ヒートシンク接続体
【課題】プリント基板が実装される電子機器において、電子機器に搭載される電子部品を冷却する際、ヒートシンクを使用するが、電子部品からヒートシンクに伝搬する電磁ノイズによりEMI的な特性を満足させる。
【解決手段】プリント基板6に搭載される電子部品3とヒートシンク4の間に、電磁ノイズがヒートシンク4に導電することを阻止する接地部材1を設け、接地部材1とヒートシンク4の間に、接地部材1からヒートシンク4に電磁ノイズが導電することを抑えるため高抵抗の熱伝導シート2−1によりつなぐことでヒートシンク4からの放射ノイズを低減する。
【解決手段】プリント基板6に搭載される電子部品3とヒートシンク4の間に、電磁ノイズがヒートシンク4に導電することを阻止する接地部材1を設け、接地部材1とヒートシンク4の間に、接地部材1からヒートシンク4に電磁ノイズが導電することを抑えるため高抵抗の熱伝導シート2−1によりつなぐことでヒートシンク4からの放射ノイズを低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク接続体に係り、特にヒートシンクからの放射ノイズを抑制するヒートシンク接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の筐体は、金属が主として使用されていた。しかし、コストとデザインの要求から、プラスチック筐体へと変わってきている。プラスチックは、シールド性能を有していないため、筐体内に搭載される各種電子部品、構造部品からの電磁妨害雑音の放射が問題となってきた。
【0003】
電子機器に搭載されるLSI等の電子部品は、発熱量が大きく、その熱によって電子部品が誤動作するおそれや、破損するおそれがある。そこで、発熱量の大きい電子部品に対して、放熱部品を接触させて冷却する方法がとられている。
【0004】
ヒートシンクの構造は、発熱量の大きい電子部品に接触するベース部と、ベース部から複数の放熱フィンを立設させたものが知られている。高発熱素子からの発熱を速やかに放熱フィンに伝達し、放熱フィンにおいて放熱することができるように、ヒートシンクの材料には、熱伝導性の良好なアルミニウム等の金属を用いる。
LSI等の動作クロックの高速化、高機能化に伴う発熱量の増加により、発熱量の大きい電子部品を冷却するためのヒートシンクも大型化する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−305273号公報
【特許文献2】特開2004−022738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒートシンクは、金属により構成されているため、電子部品と電磁的に結合する。この電磁結合により、電子部品の内部で発生した電磁ノイズがヒートシンクに導電する。アルミニウム等の金属は、良導電体でもあるために、ヒートシンクは、LSI等の電子部品により発生した電磁ノイズの良好なアンテナとして機能してしまう。
【0007】
最近の電子部品の高速化に伴い、電子部品は、多くの高周波数成分を持つようになっている。このため、ヒートシンクのXYZ寸法のいずれかが電子部品のもつ周波数成分で共振する大きさ(波長に対して1/4)と一致する場合、電磁ノイズの放射レベルが高くなる。この結果、従来、あまり問題とされなかったヒートシンクからの電磁ノイズの放射によりEMI的な問題が生じるようになってきた。
【0008】
ここで、図1を参照して、電磁ノイズの伝搬経路を説明する。図1において、電子部品3とヒートシンク4は、熱伝導シート等の熱伝導体を介して接続される。この際、電子部品3とヒートシンク4の距離、熱伝導シート等の熱伝導体の誘電率で決まる静電容量7aを介して、ヒートシンク4に電子部品3の電磁ノイズが矢印Aのように伝導する。ヒートシンク4に伝導した電磁ノイズは、ヒートシンク4とプリント基板6のグランド層6cとの間の静電容量7cを介して矢印Bのように戻ろうとする。しかし、ヒートシンク4とプリント基板6のグランド層6cとの間は、空気を介している。空気は、誘電率が小さいため、ヒートシンク4とプリント基板6のグランド層6c間の静電容量7cは、電子部品3とヒートシンク4間の静電容量7aよりも小さい。このため、電磁ノイズはヒートシンク4から放射する。なお、電子部品3のグランドと、プリント基板6のグランド層6cとは、インダクタンス7eを介して接続されている。
【0009】
ヒートシンクをプリント基板のグランドに接続し、電磁ノイズの放射を抑えようとしても、電子部品、ヒートシンク、プリント基板のグランドの経路で電磁ノイズが導電する。このため、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑えることはできない。
【0010】
ヒートシンクからの電磁ノイズの放射問題を解決する方法として、特許文献1は、ヒートシンクの放熱フィンに、伝熱性の良好な材料により形成される高熱伝導の放熱フィンと、導電抵抗の高い金属材料により形成される高抵抗放熱フィンを混在させ、ヒートシンクのアンテナの効率を下げるEMI低減技術を開示する。
【0011】
特許文献1は、端部の導電抵抗の高い金属材料により形成される放熱フィンからの放射は抑えることができる。しかし、特許文献1は、ベース部からの電磁ノイズの放射を抑えることができない。
【0012】
また、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射問題を解決する方法として、特許文献2は、電子部品とヒートシンクの間に熱伝導性を有する電磁ノイズ吸収シートを使用し、電子部品の電磁ノイズがヒートシンクに導電することを阻止し、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑える技術を開示する。
【0013】
特許文献2は、電子部品とヒートシンクの間に電磁ノイズ吸収シートを配置する。しかし、電子部品とヒートシンク間で生じる静電容量により、電子部品の電磁ノイズがヒートシンクに導電する場合、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑えることができない。
【0014】
本発明は、以上の問題を解決すべくなされたものである。本発明は、電子部品からヒートシンクに電磁ノイズが導電するのを抑えることによりヒートシンクからの電磁ノイズの放射レベルを下げることができるヒートシンクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、電子部品とヒートシンクの間にプリント基板のグランドに接続された導電性の接地部材を配置する。接地部材は、電子部品との静電容量を介して駆動されるが、接地部材はプリント基板のグランドに接続されているため、電磁ノイズは接地部材から電子部品の経路を導電する。このため、ヒートシンクは、電子部品の電磁ノイズによって直接駆動されることがなくなり、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑えることができる。
