説明

ピラー構造

【課題】車両側突による荷重に対して、十分な座屈強度を維持することのできるピラー構造を提供する。
【解決手段】開き抑制部材8を、内側溶接代8b,8cにおける溶接によって、ピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cに対して開き抑制部材8の本体部8aよりも車幅方向内側の位置だけで連結するのみならず、外側溶接代8d,8eにおける溶接によって、本体部8aより車幅方向外側の位置でも連結する。これによって、車両側突による荷重が大きい場合であっても、外側溶接代8d,8eとピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cとを、ヒンジリーンフォースメント7を介して連結することによって、溶接代と本体部8aとの間の屈曲部分付近の領域とヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7c同士の間の間隔が大きくなってしまうことを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピラー構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、ピラー構造として、例えば特開2006−327410号公報に記載されるように、ピラーアウタリーンフォースメントを構成する外側部材とピラーインナリーンフォースメントを構成する内側部材の内側に、外側部材の本体部と連結される平板状の連結部及び側壁部と連結される突出部を有して車両側突時のピラーの衝撃を吸収する衝撃吸収部材(ヒンジリーンフォースメント)を設けると共に、天頂部分をなす平板状の基部及び基部の両側端部で屈曲し衝撃吸収部材の突出部に溶接によって連結される補助突出部を有して車両側突時の衝撃吸収部材及びピラーアウタリーンフォースメントの変形を抑制する変形抑制部材(開き抑制部材)が設けられたものが知られている。このピラー構造では、衝撃吸収部材の突出部及び変形抑制部材の補助突出部の端部が内側部材の底面と所定距離離間して配置されており、車両側突によって外側部材及び内側部材が圧縮変形する場合に、突出部及び補助突出部が内側部材と当接する構成とされている。これによって、このピラー構造においては、変形のストロークが大きくなって外側部材及び内側部材に座屈が生じた後は、内側部材の底面に当接した衝撃吸収部材の突出部及び変形抑制部材の補助突出部が変形することによって衝突荷重を持続的に吸収することができる。
【特許文献1】特開2006−327410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなピラー構造にあっては、衝撃吸収部材の突出部に変形抑制部材の補助突出部を溶接する際に、変形抑制部材の補助突出部と基部との間の屈曲部付近を溶接することができない。従って、車両側突による衝撃荷重が大きい場合は、変形抑制部材の補助突出部のうち屈曲部と溶接部との間の領域が衝撃吸収部材の突出部と連結されていないため、突出部との間で開きを生じてしまう(例えば、図8参照)。変形抑制部材が開いてしまうことによって、衝撃吸収部材の開きも大きくなると共にピラーインナリーンフォースメントの開きも大きくなってしまい、ピラーの座屈強度が低下する可能性があった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、車両側突による荷重に対して、十分な座屈強度を維持することのできるピラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るピラー構造は、車両上下方向に延在し、車幅方向外側の外壁部、及び車両前後方向の一対の側壁部を有するピラーアウタリーンフォースメントと、ピラーアウタリーンフォースメントの側壁部同士の間に設けられ、車両側突時に側壁部が車両前後方向に開くことを抑制するための開き抑制部材と、を備え、開き抑制部材は、ピラーアウタリーンフォースメントの外壁部と対向して配置される本体部と、本体部の車両前後方向の両端部で車幅方向内側へ屈曲させることによって形成される第1の連結部と、本体部の車両前後方向の両端部で車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される第2の連結部とを有し、第1の連結部及び第2の連結部により側壁部に連結されることを特徴とする。
【0006】
