説明

ヒートシンク及びヒートシンク固定方法

【課題】冷却用ヒートシンクが必要な、高さの異なる半導体部品が複数個搭載された実装基板の組立時に、同じ種類のヒートシンク、押さえ部材、及び連結部材を用いて同じ圧着力で冷却用ヒートシンクを半導体部品に装着する方法を提供する。
【解決手段】ヒートシンク12に高さの異なる複数の溝を設け、装着する部品の高さに応じて、押さえ部材を当接させる溝を使い分けることにより、適した圧着力で1種類のヒートシンク12により高さの異なる複数の部品に装着可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク及びヒートシンクの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実装基板上の半導体部品の消費電力が大きい場合には、その半導体部品の動作を保障するために冷却用のヒートシンク等を用いて動作可能な温度範囲内に半導体部品を冷却する必要がある。冷却用ヒートシンクには、バネ状の押さえ部材で装着する方式がある。バネ等の押さえ部材を用いてヒートシンクを半導体部品に装着する場合、ヒートシンクの冷却性能を確保し、かつ、半導体部品にストレスをかけないようにするためには半導体部品に対するヒートシンクの圧着力を一定の範囲内に保つ必要がある。
【0003】
ところで、半導体部品は部品製造メーカーやパッケージ材料によって、高さの異なる部品が存在する。そのため、実装基板に複数の高さの半導体部品を搭載する場合には、ヒートシンクを固定するための複数の種類のバネ状の押さえ部材又は押さえ部材を係止するための連結部材が用いられていた。
【0004】
図1は、バネ等の押さえ部材で装着するヒートシンクの例を示した図である。図1の例では、ヒートシンク10の表面に設けられたフィンの間の溝部分にバネ状の押さえ部材20を当接させ、バネ状の押さえ部材の弾性力を利用してヒートシンク10を半導体部品(不図示)に装着する。バネ状の押さえ部材20の両端は実装基板上に設けられた連結部材30に係止させることができる構造となっている。また、図2は、棒状のフィンを有するヒートシンク11をバネ状の押さえ部材21を用いて半導体部品(不図示)に装着させる場合の例を示した図である。この場合も、棒状のフィンの間の溝部分にバネ状の押さえ部材21を当接させ、押さえ部材21の両端を実装基板上に設けられた連結部材31に係止させることにより、バネ状の押さえ部材の弾性力を利用してヒートシンク11を半導体部品に装着する。
【0005】
図1や図2に示すようなバネ状の押さえ部材20、21を用いて高さの異なる複数の半導体部品にヒートシンク10、11を装着する場合、ヒートシンクを半導体部品に装着した際の圧着力を一定にするためには、押さえ部材20、21の両端を係止させる部分を有する両翼の角度等を変更したり、連結部材30、31の高さを変更する必要があった。
【0006】
図3は、実装基板50上にある高さの異なる2種類の半導体部品40及び41にそれぞれ同じ種類のヒートシンク10を装着する際に、2種類の高さの異なる押さえ部材20及び22を用いてヒートシンク10を装着する例を示したものである。図3では、同じ高さの連結部材30が使用されている。そして、高さの高い半導体部品41にヒートシンク10を装着する場合には、高さの高い押さえ部材22を使用し、高さの低い半導体部品40にヒートシンク10を装着する場合には、高さの低い押さえ部材20を使用してヒートシンク10が装着される。
【0007】
図4は、実装基板50上にある高さの異なる2種類の半導体部品40及び41にそれぞれ同じ種類のヒートシンク10を装着する際に、2種類の高さの異なる連結部材30及び32を用いてヒートシンク10を装着する例を示したものである。図4では、同じ種類の押さえ部材20が使用されている。そして、高さの高い半導体部品41にヒートシンク10を装着する場合には、高さの高い連結部材32を使用し、高さの低い半導体部品40にヒートシンク10を装着する場合には、高さの低い連結部材30を使用してヒートシンク10が装着される。
【0008】