【0016】
すなわち上述した課題は、プリント基板と、このプリント基板に実装された電子部品と、この電子部品に熱的に接続されたヒートシンクとからなるヒートシンク接続体において、電子部品とヒートシンクとの間に配置された金属部材と、この金属部材とヒートシンクの間に配置された熱伝導シートとを更に含み、金属部材は、プリント基板のプリント基板のグランド層と接続され、熱伝導シートは、その膜厚方向において、高抵抗であるヒートシンク接続体により、解決できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に拠れば、ヒートシンクのアンテナ効果を低減させ、電磁ノイズの放射を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】接地部材がない場合の電磁ノイズの伝導経路を示す説明図である。
【図2】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図である。
【図3】図2のAーA’断面図である。
【図4】接地部材がある場合の電磁ノイズの伝導経路を示す説明図である。
【図5】熱伝導シートを介さず接地部材を接続時の実施例を示す断面図である。
【図6】接地部材の斜視図である。
【図7】開口部がある接地部材の斜視図である。
【図8】接地部材とプリント基板との接続を説明する斜視図である。
【図9】接地部材とプリント基板との接続を説明する平面図である。
【図10】接地部材とグランドスルーホールの接続位置を変える抵抗の組み合わせを説明する図である。
【図11】状態5での放射ノイズ測定結果である。
【図12】状態10での放射ノイズ測定結果である。
【図13】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その2)である。
【図14】線材を使った接地部材の斜視図である。
【図15】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その3)である。
【図16】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その4)である。
【図17】接地部材の固定方法を説明する斜視図である。
【図18】図17のBーB’断面図である。
【図19】接地部材の他の固定方法を説明する斜視図である。
【図20】図19のCーC’断面図である。
【図21】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その5)である。
【図22】図21のDーD’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
「 ヒートシンクからの電磁ノイズの放射レベルを下げるという目的を、ヒートシンクと電子部品の間に電磁ノイズがヒートシンクに導電することを阻止する接地部材を設け、接地部材とヒートシンクの間に絶縁性を有するか高抵抗の熱伝導シートを設けることにより実現した実施例を示す。」
図2において、ヒートシンク接続体100は、プリント基板6上に配置される電子部品3と、ヒートシンク4の間に接地部材1を備える。接地部材1は、鉄にニッケルメッキを施す等の導電性を有する材料を用いる。接地部材1は、開口部を持っても良いし、金網等の材料を使用しても良い。
【0020】
接地部材1は、プリント基板6のグランドスルーホール6aに、はんだ付け、圧入等により接続する。接続部材1は、電子部品3で発生する電磁ノイズをプリント基板6のグランドスルーホール6aへ導電させ、ヒートシンク4に導電するのを妨げる効果を持つ。
【0021】
接地部材1の設置目的は、電子部品3から直接的に空間を伝わり放射する電磁ノイズを抑えることではなく、接地部材1からヒートシンク4に電磁ノイズが導電することを抑えることである。このため、接地部材1とプリント基板6のグランドスルーホール6aとの接続の間隔は、電子部品のシールドを考慮する際に用いられる波長の1/20から1/10の間隔より大きくて良い。
【0022】
電子部品3の発熱をヒートシンク4に伝えるため、電子部品3と接地部材1との間には熱伝導率が高い材料を用いた熱伝導シート2−2を介して接触させる。ヒートシンク4と接地部材1との間には熱伝導率が高い材料を用いた熱伝導シート2−1を介して接触させる。
【0023】
金属であるヒートシンク4と接地部材1との間を接続する熱伝導シート2−1の抵抗が低いと、電子部品3から接地部材1、熱伝導シート2−1を介して、ヒートシンク4に電磁ノイズが導電する。このため、ヒートシンクから電磁ノイズが放射される。すなわち、ヒートシンク4からの電磁ノイズの放射を抑えるため、熱伝導シート2−1は、絶縁性を有するか高抵抗(1kΩ以上)である必要がある。
【0024】
ヒートシンク4は、振動防止を図ってバネねじ5でプリント基板6に固定される。ヒートシンク4は、プリント基板6のグランドスルーホール6aに積極的に接続する必要はない。一方、接地部材1は、導電性が高いものを使用し、プリント基板6のグランドスルーホール6aに接続する必要がある。
【0025】
図3を参照して、図2のA−A’断面を説明する。図3において、ヒートシンク接続体100は、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材1と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。また、電子部品3は、半導体パッケージ91と、半導体チップ90とから構成されている。接地部材1は、熱伝導シート2に挟まれて、電子部品3で発生した熱をヒートシンク4に伝達する。また、接地部材1は、グランドスルーホール6aを介してプリント基板6の内層グランド層6cに接続されている。
【0026】
図4を参照して、接地部材がある場合の電磁ノイズの伝導経路を説明する。図4において、電子部品3とヒートシンク4の間にプリント基板6のグランド層6cに接続された導電性の接地部材1が配置されている。接地部材1は、電子部品3との静電容量7aを介して駆動され、矢印Cの経路で電磁ノイズが伝導する。接地部材1は、プリント基板6のグランド層6cに接続されているため、電磁ノイズは、接地部材1からプリント基板6のグランド層6cに矢印Dの経路で導電する。このため、ヒートシンク4は、電子部品3の電磁ノイズによって直接駆動されることがなくなり、ヒートシンク4からの電磁ノイズの放射を抑えることができる。なお、接地部材1とヒートシンク4との間は、静電容量7hを介して接続されている。電子部品3のグランドと、プリント基板6のグランド層6cとは、インダクタンス7eを介して接続されている。接地部材1と、プリント基板6のグランド層6cとは、インダクタンス7gを介して接続されている。
【0027】
