説明

ヒンジ型ダンパー装置およびローホリゾントライト

【課題】既設の蝶番に簡単に取り付けることが可能なヒンジ型ダンパー装置を提供し、蓋の開閉操作による衝撃を抑制することが可能なローホリゾントライトを提供する。
【解決手段】蝶番24の一方に支持される支持部11と;蝶番の他方が取り付けられる部材23を挟持して支持される挟持部12と;支持部と挟持部を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するダンパー部13と;を具備するヒンジ型ダンパー装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、蓋の開閉に用いる蝶番に対してダンパー作用を付加するようにしたヒンジ型ダンパー装置およびこのヒンジ型ダンパー装置を用いたローホリゾントライトに関する。
【背景技術】
【0002】
この種、ローホリゾントライトは、舞台やスタジオなどの演出空間において、ホリゾント面を照明するために用いられ、例えば、特許文献1で示されるように、複数台が舞台の床面や床面から掘り込んで形成したピット内に設置され使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−203973号公報
【特許文献2】特開2006−105275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ローホリゾントライトが設置される舞台やスタジオは、大道具などを設置しては取り壊すという作業が頻繁に繰り返され、床面やピット内には大量のゴミや塵埃が侵入する。このため、ローホリゾントライトやローホリゾントライトを複数台設置するための架台には、ゴミや塵埃の侵入を防ぐための開閉可能な蓋が設けられ、この蓋は使用時に開放され不使用時には閉じられている。
【0005】
しかしながら、ローホリゾントライトは、小規模な舞台やスタジオでも50台程度、大規模になると100台以上が使用され、例えば、特許文献1の図4に示されるように、床面やピット内に設置されるため、蓋の開閉作業だけでも大掛かりな作業となる。このため、ローホリゾントライトを架台に設置した場合には、器具個々に蓋を設けるのではなく、架台に蓋を設けることによって、複数台をまとめた蓋を用いる。このため、蓋は大きく重くなり、蓋の開閉操作によって大きな衝撃が生じ、架台に設置された器具のランプ切れや、架台自体が動いてしまう問題が発生する。
【0006】
一方、既に舞台やスタジオに設置され使用されているローホリゾントライトの架台自体をダンパー式の蓋を備えたものに交換することは、設備費用が大幅にかかることから実現は難しい。また、既に設置されているローホリゾントライトや架台における蓋のヒンジを、例えば、特許文献2に示されるようなダンパー作用を有するヒンジ装置に交換する方法もあるが、その交換作業に当たっては蓋や架台本体に、新たなヒンジを取り付けるためのねじ孔等を形成しなければならず作業に手間と時間がかかり、常に舞台やスタジオで使用されているこれらローホリゾントライトや架台における取付作業としては現実的には難しい。このため、この種のローホリゾントライトにおいては、如何に、コスト的に有利で、かつ簡単な手段によって、蓋の開閉操作の際に衝撃を発生させないようにするかが重要な課題となっている。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、既設の蝶番に簡単に取り付けることが可能なヒンジ型ダンパー装置を提供し、蓋の開閉操作による衝撃を抑制することが可能なローホリゾントライトを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のヒンジ型ダンパー装置の発明は、蝶番の一方に支持される支持部と;蝶番の他方が取り付けられる部材を挟持して支持される挟持部と;支持部と挟持部を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するダンパー部と;を具備していることを特徴とする。本発明によれば、既設の蝶番に簡単に取り付けることが可能なヒンジ型ダンパー装置を構成することができる。
【0009】
本発明において、ヒンジ型ダンパー装置は、ローホリゾントライトを複数台設置するための架台に用いられる大きな蓋の蝶番に取り付けられて使用されることが好適であるが、アッパーホリゾントライトでもよく、さらに、防犯灯、道路灯、投光器等の大型の照明器具における蓋、さらには大型のコンピュータ等のOA機器における蓋や扉に適用されてもよい。さらに、小型の照明器具やパソコン等の小型のOA機器、携帯電話等の携帯端末器等に適用されてもよく、適用される範囲は、特定された機器、装置等に限定されない。同時に、ヒンジ型ダンパー装置が取り付けられる蝶番も、上記した各種の機器・装置における蓋や扉に用いられる平型蝶番が好適であるが、段付の蝶番、抜き差しが可能な蝶番、両方向に動く自由蝶番等、全ての蝶番が適用され、特定の形状や大きさ、特定の機能を有するものには限定されない。