ヒートシンクの装着方法として、特許文献2や特許文献3のような従来技術もあるが、いずれの場合においても、高さの異なる半導体部品にヒートシンクを装着する場合には、押さえ部材の高さの変更や、連結部材の高さの変更が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−528723号公報
【特許文献2】特開平11−150220号公報
【特許文献3】特開2005−150192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の通り、ヒートシンクの押さえ部材を当接させるための溝が同じ高さの場合、異なる高さの複数の半導体部品に同じ種類のヒートシンクを装着するには、その半導体部品の高さの種類分だけ異なる押さえ部材又は連結部材が必要であった。複数種類の押さえ部材又は連結部材の部品を使用する場合には、部品の選択ミスによる装着ミスが起こる場合があり、装着ミスが起こると、部品に過剰な圧力がかかることにより部品を壊す場合や、圧着力不足によりうまく冷却できないといった場合があった。
【0011】
そのため、冷却用ヒートシンクが必要な、高さの異なる半導体部品が複数個搭載された実装基板の組立時に、同じ種類のヒートシンク、押さえ部材、及び連結部材を用いて同じ圧着力で冷却用ヒートシンクを各半導体部品に装着することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための実装基板上に実装された部品を冷却するためのヒートシンクは、前記部品に接する面と逆の面に、ヒートシンクを前記部品に固定する押さえ部材を当接させるための、高さの異なる複数の溝を有する。
【発明の効果】
【0013】
バネ等の押さえ部材を用いて半導体部品に装着するヒートシンクに高さの異なる複数の溝を設け、装着対象の半導体部品の実装基板表面からの高さに応じて、前記ヒートシンクに設けられた溝を使い分けることにより、同じ種類のヒートシンク、押さえ部材、及び連結部材を用いてほぼ同じ圧着力で高さの異なる複数の半導体部品に冷却用ヒートシンクを装着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ヒートシンクをバネ等の押さえ部材で装着する例を示した図である。
【図2】棒状フィンを有するヒートシンクをバネ等の押さえ部材で装着する場合の例を示した図である。
【図3】バネ等の押さえ部材で装着するヒートシンクの実装例1を示した図である。
【図4】バネ等の押さえ部材で装着するヒートシンクの実装例2を示した図である。
【図5】実施例1に係るヒートシンクの上面図を示した図である。
【図6】実施例1に係るヒートシンクの上面から見た溝の位置の説明図である。
【図7】実施例1に係るヒートシンクの側面図を示した図である。
【図8】実施例1に係るヒートシンクのフィン形状の側面図の例を示した図である。
【図9】実施例1に係るヒートシンクの溝の断面図の例を示した図である。
【図10】実施例1に係るヒートシンクのフィン形状の変形例を示した図である。
【図11】実施例2に係るヒートシンクの斜視図を示した図である。
【図12】実施例2に係るヒートシンクの装着例を示した図である。
【図13】実施例3に係るヒートシンクの斜視図を示した図である。
【図14】実施例1に関する実装基板上の部品配置例を示した図である。
【図15】実施例1に係るヒートシンクの実装基板への実装例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
図5は、実施例1に係るヒートシンク12の上面図を示した図である。実施例1に係るヒートシンク12は、台座部12−2の上に切れ込みを有する、板状に形成された複数のフィン12−1を有する。図5では、台座部12−2の外縁を示す線と、複数のフィン12−1の最上面の部分を斜線の網掛けで示した図とが示されている。ヒートシンク12は、台座12−2上の2つの対角線上及び中央を通る縦横の2つの線上に高さの異なる4つの溝(12−3A、12−3B、12−3C、12−3D)を有する。
【0017】