このようなピラー構造では、車両側突時にピラーアウタリーンフォースメントの側壁部が車両前後方向に開くことを抑制するための開き抑制部材が、本体部の車両前後方向の両端部で車幅方向内側へ屈曲させることによって形成される第1の連結部と、本体部の車両前後方向の両端部で車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される第2の連結部とを有しており、第1の連結部及び第2の連結部がピラーアウタリーンフォースメントの側壁部に連結されている。すなわち、開き抑制部材が、第1の連結部によってピラーアウタリーンフォースメントの側壁部に対して本体部よりも車幅方向内側だけで連結されるのみならず、第2の連結部によって本体部よりも車幅方向外側でも連結されることができる。これによって、車両側突による荷重が大きい場合であっても、第2の連結部とピラーアウタリーンフォースメントの側壁部とが連結されていることによって、第1の連結部と本体部との間の屈曲部分付近の領域とピラーアウタリーンフォースメントの側壁部の間隔が大きくなってしまうことを抑制することができる。これによって、ピラーアウタリーンフォースメントの側壁部の開きを抑制することができ、車両側突による荷重に対して、十分な座屈強度を維持することができる。
【0007】
また、本発明に係るピラー構造は、ピラーアウタリーンフォースメントの側壁部同士の間に設けられ、ピラーアウタリーンフォースメントの外壁部に連結される外壁補強部と、側壁部に連結される側壁補強部とを有するヒンジリーンフォースメントを更に備え、開き抑制部材の第1の連結部及び第2の連結部は、ヒンジリーンフォースメントの側壁補強部を介してピラーアウタリーンフォースメントの側壁部に連結されることが好ましい。ヒンジリーンフォースメントの側壁補強部を介して第1の連結部及び第2の連結部をピラーアウタリーンフォースメントの側壁部に連結することによって、ピラーアウタリーンフォースメントの側壁部の開きを抑制すると共に、ヒンジリーンフォースメントの側壁補強部の開きを抑制することができる。これによって、ヒンジリーンフォースメントの曲げモーメントを確保することにより、車両側突に対するヒンジリーンフォースメントの曲げ耐力を確保することができる。
【0008】
また、本発明に係るピラー構造において、開き抑制部材の第2の連結部は、本体部の車両前後方向の一端部側の一部の領域を車幅方向外側へ屈曲させることによって形成されることが好ましい。開き抑制部材の本体部の車両前後方向の端部側の一部を車幅方向外側へ屈曲させることにより第2の連結部を形成した場合、本体部には第2の連結部の付根部分に第2の連結部と対応する形状の貫通孔が形成される。これによって、開き抑制部材の第2の連結部とピラーアウタリーンフォースメントの側壁部とを溶接によって連結する場合、第2の連結部に隣接する貫通孔を通すことによって、開き抑制部材の本体部とピラーアウタリーンフォースメントの外壁部との間の空間に溶接機のノズルを入り込ませることができる。これによって、第2の連結部とピラーアウタリーンフォースメントの側壁部とを確実に溶接することができる。
【0009】
また、本発明に係るピラー構造において、第1の連結部は、本体部の車両前後方向の一端部側から他端部側へ向かって切込部を形成し、一端部のうち切込部より上側又は下側のいずれか一方を車幅方向内側へ屈曲することによって形成され、第2の連結部は、他方を車幅方向外側へ屈曲することによって形成されることが好ましい。本体部に一端部から他端部側へ向かって切込部を形成して屈曲させるだけの簡単な加工で第1の連結部及び第2の連結部を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両側突よる荷重の入力に対して十分な座屈強度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る車体構造の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、本明細書中において、車両が直前進している際の前方方向を「前方」と定め、「前」「後」等の方向を示す語を用いることとする。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るピラー構造1を採用した車両を正面から見た断面図、図2は図1に示すピラー構造1の展開斜視図、図3は図1に示すIII−III線に沿った断面図である。なお、図1においては、車幅方向の一方のピラー構造1のみを示しており、他方のピラーにおいても本発明の実施形態に係るピラー構造が採用されている。また、本実施形態においては、ピラー構造1をセンターピラーに適用した場合について説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、ピラー構造1は、車幅方向の両側で車両上下方向に延在することによって、車両のアンダボディとアッパーボディを支持するものであり、車両下側で車両前後方向に延在するロッカ2に下端部が連結されると共に、車両上側で車両前後方向に延在するルーフサイドレールに上端部が連結される。