【0010】
蝶番の一方に支持される支持部は、蝶番の一方と、この一方の蝶番を取り付ける部材、例えば、本体ケースとの間で挟持され、蝶番を本体ケースに取り付けるためのボルト等をそのまま用いて支持されることが好ましいが、挟持することなく、一方の蝶番に支持部を外側から被せるようにして配置し、支持部の外側から、ボルト等をそのまま用いて、若しくは、別個のボルト等を用いて支持するようにしてもよい。
【0011】
蝶番の他方が取り付けられる部材を挟持して支持される挟持部は、蝶番の他方が取り付けられる部材、例えば、蓋の板材を挟持部に差し込んで支持されることが好ましいが、さらに強固に支持させるために、蓋の板材と挟持部をボルトとナット等により固定するようにしても差し支えない。
【0012】
支持部と挟持部を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するダンパー部は、ボルトとナットの締め付け力による摩擦抵抗によってダンパー作用を得るようにすることが好ましいが、例えば、コイルバネによる反発力、空気圧やオイル圧等を利用してダンパー作用を得るようにしてもよい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のヒンジ型ダンパー装置において、前記ダンパー部は、ボルトとナットからなる軸支部を有し、ボルトとナットの締め付け力による摩擦抵抗によってダンパー作用を得るようにしたことを特徴とする。本発明によれば、既設の蝶番に簡単に取り付けることが可能な、簡易な構成のヒンジ型ダンパー装置を構成することができる。
【0014】
本発明において、ボルトとナットの締め付け力による摩擦抵抗は、ボルトとナットのみによって得るようにしてもよいが、平ワッシャー、波ワッシャー、さらには、ファイバー製のワッシャー等を適宜選択して確実に摩擦抵抗が得られるようにしてもよい。
【0015】
請求項3に記載のローホリゾントライトの発明は、ホリゾント面を照明する光源と;光源を収納する本体と;本体の開口部を開閉する蓋と;蓋と本体を開閉可能に支持する蝶番と;この蝶番に支持部と挟持部が支持され、蓋を本体に対しダンパー作用を有して開閉可能にする請求項1または2記載のヒンジ型ダンパー装置と;を具備していることを特徴とする。本発明によれば、蓋の開閉操作による衝撃を抑制することが可能なローホリゾントライトを構成することができる。
【0016】
本発明において、光源は、一般的にはハロゲンランプが用いられるが、白熱電球や蛍光ランプ等の放電ランプでもよく、特定のランプには限定されない。光源を収納する本体は、光源を有する器具自体を構成する本体であっても、光源を有する器具を複数個設置する場合に用いられる架台を構成するための本体であってもよい。本体の開口部を開閉する蓋は、鉄板等の金属で強固に構成されたものであることが好ましいが、合成樹脂で構成されたものでも、さらには、ガラスを嵌め込んだアルミサッシ等であってもよく、特定の材質、大きさには限定されない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、蝶番の一方に支持される支持部と、蝶番の他方が取り付けられる部材を挟持して支持される挟持部と、支持部と挟持部を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するダンパー部により、既存の蝶番に簡単に取り付けることが可能なヒンジ型ダンパー装置を提供することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、ボルトとナットの締め付け力による摩擦抵抗によってダンパー作用を得るようにしたので、既存の蝶番に簡単に取り付けることが可能な、簡易な構成のヒンジ型ダンパー装置を提供することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載のヒンジ型ダンパー装置を用いることにより、蓋の開閉操作による衝撃を抑制することが可能なローホリゾントライトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態であるヒンジ型ダンパー装置および一部を省略したローホリゾントライトを示す斜視図。