ヒートシンク12上に形成する溝の高さ、すなわち、ヒートシンク12の底面から溝の底の位置までの高さは、次のように決定する。例えば、ヒートシンク12を装着する対象となる半導体部品として、高さの異なる4種類の部品がある場合、各々の半導体部品の高さに応じて、ヒートシンク12の4つの溝の高さを決定する。具体的には、異なる高さの各半導体部品とヒートシンク12のいずれかの溝とを対応付け、対応付けがされた半導体部品の高さと溝の高さの合計が同一の値、又は近い値となるようにヒートシンク12の溝の深さを決定する。
【0018】
ヒートシンク12を実装基板上の半導体部品に装着する際には、各半導体部品の高さに応じて、その半導体部品に対応した高さの溝に押さえ部材を当接させることにより、ヒートシンク12を半導体部品に装着する。このように、装着対象の半導体部品の高さに応じたヒートシンク12上の溝に、バネ等の押さえ部材を当接させてヒートシンクを半導体部品に当接することにより、同じ種類のヒートシンク、押さえ部材、連結部材を用いて、同じ圧着力で高さの異なる複数の半導体部品に冷却用ヒートシンクを装着することが可能となる。

図6は、実施例1に係るヒートシンクの上面から見た溝の位置の説明図である。図6は、(A)〜(D)の各方向から見た高さの異なる4つの溝(12−3A、12−3B、12−3C、12−3D)に沿って破線を引いた図である。図6の破線で示された4つの溝は、必ずしもヒートシンク12の底面から見て均一の高さの溝として形成される必要はなく、ヒートシンク12の底面から一定の高さに、押さえ部材を当接できる複数の接点を有していればよい。そのため、溝の方向と各フィン12−1が交錯する場合には、ヒートシンク12の底面から一定の高さで、ほぼ等しい幅の凹状の切れ込み(凹部)を各フィン12−1に形成し、形成されたフィンの凹部により溝の一部を成すように溝を形成することができる。この場合、押さえ部材と溝とは、溝を形成する複数のフィンの凹部で接触することになる。以下、ヒートシンク12の側面図や断面図等を用いて、(A)〜(D)方向の各溝について具体的に説明する。

図7は、図6における(A)〜(D)の各方向から見た実施例1に係るヒートシンク12の側面図を示した図である。図7の側面図(A)は、図6における(A)の方向から見た場合のヒートシンク12の側面図である。側面図(A)の矢印の位置にある溝12−3Aは、複数のフィン12−1の中央部に、それぞれ台座部12−2の底面からの高さがLaの位置まで、各フィン12−1の上端から切れ込みを設けることにより形成された溝である。この溝の幅は、ヒートシンクを実装基板上の半導体部品に装着するためのバネ等の押さえ部材を溝の下部に当接できる幅があればよい。
【0019】
図7の側面図(B)は、図6における(B)の方向から見た場合のヒートシンク12の側面図である。側面図(B)の矢印の位置にある溝12−3Bは、ヒートシンク12上に設けられた複数のフィン12−1とヒートシンク12の(B)方向の対角線とが交わる複数の箇所において、台座部12−2の底面からの高さがLbの位置まで、フィン12−1の上端から切れ込みを設けることにより形成された溝である。
【0020】
図7の側面図(C)は、図6における(C)の方向から見た場合のヒートシンク12の側面図である。側面図(C)の矢印の位置にある溝12−3Cは、中央部にある2つのフィンの間の部分を高さがLcである溝として形成したものである。この場合、溝12−3Cの高さを調整するために、ヒートシンク12の台座部12−2の一部を凸状に形成することにより所望の高さの溝を生成してもよいし、フィン部12−1を形成する際に、フィン部12−1の一部分として溝12−3Cを形成してもよい。また、その他の部材を固着等させて、高さLcの溝12−3Cを形成してもよい。尚、仮に溝12−3Cの高さが、台座部12−2の高さLsよりも低い場合においては、台座部12−2の一部を凹状に形成することにより所望の高さの溝を生成すればよい。(C)以外の方向においても、溝の高さが台座部12−2の高さよりも低い場合、フィン部12−1の下端まで切れ込みを設けると共に、台座部12−2の一部も凹状に形成することにより所望の高さの溝を生成すればよい。
【0021】
