中のジシクロヘキシルカルボジイミドおよびトリエチルアミンの溶液中に浸漬して、PAA上に存在するカルボン酸基を活性化する。塩酸ドーパミンおよびトリエチルアミンとの後続反応はドーパミンコンジュゲート表面を産出する。反応Bにおいて、PEG/PAAヒドロゲルをリン酸緩衝液中のN−ヒドロキシスクシンイミドおよびN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの溶液中に浸漬して、PAA中でカルボン酸を活性化する。DMFおよびトリエチルアミン中の塩酸ドーパミンとの後続反応はドーパミンコンジュゲートヒドロゲル表面を産出する。
【図32】骨上への配置後に(A)、pH、塩濃度、電場、または温度の変化などの外部刺激が、装置が囲む凸面型の骨の輪郭に適合するような収縮をもたらす(B)本発明の実施形態を示した図である。反対に、刺激された膨潤は、pH、塩濃度、電場、または温度の変化の結果として達成することができ、凹面関節面に対する拡張効果を生成する。刺激応答性ポリマーは本発明中で記述される方法により装置のベアリングおよび/または骨界面領域の中に組み入れられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、現行の関節置換技術の限界を克服するようにデザインされる「生体模倣」骨温存ヒドロゲル関節形成術装置(図1)である。装置は、哺乳類関節の凸面および凹面に対して全関節形成術(両方の側面)または半関節形成術(1つの側面)のいずれかで適合する、新規の軟骨様ヒドロゲル材料から作製された柔軟なインプラントを含む。装置は、身体の関節軟骨、椎間板(腰椎または頚椎)、滑液包、半月板、および関節唇構造の置換として提供するのに必要な高い圧縮強度および潤滑性を有する。
【0020】
典型的な可動関節中の本発明の鍵となる装置および解剖学的構造が図1において示される。哺乳類骨格中の大部分の関節は、「オス」(主として凸面軟骨表面3)、および「メス」(主として凹面軟骨表面4)を有する。この実施形態において、関節形成装置は、2つのコンポーネント(主として凸面骨表面3を覆って嵌合する1つのコンポーネント(1)、および主として凹面4の内側に嵌合するもう一つのコンポーネント2)を含む。装置の各コンポーネントは、もう一つの他のコンポーネントを反対のベアリング表面5と接触させるようにするベアリング表面5を保持する。装置の各コンポーネントは、骨上に装置の固定を可能にする骨界面領域6もまた保持する。装置が適用される関節に依存して、その形は平らなまたは湾曲した形態でありえ、例えば、大腿骨骨頭の軟骨を置換する装置は半球のキャップに類似しているが、脛骨プラトーの軟骨を置換する装置は浅い円形のディッシュに類似しうる。いくつかの場合には、装置の1つのコンポーネントが関節の他の側面に未処理で残される天然の軟骨と関節で連結されるように、装置の1つのコンポーネントのみが半関節形成として移植することができる。
【0021】
この装置概念は、身体中のほとんどいかなる関節に適用することができる。例えば、本発明が有用な可能性のある整形外科用装置のタイプは、股関節(大腿骨骨頭および/または寛骨臼)、膝(脛骨、大腿骨および/またはの膝蓋の態様)、肩、手、手指(例えば手根中手関節)、足、足首、および足指の全置換または部分置換もしくは表面置換を含む。それは椎間板またはファセットの置換または修復においてもまた有用である。膝において、ヒドロゲルは、半月板置換、または肘もしくは肩などの任意の関節中の軟骨もしくは滑液包または股関節および肩などの関節中の関節唇のための置換材料としてもまた提供することができる。
【0022】
この装置戦略は、骨を高度に犠牲にするかまたは局所欠損の修復のみに限定されるかのいずれかである現行の関節形成アプローチの限定により導かれたものである。続いて行なわれるインプラントによる重層は残存軟骨線維組織の分化を導く望まれない条件を引き起こすかもしれないので、残存する軟骨を除去する必要がありえ、損傷を受けた軟骨が外科医により取り除かれた後に、ヒドロゲル装置は損傷を受けた軟骨の適所に置かれる。装置自体は、1つの側面上に「ベアリング」領域5および「骨界面」領域6を含み、前者はもう一つのベアリング表面(本発明などの別の関節形成装置または並置される関節面上の天然の軟骨のいずれか)と関節で連結され、後者は下層にある骨と相互作用する。図2は、1つの側面がベアリング領域を含み、隣接した側面が骨界面領域を含む、装置の組成物の横断領域を図示する。2つの領域は同一素材または異素材を含むことができる。1つの実施形態において、2つの領域は1つかつ同一のIPNヒドロゲルを含むが、別の実施形態において、ベアリング領域はIPNヒドロゲルを含み、骨界面領域は、2つの材料の間に滑らかな移行帯7があるようにIPNヒドロゲルに統合される別のポリマーを含む。1つの実施形態において、ベアリング領域はIPNヒドロゲルから作製され、ヒドロゲル装置1、2の骨界面領域6は、ポリマーまたはポリウレタン、シリコーンゴム、誘導体もしくはその組合せなど(ヒドロゲルなどの他のポリマーとのコポリマーまたは相互貫入ネットワークなど)から作製され、装置は荷重に応答して伸張または圧縮し、隣接した骨上にまたはそのそばで引張応力または圧縮応力によって適所に物理的に保持されることを可能にする、優れた機械的特性を備える。ベアリング領域が装置の体積の大部分または一部のいずれかを構成することができるように、2つの領域の相対的な厚さは変更することができる。
【0023】
本装置は天然の関節軟骨の構造および機能を模倣する材料を含むという点で、「生体模倣」(すなわち、天然の軟骨の模倣)として記載することができる。天然の軟骨は、約75%の含水率のコラーゲンの中性硬質ネットワークを相互貫入するプロテオグリカン類の高度に負に荷電したネットワークからなっているが、好ましい実施形態において、ヒドロゲルは、少なくとも35%〜最大90%(好ましくは約70%)の含水率の、例えばポリ(エチレングリコール)マクロモノマーの中性硬質親水性末端架橋ネットワークを相互貫入するポリ(アクリル酸)の高度に負に荷電したネットワークからなる。これらの構造的な細部の模倣は、天然の軟骨の様に挙動する、硬いにもかかわらず高度に潤滑なベアリング材料の形成に重要であると考えられる。親水性末端架橋マクロモノマーおよび負に荷電した第2のネットワークの他の組合せは可能である。PEGおよびPAAは恐らく利用可能な最も生体適合性のある2つの親水性ポリマーである。例えば、PEGはタンパク質吸着に耐性があることが広く知られており、PAAはマクロファージ活性に対する防御的役割をインビボで有することが最近示された。PEGおよびPAAは通常は個別では弱いが、我々は、天然の軟骨の高い機械強度および弾性率、高い含水率、ならびに低い表面摩擦を模倣する材料の「ひずみ硬化された」IPNを生成する方法を開発した。天然の軟骨のように、ヒドロゲルは高い機械強度および機械率によって荷重を吸収し分配することができる。同時にそれは、高含水率および低表面摩擦のために、ちょうど新生組織のように滑りやすいベアリング表面として機能することができる。
【0024】
本発明のもう一つの革新的な態様は錨着戦略である(図3)。物理的手段、化学的手段および生物学的手段の組合せを使用して、装置を骨に錨着することができる。物理的錨着を達成するために、ヒドロゲル装置1および2の骨界面領域6は天然または人工的に調製した(例えばリーマー加工した)軟骨下骨のマイクロトポグラフィーと一致するように粗く多孔性に作製され、それはこの界面で表面領域および摩擦を増加させて、装置による骨の機械的連動を促進する。さらに、装置は与えられた関節面の天然の凸面および凹面に適合するように製作される。寛骨臼4aなどの凹面関節構造4の場合のための図3(B1〜B3)中で示されるように、装置は完全にかみ合うキャップ2aとして製作されるか、または凹面に対して拡張性嵌合を生成するようにわずかに一回り大きい。同様に、可能なものは、ソケットの外部溝の周囲の関節唇様構造を生成する寛骨臼コンポーネント(4a)の外縁の周囲の「唇」の存在であり、それは装置の位置および錨着をさらに支援するだろう。大腿骨骨頭などの凸面関節構造3の場合のための図3(A1〜A3)中で示されるように、ヒドロゲル装置1aは完全にかみ合うキャップとして製作されるか、または凸面を覆ってピッタリとした嵌合を生成するようにわずかに一回り小さい。ヒドロゲル装置1または2を確実にする前述の物理的手段を追加するために、多数の戦略を使用することができる。最初に、骨界面領域6は、(a)粗面、(b)多孔性表面、(c)細胞接着を促進する生体分子(カドヘリンまたはインテグリンなど)、または生体分子(例えばコラーゲン、骨形態形成タンパク質(BMP)、ビスホスホネート、骨形成タンパク質OP−I、オステオポンチン)を表面に連結すること、(d)骨誘導物質(天然のヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウムまたは精製コラーゲンなど)による表面被膜、または(e)セメントまたはグルーなどの結合剤の追加を含みうるが、これらに限定されない方法によって、下層にある骨への接着を促進する。これらの組合せもまた可能である。錨着プロセスは図3中の他のプロットにおいて図示される。
【0025】
1つの実施形態において、装置の骨界面領域6は隣接した骨と相互作用するように調製され、長期にわたる骨統合を介して錨着することを可能にする。図4において示されるこの実施形態バージョンにおいて、PEG/PAAのIPN骨界面領域6中のポリ(アクリル酸)中のカルボン酸11は再構築されているので、骨3中のカルシウムおよびリン酸塩の錯体を形成する。別の実施形態において、骨界面領域6は、移植の前にカルシウム含有無機成分(例えば、リン酸三カルシウム、または/およびヒドロキシアパタイト)により前被覆される。さらに別の実施形態において、骨界面領域として働く別のポリマー材料は、骨の内方成長および沈着および/または石灰化を介して装置を錨着する。したがって、錨着の生物学的方法は、石灰化層を介して成し遂げられる。これは、骨界面領域の孔内で連続的な骨成長および沈着のためのステージ、ならびに次には石灰化され生体人工合成界面を介して装置の錨着場所を設定する。下層にある骨と装置の骨統合によって骨と一体に動くこと、および関節内の軟骨のように機能することができ、継続的な骨再構築を介してよりよい接着を提供する。
【0026】
ヒドロゲルを完全に結合する硬化可能な接着剤の局部的な使用は、強固な手術中の錨着を達成する化学的手段を提供する。1つ実施形態において、接着剤は、セメント(例えば亜鉛カルボシレート(carbocylate)セメント)、樹脂、グルーまたは同種のものなどの歯科用接着剤または整形外科用接着剤でありえる。この接着剤は、装置のベアリング領域および骨との間の堅い結合を提供するものでありえる。硬化形態における接着剤は、多孔性もしくは非多孔性でありえるか、または生体分解性もしくは非生体分解性でありえる。分解性接着剤の場合において、骨界面領域に結合する新しい骨が形成されるので接着剤材料は徐々に崩壊する。この分解は、新しい骨が形成するのにかかる時間と一致するように移植された後に、約1〜約12週の期間にわたって起こる。非分解性接着剤の場合においては、骨は再構築されているにもかかわらず、接着剤それ自体が骨と結合し相互侵入する。
【0027】
別の実施形態において、骨界面領域は、ポリウレタン、シリコーンゴム、またはそれらの誘導体もしくは組合せなどの非ヒドロゲルポリマー(ヒドロゲルなどの他のポリマーとのコポリマーまたは相互貫入ネットワークなど)から部分的に作製され、材料は荷重に応答して伸張または圧縮し、隣接した骨上にまたはそのそばで引張応力または圧縮応力によって適所に物理的に保持されることを可能にする、優れた機械的特性を備える。かかるコンポジット材料は、ベアリング領域として潤滑なヒドロゲル(PEG/PAAなど)、および骨界面領域として非ヒドロゲルポリマー(ポリウレタンまたはシリコーンベースの材料など)を有する。
【0028】
本発明の1つ実施形態は、股関節形成装置としての適用である。この実施形態に従って、関節形成ヒドロゲル装置は、図5、6および7において示されるような大腿骨骨頭コンポーネント(1a)および寛骨臼コンポーネント(2a)を含む。両方のコンポーネントは、表1中で記述される特性を備えたPEG/PAA相互貫入ネットワークヒドロゲルを含み、この後記述されるプロセスによって作製される。
【0029】
【表1】
【0030】
全体の装置形状は、天然の軟骨の解剖学に類似している。損傷を受けた軟骨および表面的な骨層を除去するために大腿骨骨頭3aを外科的にリーマー加工した後に、大腿骨骨頭コンポーネント1aは、キャップ型を保持して大腿骨骨頭3a骨上に配置される。大腿骨骨頭コンポーネント1aの骨界面領域6は、大腿骨骨頭骨3aの曲率半径と比較して、わずかに一回り小さい曲率半径を有し、したがって、大腿骨コンポーネント1aは、大腿骨骨頭のまわりに緊密嵌合によって適所に保持することができる。より具体的に、そしてラテックス製コンドームへのアナロジーによって、取り付けられる骨よりもわずかに一回り小さいヒドロゲル装置大腿骨骨頭コンポーネント1aは、大腿骨骨頭3aを覆って引っ張られ、ヒドロゲル装置1a材料の伸張によって生成された張力によって適所に保持される。大腿骨骨頭コンポーネント1a材料が伸張可能であるので、それは大腿骨骨頭を覆って嵌合するように伸張することができる。この実施形態の1つバージョンにおいて、このキャップ型装置1aは、骨を外側面で360度および前額面で最大200度覆う。ここでその内側のスペースを占領する骨により、ヒドロゲル装置大腿骨骨頭コンポーネント1aは、完全にはその原寸に戻ることができず、それは装置1aが囲む骨3aを「抱き締める」ようにする。全プロセスは、装置1a開口部を開くことができる開創器具によって促進することができる。
【0031】
損傷を受けた軟骨および表面的な骨層を除去するために寛骨臼骨4aを外科的にリーマー加工した後に、寛骨臼コンポーネント2aは寛骨臼骨4a上に配置される。寛骨臼ヒドロゲル装置コンポーネント2aは半球のシェル型を保持し、その骨界面領域6は、寛骨臼骨4aソケットの曲率半径と比較して、わずかに一回り大きい曲率半径を有し、寛骨臼コンポーネント2aは、寛骨臼4aの内側の緊密な圧入嵌合によって適所に保持することができる。ヒドロゲル装置の寛骨臼コンポーネントは、天然の寛骨臼軟骨のものと一致し、1mm〜5mmの範囲内である厚さプロファイルを有することもまたできる。ヒドロゲル装置の寸法は、外科医によって使用されるリーマーの寸法に一致する。さらに、装置の端部は端応力集中を防ぐために丸くすることができる。
【0032】
すべての患者がほぼ完全な嵌合を有するように、異なるサイズの装置1、2のライブラリーは、関節サイズの広い範囲をカバーすることができる。手術時に、医師は、適切な寸法の装置を選択し移植するだろう。厚さは、必要ならば、関節面領域および/または患者の体重の変化とともに、関節適合因子に適応するように調整することができる(すなわち、関節が適合しないほど、より多い厚さが必要とされる)。
【0033】
装置の骨界面領域6は、10〜1000ミクロンの範囲内の孔径で多孔性である。骨界面領域は、ヒドロゲルの負の電荷、および図4中に示されるようなヒドロキシアパタイト結晶中に含まれるカルシウムイオンのために生成された結合の利用によって化学的に沈着される可溶性または不溶性のヒドロキシアパタイトの層により被覆される。移植の2〜12週間後に、孔は、骨およびヒドロゲル装置の相互侵入を達成する新しい骨組織により満たされる。
【0034】
大腿骨骨頭コンポーネント1aのベアリング領域5の表面は、寛骨臼コンポーネント4aのベアリング領域5の表面と同一の曲率半径を有し、寸法の一致したボール・イン・ソケット機構を達成し、したがって均一な接触応力の分布を産出する。さらに、チャンバー101が寛骨臼コンポーネント2aのベアリング側面と大腿骨コンポーネント1aとの間で形成されるように、寛骨臼コンポーネントのベアリング領域6aはその中央部においてくぼみ100を保持することができる。チャンバー101は関節荷重の無い時に液体102で満たされ、チャンバー101がベアリング領域5表面によって効果的に密封されるので、関節荷重が適用されれば、前記液体102は加圧され、加圧された液体102は、関節荷重のかなりの部分を吸収することができる。
【0035】
大腿骨コンポーネント1aは、図6Bおよび図7において示されるような可変的なシェル厚プロファイルを有することができ、装置厚は1mm〜5mmで変化しうる。それゆえ、接触応力がより高い最も厚いシェル領域がコンポーネント4の上部側にあるが、それは端部5に向かって徐々に漸減して関節の可動域を増加させて衝突から装置を保護する。大腿骨コンポーネント1aは上部側でくぼみ103も保持することができ、大腿骨骨頭骨を提供する任意の管に適応する。寛骨臼窩を外科的にリーマー加工して任意の軟組織を除去した後に、寛骨臼コンポーネント2aは、寛骨臼窩の内側に嵌合できるその凸側で突部を保持することができ、前記突部は、関節がさらされる継続的な圧縮と組み合わせて、インプラント移動が防止されるように、ヒドロゲル装置の寛骨臼コンポーネント4aの初期配置を確実にする。