【図2】図1のヒンジ型ダンパー装置をローホリゾントライトに取り付けた状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)はヒンジ型ダンパー装置を分解して示す斜視図。
【図3】図1のヒンジ型ダンパー装置をローホリゾントライトに取り付けた状態を示し、(a)は蓋を閉じた状態を示す側面図、(b)は蓋を開放した状態を示す側面図。
【図4】図1のローホリゾントライトを示し、(a)は一部を切り欠いて示す正面図、(b)は側面図。
【図5】図1のローホリゾントライトを舞台に設置した状態を断面して示す説明図。
【図6】図1のヒンジ型ダンパー装置およびローホリゾントライトの第1の変形例を示す斜視図。
【図7】図1のヒンジ型ダンパー装置およびローホリゾントライトのさらなる変形例を示し、(a)は第2の変形例を示す斜視図、(b)は第3の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のヒンジ型ダンパー装置およびヒンジ型ダンパー装置を用いたローホリゾントライトの実施形態について説明する。
【実施例1】
【0022】
先ず、ヒンジ型ダンパー装置につき説明する。図1〜図3に示すように、本実施例のヒンジ型ダンパー装置10は、平型蝶番の一方に支持される支持部11、平型蝶番の他方が取り付けられる部材を挟持して支持される挟持部12、支持部と挟持部を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するダンパー部13で構成する。
【0023】
支持部11は、鋼板材をプレス加工することにより構成され、両端部に軸受部11aが形成され、この両端の軸受部を連接するようにして固定部11bが一体に形成されている。両端の軸受部11aには、軸線a−a上に位置して軸孔11cを形成し、固定部11bには2個の固定孔11dを形成する(図2(c))。
【0024】
この固定孔11dは、後述するローホリゾントライト20に取り付けられた平型蝶番24の一方、すなわち、本体22側に取り付けられた一方の蝶番24aに形成された2個の固定孔24a1と、同一若しくは、若干大きな孔径で、かつ同一のピッチを有して形成される。
【0025】
挟持部12は、支持部11と同様に、鋼板材をプレス加工することにより構成され、両端部にJ字状をなす軸受部12aが形成され、この両端の軸受部12aを連接するようにして連結部12bが設けられる。この連接部12bは、コ字状をなす板材が両端の軸受部12aの内面にスポット溶接等で固定されることにより構成される。両端の軸受部12aには、軸線a−a上に位置して軸孔12cを形成する(図2(c))。
【0026】
J字状をなす両端の軸受部12aには溝部12dが形成され、この溝部12dの幅寸法t(図2(b))は、後述するローホリゾントライト20における平型蝶番板24の他方の蝶番24bが取り付けられた蓋23の板材の厚さ寸法と略等しいか、多少大きめの寸法を有して形成され、板材からなる蓋23が溝部12dに挿入されることによって、挟持部12が蓋23に挟持されて支持される。図中12eは、連接部12bに略平行して設けられた補強部で、コ字状をなす板材が両端の軸受部12aの内面にスポット溶接等で固定され一体化されている。
【0027】
なお、図2(a)に示す、支持部11の幅寸法a、挟持部12の幅寸法b、後述する平型蝶番24の幅寸法cは、b>a>cの関係の寸法に形成し、挟持部12の内側に支持部11が挿入され、支持部11の内側に平型蝶番24が挿入できるように構成する。
【0028】
ダンパー部13は、図2(c)に示すように、支持部11と挟持部12を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するもので、軸線a−a上に形成された支持部11の軸孔11cと挟持部12の軸孔12cを合致させるようにして、挟持部12両端の軸受部12aの内面側に、支持部11両端の軸受部11aを挿入する。さらに合致した軸孔11cと軸孔12cに対して、支持部11両端の軸受部11aの内側から、両側の合致した軸孔11c、12cに、それぞれ1本ずつのボルト14を挿通し、それぞれを1個ずつのナット15で締め付けて固定する。
【0029】
このボルト14とナット15の締め付け力による摩擦抵抗によって、挟持部11両端の軸受部11aと支持部12両端の軸受部12aが摩擦係合され、合致した軸孔11c、12cを中心とする回動方向、すなわち、支持部11と挟持部12の軸孔11c、12cを中心とする開閉方向に対してダンパー作用を得ることができる(図3(a)(b))。
【0030】