【0014】
ピラー構造1は、車幅方向内側で車両上下方向に延在するピラーインナリーンフォースメント4と、車幅方向外側で車両上下方向に延在するピラーアウタリーンフォースメント6と、ピラーインナリーンフォースメント4及びピラーアウタリーンフォースメント6の内側に設けられてピラーアウタリーンフォースメント6の補強を行うヒンジリーンフォースメント7と、ピラーアウタリーンフォースメント6及びヒンジリーンフォースメント7の車両側突時の開きを抑制する開き抑制部材8とを備えて構成される。
【0015】
図3に示すように、ピラーインナリーンフォースメント4は、その断面が平板状に形成されており、センターピラーの車幅方向内側の内壁を構成する平板状の内壁部4aを備えている。このピラーインナリーンフォースメント4は、内壁部4aの車両前後方向の両端部が溶接代とされている。
【0016】
ピラーアウタリーンフォースメント6は、その断面がコ字状に形成されており、センターピラーの車幅方向外側の外壁を構成する平板状の外壁部6aと、外壁部6aの車両前後方向の両端部から車幅方向内側へ突出して車両前後方向の側壁を構成する一対の側壁部6b,6cと、側壁部6bの車両内側の端部から車両前方向へ広がるフランジ部6dと、側壁部6cの車両外側の端部から車両前方向へ広がるフランジ部6eとを備えている。ピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cは、それぞれ外壁部6aからピラーインナリーンフォースメント4まで及んでいる。
【0017】
ピラーアウタリーンフォースメント6は、ピラーインナリーンフォースメント4と向かい合うように配置され、ピラーアウタリーンフォースメント6のフランジ部6d,6eをピラーインナリーンフォースメント4のフ内壁部4aの車両前後方向の両端部にそれぞれ接触させてスポット溶接部9を形成することによって、ピラーインナリーンフォースメント4と連結されている。これによって、ピラーアウタリーンフォースメント6とインナリーンフォースメントとで閉断面が構成される。
【0018】
ヒンジリーンフォースメント7は、ピラー構造上側においてピラーアウタリーンフォースメント6内で車両上下方向に延在する断面コ字状の部材であり、ピラーアウタリーンフォースメント6を補強し、車両側突時の曲げ変形を抑制する機能を有している。ヒンジリーンフォースメント7は、ピラーアウタリーンフォースメント6の外壁部6aよりも車幅方向内側で、側壁部6b,6c同士の間に配置されており、外壁部6aに連結される外壁補強部7aと、側壁部6b,6cにそれぞれ連結される側壁補強部7b,7cとを備えている。ヒンジリーンフォースメント7は、外壁補強部7aを外壁部6aに接触させると共に、側壁補強部7b,7cを側壁部6b,6cにそれぞれ接触させた状態でスポット溶接部11を形成することによって、ピラーアウタリーンフォースメント6に連結されている。
【0019】
開き抑制部材8は、ヒンジリーンフォースメント7の車両上下方向の中央位置付近でヒンジリーンフォースメント7内において車両上下方向に延在する補強部材であり、ヒンジリーンフォースメント7を介してピラーアウタリーンフォースメント6に連結されている。この開き抑制部材8は、ヒンジリーンフォースメント7の外壁補強部7aよりも車幅方向内側で、側壁補強部7b,7c同士の間に配置されており、ヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7c及びピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cの車両側突時における車両前後方向の開きを抑制する機能を有している。
【0020】
図4は、図2及び図3に示す開き抑制部材8の斜視図であり、図4においてはヒンジリーンフォースメント7を二点鎖線で示している。図3及び図4に示すように、開き抑制部材8は、鋼板(板状部材)を打ち抜き及び折り曲げ加工することによって形成されている。
【0021】