【0036】
別の実施形態において、ヒドロゲル装置は膝関節に適用することができる。装置は、図8中に示されるような遠位大腿骨コンポーネント1bおよび脛骨プラトーコンポーネント2bを含む。遠位大腿骨コンポーネント1bは、全体の形においては天然の遠位大腿骨軟骨のものと類似する。それは、リバースエンジニアリング法を介して、一般的な順応可能な型または患者特異的幾何学的形状を有するようにあらかじめ作製することができる。コンポーネントはソックスのように骨上に配置される。膝関節を露出して、損傷を受けた軟骨層を外科的に除去した後に、遠位大腿骨コンポーネント1bを配置することができる。装置の特殊な開口部は靭帯挿入を可能にし、それゆえ、外側開口部110および中央開口部111は外側靭帯および十字靭帯にそれぞれ適応する。図32中でもまた検討されるように、装置は、pHの変化、塩濃度の変化または温度の変化のいずれかのために、ヒドロゲル刺激および後続する収縮を介して、適所に緊密に保持することができる。例えば、コンポーネント1bは、pH9環境において手術前に平衡化することができ、それは後に本出願中で検討されるような膨潤の増加を導く。体液による平衡および後続するpHの低下に際して、成分1bは収縮し、したがって遠位大腿骨3bの特定の幾何学的形状に適合するだろう。あるいはヒドロゲルは手術前に低い(体液と比較して)塩濃度溶液、例えば0.01M〜0.05Mにより手術前に平衡化することができ、移植および身体の塩濃度(例えば0.15M)による塩平衡に際して、塩濃度に対する材料の感受性を利用して、コンポーネントは遠位大腿骨3bの特定の幾何学的形状に適合する。このようにして、成分1bの初期固定は遠位大腿骨3b上で確実になる。
【0037】
脛骨プラトーコンポーネント2bは湾曲した円盤型を有することができ、一側性または両側性になりえ、すなわち、それは両方の脛骨プラトー4bファセット、または軟骨傷害の程度に依存して、外側ファセットまたは内側ファセットのいずれかを単純に覆うことができる。骨において脛骨プラトーコンポーネント2bを固定させることができる1つ方法は、図9中に示されるようなファセット面上にくぼみ113を外科的に生成することによる。くぼみ113はリーマー加工することによって、または例えばポンチにより局部的に軟骨下骨112を破砕することによって、作製することができる。インプラントがその中に圧入嵌合できるように、くぼみ113はそのような寸法を有し、例えば環状くぼみ113は、環状コンポーネント2bよりも1または2ミリメートル小さい直径を有することができる。
【0038】
両方のコンポーネントの骨界面領域6は、図29中で検討されるように、骨の接着および/または内方成長を促進するように表面上に連結された骨形態形成タンパク質を備えた多孔質である。微小破壊またはリーマー加工された骨は再生力のある特性を示し、骨とヒドロゲル装置との間の相互侵入は手術後最大12週間かかる。
【0039】
材料詳述
関節形成において使用される現行の材料は、機械的「ベアリング」として十分に機能するが、天然の軟骨と比較して、鍵となる材料特性の差が問題となる。プラスチック、金属およびセラミックスは水和されないので、それらはもっぱら血清/関節液の潤滑に依存し、ベアリング機能は表面粗度に加えて耐性にも依存する。界面の摩耗は、アブレージョンを介して摩耗残屑を最終的に産生する。摩耗産物は、典型的には、微粒子形態(例えばポリエチレン粒子)、またはイオン形態(例えば金属イオン)である。これらの両方は滑膜性関節における炎症のプロモーターであることが示され、内部臓器に移動することが見出された。さらに、金属が骨よりも有意に硬いので、それらは応力伝達を完全に変え、骨吸収または線維組織形成および最終的にインプラントの周囲の緩みを導く。研究者が、従来の整形外科用「ハードウェア」に関連した問題を回避するように探索した1つの方法は、「ソフトウェア」(軟質材料)の使用である。米国において利用可能なかかる1つのアプローチは「カーティセル(Carticel)」自己軟骨移植である。これは、患者の自身の軟骨細胞から再生させた軟骨により膝軟骨中の局所欠損を「埋立て」のに効果的であることが示された。発生下の組織工学によって作製された軟骨、細胞移植、および自己移植に関する多数の他のアプローチがある。現在までに、軟骨様の剛性および水和性の潤滑表面の同時の組合せは、材料工学において到達するべき得がたい一対の特性であった。
【0040】
本発明は、図10において図示される、第1のネットワーク10としての末端架橋マクロモノマー13の中性の架橋されたネットワークおよび第2のネットワーク11中のイオン化された架橋ポリマーに基づく相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)ヒドロゲルネットワークを有するヒドロゲル装置1を提供する。実施形態の1つにおいて、第1のネットワーク10は、定義された分子量を備えた末端架橋ポリ(エチレングリコール)マクロモノマーからなる。第2のネットワーク11は、これとは対照的に、ポリ(アクリル酸)(PAA)の緩く架橋されイオン化性ネットワークである。さらに、ヒドロゲルは塩水溶液12を含む。表1中で詳述されるように、pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水中で膨潤させたとき、このPEG/PAAのIPNは、高引張強度、高圧縮強度、および低摩擦係数を有する。
【0041】
PEGおよびPAAのホモポリマーネットワークは、両方とも比較的脆弱な材料である(前者は比較的脆性であり、後者が高度に順応性である)。しかしながら、2つのポリマーは、PEG上のエーテル基とPAA上のカルボキシル基との間の水素結合を介して錯体を形成することができる。このポリマー間の水素結合は、水溶液中のそれら相互の混和性を促進し、それは今度は、光学的に清澄で均質のポリマーブレンドを産出する。イオン化性ネットワーク(PAA、pKa=4.7)を緩く架橋することによって(稠密に架橋する代わりに)、そのネットワーク立体配置の大きな変化は、溶媒のpHを変化させることによって、中性のPEGネットワークに影響せずに誘導することができる。pH4.7以上の塩含有緩衝液中で、PAAネットワークは荷電および膨潤し、pH4.7以下の時にPAAネットワークはプロトン化および縮小する。
【0042】
図11は、本発明に記載のIPNヒドロゲルの合成のために必要とされる工程を示す。ヒドロゲルのための出発材料は、水16中に溶解された官能末端基15を備えたテレケリックマクロモノマー13の溶液である。テレケリックマクロモノマーは重合されて(図11a)、第1の水膨潤ポリマーネットワーク10を形成する。次に(図11b)、水16と混合した親水性イオン化性モノマー14を、光開始剤および架橋剤と共に第1のポリマーネットワーク10に追加する。親水性イオン化性モノマー14は次に光重合され、第1のポリマーネットワーク10の存在下において架橋して、第1のポリマーネットワーク10の存在下において第2のポリマーネットワーク11を形成する。これは水膨潤IPNヒドロゲルの形成をもたらす(図11b、右側)。次に、水吸収IPNをpH7.4の塩含有溶液12中に浸漬し(図11c)、平衡まで膨潤させ、IPNの含水率および剛性率の両方の同時の増加を産出する。図11c中に右側のIPNは、左側のIPNと比較して、より高い剛性率を有する。ひずみ(この場合膨潤によって誘導された)の結果としてのこの率の増加は、IPN内の物理的架橋の数の増加によって引き起こされると考えられる。本発明の目的で、「ひずみ硬化」は物理的架橋(絡み合い)の増加として定義される、適用された膨潤による剛性率の増加はひずみを誘導する。終末材料は浸透圧によりあらかじめ応力を加えられたIPNであり、それは増加した剛性および強度を示す。
【0043】
図12Ai−ivは、モノマー17を使用して第1のネットワーク10を作製した後、IPNがどのように調製されているかを本発明方法工程の実施形態に従って示す。光開始剤および架橋剤(図示せず)の存在下における紫外線への暴露は、(i)〜(ii)の移行によって図示されるように、重合および架橋を導いて、ネットワーク10を形成する。(iii)〜(iv)において、第1のネットワークは、第2のネットワークの前駆体モノマー14、架橋剤(図示せず)および光開始剤(図示せず)により膨潤される。紫外線への暴露は、第1のネットワーク10の存在下において第2のネットワーク11の重合および架橋を開始して、IPNを形成する。
【0044】
図12Bは、反応性末端基15を備えたマクロモノマー13を使用して、既存の第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子の存在下において第1のネットワーク10を形成した後に、IPNがどのように調製されているかを本発明方法工程の実施形態に従って示す。第1のポリマーコンポーネントおよび第2のポリマーコンポーネントの混合物を作製し、次に紫外線下でテレケリックマクロモノマー13および15を反応させて、第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワーク10を形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。図12Cは、モノマー17に基づく第1のネットワーク10、および第2のネットワーク11または線状マクロ分子および/もしくは生体マクロ分子からIPNがどのように形成されるかを本発明方法工程の実施形態に従って示す。モノマー17およびマクロ分子の混合物を作製し、次に紫外線下でモノマーを反応させて、第2のネットワーク11の存在下において第1のネットワークを形成する。第2のネットワーク11が化学的に架橋されるならば、それは完全相互貫入ネットワークである。第2のネットワーク11が化学的に架橋されないならば(そして物理的に架橋されるのみならば)、それは半相互貫入ネットワークである。
【0045】
本発明の1つの実施形態において、グラフトされたポリマーを使用してIPNを形成する。図16Aは、第1のポリマーネットワーク10および第2のポリマーネットワーク11を備えた本発明に従う標準的IPNを示す。図16Bは、第1のポリマーネットワーク10が親水性ポリマー29でグラフトされるIPNを示す。前述のマクロモノマー、モノマー、またはマクロモノマーおよびモノマーの組合せの任意のものを使用して、グラフト構造を得ることができる。図16Cは、第2のポリマーネットワーク11が別の親水性マクロモノマー30でグラフトされるIPNを示す。図16Dは、第1のポリマーネットワーク10が親水性モノマー29によりグラフトされ、第2のポリマーネットワーク11が別の親水性マクロモノマー30によりグラフトされるIPNを示す。グラフトネットワークは、ネットワーク(大部分は1つのポリマーから作製されるが、第2のポリマーのグラフト鎖を有する)を産出する比率の2つのコンポーネントの水溶性混合物の重合によって作製される。
【0046】
任意の親水性テレケリックマクロモノマー13を第1のポリマーネットワーク10を形成するために使用できる。好ましい実施形態において、予備形成されたポリエチレングリコール(PEG)マクロモノマーは、第1のネットワーク(10)の素地として使用される。PEGは生体適合性があり、水溶液において可溶性であり、広範囲の分子量および化学構造を生ずるように合成することができる。二官能性グリコールのヒドロキシル末端基は架橋可能末端基15へと修飾することができる。これらのマクロ分子および生体マクロ分子に対する、末端基官能基または側鎖基官能基は、アクリレート(例えばPEG−ジアクリラート)、メタクリレート、ビニル、アリル、N−ビニルスルホン、メタクリルアミド(例えばPEG−ジメタクリルアミド)、およびアクリルアミド(例えばPEGジアクリルアミド)を含みうるが、これらに限定されない。例えば、PEGマクロモノマーは、ジアクリラート、ジメタクリラート、ジアリルエーテル、ジビニル、ジアクリルアミド、およびジメタクリルアミドなどの末端基により化学的に修飾することができる。テレケリックな架橋可能PEGマクロモノマーを産出する末端基機能化反応の例は、図13および14、15中に示される。これらの同様の末端基は、ポリカーボネート、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、多糖類(例えばデキストラン)、生体マクロ分子(例えばコラーゲン)、およびそれらの誘導体または組合せなどの他のマクロモノマーに追加することができる。第1のネットワーク10は、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドまたはポリウレタン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリカーボネート、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたはそれらの誘導体に基づくものを含むが、これらに限定されない他のポリマーの任意の数で共重合することもできる。
【0047】
好ましくは、第2のネットワーク11中の親水性モノマー14はイオン化性およびアニオン性(負に荷電可能)である。好ましい実施形態において、ポリ(アクリル酸)(PAA)ヒドロゲルはアクリル酸モノマーの水溶液から形成されて、第2のポリマーネットワークとして使用される。他のイオン化性モノマーは、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、およびそれらの誘導体または組合せなどの負に荷電したカルボン酸期またはスルホン酸基を含むものを含んでいる。第2のネットワークモノマー14は正に荷電しているかまたはカチオン性でもまたありえる。親水性モノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたはそれらの誘導体などの非イオン性でもまたありえる。これらは、メチルメタクリレートなどのあまり親水性でない種もしくはより疎水性のモノマーまたはマクロモノマーにより共重合することができる。これらのモノマーに基づいた、架橋された線状ポリマー鎖(すなわちマクロ分子)もまた、タンパク質およびポリペプチド(例えばコラーゲン、ヒアルロン酸またはキトサン)などの生体マクロ分子と同様に、第2のネットワーク11中でも使用することができる。
【0048】
水中の末端架橋可能なマクロモノマー13の水溶液への光開始剤の追加および紫外線に対する溶液の暴露は、PEGマクロモノマーの架橋をもたらし、第1のネットワーク10として働くPEGヒドロゲルを生ずる。第1のネットワークの内部で第2のネットワーク11を重合し架橋することは、IPN構造を生ずるだろう。フリーラジカル重合を介してIPNヒドロゲルを調製することは、型の使用によって図7、8中で図示されたものなどの所望される型のヒドロゲルを形成することができるという追加の長所を有する。好ましくは、第1のポリマーネットワークは、テレケリックマクロモノマー13、15を、乾燥重量で少なくとも50%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも75%含む。緩衝液および有機溶媒(またはその混合物)を含む他の溶液を使用して、第1のネットワークマクロモノマー13または第2のネットワークモノマー14を溶解することもできる。任意のタイプの適合性のある架橋剤、例えばエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート(またはジアクリラート)、トリエチレングリコールジメタクリラート(またはジアクリラート)、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール(またはジアクリラート)、ポリエチレングリコールジメタクリレートもしくはポリエチレングリコールジアクリラート、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、誘導体またはそれらの組合せなどを使用して、前述の第1のネットワーク10の任意のものの存在下において、第2のネットワーク11を架橋することができる。任意の数の光開始剤もまた使用することができる。これらは2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンを含むが、これらに限定されない。