本実施例においては、支持部11の軸孔11cの外側と挟持部12の軸孔12c周囲の内側との間にファイバー製のワッシャー16aを、挟持部12の軸孔12c周囲の外側とナット15との間にファイバー製のワッシャー16b、平ワッシャー17、波ワッシャー18の順に挿入し、ボルト14とナット15を締め付けることにより、より強く確実な摩擦抵抗が得られるように構成した。
【0031】
次に、上記に構成されたヒンジ型ダンパー装置10を用いたローホリゾントライトの構成について説明する。本実施例のローホリゾントライト20は、図4に示すように、ホリゾント面を照明する光源21、光源を収納する本体22、本体の開口部を開閉する蓋23、蓋と本体を開閉可能に支持する重量用の平型蝶番24、この平型蝶番に支持部11と挟持部12が支持され、蓋23を本体22に対しダンパー作用を有して開閉可能にする上述したヒンジ型ダンパー装置10で構成する。
【0032】
光源21は、一部を切り欠いて示す図4(a)に示すように、300〜1000W、具体的には500W程度のハロゲンランプからなり、反射体21a内に略水平方向に配設されて1台の器具本体Aが構成される。この光源21および反射体21aを有する器具本体Aは、本実施例では4台用意され、架台22内に収納される。
【0033】
架台は、光源を収納する本発明の本体22を構成するもので、斜め上方に開口する開口部22aを有する本体ケース22bと、開口部22aを開閉する蓋23で構成され、本ケース22bおよび蓋23は鋼板からなる板材で構成されている。
【0034】
蓋23は、その下辺部が開口部22aの下辺部に対して4個の重量用の平型蝶番24によって取り付けられている。すなわち、図1および図2(a)(b)に示すように、平型蝶番の一方の蝶番24aには、2個の固定孔24a1が形成され、外面から2個の固定孔24a1に対してボルト24a2が挿通され前面板22cのネジ孔(図示せず)にねじ込まれて固定される。また他方の蝶番24bは、蓋23の板材の裏面側に当接され、板材の表面側から2個のボルト24b2が挿通され、蓋23のネジ孔(図示せず)にねじ込まれて固定される。
【0035】
これにより、蓋23は、平型蝶番24の軸24cを中心軸b−bにして、すなわち、蓋23の下辺部を中心軸にして、蓋の上辺部が本体ケース22bの上面から下面との間を、図4(b)中に矢印で示すように、約180度の角度範囲にわたって大きく開閉がなされる。図中25は、蓋23の上方に設けられた開閉用のハンドル、26は本体ケースの下面の後方側に設けられた移動用のキャスタ、27は本体ケースの前面側に設けられ、光源21の光の放射方向を調整するアジャスタを兼ねたストッパーである。なお、上記に構成されたローホリゾントライト20は、高さ寸法hが約500mm程度、幅寸法wが約1000mm程度の大きさに構成され、蓋23は厚さ約1mm程度の鋼板で構成されている。
【0036】
上記に構成されたローホリゾントライト20は、図5に示すように、舞台Bのホリゾント面Hを照明するために、床面Xを掘り込んで形成したピットP内に設置されて使用される。
【0037】
ローホリゾントライト20は、使用される時には蓋23が開放され、また使用しない時には、ピットP内のゴミや塵埃が侵入しないように閉じられる。この開閉の際、蓋23は、上記のように幅が約1000mm、厚さが約1mm程度の大きく重い鋼板で構成され、しかも、開閉角度が本体ケース22bの上面から下面との間に、約180度の角度範囲にわたって大きく開閉がなされるため、開放するときも、閉じるときも蓋23が本体ケース22bに対してかなりの衝撃を持って当たる。特に、蓋23の重量が大きいために大きな衝撃音を伴って開閉されることが多く、一層強い衝撃力が本体ケース22bに加わった場合には、光源21のハロゲンランプが外れたり、フィラメント切れが発生する。また、架台22の本体ケース22bが衝撃で動き、設置位置が変わり所定の照明ができなくなる問題も発生する。
【0038】
このため、本発明では、上述したヒンジ型ダンパー装置10を、ローホリゾントライト20に取り付けることにより、蓋23の開閉動作に対してダンパー作用を付加し、これらの問題を解決することができる。本発明のヒンジ型ダンパー装置10は、ローホリゾントライト20に取り付けられている平型蝶番24を交換することなく、既に取り付けられている平型蝶番24をそのまま使用して簡単に取り付けることができるものである。
【0039】
すなわち、その取付作業は、先ず、既に取り付けられている平型蝶番24の内、本体ケース22b側に取り付けられている一方の蝶番24aを、ボルト24a2を外すことによって取り外す。
【0040】
次に、一方の蝶番24aが外された状態で、ヒンジ型ダンパー装置10の挟持部12を他方の外されていない蝶番24bに対向させながら、その溝部12dに蓋23の板材を挿入し、この溝部で板材を挟持させながら溝部12dの底まで挿入し係止させる(図2(b))。