図7の側面図(D)は、図6における(D)の方向から見た場合のヒートシンク12の側面図である。側面図(D)の矢印の位置にある溝12−3Dは、前記側面図(B)と同様の方法により、(D)方向の対角線上に、高さがLdとなるように形成された溝である。なお、側面図(B)、(C)及び(D)における溝の幅についても、前記側面図(A)の場合と同様、バネ等の押さえ部材を溝の下部に当接できる幅があればよい。また、実施例1では、(B)方向及び(D)方向の溝12−3B、12−3Dは、ヒートシンク12の対角線上に設けられているが、これらの溝は必ずしも対角線上に設ける必要はなく、他の溝と交わらない方向になるように各溝を設けることもできる。
【0022】
実施例1では、(A)〜(D)各方向に4つの溝を設けたヒートシンクの実施例を示しているが、ヒートシンク上に設ける溝の数を2つだけにしてもよいし、例えば6つの溝や8つの溝を設けるようにしてもよい。また、(A)〜(D)の各方向の溝は、実施例1ではヒートシンク12の中央部を通るように設けられているが、溝の形成位置は実施例1の構成に限定されるものではない。例えばヒートシンクの重心がヒートシンクの中央を通らない場合等においては、ヒートシンクの重心を通過するように溝を設けるようにしてもよい。すなわち、ヒートシンクを実装基板上の半導体部品に装着した際に、ヒートシンクから半導体部品に対して均一に圧力がかかるように、押さえ部材を当接させる溝を設けることができればよい。
【0023】
実施例1においては、1つの押さえ部材を用いて部品に装着するヒートシンクを例として挙げているが、ヒートシンクから半導体部品に対して均一に圧力をかけられればよいので、ヒートシンクに同じ高さの溝を複数設けて、複数の押さえ部材によりヒートシンクを半導体部品上に装着するようにしてもよい。もちろん、特定の方向については溝を1つだけ設けて1つの押さえ部材を当接させ、他の方向については同じ高さの複数の溝を設けて複数の押さえ部材を当接させるようにしてもよい。
【0024】
また、本実施例において図示していないが、例えば略直線状の押さえ部材を用いる場合等においては、本実施例のようにヒートシンクの上側から押さえ部材を当接できるような溝を設けなくても、所定の高さでフィンを貫通する穴を形成し、ヒートシンクの横側等から押さえ部材を差し込めるように溝を形成してもよい。このように複数の高さの溝をヒートシンク上に設ける場合の溝の生成方法については、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。

図8は、図6に示されるヒートシンク12の各フィン12−1のうち、2つのフィン12−1A及び12−1Bを例に、図6の(A)の方向から見たフィン12−1A及びフィン12−1Bの側面図を台座部12−2の側面図と共に示した図である。図8の左側の図は、図6におけるフィン12−1Aの側面図(A)を台座部12−2の側面図と共に示した図であり、図8の右側の図は、図6におけるフィン12−1Bの側面図を台座部12−2の側面図と共に示した図である。
【0025】
フィン12−1Aの中央部には、図6における(A)方向の溝12−3Aを形成する切れ込みを設ける。また、フィン12−1Aの溝12−3A部分よりも左側には、図6における(B)方向の溝12−3Bを形成する切れ込みを設け、フィン12−1Aの溝12−3A部分よりも右側には、図6における(D)方向の溝12−3Dを形成する切れ込みを設ける。この切れ込みの幅は前述の通り、ヒートシンク12を装着するための押さえ部材を溝の下部に当接できる幅があればよい。
【0026】
図8の右側の図に示されるフィン12−1Bの側面図(A‘)では、図6における(A)、(B)及び(D)の各方向の溝(12−3B、12−3A、12−3D)がそれぞれフィン12−1B上の少しずつずれた位置を通過するように、階段状の切れ込みをフィン12−1Bに形成する。図6におけるフィン12−1Aやフィン12−1B以外のフィンについても、各々のフィンと(A)〜(D)方向の各溝が交差する位置に、各溝の高さに対応した切れ込みを設ける。