【0049】
第1のネットワークのテレケリックマクロモノマーの例
アクリレートまたはメタクリレートの末端基を備えたテレケリックPEGマクロモノマー13は、以下の様式で合成することができる。PEGはトルエンを乾燥させ、THF(100gあたり550mL)中で再溶解し、窒素下で維持した。蒸留トリエチルアミン(OH基あたり2.5当量)を、この溶液へゆっくり追加した。次に、塩化アクリロイル(または塩化メタクリロイル)を、室温で30分にわたって滴下漏斗(THFにより希釈された)を介して追加した。反応(図13)を一晩進ませた。濾過を実行して形成された塩を除去した。溶媒の体積をロータバップ(Rotavap)を使用して減少さsw、ジエチルエーテル中で沈殿させた。抽出に対する代替として、セルロース膜を介する濾過もまた実行される。未精製産物は沈殿後に真空においてジエチルエーテルを乾燥させ、次にMeOH中で溶解し、ロータバップ中で乾燥した。それを次に水中で溶解し、膜を通して濾過し、最終的に凍結乾燥した。
【0050】
ネットワークはPEG−ジアクリルアミドからもまた形成された。PEG−ジオールは以下の手技を使用して、PEG−ジアクリルアミド(図14)に変換した。PEG分子量3400(100g、58.8mmol −OH)を窒素下で700mLトルエン中で共沸蒸留し、約300mLのトルエンを除去した。次にトルエンを完全に蒸発させ、次にPEGを無水テトラヒドロフラン中に再溶解した。トリエチルアミンは使用の前に蒸留された。溶液を窒素下の室温浴中で冷却し、次に氷浴中で冷却した。溶液が清澄になるまで、無水ジクロロメタンを追加した(約100mL)。次に、トリエチルアミン(24.6mL、176.5mmol)は滴下して撹拌しながら追加し、続いて13.65mmol塩化メシル(176.5mmol、OH末端基あたり3当量の過剰量)を滴下により追加した。反応はアルゴン下で一晩進行させた。溶液を清澄になるまで真空下で紙を通して濾過し、続いてジエチルエーテル中で沈殿させた。次に産物を濾過によって回収し、真空下で乾燥した。PEG−ジメシラート産物を、1Lボトル中の400mLの25%アンモニア水溶液へ追加した。ふたを緊密に閉じ、パラフィルムにより密封し、反応を室温で4日間力強く撹拌した。次にふたを除去してアンモニアを3日間蒸発させた。溶液のpHを1N NaOHにより13まで高め、溶液を100mLジクロロメタンにより抽出した。ジクロロメタンによる抽出のために、NaClを水相(〜5g)へ追加し、水相を150mLのジクロロメタンにより数回抽出した。ジクロロメタン洗浄物を合わせ、減圧下で濃縮した。産物をジエチルエーテル中で沈殿させ、真空下で乾燥した。次にPEG−ジアミン分子量3400(20g、11.76mmolアミン)を窒素下で400mLのトルエン中で共沸蒸留し、約100mLトルエンを除去した。次にトルエンを完全に蒸発させ、次にPEGを無水テトラヒドロフラン中に再溶解した。溶液を窒素下の室温浴中で冷却し、次に氷浴中で冷却した。トリエチルアミン(2.46mL、17.64mmol)を滴下して撹拌しながら追加し、続いて1.43mLの塩化アクリロイル(17.64 mmol)を滴下により追加した。反応(図14)は、窒素下で暗中で一晩進行させた。次に溶液を清澄になるまで真空下で紙を通して濾過し、続いてジエチルエーテル中で沈殿させた。産物を濾過によって回収し、真空下で乾燥した。次に産物を10gの塩化ナトリウムを含む200mLの脱イオン水中で溶解した。pHをNaOHによりpH6へ調整し、100mLのジクロロメタンにより3回抽出した(エマルジョンとして水相中で残存するある程度の産物がある)。ジクロロメタン洗浄物を合わせ、産物をジエチルエーテル中で沈殿させ、真空下で乾燥した。あるいはPEG−ジアクリルアミドを1回ジエチルエーテルから沈殿させ、MeOH中で再溶解し、MeOHを乾燥させ、次にセルロース膜(分子量カットオフ:3000)を通した水中の遠心濾過によって精製した。凍結乾燥を使用して所望産物に到達した。
【0051】
ジオール含有PEGマクロモノマーはアリルエーテルにも変換された。二官能性アリルエーテルマクロモノマーは、以下の手技(図15)を使用して、PEGから合成した。新鮮な無水テトラヒドロフラン(THF)(100mL)をPEG10gごとに追加した。この混合物をPEGが溶解するまで穏やかに加熱し、次に氷浴中で冷却し、その後水素化ナトリウムを複数の小分けでゆっくり追加した(PEG ReOH基について1.05モル当量のNaH)。H2ガスの放出の停止後、システムをアルゴンによりパージし、塩化アリルまたは臭化アリル(PEG OH基あたり1.1モル当量、THF中で1:10希釈した)を追加漏斗を使用して滴下して追加し、その後反応混合物(図15)を摂氏85度の油浴へ移して一晩還流した。真空濾過を使用して臭化ナトリウム副産物を除去し、回転蒸発を使用してTHFの濃度を減少させ、その後氷冷ジエチルエーテル(10:1v:vジエチルエーテル:THF溶液)を使用してPEG−アリルエーテル産物を溶液から沈殿させた。
【実施例】
【0052】
以下の記述は、第1のネットワーク10ポリマーとしてPEGおよび第2のネットワーク11ポリマーとしてPAAを有するひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルの例示的な実施形態を指す。IPNヒドロゲルは、UV開始フリーラジカル重合に基づく(2工程の)連続するネットワーク形成技術によって合成される。第1のネットワークのための前駆体溶液は、UV感受性フリーラジカル開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンまたは2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンのいずれかを有する、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、水または有機溶媒中で、50%w/vの典型的な濃度で溶解した精製テレケリックPEGで作製されている。使用されるテレケリックPEGマクロモノマーのタイプは、PEG−ジアクリラート、PEG−ジメタクリラート、PEG−ジアクリルアミド、およびPEG−ジアリルエーテルであった。他の実施形態において、いずれのネットワークも、熱開始反応および紫外線光の使用を含まない他のケミストリーなどの他の手段によって開始するフリーラジカル重合によって合成することができる。UV重合の場合において、前駆体溶液を透明な型の中に流し込み、室温の紫外線源下で反応させる。暴露に際して、前駆体溶液はフリーラジカル誘導のゲル化を受けて、水不溶性になる。型は、平衡膨潤した所望される寸法でヒドロゲルを産出するような方法で製作される。
【0053】
第2のネットワーク11を組み込むために、PEGベースのヒドロゲルを、光開始剤および架橋剤(体積で0.1%〜10%のトリエチレングリコールジメタクリラート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、N,N−メチレンビスアクリルアミド、またはN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド)を含むアクリル酸(10〜100%v/v)水溶液などの、第2のモノマー14溶液中に、室温で24時間浸漬する。次に膨潤させたゲルをUV源へ暴露し、第2のネットワーク11を第1のネットワーク10の内部で重合および架橋し、第2のネットワーク中の架橋度が第1のネットワークのもの未満であるIPN構造を形成する。好ましくは、第1のネットワークテレケリックマクロモノマー対第2のネットワークモノマーのモル比は、約1:1〜約1:5000に及ぶ。さらに好ましくは、第1のネットワーク対第2のネットワークの重量比率は、約10:1〜約1:10の範囲である。本発明の別の実施形態において、IPNは、第2のモノマー成分対第1のマクロモノマー成分が100:1以上のモル比を有する。
【0054】
光学的透明度、含水率、柔軟性および機械強度などのヒドロゲルの鍵となる特性は、第2のモノマータイプ、モノマー濃度および分子量および紫外線暴露時間などの様々な因子を変化させることによって制御することができる。次のセクションの実験の焦点は、このシステムにおいて観察された膨潤誘導性のひずみ硬化であり、第1のネットワーク10および第2のネットワーク11の架橋および膨潤の様々な条件下でそれがどのように現われるかを、一軸引張試験を介して試験することによる。膨潤データーを使用して、剛性率、真破断応力および真破断ひずみと相関するネットワークの平衡水分およびポリマー含量を計算する。結果は、ひずみ硬化が、バルク変形によって強化されるPEGネットワークとPAAネットワークとの間の物理的絡み合いに由来することを示す。水素結合を促進する条件下で(PAAのpKa、pHが4.7以下であるときに)、これらの絡み合いはPEGとPAAとの間のポリマー間錯体によって補強され、IPNの破壊強度の増加を導く。PAAのイオン化を促進する条件下で(pHが4.7を超え、塩を追加するときに)、膨潤PAAネットワークと静的テレケリックPEGマクロモノマーネットワークとの間の立体相互作用(すなわち物理的架橋)の増加は、剛性率の増加を導く。
【0055】
特定の実施形態において、第1のネットワーク10中のPEGの分子量の変化および第2のネットワーク11中のPAAポリマー含量の変化を有するIPNのアレイは、第1のネットワーク10中のジアクリラートの架橋および第2のネットワーク11中のトリエチレングリコールジメタクリラートの架橋に基づいて製作された。ヒドロゲルはすべて、光開始剤(モノマー14またはマクロモノマー15に関して1%v/vの濃度の2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン)を使用して、紫外線による光重合によって形成された。IPNが調製される前に、PEGおよびPAAに基づく単一ネットワークヒドロゲルを個別に合成して、各組成物のゲル形成を確認し、単一ネットワークの物理的特性を調査する。PEG単一ネットワークのために、PEGマクロモノマーの分子量が275〜14000の間の範囲で変化させたヒドロゲルが合成された。脱イオン水において膨潤させた場合、低分子量PEGマクロモノマーは脆性ゲルを生じるが、より高い分子量のPEG−DA(3400)から作製されたヒドロゲルは透明かつ柔軟であることが見出された。これらの結果に基づいて、PEGの異なる範囲の分子量(3400、4600、8000および14000)を、第1のヒドロゲルネットワークのためのマクロモノマーとして選択した。一連のIPNを、各タイプのPEGネットワーク内のPAAネットワークの重合および架橋によって合成した。単一ネットワークヒドロゲルと比較して、結果として生じたIPNは有意によい機械的特性を有した。
【0056】
IPN機械強度に対するテレケリックPEG−DAマクロモノマーの分子量の効果を調査するために、分子量3400Da、4600Da、8000Daおよび14000DaのPEG鎖を、アクリル酸重合条件を一定に保ちながら(モノマーに関して1%v/v架橋剤および1%v/v光開始剤を含む脱イオン水中で50%v/v)、第1のネットワークにおいて使用した。結果として生じるIPNを、脱イオン水中での含水率、引張特性およびメッシュサイズに関する特徴を調べた。表2中で示されるように、PEG−DAマクロモノマーの分子量の変化は、PEG−DA単一ネットワーク率の変化を導いた。この効果はPEG/PAAのIPNにおいて増大され、ネットワークがより低分子量のPEG−DAマクロモノマーから調製されるにつれて、IPN初期率および最終率はますますより高くなる。PEG分子量が8000を越えて増加した場合に強度の増加はほとんどないことが注目され、PEGとPAAのネットワークの間の架橋の分子量間の差異が強度促進のために重要であることを示す。さらに、PEGマクロモノマーの分子量は、応力−ひずみ曲線が初期率からひずみ硬化された最終率へ移行する臨界ひずみ(εcrit)に強く相関した。εcritはより低分子量のPEGマクロモノマーから調製されたIPNについてより小さく、これらのネットワークが変形に応答してより急速にひずみ硬化することを意味する。
【0057】
【表2】
【0058】
コポリマー構造ではなく相互貫入構造を形成する重要性について、PEG−co−PAAコポリマーヒドロゲルの合成および引張特性試験によって調査した。次に、その応力−ひずみプロファイルを、IPN、ならびにPEG単一ネットワークおよびPAA単一ネットワークのプロファイルと共に並置した。図18Aにおいて、PEG(8.0k)/PAAのIPNの代表的な真応力(σtrue)vs真ひずみ(εtrue)プロファイルは、PEG(8.0k)−PAAコポリマーならびにそれらの構成要素のPEG(8.0k)ネットワークおよびPAAネットワークのプロファイルと比較される。IPNは、コポリマーおよび単一ネットワークの4倍以上の破断応力のひずみ硬化挙動を示す。しかしながら、試験された材料の各々は異なる含水率を有するので、応力データーをポリマー含量に基づいて正規化して各々のヒドロゲル中の単位ポリマーあたりの真応力を決定した。図18Bにおいて、単位ポリマーあたりの真応力(単位ポリマーあたりのσtrue)は、PEG(8.0k)−DA、PAA、PEG(8.0k)/PAA、およびPEG(8.0k)−PAAコポリマーについての真ひずみに対してプロットされる。PEGの単一ネットワーク、コポリマーおよびIPNの初期率は同一である(単位ポリマーあたりのE0=0.91MPa)が、PAA単一ネットワークの初期率はより低い(単位ポリマーあたりのE0=0.55MPa)。PEGネットワークの破断点の近くで(εtrue〜0.6)、コポリマーは、同等の重量でできているPEG単一ネットワークおよびPAA単一ネットワークの間の中間の率で引き続き伸ばされる。最終的にそれはまた、2つの単一ネットワークのεbreak値の間の中間のひずみで破損する。全く対照的に、PEG/PAAのIPNは、PEGネットワークの破損点を越えて、率は30倍増加し、10.6MPaの単位固体あたりの平均最大応力下でεtrue〜1.0で破断する、劇的なひずみ硬化効果を示す。ポリマー含量について正規化せずに、IPN(20%固体)およびコポリマー(51%固体)についてσbreakは、それぞれ3.5MPaおよび0.75MPaである。
【0059】
ポリマー間の水素結合の役割を調査するために、ヒドロゲルを膨潤する液体のpHを変化させてPAAネットワークのイオン化状態を変化させた。PAAの平衡膨潤はpHの変化に対して感受性があるので、pHの変化がPEG/PAAのIPNの機械的特性に対する効果を有することが予想された。合成の後に、水膨潤PAA単一ネットワークおよびPEG(8.0k)/PAAのIPNを、pH 3〜6および0.05の一定のイオン強度(I)の緩衝液中に置いた。PAAネットワークおよびIPNの両方において、pHが3〜6に増加するにつれて平衡含水率は増加した(表2)。PAAネットワークの場合において、pH3および4で中程度に膨潤したが、pH5または6ではpKa(4.7)を超えたPAAのイオン化のために高度に膨潤した。IPNもまたpHに依存する異なるレベルの膨潤を達成し、pH3および4で中程度に膨潤したが、pH5または6でpKa(4.7)を超えたPAAのイオン化のために高度に膨潤した。pH3および4の両方で、IPNはPAA単独よりも低い平衡含水率を達成したことが注目される。酸性環境において水素結合を介するPEGおよびPAAの互いとの錯体が、よりコンパクトなそれほど水和性でない相互貫入ネットワーク構造を導くという事実によって、これは部分的に説明することができる。4.7を超えたpHでPAAがイオン化されるようになり、カウンターイオン(水と共に)がヒドロゲルに侵入するので、PEG鎖およびPAA鎖は解離して電荷中性を維持し、高い膨潤度を導く。それにもかかわらず、IPNは、PEGネットワークをPAA膨潤に配置する束縛のためにPAA単一ネットワークよりもわずかに低い程度(1.0〜1.5%)まで膨潤する。表2は、PEG/PAAのIPNの最大応力(σmax)または引張強度は、pH3(σmax=8.2MPa)の低膨潤状態において、pH 6(σmax=0.86 MPa)の高膨潤状態においてよりも、一桁大きいこともまた示す。類似する現象はPAAネットワークにおいて観察されるが、σmaxについての絶対値はpH3で0.38MPaおよびpH6で0.05MPaである。次にすべてのpHで、IPNはPAAネットワークよりも大きな引張強度を有し、この差はより低いpHで大きくなる。破断応力の差とは対照的に、IPNおよびPAAのネットワークの破断ひずみ値の傾向は、ほぼ等しく、εbreak値はpH3で〜1.2からpH6で〜0.55に変化する。この結果は、図18A〜Bにおいて行われた、IPNの伸長性がPAAネットワーク(PEG(0.6)よりも高いεbreak(0.9)を有する)の存在のためのように思われる観察を確かにする。IPN中にPAAネットワークが単に存在することは、ネットワークの一軸伸長性(IPNヒドロゲルが関節の荷重を支持するように使用されることを可能にする特性)を促進するように思われる。しかしながら最大応力データーのコンテキストにおいて(表2)、より高い伸長での荷重負担能力は、高pHで水素結合の非存在下よりも、低pHで水素結合の存在下においてより大きい。これとは対照的に、IPNネットワークおよびPAAネットワークの初期剛性率(E0)のpH依存性はそれほど分かりやすくない。pHが3から6に増加するにつれて、PAAネットワークの率は0.09MPaから0.05MPaへとわずかな低下を示す。一方、pHが3から6まで変化する場合、IPNの率は全く減少しないが、むしろ増加する。IPNのpH依存性は、pH4からpH5に移行するときに率がおよそ2分の1に低下するという、PAA単一ネットワークによって示された傾向に従わないことが注目される。率のこの減少は、PAA単一ネットワークの含水率の増加と相関する。さらに、含水率、およびその結果としてpHに基づくヒドロゲル体積または表面への依存性は、収縮または膨潤を利用する(pH)刺激感受性ヒドロゲル関節形成装置が、事前のセクションにおいて記述されているように、骨の内側またはその周囲の固定を順応させて確実にすることを可能にする。