【0041】
次に、外された蝶番24aと本体ケース22bの前面板22cとの間に、ヒンジ型ダンパー装置10の支持部11を挿入して、支持部11を蝶番24aと前面板22cとの間で挟持し、支持部11の固定孔11dを、蝶番24aの固定孔24a1および前面板22cのねじ孔(図示せず)にそれぞれ合致させる。この状態で、外されたボルト24a2をそのまま使用して、合致した固定孔11d、24a1にボルト24a2を挿通し、前面板22cのネジ孔にねじ込んで固定する。この状態で、平型蝶番24の中心軸b−bとヒンジ型ダンパー装置10の軸線a−aが一致する(図2(a))。
【0042】
この平型蝶番24に対するヒンジ型ダンパー装置10の取付作業は、4個の平型蝶番に対してそれぞれ行い、4個全ての平型蝶番に、1個づつ計4個のヒンジ型ダンパー装置10を取り付ける。
【0043】
次に、ダンパー部13を構成する支持部11と挟持部12の両端の軸受部11a、12aに設けられた、それぞれ1本づつのボルト14と、1個づつのナット15を締め付けて摩擦力を調整する。この調整は、蓋23を開閉しながら4個のヒンジ型ダンパー装置10に対して、ボルト14とナット15の締め付け力を加減しながら行う。付加するダンパー作用が不足、または、過剰の場合には、これらのボルト14とナット15の締め付け力を適宜変えることにより、最適な摩擦力を見つけ出し、最適なダンパー作用を付加するように設定する。
【0044】
これにより、平型蝶番24の中心軸b−bとヒンジ型ダンパー装置10の軸心a−aが一致し、蓋23の開閉に追随して平型蝶番24と共にヒンジ型ダンパー装置10の支持部11と挟持部12が軸心a−aを中心として開閉される(図3)。この開閉には、ボルト14とナット15の締め付け力による摩擦抵抗によって、挟持部11と支持部12の両端の軸受部11a、12aが摩擦係合され、支持部11と挟持部12の軸孔11c、12cを中心とする開閉方向に対して摩擦力によるダンパー作用が付加され、蓋23が本体ケース22bに対して、衝撃なく静かに当たるようにすることができ、衝撃を緩和、抑制することができる。特に本実施例においては、ファイバー製のワッシャー16a、16bや、平ワッシャー17、波ワッシャー18を設けて、より強く確実な摩擦抵抗が得られるように構成したので、重く大きな蓋23の開閉に際しても、より確実にダンパー作用を付加させることができる。
【0045】
なお、上記のように、4個の平型蝶番24の全てにヒンジ型ダンパー装置10をそれぞれ取り付けるようにしても、所定の個数、例えば、両側の2個の平型蝶番24にのみ取り付けるようにして、付加するダンパー作用を弱くする等、既設の蝶番に対してヒンジ型ダンパー装置を取り付ける個数を適宜選択してダンパー作用の強さを調整してもよい。この場合、取り付けたヒンジ型ダンパー装置10を平型蝶番24から取りはず際には、上述とは逆に、ボルト24a2を外し、蝶番24aと前面板22cとの間からヒンジ型ダンパー装置10の支持部11を引き出し、挟持部12の溝部12dから蓋23の板材を引き出せば簡単に取り外すことができる。そして、外されたボルト24a2を、そのまま使用して平型蝶番の蝶番24aを、ケース本体の側板23cに取り付けるだけよい。これにより、平型蝶番24は、元の状態に戻り、蓋23の開閉のための蝶番として、何ら支障なくそのまま使用することができる。
【0046】
以上、本実施例のヒンジ型ダンパー装置10によれば、平型蝶番24の一方の蝶番24aに支持される支持部11と、他方の蝶番24bが取り付けられる蓋23の板材を溝部12dで挟持することにより支持される挟持部12と、支持部11と挟持部12を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するダンパー部13を有しているので、既に取り付けられている平型蝶番24を交換することなく、平型蝶番24をそのまま使用して蓋23の開閉操作に有効なダンパー作用を付加することができる。これにより、既に舞台やスタジオに設置され使用されているローホリゾントライトや架台自体をダンパー式の蓋を備えたものに交換することなく、ダンパー作用を蓋に付加することができるので、設備費用を大幅に削減することができる。
【0047】
同時に、ヒンジ型ダンパー装置のダンパー部13によって、蓋23が本体ケース22bに対して、衝撃なく静かに当たるようにすることができ、光源21のハロゲンランプの外れや、フィラメント切れを防止することができ、さらに、架台22が衝撃によってピット内で動くことのない、ローホリゾントライトを提供することができる。また、蓋を開閉するためのヒンジが、既存の蝶番24と本発明のヒンジ型ダンパー装置10との二重のヒンジ構成となすことができ、強固で故障の少ないローホリゾントライトを提供することができる。
