ピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプ
【課題】腐食性の液体を供給するためのポンプに用いることができ、しかも耐久性、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができ、またポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができるピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプを提供する。
【解決手段】シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン1は、腐食性の液体によって劣化しないようフッ素樹脂で形成される。該ピストン1のローリング部2は1mm以下の厚さで、可撓性を有し、略180度の折返し部3を経て開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられ、ピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングする。
【解決手段】シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン1は、腐食性の液体によって劣化しないようフッ素樹脂で形成される。該ピストン1のローリング部2は1mm以下の厚さで、可撓性を有し、略180度の折返し部3を経て開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられ、ピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプの中で、シリンダ内に移動自在に支持され往復移動されるピストンとして、ゴムで形成されたダイヤフラムを用いたものが従来から知られている。このピストンとしてのダイヤフラムは、該ダイヤフラムの閉鎖端部がシリンダ内にシリンダ内面との間に隙間を設けて移動自在に支持され往復移動されるピストン支持体に取付けられ、該ダイヤフラムの円筒状外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部に有するフランジ部でシリンダに取付けられている。このようなピストンを備えたポンプでは、ピストンによってシリンダ内に画成された圧力室に液体の吸込口及び吐出口がそれぞれ開口され、この吸込口及び吐出口に液体タンク及び吐出液体供給部がそれぞれ逆止弁を介して接続されており、ポンプを駆動すると、ピストン支持体の往復移動に伴ってピストンの円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間でローリングすることにより、圧力室の容積が変化し、容積が拡大する吸込工程で吸込口から液体を吸込み、縮小する吐出工程で吐出口から液体を吐出する(例えば「特許文献1」参照)。
【0003】
しかしながら、従来のゴム製のピストンは、ゴムを侵すような腐食性の液体、例えば液晶等のFPDや半導体の製造プロセスで使用されるレジスト液等の薬液によって劣化し、このような腐食性の液体を供給するためのポンプに用いることができなかった。
【0004】
そこで、腐食性の液体を供給するポンプに用いることができるピストンが提案されている(例えば「特許文献2」参照)。このピストンは、腐食性の液体に耐性のあるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されており、腐食性の液体によって劣化することはないが、フッ素樹脂はゴムとは相違して柔軟性や伸縮性がないため、該ピストンの円筒状外周部の断面形状が円形とならず多角形になって折曲り部が形成されてしまうので、該ピストンに亀裂や孔等が発生し、耐久性に問題がある。
【0005】
フッ素樹脂製のピストンの耐久性を改善する手段として、ピストン支持体の外面に圧力室に向けて先細となるテーパ部を設けると共に、該ピストンの円筒状外周部における駆動室(ピストンを挟んで圧力室と反対側に画成される駆動室)に向かう傾斜角度と、前記テーパ部における圧力室に向かう傾斜角度とを略同一に設定することが提案されている(「特許文献2」参照)。しかし、この手段では、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体の外面に密着させることはできても、シリンダ内面に密着させることはできず、シリンダ内面との間に隙間を形成してしまうので、該ピストンの円筒状外周部が波を打つように撓みや折曲りを発生し、該ピストンに亀裂や孔等を発生させてしまう。
【特許文献1】特開昭61−197779号公報
【特許文献2】特開平9−53566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のフッ素樹脂製のピストンは、ゴム製のピストンとは相違して該ピストンの円筒状外周部に十分な可撓性がないため、該円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることが難しく、該ピストンに亀裂や孔等が発生し、実用上十分な耐久性を確保することができない点にある。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りを生じると、該撓み部や折曲り部と折返し部との間に空間が形成される場合があり、その空間に空気が残留する等してポンプの定量性能が低下すると共に、前記空間に液溜まりを生じる場合もあり、ポンプの液置換性能が低下する点にある。またポンプ圧力室を洗浄する際に該ピストンの円筒状外周部に生じる撓みや折曲りによって、折返し部まで洗浄液が届き難くなるため、洗浄に時間を要する点にある。
【0007】
さらに、液晶等のFPDの製造プロセスにおいては、例えばガラス基板にレジスト液を塗布する際の塗布ムラを3%以下、好ましくは1%以下に抑える必要があり、このため、前記レジスト液等の薬液を供給するポンプには、1回の吐出工程において液体を一定流量で連続的に吐出できる高い定流量性能が要求されるが、前記ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りを生じると、該撓みや折曲りによって吐出工程中の流量が乱れ、要求される定流量性能が得られない点にある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、腐食性の液体を供給するためのポンプに用いることができ、しかも耐久性、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができるピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のピストンは、シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有することを特徴としている。
【0010】
上記構成を有する本発明のピストンは、該ピストンをフッ素樹脂で形成するに当って、該ピストンの円筒状外周部を1mm以下の厚さにすることで、該ピストンの円筒状外周部に十分な可撓性を付与することができ、柔軟性に優れ、かつ略一定の曲率でピストン支持体外面とシリンダ内面の2面間の隙間で折返すことができ、屈曲性能の高いピストンになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングすることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。
【0011】
本発明のピストンでは、折返し部の内径が外径の80%以上であることが好ましい。
【0012】
折返し部の内径が外径の80%以上、つまり該ピストンの円筒状外周部の内径が外径の80%以上であると、折返し部の歪量(伸び量)を小さくして該ピストンの円筒状外周部が塑性変形してしまうのを防止することができ、該ピストンの円筒状外周部の撓みや折曲りを防止しながらその形状を均一にすることができる。これにより、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体外面とシリンダ内面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができ、特に、ポンプの定流量性能の向上に高い効果を発揮することができる。なお、折返し部の外径に対する内径比(該ピストンの円筒状外周部の外径に対する内径比)が過大であると、折返し部の曲げ半径(ピストン支持体外面とシリンダ内面間の隙間)が小さくなり過ぎて、折返し部で座屈を生じる可能性があるため、折返し部の内径は外径の98%未満とすることが好ましい。
【0013】
本発明のピストンでは、フッ素樹脂からなる被削物を切削してピストン半製品を成形した後にその半製品に施す二次加工によって形成されていることが好ましい。
【0014】
ピストンが、フッ素樹脂からなる被削物を切削してピストン半製品を成形した後にその半製品に施す二次加工によって形成されていると、前記折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって前記折返し部を形成することができ、例えば折返し部を有するピストンを切削で形成する場合と比べて、切削加工を容易に行うことができる。つまり切削加工としては形状の簡単なピストン半製品を成形する切削加工のみを行えば良い。またポンプ駆動時、折返し部はその形成時の初期位置からシリンダ内面或いはピストン支持体外面に変位しても、ピストン全体を切削した場合に現れる形成時の初期形状の影響を残すことなく、シリンダ内面或いはピストン支持体外面に密着することができるようになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体外面とシリンダ内面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストンが、ポンプへのセット状態の形状に形成されているので、ポンプの組立てを容易に行うことができる。
【0015】
本発明のピストンの製造方法は、シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有するピストンの製造方法であって、フッ素樹脂からなる被削物を切削して、折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工によって前記折返し部を形成することを特徴としている。
【0016】
本発明のピストンの製造方法によれば、前記折返し部を、該折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって形成するので、例えば折返し部を有するピストンを切削で形成する場合と比べて、切削加工を容易に行うことができる。つまり切削加工としては形状の簡単なピストン半製品を成形する切削加工のみを行えば良い。またポンプ駆動時、折返し部はその形成時の初期位置からシリンダ内面或いはピストン支持体外面に変位しても、ピストン全体を切削した場合に現れる形成時の初期形状の影響を残すことなく、シリンダ内面或いはピストン支持体外面に密着することができるようになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体外面とシリンダ内面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストンが、ポンプへのセット状態の形状に形成されているので、ポンプの組立てを容易に行うことができる。
【0017】
本発明のポンプは、シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有し、該フランジ部がシリンダに取付けられることを特徴としている。
【0018】
上記構成を有する本発明のポンプは、該ピストンをフッ素樹脂で形成するに当って、該ピストンの円筒状外周部を1mm以下の厚さにすることで、該ピストンの円筒状外周部に十分な可撓性を付与することができ、柔軟性に優れ、かつ略一定の曲率でピストン支持体外面とシリンダ内面の2面間の隙間で折返すことができ、屈曲性能の高いピストンになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングすることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、腐食性の液体を供給するためのポンプに用いることができ、しかも耐久性、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができるピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプの実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、第1の実施形態に係るピストンを示す断面図である。ピストン1は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されており、中間部で内側或いは外側に折返して(捲返して)なる円筒状外周部(以下「ローリング部」)2を備えている。このローリング部2は、曲げ角度略180度の折返し部3と、この折返し部3の内周側端部及び外周側端部から軸心線に沿って同方向に平行に延出される内周部4及び外周部5と、から構成されている。また内周部4の端部には、この端部を閉鎖端部にする円板状の端板部6が設けられ、外周部5の端部には、この端部から半径方向外側に向かって垂直に立ち上がる円環状の板体であって、平坦な両主面が軸方向に向くフランジ部7が設けられている。端板部6には、円柱状であって、外周面に雄ねじを有するネジ結合用の凸部8が、該端板部6の中央部から内周部4の内側に向かって同軸上に突出されている。凸部8には、ネジ結合用に別に製造された部品であって、内外周面に雄ねじを有する金属スリーブ9が、埋込み状態で同軸上に装着固定されている。なお、図例のピストン1は、ローリング部2が、内周部4の長さより外周部5の長さが短い引きタイプ(吸込工程からポンプ動作を開始するタイプ)の初期形状に形成されているが、外周部5の長さが長い押しタイプ(吐出工程からポンプ動作を開始するタイプ)の初期形状に形成しても良い。