図5を参照して、他の実施例のヒートシンク取付体100Aの断面図を説明する。図5において、ヒートシンク接続体100は、プリント基板6と、電子部品3と、接地部材1と、熱伝導シート2と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。また、電子部品3は、半導体パッケージ91と、半導体チップ90とから構成されている。接地部材1は、電子部品3で発生した熱を直接吸熱して、熱伝導シート2−1を介してヒートシンク4に放熱する。また、接地部材1は、グランドスルーホール6aを介してプリント基板6の内層グランド層6cに接続されている。
【0028】
プリント基板6上に配置される電子部品3と、接地部材1との間は熱伝導シートを介さず接触させても良い。ただし、接地部材1とヒートシンク4は熱伝導シート2−1を介して接触させる。熱伝導シート2−1は、電子部品3からヒートシンク4への電磁ノイズの導電を阻止するため絶縁性を有するか高抵抗である必要がある。
【0029】
図6を参照して、接地部材の斜視図を説明する。図6において、接地部材1は、鉄にニッケルメッキを施す等の導電性を有する材料を用いる。接地部材1は、プリント基板に取りつけ可能な接続部1aを持つ構造をとる。図6では接地部材の接続部1aは4箇所設けているが、接続部の数は増減させても良い。
【0030】
図7を参照して、他の接地部材の斜視図を説明する。図7において、接地部材8は、開口部8bを設けて良い。図7では開口部8bは円形だが、矩形等他の形状でも良い。
【0031】
接地部材8に設ける開口部8bは、電子部品の放熱にヒートシンクを付ける必要がない可能性がある場合、開口部から電子部品の熱を逃がせるようにするためのものである。接地部材8に開口8bを設けることにより、プリント基板6と接地部材8で形成される空間の放熱を効率よく実施することができる。
【0032】
図8を参照して、接地部材とプリント基板接続の他の実施例を説明する。図8において、接地部材1は、プリント基板6のグランドスルーホール6aとの接続箇所を変更可能とするために、プリント基板6は、グランドスルーホール6aと接続するパターン10、接地部材1と接続されているパターン11を設ける。接地部材1とプリント基板6のグランドは、チップ抵抗12を介してグランドスルーホール6aに接続する。図8において、右下の接続部にはチップ抵抗12a、左下の接続部にはチップ抵抗12bが接続されている。一方、左上の接続部、右上の接続部には、チップ抵抗が接続されていない。
なお、チップ抵抗の接続されていない左上の接続部、右上の接続部にチップ抵抗を接続するとき、それらを順にチップ抵抗12c、チップ抵抗12dと呼ぶことにする。
【0033】
図9を参照して、接地部材1とプリント基板のグランドスルーホール6aとの接触方法について説明する。図9において、接地部材1とプリント基板のグランドスルーホール6aは、接地部材1と部品12を接続するパターン11、部品12とグランドスルーホール6aを接続するパターン10により接続される。接地部材1とグランドスルーホール6aの接続位置を変えることにより、接地部材1からヒートシンク4に導電する電磁ノイズの大きさが変わる。このため、このように接続位置を調整可能としたのは、特定の周波数に対して効果を得たい場合に調整可能としたものである。
【0034】
図10を参照して、接地部材1とグランドスルーホール6aの接続位置を変えるチップ抵抗12を4箇所設けた場合の組み合わせを説明する。チップ抵抗12の接続可能箇所は、4箇所のため、組み合わせられる状態は、16(2×2×2×2)状態となる。これら16状態で、チップ抵抗12a〜12dを搭載/非搭載したときの放射を観測する。
【0035】
この観測結果を、図11と図12を参照して、説明する。図11および図12において、縦軸は電界強度、横軸は周波数である。図中の破線は規格値である。図11は、図10の状態5での放射ノイズ測定結果である。一方、図12は、図10の状態10での放射ノイズ測定結果である。
図11の状態5では、放射ノイズの測定結果が規格値を満たさない周波数がある。これに対して、図12の状態10では、規格値を満足する。すなわち、チップ抵抗12を取り付けない状態1、チップ抵抗を1個だけ取り付ける状態2、状態5、状態9から、チップ抵抗12a〜12dの搭載で有効な周波数の検討をつけて、詳細実験すればよい。
【0036】
図13を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図13において、ヒートシンク接続体100Bは、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材21と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。プリント基板6上に配置される電子部品3と、ヒートシンク4の間に、電磁ノイズがヒートシンク4に導電するのを阻止させる接地部材21を設ける。接地部材21とプリント基板6のグランドは、導電性の線材22を介して接続する。線材22は、プリント基板6に設けるグランドスルーホール6aにはんだ付けまたは圧入により接続する。線材22は、プリント基板6に設けるグランドパターン6bにはんだ等により接続してもよい。
【0037】
図14を参照して、ヒートシンク接続体100bの接地部材21を説明する。図14において、接地部材21に接続される線材22は、接続部23ではんだ付け、または、溶接により低抵抗で接地部材21に接続される。本実施例は、電子部品3上に設ける接地部材21の接続位置を容易にかえられるようにするために、接地部材21の任意の位置と、プリント基板6のグランドスルーホール6aまたはグランドパターン6bを導電性の線材で接続とした。接地部材21とグランドスルーホール6aまたはグランドパターン6bの接続位置を変えることにより、接地部材1からヒートシンク4に導電する電磁ノイズの大きさが変わる。このため、特定の周波数に対して効果を得たい場合に調整可能としたものである。なお、プリント基板6のグランドスルーホール6aまたはグランドパターン6bは、任意の位置で接続できるように複数の箇所に設けて良い。
【0038】
図15を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図15において、ヒートシンク接続体100Cは、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材31と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。接地部材31は、開口部31aを設けている。接地部材31に接続される線材22は、接続部23ではんだ付けまたは溶接により低抵抗で接地部材31に接続される。
【0039】