具体的には、開き抑制部材8は、一枚の長方形状の鋼板から構成されており、鋼板をヒンジリーンフォースメント7の外壁補強部7a及びピラーアウタリーンフォースメント6の外壁部6aに対向させることによって形成される長方形板状の本体部8aと、鋼板の車両前後方向の両端部を車幅方向内側へ屈曲させることによって形成される一対の長方形板状の内側溶接代(第1の連結部)8b,8cと、鋼板の車両前後方向の両端部を車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される一対の外側溶接代(第2の連結部)8d,8eとを備えて構成されている。この開き抑制部材8の内側溶接代8b及び外側溶接代8dはヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7bと接触すると共にスポット溶接により連結され、内側溶接代8c及び外側溶接代8eはヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7cと接触すると共にスポット溶接により連結される。
【0022】
開き抑制部材8の本体部8aは、ヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7c間の距離と同じ幅を有して車両上下方向に延びる長方形状をなしており、側壁補強部7b,7cの車幅方向内側の端部7d,7eから所定距離離間して配置されている。
【0023】
開き抑制部材8の内側溶接代8bは、本体部8aに対して車幅方向内側に向かって直角をなすように本体部8aの車両前側の端部に設けられており、本体部8aと同じ長さで車両上下方向に延びるような長方形状をなしている。この内側溶接代8bは、車幅方向内側の端部8fがヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7bの車幅方向内側の端部7dと揃うような幅を有している。開き抑制部材8の内側溶接代8cは、本体部8aに対して車幅方向内側に向かって直角をなすように本体部8aの車両後側の端部に設けられており、本体部8aと同じ長さで車両上下方向に延びるような長方形状をなしている。この内側溶接代8cは、車幅方向内側の端部8gがヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7cの車幅方向内側の端部7eと揃うような幅を有している。
【0024】
開き抑制部材8の外側溶接代8dは、本体部8aと直角をなすように本体部8aの車両前側の端部から車幅方向外側へ向かって延びる板状の突片であり、車両上下方向に一定の間隔で複数箇所に設けられている。この外側溶接代8dは、車幅方向外側への長さが内側溶接代8cの車幅方向内側への幅と略同一であり、車幅方向外側の端部に半円状の丸み付けがなされている。この外側溶接代8dは、本体部8aの車両前側の端部付近の一部を当該端部を折目として車両前側に持ち上げることによって形成されているため、本体部8aには、持ち上げた部分に外側溶接代8dと同形状の貫通孔8hが形成される。すなわち、本体部8aには、外側溶接代8dの付根部分から車両後側に延びて先端部に半円状の丸み付けがなされた貫通孔8hが形成される。
【0025】
開き抑制部材8の外側溶接代8eは、本体部8aと直角をなすように本体部8aの車両後側の端部から車幅方向外側へ向かって延びる板状の突片であり、外側溶接代8dと対応する位置に、車両上下方向に一定の間隔で複数箇所に設けられている。この外側溶接代8eは、車幅方向外側への長さが内側溶接代8cの車幅方向内側への幅と略同一であり、車幅方向外側の端部に半円状の丸み付けがなされている。この外側溶接代8eは、本体部8aの車両後側の端部付近の一部を当該端部を折目として車両後側に持ち上げることによって形成されているため、本体部8aには、持ち上げた部分に外側溶接代8eと同形状の貫通孔8kが形成される。すなわち、本体部8aには、外側溶接代8eの付根部分から車両前側に延びて先端部に半円状の丸み付けがなされた貫通孔8kが形成される。
【0026】
図5は、開き抑制部材8の製造工程を示す図である。なお、図5(b)は、図5(a)に示すb−b線に沿った断面図である。図5(a)及び図(b)に示すように、長方形状の鋼板Pの幅方向の一端部から所定距離離間した位置に、鋼板の長さ方向に延びる折目B1を設定する。また、折目B1の位置が始端及び終端となるようにして、鋼板Pの他端部側に向かってU字状の切目C1を形成する。このようなU字状の切目C1を折目B1に沿って一定の間隔で複数形成する。また、鋼板の幅方向の他端部から所定距離離間した位置に、鋼板の長さ方向に延びる折目B2を設定する。更に、折目B2の位置が始端及び終端となるようにして、鋼板の一端部側に向かってU字状の切目C2を形成する。このようなU字状の切目C2を折目B2に沿って、C1と向かい合う位置に一定の間隔で複数形成する。