【0022】
ここで、前記ピストン1は、ローリング部2が0.1mm以上で1mm以下の厚さAに形成され、可撓性を有している。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。前記ピストン1を製造するに際して、図2(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物1Aを準備する。なお、図例の被削物1Aは、外形が、前記ピストン1よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0024】
前記ピストン1を製造するには、被削物1Aを切削して、図2(B)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の前記ピストン1のピストン本体1Bの形状にする。該ピストン本体1Bには、ローリング部2(折返し部3、内周部4、外周部5)、端板部6、フランジ部7、凸部8に加えて、該凸部8に前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔9aが形成されている。そして、切削加工によって得られた前記ピストン本体1Bの下孔9aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図1に示した前記ピストン1を得ることができる。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ10は、例えば液晶等のFPDや半導体の製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン1が該ポンプ10の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。該ポンプ10は、シリンダ11がシリンダ本体12と、該シリンダ本体12の先端部に取付けられるヘッド部13と、から構成されている。該シリンダ11の外側には、空気圧シリンダやリニアモータ等の図示しない往復動駆動装置が取付けられ、該往復動駆動装置によって軸方向に往復駆動されるピストンロッド14の先端に、外形が円柱状のピストン支持体15がシリンダ11の内面との間に所定の隙間を有して取付けられている。該ピストン支持体15は、ピストンロッド14を介してシリンダ11内に軸方向に移動自在に収容支持され、往復動駆動装置によって往復駆動される。そして、前記ピストン1がシリンダ11内に配置されている。該ピストン1は、内周部4の閉鎖端部を構成している端板部6がピストン支持体15の先端面に凸部8でネジ結合されて密着状態で固定取付けされ、内周部4がピストン支持体15の先端から外周面に沿って密着状態でピストン支持体15の基端部に向かって延設される。つまり内周部4がピストン支持体15の先端面及び外周面を密着状態で囲んでいる。また折返し部3はピストン支持体15の外周面にあり、外周部5が折返し部3を経てシリンダ本体12の内周面に沿って密着状態で内周部4と反対にシリンダ11のヘッド部13側に向かって延設され、該外周部5の開放端部から立上がるフランジ部7がシリンダ本体12とヘッド部13との接合面間で挟着保持されてシリンダ11に固定取付けされている。シリンダ11内には、該ピストン1とヘッド部13によって圧力室16が画成されている。ヘッド部13には、圧力室16に連通する吸込口17及び吐出口18が開口し、吸込口17は、図示しない逆止弁或いは吸込側エアオペバルブを設けた配管を介して液体タンクに連通接続され、吐出口18は、図示しない逆止弁或いは吐出側エアオペバルブを設けた配管を介して吐出液供給部に連通接続されている。なお、該ポンプ10では、ピストン1以外の接液部であるヘッド部13等も該ピストン1と同様にPTFE等のフッ素樹脂で形成されている。
【0026】
また、シリンダ11内には、ピストン1とシリンダ本体12によって前記圧力室16と反対側に負圧室19が画成されている。シリンダ本体12には、負圧室19に連通する空気吸込口20が開口し、空気吸込口20には、図示しない真空発生機器が接続されている。負圧室19は、真空発生機器による吸気作用により、圧力が圧力室16より十分低く維持され、ポンプ駆動時、ピストン1の内周部4及び外周部5をピストン支持体15の外周面及びシリンダ11の内周面に密着させた状態で折返し部3を変位しながら、ローリング部2をローリングさせるものである。
【0027】
また、ピストンロッド14は、その一端に一体に有する雄ネジ部14aがピストン支持体15を貫通し、ピストン1の金属スリーブ9に直接ネジ結合され、金属スリーブ9と前記雄ネジ部14aの基端部に一体に有するカラー14bとの間にピストン支持体15を挟持し、ピストンロッド14、ピストン支持体15、ピストン1の3部品を同軸上で直結している。
【0028】
上記のように構成されたポンプ10は、ピストン1が引きタイプの初期形状に形成され、その初期形状でポンプ10に組付けられるため、往復駆動装置によってピストン支持体15を往復駆動すると、ピストン支持体15と一体にピストン1の端板部6が図3に示す初期位置から右側に移動する吸入工程において、ピストン1の内周部4の長さが短くなり、ピストン1の外周部5の長さが長くなり、シリンダ本体12の内周面とピストン支持体15の外周面間の隙間で、ピストン1の折返し部3が右側に変位しながらピストン1のローリング部2がローリングする。これに伴って圧力室16の容積が拡大し、その過程で圧力室16に液体タンク内のレジスト液等の液体が吸込まれる。一方、ピストン支持体15と一体にピストン1の端板部6が右側の移動終端位置から左側に移動して図3に示す初期位置に復帰する吐出工程において、ピストン1の内周部4の長さが長くなり、ピストン1の外周部5の長さが短くなり、シリンダ本体12の内周面とピストン支持体15の外周面間の隙間で、ピストン1の折返し部3が左側に変位しながらピストン1のローリング部2がローリングする。これに伴って圧力室16の容積が縮小し、その過程で圧力室16内の液体が吐出液供給部に供給される。このようなピストン1の往復駆動によって、吐出液供給部に液体タンク内の液体を一定流量で一定量供給することができる。
【0029】
以上、第1の実施形態に係るピストン1は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン1がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン1の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している。また第1の実施形態に係るピストン1は、フッ素樹脂からなる被削物1Aを切削して形成されて製造されいる。また第1の実施形態に係るピストン1を備えたポンプ10は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン1がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン1のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。そして、該ピストン1をフッ素樹脂で形成するに当って、該ピストン1のローリング部2を1mm以下の厚さAにすることで、該ピストン1のローリング部2に十分な可撓性を付与することができ、柔軟性に優れ、かつ略一定の曲率でピストン支持体外面15とシリンダ11内面の2面間の隙間で折返すことができ、屈曲性能の高いピストン1になっている。これにより、該ピストン1のローリング部2がピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングすることができるので、該ピストン1のローリング部2に亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストン1で実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストン1のローリング部2に撓みや折曲りが生じないので、ポンプ10の定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室16の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストン1が、ポンプ10へのセット状態の形状に形成されているので、例えば折返し部3が未成形の状態で製造されているピストンに対し折返し部を形成しながらポンプを組立てるのに比べ、ポンプ10の組立てを容易に行うことができる。
【0030】
また、ポンプ圧力室16の洗浄時には、ピストン1の折返し部3をなくすように、ピストン支持体15を図3に示す初期位置からさらに左側に移動させ、ピストン1の端板部6をフランジ部7に対して離間させ、ピストン1から折返し部3及び外周部5をなくすことで、液体が溜まる部分がなくなるため、さらに液置換性能が向上し、洗浄時間も大幅に短縮することができる。
【0031】
また、ピストン支持体15を挟んでピストンロッド14とピストン1の内周部4の閉鎖端部(端板部6)とを直結することにより、ピストンロッド14,ピストン支持体15,ピストン1の3部品を確実に同軸上で一体に連結することができるので、ピストン1の軸ずれ等によるローリング部2の偏磨耗を防止することができ、ピストン1の耐久性(寿命)が向上し、引いてはポンプ10の寿命を向上することができる。
【0032】
なお、第1の実施形態では、該ピストン1のピストン本体1Bをフッ素樹脂からなる被削物1Aを切削して形成したが、該ピストン1のピストン本体1Bは射出成形によって製作しても良い。また該ピストン1はインサート成形によってピストン本体1Bに金属スリーブ9を一体化した状態で製作しても良い。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態を図4〜図6を参照して説明する。図4は、第2の実施形態に係るピストンを示す断面図であり、該ピストン21は、折返し部3の内径(R1×2)が外径(R2×2)の80%以上で、かつ98%未満になるように形成されている。つまりローリング部2の内径(R1×2)が外径(R2×2)の80%以上で、かつ98%未満になるように形成されている。これ以外の構造は、第1の実施形態に係るピストン1と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0034】
前記ピストン21における折返し部2の外径(R2×2)に対する内径(R1×2)比(ローリング部2の外径(R2×2)に対する内径(R1×2)比、以下「ローリング部2の内外径比」という)は、90%以上で、かつ98%未満がより好ましい。
【0035】
図5は、第2の実施形態に係るピストンの製造方法を示す断面図である。該ピストン21を製造するに際して、図5(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物21Aを準備する。なお、図例の被削物21Aは、外形が、前記ピストン21よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0036】
前記ピストン21を製造するには、被削物20Aを切削して、図5(B)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン21のピストン本体21Bの形状にする。該ピストン本体21Bは、ローリング部2(折返し部3、内周部4、外周部5)、端板部6、フランジ部7、凸部8に加えて、該凸部8に前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔29aが形成されている。そして、切削加工によって得られた前記ピストン本体21Bの下孔28aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図4に示した前記ピストン21を得ることができる。
【0037】
図6は、第2の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ22は、例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン21が該ポンプ22の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。これ以外の構造及び動作は、第1の実施形態のポンプ10と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0038】