図16を参照して、更に他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図16において、ヒートシンク接続体100Dは、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材32と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。接地部材32は、金網を使用している。接地部材32に接続される線材22は、接続部23ではんだ、または、溶接等により低抵抗で接地部材32に接続される。
【0040】
図17を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図17において、ヒートシンク接続体100Eは、プリント基板6と、電子部品3と、熱伝導シート2−2と、接地部材41と、図示しないヒートシンク4とバネねじ5とから構成されている。接地部材41は、プリント基板6上に設けたコ形状の部材42によりプリント基板6のグランドパターン6bに接続される。
【0041】
図18を参照して、図17のB−B’断面を説明する。図18において、コ形状の部材42は、プリント基板6に面付け実装されている。しかし、部材42は、プリント基板6にグランドスルーホールに挿入実装してもよい。
【0042】
図19を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図19において、ヒートシンク接続体100Fは、プリント基板6と、電子部品3と、熱伝導シート2−2と、接地部材51と、図示しないヒートシンク4とバネねじ5とから構成されている。接地部材51は、プリント基板6上に設けたU形状の部材52によりプリント基板6のグランドパターン6bに接続される。
【0043】
図20を参照して、図19のC−C’断面を説明する。図20において、U形状の部材52は、プリント基板6に面付け実装されている。しかし、部材52は、プリント基板6にグランドスルーホールに挿入実装してもよい。
【0044】
図21を参照して、更に他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図21において、ヒートシンク接続体100Gは、プリント基板6と、電子部品3Aと、2層の熱伝導シート2と、接地部材61と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。電子部品3Aは、メタルリッドまたはレジンによる封止のない電子部品である。
【0045】
一般に、高発熱の電子部品3に対してヒートシンク4を直接取り付けると、半導体チップ90にバネねじ5とプリント基板6間の応力がかかるため、半導体チップ90にクラックがはいり故障の原因となる。このため、半導体チップ90を保護する目的で、半導体チップ90はメタルリッド、レジン等のパッケージにより封止される。
【0046】
しかし、バネ性を有する接地部材61を使用することにより半導体チップ60にかかる応力を低減可能なため、メタルリッド、レジン等のパッケージによる封止をしなくてもヒートシンク4の取り付けが可能である。
【0047】
図21において、接地部材61は、ベリリウム銅等のようにバネ特性に優れかつ良伝導性を有する材料を用いる。電子部品3Aと接地部材61との間には熱伝導率が高い材料を用いた熱伝導シート2−2を介して接触させる。ヒートシンク4と接地部材61との間は、熱伝導シート2−1を介して接触させる。ヒートシンク4と接地部材61との間の熱伝導シート2−1は、電子部品3Aからの電磁ノイズの導電を阻止するため絶縁性を有するか高抵抗(1kΩ以上)とする。
【0048】
接地部材61を設ける目的は、電子部品3Aから直接的に空間を伝わる電磁ノイズの放射を抑えることではなく、接地部材61からヒートシンク4に電磁ノイズが導電することを抑えることである。このため、接地部材1とプリント基板6のグランドスルーホール6aとの接続間隔は、電子部品3Aのシールドを考慮する際に用いられる波長の1/20から1/10の間隔より大きくて良い。
【0049】
ヒートシンク4は、バネねじ5でプリント基板6に固定する。しかし、ヒートシンク4はプリント基板6のグランドに積極的に接続する必要はない。接地部材61の足61aは、プリント基板6上に設けたグランドパターン6aに接触させる。ヒートシンク4は、電子部品3Aに密着するようにバネねじ5を介してプリント基板6に固定する。
【0050】
図22を参照して、図21のD−D’断面を説明する。図22において、電子部品3Aの半導体チップ90に熱伝導シート2−2が直接接触している。この結果、ヒートシンク接続体100Gは、熱抵抗が小さく、放熱効率が高い。ヒートシンク接続体100Gは、接地部材61にバネ性を持たせることにより、ヒートシンク4を取り付ける際に電子部品3Aにかかる応力を緩和しつつ、ヒートシンク4からの電磁ノイズの放射も低下させる構造を実現できる。
【0051】
本実施例に拠れば、接地部材にバネ性を持たせることにより、ヒートシンクを取り付ける際に電子部品にかかる応力を緩和しつつ、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射も低下させることが可能である。電子部品にかかる応力を緩和することができるため、これまで、ヒートシンクを直接取り付けた場合、チップにクラックが入る等の信頼性低下を防ぐため必要であったメタルリッド、樹脂等による半導体チップの封止を実施する必要がなくなるため、安価なパッケージを使用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1、8、21、31、32、41、51、61…接地部材、2…熱伝導シート、3…電子部品、4…ヒートシンク、5…バネねじ、6…プリント基板、10…グランドパターン、11…接続パターン、12…チップ抵抗、22…導電性の線材、23…接地板と線材の接続部、42…コ形状の部材、52…U形状の部材、90…半導体チップ、91…パッケージ、1a…接続部、6a…グランドスルーホール、6b…グランドパターン、6c…プリント基板6のグランド層、8a…接地部材の開口部、31a…接地部材の開口部、7a…ヒートシンクと電子部品間の静電容量、7c…プリント基板のグランド層とヒートシンク間の静電容量、7e…電子部品のグランドとプリント基板のグランド層との間のインダクタンス、7g…接地部材とプリント基板のグランド層との間のインダクタンス、7h…接地部材とヒートシンク間の静電容量、100…ヒートシンク接続体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク接続体に係り、特にヒートシンクからの放射ノイズを抑制するヒートシンク接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の筐体は、金属が主として使用されていた。しかし、コストとデザインの要求から、プラスチック筐体へと変わってきている。プラスチックは、シールド性能を有していないため、筐体内に搭載される各種電子部品、構造部品からの電磁妨害雑音の放射が問題となってきた。
【0003】