【0060】
相対的なネットワーク率の結果をさらになお調査するために、IPN内のPAAの膨潤は最大化された。表2において示される実験データーは、IPNの率が膨潤増加によって負に影響されないことを示した。PEGネットワークは、追加のポリマー間相互作用およびIPN率の対応する増加を導く方法でPAAの膨潤に対する束縛として作用する。特に、PAA膨潤に対する中性のPEGネットワークの束縛効果の増加は、IPN中の物理的絡み合いの程度および数を増加し、今度は、IPNにおいて観察されたひずみ硬化挙動を導くだろう。この仮説を試験するために、第1のネットワーク分子量PEG 3400、4600および8000、ならびに一定のPAAネットワーク条件を有するIPNを、生理的条件下で最大の膨潤を誘導するために、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4、I=0.15)中に置いた。表2は、これらの各々の分子量を有するPEGマクロモノマーから調製されたネットワークについての平衡含水率および対応する膨潤比もまた、水膨潤IPNおよびPBS膨潤IPNの含水率で並置して示す。第1のPEGネットワークのサイズを3400Daから4600Daおよび8000Daに増加させることは、IPNが膨潤できる程度を増加させる。具体的には、イオン化した場合PEG(3.4k)/PAAのIPNは70%水のみまで膨潤するが、イオン化した場合PEG(4.6k)/PAAのIPNは77%水まで膨潤し、PEG(8.0k)/PAAのIPNは90%水まで膨潤する(PEG(8.0k)単一ネットワークとほぼ同じ含水率)。PEG(3.4k)ベースのIPNおよびPEG(4.6k)ベースのIPNの平衡含水率値は、それらの構成要素のPEG−DAネットワークの平衡含水率値(それぞれ、79.3%および84.5%)に近似しないことが注目される。
【0061】
ヒドロゲルの時間依存的含水率を、乾燥重量に対する膨潤重量の比に関して評価した。乾燥ヒドロゲルをリン酸緩衝生理食塩水に加えて水中でも量り、次に浸漬した。等間隔で膨潤したゲルを引き上げ、たたくようにして水気を取り、平衡に達するまで量った。平衡含水率(WC)のパーセンテージはヒドロゲルの膨潤重量および乾燥重量から計算した:
【数1】
式中、WsおよびWdはそれぞれ膨潤ヒドロゲル重量および乾燥ヒドロゲル重量である。
【0062】
図20は、PEGおよび第2のネットワーク中の2つの異なる量のアクリル酸(25%および50%)からなるIPNヒドロゲルの時間依存的膨潤挙動を示す。単一ネットワークIPNゲルをデシケーター中で乾燥し、脱イオン水中に置き、次に規定時間間隔で量った。両方のヒドロゲルにおいて、大部分の膨潤は5〜10分内に起こり、平衡膨潤は30〜40分以内に達成された。異なる含水率を有するヒドロゲルを得るために変化させたパラメーターは、PEGマクロノモノマー(macronomonomer)の分子量、第2のネットワーク中のPAAの重量分率、加えて第1のネットワークまたは第2のネットワークに追加された架橋剤(例えばトリエチレングリコールジメタクリラート、または低分子量PEG−DA)の量であった。
【0063】
表3は、第2のネットワークの調製に使用されるアクリル酸モノマーの濃度の変化の、PBS中のPEG/PAAのIPNの平衡含水率に対する効果を示す。一般に、アクリル酸モノマーのより高い濃度は、規定の架橋条件セットについて、より低い平衡含水率ならびにより高い剛性(引張率)および引張強度を有するヒドロゲルを導く。これらの成分から作製された本発明に記載のIPNヒドロゲルは、好ましくは、約15%〜95%の間の、およびより好ましくは約50%〜90%約の間の平衡含水率を有する。
【0064】
【表3】
【0065】
PEGの異なる分子量およびアクリル酸の異なる出発濃度が、異なる量の平衡含水率をもたらすので、ヒドロゲル中のPEGおよびPAAの最終量は、使用される出発PEGの分子量および使用されるアクリル酸の濃度に依存して変化する。本発明に従って作製されたPEGおよびPAAの重量比が変化する組成物の例は、表4中に示される。この表中のすべての組成物は、50%出発濃度の純水中で膨潤させた分子量8000DaのPEGマクロモノマーを使用して作製された。
【0066】
【表4】
【0067】
より稠密に架橋されたPEGネットワークの拘束内のPAAネットワークの膨潤(PEGマクロモノマーの分子量の低下による)は、結果として生じるIPN率の劇的な結果を有する。具体的には、図21は、より低い分子量(8000ではなく4600)によるPEGネットワークを使用してPAAが束縛されるときに、図18B中で示されたように、高pHに起因するひずみ硬化の促進がさらになお亢進されることを示す。より緊密に架橋されたIPNをリン酸緩衝生理食塩水中に置いて、PAAネットワークが99%以上イオン化される生理的条件(pH 7.4、イオン強度=0.15)下でそれらを調べた。PEG(4.6k)/PAAのIPNを最初に純脱イオン水(pH5.5、塩不含)中で平衡まで膨潤させ、次にリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4、I=0.15)のイオン化条件に切り替え、平衡まで再び膨潤させた。pH7.4への増加および塩の追加により、PAAネットワーク(しかしPEGネットワークではなく)は膨潤した。IPN内のこの差異的な膨潤の結果は、曲線の初期部分を含む応力ひずみプロファイルにおける劇的な上方への移行だった。言いかえれば、ひずみ硬化率だけでなく初期率においてもまた増加があった。従って、ひずみ硬化されたPEG/PAAヒドロゲルは、生理的なpH中の材料特性の適合性のあるセット(剛性、強度)を示し、関節形成装置のために適切な選択を与える。
【0068】
図22は、本発明の実施形態に従って、架橋剤化学末端基の3つの異なる組合せによるが、PEG(分子量4.6k、水中の重量で50%)およびAA(水中で50%v/v)の同一の処方で、加えて同一の重合条件(光開始剤および架橋剤のモル濃度およびUV強度)および膨潤条件(pH7.4のPBS)で、調製されたPEG(4.6k)/PAAのIPNの応力ひずみプロファイルを示す。試料(A)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびN,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(B)は、PEG−ジアクリルアミドの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。試料(C)は、PEG−ジアクリラートの第1のネットワーク、およびトリエチレングリコールジメタクリラートにより架橋されたPAAの第2のネットワークから調製された。これらの結果は、代替の架橋戦略を使用して、本発明の本質に反することなく、テレケリックマクロモノマーベース第1のネットワークおよびイオン化された第2のネットワークに基づくひずみ硬化されたIPNを生成できることを実証した。
【0069】
PEG/PAAのIPNを、イオン強度(0.15M、0.30M、0.75Mおよび1.5M)の変化する一連のPBSの溶液中で平衡まで膨潤させ、それらの平衡含水率および応力−ひずみ関係を測定した。表2は、IPNの含水率が膨潤培地中のより高い塩濃度により減少する(I=0.15で90%を上回るものからI=1.5で78%未満まで)ことを示す。これは、緩衝液中の増加した塩がPAA鎖上の負電荷を遮り、静電反発力を減少させ、次にはネットワークを膨潤させるという事実によって引き起こされる。
【0070】
イオン強度は応力−ひずみ関係に対して中等度効果を有した。表2は、I=0.15からI=0.75におけるIPNの応力−ひずみ関係がほぼ等しかったことを示す。I=1.5の緩衝液中で膨潤させたIPNは、より高いひずみで破壊応力のわずかな促進を示した。より高い固体含量を備えたヒドロゲル(より高いイオン強度条件でのIPN)はより大きな機械強度を有するはずなので、この結果は含水率データーと一致している。最も高いイオン強度(I=1.5)の溶液中のIPNの最終率は、より低いイオン強度での最終率よりも高いようであることが注目される。しかしながら、差は小さく、統計的に有意であるとは分からなかった。
【0071】
PAAネットワークとPEGネットワークとの間の位相幾何学的相互作用の量を増加するために、PAAのポリマー含量をPEG(3.4k)の第1のネットワークの内部で変化させた。第2のネットワーク重合の時の溶液中のアクリル酸の体積分率は、重合の前に0.5〜0.8の間で変化させた。重合の後に、IPNはPBS中で平衡まで膨潤させた。結果として生じたヒドロゲルは異なる含水率を有し、PEG(3.4k)/PAA[0.8]のIPNにおいて62%からPEG(3.4k)/PAA[0.7]のIPNにおいて65%まで、およびPEG(3.4k)/PAA[0.5]のIPNにおいて77%である。アクリル酸濃度を増加したIPNはより低い含水率を有しており、それはPAAの高吸収性の観点から直観に反した結果であることが注目される。これらのIPNの含水率および引張特性は表3において示される。最も高いPAA含量のIPNは最も高い破断応力および率を有するが、最低のPAA含量のIPNは最低の破断応力および破断ひずみを有していた。特に、これらのサンプルについての初期率値は有意に変化し、PEG(3.4k)/PAA[0.5]において3.6MPaからPEG(3.4k)/PAA[0.7]のIPNにおいて12MPaまで、およびPEG(3.4k)/PAA[0.8]のIPNにおいて19.6MPaである。
【0072】
純水中のIPN膨潤に対するPAA含量の効果
PEG(4600)単一ネットワークを調製し、光開始剤および架橋剤の存在下において第2のネットワーク中のAAの濃度を変化させて吸収させた。次にAAで膨潤させたPEGネットワークに基づくIPNをUV開始重合によって形成した。次にIPNを型から取り出し、脱イオン水中に浸漬し、平衡まで達するようにした。次に、PEG単一ネットワークと比べたIPNの体積を測定し比較した。結果を図19中にプロットする。図19は、IPNの体積が第2のネットワーク中のAAモノマーの増加量により増加したことを示す。これはPAAが水を吸収するという理解と一致しており、したがってIPNにおいてPAA含量の増加は吸水増加を導くにちがいない。しかしながら、AA:EGモノマー比が1未満である場合IPNはPEG単一ネットワークに比べて脱膨潤し、AAがEGモノマーに対して過剰量である場合PEGネットワークに比べて膨張するという事実が注目される。
【0073】
AAモノマー含有量を変化させた同一のPEG/PAAのIPNを、一軸引張測定によって試験した。結果を図19中に示す。この図において、破壊応力およびヤング率の両方を、重合時のAA質量分率の関数としてプロットする。ヤング率はAA濃度の増加につれて緩やかで単調な増加を示した。これとは対照的に、破壊応力は、AA:EG比が1を越えて増加した場合、劇的な増加を示した。しかしながら、AAモノマー濃度が増加するにつれて破壊応力は単調な減少を示した。最終的に、PAAの第2のネットワークの光開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)および架橋剤(トリエチレングリコールジメタクリラート)の濃度を、PEG(4.6k)ネットワーク内の重合の最中に変化させ、結果として生じるPEG(4.6k)/PAAのIPNを、純水およびPBSの両方におけるそれらの機械的特性に関して研究した。結果を表5中に示す。
【0074】
【表5】
【0075】
イオン化性モノマーが第2のネットワークにおいて重要であることを実証するために、一連のIPNを、第2のネットワークにおけるイオン化性度を破壊した条件下で調製した。使用される第1の方法は、非イオン性モノマーとの第2のネットワークの共重合であった。第2のネットワーク中のAAモノマーは、HEAモノマーと比較して3つの異なる濃度(10:1、3:1および1:1)で混合した。脱イオン水中で膨潤させたヒドロゲルの一軸引張試験実験は、第2のネットワークにおいてAA:HEAが最高比率のPEG/P(AA−co−HEA)IPNが、機械強度の促進を表わすことを示した。具体的には、IPNの引張強度の変化は、AA:HEA比率が10:1から3:1に、1:1にそれぞれ減少した場合、9MPaから6MPaに、次に3.5MPaに減少した。言いかえれば、相対的なHEA含量がより高いIPNは、機械的特性の促進をほとんど示さなかった。この結果は、PAA中のイオン化性カルボキシル酸基の存在が本発明において重要な要素であることを実証する。
【0076】
実験の別のセットにおいて、PEGネットワークを、水酸化ナトリウムによる滴定によってpH5.5に部分的に中和されたAA溶液(光開始剤および架橋剤を含む)中に浸漬した。次にモノマーで膨潤したPEGネットワークを紫外線に暴露して、PEGネットワーク内に部分的に中和されたPAAネットワークを形成した。次に「前中和した」PEG/PAAのIPNをPBS中で洗浄し、一軸引張試験を行なった。重合前のAA溶液の中和、および次に第2のネットワークの形成が、同一の弾性率を備えるが、劇的に減少した破壊強度を備えたIPNを導くことが見出された、破断応力は、酸性条件下で調製し次にPBS緩衝液中で中和したIPNの場合において、約4MPaから約0.5MPaに減少した。このことは、ひずみ硬化されたIPNの生成において製作プロセスの重要性を示し、すなわち好ましい実施形態において、IPNが完全に形成された後に、緩衝塩水溶液による第2のネットワークのイオン化および膨潤を実行するべきである。
【0077】
これらの結果は、生理的なpHおよび塩濃度の緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)中で膨潤させた場合、PEG/PAAのIPNシステムがひずみ硬化し、次には高い値の初期剛性率により「予応力を加えられる」ようになることを実証する。これらの条件下のひずみ硬化は、緊密に架橋された中性のPEGネットワークが有する、イオン化されたPAAネットワークの膨潤に対する束縛効果の結果である。この束縛効果は、2つのネットワークの間の追加の物理的架橋を導き、IPNの初期ヤング率の増加として現われる。ヒドロゲルが到達できる引張率の値(12MPa、しかし約1〜約20MPaの間で調整可能)は、当該技術分野において報告されるものを上回る。ヒドロゲルの率(12MPa)は、天然の健康なヒト軟骨について報告された値の範囲であることが注目される。
【0078】
天然の軟骨は、実際には、コラーゲンおよび負に荷電したプロテオグリカン類を含む、無血管の「IPNヒドロゲル」である。比較すると、IPNヒドロゲルはPEGおよび負に荷電したPAAを含む。PEGはコラーゲンのアナログとして働き、その一方でPAAはプロテオグリカン類のアナログとして働く。天然の軟骨に対するこれらのIPNのこの基本構造類似性は、それらの機能的類似性の根拠であると考えられる。第1のネットワークによってもたらされる立体化学的束縛にカップリングして、高分子電解質によって生じた浸透圧は、軟骨のような、硬いにもかかわらず柔軟で高度に潤滑な表面を示す、「予応力が加えられた」材料を産出する。軟骨が示す低い摩擦係数について説明するために、多数の科学的なアプローチが展開されており、二相理論によって記述された液体−固体応力共有、および「涙ぐんだ潤滑」理論は、いくつかの代表的な例である。これらの理論に従って、材料が低摩擦になるように透過性であることは重要であり、透過係数および平衡率の組合せは、いわゆる「涙ぐんだ潤滑」を可能にするが、同時に、継続的または反復的な動的荷重下の過度の液体減少を防止するようなものである必要がある。ひずみ硬化されたIPNが、天然の軟骨に類似する透過性、負電荷、含水率および剛性を有するという事実に基づいて、天然の軟骨が任意の前述の機構を介して低表面摩擦係数を示すことと同じ根拠で、IPNが低表面摩擦係数を示すという仮説を立てる。