図9は、図6におけるヒートシンク12の溝12−3Aの断面図を示した図である。複数のフィン12−1の中央部に設けられた高さLaの位置までの切れ込みにより、溝12−3Aが形成される。すなわち、溝12−3Aは、必ずしもヒートシンク12の底面から高さLaの位置に連続的に形成された溝である必要はなく、ヒートシンク12上の各フィン12−1に設けられた切れ込みの下端と断続的に接点を有する不連続な溝として形成することができる。尚、図9中の各フィン12−1の上側の破線で囲まれた部分は、溝12−3Aよりも上の切れ込み部分の断面を明示的に示した部分である。

図10は、実施例1に係るヒートシンク12のフィン形状の変形例を示した図である。図10におけるフィン12−3は、図5におけるフィン12−1の形状を変更したものであり、溝に沿って鋭角となっている部分を削って略直角としたものである。また、図示していないが、フィンの各角の部分が略直角である形状だけでなく、略円形にすることもできる。このようにフィン形状を変更することにより、フィン部分の形成の容易化や、冷却風の風の流れを変更できるといった効果を得ることが期待できる。

図11は、実施例2に係るヒートシンク13の斜視図を示した図である。実施例2に係るヒートシンク13は、ヒートシンク上に2種類の深さの溝を設けた場合のヒートシンクの例であり、中央部分に切れ込みを有する複数の板状のフィン13−1と、台座部13−2が一体的に形成されたヒートシンクである。ヒートシンク13は、板状のフィン13−1に沿った方向に、高さLmの溝13−3Bを有し、フィン13−1を横切る方向に、複数のフィンの切れ込みにより形成される、高さLnの溝13−3Aを有する。

図12は、実施例2に係るヒートシンク13の装着例を示した図である。図12(A)は、高さの低い半導体部品40にヒートシンク13を装着する場合の例を示した図であり、図12(B)は、高さの高い半導体部品41にヒートシンク13を装着する場合の例を示した図である。この例では、図11における溝13−3Aの高さLnに半導体部品40の高さを加えた高さと、図11における溝13−3Bの高さLmに半導体部品41の高さを加えた高さとが等しい高さになるものとして説明する。尚、溝13−3Aの高さLnに半導体部品40の高さを加えた高さと、溝13−3Bの高さLmに半導体部品41の高さを加えた高さとが全く同一の高さである必要はなく、ほぼ同じ高さであれば、本発明の効果を得られる。
【0027】
高さの低い半導体部品40にヒートシンク13を装着する場合、図12(A)のように、溝13−3Aに、押さえ部材23を当接させる。そして、押さえ部材23の両端を実装基板上に設けられた連結部材33に係止させることにより、ヒートシンク13を半導体部品40に装着する。図12(A)における高さLtは、実装基板の表面から、押さえ部材23が当接するヒートシンク13の溝13−3Aの下端までの高さを示しており、高さLtは、溝13−3Aの高さLnに半導体部品40の高さを加えた高さに等しい高さとなる。
【0028】
高さの高い半導体部品41にヒートシンク13を装着する場合、図12(B)のように、溝13−3Bに、押さえ部材23を当接させる。そして、押さえ部材23の両端を実装基板上に設けられた連結部材33に係止させることによりヒートシンク13を半導体部品41に装着する。図12(B)における高さLtも、図12(A)の場合と同様に、実装基板の表面から、押さえ部材23が当接されるヒートシンク13の溝13−3Bの下端までの高さを示しており、高さLtは、溝13−3Bの高さLmに半導体部品41の高さを加えた高さに等しい高さとなる。
【0029】
図12に示すように、半導体部品40又は半導体部品41の高さに応じて、押さえ部材23を当接させるヒートシンク13上の溝を適宜選択して装着することにより、同じ種類のヒートシンク13、押さえ部材23、及び連結部材33を用いて、同じ圧着力で高さの異なる複数の半導体部品にヒートシンク13を装着することが可能となる。
【0030】
尚、図12において半導体部品40、41は、部品の下面に半田ボールを並べたBGA(Ball Grid Array)タイプのパッケージでパッケージングされた部品の図となっているが、QFP(Quad Flat Package)等の異なるタイプのパッケージでパッケージングされた部品であってもよい(実施例1〜3において同じ)。また、押さえ部材23及び連結部材33はバネ状の押さえ部材と、バネ等をひっかけられる連結部材を例として示しているが、例えば押さえ部材の両端を基板にねじ止めするような他のタイプの押さえ部材やねじ穴等の連結部材であってもよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である(実施例1〜3において同じ)。