電子機器に搭載されるLSI等の電子部品は、発熱量が大きく、その熱によって電子部品が誤動作するおそれや、破損するおそれがある。そこで、発熱量の大きい電子部品に対して、放熱部品を接触させて冷却する方法がとられている。
【0004】
ヒートシンクの構造は、発熱量の大きい電子部品に接触するベース部と、ベース部から複数の放熱フィンを立設させたものが知られている。高発熱素子からの発熱を速やかに放熱フィンに伝達し、放熱フィンにおいて放熱することができるように、ヒートシンクの材料には、熱伝導性の良好なアルミニウム等の金属を用いる。
LSI等の動作クロックの高速化、高機能化に伴う発熱量の増加により、発熱量の大きい電子部品を冷却するためのヒートシンクも大型化する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−305273号公報
【特許文献2】特開2004−022738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒートシンクは、金属により構成されているため、電子部品と電磁的に結合する。この電磁結合により、電子部品の内部で発生した電磁ノイズがヒートシンクに導電する。アルミニウム等の金属は、良導電体でもあるために、ヒートシンクは、LSI等の電子部品により発生した電磁ノイズの良好なアンテナとして機能してしまう。
【0007】
最近の電子部品の高速化に伴い、電子部品は、多くの高周波数成分を持つようになっている。このため、ヒートシンクのXYZ寸法のいずれかが電子部品のもつ周波数成分で共振する大きさ(波長に対して1/4)と一致する場合、電磁ノイズの放射レベルが高くなる。この結果、従来、あまり問題とされなかったヒートシンクからの電磁ノイズの放射によりEMI的な問題が生じるようになってきた。
【0008】
ここで、図1を参照して、電磁ノイズの伝搬経路を説明する。図1において、電子部品3とヒートシンク4は、熱伝導シート等の熱伝導体を介して接続される。この際、電子部品3とヒートシンク4の距離、熱伝導シート等の熱伝導体の誘電率で決まる静電容量7aを介して、ヒートシンク4に電子部品3の電磁ノイズが矢印Aのように伝導する。ヒートシンク4に伝導した電磁ノイズは、ヒートシンク4とプリント基板6のグランド層6cとの間の静電容量7cを介して矢印Bのように戻ろうとする。しかし、ヒートシンク4とプリント基板6のグランド層6cとの間は、空気を介している。空気は、誘電率が小さいため、ヒートシンク4とプリント基板6のグランド層6c間の静電容量7cは、電子部品3とヒートシンク4間の静電容量7aよりも小さい。このため、電磁ノイズはヒートシンク4から放射する。なお、電子部品3のグランドと、プリント基板6のグランド層6cとは、インダクタンス7eを介して接続されている。
【0009】
ヒートシンクをプリント基板のグランドに接続し、電磁ノイズの放射を抑えようとしても、電子部品、ヒートシンク、プリント基板のグランドの経路で電磁ノイズが導電する。このため、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑えることはできない。
【0010】
ヒートシンクからの電磁ノイズの放射問題を解決する方法として、特許文献1は、ヒートシンクの放熱フィンに、伝熱性の良好な材料により形成される高熱伝導の放熱フィンと、導電抵抗の高い金属材料により形成される高抵抗放熱フィンを混在させ、ヒートシンクのアンテナの効率を下げるEMI低減技術を開示する。
【0011】
特許文献1は、端部の導電抵抗の高い金属材料により形成される放熱フィンからの放射は抑えることができる。しかし、特許文献1は、ベース部からの電磁ノイズの放射を抑えることができない。
【0012】
また、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射問題を解決する方法として、特許文献2は、電子部品とヒートシンクの間に熱伝導性を有する電磁ノイズ吸収シートを使用し、電子部品の電磁ノイズがヒートシンクに導電することを阻止し、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑える技術を開示する。
【0013】
特許文献2は、電子部品とヒートシンクの間に電磁ノイズ吸収シートを配置する。しかし、電子部品とヒートシンク間で生じる静電容量により、電子部品の電磁ノイズがヒートシンクに導電する場合、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑えることができない。
【0014】
本発明は、以上の問題を解決すべくなされたものである。本発明は、電子部品からヒートシンクに電磁ノイズが導電するのを抑えることによりヒートシンクからの電磁ノイズの放射レベルを下げることができるヒートシンクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、電子部品とヒートシンクの間にプリント基板のグランドに接続された導電性の接地部材を配置する。接地部材は、電子部品との静電容量を介して駆動されるが、接地部材はプリント基板のグランドに接続されているため、電磁ノイズは接地部材から電子部品の経路を導電する。このため、ヒートシンクは、電子部品の電磁ノイズによって直接駆動されることがなくなり、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射を抑えることができる。
【0016】
すなわち上述した課題は、プリント基板と、このプリント基板に実装された電子部品と、この電子部品に熱的に接続されたヒートシンクとからなるヒートシンク接続体において、電子部品とヒートシンクとの間に配置された金属部材と、この金属部材とヒートシンクの間に配置された熱伝導シートとを更に含み、金属部材は、プリント基板のプリント基板のグランド層と接続され、熱伝導シートは、その膜厚方向において、高抵抗であるヒートシンク接続体により、解決できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に拠れば、ヒートシンクのアンテナ効果を低減させ、電磁ノイズの放射を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】接地部材がない場合の電磁ノイズの伝導経路を示す説明図である。
【図2】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図である。
【図3】図2のAーA’断面図である。
【図4】接地部材がある場合の電磁ノイズの伝導経路を示す説明図である。
【図5】熱伝導シートを介さず接地部材を接続時の実施例を示す断面図である。
【図6】接地部材の斜視図である。
【図7】開口部がある接地部材の斜視図である。
【図8】接地部材とプリント基板との接続を説明する斜視図である。
【図9】接地部材とプリント基板との接続を説明する平面図である。
【図10】接地部材とグランドスルーホールの接続位置を変える抵抗の組み合わせを説明する図である。
