説明

ヒートパイプ内蔵プリント配線基板

【課題】 高発熱部品3を実装し、この高発熱部品3から発せられる熱を放熱部7に伝達するヒートパイプ4を内蔵したプリント配線基板1において、その厚さを薄く形成し、電子部品の薄型化に有利なものとする。
【解決手段】 基板内層でグラウンドを構成する銅層(金属層)a3 にヒートパイプ4を一体に形成した構造とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高発熱性の電子部品を冷却するためのヒートパイプを内蔵したプリント配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、CPUなどの高発熱性の電子部品を備えた電子機器においては、電子部品を効果的に冷却するために、この電子部品が実装されるプリント配線基板にヒートパイプを内蔵したものが用いられている。
【0003】このヒートパイプは電子部品から発せられる熱を効率的に基板外の放熱部に伝達する働きを有し、これによって電子部品を効果的に冷却して熱から保護するようにしたものである。
【0004】このようなヒートパイプを内蔵したプリント配線基板としては、従来例えば「特開平3−255690号公報」や「特開平5−29717号公報」に開示されているようなものがある。
【0005】これら従来のヒートパイプ内蔵プリント配線基板は、何れも単独で形成されたヒートパイプをプリント配線基板の内部に埋め込んだ構造となっている。即ち従来は、ヒートパイプ単体で独立した完成品が用いられており、これをプリント配線基板の絶縁層に埋め込んでヒートパイプ内蔵プリント配線基板を構成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来のヒートパイプ内蔵プリント配線基板は、単独で形成されたヒートパイプをプリント配線基板に埋め込んだ構造であるため、ヒートパイプそのものの厚さがプリント配線基板の厚さをそのまま増やすことになるので、プリント配線基板の厚さを薄くすることは困難であった。
【0007】特に最近のプリント配線基板では、プリント配線を多層に有するいわゆる多層基板が使用されており、この多層基板において従来の如くヒートパイプを埋め込むと基板の厚さは相当に厚くなってしまい、電子機器の薄型化の大きな妨げとなっていた。
【0008】本発明はこのような問題点を解消することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、高発熱性の電子部品を実装し、この電子部品から発せられる熱を放熱部に伝達するヒートパイプを内蔵したプリント配線基板において、基板内層でグラウンドを構成する金属層にヒートパイプを一体に形成した構造としたものである。
【0010】このような構造としたことにより本発明のヒートパイプ内蔵プリント配線基板は、従来に比して基板の厚さを薄く形成でき、電子機器の薄型化に有利なものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態例について説明する。
【0012】図1は本発明によるプリント配線基板の内部構造を拡大断面で示している。このプリント配線基板1は、プリント配線層である銅層(金属層)を4層に有する多層基板であり、そのうち上層から1,2,4層目の銅層a1 ,a2 ,a4は夫々回路配線パターンを構成し、3層目の銅層a3 はグラウンドを構成している(以下この3層目の銅層a3 をグラウンド層という)。また各層の銅層間はガラスエポキシ樹脂などによりなる樹脂層2で絶縁されている。
【0013】プリント配線基板1の上面には、CPUなどの高発熱性の電子部品(以下高発熱部品という)3が実装されており、この高発熱部品3から発せられる熱をプリント配線基板1の端部の放熱部7に効率的に伝達して高発熱部品3を冷却するためのヒートパイプ4がプリント配線基板1に内蔵されている。
【0014】ここで特に本例のプリント配線基板1においては、図1及び図2に示す如くヒートパイプ4は基板内層のグラウンド層a3 に一体に形成されている。尚、このヒートパイプ4を形成する方法については後に詳述する。
【0015】ヒートパイプ4の熱端側(高発熱部品3側)においては、プリント配線基板1に多数の貫通穴(スルーホール)5が穿設されており、この貫通穴5の内周面に施された金属メッキ6を介して高発熱部品3と基板内層のグラウンド層a3 とが熱的に接続された構造となっている。
