説明

ピストン式コンクリートポンプの制御装置

【課題】簡単な構造でピストン式コンクリートポンプのバルブ切換時における油圧切換弁のサージ圧力や主油圧シリンダ等の衝突による騒音、振動を低減できるようにする。
【解決手段】ピストン式コンクリートポンプにおける各主油圧シリンダ4a,4bのヘッド側圧力室19a,19bに、各主油圧ピストン6a,6bがストロークエンドに近接するのを検出する近接センサ26a,26bを設ける。又、圧油給排ライン8a,8bに圧油を供給する油ポンプ20の吐出側に、圧力スイッチ27と圧抜弁28を設ける。油ポンプ20の吐出圧が圧力スイッチ27の設定値以上のときに、主油圧ピストン6a又は6bが近接センサ26a又は26bに検出されると、圧力スイッチ27の検出信号と近接センサ26a又は26bの検出信号とに基づいて圧抜弁28が作動して、油ポンプ20の吐出側が減圧されて、主油圧ピストン6a,6bを減速させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパ内のコンクリートを2本のコンクリート圧送用シリンダにより交互に吸入吐出して圧送するようにしたピストン式コンクリートポンプにおけるコンクリートの吸入吐出の切り換えを制御するためのピストン式コンクリートポンプの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホッパ内のコンクリートを2本のコンクリート圧送用シリンダにより交互に吸入吐出して圧送するようにしてあるピストン式コンクリートポンプには、種々の形式のものがあり、その一例としては、吸入吐出の切り換えを行う吸入吐出弁として、ホッパ内に収納した揺動管を左右に揺動させる揺動弁形式のものがある。
【0003】
揺動弁形式のピストン式コンクリートポンプは、2本の吸入吐出口が左右に並べて設けてあるホッパ内に、揺動管を左右方向へ揺動自在に収納して左右の吸入吐出口に交互に連通するようにすると共に、上記2本の吸入吐出口に、2本のコンクリート圧送用シリンダをそれぞれ連通させて、該各コンクリート圧送用シリンダに、洗浄室を介して2本の主油圧シリンダをそれぞれ接続し、且つ上記2本のコンクリート圧送用シリンダ内にそれぞれ収納したコンクリート圧送用ピストンと、2本の主油圧シリンダ内にそれぞれ収納した主油圧ピストンとが、ピストンロッドを介してそれぞれ一体に連結してある。更に、上記2本の主油圧シリンダの一端側圧力室同士を密封ラインで接続すると共に、上記各主油圧シリンダの他端側圧力室に、油ポンプとタンクを、途中に油圧切換弁を備えた圧油給排ラインを介し接続して、該油圧切換弁の切換えにより上記油ポンプから主油圧シリンダに交互に圧油を供給して上記主油圧ピストンを交互に前進後退させることにより上記コンクリート圧送用ピストンを交互に前進後退させ、コンクリート圧送用シリンダを交互に吸入吐出に切り換えられるようにした構成としてある。
【0004】
かかる構成としてあるピストン式コンクリートポンプでは、コンクリート圧送用シリンダの吸入吐出を切換えるために主油圧シリンダへの圧油の給排を油圧切換弁の切換えで行って、該主油圧シリンダ内の主油圧ピストンを前進後退させる際に、該主油圧ピストンがストロークエンドで主油圧シリンダの内壁に衝突することがあり、これにより、ピストン式コンクリートポンプの振動や騒音が発生することがある。又、ピストン式コンクリートポンプの吸入吐出を切換えるときの油圧切換弁のサージ圧力により、ピストン式コンクリートポンプに振動や騒音が発生することもある。そのため、従来、ピストン式コンクリートポンプの弁切換時の騒音や振動を低減するためのものが提案されてきている。
【0005】