図13は、実施例3に係るヒートシンク14の斜視図を示した図である。図13に示すヒートシンク14は、図2に示す棒状のフィンを有するヒートシンク11に対して本発明を適用する場合の一実施例を示したものである。具体的には、実施例3は、ヒートシンク14の中心部を横切り、棒状のフィン14−1の間を通る2種類の高さ(Ln,Lm)の溝を設けた例である。
【0031】
図13(A)は、実施例3に係るヒートシンク14の斜視図であり、図13(B)は、ヒートシンク14から棒状のフィン14−1を除いた場合の斜視図である。ヒートシンク14は、図13の正面から見て横方向に高さLmの溝14−5Aを有し、図13の正面から見て奥へ伸びる方向に高さLnの溝14−5Bを有する。ここで、説明の便宜上、高さLmは台座部14−2の高さと同じ高さであるものとし、高さLnは高さLmよりも高いものとする。また、ヒートシンク14を高さの異なる2種類の半導体部品に装着するとした場合において、高い方の半導体部品の高さにLmを加えた高さと、低い方の半導体部品の高さにLnを加えた高さとがほぼ同じであるものとする。
【0032】
図13(B)に示すように、図13の正面から見て奥へ伸びる方向の高さLnの溝14−5Bを形成する場合には、所定の高さを有する部材14−3及び14−4をヒートシンク14の台座部14−2上に設ける。このとき、台座14−2の高さLmと、部材14−3及び14−4の高さとを加算した高さが高さLnとなるように、部材14−3及び14−4の高さを決定する。部材14−3と14−4の間には、図13の正面から見て横方向の高さLmの溝14−5Aが通るように一定間隔の隙間を設ける。部材14−3及び14−4は、台座部14−2の一部分として台座部と一体的に形成してもよいし、特定の材料で部材14−3及び14−4を生成した後に、台座部14−2に固着等させることにより形成してもよい。
【0033】
棒状のフィンを有するヒートシンクに関しても、図13に示すヒートシンク14のように異なる種類の高さの複数の溝を設けることにより、図11、12で示した実施例2と同様に、同じ種類のヒートシンク14、押さえ部材、及び連結部材を用いて、高さの異なる複数の半導体部品にヒートシンクを装着することができるようになる。

図14は、実施例1に関する実装基板上の部品配置例を示した図である。図14の例では、実装基板50上に、異なる高さの4つの半導体部品である部品A〜D(部品40〜43)が実装されている。図14において、部品A(41)の高さは3.75mmであり、部品B(42)の高さは5.1mmであり、部品C(43)の高さは5.3mmであり、部品D(40)の高さは2.6mmであるものとする。また、図14の例では、同じ種類の連結部材30が各半導体部品に対して2つずつ基板に実装されている。具体的には、部品A用に連結部材30−1A及び30−1Bが、部品B用に連結部材30−2A及び30−2Bが、部品C用に連結部材30−3A及び30−3Bが、部品D用に連結部材30−0A及び30−0Bが、それぞれ基板に実装されている。
【0034】
図14中、部品A〜D上に付された黒丸の目印40−10、41−10、42−10、43−10、及び、実装基板50上に付された黒丸の目印50−10、50−11、50−12、50−13は、実装基板50へ部品A〜Dを装着する際の装着方向を判断する目印として付されたものである。部品A〜D上の目印と実装基板上に付された目印との方向を揃えて部品A〜Dを装着することで、部品A〜Dの装着時に誤った方向で部品を装着してしまうといったミスを防止することができる。図14では、黒丸の目印を用いて部品の装着方向を示しているが、他の模様を付すようにしてもよく、また、部品や実装基板上に特定の形状の目印を形成して、部品装着時の目印としてもよい。