【0016】即ち、貫通穴5は高発熱部品3の実装部に対応して設けられ、4層の銅層のうちグラウンド層a3 のみを貫通しており(他の層a1 ,a2 ,a4 の回路配線パターンは貫通穴5を除けて形成されている)、このため高発熱部品3から発せられた熱は貫通穴5の金属メッキ6を通してグラウンド層a3 からヒートパイプ4に伝えられるようになっている。
【0017】一方、ヒートパイプ4の冷端側(放熱部7側)においては、放熱部7としてプリント配線基板1の上下面に放熱板8がビス9等によって固定されている。ここでもプリント配線基板1に多数の貫通穴10が穿設されており、この貫通穴10の内周面に施された金属メッキ11を介して放熱板8と基板内層のグラウンド層a3 とが熱的に接続された構造となっている。
【0018】即ち、貫通穴10は放熱板8の固定部に対応して設けられ、4層の銅層のうちグラウンド層a3 のみを貫通しており、このため高発熱部品3からヒートパイプ4に伝えられた熱はグラウンド層a3 から貫通穴10の金属メッキ11を通して放熱板8に伝達されて放熱されるようになっている。
【0019】以上の如く構成される本例のプリント配線基板1では、高発熱部品3から発せられた熱をヒートパイプ4によって効率的に放熱部7の放熱板8に伝達して放熱できるので、高発熱部品3を効果的に冷却して熱から保護することができる。
【0020】またヒートパイプ4は周囲が樹脂層2で覆われているので、ヒートパイプ4内の冷媒の蒸発・液化による熱輸送経路としての断熱効果を期待でき、このためより効率的な伝熱性が確保されて良好な放熱効果が得られるものである。
【0021】次に、上記の如く構成されるプリント配線基板において、基板内層にヒートパイプ4を形成する方法について説明する。
【0022】図3はその第1の例を示す。この例は、プリント配線基板の製造工程において、2枚の銅板(金属板)12と13とを貼り合わせてグラウンド層a3 を形成するものであり、この場合先ず(A)に示す如く2枚の銅板12と13に互いに対向する凹状の変形部12aと13aをプレス加工等によって形成する。
【0023】そしてこの2枚の銅板12と13を(B)のように貼り合わせてグラウンド層a3 を形成すると、このグラウンド層a3 には銅板12と13の互いの変形部12aと13aの間に空洞部14が作られることになる。尚、ここで空洞部14は、両端部分に鋭角状部14aと14bが形成されるような形状とする(このような形状とすることにより、ヒートパイプの伝熱性が向上することが知られている)。
【0024】こうして2枚の銅板12と13を貼り合わせてなるグラウンド層a3 に空洞部14を形成した後、(C)に示す如くグラウンド層a3 の上下両側に樹脂層2を形成し、最後に(D)のように空洞部14に冷媒15を封入して気圧を下げ、ヒートパイプ4を形成する。
【0025】図4はヒートパイプの形成方法の第2の例を示す。この例では、プリント配線基板の製造工程において、先ず(A)に示す如く樹脂層2の上に銅箔(金属箔)によりなるグラウンド層a3 が形成された状態で、その上に例えばワックスなどの低融点材料16でヒートパイプの経路を形成する。
【0026】そしてこの低融点材料16の上に被せるように(B)の如く蒸着やメッキなどで銅(金属)のカバー層17を生成し、その上に(C)に示すように樹脂層2を形成した後、低融点材料16を熱で溶かして空洞部14を作り、最後にこの空洞部14に(D)のように冷媒15を封入して気圧を下げ、ヒートパイプ4を形成する。
【0027】以上の例のようにヒートパイプ4を基板内層のグラウンド層a3 と一体に形成した構造とすることにより、従来のように単独で形成されたヒートパイプを埋め込んだ構造に比べてプリント配線基板の厚さを薄く形成することができる。
【0028】特に図4の第2の例では、ヒートパイプ4を薄い層で形成できるので、プリント配線基板のより一層の薄型化が可能である。
【0029】またこのようにヒートパイプ4を基板内層のグラウンド層a3 と一体化したことにより、生産性及びコストの面でも有利となり、またヒートパイプ4の接触不良が生じることもないので確実な放熱効果が得られるものである。
【0030】図5〜図7はヒートパイプの冷端側の放熱構造の例を示している。図5は、高発熱部品3を実装したプリント配線基板1が収容される電子機器の筺体18の一部分に、ヒートパイプ4の冷端側の放熱部7をビス等の金属締結19によって熱的に接続し、高発熱部品3から発せられる熱を筺体18を使って大気に放熱する構造としたものである。