たとえば、図5に一例を示す如く、ホッパ1内に設けた2つの吸入吐出口2a,2bに連通するように接続してある2本のコンクリート圧送用シリンダ3a,3bに、2本の主油圧シリンダ4a,4bを、洗浄室5を介して連結して、該主油圧シリンダ4a,4b内に収納した主油圧ピストン6a,6bを、コンクリート圧送用シリンダ3a,3b内に収納したコンクリート圧送用ピストン7a,7bに、ピストンロッド8a,8bを介して連結し、上記2本の主油圧シリンダ4a,4bに、片傾転油ポンプ9とタンク10を、油圧切換弁11と圧油給排ライン12を介し接続して、主油圧ピストン6a,6bを交互に前進後退させることに合わせてホッパ1内の揺動管13を揺動させて、ホッパ1内のコンクリートをコンクリート圧送用シリンダ3a,3bで交互に吸入吐出できるようにしてある揺動弁形式のコンクリートポンプにおいて、主油圧シリンダ4a,4b内の前進側ストロークエンド位置xよりも手前位置yに、近接センサ14a,14bを設置し、且つ該近接センサ14a,14bの作動信号に基づき揺動管13及び油圧切換弁11に切換指令S1,S2を出力すると共に、上記主油圧ピストン6a又は6bの1ストローク分の動作時間に基づいて設定された補正時間だけ傾転角を小さくし該補正時間経過後に主油圧ピストン6a又は6bを前進側ストロークエンド位置xから所要量後退させる間だけ傾転角を大きくするように片傾転油ポンプ9に制御指令Sを出力する制御器15を備えた構成のものとしてある。なお、図中、16は密封ラインを示す。
【0006】
かかる構成としてあるピストン式コンクリートポンプにおいて、弁の切換を行うときは、図5に示す如く、一方の主油圧ピストン4bが前進側ストロークエンド位置xよりも手前に設定された位置yに到着すると、一方の近接センサ14bが作動して信号が制御器15に送られ、次に、該制御器15において、該一方の近接センサ14bからの信号と前回他方の近接センサ14aから出力された信号とから、一方の主油圧ピストン6bの1ストローク分の動作時間を算出し、該時間に応じた補正時間の間だけ、片傾転油ポンプ9の傾転角を小さくする制御指令Sを該制御器15から出力して、片傾転油ポンプ9の圧油吐出量を減少させ、次いで、該補正時間が経過したときに、揺動管13及び油圧切換弁11に対して切換指令S1,S2を制御器15から出力し、しかる後、該制御器15から一方の主油圧ピストン6bが前進側ストロークエンド位置xから所要量後退させる間だけ片傾転油ポンプ9の傾転角を大きくする制御指令Sを出力して、片傾転油ポンプ9の圧油吐出量を増大させ、このようにして主油圧ピストン6a,6bの切換え時の大きな圧力変動を緩和することにより、圧送されるコンクリートに対する衝撃による脈動を低減し、配管振動やブーム振動を減少させるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
又、他の例としては、図示してないが、上記揺動弁形式のコンクリートポンプにおける2本の主油圧シリンダに、各主油圧ピストンが前進側ストロークエンドに達する直前位置にあることを検知する近接センサをそれぞれ設け、且つ油ポンプと主油圧シリンダとを接続する圧油供給ラインから分岐油路を分岐させて、該分岐油路の途中位置に静音用回路を設けると共に、該分岐油路の下流側端部を油タンクに接続して、上記近接センサが主油圧ピストンを検知したときに、上記静音用回路が開放側に切換わるようにした構成のものがある。かかる構成により、主油圧ピストンが前進側ストロークエンドに達する直前に主油圧ピストンを減速させて、主油圧ピストンが主油圧シリンダ内壁に衝突するときの衝撃音の発生を抑制するようにしたものがある(たとえば、特許文献2参照)。なお、該特許文献2に記載されたピストン式コンクリートポンプにおける各主油圧ピストンに、更に、圧縮コイルばねを介して突出部を形成した衝撃緩和部材を設けて、主油圧ピストンが前進側ストロークエンドに達する前に、該主油圧ピストンに段階的にクッション作用を与えて、主油圧ピストンが主油圧シリンダ内壁に衝突するときの衝撃音の発生を抑制するようにしたものも提案されてきている(たとえば、特許文献3参照)。
【0008】
更に、別の例としては、図示してないが、上記揺動弁形式のコンクリートポンプにおける2本の主油圧シリンダに、各主油圧ピストンの位置を検出する位置検出スイッチを設け、且つ、油ポンプと主油圧シリンダとを接続する圧油供給ラインに、メインリリーフ弁を設けると共に、該メインリリーフ弁に、下流側に電磁弁とタンクとを順に接続したサブリリーフ弁を接続して、上記位置検出スイッチが主油圧ピストンを検知したときに上記電磁弁を開放させるようにした構成のものがある。かかる構成により、主油圧ピストンが前進側ストロークエンドに達したときに、圧油をメインリリーフ弁からサブリリーフ弁のセット圧力でタンクへ流して主油圧ピストンを減速させ、主油圧ピストンが主油圧シリンダ内壁に衝突することによる騒音、振動の発生を低減するようにしたものがある(たとえば、特許文献4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−214332号公報
