説明

ヒートインシュレータ

【課題】ヒートインシュレータの各パーツの合わせ部分からの熱気の漏出を抑制し得るようにする。
【解決手段】複数のパーツ5A,5Bに分割され且つ該各パーツ5A,5Bをターボチャージャ2のタービン3(発熱機器)に対し装着して輻射熱を遮蔽し得るようにしたヒートインシュレータ5に関し、前記各パーツ5A,5Bの合わせ部分を所要のクリアランスを隔てて相互に重複させると共に、その重複した内側のパーツ5Aの端部5aを外側に反らせ且つ該内側のパーツ5Bの端部5bに被さるように外側のパーツ5A,5Bの端部を内側に屈曲させて前記各パーツ5A,5Bの合わせ部分にラビリンス構造を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱機器からの輻射熱を遮蔽して周辺機器類を熱害から保護するためのヒートインシュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より自動車等のエンジンにおいては、該エンジンの吸気効率を向上させるためにターボチャージャを搭載したものがあり、この種のターボチャージャでは、エンジンから排出される排気ガスのエネルギー(運動エネルギーおよび熱エネルギー)を利用してタービンを回転駆動し、その回転力で遠心式のコンプレッサを駆動することにより吸気の圧力を上げてエンジンに送り込むようになっている。
【0003】
ここで、前記ターボチャージャのタービンには、エンジンから排出された直後の高温の排気ガスが導かれ、エンジンの稼働中にタービンが高い温度に昇温することになるため、ターボチャージャの近傍にケーブル等が配索されている場合には、該ケーブル等に輻射熱による熱害が及ばないようにするため、ターボチャージャの主としてタービン側をヒートインシュレータで覆う措置が採られている。
【0004】
この種のヒートインシュレータは、比較的広範囲を覆うものとなって大型化し、しかも、三次元的に複雑な形状を成すものとなるため、その組み付け作業性を考慮すると、複数のパーツに分割してターボチャージャへの装着を行うことが好ましい。
【0005】
ただし、ヒートインシュレータの各パーツの相互間を緊密に隣接させて組み付けることは精度的に難しく、しかも、ヒートインシュレータの各パーツの合わせ部分に異音や摩耗が起こる虞れを回避したいという要望もあるため、前記各パーツの合わせ部分には隙間が残されているのが通常であった。
【0006】
尚、斯かるヒートインシュレータに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1や特許文献2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−11304号公報
【特許文献2】特許第3796910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、自動車等のエンジンの場合、ヒートインシュレータの各パーツの合わせ部分に隙間があっても、この隙間から立ち昇る熱気が走行風により吹き流されるので、走行中に隙間上方のケーブル等に熱害が及ぶ虞れは少ないが、停車してエンジン停止した直後においては、ヒートソークバック現象によりヒートインシュレータの各パーツの合わせ部分の隙間から立ち昇った高温の熱気がケーブル等の周辺機器類に及び、該周辺機器類に熱害を与える虞れがあった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ヒートインシュレータの各パーツの合わせ部分からの熱気の漏出を抑制し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のパーツに分割され且つ該各パーツを発熱機器に対し装着して輻射熱を遮蔽し得るようにしたヒートインシュレータであって、前記各パーツの合わせ部分を所要のクリアランスを隔てて相互に重複させると共に、その重複した内側のパーツの端部を外側に反らせ且つ該内側のパーツの端部に被さるように外側のパーツの端部を内側に屈曲させて前記各パーツの合わせ部分にラビリンス構造を構成したことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、ヒートインシュレータの各パーツの合わせ部分から漏れ出ようとする熱気が、前記合わせ部分の内側のパーツにおける外側に反る端部の先端を回り込み、次いで、この内側のパーツの端部に被さるように内側に屈曲する外側のパーツの端部により逆向きに折り返され、該端部の先端を更に回り込むことでようやく外部に到るように案内されるので、このようなラビリンス構造の紆余曲折した流路形状により前記熱気の流れが通過抵抗を受け、ヒートインシュレータの各パーツの合わせ部分からの熱気の漏出が大幅に抑制されることになる。
【0012】