【図11】状態5での放射ノイズ測定結果である。
【図12】状態10での放射ノイズ測定結果である。
【図13】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その2)である。
【図14】線材を使った接地部材の斜視図である。
【図15】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その3)である。
【図16】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その4)である。
【図17】接地部材の固定方法を説明する斜視図である。
【図18】図17のBーB’断面図である。
【図19】接地部材の他の固定方法を説明する斜視図である。
【図20】図19のCーC’断面図である。
【図21】ヒートシンクの電磁波対策構造を説明するヒートシンク接続体の組み立て斜視図(その5)である。
【図22】図21のDーD’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
「 ヒートシンクからの電磁ノイズの放射レベルを下げるという目的を、ヒートシンクと電子部品の間に電磁ノイズがヒートシンクに導電することを阻止する接地部材を設け、接地部材とヒートシンクの間に絶縁性を有するか高抵抗の熱伝導シートを設けることにより実現した実施例を示す。」
図2において、ヒートシンク接続体100は、プリント基板6上に配置される電子部品3と、ヒートシンク4の間に接地部材1を備える。接地部材1は、鉄にニッケルメッキを施す等の導電性を有する材料を用いる。接地部材1は、開口部を持っても良いし、金網等の材料を使用しても良い。
【0020】
接地部材1は、プリント基板6のグランドスルーホール6aに、はんだ付け、圧入等により接続する。接続部材1は、電子部品3で発生する電磁ノイズをプリント基板6のグランドスルーホール6aへ導電させ、ヒートシンク4に導電するのを妨げる効果を持つ。
【0021】
接地部材1の設置目的は、電子部品3から直接的に空間を伝わり放射する電磁ノイズを抑えることではなく、接地部材1からヒートシンク4に電磁ノイズが導電することを抑えることである。このため、接地部材1とプリント基板6のグランドスルーホール6aとの接続の間隔は、電子部品のシールドを考慮する際に用いられる波長の1/20から1/10の間隔より大きくて良い。
【0022】
電子部品3の発熱をヒートシンク4に伝えるため、電子部品3と接地部材1との間には熱伝導率が高い材料を用いた熱伝導シート2−2を介して接触させる。ヒートシンク4と接地部材1との間には熱伝導率が高い材料を用いた熱伝導シート2−1を介して接触させる。
【0023】
金属であるヒートシンク4と接地部材1との間を接続する熱伝導シート2−1の抵抗が低いと、電子部品3から接地部材1、熱伝導シート2−1を介して、ヒートシンク4に電磁ノイズが導電する。このため、ヒートシンクから電磁ノイズが放射される。すなわち、ヒートシンク4からの電磁ノイズの放射を抑えるため、熱伝導シート2−1は、絶縁性を有するか高抵抗(1kΩ以上)である必要がある。
【0024】
ヒートシンク4は、振動防止を図ってバネねじ5でプリント基板6に固定される。ヒートシンク4は、プリント基板6のグランドスルーホール6aに積極的に接続する必要はない。一方、接地部材1は、導電性が高いものを使用し、プリント基板6のグランドスルーホール6aに接続する必要がある。
【0025】
図3を参照して、図2のA−A’断面を説明する。図3において、ヒートシンク接続体100は、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材1と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。また、電子部品3は、半導体パッケージ91と、半導体チップ90とから構成されている。接地部材1は、熱伝導シート2に挟まれて、電子部品3で発生した熱をヒートシンク4に伝達する。また、接地部材1は、グランドスルーホール6aを介してプリント基板6の内層グランド層6cに接続されている。
【0026】
図4を参照して、接地部材がある場合の電磁ノイズの伝導経路を説明する。図4において、電子部品3とヒートシンク4の間にプリント基板6のグランド層6cに接続された導電性の接地部材1が配置されている。接地部材1は、電子部品3との静電容量7aを介して駆動され、矢印Cの経路で電磁ノイズが伝導する。接地部材1は、プリント基板6のグランド層6cに接続されているため、電磁ノイズは、接地部材1からプリント基板6のグランド層6cに矢印Dの経路で導電する。このため、ヒートシンク4は、電子部品3の電磁ノイズによって直接駆動されることがなくなり、ヒートシンク4からの電磁ノイズの放射を抑えることができる。なお、接地部材1とヒートシンク4との間は、静電容量7hを介して接続されている。電子部品3のグランドと、プリント基板6のグランド層6cとは、インダクタンス7eを介して接続されている。接地部材1と、プリント基板6のグランド層6cとは、インダクタンス7gを介して接続されている。
【0027】
図5を参照して、他の実施例のヒートシンク取付体100Aの断面図を説明する。図5において、ヒートシンク接続体100は、プリント基板6と、電子部品3と、接地部材1と、熱伝導シート2と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。また、電子部品3は、半導体パッケージ91と、半導体チップ90とから構成されている。接地部材1は、電子部品3で発生した熱を直接吸熱して、熱伝導シート2−1を介してヒートシンク4に放熱する。また、接地部材1は、グランドスルーホール6aを介してプリント基板6の内層グランド層6cに接続されている。
【0028】
プリント基板6上に配置される電子部品3と、接地部材1との間は熱伝導シートを介さず接触させても良い。ただし、接地部材1とヒートシンク4は熱伝導シート2−1を介して接触させる。熱伝導シート2−1は、電子部品3からヒートシンク4への電磁ノイズの導電を阻止するため絶縁性を有するか高抵抗である必要がある。
【0029】
図6を参照して、接地部材の斜視図を説明する。図6において、接地部材1は、鉄にニッケルメッキを施す等の導電性を有する材料を用いる。接地部材1は、プリント基板に取りつけ可能な接続部1aを持つ構造をとる。図6では接地部材の接続部1aは4箇所設けているが、接続部の数は増減させても良い。
【0030】
図7を参照して、他の接地部材の斜視図を説明する。図7において、接地部材8は、開口部8bを設けて良い。図7では開口部8bは円形だが、矩形等他の形状でも良い。
【0031】
接地部材8に設ける開口部8bは、電子部品の放熱にヒートシンクを付ける必要がない可能性がある場合、開口部から電子部品の熱を逃がせるようにするためのものである。接地部材8に開口8bを設けることにより、プリント基板6と接地部材8で形成される空間の放熱を効率よく実施することができる。