【0048】
また、ヒンジ型ダンパー装置10の取付作業は、既に取り付けられている蝶番24aのボルト24a2を外し、挟持部12の溝部12dに蓋23の板材を挿入して挟持し、支持部11を外された蝶番24aと本体ケース22bとの間に挿入して挟持し、外されたボルト24a2をねじ込めばよく、換言すれば、一方を溝に差し込み他方をねじ止めすればよく、極めて簡単な作業で行うことができる。また、ヒンジ型ダンパー装置10を固定するために、新たに固定用の格別の孔を形成する等、特別の加工をする必要がなく、一層簡単な作業で行うことができる。さらに、既に空いている固定孔を、そのまま利用し、外されたボルトをそのまま使用することができ、部品点数も増やす必要がなくコスト的に有利なヒンジ型ダンパー装置を提供することができる。また、取外し作業も簡単に行うことができる。
【0049】
また、ヒンジ型ダンパー装置のダンパー部13は、ボルト14とナット15からなる軸支部で構成し、ボルト14とナット15の締め付け力による摩擦抵抗によってダンパー作用を得るようにしたので、簡易な構成で確実なダンパー作用を付加させることができる。また、ダンパー作用の調整もボルトとナットの締め付け力を調整しながら、簡単かつ確実に行うことができる。
【0050】
以上、本実施例において、ヒンジ型ダンパー装置10の支持部11を外された蝶番24aと前面板22cとの間に挿入し、挟持して固定するようにしたが、図6に示すように、蝶番24aと前面板22cとの間で挟持することなく、蝶番24aに支持部11の固定部11bを外側から被せるようにして配置し、ボルト24a2を固定部11bの外側から挿通して固定するようにしてもよい。また、支持部11を、平型蝶番24から外されたボルト24a2で固定するようにしたが、例えば、別個に用意した多少長めのボルトを用いて、より確実に支持するようにしてもよい。また、平型蝶番24の他方の蝶番24bを蓋23の裏側に取り付けたが、図7(a)に示すように、蓋23の表面側に取り付けたものであってもよい。
【0051】
また、ヒンジ型ダンパー装置10は、ローホリゾントライト20に既に取り付けられている平型蝶番24に適合するような寸法に構成したが、例えば、図7(b)に示すように、挟持部12の溝部12dの長さ寸法を長くし、さらに支部部11の固定孔11dを長孔で構成するなど、各種機器、装置に取り付けられている多様な蝶番に適合することが可能な寸法に構成して、汎用性を有するヒンジ型ダンパー装置を構成するようにしてもよい。
【0052】
なお、変形例を示す図6、図7には、図1〜図5と同一部分に同一符号を付し、詳細な説明は省略した。以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の設計変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
10 ヒンジ型ダンパー装置
11 支持部
12 挟持部
13 ダンパー部
14 ボルト
15 ナット
20 ローホリゾントライト
21 光源
22 本体
23 蓋
24 蝶番


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蝶番の一方に支持される支持部と;
蝶番の他方が取り付けられる部材を挟持して支持される挟持部と;
支持部と挟持部を、ダンパー作用を有して回動可能に軸支するダンパー部と;
を具備していることを特徴とするヒンジ型ダンパー装置。
【請求項2】
前記ダンパー部は、ボルトとナットからなる軸支部を有し、ボルトとナットの締め付け力による摩擦抵抗によってダンパー作用を得るようにしたことを特徴とする請求項1記載のヒンジ型ダンパー装置。
【請求項3】
ホリゾント面を照明する光源と;
光源を収納する本体と;
本体の開口部を開閉する蓋と;
蓋と本体を開閉可能に支持する蝶番と;
この蝶番に支持部と挟持部が支持され、蓋を本体に対しダンパー作用を有して開閉可能にする請求項1または2記載のヒンジ型ダンパー装置と;
を具備していることを特徴とするローホリゾントライト。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−43213(P2011−43213A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191920(P2009−191920)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】