【0031】また図6は、筺体18の上面に配置固定されるキーボード20などの機器にヒートパイプ4の冷端側の放熱部7を熱的に接続して高発熱部品3の熱を放熱するようにした例である。
【0032】さらに図7に示すように、ヒートパイプ4の冷端側をヒートシンク21に接続し、このヒートシンク21から放熱される熱をファン22によって強制的に筺体18の外に排出させる構造としてもよい。
【0033】以上、本発明の実施の形態例について説明したが、本発明はこれらの例に限ることなく他にも種々の実施形態を採り得るものであることは言うまでもない。
【0034】
【発明の効果】以上に説明した如く本発明は、高発熱性の電子部品を実装し、この電子部品から発せられる熱を放熱部に伝達するヒートパイプを内蔵したプリント配線基板において、基板内層でグラウンドを構成する金属層にヒートパイプを一体に形成した構造としたことにより、従来に比べてプリント配線基板の厚さを薄く形成することができ、電子機器の薄型・コンパクト化を図る上で有利なものとなる。
【0035】さらにヒートパイプを基板内層と一体化したことで生産性及びコストの面でも有利となり、またヒートパイプの接触不良が生じることもないので確実な放熱効果が得られる等、従来にはない種々の実用的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプリント配線基板の内部構造を示す縦断側面図である。
【図2】同、グラウンド層の平面図である。
【図3】本発明によるプリント配線基板におけるヒートパイプの形成方法の第1の例を示す縦断面図である。
【図4】同、第2の例を示す縦断面図である。
【図5】ヒートパイプの冷端側の放熱構造の一例を示す概略平面図である。
【図6】同、他の例を示す概略側面図である。
【図7】同、さらに他の例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1‥‥プリント配線基板、a3 ‥‥グラウンド層(グラウンドを構成する金属層)、3‥‥高発熱部品(高発熱性の電子部品)、4‥‥ヒートパイプ、5‥‥貫通穴、6‥‥金属メッキ、7‥‥放熱部、8‥‥放熱板、10‥‥貫通穴、11‥‥金属メッキ、12,13‥‥銅板、12a,13a‥‥変形部、14‥‥空洞部、15‥‥冷媒、16‥‥低融点材料、17‥‥銅(金属)のカバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 高発熱性の電子部品を実装し、この電子部品から発せられる熱を放熱部に伝達するヒートパイプを内蔵したプリント配線基板において、基板内層でグラウンドを構成する金属層に上記ヒートパイプを一体に形成したことを特徴とするヒートパイプ内蔵プリント配線基板。
【請求項2】 上記ヒートパイプの熱端側において上記電子部品と上記金属層とは、金属メッキされた貫通穴を介して熱的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ内蔵プリント配線基板。
【請求項3】 上記ヒートパイプの冷端側において上記放熱部と上記金属層とは、金属メッキされた貫通穴を介して熱的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ内蔵プリント配線基板。
【請求項4】 上記ヒートパイプは、互いに対向する凹状の変形部が形成された2枚の金属板を貼り合わせて上記凹状の変形部間に空洞部を作り、この空洞部内に冷媒を封入して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ内蔵プリント配線基板。
【請求項5】 上記ヒートパイプは、金属層の上に低融点材料によってヒートパイプの経路を形成してその上に金属のカバー層を生成し、その後に上記低融点材料を溶かして空洞部を作り、この空洞部内に冷媒を封入して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ内蔵プリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−138485(P2000−138485A)
【公開日】平成12年5月16日(2000.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−308928
【出願日】平成10年10月29日(1998.10.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】