【0032】
図8を参照して、接地部材とプリント基板接続の他の実施例を説明する。図8において、接地部材1は、プリント基板6のグランドスルーホール6aとの接続箇所を変更可能とするために、プリント基板6は、グランドスルーホール6aと接続するパターン10、接地部材1と接続されているパターン11を設ける。接地部材1とプリント基板6のグランドは、チップ抵抗12を介してグランドスルーホール6aに接続する。図8において、右下の接続部にはチップ抵抗12a、左下の接続部にはチップ抵抗12bが接続されている。一方、左上の接続部、右上の接続部には、チップ抵抗が接続されていない。
なお、チップ抵抗の接続されていない左上の接続部、右上の接続部にチップ抵抗を接続するとき、それらを順にチップ抵抗12c、チップ抵抗12dと呼ぶことにする。
【0033】
図9を参照して、接地部材1とプリント基板のグランドスルーホール6aとの接触方法について説明する。図9において、接地部材1とプリント基板のグランドスルーホール6aは、接地部材1と部品12を接続するパターン11、部品12とグランドスルーホール6aを接続するパターン10により接続される。接地部材1とグランドスルーホール6aの接続位置を変えることにより、接地部材1からヒートシンク4に導電する電磁ノイズの大きさが変わる。このため、このように接続位置を調整可能としたのは、特定の周波数に対して効果を得たい場合に調整可能としたものである。
【0034】
図10を参照して、接地部材1とグランドスルーホール6aの接続位置を変えるチップ抵抗12を4箇所設けた場合の組み合わせを説明する。チップ抵抗12の接続可能箇所は、4箇所のため、組み合わせられる状態は、16(2×2×2×2)状態となる。これら16状態で、チップ抵抗12a〜12dを搭載/非搭載したときの放射を観測する。
【0035】
この観測結果を、図11と図12を参照して、説明する。図11および図12において、縦軸は電界強度、横軸は周波数である。図中の破線は規格値である。図11は、図10の状態5での放射ノイズ測定結果である。一方、図12は、図10の状態10での放射ノイズ測定結果である。
図11の状態5では、放射ノイズの測定結果が規格値を満たさない周波数がある。これに対して、図12の状態10では、規格値を満足する。すなわち、チップ抵抗12を取り付けない状態1、チップ抵抗を1個だけ取り付ける状態2、状態5、状態9から、チップ抵抗12a〜12dの搭載で有効な周波数の検討をつけて、詳細実験すればよい。
【0036】
図13を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図13において、ヒートシンク接続体100Bは、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材21と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。プリント基板6上に配置される電子部品3と、ヒートシンク4の間に、電磁ノイズがヒートシンク4に導電するのを阻止させる接地部材21を設ける。接地部材21とプリント基板6のグランドは、導電性の線材22を介して接続する。線材22は、プリント基板6に設けるグランドスルーホール6aにはんだ付けまたは圧入により接続する。線材22は、プリント基板6に設けるグランドパターン6bにはんだ等により接続してもよい。
【0037】
図14を参照して、ヒートシンク接続体100bの接地部材21を説明する。図14において、接地部材21に接続される線材22は、接続部23ではんだ付け、または、溶接により低抵抗で接地部材21に接続される。本実施例は、電子部品3上に設ける接地部材21の接続位置を容易にかえられるようにするために、接地部材21の任意の位置と、プリント基板6のグランドスルーホール6aまたはグランドパターン6bを導電性の線材で接続とした。接地部材21とグランドスルーホール6aまたはグランドパターン6bの接続位置を変えることにより、接地部材1からヒートシンク4に導電する電磁ノイズの大きさが変わる。このため、特定の周波数に対して効果を得たい場合に調整可能としたものである。なお、プリント基板6のグランドスルーホール6aまたはグランドパターン6bは、任意の位置で接続できるように複数の箇所に設けて良い。
【0038】
図15を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図15において、ヒートシンク接続体100Cは、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材31と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。接地部材31は、開口部31aを設けている。接地部材31に接続される線材22は、接続部23ではんだ付けまたは溶接により低抵抗で接地部材31に接続される。
【0039】
図16を参照して、更に他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図16において、ヒートシンク接続体100Dは、プリント基板6と、電子部品3と、2層の熱伝導シート2と、接地部材32と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。接地部材32は、金網を使用している。接地部材32に接続される線材22は、接続部23ではんだ、または、溶接等により低抵抗で接地部材32に接続される。
【0040】
図17を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図17において、ヒートシンク接続体100Eは、プリント基板6と、電子部品3と、熱伝導シート2−2と、接地部材41と、図示しないヒートシンク4とバネねじ5とから構成されている。接地部材41は、プリント基板6上に設けたコ形状の部材42によりプリント基板6のグランドパターン6bに接続される。
【0041】
図18を参照して、図17のB−B’断面を説明する。図18において、コ形状の部材42は、プリント基板6に面付け実装されている。しかし、部材42は、プリント基板6にグランドスルーホールに挿入実装してもよい。
【0042】
図19を参照して、他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図19において、ヒートシンク接続体100Fは、プリント基板6と、電子部品3と、熱伝導シート2−2と、接地部材51と、図示しないヒートシンク4とバネねじ5とから構成されている。接地部材51は、プリント基板6上に設けたU形状の部材52によりプリント基板6のグランドパターン6bに接続される。
【0043】
図20を参照して、図19のC−C’断面を説明する。図20において、U形状の部材52は、プリント基板6に面付け実装されている。しかし、部材52は、プリント基板6にグランドスルーホールに挿入実装してもよい。