【0079】
PEG/PAAのIPNを定義する特色の1つが、高い(最先端の既存のヒドロゲルと比較して)引張剛性率であることを示ししてきた。PEG(3400)/PAA(70%)ヒドロゲル材料の引張応力ひずみ挙動は、弾性引張率が12MPaである図17A中に示される。図17Bは、二相性の定数を決定できる上述のヒドロゲルの拘束圧縮挙動を提示する。時間−ひずみ曲線から、凝集体平衡率は、Ha=1.56MPaであり、透過係数はK=2.4×10-14m4/N/秒であることが見出される。好ましい実施形態において、ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは10-18から10-12m4/Nsecにわたる透過係数を有する。ヒドロゲル非拘束圧縮挙動は図中に17C提示され、それから拘束圧縮強度は、80%を超える圧縮下の破損ひずみで、18MPaであることが見出された。ヒドロゲルの引張クリープ挙動もまた図17D中に図示される。軟骨に対するヒドロゲル材料の特性のセットの比較は、著しい類似性を示す。
【0080】
ピン・オン・ディスク型摩擦計実験によって、生理的な接触応力下のPBSおよび関節液におけるPEG/PAAヒドロゲルの摩耗率を測定した。ヒドロゲルを〜1Hz荷重頻度で3,000,000サイクルで試験し、線形摩耗率は、0.2μm/100万サイクルであり、約0.2m/年と等しいことが見出され、ベアリング領域5の厚みに基づいて、装置の摩耗寿命は一生涯の間十分であることが示唆される。材料は、動的な生理的な荷重条件下のゲル・オン・軟骨の立体配置においてもまた試験された。試験は、関節液およびウシ血清溶液中で、1Hzの摺動頻度で150,000サイクルおよび0.5〜1.5MPaの動的荷重で行なわれた。肉眼的な観察は、軟骨もPEG/PAAも、肉眼で識別可能な小繊維化または摩耗を示さないことを示した。
【0081】
錨着詳述
装置の初期錨着は、ヒドロゲル装置と下層にある骨との間のわずかなサイズ差によって提供される伸張そして嵌合の固定によって可能なものにする。ポリマーキャップは、骨に対するピッタリとした圧縮嵌合を生成して、大腿骨骨頭を覆って配置される。股関節ソケットなどの関節の凹面の場合において、わずかに一回り大きいメスのタイプインプラントは、関節の壁に対する拡張嵌合を生成する。
【0082】
装置の生物学的錨着は骨の無機成分との骨統合によって達成される。本発明において、カルシウムイオンおよびリン酸イオンは、図3中で示されるようなヒドロゲルのPAAコンポーネントに対するそれらの親和性を介してPEG/PAAのIPNに結合される。ヒドロキシアパタイト(HAP)は、カルシウムイオンおよびリン酸イオンを含む骨および歯の主な無機成分であり、骨芽細胞増殖の公知のプロモーターである。歯科産業において、ポリカルボキシラートセメントを使用してエナメルに人工基質(例えば歯科キャップ)を接着する。これらのセメントの基本原理は、PAA鎖のカルボン酸基とHAPを構成するリン酸カルシウムマトリックスとの間の静電的相互作用である。2つの機構が提案され、1つは、カルボン酸基がHAP中のリン酸カルシウムを置き換えて本質的にマトリックスの中に「挿入」するものであり、他のもの(それは相乗的に機能しうる)は、カルシウムがイオンブリッジングによってHAPおよびPAAを架橋するものである。カルシウム含有骨成分がPEG/PAAのIPNに結合することができると示す実験において、ヒドロキシアパタイト(HAP)(公知の骨誘導骨ミネラル)をPEG/PAAのIPNの表面上に被覆した。様々なヒドロキシアパタイト粒子サイズはPEG/PAAに結合することができた。PEG/PAAヒドロゲルは、脱イオン水中でHAPの10%w/v水性懸濁物でインキュベートされ、これはヒドロゲルの表面上でのHAP粒子の目視可能な結合を導いた。異なる直径(20nm〜5μm)のHAP粒子の水性懸濁物中のヒドロゲルのインキュベーションにより、ヒドロゲル上に厚く不透明な表層を産出した。次にサンプルを、段階的なエタノール溶液中で処理することによって走査電子顕微鏡(SEM)分析のために調製した。エタノール中の浸漬により、HAPの物理吸着された目視可能な層が除去された。SEMは、ヒドロキシアパタイト被覆ヒドロゲル(図23b)vs非被覆ヒドロゲル(図23a)の表面形態における差を示した。エネルギー分散X線(EDX)分光法(図23c)は、ヒドロゲルの表面上に、ヒドロキシアパタイトの特性であるおよそ1.5〜1.6の比率でカルシウムおよびリン酸塩の存在を示した。SEM用に被覆したヒドロゲル(挿入図)から、HAP(200nmの直径を示す)がその表面に局在することが示された。粒子に対する生物学的応答もまた、ヒドロキシアパタイト被覆ヒドロゲル上の骨芽細胞様細胞(MG−63細胞株)の播種によって研究された(図23d)。骨芽細胞様細胞は200nm以上の直径のHAP被膜上に伸展および増殖する証拠が示された。
【0083】
HAPの異なるサイズの3つの粒子(20nm、200nmおよび5μm)を、ヒドロゲル上の表面被覆に対する粒子サイズの効果、また骨芽細胞様細胞による生物学的応答に対する効果を測定するために調べた。図24は、未修飾シリカ(列A)およびPEG/PAAヒドロゲル(低倍率および高倍率で、それぞれB(中央)およびC(下部)列に示される)の両方の上に使用される3つのタイプのHAPのSEM画像を示す。これらの画像は、ヒドロゲルの表面被覆が粒子直径に反比例したことを実証する。より小さな粒子は、より均一にかつ完全にヒドロゲル上に分布する。この表面修飾戦略は、無機ヒドロキシアパタイトとPAAの負電荷密度との間の静電的相互作用を利用する。ヒドロキシアパタイトを、身体への移植前に装置上に前被覆するか、または装置に隣接する骨が再構築されるのでインビボで被覆することができる。
【0084】
化学的錨着図25A〜Bは、本発明に従う個別のポリマー接着剤を介して骨に結合されるIPNネットワークを示す。先に存在するIPNヒドロゲル10、11は、UV感受性架橋性基により官能基化されるか、または全く処理されないのいずれかで、骨3、4を覆って配置される。ヒドロゲルと骨との間の界面で、反応性モノマー18またはマクロモノマー21の前駆体溶液がある。これらのモノマーまたはマクロモノマーは、部分的に相互貫入ポリマーネットワークのマトリックスに貫入する。重合の開始に際して、モノマーまたはマクロモノマーは重合および架橋し、下層にある表面へ結合されてヒドロゲルと物理的に絡み合うおよび/または化学的に結合される介在ポリマーを産出する。
【0085】
この錨着アプローチの1つ例において、脱イオン水中の95%のエタノール中で0.1%w/vの濃度のヘテロ二官能性架橋剤(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリラート)(pH4.5に調整して)を、あらかじめ洗浄および乾燥したウシ骨の表面上にはけで塗り、15分間乾燥させ、骨の無機マトリックス中のリン酸塩に反応させた。次に、PEG−ジメタクリラート(分子量1000Da)の25%w/v溶液を、光開始剤としての1%v/v 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンと共に調製し、次に、PEG/PAAのIPNヒドロゲルの骨界面面に広げた。次にIPNヒドロゲルの中にPEG−ジメタクリラート溶液を1時間拡散させた。次に骨をIPNヒドロゲル上のPEG−ジメタクリラート溶液の上に配置し、次に骨およびヒドロゲルは、均一な締付圧に達するように、ヒドロゲルの上に配置したバインダークリップおよびスライドグラス(厚さ1.0mm)をともに使用して締めた。次に試料を45秒間紫外線源(350nm)下に置いて、PEG−ジメタクリラートを硬化させた。結果としては、IPNの骨界面内に相互貫入されるPEG−ジメタクリラート接着剤を介して、PEG/PAAのIPNヒドロゲルはウシ骨試料に結合した(図25B)。骨に対するトリメトキシプロピルシリルメタクリレートの反応を介する骨上のメタクリレート基の存在のために、PEG−ジメタクリラート接着剤は骨の孔を満たしただけでなく、化学的に表面にも結合した。「骨プライマー」の別の例はイソシアナトトリメトキシシランであり、それは骨の無機部分との反応後に表面上の反応性イソシアネート基を産出し、装置自体の骨界面または接着剤のいずれかの上の官能基(ヒドロキシル、アミンまたはカルボン酸など)との反応に利用可能である。この方法は、他の架橋可能ポリマーに加えて下層にある骨のシラン官能基化の有無に関わらず使用することができる。
【0086】
図26は、本発明に従うネットワークの1つが錨着介在ポリマーとして働く半相互貫入ネットワークを示す。テレケリックマクロモノマー13、15および第2のネットワークポリマー11は、溶液中でともに混合され、UV感受性架橋性基23により前被覆および/または官能基化された骨表面を覆って流し込まれる。光開始剤の存在下における開始源(例えば紫外線)に対する暴露は、テレケリックマクロモノマーおよび被覆/官能基化された骨表面の両方の上のこれらの架橋性基のフリーラジカル重合および架橋を導く。フリーラジカル重合および架橋の結果は右側に示される。テレケリックマクロモノマーの末端15は重合し、骨の表面との物理結合的および/または化学結合を形成した。線状の第2のネットワークポリマー11はこの第1のネットワーク内に物理的にトラップされ、第1の化学的に架橋されたネットワーク10を相互貫入する第2の物理的に架橋されたネットワークを形成する。
【0087】
化学的表面修飾
本発明に記載の装置の実施形態は、2つの異なるポリマー組成物によるベアリング領域および骨界面領域を含む。一般に、このアプローチは、図2において記述されるような装置内の組成勾配を導く。図27Aは本発明の実施形態に完全相互貫入ネットワークを示し、そこでは第3のネットワーク前駆体は、所定時間の間のモノマーの相互拡散によって先に存在するIPN内に部分的に相互貫入され、次にIPNの存在下において重合および架橋される。これは、2つのネットワークのみ含む他の側とは異なる特性を有する、1つの側面上で効果的に骨界面領域として働くことができるIPNヒドロゲルの三重ネットワークを産出する。2つの側面の間の移行帯は第3のネットワークの重合前の第3のネットワークモノマーの拡散の深さによって決定される。
【0088】
図27Bは、本発明の別の実施形態の、骨界面材料として働く別のポリマーを有するネットワークの1つが界面に共重合される完全相互貫入ネットワークを示す。先に存在するホモポリマーネットワークは、第2のネットワークの前駆体モノマー14により膨潤される。材料の骨界面側に別の反応性モノマー26の前駆体溶液がある。これらのモノマーは、上層にある相互貫入ポリマーネットワークのマトリックスに部分的に貫入する。UVへの暴露に際して、モノマーは共重合し、ベアリング側面上に10および11を含む1つのタイプのIPN、ならびに骨界面側面上に10および27を含む別のタイプのIPNを備えた材料を産出する。2つの側面の間の移行は第3のネットワークの重合前の第3のモノマー26の拡散の深さによって決定される。
【0089】
本発明の別の実施形態は、外部刺激を使用して、図中で27C示されるようなIPNの第1のネットワーク内に第2のネットワークに組成勾配を生成することである。1つの例において、第2のネットワーク前駆体溶液のためのアクリル酸モノマーの単なる代わりに、イオン化性モノマー14(例えばアクリル酸)および非イオン性モノマー28(例えばアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドまたはヒドロキシルエチルアクリレートのモノマー)の混合物が使用される。イオン化性モノマーおよび非イオン化性モノマーの任意の組合せは、それらが互いに共重合することができる限り、共単量体として使用して勾配を生成することができる。第1のネットワーク10を、イオン化性モノマー14、非イオン性モノマー28、架橋剤および光開始剤(図示せず)の塩溶液中に浸漬し、次にゲルに電場(例えば電気泳動装置を使用して)を適用する。アクリル酸モノマーのみが電荷のために電場に沿って移動するだろう。アクリル酸濃度勾配の形成の後に、ゲルをUVに暴露し、勾配を第2のネットワークゲル形成を介して固定する。結果は、ベアリング領域に局在するポリ(アクリル酸)の第2のネットワーク、および骨界面領域に局在する非イオン性の第2のネットワーク(例えばポリ(温度感受性ポリマーのN−イソプロピルアクリルアミド)を備えたIPNヒドロゲルである。後に図32中で記述されるように、これはpHおよび温度の両方に応答性の装置を産出するアプローチである。
【0090】
図28は、本発明に記載の別の装置の表面修飾戦略の2つの実施形態を示す。この戦略は、ハロゲン化(活性)酸(例えば塩化アクリロイル)(図28、反応A)または活性エステル(例えばアクリロキシ−N−ヒドロキシスクシンイミド)(図28、反応B)による反応によって、アミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子または生体分子をアクリル化/メタクリル化して、装置中のネットワークの1つの前駆体とそれを共重合可能にすることを含む。これらの反応スキームにおけるR基は、任意のアミン含有もしくはヒドロキシル含有の化学物質もしくはポリマー、タンパク質、ポリペプチド、増殖因子、アミノ酸、炭水化物、脂質、リン酸塩含有の部分、ホルモン、神経伝達物質、または核酸でありえる。このプロセスの例は、図27BまたはCのいずれかに示されるプロセスによる、第2のネットワーク形成の最中に、塩化アクリロイルとのドーパミンの反応、およびコンジュゲートされたドーパミン分子のPEG/PAAヒドロゲルの表面への後続する付着である。塩酸ドーパミン(500mg、2.6mmol、1当量)をメタノール(10mL)に溶解し、新たに蒸留したトリエチルアミン(362μL、1当量)を追加した。塩化アクリロイル(210μL、1当量)をMeOH中に個別に溶解し、トリエチルアミン(1.1mL、3当量)を追加した。次に塩化アクリロイル溶液をドーパミン溶液に滴下して追加し、結果として生じる混合物は室温で一晩撹拌する(反応A)。反応の最中に形成された無色の沈殿は濾過によって除去した。ジエチルエーテル中の沈降は産物(アクリレート化ドーパミン分子)を導く(収率:85%)。同一の結果を達成する代わりの反応(反応B)において、塩酸ドーパミン(500mg、2.6mmol、1当量)をメタノール(10mL)中に溶解し、新たに蒸留したトリエチルアミン(362μL、1当量)を追加した。アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(440mg、1当量)をメタノール中に個別に溶解し、トリエチルアミン(1.1mL、3当量)を追加した。次にアクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液をドーパミン溶液に滴下して追加し、結果として生じる混合物を室温で一晩撹拌した。反応の最中に形成された無色の沈殿は濾過によって除去した。ジエチルエーテル中の沈降は産物を導く(収率:75%)。次に、結果として生じるコンジュゲートされた分子は、図27B中に示されるような個別の実験(反応Aのコンジュゲートを使用するもの、および反応Bのコンジュゲートを使用するもの)におけるアクリル酸ベースの第2のネットワークと共に界面に重合された。1%v/v 2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび1%v/vトリエチレングリコールジメタクリラートを含む50%v/vドーパミンアクリレート溶液を、50%v/vアクリル酸、1%2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンおよび1%トリエチレングリコールジメタクリラートの溶液中で一晩膨潤させた後に軽く叩いて乾燥した、予備形成されたPEG−ジアクリラートネットワークの表面に広げた。ドーパミン−アクリレートモノマーがアクリル酸モノマーと混ざるように短時間放置した後に、膨潤したゲルをスライドグラスの間に置き、UVに暴露した。結果は、1つの側面上にPEG/PAAのIPNを備えたIPN、ならびに他の表面上にPEGおよびドーパミンコンジュゲートポリマーネットワークのIPNだった。これらとの間の移行帯において、PEGならびにPAAおよびドーパミンコンジュゲートポリマーのコポリマーのIPNがあった。この方法はIPN表面のコンジュゲートの様々なタイプを達成するために一般化することができる。