以上、本発明の第2の実施形態に係るピストン21は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン21がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン21の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している構成に、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であることが付加されている。また第2の実施形態に係るピストン21は、フッ素樹脂からなる被削物21Aを切削して形成されて製造されている。また第2の実施形態に係るピストン21を備えたポンプ22は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン21がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン21のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。ここで、ローリング部2の内外径比が大きいと、折返し部2の曲率は小さくなり、折返し部2で座屈の可能性が大きくなるが、歪量(伸び量)は小さくなる。反対にローリング部2の内外径比が小さいと、折返し部2の曲率は大きくなり、折返し部2で座屈の可能性が小さくなるが、歪量(伸び量)は大きくなる。歪量(伸び量)が大きいとローリング部2が塑性変形してしまい、ローリング部2に撓みや折曲りを生じ、形状が均一ならず、ポンプ22の定流量性能が低下する。そして、ローリング部2の内外径比を80%以上、好ましくは90%以上と大きくすることで、折返し部3の歪量(伸び量)を小さくして該ピストン21のローリング部2が塑性変形してしまうのを防止することができ、該ピストン21のローリング部2の撓みや折曲りを防止しながらその形状を均一にすることができる。これにより、該ピストン21のローリング部2をピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができ、ポンプ22の定流量性能の向上に高い効果を発揮することができる。このため、液晶等のFPDの製造プロセスにも適用できるポンプ22の定流量性能を得ることができる。また折返し部2での座屈はローリング部2の内外径比を98%未満とすることで防止することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態を図7〜図10を参照して説明する。図7は、第3の実施形態に係るピストンを示す断面図であり、該ピストン31は、その製造方法が第2の実施形態のピストン21の製造方法と異なるだけであり、構造的には第2の実施形態に係るピストン21と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0040】
図8は、第3の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図、図9は、第3の実施形態に係るピストンの製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。該ピストン31を製造するに際して、図8(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物31Aを準備する。なお、図例の被削物31Aは、外形が、該ピストン31よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0041】
前記ピストン31を製造するには、被削物31Aを切削して、図8(B)に示すような前記ピストン31の折返し部3が未成形のピストン半製品31B(ピストン本体の半製品)を成形する。この切削加工(一次加工)によって、前記ピストン31の内周部4と端板部6及び凸部8の製品形状を得ると共に、図9にも示すように、内周部4の開放端部に、前記ピストン31の折返し部3と外周部5になる折返し予定部33を連続一体に成形する。該折返し予定部33は、先端側が、所定の曲げ半径を持って半径方向外側に曲げ角度略90度で曲げられた断面L形に成形され、かつ長さが前記ピストン31の折返し部3と外周部5の長さを合わせた長さと同じ寸法に成形されている(図9の破線参照)。また折返し予定部33の先端部に、前記ピストン31のフランジ部7になる端フランジ部37を連続一体に成形する。該端フランジ部37は、折返し予定部33の先端部から、前記ピストン1のフランジ部7と同様に、半径方向外側に向かって垂直に立ち上がり、平坦な両主面が軸方向に向く円環状の板体に成形されている。さらに凸部8には、前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔39aが形成されている。
【0042】
上記のようにピストン半製品31Bは、前記ピストン31の内周部4と端板部6及び凸部8に加え、前記ピストン31の折返し部3と外周部5になる折返し予定部33と、前記ピストン31のフランジ部7になる端フランジ部37と、前記金属スリーブ9を装着するための下孔39aと、を有し、前記ピストン31の折返し部3がなくなるまでフランジ部7を端板部6から離した形状に成形され、前記ピストン31のローリング部2の製品形状は未成形である。
【0043】
次いで、ピストン半製品31Bの折返し予定部33に対し、前記折返し部3を形成する二次加工を施す。該二次加工は、例えば折返し予定部33に熱を加えながら該折返し予定部33を曲げ具に沿わせて曲げる等の熱処理による癖付け、或いは、折返し予定部33を一対の曲げ型を用いて挟む等のプレス加工による癖付け、或いは折返し予定部33に熱を加えながら該折返し予定部33を一対の曲げ型を用いて挟む等の熱処理とプレス加工併用による癖付けによって、前記折返し部3を形成する。このような二次加工によって、図8(C)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン31のピストン本体31Cを形成する。該ピストン本体31Cは、ピストン半製品31Bに施した二次加工によって、前記ピストン31の折返し部3と外周部5及びフランジ部7が追加形成され、ローリング部2、端板部6、フランジ部7、凸部8、下孔39aが形成されている。そして、二次加工によって得られた前記ピストン本体31Cの下孔39aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図7に示した前記ピストン31を得ることができる。
【0044】
図10は、第3の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ22は、例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン31が該ポンプ32の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。これ以外の構造及び動作は、第1の実施形態のポンプ10と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0045】
以上、第3の実施形態に係るピストン31は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン31がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン31の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している構成に、該ピストン31のピストン本体31Cがフッ素樹脂からなる被削物31Aを切削してピストン半製品31Bを形成した後にその半製品31Bに施す二次加工によって形成されていることが付加されている。また第3の実施形態に係るピストン31は、フッ素樹脂からなる被削物31Aを切削して、折返し部3が未成形の半製品31Bを成形した後、その半製品31Bに施す二次加工によって前記折返し部3を形成することによって製造されている。また第3の実施形態に係るピストン31を備えたポンプ32は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン31がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン31のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。そして、ピストン成形時(ピストン本体成形時)に折返し部3を成形している第1及び第2の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン1,21に比べ、第3の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン31は、前記折返し部3を、該折返し部3が未成形の半製品31Bを成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって形成するので、ピストン半製品31Bの形状が簡単になり、ピストン半製品31Bを成形する切削加工を容易に行うことができる。またピストン成形時(ピストン本体成形時)に折返し部3を成形している第1及び第2の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン1,21の場合、ポンプ駆動時、成形時に成形された該折返し部3が成形時の位置から成形時の初期形状が残った状態でシリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に変位し、シリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面と擦れ、成形時に成形された折返し部に磨耗を生じ、この磨耗によってもピストンの耐久性が低下し、またシリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に変位した成形時に成形された折返し部を基点にその前後に撓みや折曲りを発生し、該撓みや折曲がりによってポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能が低下すると共に、ポンプ圧力室16の洗浄に時間を要する虞があるが、第3の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン31は、前記折返し部3を、該折返し部3が未成形の半製品31Bを成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって形成するので、ポンプ駆動時、折返し部3はその形成時の初期位置からシリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に変位しても、形成時の初期形状を残すことなく、シリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に密着することができるようになる。これにより、該ピストン31のローリング部2をピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができるので、該ピストン31に亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストン31で実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストン31のローリング部2に撓みや折曲りが生じないので、ポンプ32の定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室16の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストン31が、ポンプ32へのセット状態の形状に形成されているので、例えば折返し部3が未成形の状態で製造されているピストンに対し折返し部を形成しながらポンプを組立てるのに比べ、ポンプ32の組立てを容易に行うことができる。
【0046】
次に、本発明の第4及び第5の実施形態を図11〜図16を参照して説明する。第4に実施形態に係るピストン41と第5の実施形態に係るピストン51とは、構造的には全く同じであり、その製造方法のみが異なっている。図11は、第4及び第5の実施形態に係るピストンを示す断面図であり、第4及び第5の実施形態に係る各ピストン41,51は、その製造方法が第2及び第3の実施形態のピストン21の製造方法と異なるだけであり、構造的には第2及び第3の実施形態のピストン21,31と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0047】
図12は、第4の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図、図13は、第4の実施形態に係るピストンの製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。該ピストン41を製造するに際して、図12(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物41Aを準備する。なお、図例の被削物41Aは、外形が、該ピストン41よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0048】