【特許文献2】特開2007−138817号公報
【特許文献3】特開2009−52473号公報
【特許文献4】特許第2510974号公報
【特許文献5】特公平07−056255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献1に記載されたものでは、各主油圧ピストンが主油圧シリンダの前進側ストロークエンドに達したときに十分に減速させることができないことがあり、このため、騒音低減の効果が十分に発揮されないことがあるという問題がある。
【0011】
又、上記特許文献2,3に記載されたものでは、油ポンプの吐出圧力が低圧で主油圧ピストンの前進後退が低速の状態のピストン式コンクリートポンプの運転がなされている場合であっても、各主油圧ピストンが前進側のストロークイエンドに達する度に、油ポンプから圧送される圧油が静音用回路を経てタンクに戻されてしまうため、コンクリートポンプの効率が悪くなるという問題がある。更に、特許文献3に記載されたものでは、主油圧シリンダ内に圧縮コイルばねを介して衝撃緩和部材を設けるようにしてあるが、構造が複雑になりすぎるという問題もある。
【0012】
更に又、上記特許文献4,5に記載されたものでは、サブリリーフ弁が作動しないときでも、位置検出スイッチの検出に基づいて電磁弁を作動させてしまう構造のものであるため、該電磁弁の寿命が短くなりやすく、このため、ピストン式コンクリートポンプの寿命に影響を与えたり、ピストン式コンクリートポンプのオーバーホールを行う頻度が多くなるという問題が懸念される。
【0013】
そこで、本発明は、ピストン式コンクリートポンプの寿命や効率に影響を与えることなく、簡単な構造で該コンクリートポンプのバルブ切換時における油圧切換弁のサージ圧力や主油圧シリンダ等の機械部品の衝突による騒音や振動を十分に低減できるようにしたピストン式コンクリートポンプの制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、2本のコンクリート圧送用シリンダ内のコンクリート圧送用ピストンと、2本の主油圧シリンダ内の主油圧ピストンとをピストンロッドを介してそれぞれ一体に連結して、該主油圧シリンダのキャップ側圧力室同士又はヘッド側圧力室同士を密封ラインで接続すると共に、各主油圧シリンダのヘッド側圧力室又はキャップ側圧力室に、油ポンプとタンクを圧油給排ラインと油圧切換弁を介して接続して、該油圧切換弁を切換えて上記油ポンプから主油圧シリンダに交互に圧油を供給することにより各主油圧ピストンを交互に前進後退させて、該主油圧ピストンが前進したときに上記コンクリート圧送用シリンダ内に吸入されているコンクリートの圧送を行い、且つ主油圧ピストンが後退したときに上記コンクリート圧送用シリンダ内にコンクリートを吸入するようにしてあるピストン式コンクリートポンプにおける上記各主油圧シリンダの前進側ストロークエンドの近傍位置に、各主油圧ピストンが前進側のストロークエンドに近接するのを検出する位置検出装置をそれぞれ設けると共に、上記圧油給排ラインに圧油を供給する油ポンプの吐出側に、圧力スイッチと圧抜弁を設け、該圧力スイッチの検出信号と上記いずれか一方の位置検出装置の検出信号とに基づいて上記圧抜弁を作動させて油ポンプからの圧油を抜くようにした構成とする。
【0015】
又、請求項2に対応して、上記構成における圧力スイッチと圧抜弁とを、油圧切換弁と油ポンプとの間に設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のピストン式コンクリートポンプの制御装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)2本のコンクリート圧送用シリンダ内のコンクリート圧送用ピストンと、2本の主油圧シリンダ内の主油圧ピストンとをピストンロッドを介してそれぞれ一体に連結して、該主油圧シリンダのキャップ側圧力室同士又はヘッド側圧力室同士を密封