図15は、図14に示された部品A〜Dに、実施例1に係るヒートシンクを実装した場合の例を示した図である。図15におけるヒートシンク12は、図5に示すヒートシンクと同様の形状となっており、4つの異なる高さ(0.7mm, 0.9mm, 2.25mm, 3.4mm)の溝を有するものとする。具体的には、ヒートシンク12の溝12−3Aの高さは2.25mm、溝12−3Bの高さは0.9mm、溝12−3Cの高さは0.7mm、溝12−3Dの高さは3.4mmとする。図14に示す各半導体部品の高さに応じて、ヒートシンク12の特定の溝を選択して、同じ種類の押さえ部材24を選択したヒートシンク12の溝に当接する。その際、各半導体部品A〜Dの高さと、半導体部品毎に選択されたヒートシンク12上の溝の高さとを加算した高さが同じ高さである6.0mmとなる。従って、同じ種類のヒートシンク12、押さえ部材24及び連結部材30を用いて、高さの異なる4つの半導体部品A〜Dにヒートシンクを装着することができることになる。
【0035】
ヒートシンクの装着方向については、ヒートシンク上の特定の位置に特定の目印等を付すことにより判別可能である。図15の例では、ヒートシンク12上に付された黒丸の目印12−4と、実装基板50上に付された各目印(50−10、50−11、50−12、50−13)との方向を揃えた状態で、ヒートシンク12を各部品A〜Dに装着することにより、ヒートシンク12を実装基板に対して一定の向きに装着可能となる。この場合、実装基板50に対してヒートシンク12の各溝の方向も一意に定まるので、半導体部品の高さに応じたヒートシンク12上の溝に押さえ部材24を当接できるように、使用すべきヒートシンク12の溝の方向を考慮した位置に、あらかじめ連結部材30を実装基板50上に装着しておくことができる。
【0036】
例えば、部品A(41)に対応する連結部材の位置を決定する際には、部品Aの高さ3.75mmと溝の高さを加えた合計が6mmになる溝12−3A(高さ2.25mm)に押さえ部材24を当接できるように、連結部材30−1A及び30−1Bの位置を決定し、各連結部材30−1A及び30−1Bを実装基板50上に装着する。部品B〜Dについても、各部品の高さとヒートシンク12上の溝の高さの合計が6mmとなる溝に押さえ部材24を当接できるように、各部品に対応した連結部材の位置を決定し、決定した位置に各連結部材を装着する。そして、前述の黒丸の目印12−4等を用いて、所定の装着方向に沿ってヒートシンク12を各半導体部品A〜D上に載せ、押さえ部材24の両端をあらかじめ実装された連結部材30に係止させていくことにより、各半導体部品上にヒートシンク12を装着する。このようにすることにより、複数の高さの半導体部品にヒートシンク12を装着する際の使用すべき溝の選択ミス等を防止することが可能となる。
【0037】
なお、ヒートシンク12の向きと押さえ部材24を係止する連結部材30の位置さえ合っていれば、押さえ部材24を適切な溝に当接させることができるので、ヒートシンクを装着する半導体部品毎に、その半導体部品又は実装基板50上に何らかの目印を設け、ヒートシンクを装着する向きを決定してもよい。また、例えば、ヒートシンク12の各溝毎に異なる色の着色をし(不図示)、各半導体部品毎に、その部品の高さに対応した高さの溝の色と同じ色を連結部材30に着色して、ヒートシンク12の向きと連結部材30の位置合わせを行なってもよい。このように、ヒートシンクの装着方向の決定方法等についても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。

以上に述べた通り、実装基板上の半導体部品に装着するヒートシンクに、高さの異なる複数の溝を設け、装着対象の半導体部品の実装基板表面からの高さに応じて、前記ヒートシンクに設けられた溝を使い分けることにより、同じ種類のヒートシンク、押さえ部材、及び連結部材を用いて同じ圧着力で高さの異なる複数の半導体部品に冷却用ヒートシンクを装着することが可能となる。そして、ヒートシンクや実装基板上に付される目印や、実装基板上に設けられた連結部材の位置をあらかじめ決定しておくことで、ヒートシンクや押さえ部材を装着する溝の向きは明確となるため、ヒートシンクの装着ミスも防止することができる。従って、従来あったようなヒートシンク装着時の部品選択ミス等によって半導体部品に過剰な圧力がかかることによる部品の破壊や、圧着力不足による冷却不足等を防止できる。また、ヒートシンク、押さえ部材、及び連結部材の各部品の種類を限定できるので、コストダウンといった効果も期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は半導体部品に装着するヒートシンクに利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10〜14 ヒートシンク