前記ピストン41を製造するには、被削物41Aを切削して、図12(B)に示すような前記ピストン41の折返し部3が未成形のピストン半製品41B(ピストン本体の半製品)を成形する。この切削加工(一次加工)によって、前記ピストン41の内周部4と端板部6及び凸部8の製品形状を得ると共に、図13にも示すように、内周部4の開放端部に、前記ピストン41の折返し部3と外周部5になる折返し予定部43を連続一体に成形する。該折返し予定部43は、先端側が、所定の曲げ半径を持って半径方向外側に曲げ角度略90度で曲げられた断面L形に成形され、かつ長さが前記ピストン41の折返し部3と外周部5の長さを合わせた長さと同じ寸法に成形されている(図13の破線参照)。また折返し予定部43の先端部に、前記ピストン41のフランジ部7になる湾曲フランジ部47を連続一体に成形する。該湾曲フランジ部47は、折返し予定部43の先端部から軸心線に沿って内周部4と反対側に突出され、円形に湾曲した両主面が半径方向に向く円環状に成形されている。さらに凸部8には、前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔49aが形成されている。
【0049】
上記のようにピストン半製品41Bは、前記ピストン41の内周部4と端板部6及び凸部8に加え、前記ピストン41の折返し部3と外周部5になる折返し予定部43と、前記ピストン41のフランジ部7になる湾曲フランジ部47と、前記金属スリーブ9を装着するための下孔49aと、を有し、前記ピストン41の折返し部3を略90度曲げ戻した形状に成形され、前記ピストン41のローリング部2の製品形状は未成形である。
【0050】
次いで、ピストン半製品41Bの折返し予定部43に対し、前記折返し部3を形成する二次加工を施す。該二次加工は、例えば折返し予定部43に熱を加えながら該折返し予定部43を曲げ具に沿わせて曲げる等の熱処理による癖付け、或いは、折返し予定部43を一対の曲げ型を用いて挟む等のプレス加工による癖付け、或いは折返し予定部43に熱を加えながら該折返し予定部43を一対の曲げ型を用いて挟む等の熱処理とプレス加工併用による癖付けによって、前記折返し部3を形成する。このような二次加工によって、図12(C)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン41のピストン本体41Cを形成する。該ピストン本体41Cは、ピストン半製品41Bに施した二次加工によって、前記ピストン41の折返し部3と外周部5及びフランジ部7が追加形成され、ローリング部2、端板部6、フランジ部7、凸部8、下孔49aが形成されている。そして、二次加工によって得られた前記ピストン本体41Cの下孔49aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図11に示した前記ピストン41を得ることができる。
【0051】
続いて、図14は、第5の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図、図15は、第5の実施形態に係るピストンの製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。該ピストン51を製造するに際して、図14(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物51Aを準備する。なお、図例の被削物51Aは、外形が、該ピストン51よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0052】
前記ピストン51を製造するには、被削物51Aを切削して、図14(B)に示すような前記ピストン51の折返し部3が未成形のピストン半製品51B(ピストン本体の半製品)を成形する。この切削加工(一次加工)によって、前記ピストン51の内周部4と端板部6及び凸部8の製品形状を得ると共に、図15にも示すように、内周部4の開放端部に、前記ピストン51の折返し部3と外周部5になる折返し予定部53を連続一体に成形する。該折返し予定部53は、内周部4の開放端部からストレートに延び円筒状に成形され、かつ長さが前記ピストン51の折返し部3と外周部5の長さを合わせた長さと同じ寸法に成形されている(図15の破線参照)。また折返し予定部53の先端部に、前記ピストン51のフランジ部7になる逆フランジ部57を連続一体に成形する。該逆フランジ部57は、折返し予定部53の先端部から半径方向内側に向かって略垂直に立上がり、平坦な両主面が軸方向に向く円環状の板体に成形されている。さらに凸部8には、前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定する有底の下孔59aが形成されている。
【0053】
上記のようにピストン半製品51Bは、前記ピストン51の内周部4と端板部6及び凸部8に加え、前記ピストン51の折返し部3と外周部5になる折返し予定部53と、前記ピストン51のフランジ部7になる逆フランジ部57と、前記金属スリーブ9を装着するための下孔59aと、を有し、前記ピストン51の折返し部3を略180度曲げ戻した形状に成形され、前記ピストン51のローリング部2の製品形状は未成形である。
【0054】
次いで、ピストン半製品51Bの折返し予定部53に対し、前記折返し部3を形成する二次加工を施す。該二次加工は、例えば折返し予定部53に熱を加えながら該折返し予定部53を曲げ具に沿わせて曲げる等の熱処理による癖付け、或いは、折返し予定部53を一対の曲げ型を用いて挟む等のプレス加工による癖付け、或いは折返し予定部53に熱を加えながら該折返し予定部53を一対の曲げ型を用いて挟む等の熱処理とプレス加工併用による癖付けによって、前記折返し部3を形成する。このような二次加工によって、図14(C)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン51のピストン本体51Cを形成する。該ピストン本体51Cは、ピストン半製品51Bに施した二次加工によって、前記ピストン51の折返し部3と外周部5及びフランジ部7が追加形成され、ローリング部2、端板部6、フランジ部7、凸部8、下孔59aが形成されている。そして、二次加工によって得られた前記ピストン本体51Cの下孔49aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図11に示した前記ピストン51を得ることができる。
【0055】
なお、第4及び第5の実施形態に係るピストンの製造方法において、該製造方法から明らかなように、前記ピストン41,51の折返し部3を曲げ戻した形状のピストン半製品41B、51Bを成形する場合の該曲げ戻し角度は、略90度から略180度の範囲内であれば、何度で曲げ戻した形状でも二次加工によってピストン41,51のピストン本体41C,51Cを適正に形成することができる。
【0056】
図16は、第4或いは第5の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ42(第4の実施形態に係るピストンを備えたポンプ),52(第4の実施形態に係るピストンを備えたポンプ)は、例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン41,52が該ポンプ42,52の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。これ以外の構造及び動作は、第1の実施形態のポンプ10と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0057】
以上、第4及び第5の実施形態に係るピストン41,51は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン41,51がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン41,51の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している構成に、該ピストン41,51のピストン本体41C,51Cがフッ素樹脂からなる被削物41A,51Aを切削してピストン半製品41B,51Bを形成した後にその半製品41B,51Bに施す二次加工によって形成されていることが付加されている。また第4及び第5の実施形態に係るピストン41,51は、フッ素樹脂からなる被削物41A,51Aを切削して、折返し部3が未成形の半製品41B,51Bを成形した後、その半製品41B,51Bに施す二次加工によって前記折返し部3を形成することによって製造されている。また第4及び第5の実施形態に係るピストン41,51を備えたポンプ42,52は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン41,51がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン41,51のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。従って、第3の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0058】
次に、円筒状外周部としてのローリング部が1mm以下の厚さで、ローリング部の内外径比が80%以上の第2の実施形態に係るピストン(実施例1)と、ローリング部が実施例1と同じ1mm以下の厚さで、ローリング部の内外径比が80%未満の第1の実施形態に係るピストン(実施例2)と、ローリング部が1mmを超える(上回る)厚さで、ローリング部の内外径比が80%以上のピストン(比較例1)と、ローリング部が比較例1と同様に1mmを超える厚さで、ローリング部の内外径比が80%未満のピストン(比較例2)について、ローリング部の屈曲性能、ポンプ定流量性能、ポンプ定量性能を比較したした結果を下記表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
上記の表1からも明らかなように、厚さ1mm以下のローリング部が屈曲性能に優れ、ポンプ定流量性能とポンプ定量性能の両方について液晶等のFPDや半導体の製造プロセスの使用条件を満たす結果が得られた。またローリング部の内外径比を80%以上にすることで、液晶等のFPDの製造プロセスにおいて、例えばガラス基板にレジスト液を塗布する際の塗布ムラを3%以下に抑えることができる高いポンプ定流量性能が得られた。なお、塗布ムラはローリング部の内外径比を90%以上にすることで1%以下に抑えることができる。
【0061】
以上、第1乃至第5の実施形態は本発明の好適な実施形態の一例を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液の供給用としてのピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプを示したが、その他の種々の腐食性の液体供給用で、高い定流量性及び定量性が要求されるピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプに好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るピストン製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【図11】本発明の第4及び第5の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係るピストン製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係るピストン製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。
【図16】本発明の第4及び第5の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1、21、31、41、51 ピストン(ダイヤフラム)
2 ローリング部(円筒状外周部)
3 折返し部
7 フランジ部(外周部の開放端部)
1A、21A、31A、41A、51A 被削物
31B、41B、51B ピストン半製品
1B、21B、31C、41C、51C ピストン本体
10、22、32、42、42 ポンプ
11 シリンダ
15 ピストン支持体
A ローリング部の厚さ
R1 折返し部(ローリング部)の内径の半径
R2 折返し部(ローリング部)の外径の半径
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプの中で、シリンダ内に移動自在に支持され往復移動されるピストンとして、ゴムで形成されたダイヤフラムを用いたものが従来から知られている。このピストンとしてのダイヤフラムは、該ダイヤフラムの閉鎖端部がシリンダ内にシリンダ内面との間に隙間を設けて移動自在に支持され往復移動されるピストン支持体に取付けられ、該ダイヤフラムの円筒状外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部に有するフランジ部でシリンダに取付けられている。このようなピストンを備えたポンプでは、ピストンによってシリンダ内に画成された圧力室に液体の吸込口及び吐出口がそれぞれ開口され、この吸込口及び吐出口に液体タンク及び吐出液体供給部がそれぞれ逆止弁を介して接続されており、ポンプを駆動すると、ピストン支持体の往復移動に伴ってピストンの円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間でローリングすることにより、圧力室の容積が変化し、容積が拡大する吸込工程で吸込口から液体を吸込み、縮小する吐出工程で吐出口から液体を吐出する(例えば「特許文献1」参照)。