また、本発明においては、自動車のターボチャージャにおける少なくともタービンを発熱機器として覆うヒートインシュレータとして適用することが可能であり、例えば、前記タービンの上方にケーブル等が配索されている場合に好適である。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明のヒートインシュレータによれば、分割された各パーツの合わせ部分から漏れ出ようとする熱気に対し、各パーツの合わせ部分に構成されるラビリンス構造の紆余曲折した流路形状により通過抵抗を与えることができるので、前記各パーツの合わせ部分からの熱気の漏出を大幅に抑制することができ、前記合わせ部分からの熱気の漏出による周辺機器類への熱害を未然に防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のヒートインシュレータにおける各パーツの合わせ部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、ここに図示している例においては、自動車のエンジン1に搭載されたターボチャージャ2のタービン3(及び排気管4の上流部)を発熱機器として覆うようにしたヒートインシュレータ5の場合で例示しており、該ヒートインシュレータ5が一対のパーツ5A,5Bに分割され、該各パーツ5A,5Bが前記タービン3に対し締結具6を介して装着されていて、該タービン3からの輻射熱が前記各パーツ5A,5Bにより遮蔽されるようにしてある。
【0017】
即ち、図1に示す例の場合、ターボチャージャ2の上方位置にケーブル7(周辺機器類)が配索されているので、該ケーブル7が前記ターボチャージャ2のタービン3からの輻射熱を受けないように、該タービン3の上側部分を、各パーツ5A,5Bから成るヒートインシュレータ5で覆うようにしており、前記ヒートインシュレータ5の各パーツ5A,5Bは、例えば、形状保持用の鋼板と断熱材とを積層した構造となっている。
【0018】
尚、前記ターボチャージャ2のタービン3には、エンジン1から排出される高温の排気ガスが導入され、該排気ガスのエネルギー(運動エネルギーおよび熱エネルギー)を利用して前記タービン3が回転駆動されるようになっており、その回転力で遠心式のコンプレッサ8が駆動されることで吸気の圧力が上げられて前記エンジン1に送り込まれるようになっている。
【0019】
そして、本形態例のヒートインシュレータ5では、図2に各パーツ5A,5Bの合わせ部分の断面を拡大して示す如く、前記各パーツ5A,5Bの合わせ部分が所要のクリアランスを隔てて相互に重複されるようにしてあり、その重複した内側のパーツ5Aの端部5aが外側に反らされ、該内側のパーツ5Aの端部5aに被さるように外側のパーツ5Bの端部5bが内側に屈曲されており、これら各パーツ5A,5Bの端部5a,5bによりラビリンス構造が構成されるようになっている。
【0020】
而して、このようにすれば、ヒートインシュレータ5の各パーツ5A,5Bの合わせ部分から漏れ出ようとする熱気Hが、前記合わせ部分の内側のパーツ5Aにおける外側に反る端部5aの先端を回り込み、次いで、この内側のパーツ5Aの端部5aに被さるように内側に屈曲する外側のパーツ5Bの端部5bにより逆向きに折り返され、該端部5bの先端を更に回り込むことでようやく外部に到るように案内されるので、このようなラビリンス構造の紆余曲折した流路形状により前記熱気Hの流れが通過抵抗を受け、ヒートインシュレータ5の各パーツ5A,5Bの合わせ部分からの熱気Hの漏出が大幅に抑制されることになる。
【0021】
従って、上記形態例によれば、分割された各パーツ5A,5Bの合わせ部分から漏れ出ようとする熱気Hに対し、各パーツ5A,5Bの合わせ部分に構成されるラビリンス構造の紆余曲折した流路形状により通過抵抗を与えることができるので、前記各パーツ5A,5Bの合わせ部分からの熱気Hの漏出を大幅に抑制することができ、前記合わせ部分からの熱気Hの漏出によるケーブル7への熱害を未然に防止することができる。
【0022】
尚、本発明のヒートインシュレータは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、発熱機器はターボチャージャ以外のものを対象としても良く、例えば、EGR配管、排気管、吸気マニホールド等を対象としても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 エンジン
2 ターボチャージャ
3 タービン(発熱機器)
5 ヒートインシュレータ
5A パーツ
5B パーツ
5a 端部
5b 端部
7 ケーブル(周辺機器類)
H 熱気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパーツに分割され且つ該各パーツを発熱機器に対し装着して輻射熱を遮蔽し得るようにしたヒートインシュレータであって、前記各パーツの合わせ部分を所要のクリアランスを隔てて相互に重複させると共に、その重複した内側のパーツの端部を外側に反らせ且つ該内側のパーツの端部に被さるように外側のパーツの端部を内側に屈曲させて前記各パーツの合わせ部分にラビリンス構造を構成したことを特徴とするヒートインシュレータ。
【請求項2】
自動車のターボチャージャにおける少なくともタービンを発熱機器として覆うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートインシュレータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−50068(P2013−50068A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188238(P2011−188238)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】