【0027】
その後、図5(c)に示すように、折目B1で鋼板の一端部側を一方向に屈曲させ、それに伴ってU字状の切目C1に囲まれた部分を他方向に屈曲させる。同様に、折目B2で鋼板の他端部側を一方向に屈曲させ、それに伴ってU字状の切目C2に囲まれた部分を他方向に屈曲させる。鋼板の一端部側及び他端部側を直角に屈曲させ、切目C1に囲まれた部分及び切目C2に囲まれた部分を直角に屈曲させることによって、図5(d)に示すように、内側溶接代8b,8c、外側溶接代8d,8e及び本体部8aが形成される。
【0028】
図6は、開き抑制部材8をヒンジリーンフォースメント7にスポット溶接によって取り付ける工程を示す図である。なお、開き抑制部材8を溶接する際は、あらかじめピラーアウタリーンフォースメント6にヒンジリーンフォースメント7がスポット溶接によって連結されている。図6(a)に示すように、ヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7bに開き抑制部材8の内側溶接代8bを位置合わせして接触した状態で複数箇所にスポット溶接部12を形成する(具体的な溶接位置は図4において×印で示す)。同様に、側壁補強部7cと内側溶接代8cにもスポット溶接部13を形成する(図3参照)。
【0029】
その後、スポット溶接機のノズルNを貫通孔8hに通して外側溶接代8dの前にセットし、図6(b)に示すようにスポット溶接部14を形成する。同様に、側壁補強部7cと外側溶接代8eにもスポット溶接部16を形成する(図3参照)。以上によって、開き抑制部材8の内側溶接代8b及び外側溶接代8dはヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7bとスポット溶接により連結され、これによって、側壁補強部7bを介してピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6bに連結される。また、内側溶接代8c及び外側溶接代8eはヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7cとスポット溶接により連結され、これによって、側壁補強部7cを介してピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6cに連結される。
【0030】
次に、本実施形態に係るピラー構造1の作用・効果について、図7〜図9を参照して説明する。図7は本実施形態に係るピラー構造1を採用した車両に、他車両が側突した場合の様子を示す図、図8は従来のピラー構造におけるヒンジリーンフォースメントと開き抑制部材の構成を説明するための断面図、図9はヒンジリーンフォースメント7の変形と曲げ耐力の関係を説明するための図、である。
【0031】
まず、比較のため、従来のピラー構造について説明する。従来のピラー構造では、図8(a)に示すように、開き抑制部材28は一枚の鋼板を断面コ字状に屈曲させることによって形成されており、ヒンジリーンフォースメント27の外壁補強部27aと対向する本体部28aと、ヒンジリーンフォースメント27の側壁補強部27b,27cとスポット溶接部30,31を形成することによって連結される内側溶接代28b,28cとを備えて構成されている。この開き抑制部材28においては、図8(b)に示すように、スポット溶接機のノズルNの径との関係から、スポット溶接を施す際に内側溶接代28bと本体部28aとの間の屈曲部28d付近及び内側溶接代28cと本体部28aとの間の屈曲部28e付近を溶接することができない。このため、内側溶接代28b,28cのうち、スポット溶接部30,31と屈曲部28d,28eの間の領域Aは、図7に示すように他車両が側突してピラー構造に車幅方向外側から車幅方向内側に向かう衝突荷重が作用した場合に、ヒンジリーンフォースメント27の側壁補強部27b,27cから離間し易くなる。
【0032】
このような従来のピラー構造にあっては、車両側突時の衝突荷重が大きい場合は、内側溶接代28b,28cの領域Aがヒンジリーンフォースメント27の側壁補強部27b,27cと連結されていないため、図8(c)に示すように、側壁補強部27b,27cとの間で開きを生じてしまう。開き抑制部材28が開いてしまうことによって、ヒンジリーンフォースメント27の開きも大きくなると共にピラーインナリーンフォースメントの開きも大きくなってしまい、ピラー構造の座屈強度が低下する可能性があった。
【0033】