【0003】
しかしながら、従来のゴム製のピストンは、ゴムを侵すような腐食性の液体、例えば液晶等のFPDや半導体の製造プロセスで使用されるレジスト液等の薬液によって劣化し、このような腐食性の液体を供給するためのポンプに用いることができなかった。
【0004】
そこで、腐食性の液体を供給するポンプに用いることができるピストンが提案されている(例えば「特許文献2」参照)。このピストンは、腐食性の液体に耐性のあるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されており、腐食性の液体によって劣化することはないが、フッ素樹脂はゴムとは相違して柔軟性や伸縮性がないため、該ピストンの円筒状外周部の断面形状が円形とならず多角形になって折曲り部が形成されてしまうので、該ピストンに亀裂や孔等が発生し、耐久性に問題がある。
【0005】
フッ素樹脂製のピストンの耐久性を改善する手段として、ピストン支持体の外面に圧力室に向けて先細となるテーパ部を設けると共に、該ピストンの円筒状外周部における駆動室(ピストンを挟んで圧力室と反対側に画成される駆動室)に向かう傾斜角度と、前記テーパ部における圧力室に向かう傾斜角度とを略同一に設定することが提案されている(「特許文献2」参照)。しかし、この手段では、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体の外面に密着させることはできても、シリンダ内面に密着させることはできず、シリンダ内面との間に隙間を形成してしまうので、該ピストンの円筒状外周部が波を打つように撓みや折曲りを発生し、該ピストンに亀裂や孔等を発生させてしまう。
【特許文献1】特開昭61−197779号公報
【特許文献2】特開平9−53566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のフッ素樹脂製のピストンは、ゴム製のピストンとは相違して該ピストンの円筒状外周部に十分な可撓性がないため、該円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることが難しく、該ピストンに亀裂や孔等が発生し、実用上十分な耐久性を確保することができない点にある。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りを生じると、該撓み部や折曲り部と折返し部との間に空間が形成される場合があり、その空間に空気が残留する等してポンプの定量性能が低下すると共に、前記空間に液溜まりを生じる場合もあり、ポンプの液置換性能が低下する点にある。またポンプ圧力室を洗浄する際に該ピストンの円筒状外周部に生じる撓みや折曲りによって、折返し部まで洗浄液が届き難くなるため、洗浄に時間を要する点にある。
【0007】
さらに、液晶等のFPDの製造プロセスにおいては、例えばガラス基板にレジスト液を塗布する際の塗布ムラを3%以下、好ましくは1%以下に抑える必要があり、このため、前記レジスト液等の薬液を供給するポンプには、1回の吐出工程において液体を一定流量で連続的に吐出できる高い定流量性能が要求されるが、前記ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りを生じると、該撓みや折曲りによって吐出工程中の流量が乱れ、要求される定流量性能が得られない点にある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、腐食性の液体を供給するためのポンプに用いることができ、しかも耐久性、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができるピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のピストンは、シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有することを特徴としている。
【0010】
上記構成を有する本発明のピストンは、該ピストンをフッ素樹脂で形成するに当って、該ピストンの円筒状外周部を1mm以下の厚さにすることで、該ピストンの円筒状外周部に十分な可撓性を付与することができ、柔軟性に優れ、かつ略一定の曲率でピストン支持体外面とシリンダ内面の2面間の隙間で折返すことができ、屈曲性能の高いピストンになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングすることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。
【0011】
本発明のピストンでは、折返し部の内径が外径の80%以上であることが好ましい。
【0012】
折返し部の内径が外径の80%以上、つまり該ピストンの円筒状外周部の内径が外径の80%以上であると、折返し部の歪量(伸び量)を小さくして該ピストンの円筒状外周部が塑性変形してしまうのを防止することができ、該ピストンの円筒状外周部の撓みや折曲りを防止しながらその形状を均一にすることができる。これにより、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体外面とシリンダ内面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができ、特に、ポンプの定流量性能の向上に高い効果を発揮することができる。なお、折返し部の外径に対する内径比(該ピストンの円筒状外周部の外径に対する内径比)が過大であると、折返し部の曲げ半径(ピストン支持体外面とシリンダ内面間の隙間)が小さくなり過ぎて、折返し部で座屈を生じる可能性があるため、折返し部の内径は外径の98%未満とすることが好ましい。
【0013】
本発明のピストンでは、フッ素樹脂からなる被削物を切削してピストン半製品を成形した後にその半製品に施す二次加工によって形成されていることが好ましい。
【0014】
ピストンが、フッ素樹脂からなる被削物を切削してピストン半製品を成形した後にその半製品に施す二次加工によって形成されていると、前記折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって前記折返し部を形成することができ、例えば折返し部を有するピストンを切削で形成する場合と比べて、切削加工を容易に行うことができる。つまり切削加工としては形状の簡単なピストン半製品を成形する切削加工のみを行えば良い。またポンプ駆動時、折返し部はその形成時の初期位置からシリンダ内面或いはピストン支持体外面に変位しても、ピストン全体を切削した場合に現れる形成時の初期形状の影響を残すことなく、シリンダ内面或いはピストン支持体外面に密着することができるようになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体外面とシリンダ内面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストンが、ポンプへのセット状態の形状に形成されているので、ポンプの組立てを容易に行うことができる。
【0015】
本発明のピストンの製造方法は、シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有するピストンの製造方法であって、フッ素樹脂からなる被削物を切削して、折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工によって前記折返し部を形成することを特徴としている。
【0016】
本発明のピストンの製造方法によれば、前記折返し部を、該折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって形成するので、例えば折返し部を有するピストンを切削で形成する場合と比べて、切削加工を容易に行うことができる。つまり切削加工としては形状の簡単なピストン半製品を成形する切削加工のみを行えば良い。またポンプ駆動時、折返し部はその形成時の初期位置からシリンダ内面或いはピストン支持体外面に変位しても、ピストン全体を切削した場合に現れる形成時の初期形状の影響を残すことなく、シリンダ内面或いはピストン支持体外面に密着することができるようになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部をピストン支持体外面とシリンダ内面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストンが、ポンプへのセット状態の形状に形成されているので、ポンプの組立てを容易に行うことができる。
【0017】
本発明のポンプは、シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有し、該フランジ部がシリンダに取付けられることを特徴としている。
【0018】
上記構成を有する本発明のポンプは、該ピストンをフッ素樹脂で形成するに当って、該ピストンの円筒状外周部を1mm以下の厚さにすることで、該ピストンの円筒状外周部に十分な可撓性を付与することができ、柔軟性に優れ、かつ略一定の曲率でピストン支持体外面とシリンダ内面の2面間の隙間で折返すことができ、屈曲性能の高いピストンになる。これにより、該ピストンの円筒状外周部がピストン支持体外面とシリンダ内面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングすることができるので、該ピストンに亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストンで実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストンの円筒状外周部に撓みや折曲りが生じないので、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、腐食性の液体を供給するためのポンプに用いることができ、しかも耐久性、ポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室の洗浄時間を短縮することができるピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプの実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、第1の実施形態に係るピストンを示す断面図である。ピストン1は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されており、中間部で内側或いは外側に折返して(捲返して)なる円筒状外周部(以下「ローリング部」)2を備えている。このローリング部2は、曲げ角度略180度の折返し部3と、この折返し部3の内周側端部及び外周側端部から軸心線に沿って同方向に平行に延出される内周部4及び外周部5と、から構成されている。また内周部4の端部には、この端部を閉鎖端部にする円板状の端板部6が設けられ、外周部5の端部には、この端部から半径方向外側に向かって垂直に立ち上がる円環状の板体であって、平坦な両主面が軸方向に向くフランジ部7が設けられている。端板部6には、円柱状であって、外周面に雄ねじを有するネジ結合用の凸部8が、該端板部6の中央部から内周部4の内側に向かって同軸上に突出されている。凸部8には、ネジ結合用に別に製造された部品であって、内外周面に雄ねじを有する金属スリーブ9が、埋込み状態で同軸上に装着固定されている。なお、図例のピストン1は、ローリング部2が、内周部4の長さより外周部5の長さが短い引きタイプ(吸込工程からポンプ動作を開始するタイプ)の初期形状に形成されているが、外周部5の長さが長い押しタイプ(吐出工程からポンプ動作を開始するタイプ)の初期形状に形成しても良い。
【0022】
ここで、前記ピストン1は、ローリング部2が0.1mm以上で1mm以下の厚さAに形成され、可撓性を有している。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。前記ピストン1を製造するに際して、図2(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物1Aを準備する。なお、図例の被削物1Aは、外形が、前記ピストン1よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0024】