ラインで接続すると共に、各主油圧シリンダのヘッド側圧力室又はキャップ側圧力室に、油ポンプとタンクを圧油給排ラインと油圧切換弁を介して接続して、該油圧切換弁を切換えて上記油ポンプから主油圧シリンダに交互に圧油を供給することにより各主油圧ピストンを交互に前進後退させて、該主油圧ピストンが前進したときに上記コンクリート圧送用シリンダ内に吸入されているコンクリートの圧送を行い、且つ主油圧ピストンが後退したときに上記コンクリート圧送用シリンダ内にコンクリートを吸入するようにしてあるピストン式コンクリートポンプにおける上記各主油圧シリンダの前進側ストロークエンドの近傍位置に、各主油圧ピストンが前進側ストロークエンドに近接するのを検出する位置検出装置をそれぞれ設けると共に、上記圧油給排ラインに圧油を供給する油ポンプの吐出側に、圧力スイッチと圧抜弁を設け、該圧力スイッチの検出信号と上記いずれか一方の位置検出装置の検出信号とに基づいて上記圧抜弁を作動させて油ポンプからの圧油を抜くようにした構成としてあるので、簡単な構造で主油圧ピストンをストロークエンドの近傍位置で減速させることができ、ピストン式コンクリートポンプのバルブ切換時における油圧切換弁のサージ圧力や主油圧ピストンの主油圧シリンダ等の機械部品への衝突による騒音、振動を十分に低減することができる。又、圧力スイッチの検出信号といずれか一方の位置検出装置の検出信号とを受けたときに圧抜弁を作動させるようにしてあるので、ピストン式コンクリートポンプの寿命に影響を与えることはなく、又、油ポンプの吐出圧力が圧力スイッチを作動させない低圧状態でピストン式コンクリートポンプを運転している場合には、該ピストン式コンクリートポンプの効率を落とすことはない。
(2)又、圧力スイッチと圧抜弁とを、油圧切換弁と油ポンプとの間に設けるようにした構成としてあるので、より簡単な構造で(1)に記載したのと同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のピストン式コンクリートポンプの制御装置の実施の一形態を示す油圧回路図である。
【図2】図1の実施の形態における制御装置のタイムチャートである。
【図3】図1の実施の形態における制御装置の電気回路図である。
【図4】図1の実施の形態における制御装置のフローチャートである。
【図5】従来のピストン式コンクリートポンプの制御装置の一例を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1及至図4は本発明のピストン式コンクリートポンプの制御装置の実施の一形態として、図5に示したと同様の揺動弁形式のピストン式コンクリートポンプに適用した一例を示すもので、図示してない2本のコンクリート圧送用シリンダ内に収納したコンクリート圧送用ピストンと、2本の主油圧シリンダ4a,4b内に収納した主油圧ピストン6a,6bとをピストンロッド8a,8bを介しそれぞれ一体に連結して、該主油圧シリンダ4a,4bのキャップ側圧力室17a,17b同士を密封ライン18で接続すると共に、各主油圧シリンダ4a,4bのヘッド側圧力室19a,19bに、油ポンプ20の吐出側に接続してある圧油供給ライン21と、タンク22に接続してある圧油排出ライン23を、圧油給排ライン24a,24bと、油圧切換弁としての主四方弁25を介してそれぞれ接続して、該主四方弁25を切換えることにより上記油ポンプ20からの圧油を各主油圧シリンダ4a,4bに交互に供給して各主油圧ピストン6a,6bを交互に前進後退させるようにし、更に、上記主油圧ピストン6a又は6bが前進するときにコンクリート圧送用シリンダ内に吸入されているコンクリートの圧送が行われると共に、主油圧ピストン6b又は6aが後退するときにホッパ内のコンクリートがコンクリート圧送用シリンダ内に吸入されるようにしてある構成のピストン式コンクリートポンプにおいて、上記各主油圧シリンダ4a,4bの各前進側(押し側)のストロークエンドの近傍位置に、各主油圧ピストン6a,6bが前進してストロークエンドに近接するときに作動する主油圧ピストン6a,6bの位置検出装置としての近接センサ26a,26bを設け、且つ上記油ポンプ20の吐出側の圧油供給ライン21に、圧力スイッチ27を接続すると共に、該圧油供給ライン21とタンク22との間に電磁切換弁としての圧抜弁28を有する圧油戻しライン29を設け、上記近接センサ26a又は26bが作動しているときに上記圧力スイッチ27が設定圧力に達していると、圧抜弁28のソレノイドSOL.1が励磁されて上記油ポンプ20から吐出される圧油をタンク22に戻して圧抜きを行うようにした構成とする。