20〜24 押さえ部材
30〜33 連結部材
40〜43 半導体部品
50 実装基板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板上に実装された部品を冷却するためのヒートシンクであって、
前記部品に接する面と逆の面に、高さの異なる複数の溝を有することを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
請求項1に記載されたヒートシンクであって、
前記部品に接する面と逆の面に複数の冷却フィンを有し、かつ、前記冷却フィンと交わる溝は、前記冷却フィンに凹部を設けることにより前記凹部が前記溝の一部を成すように形成されることを特徴とするヒートシンク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたヒートシンクであって、
前記複数の溝は、ヒートシンクの中心位置を通るように設けられていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載されたヒートシンクであって、
前記複数の溝は、ヒートシンクの重心を通るように設けられていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載されたヒートシンクであって、
前記溝は、ヒートシンクを前記部品に固定する押さえ部材を当接させるための溝であって、前記各溝の高さは、ヒートシンクの装着対象である、高さの異なる複数の部品の高さに対応付けられ、対応付けられた部品の高さと溝の高さとを合計した高さが、同じ高さとなることを特徴とするヒートシンク。
【請求項6】
請求項5に記載されたヒートシンクであって、
前記押さえ部材を当接させる溝は、前記押さえ部材からの圧力が前記部品とヒートシンクとの接触面に均等に伝わるように設けられていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項7】
請求項5に記載されたヒートシンクであって、
前記押さえ部材を当接させる溝は、前記押さえ部材からの圧力が、前記部品とヒートシンクとの接触面に均等に伝わるように、前記押さえ部材と接触するように設けられていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項8】
実装基板上に実装された部品を冷却するためのヒートシンクを前記部品に固定するヒートシンク固定方法であって、
前記ヒートシンクの表面に設けられた高さの異なる複数の溝のうち、前記部品の実装基板表面からの高さに応じた溝に押さえ部材を当接させ、
実装基板上に設けられた連結部材に前記押さえ部材を係止することを特徴とするヒートシンク固定方法。
【請求項9】
請求項8に記載されたヒートシンク固定方法であって、
前記部品に対して一定の方向に向けられた前記ヒートシンク上の複数の溝のうち、前記部品の高さに応じた溝に前記押さえ部材を当接させて、前記ヒートシンクを前記部品に装着する際、前記押さえ部材の両端を係止できる実装基板上の位置に、前記連結部材を設けることを特徴とするヒートシンク固定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−146420(P2011−146420A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3789(P2010−3789)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】