前記ピストン1を製造するには、被削物1Aを切削して、図2(B)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の前記ピストン1のピストン本体1Bの形状にする。該ピストン本体1Bには、ローリング部2(折返し部3、内周部4、外周部5)、端板部6、フランジ部7、凸部8に加えて、該凸部8に前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔9aが形成されている。そして、切削加工によって得られた前記ピストン本体1Bの下孔9aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図1に示した前記ピストン1を得ることができる。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ10は、例えば液晶等のFPDや半導体の製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン1が該ポンプ10の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。該ポンプ10は、シリンダ11がシリンダ本体12と、該シリンダ本体12の先端部に取付けられるヘッド部13と、から構成されている。該シリンダ11の外側には、空気圧シリンダやリニアモータ等の図示しない往復動駆動装置が取付けられ、該往復動駆動装置によって軸方向に往復駆動されるピストンロッド14の先端に、外形が円柱状のピストン支持体15がシリンダ11の内面との間に所定の隙間を有して取付けられている。該ピストン支持体15は、ピストンロッド14を介してシリンダ11内に軸方向に移動自在に収容支持され、往復動駆動装置によって往復駆動される。そして、前記ピストン1がシリンダ11内に配置されている。該ピストン1は、内周部4の閉鎖端部を構成している端板部6がピストン支持体15の先端面に凸部8でネジ結合されて密着状態で固定取付けされ、内周部4がピストン支持体15の先端から外周面に沿って密着状態でピストン支持体15の基端部に向かって延設される。つまり内周部4がピストン支持体15の先端面及び外周面を密着状態で囲んでいる。また折返し部3はピストン支持体15の外周面にあり、外周部5が折返し部3を経てシリンダ本体12の内周面に沿って密着状態で内周部4と反対にシリンダ11のヘッド部13側に向かって延設され、該外周部5の開放端部から立上がるフランジ部7がシリンダ本体12とヘッド部13との接合面間で挟着保持されてシリンダ11に固定取付けされている。シリンダ11内には、該ピストン1とヘッド部13によって圧力室16が画成されている。ヘッド部13には、圧力室16に連通する吸込口17及び吐出口18が開口し、吸込口17は、図示しない逆止弁或いは吸込側エアオペバルブを設けた配管を介して液体タンクに連通接続され、吐出口18は、図示しない逆止弁或いは吐出側エアオペバルブを設けた配管を介して吐出液供給部に連通接続されている。なお、該ポンプ10では、ピストン1以外の接液部であるヘッド部13等も該ピストン1と同様にPTFE等のフッ素樹脂で形成されている。
【0026】
また、シリンダ11内には、ピストン1とシリンダ本体12によって前記圧力室16と反対側に負圧室19が画成されている。シリンダ本体12には、負圧室19に連通する空気吸込口20が開口し、空気吸込口20には、図示しない真空発生機器が接続されている。負圧室19は、真空発生機器による吸気作用により、圧力が圧力室16より十分低く維持され、ポンプ駆動時、ピストン1の内周部4及び外周部5をピストン支持体15の外周面及びシリンダ11の内周面に密着させた状態で折返し部3を変位しながら、ローリング部2をローリングさせるものである。
【0027】
また、ピストンロッド14は、その一端に一体に有する雄ネジ部14aがピストン支持体15を貫通し、ピストン1の金属スリーブ9に直接ネジ結合され、金属スリーブ9と前記雄ネジ部14aの基端部に一体に有するカラー14bとの間にピストン支持体15を挟持し、ピストンロッド14、ピストン支持体15、ピストン1の3部品を同軸上で直結している。
【0028】
上記のように構成されたポンプ10は、ピストン1が引きタイプの初期形状に形成され、その初期形状でポンプ10に組付けられるため、往復駆動装置によってピストン支持体15を往復駆動すると、ピストン支持体15と一体にピストン1の端板部6が図3に示す初期位置から右側に移動する吸入工程において、ピストン1の内周部4の長さが短くなり、ピストン1の外周部5の長さが長くなり、シリンダ本体12の内周面とピストン支持体15の外周面間の隙間で、ピストン1の折返し部3が右側に変位しながらピストン1のローリング部2がローリングする。これに伴って圧力室16の容積が拡大し、その過程で圧力室16に液体タンク内のレジスト液等の液体が吸込まれる。一方、ピストン支持体15と一体にピストン1の端板部6が右側の移動終端位置から左側に移動して図3に示す初期位置に復帰する吐出工程において、ピストン1の内周部4の長さが長くなり、ピストン1の外周部5の長さが短くなり、シリンダ本体12の内周面とピストン支持体15の外周面間の隙間で、ピストン1の折返し部3が左側に変位しながらピストン1のローリング部2がローリングする。これに伴って圧力室16の容積が縮小し、その過程で圧力室16内の液体が吐出液供給部に供給される。このようなピストン1の往復駆動によって、吐出液供給部に液体タンク内の液体を一定流量で一定量供給することができる。
【0029】
以上、第1の実施形態に係るピストン1は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン1がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン1の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している。また第1の実施形態に係るピストン1は、フッ素樹脂からなる被削物1Aを切削して形成されて製造されいる。また第1の実施形態に係るピストン1を備えたポンプ10は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン1がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン1のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。そして、該ピストン1をフッ素樹脂で形成するに当って、該ピストン1のローリング部2を1mm以下の厚さAにすることで、該ピストン1のローリング部2に十分な可撓性を付与することができ、柔軟性に優れ、かつ略一定の曲率でピストン支持体外面15とシリンダ11内面の2面間の隙間で折返すことができ、屈曲性能の高いピストン1になっている。これにより、該ピストン1のローリング部2がピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に密着しながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングすることができるので、該ピストン1のローリング部2に亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストン1で実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストン1のローリング部2に撓みや折曲りが生じないので、ポンプ10の定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室16の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストン1が、ポンプ10へのセット状態の形状に形成されているので、例えば折返し部3が未成形の状態で製造されているピストンに対し折返し部を形成しながらポンプを組立てるのに比べ、ポンプ10の組立てを容易に行うことができる。
【0030】
また、ポンプ圧力室16の洗浄時には、ピストン1の折返し部3をなくすように、ピストン支持体15を図3に示す初期位置からさらに左側に移動させ、ピストン1の端板部6をフランジ部7に対して離間させ、ピストン1から折返し部3及び外周部5をなくすことで、液体が溜まる部分がなくなるため、さらに液置換性能が向上し、洗浄時間も大幅に短縮することができる。
【0031】
また、ピストン支持体15を挟んでピストンロッド14とピストン1の内周部4の閉鎖端部(端板部6)とを直結することにより、ピストンロッド14,ピストン支持体15,ピストン1の3部品を確実に同軸上で一体に連結することができるので、ピストン1の軸ずれ等によるローリング部2の偏磨耗を防止することができ、ピストン1の耐久性(寿命)が向上し、引いてはポンプ10の寿命を向上することができる。
【0032】
なお、第1の実施形態では、該ピストン1のピストン本体1Bをフッ素樹脂からなる被削物1Aを切削して形成したが、該ピストン1のピストン本体1Bは射出成形によって製作しても良い。また該ピストン1はインサート成形によってピストン本体1Bに金属スリーブ9を一体化した状態で製作しても良い。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態を図4〜図6を参照して説明する。図4は、第2の実施形態に係るピストンを示す断面図であり、該ピストン21は、折返し部3の内径(R1×2)が外径(R2×2)の80%以上で、かつ98%未満になるように形成されている。つまりローリング部2の内径(R1×2)が外径(R2×2)の80%以上で、かつ98%未満になるように形成されている。これ以外の構造は、第1の実施形態に係るピストン1と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0034】
前記ピストン21における折返し部2の外径(R2×2)に対する内径(R1×2)比(ローリング部2の外径(R2×2)に対する内径(R1×2)比、以下「ローリング部2の内外径比」という)は、90%以上で、かつ98%未満がより好ましい。
【0035】
図5は、第2の実施形態に係るピストンの製造方法を示す断面図である。該ピストン21を製造するに際して、図5(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物21Aを準備する。なお、図例の被削物21Aは、外形が、前記ピストン21よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0036】
前記ピストン21を製造するには、被削物20Aを切削して、図5(B)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン21のピストン本体21Bの形状にする。該ピストン本体21Bは、ローリング部2(折返し部3、内周部4、外周部5)、端板部6、フランジ部7、凸部8に加えて、該凸部8に前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔29aが形成されている。そして、切削加工によって得られた前記ピストン本体21Bの下孔28aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図4に示した前記ピストン21を得ることができる。
【0037】
図6は、第2の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ22は、例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン21が該ポンプ22の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。これ以外の構造及び動作は、第1の実施形態のポンプ10と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0038】
以上、本発明の第2の実施形態に係るピストン21は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン21がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン21の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している構成に、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であることが付加されている。また第2の実施形態に係るピストン21は、フッ素樹脂からなる被削物21Aを切削して形成されて製造されている。また第2の実施形態に係るピストン21を備えたポンプ22は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン21がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン21のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。ここで、ローリング部2の内外径比が大きいと、折返し部2の曲率は小さくなり、折返し部2で座屈の可能性が大きくなるが、歪量(伸び量)は小さくなる。反対にローリング部2の内外径比が小さいと、折返し部2の曲率は大きくなり、折返し部2で座屈の可能性が小さくなるが、歪量(伸び量)は大きくなる。歪量(伸び量)が大きいとローリング部2が塑性変形してしまい、ローリング部2に撓みや折曲りを生じ、形状が均一ならず、ポンプ22の定流量性能が低下する。そして、ローリング部2の内外径比を80%以上、好ましくは90%以上と大きくすることで、折返し部3の歪量(伸び量)を小さくして該ピストン21のローリング部2が塑性変形してしまうのを防止することができ、該ピストン21のローリング部2の撓みや折曲りを防止しながらその形状を均一にすることができる。これにより、該ピストン21のローリング部2をピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができ、ポンプ22の定流量性能の向上に高い効果を発揮することができる。このため、液晶等のFPDの製造プロセスにも適用できるポンプ22の定流量性能を得ることができる。また折返し部2での座屈はローリング部2の内外径比を98%未満とすることで防止することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態を図7〜図10を参照して説明する。図7は、第3の実施形態に係るピストンを示す断面図であり、該ピストン31は、その製造方法が第2の実施形態のピストン21の製造方法と異なるだけであり、構造的には第2の実施形態に係るピストン21と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0040】