【0020】
図1において、30は主油圧シリンダ4a,4bの各ヘッド側圧力室19a,19bにおける前進側(押し側)のストロークエンドとなる位置であり、このストロークエンド位置30に達する手前の位置であるストロークエンド近傍位置に、前記した近接センサ26aと26bが設けられるようにしてある。31は主油圧シリンダ4a,4bの各ヘッド側圧力室19a,19b側の近接センサ26a,26bに対応する位置に設けてあるパイロット切換弁で、主油圧ピストン6a又は6bが前進側のストロークエンド位置30の手前位置に達したときに切換えられて、パイロット圧を主四方弁25に作用させることにより、該主四方弁25が切換えられるようにしてある。32は圧油供給ライン21に接続されている圧力スイッチ27の接続位置よりも下流側位置と主四方弁25との間に設けてあるリリーフ弁である。
【0021】
次に、図2は、図1に示す本発明のピストン式コンクリートポンプの制御装置のタイムチャートを示すもので、図1に示すように、左側の主油圧シリンダ4aが押し側で、右側の主シリンダ4bが戻し側であり、且つ主四方弁25が右側のクロスポートに切換えられている状態において、本発明のピストン式コンクリートポンプの制御装置は、左側の主油圧シリンダ4a内の主油圧ピストン6aが押されてストロークエンド近傍位置に達すると、近接センサ26aがON作動し、このとき、油ポンプ20の吐出側の圧力が圧力スイッチ27の設定した圧力(たとえば、10MPa程度)に達していて該圧力スイッチ27がONになっていると、圧抜弁28のソレノイドSOL.1が励磁されるようにしてある。これにより、油ポンプ20の吐出側の圧油がタンク22に流され、この状態で、主四方弁25が切り換えられることにより、圧力スイッチ27がOFFになり、同時に圧抜弁28のソレノイドSOL.1が消磁して非作動となるようにしてある。
【0022】
上記作動を実現するための本発明のピストン式コンクリートポンプの制御装置は、図3に示すような電気回路構成としてある。すなわち、一方の近接センサ26aと他方の近接センサ26bを並列に備え且つこれら各近接センサ26a,26bのリレーX1を備える近接センサ・左回路、近接センサ・右回路と、圧力スイッチ27とリレーX2とを備える圧力スイッチ回路と、上記リレーX1のメーク接点X1と上記リレーX2のメーク接点X2と圧抜弁29のソレノイドSOL.1を備える圧抜弁回路とを、電源に並列に備えた構成としてある。これにより、図2に示す如く、圧抜弁27は、上記いずれか一方の近接センサ26a,26bがON作動したときに上記圧力スイッチ27がON作動していると励磁されて、上記油ポンプ20から各主油圧シリンダ4a,4bのヘッド側圧力室19a,19bに交互に供給される圧油を抜くようにして、上記各主油圧ピストン6a,6bの移動速度をストロークエンド所要手前位置で落とすようにしてある。
【0023】
かかる構成において、図4に示す如く、ピストン式コンクリートポンプ(CP)の運転をスタートさせると、図1において、油ポンプ20から主四方弁25の右側のクロスポートを介して図上右側の主油圧シリンダ4bのヘッド側圧力室19bに圧油が供給される。これにより、上記主油圧シリンダ4b内の主油圧ピストン6bが、図1に矢印で示す方向に移動(後退)させられる。又、主油圧シリンダ4bのキャップ側圧力室17bと図上左側の主油圧シリンダ4aのキャップ側圧力室17aとは密封ライン18で接続されているので、上記主油圧ピストン6bが後退させられると、主油圧シリンダ4a内の主油圧ピストン6aが、図1に矢印で示す方向に移動(前進)させられ、図4に示す主油圧シリンダ・左押動作の状態になる。
【0024】