【0091】
本発明に記載の装置の別の実施形態は、ベアリング領域とは異なる特性を備えた骨界面領域を生成するために、あらかじめ製作された装置へ分子または生体分子を共有結合する。1つのかかる実施形態において、任意の適切な生体分子をIPNヒドロゲルに共有結合できる。別の実施形態において、合成ポリマーはIPNヒドロゲルに結合される。好ましくは、生体分子は、タンパク質、ポリペプチド、増殖因子(例えば表皮増殖因子)アミノ酸、炭水化物、脂質、リン酸塩含有部分、ホルモン、神経伝達物質、または核酸のうちの少なくとも1つである。低分子または生体分子の任意の組合せは使用することができ、それらは、薬物、化学物質、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質、脂質および核酸を含むが、これらに限定されない。このアプローチは、(a)アジドベンズアミドのペプチドまたはタンパク質の光開始付着と、(b)N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミド、ピリジルジスルフィド、イミドエステル、活性ハロゲン、カルボジイミド、ヒドラジドまたは他の化学的官能基によるヒドロゲルの光開始官能基化、続いてペプチド/タンパク質との反応と、(c)カルボニル含有ポリマーとのアミノオキシペプチドの化学選択反応とに、例えば依存しうる。これらの生体分子は例えば、骨細胞の接着または活性を促進することができる。1つの例において、スペーサーアーム116によって結合された反応性末端基115および117とのヘテロ二官能性架橋剤118(図29)を使用して、IPNヒドロゲル表面119を修飾する。1つのかかるクラスのヘテロ二官能性化学物質は、5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、またはそのスルホン化誘導体および/もしくはその鎖延長誘導体などのその誘導体などの、アジド活性エステルリンカーとして記載される。しかしながら、任意のカップリング戦略を使用して生物活性表面を備えたひずみ硬化されたIPNヒドロゲルを生成することができる。この実施形態の詳細な例は、1つの末端上にフェニルアジド基、および他の末端上にタンパク質結合性N−ヒドロキシスクシンイミド基を有する、ヘテロ二官能性架橋剤(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を介するPEG/PAAのIPN表面へのI型コラーゲンの付着である。置換されたフェニルアジドは光(250〜320nm、5分)により反応して、様々な共有結合の中に挿入される芳香族ニトレンを生成することが示されている。次にフェニルアジド基を介するヒドロゲルへのリンカーの付着は、N−ヒドロキシスクシンイミド基がタンパク質上の遊離アミンと反応することを可能にし、今度はヒドロゲル表面へそれらを連結する。PEG/PAAヒドロゲルの表面を軽く叩いて乾燥し、次に100μLのジメチルホルムアミド中の0.5%w/vの5−アジドニトロベンゾイルオキシN−ヒドロキシスクシンイミド溶液を、ゲル上に垂らして流し込み、その表面を覆って均一に広げる。次に換気フード下で溶媒を蒸発させてヒドロゲル上の架橋剤の沈着を確実にした。次に風乾したゲル表面を5分間紫外線に暴露して、ヒドロゲル表面にアジド基を反応させた。次に表面が官能基化されたゲルを、0.3%(w/v)のI型コラーゲン溶液(ビトロゲン(Vitrogen)社)中で16時間37℃のオーブン中でインキュベートして、ヒドロゲル表面上のN−ヒドロキシスクシンイミド部分に反応性タンパク質アミン基をカップリングした。最終的にゲルをPBS中でよく洗浄して、有機溶媒および未反応モノマーを除去した。表面上に連結されたタンパク質の存在をX線光電子分光法によって確認し、それによりヒドロゲル表面のアミド結合の存在が示され、タンパク質の存在が確認された。表6は、ゲルの表面上のコラーゲンの存在を示す定量的アミノ酸分析データーを示す。
【0092】
【表6】
【0093】
図30は、骨界面でベアリング領域におけるものとは異なる表面ケミストリーを達成する、本発明の別の実施形態を示す。このアプローチはヒドロゲルの表面上の官能基を活性化すること、続いてアミン含有分子もしくはヒドロキシル含有分子、マクロ分子または生体分子とこれらの活性化官能基を反応させることを含む。好ましい実施形態において、IPN内のポリ(アクリル酸)上のカルボン酸基は活性化されて活性エステルを形成し、これはアミン含有分子、マクロ分子または生体分子と反応させた場合に続いてアクリルアミド結合を形成する。この戦略の2つの例において、本発明に従うPEG/PAAのIPNヒドロゲルは、ドーパミン官能基により表面修飾された。反応Aにおいて、PEG/PAAヒドロゲルを、100体積%エタノールまで増加する量のエタノールを含むエタノール/水混合物により最初に洗浄した。次にヒドロゲルを、エタノール中でジシクロヘキシルカルボジイミド(0.1M)およびトリエチルアミン(0.2M)の溶液中に2時間浸漬した。塩酸ドーパミン(0.1M)およびトリエチルアミン(0.1M)の溶液を調製し、ゲル表面上に適用した。1時間後にヒドロゲルをエタノールにより、および次に100体積%水まで増加する量の水を含むエタノール/水混合物により洗浄した。いったんカルボン酸が形成されれば、結果として生じるヒドロゲルはアミド結合を介してヒドロゲル表面へドーパミン分子を付着した。この手技の代替において(図31、反応B)、PEG/PAAヒドロゲルは、リン酸緩衝液(10mM、pH6)中のN−ヒドロキシスクシンイミド(15mM)およびN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの溶液中に1時間浸漬した。緩衝液および水による洗浄後、ゲルの表面を、DMF(0.1M)およびトリエチルアミン(0.1M)中の塩酸ドーパミンの溶液に1時間暴露した。次にヒドロゲルをDMF、エタノールおよび水により洗浄して、すべての過剰材料を除去し、表面へ連結されたドーパミンを備えたヒドロゲルを産出した。これらの反応を使用して、カルボキシル基含有IPNの表面に接近可能なアミン官能基またはヒドロキシル官能基を備えた、任意の分子、マクロ分子または生体分子を連結することができる。次に結果として生じる表面修飾は、ベアリング領域として働く未修飾側面と共に、本発明の骨界面領域の素地として使用されるだろう。
【0094】
刺激応答性ヒドロゲル関節形成装置
装置の体積変化を介する装置の移植は、特定のポリマーの刺激応答性の利用によって達成することができる。さらに、ベアリングおよび骨界面領域において異なるポリマー組成物を備えた装置の製作は、非応答性ポリマーの特定の有利な特質の維持ながら、または応答性ポリマーに新しい特質を導入することによって、装置の移植に対する追加のレベルの外部刺激を介する制御を提供する。この後は、刺激はヒドロゲル体積または形を調節する特性における特有の変化を指し、この変化は、身体の内部の環境と異なる環境において手術前にヒドロゲルを維持することによって引き起こされる。本発明の実施形態において、骨上に配置した後にA、pH、塩濃度、電場または温度の変化などの外部刺激は装置を収縮させてB、図32中で図示されるように、骨を囲む凸面型の輪郭に適合する。凹面関節については、刺激が装置を凹面に対して拡大させるように装置はデザインされる。高分子電解質は、pH、塩濃度および電場の変化に応答してさまざまな程度に膨潤/脱膨潤するヒドロゲルポリマーのクラスである。膨潤およびヒドロゲル装置サイズを制御するためにpHおよび塩を変化させることは、以下の様式で機能するだろう。1つの例において、装置は、キャップが凸面関節面よりもわずかに大きい状態においてあらかじめ膨潤され、次に関節上の配置後に、それは身体の内側に存在するpHまたは塩濃度での平衡後の変化によって、脱膨潤されるだろう。pH/塩濃度は、体外手段(手術前の浴槽中のインプラント/関節の浸漬など)によって変化させることができる。あるいは、それを移植し、周囲の体液(例えば関節液)のpHおよび塩濃度に応答して平衡膨潤を達成することができる。ポリ(エチレングリコール)/ポリ(アクリル酸)ネットワークなどの高分子電解質コンポーネント(例えばポリ(アクリル酸))を有する相互貫入ネットワークは、この点において特に有用だろう。この材料が、pH>7.4および/または身体の浸透圧未満の塩濃度で予膨潤され、関節面を覆って緩く配置されるならば、それは、しばらく身体の中で平衡化した後に、pHの減少および/または塩濃度の増加に応答して収縮し、下層にある骨の輪郭に適合するだろう。高分子電解質ベースのIPNの寸法は、装置を電気的に拡張する電場の適用によってもまた修飾することができる。電場が取り除かれた後に、装置は関節の上で再び収縮する。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)などの温度感受性ヒドロゲルは、約32℃よりも高い温度でそれらを縮小させるより低い臨界溶解温度を有する。これは、図32において図示されるように、NIPAAmベースの装置が移植時に関節を覆って緩く配置され、しばらく身体の中にあった後に、骨を囲む輪郭に適合するように収縮するという筋書きを可能にする。したがって、移植時に刺激を使用してヒドロゲル装置サイズをわずかに変えることは、それを手によってまたは道具により物理的に伸張せずにその配置を促進し、外科的な配置のためにそれほど侵襲的でないアプローチまたは関節鏡視下のアプローチを可能にする。
【0095】
変形および修飾
相互貫入ポリマーネットワークは、図25および27において検討されるように、2つもしくは複数のネットワークコンポーネントまたはポリマーコンポーネント(直鎖など)を有することができた。実施例は、「三重」もしくはさらに「四重」のネットワーク、または追加のポリマー鎖により相互貫入される二重のネットワークを含むが、これらに限定されない。さらに、ポリマーテザー(ポリ(エチレングリコール)鎖など)は、骨界面領域と連結された生体分子または付着されたポリマー材料との間に介在するスペーサーアームとして使用することができる。当業者が理解するように、本発明の原理から逸脱せずに、様々な変化、置換および改変を行なうか、またはそうでなければ実行することができるだろう。従って、本発明の範囲は以下の請求項およびそれらの法的な同等物によって決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤によってひずみ硬化され、哺乳類関節中の天然または人工的に調製された骨の幾何学的形状に適合することによって、前記哺乳類関節中の適所に保持されるように順応する、相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルであり、
(a)第1のネットワークであって、前記第1のネットワークが、末端基の重合によって化学的に架橋されて予備形成された親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの非シリコーンネットワークである、第1のネットワークと;
(b)第2のネットワークであって、前記第2のネットワークが、イオン化性モノマーの非シリコーンポリマーネットワークであり、前記第2のネットワークが、前記第1のネットワークの存在下において重合および架橋され、相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを形成する前記第1のネットワークと共に物理的絡み合いを形成し、前記第2のネットワーク中の化学的架橋の程度が、前記第1のネットワーク中の化学的架橋度未満である、第2のネットワークと;
(c)中性pHの塩水溶液であって、前記塩水溶液が、前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル中の前記第2のネットワークをイオン化および膨潤させ、前記第2のネットワークの前記膨潤が、前記第1のネットワークによって束縛され、(i)純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項1(a)のような親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの前記第1のネットワーク、純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項1(b)のようなイオン化されたモノマーの前記第2のネットワーク、または(iii)もしくは純水の中で膨潤させた請求項1(a)および1(b)のような前記第1および第2のネットワークの組合せによって形成された前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、のいずれの初期引張弾性率よりも大きい初期引張弾性率を備えたひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを産出する、中性pHの塩水溶液と
を有することによって特徴づけられる、前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、を含む関節形成装置であって、
骨界面領域が前記哺乳類関節中の前記の天然または人工的に調製された前記骨の幾何学的形状に適合および固定される、骨界面領域および前記骨界面領域の反対のベアリング領域を有することによって特徴づけられる、前記装置。
【請求項2】
前記装置が、前記哺乳類関節中でヒドロゲル・オン・軟骨の関節連結を形成する前記哺乳類関節の1つの側面上に移植されるか、またはヒドロゲル・オン・ヒドロゲルの関節連結を形成する前記の移植された装置から反対の関節面上に移植された第2の合わせ関節形成装置をさらに含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項3】
前記骨界面領域が、前記骨のカルシウム含有およびリン酸塩含有の骨マトリックス成分に結合することができる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項4】
前記骨界面領域が、カルシウム含有およびリン酸塩含有の成分により前被覆される、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項5】
前記骨界面領域が、10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有して、骨形成およびしたがって前記装置と骨の機械的連動に適応することによって特徴づけられる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項6】
前記骨界面領域に化学的または物理的に結合する生体分子をさらに含み、前記骨界面領域が、10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有して骨形成に適応することによって特徴づけられる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項7】
前記骨界面領域が、前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを含む前記ベアリング領域に化学的に結合するポリマー材料を含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項8】
前記骨界面領域に結合し、前記骨に結合することができる接着剤材料をさらに含み、前記接着剤材料が、生体分解性または非生物分解性である、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項9】
前記骨界面領域に化学的または物理的に結合されるカルシウム含有の無機被覆をさらに含み、10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有して骨形成に適応することによって特徴づけられる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項10】
前記ベアリング領域および前記骨界面領域が、前記装置のいずれの側面で異なる組成物を有し、前記装置内で互いに物理的に統合されるか、または化学的および物理的に統合される、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項11】