【0044】
図21を参照して、更に他のヒートシンク接続体の実施例を説明する。図21において、ヒートシンク接続体100Gは、プリント基板6と、電子部品3Aと、2層の熱伝導シート2と、接地部材61と、ヒートシンク4と、バネねじ5とから構成されている。電子部品3Aは、メタルリッドまたはレジンによる封止のない電子部品である。
【0045】
一般に、高発熱の電子部品3に対してヒートシンク4を直接取り付けると、半導体チップ90にバネねじ5とプリント基板6間の応力がかかるため、半導体チップ90にクラックがはいり故障の原因となる。このため、半導体チップ90を保護する目的で、半導体チップ90はメタルリッド、レジン等のパッケージにより封止される。
【0046】
しかし、バネ性を有する接地部材61を使用することにより半導体チップ60にかかる応力を低減可能なため、メタルリッド、レジン等のパッケージによる封止をしなくてもヒートシンク4の取り付けが可能である。
【0047】
図21において、接地部材61は、ベリリウム銅等のようにバネ特性に優れかつ良伝導性を有する材料を用いる。電子部品3Aと接地部材61との間には熱伝導率が高い材料を用いた熱伝導シート2−2を介して接触させる。ヒートシンク4と接地部材61との間は、熱伝導シート2−1を介して接触させる。ヒートシンク4と接地部材61との間の熱伝導シート2−1は、電子部品3Aからの電磁ノイズの導電を阻止するため絶縁性を有するか高抵抗(1kΩ以上)とする。
【0048】
接地部材61を設ける目的は、電子部品3Aから直接的に空間を伝わる電磁ノイズの放射を抑えることではなく、接地部材61からヒートシンク4に電磁ノイズが導電することを抑えることである。このため、接地部材1とプリント基板6のグランドスルーホール6aとの接続間隔は、電子部品3Aのシールドを考慮する際に用いられる波長の1/20から1/10の間隔より大きくて良い。
【0049】
ヒートシンク4は、バネねじ5でプリント基板6に固定する。しかし、ヒートシンク4はプリント基板6のグランドに積極的に接続する必要はない。接地部材61の足61aは、プリント基板6上に設けたグランドパターン6aに接触させる。ヒートシンク4は、電子部品3Aに密着するようにバネねじ5を介してプリント基板6に固定する。
【0050】
図22を参照して、図21のD−D’断面を説明する。図22において、電子部品3Aの半導体チップ90に熱伝導シート2−2が直接接触している。この結果、ヒートシンク接続体100Gは、熱抵抗が小さく、放熱効率が高い。ヒートシンク接続体100Gは、接地部材61にバネ性を持たせることにより、ヒートシンク4を取り付ける際に電子部品3Aにかかる応力を緩和しつつ、ヒートシンク4からの電磁ノイズの放射も低下させる構造を実現できる。
【0051】
本実施例に拠れば、接地部材にバネ性を持たせることにより、ヒートシンクを取り付ける際に電子部品にかかる応力を緩和しつつ、ヒートシンクからの電磁ノイズの放射も低下させることが可能である。電子部品にかかる応力を緩和することができるため、これまで、ヒートシンクを直接取り付けた場合、チップにクラックが入る等の信頼性低下を防ぐため必要であったメタルリッド、樹脂等による半導体チップの封止を実施する必要がなくなるため、安価なパッケージを使用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1、8、21、31、32、41、51、61…接地部材、2…熱伝導シート、3…電子部品、4…ヒートシンク、5…バネねじ、6…プリント基板、10…グランドパターン、11…接続パターン、12…チップ抵抗、22…導電性の線材、23…接地板と線材の接続部、42…コ形状の部材、52…U形状の部材、90…半導体チップ、91…パッケージ、1a…接続部、6a…グランドスルーホール、6b…グランドパターン、6c…プリント基板6のグランド層、8a…接地部材の開口部、31a…接地部材の開口部、7a…ヒートシンクと電子部品間の静電容量、7c…プリント基板のグランド層とヒートシンク間の静電容量、7e…電子部品のグランドとプリント基板のグランド層との間のインダクタンス、7g…接地部材とプリント基板のグランド層との間のインダクタンス、7h…接地部材とヒートシンク間の静電容量、100…ヒートシンク接続体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と、このプリント基板に実装された電子部品と、この電子部品に熱的に接続されたヒートシンクとからなるヒートシンク接続体において、
前記電子部品と前記ヒートシンクとの間に配置された金属部材と、この金属部材と前記ヒートシンクの間に配置された熱伝導シートとを更に含み、
前記金属部材は、前記プリント基板のプリント基板のグランド層と接続され、
前記熱伝導シートは、その膜厚方向において、高抵抗であることを特徴とするヒートシンク接続体。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートシンク接続体であって、
前記金属部材は、前記グランド層との接続箇所を選択可能なことを特徴とするヒートシンク接続体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヒートシンク接続体であって、
前記金属部材と前記電子部品との間に第2の熱伝導シートを更に含むことを特徴とするヒートシンク接続体。
【請求項1】
プリント基板と、このプリント基板に実装された電子部品と、この電子部品に熱的に接続されたヒートシンクとからなるヒートシンク接続体において、
前記電子部品と前記ヒートシンクとの間に配置された金属部材と、この金属部材と前記ヒートシンクの間に配置された熱伝導シートとを更に含み、
前記金属部材は、前記プリント基板のプリント基板のグランド層と接続され、
前記熱伝導シートは、その膜厚方向において、高抵抗であることを特徴とするヒートシンク接続体。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートシンク接続体であって、
前記金属部材は、前記グランド層との接続箇所を選択可能なことを特徴とするヒートシンク接続体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヒートシンク接続体であって、
前記金属部材と前記電子部品との間に第2の熱伝導シートを更に含むことを特徴とするヒートシンク接続体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−84599(P2012−84599A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227636(P2010−227636)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]