次に、上記左側の主油圧シリンダ4a内の主油圧ピストン6aが前進してストロークエンド位置30の手前位置に達すると、パイロット切換弁31のスプール先端が主油圧ピストン6aに押されると共に、該主油圧ピストン6aの位置を近接センサ26aが検知して、該近接センサ26aがONになる。これにより、図3に示すリレーX1を励磁し、該リレーX1のメーク接点X1がONになる。このとき、油ポンプ20の吐出圧力が圧力スイッチ27の設定値に達していると、図3に示す圧力スイッチ27のリレーX2を励磁してメーク接点X2がONの状態になっているので、圧抜弁28のソレノイドSOL.1が励磁させられ、圧抜弁28が閉位置から開位置に切換わって油ポンプ20からの圧油がタンク22に戻されることになる。このようにして圧油がタンク22に流されることにより油ポンプ20の吐出側の圧力が下がるので、主油圧ピストン6a,6bは速度を落とされてストロークエンドの方向に押されることになる。その後、主油圧ピストン6aにパイロット切換弁31のスプール先端が押されていたので、主四方弁25が図1における右側のクロスポート側から左側の平行ポート側に切換えられることになる。これにより、圧力スイッチ27がOFFになると、図3のリレーX2がOFFになり、圧抜弁28のソレノイドSOL.1が消磁して、圧抜弁28は閉位置に復帰する。
【0025】
次いで、主四方弁25が切換えられて油ポンプ20から主四方弁25の平行ポートを通して左側の主油圧シリンダ4aのヘッド側圧力室19aに圧油が供給されると、該左側の主油圧シリンダ4a内の主油圧ピストン6aが、キャップ側に移動(後退)させられると共に、上記主油圧シリンダ4aのキャップ側圧力室17aから右側の主油圧シリンダ4bのキャップ側圧力室17b内に密封ライン18を介して圧油が移動して、右側の主油圧シリンダ4b内の主油圧ピストン6bが、ヘッド側に移動(前進)させられ、図4に示す主油圧シリンダ・右押動作の状態になる。しかる後、該右側の主油圧シリンダ4b内の主油圧ピストン6bがヘッド側圧力室19bのストロークエンド位置30の手前位置に達すると、該主油圧ピストン6bの位置を近接センサ26bが検知すると共に、パイロット切換弁31のスプール先端が主油圧ピストン6bに押されることになり、図3に示すリレーX1を励磁し、メーク接点X1をONにする。このとき、油ポンプ20の吐出圧力が圧力スイッチ27の設定値に達していると、図3に示す、圧力スイッチ27のリレーX2が励磁してメーク接点X2がONの状態になっているので、圧抜弁28のソレノイドSOL.1が励磁させられ、圧抜弁28が閉位置から開位置に切換わって油ポンプ20からの圧油がタンク22に戻されることになる。その後、上記したように主油圧ピストン6bにパイロット切換弁31のスプール先端が押されていたので、主四方弁25が図1における左側の平行ポート側から右側のクロスポート側に切換えられることになり、図2に示す如く、圧力スイッチ27をOFFにして、圧抜弁28を非作動状態にし、以後同様に、ピストン式コンクリートポンプが制御されることになる。
【0026】
なお、油ポンプ20の吐出圧力が圧力スイッチ27の設定値未満の場合には、図3においてリレーX2が消磁されてメーク接点X2がOFFになっているので、近接センサ26a,26bが主油圧ピストン6a,6bを検知してメーク接点X1をONにしても、ソレノイドSOL.1が励磁されることはなく圧抜弁28は作動することはない。
【0027】
このように、本発明のピストン式コンクリートポンプの制御装置によれば、ピストン式コンクリートポンプにおける各主油圧シリンダ4a,4bのヘッド側圧力室19a,19bに、各主油圧ピストン6a,6bが前進してストロークエンドに近接するのを検出する近接センサ26a,26bを設けると共に、油ポンプ20吐出側に、圧力スイッチ27と、該圧力スイッチ27の検出信号と上記近接センサ26a,26bのいずれか一方の検出信号とを受けたときに上記油ポンプ20から各主油圧シリンダ4a,4bのヘッド側圧力室19a,19bに交互に供給される圧油を抜くように作動する圧抜弁28とを設けるようにした構成としてあるので、簡単な構造で主油圧ピストン6a,6bをストロークエンドの近傍位置(手前位置)で減速させることができ、ピストン式コンクリートポンプのバルブ切換時における主四方弁25のサージ圧力や主油圧ピストン6a,6bの主油圧シリンダ4a,4b等の機械部品への衝突による騒音、振動を十分に低減することができる。又、圧力スイッチ27の検出信号といずれか一方の近接センサ26a,26bの検出信号とを受けたときに圧抜弁28を作動させるようにしてあるので、ピストン式コンクリートポンプの寿命に影響を与えることはなく、又、油ポンプ20の吐出圧力が圧力スイッチ27を作動させない低圧状態でピストン式コンクリートポンプを運転している場合には、該ピストン式コンクリートポンプの効率を落とすことはない。