前記装置の厚さプロファイルが、もとの軟骨層の天然の厚さプロファイルとおよそ一致する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項12】
前記装置が、主として凸面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項13】
前記装置が、前記の主として凸面の骨受容面を覆って嵌合するように一回り小さく、前記の主として凸面の三次元骨受容面を覆う弾性縮小嵌合を生成する、請求項12に記載の関節形成装置。
【請求項14】
前記装置が、移植前の体液および体温ではない液体および温度中で膨潤させた平衡体積まで膨潤が可能であり、移植ならびに体液または/および体温への暴露に際して前記の膨潤させた平衡体積と比較してより小さな平衡体積まで脱膨潤が可能であり、それによって、前記装置が、前記のより小さな平衡体積で前記の主として凸面の三次元骨受容面に対して縮小するか、または物理的に把持する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項15】
前記装置が、主として凹面の三次元骨受容面内で嵌合するように順応する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項16】
前記装置が、前記の主として凹面の三次元骨受容面に対して嵌合するように一回り大きく、前記の主として凹面の骨受容面に対する弾性拡張嵌合に適応する、請求項15に記載の関節形成装置。
【請求項17】
前記装置が、移植前の体液および体温ではない液体および温度中で乾燥または脱膨潤させた平衡体積まで少なくとも部分的に乾燥または脱膨潤が可能であり、移植ならびに体液および/または体温への暴露に際して前記の乾燥または脱膨潤させた平衡体積と比較してより大きな平衡体積まで膨潤が可能であり、それによって、前記のより大きな平衡体積が、主として凹面の三次元骨受容面に対して前記装置を拡張する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項18】
前記第1のネットワーク中の親水性の非イオン性マクロモノマーが、約275Da〜約20,000Daの間の分子量を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項19】
前記第1のネットワーク中の前記親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーが、ポリ(エチレングリコール)の誘導体である、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項20】
前記イオン化性モノマーがアクリル酸モノマーである、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項21】
前記イオン化性モノマーと前記親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーとの間のモル比が、100:1より大きい、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項22】
前記塩水溶液が、約6〜8の範囲のpHを有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項23】
前記第1のネットワークが、テレケリックマクロモノマーを乾燥重量で少なくとも約50%、75%または95%を含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項24】
前記第1のネットワークが、前記第1のネットワーク上にグラフトされた親水性モノマーを含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項25】
前記第2のネットワークが、前記第2のポリマーネットワーク上にグラフトされた親水性マクロモノマーをさらに含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項26】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルが、少なくとも約1MPaの引張強度を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項27】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルが、少なくとも約1MPaの初期弾性引張率を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項28】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルが、少なくとも25%、35%または50%の平衡含水率を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項29】
水溶液中の前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルの前記ベアリング領域の摩擦係数が、0.2未満である、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項30】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは前記塩水溶液に対して透過性があり、前記ヒドロゲルが1e-18〜1e-12m4/N秒にわたる透過係数を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項31】
膨潤によってひずみ硬化され、哺乳類関節中の骨の天然または人工的に調製された幾何学的形状に適合させることによって、前記哺乳類関節中の適所に保持されるように順応する相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルであり、
(a)第1のネットワークであって、前記第1のネットワークが、末端基の重合によって化学的に架橋されて予備形成された親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの非シリコーンネットワークである、第1のネットワークを提供する工程と;
(b)第2のネットワークであって、前記第2のネットワークが、イオン化性モノマーの非シリコーンポリマーネットワークである、第2のネットワークを提供する工程と;
(c)前記第2のネットワークが、相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを形成する前記第1のネットワークと共に物理的絡み合いを形成しており、前記第2のネットワーク中の化学的架橋の程度が、前記第1のネットワーク中の化学的架橋の程度未満である、前記第1のネットワークの存在下において前記第2のネットワークを重合および架橋する工程と;
(d)前記第2のネットワークの前記膨潤が前記第1のネットワークによって束縛され、前記のイオン化および膨潤が、(i)純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項31(a)のような親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの前記第1のネットワーク、純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項31(b)のようなイオン化モノマーの前記第2のネットワーク、または(iii)もしくは純水の中で膨潤させた請求項31(a)および31(b)のような前記第1および第2のネットワークの組合せによって形成された前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、のいずれの初期引張弾性率よりも大きい初期引張弾性率を備えたひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを産出する、中性pHの塩水溶液により前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル中の前記第2のネットワークをイオン化および膨潤させる工程と、
によって特徴づけられる前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、を提供することを含む、関節形成装置を作成する方法であって、
前記骨界面領域が前記哺乳類関節中の前記の天然または人工的に調製された前記骨の幾何学的形状に適合する、骨界面領域および前記骨界面領域の反対のベアリング領域を有することによって特徴づけられる、前記装置を作製する方法。
【請求項32】
前記装置を前記哺乳類関節中でヒドロゲル・オン・軟骨の関節連結を形成する前記哺乳類関節の1つの側面上に移植することをさらに含むか、または第2の合わせ関節形成装置を提供すること、およびヒドロゲル・オン・ヒドロゲルの関節連結を形成する前記の移植された装置から反対の関節面上に前記第2の合わせ装置を移植することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
カルシウム含有およびリン酸塩含有の成分により前記骨界面領域を前被覆することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記骨界面領域に生体分子を化学的または物理的に結合することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
骨界面領域への接着剤材料の結合をさらに含み、前記接着剤材料が前記骨に結合することができ、前記接着剤材料が生体分解性または非生体分解性である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記骨界面領域にカルシウム含有の無機被覆を化学的または物理的に結合することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記装置の厚さプロファイルを、対応する軟骨層の天然の厚さプロファイルに少なくともおよそ一致させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記装置が、主として凸面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記装置が前記の主として凸面の骨受容面を覆って嵌合するように一回り小さく、前記の主として凸面の三次元骨受容面を覆う弾性縮小嵌合に適応する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記装置を移植前の体液および体温ではない液体および温度中で膨潤させた平衡体積まで膨潤させること、ならびに移植および体温での体液への暴露に際して前記の膨潤させた平衡体積と比較してより小さな平衡体積まで前記装置を脱膨潤させることが可能であること、それによって前記装置が前記のより小さな平衡体積で前記の主として凸面の三次元骨受容面に対して縮小するか、または物理的に把持すること、をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記装置が、主として凹面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応する、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記装置が、前記の主として凹面の三次元の骨受容面に対して嵌合するように一回り大きく、前記の主として凹面の骨受容面に対して弾性拡張嵌合に適応する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記装置を移植前の体液および体温ではない液体および温度中で乾燥または脱膨潤させた平衡体積まで少なくとも部分的に乾燥または脱膨潤させること、ならびに移植および体温での体液への暴露に際して前記の乾燥または脱膨潤させた平衡体積と比較してより大きな平衡体積まで前記装置を膨潤させることが可能であること、それによって前記のより大きな平衡体積は主として凹面の三次元骨受容面に対して前記装置を拡張すること、をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のネットワーク上にグラフトされたグラフト親水性モノマーをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記第2のポリマーネットワーク上にグラフトされたグラフト親水性マクロモノマーをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項1】
膨潤によってひずみ硬化され、哺乳類関節中の天然または人工的に調製された骨の幾何学的形状に適合することによって、前記哺乳類関節中の適所に保持されるように順応する、相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルであり、
(a)第1のネットワークであって、前記第1のネットワークが、末端基の重合によって化学的に架橋されて予備形成された親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの非シリコーンネットワークである、第1のネットワークと;
(b)第2のネットワークであって、前記第2のネットワークが、イオン化性モノマーの非シリコーンポリマーネットワークであり、前記第2のネットワークが、前記第1のネットワークの存在下において重合および架橋され、相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを形成する前記第1のネットワークと共に物理的絡み合いを形成し、前記第2のネットワーク中の化学的架橋の程度が、前記第1のネットワーク中の化学的架橋度未満である、第2のネットワークと;
(c)中性pHの塩水溶液であって、前記塩水溶液が、前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル中の前記第2のネットワークをイオン化および膨潤させ、前記第2のネットワークの前記膨潤が、前記第1のネットワークによって束縛され、(i)純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項1(a)のような親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの前記第1のネットワーク、純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項1(b)のようなイオン化されたモノマーの前記第2のネットワーク、または(iii)もしくは純水の中で膨潤させた請求項1(a)および1(b)のような前記第1および第2のネットワークの組合せによって形成された前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、のいずれの初期引張弾性率よりも大きい初期引張弾性率を備えたひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを産出する、中性pHの塩水溶液と
を有することによって特徴づけられる、前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、を含む関節形成装置であって、
骨界面領域が前記哺乳類関節中の前記の天然または人工的に調製された前記骨の幾何学的形状に適合および固定される、骨界面領域および前記骨界面領域の反対のベアリング領域を有することによって特徴づけられる、前記装置。
【請求項2】
前記装置が、前記哺乳類関節中でヒドロゲル・オン・軟骨の関節連結を形成する前記哺乳類関節の1つの側面上に移植されるか、またはヒドロゲル・オン・ヒドロゲルの関節連結を形成する前記の移植された装置から反対の関節面上に移植された第2の合わせ関節形成装置をさらに含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項3】
前記骨界面領域が、前記骨のカルシウム含有およびリン酸塩含有の骨マトリックス成分に結合することができる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項4】
前記骨界面領域が、カルシウム含有およびリン酸塩含有の成分により前被覆される、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項5】