図8は、第3の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図、図9は、第3の実施形態に係るピストンの製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。該ピストン31を製造するに際して、図8(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物31Aを準備する。なお、図例の被削物31Aは、外形が、該ピストン31よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0041】
前記ピストン31を製造するには、被削物31Aを切削して、図8(B)に示すような前記ピストン31の折返し部3が未成形のピストン半製品31B(ピストン本体の半製品)を成形する。この切削加工(一次加工)によって、前記ピストン31の内周部4と端板部6及び凸部8の製品形状を得ると共に、図9にも示すように、内周部4の開放端部に、前記ピストン31の折返し部3と外周部5になる折返し予定部33を連続一体に成形する。該折返し予定部33は、先端側が、所定の曲げ半径を持って半径方向外側に曲げ角度略90度で曲げられた断面L形に成形され、かつ長さが前記ピストン31の折返し部3と外周部5の長さを合わせた長さと同じ寸法に成形されている(図9の破線参照)。また折返し予定部33の先端部に、前記ピストン31のフランジ部7になる端フランジ部37を連続一体に成形する。該端フランジ部37は、折返し予定部33の先端部から、前記ピストン1のフランジ部7と同様に、半径方向外側に向かって垂直に立ち上がり、平坦な両主面が軸方向に向く円環状の板体に成形されている。さらに凸部8には、前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔39aが形成されている。
【0042】
上記のようにピストン半製品31Bは、前記ピストン31の内周部4と端板部6及び凸部8に加え、前記ピストン31の折返し部3と外周部5になる折返し予定部33と、前記ピストン31のフランジ部7になる端フランジ部37と、前記金属スリーブ9を装着するための下孔39aと、を有し、前記ピストン31の折返し部3がなくなるまでフランジ部7を端板部6から離した形状に成形され、前記ピストン31のローリング部2の製品形状は未成形である。
【0043】
次いで、ピストン半製品31Bの折返し予定部33に対し、前記折返し部3を形成する二次加工を施す。該二次加工は、例えば折返し予定部33に熱を加えながら該折返し予定部33を曲げ具に沿わせて曲げる等の熱処理による癖付け、或いは、折返し予定部33を一対の曲げ型を用いて挟む等のプレス加工による癖付け、或いは折返し予定部33に熱を加えながら該折返し予定部33を一対の曲げ型を用いて挟む等の熱処理とプレス加工併用による癖付けによって、前記折返し部3を形成する。このような二次加工によって、図8(C)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン31のピストン本体31Cを形成する。該ピストン本体31Cは、ピストン半製品31Bに施した二次加工によって、前記ピストン31の折返し部3と外周部5及びフランジ部7が追加形成され、ローリング部2、端板部6、フランジ部7、凸部8、下孔39aが形成されている。そして、二次加工によって得られた前記ピストン本体31Cの下孔39aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図7に示した前記ピストン31を得ることができる。
【0044】
図10は、第3の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ22は、例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン31が該ポンプ32の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。これ以外の構造及び動作は、第1の実施形態のポンプ10と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0045】
以上、第3の実施形態に係るピストン31は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン31がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン31の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している構成に、該ピストン31のピストン本体31Cがフッ素樹脂からなる被削物31Aを切削してピストン半製品31Bを形成した後にその半製品31Bに施す二次加工によって形成されていることが付加されている。また第3の実施形態に係るピストン31は、フッ素樹脂からなる被削物31Aを切削して、折返し部3が未成形の半製品31Bを成形した後、その半製品31Bに施す二次加工によって前記折返し部3を形成することによって製造されている。また第3の実施形態に係るピストン31を備えたポンプ32は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン31がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン31のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。そして、ピストン成形時(ピストン本体成形時)に折返し部3を成形している第1及び第2の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン1,21に比べ、第3の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン31は、前記折返し部3を、該折返し部3が未成形の半製品31Bを成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって形成するので、ピストン半製品31Bの形状が簡単になり、ピストン半製品31Bを成形する切削加工を容易に行うことができる。またピストン成形時(ピストン本体成形時)に折返し部3を成形している第1及び第2の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン1,21の場合、ポンプ駆動時、成形時に成形された該折返し部3が成形時の位置から成形時の初期形状が残った状態でシリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に変位し、シリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面と擦れ、成形時に成形された折返し部に磨耗を生じ、この磨耗によってもピストンの耐久性が低下し、またシリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に変位した成形時に成形された折返し部を基点にその前後に撓みや折曲りを発生し、該撓みや折曲がりによってポンプの定流量性能、定量性能、液置換性能が低下すると共に、ポンプ圧力室16の洗浄に時間を要する虞があるが、第3の実施形態に係るフッ素樹脂製のピストン31は、前記折返し部3を、該折返し部3が未成形の半製品31Bを成形した後、その半製品に施す二次加工、例えば熱処理やプレス加工による癖付けによって形成するので、ポンプ駆動時、折返し部3はその形成時の初期位置からシリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に変位しても、形成時の初期形状を残すことなく、シリンダ11の内周面或いはピストン支持体15の外周面に密着することができるようになる。これにより、該ピストン31のローリング部2をピストン支持体15の外周面とシリンダ11の内周面に確実に密着させながら、この2面間の隙間で撓みや折曲りを生じることなく円滑にローリングさせることができるので、該ピストン31に亀裂や孔等が発生するのを防止することができ、フッ素樹脂製のピストン31で実用上十分な耐久性を確保することができる。また該ピストン31のローリング部2に撓みや折曲りが生じないので、ポンプ32の定流量性能、定量性能、液置換性能を向上することができると共に、ポンプ圧力室16の洗浄時間を短縮することができる。しかもピストン31が、ポンプ32へのセット状態の形状に形成されているので、例えば折返し部3が未成形の状態で製造されているピストンに対し折返し部を形成しながらポンプを組立てるのに比べ、ポンプ32の組立てを容易に行うことができる。
【0046】
次に、本発明の第4及び第5の実施形態を図11〜図16を参照して説明する。第4に実施形態に係るピストン41と第5の実施形態に係るピストン51とは、構造的には全く同じであり、その製造方法のみが異なっている。図11は、第4及び第5の実施形態に係るピストンを示す断面図であり、第4及び第5の実施形態に係る各ピストン41,51は、その製造方法が第2及び第3の実施形態のピストン21の製造方法と異なるだけであり、構造的には第2及び第3の実施形態のピストン21,31と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0047】
図12は、第4の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図、図13は、第4の実施形態に係るピストンの製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。該ピストン41を製造するに際して、図12(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物41Aを準備する。なお、図例の被削物41Aは、外形が、該ピストン41よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0048】
前記ピストン41を製造するには、被削物41Aを切削して、図12(B)に示すような前記ピストン41の折返し部3が未成形のピストン半製品41B(ピストン本体の半製品)を成形する。この切削加工(一次加工)によって、前記ピストン41の内周部4と端板部6及び凸部8の製品形状を得ると共に、図13にも示すように、内周部4の開放端部に、前記ピストン41の折返し部3と外周部5になる折返し予定部43を連続一体に成形する。該折返し予定部43は、先端側が、所定の曲げ半径を持って半径方向外側に曲げ角度略90度で曲げられた断面L形に成形され、かつ長さが前記ピストン41の折返し部3と外周部5の長さを合わせた長さと同じ寸法に成形されている(図13の破線参照)。また折返し予定部43の先端部に、前記ピストン41のフランジ部7になる湾曲フランジ部47を連続一体に成形する。該湾曲フランジ部47は、折返し予定部43の先端部から軸心線に沿って内周部4と反対側に突出され、円形に湾曲した両主面が半径方向に向く円環状に成形されている。さらに凸部8には、前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定するための有底の下孔49aが形成されている。
【0049】
上記のようにピストン半製品41Bは、前記ピストン41の内周部4と端板部6及び凸部8に加え、前記ピストン41の折返し部3と外周部5になる折返し予定部43と、前記ピストン41のフランジ部7になる湾曲フランジ部47と、前記金属スリーブ9を装着するための下孔49aと、を有し、前記ピストン41の折返し部3を略90度曲げ戻した形状に成形され、前記ピストン41のローリング部2の製品形状は未成形である。
【0050】
次いで、ピストン半製品41Bの折返し予定部43に対し、前記折返し部3を形成する二次加工を施す。該二次加工は、例えば折返し予定部43に熱を加えながら該折返し予定部43を曲げ具に沿わせて曲げる等の熱処理による癖付け、或いは、折返し予定部43を一対の曲げ型を用いて挟む等のプレス加工による癖付け、或いは折返し予定部43に熱を加えながら該折返し予定部43を一対の曲げ型を用いて挟む等の熱処理とプレス加工併用による癖付けによって、前記折返し部3を形成する。このような二次加工によって、図12(C)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン41のピストン本体41Cを形成する。該ピストン本体41Cは、ピストン半製品41Bに施した二次加工によって、前記ピストン41の折返し部3と外周部5及びフランジ部7が追加形成され、ローリング部2、端板部6、フランジ部7、凸部8、下孔49aが形成されている。そして、二次加工によって得られた前記ピストン本体41Cの下孔49aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図11に示した前記ピストン41を得ることができる。