【0028】
なお、上記実施の形態では、一例として、揺動弁形式のピストン式コンクリートポンプに適用した場合について説明したが、これに限られるものではないこと、圧力スイッチ27と圧抜弁28は、主四方弁25の下流側の圧油給排ライン24a,24bにそれぞれ設けるようにしてもよいこと、上記実施の形態では、パイロット切換弁31のスプール先端を主油圧ピストン6a,6bが押すことにより主四方弁25を切換えるようにしてあるが、これに限られるものではなく、たとえば、主四方弁25を電磁切換弁として、近接センサ26a,26bの検出に基づいて切換えられるようにしてもよいこと、油圧切換弁25として四方弁を適用した場合について図示したが、これに限られるものではないこと、上記実施の形態における圧油給排ライン24a,24bの下流側端部を、主油圧シリンダ4a,4bのキャップ側圧力室17a,17bにそれぞれ接続して、該主油圧シリンダ4a,4bのヘッド側圧力室19a,19b同士を密封ライン18で接続するようにしてもよいこと、圧抜弁28は電磁切換弁に限られるものではなく、たとえば、圧力スイッチ27の検出信号といずれか一方の近接センサ26a,26bの検出信号とに基づいて油圧パイロットの向きが切換えられる電磁弁付のパイロット切換弁としてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
4a,4b 主油圧シリンダ
6a,6b 主油圧ピストン
8a,8b ピストンロッド
18 密封ライン
19a,19b ヘッド側圧力室
20 油ポンプ
22 タンク
24a,24b 圧油給排ライン
25 主四方弁(油圧切換弁)
26a,26b 近接センサ(位置検出装置)
27 圧力スイッチ
28 圧抜弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のコンクリート圧送用シリンダ内のコンクリート圧送用ピストンと、2本の主油圧シリンダ内の主油圧ピストンとをピストンロッドを介してそれぞれ一体に連結して、該主油圧シリンダのキャップ側圧力室同士又はヘッド側圧力室同士を密封ラインで接続すると共に、各主油圧シリンダのヘッド側圧力室又はキャップ側圧力室に、油ポンプとタンクを圧油給排ラインと油圧切換弁を介して接続して、該油圧切換弁を切換えて上記油ポンプから主油圧シリンダに交互に圧油を供給することにより各主油圧ピストンを交互に前進後退させて、該主油圧ピストンが前進したときに上記コンクリート圧送用シリンダ内に吸入されているコンクリートの圧送を行い、且つ主油圧ピストンが後退したときに上記コンクリート圧送用シリンダ内にコンクリートを吸入するようにしてあるピストン式コンクリートポンプにおける上記各主油圧シリンダの前進側ストロークエンドの近傍位置に、各主油圧ピストンが前進側ストロークエンドに近接するのを検出する位置検出装置をそれぞれ設けると共に、上記圧油給排ラインに圧油を供給する油ポンプの吐出側に、圧力スイッチと圧抜弁を設け、該圧力スイッチの検出信号と上記いずれか一方の位置検出装置の検出信号とに基づいて上記圧抜弁を作動させて油ポンプからの圧油を抜くようにした構成を有することを特徴とするピストン式コンクリートポンプの制御装置。
【請求項2】
圧力スイッチと圧抜弁とを、油圧切換弁と油ポンプとの間に設けるようにした請求項1記載のピストン式コンクリートポンプの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−241725(P2011−241725A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113444(P2010−113444)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000198293)IHI建機株式会社 (96)
【Fターム(参考)】