前記骨界面領域が、10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有して、骨形成およびしたがって前記装置と骨の機械的連動に適応することによって特徴づけられる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項6】
前記骨界面領域に化学的または物理的に結合する生体分子をさらに含み、前記骨界面領域が、10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有して骨形成に適応することによって特徴づけられる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項7】
前記骨界面領域が、前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを含む前記ベアリング領域に化学的に結合するポリマー材料を含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項8】
前記骨界面領域に結合し、前記骨に結合することができる接着剤材料をさらに含み、前記接着剤材料が、生体分解性または非生物分解性である、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項9】
前記骨界面領域に化学的または物理的に結合されるカルシウム含有の無機被覆をさらに含み、10〜1000ミクロンのオーダーの孔隙率または表面粗度を有して骨形成に適応することによって特徴づけられる、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項10】
前記ベアリング領域および前記骨界面領域が、前記装置のいずれの側面で異なる組成物を有し、前記装置内で互いに物理的に統合されるか、または化学的および物理的に統合される、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項11】
前記装置の厚さプロファイルが、もとの軟骨層の天然の厚さプロファイルとおよそ一致する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項12】
前記装置が、主として凸面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項13】
前記装置が、前記の主として凸面の骨受容面を覆って嵌合するように一回り小さく、前記の主として凸面の三次元骨受容面を覆う弾性縮小嵌合を生成する、請求項12に記載の関節形成装置。
【請求項14】
前記装置が、移植前の体液および体温ではない液体および温度中で膨潤させた平衡体積まで膨潤が可能であり、移植ならびに体液または/および体温への暴露に際して前記の膨潤させた平衡体積と比較してより小さな平衡体積まで脱膨潤が可能であり、それによって、前記装置が、前記のより小さな平衡体積で前記の主として凸面の三次元骨受容面に対して縮小するか、または物理的に把持する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項15】
前記装置が、主として凹面の三次元骨受容面内で嵌合するように順応する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項16】
前記装置が、前記の主として凹面の三次元骨受容面に対して嵌合するように一回り大きく、前記の主として凹面の骨受容面に対する弾性拡張嵌合に適応する、請求項15に記載の関節形成装置。
【請求項17】
前記装置が、移植前の体液および体温ではない液体および温度中で乾燥または脱膨潤させた平衡体積まで少なくとも部分的に乾燥または脱膨潤が可能であり、移植ならびに体液および/または体温への暴露に際して前記の乾燥または脱膨潤させた平衡体積と比較してより大きな平衡体積まで膨潤が可能であり、それによって、前記のより大きな平衡体積が、主として凹面の三次元骨受容面に対して前記装置を拡張する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項18】
前記第1のネットワーク中の親水性の非イオン性マクロモノマーが、約275Da〜約20,000Daの間の分子量を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項19】
前記第1のネットワーク中の前記親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーが、ポリ(エチレングリコール)の誘導体である、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項20】
前記イオン化性モノマーがアクリル酸モノマーである、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項21】
前記イオン化性モノマーと前記親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーとの間のモル比が、100:1より大きい、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項22】
前記塩水溶液が、約6〜8の範囲のpHを有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項23】
前記第1のネットワークが、テレケリックマクロモノマーを乾燥重量で少なくとも約50%、75%または95%を含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項24】
前記第1のネットワークが、前記第1のネットワーク上にグラフトされた親水性モノマーを含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項25】
前記第2のネットワークが、前記第2のポリマーネットワーク上にグラフトされた親水性マクロモノマーをさらに含む、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項26】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルが、少なくとも約1MPaの引張強度を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項27】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルが、少なくとも約1MPaの初期弾性引張率を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項28】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルが、少なくとも25%、35%または50%の平衡含水率を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項29】
水溶液中の前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルの前記ベアリング領域の摩擦係数が、0.2未満である、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項30】
前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルは前記塩水溶液に対して透過性があり、前記ヒドロゲルが1e-18〜1e-12m4/N秒にわたる透過係数を有する、請求項1に記載の関節形成装置。
【請求項31】
膨潤によってひずみ硬化され、哺乳類関節中の骨の天然または人工的に調製された幾何学的形状に適合させることによって、前記哺乳類関節中の適所に保持されるように順応する相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルであり、
(a)第1のネットワークであって、前記第1のネットワークが、末端基の重合によって化学的に架橋されて予備形成された親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの非シリコーンネットワークである、第1のネットワークを提供する工程と;
(b)第2のネットワークであって、前記第2のネットワークが、イオン化性モノマーの非シリコーンポリマーネットワークである、第2のネットワークを提供する工程と;
(c)前記第2のネットワークが、相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを形成する前記第1のネットワークと共に物理的絡み合いを形成しており、前記第2のネットワーク中の化学的架橋の程度が、前記第1のネットワーク中の化学的架橋の程度未満である、前記第1のネットワークの存在下において前記第2のネットワークを重合および架橋する工程と;
(d)前記第2のネットワークの前記膨潤が前記第1のネットワークによって束縛され、前記のイオン化および膨潤が、(i)純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項31(a)のような親水性の非イオン性テレケリックマクロモノマーの前記第1のネットワーク、純水または前記塩水溶液の中で膨潤させた請求項31(b)のようなイオン化モノマーの前記第2のネットワーク、または(iii)もしくは純水の中で膨潤させた請求項31(a)および31(b)のような前記第1および第2のネットワークの組合せによって形成された前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、のいずれの初期引張弾性率よりも大きい初期引張弾性率を備えたひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲルを産出する、中性pHの塩水溶液により前記相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル中の前記第2のネットワークをイオン化および膨潤させる工程と、
によって特徴づけられる前記ひずみ硬化された相互貫入ポリマーネットワークヒドロゲル、を提供することを含む、関節形成装置を作成する方法であって、
前記骨界面領域が前記哺乳類関節中の前記の天然または人工的に調製された前記骨の幾何学的形状に適合する、骨界面領域および前記骨界面領域の反対のベアリング領域を有することによって特徴づけられる、前記装置を作製する方法。
【請求項32】
前記装置を前記哺乳類関節中でヒドロゲル・オン・軟骨の関節連結を形成する前記哺乳類関節の1つの側面上に移植することをさらに含むか、または第2の合わせ関節形成装置を提供すること、およびヒドロゲル・オン・ヒドロゲルの関節連結を形成する前記の移植された装置から反対の関節面上に前記第2の合わせ装置を移植することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
カルシウム含有およびリン酸塩含有の成分により前記骨界面領域を前被覆することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記骨界面領域に生体分子を化学的または物理的に結合することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
骨界面領域への接着剤材料の結合をさらに含み、前記接着剤材料が前記骨に結合することができ、前記接着剤材料が生体分解性または非生体分解性である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記骨界面領域にカルシウム含有の無機被覆を化学的または物理的に結合することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記装置の厚さプロファイルを、対応する軟骨層の天然の厚さプロファイルに少なくともおよそ一致させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記装置が、主として凸面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記装置が前記の主として凸面の骨受容面を覆って嵌合するように一回り小さく、前記の主として凸面の三次元骨受容面を覆う弾性縮小嵌合に適応する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記装置を移植前の体液および体温ではない液体および温度中で膨潤させた平衡体積まで膨潤させること、ならびに移植および体温での体液への暴露に際して前記の膨潤させた平衡体積と比較してより小さな平衡体積まで前記装置を脱膨潤させることが可能であること、それによって前記装置が前記のより小さな平衡体積で前記の主として凸面の三次元骨受容面に対して縮小するか、または物理的に把持すること、をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記装置が、主として凹面の三次元骨受容面を覆って嵌合するように順応する、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記装置が、前記の主として凹面の三次元の骨受容面に対して嵌合するように一回り大きく、前記の主として凹面の骨受容面に対して弾性拡張嵌合に適応する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記装置を移植前の体液および体温ではない液体および温度中で乾燥または脱膨潤させた平衡体積まで少なくとも部分的に乾燥または脱膨潤させること、ならびに移植および体温での体液への暴露に際して前記の乾燥または脱膨潤させた平衡体積と比較してより大きな平衡体積まで前記装置を膨潤させることが可能であること、それによって前記のより大きな平衡体積は主として凹面の三次元骨受容面に対して前記装置を拡張すること、をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のネットワーク上にグラフトされたグラフト親水性モノマーをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記第2のポリマーネットワーク上にグラフトされたグラフト親水性マクロモノマーをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23(A)】
【図23(B)】
【図23(C)】
【図23(D)】
【図24】
【図25(A)】
【図25(B)】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23(A)】
【図23(B)】
【図23(C)】
【図23(D)】
【図24】
【図25(A)】
【図25(B)】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公表番号】特表2010−524567(P2010−524567A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504086(P2010−504086)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/004976
【国際公開番号】WO2008/130604
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【氏名又は名称原語表記】The Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University
【住所又は居所原語表記】1705 El Camino Real, Palo Alto, CA 94306−1106, USA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/004976
【国際公開番号】WO2008/130604
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【氏名又は名称原語表記】The Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University
【住所又は居所原語表記】1705 El Camino Real, Palo Alto, CA 94306−1106, USA
【Fターム(参考)】
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