【0051】
続いて、図14は、第5の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図、図15は、第5の実施形態に係るピストンの製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。該ピストン51を製造するに際して、図14(A)に示すようなPTFE等のフッ素樹脂からなる被削物51Aを準備する。なお、図例の被削物51Aは、外形が、該ピストン51よりもやや大きい円柱形状であるが、多角柱形状でも良い。また材料費の削減等を図るために、仮想線で示すように、一端面の中央部に凹部を設けても良い。
【0052】
前記ピストン51を製造するには、被削物51Aを切削して、図14(B)に示すような前記ピストン51の折返し部3が未成形のピストン半製品51B(ピストン本体の半製品)を成形する。この切削加工(一次加工)によって、前記ピストン51の内周部4と端板部6及び凸部8の製品形状を得ると共に、図15にも示すように、内周部4の開放端部に、前記ピストン51の折返し部3と外周部5になる折返し予定部53を連続一体に成形する。該折返し予定部53は、内周部4の開放端部からストレートに延び円筒状に成形され、かつ長さが前記ピストン51の折返し部3と外周部5の長さを合わせた長さと同じ寸法に成形されている(図15の破線参照)。また折返し予定部53の先端部に、前記ピストン51のフランジ部7になる逆フランジ部57を連続一体に成形する。該逆フランジ部57は、折返し予定部53の先端部から半径方向内側に向かって略垂直に立上がり、平坦な両主面が軸方向に向く円環状の板体に成形されている。さらに凸部8には、前記金属スリーブ9を同軸上にネジ込み固定する有底の下孔59aが形成されている。
【0053】
上記のようにピストン半製品51Bは、前記ピストン51の内周部4と端板部6及び凸部8に加え、前記ピストン51の折返し部3と外周部5になる折返し予定部53と、前記ピストン51のフランジ部7になる逆フランジ部57と、前記金属スリーブ9を装着するための下孔59aと、を有し、前記ピストン51の折返し部3を略180度曲げ戻した形状に成形され、前記ピストン51のローリング部2の製品形状は未成形である。
【0054】
次いで、ピストン半製品51Bの折返し予定部53に対し、前記折返し部3を形成する二次加工を施す。該二次加工は、例えば折返し予定部53に熱を加えながら該折返し予定部53を曲げ具に沿わせて曲げる等の熱処理による癖付け、或いは、折返し予定部53を一対の曲げ型を用いて挟む等のプレス加工による癖付け、或いは折返し予定部53に熱を加えながら該折返し予定部53を一対の曲げ型を用いて挟む等の熱処理とプレス加工併用による癖付けによって、前記折返し部3を形成する。このような二次加工によって、図14(C)に示すように、前記金属スリーブ9を装着固定する前の該ピストン51のピストン本体51Cを形成する。該ピストン本体51Cは、ピストン半製品51Bに施した二次加工によって、前記ピストン51の折返し部3と外周部5及びフランジ部7が追加形成され、ローリング部2、端板部6、フランジ部7、凸部8、下孔59aが形成されている。そして、二次加工によって得られた前記ピストン本体51Cの下孔49aに対し、前記金属スリーブ9をネジ込んで装着固定することにより、図11に示した前記ピストン51を得ることができる。
【0055】
なお、第4及び第5の実施形態に係るピストンの製造方法において、該製造方法から明らかなように、前記ピストン41,51の折返し部3を曲げ戻した形状のピストン半製品41B、51Bを成形する場合の該曲げ戻し角度は、略90度から略180度の範囲内であれば、何度で曲げ戻した形状でも二次加工によってピストン41,51のピストン本体41C,51Cを適正に形成することができる。
【0056】
図16は、第4或いは第5の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。該ポンプ42(第4の実施形態に係るピストンを備えたポンプ),52(第4の実施形態に係るピストンを備えたポンプ)は、例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、かつ定流量で供給するためのもので、前記ピストン41,52が該ポンプ42,52の作動膜であるダイヤフラムとして用いられている。これ以外の構造及び動作は、第1の実施形態のポンプ10と同じであるため、同一部分に同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0057】
以上、第4及び第5の実施形態に係るピストン41,51は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストン41,51がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン41,51の円筒状外周部としてのローリング部2が1mm以下の厚さAで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有している構成に、該ピストン41,51のピストン本体41C,51Cがフッ素樹脂からなる被削物41A,51Aを切削してピストン半製品41B,51Bを形成した後にその半製品41B,51Bに施す二次加工によって形成されていることが付加されている。また第4及び第5の実施形態に係るピストン41,51は、フッ素樹脂からなる被削物41A,51Aを切削して、折返し部3が未成形の半製品41B,51Bを成形した後、その半製品41B,51Bに施す二次加工によって前記折返し部3を形成することによって製造されている。また第4及び第5の実施形態に係るピストン41,51を備えたポンプ42,52は、シリンダ11内に移動自在に支持され往復駆動されるピストン41,51がフッ素樹脂で形成されており、該ピストン41,51のローリング部2が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、ローリング部2の内外径比が80%以上で、かつ98%未満であり、該ローリング部2が略180度の折返し部3を経て該ローリング部2の開放端部にフランジ部7を有し、該フランジ部7がシリンダ11に取付けられている。従って、第3の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0058】
次に、円筒状外周部としてのローリング部が1mm以下の厚さで、ローリング部の内外径比が80%以上の第2の実施形態に係るピストン(実施例1)と、ローリング部が実施例1と同じ1mm以下の厚さで、ローリング部の内外径比が80%未満の第1の実施形態に係るピストン(実施例2)と、ローリング部が1mmを超える(上回る)厚さで、ローリング部の内外径比が80%以上のピストン(比較例1)と、ローリング部が比較例1と同様に1mmを超える厚さで、ローリング部の内外径比が80%未満のピストン(比較例2)について、ローリング部の屈曲性能、ポンプ定流量性能、ポンプ定量性能を比較したした結果を下記表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
上記の表1からも明らかなように、厚さ1mm以下のローリング部が屈曲性能に優れ、ポンプ定流量性能とポンプ定量性能の両方について液晶等のFPDや半導体の製造プロセスの使用条件を満たす結果が得られた。またローリング部の内外径比を80%以上にすることで、液晶等のFPDの製造プロセスにおいて、例えばガラス基板にレジスト液を塗布する際の塗布ムラを3%以下に抑えることができる高いポンプ定流量性能が得られた。なお、塗布ムラはローリング部の内外径比を90%以上にすることで1%以下に抑えることができる。
【0061】
以上、第1乃至第5の実施形態は本発明の好適な実施形態の一例を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。例えば液晶等のFPDや半導体製造プロセスに使用されるレジスト液の供給用としてのピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプを示したが、その他の種々の腐食性の液体供給用で、高い定流量性及び定量性が要求されるピストンとそのピストンの製造方法及びそのピストンを備えたポンプに好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るピストン製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【図11】本発明の第4及び第5の実施形態に係るピストンを示す断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係るピストン製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係るピストンの製造方法を示す説明図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係るピストン製造方法における折返し部形成工程の一例を示す説明図である。
【図16】本発明の第4及び第5の実施形態に係るピストンを備えたポンプの断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1、21、31、41、51 ピストン(ダイヤフラム)
2 ローリング部(円筒状外周部)
3 折返し部
7 フランジ部(外周部の開放端部)
1A、21A、31A、41A、51A 被削物
31B、41B、51B ピストン半製品
1B、21B、31C、41C、51C ピストン本体
10、22、32、42、42 ポンプ
11 シリンダ
15 ピストン支持体
A ローリング部の厚さ
R1 折返し部(ローリング部)の内径の半径
R2 折返し部(ローリング部)の外径の半径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有することを特徴としたピストン。
【請求項2】
折返し部の内径が外径の80%以上であることを特徴とした請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
フッ素樹脂からなる被削物を切削してピストン半製品を成形した後にその半製品に施す二次加工によって形成されていることを特徴とした請求項1に記載のピストン。
【請求項4】
シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有するピストンの製造方法であって、フッ素樹脂からなる被削物を切削して、折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工によって前記折返し部を形成することを特徴としたピストンの製造方法。
【請求項5】
シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有し、該フランジ部がシリンダに取付けられることを特徴としたポンプ。
【請求項1】
シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンであって、該ピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有することを特徴としたピストン。
【請求項2】
折返し部の内径が外径の80%以上であることを特徴とした請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
フッ素樹脂からなる被削物を切削してピストン半製品を成形した後にその半製品に施す二次加工によって形成されていることを特徴とした請求項1に記載のピストン。
【請求項4】
シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有するピストンの製造方法であって、フッ素樹脂からなる被削物を切削して、折返し部が未成形の半製品を成形した後、その半製品に施す二次加工によって前記折返し部を形成することを特徴としたピストンの製造方法。
【請求項5】
シリンダ内に移動自在に支持され往復駆動されるピストンがフッ素樹脂で形成されており、該ピストンの円筒状外周部が1mm以下の厚さで、可撓性を有し、該外周部が略180度の折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有し、該フランジ部がシリンダに取付けられることを特徴としたポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−285340(P2007−285340A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110749(P2006−110749)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】
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