また、図9(b)に示すような、側壁補強部27b,27cが車両前後方向に開いた場合のヒンジリーンフォースメント27の図心F2と外壁補強部27aとの距離bは、図9(a)に示すような、側壁補強部27b,27cに開きが生じていない場合のヒンジリーンフォースメント27の図心F1と外壁補強部27aとの距離aよりも小さくなる。これによって、開きが生じることによってヒンジリーンフォースメント27の曲げモーメントが低下し、曲げ耐力が低下するため、車両側突時にピラー構造が曲がり易くなる可能性があった。
【0034】
それに対し、本発明の実施形態に係るピラー構造1では、図3及び図4に示すように、車両側突時にピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cが車両前後方向に開くことを抑制するための開き抑制部材8が、鋼板の車両前後方向の両端部をそれぞれ車幅方向内側へ屈曲させることによって形成される一対の内側溶接代8b,8cと、鋼板の車両前後方向の両端部をそれぞれ車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される一対の外側溶接代8d,8eとを有しており、内側溶接代8b,8c及び外側溶接代8d,8eがヒンジリーンフォースメント7を介してピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cに連結されている。
【0035】
すなわち、開き抑制部材8が、内側溶接代8b,8cにおける溶接によって、ピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cに対して開き抑制部材8の本体部8aよりも車幅方向内側の位置だけで連結されるのみならず、外側溶接代8d,8eにおける溶接によって、本体部8aより車幅方向外側の位置でも連結されることができる。これによって、車両側突による荷重が大きい場合であっても、外側溶接代8d,8eとピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cとが、ヒンジリーンフォースメント7を介して連結されていることによって、溶接代と本体部8aとの間の屈曲部分付近の領域とヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7c同士の間の間隔が大きくなってしまうことを抑制することができる。これによって、ピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cの開きを抑制することができ、車両側突による荷重に対して、十分な、すなわち従来のピラー構造と比較してより大きな座屈強度を維持することができる。
【0036】
また、本発明の実施形態に係るピラー構造1は、ピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6c同士の間に設けられ、ピラーアウタリーンフォースメント6の外壁部6aに連結される外壁補強部7aと、側壁部6b,6cに連結される側壁補強部7b,7cとを有するヒンジリーンフォースメント7を備えており、開き抑制部材8の内側溶接代8b,8c及び外側溶接代8d,8eは、ヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7cを介してピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cに連結される。
【0037】
このようにヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7cを介して内側溶接代8b,8c及び外側溶接代8d,8eをピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cに連結する構成とすることによって、ピラーアウタリーンフォースメント6の側壁部6b,6cの開きを抑制すると共に、ヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7cの開きを抑制することができる。これによって、ヒンジリーンフォースメント7の曲げモーメントを確保することにより、車両側突に対するヒンジリーンフォースメント7の曲げ耐力を確保することができる。
【0038】
また、本発明の実施形態に係るピラー構造1において、開き抑制部材8の外側溶接代8d,8eは、本体部8aの車両前後方向の端部側の一部の領域を車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される。このように開き抑制部材8の本体部8aの車両前後方向の端部側の一部を車幅方向外側へ屈曲させることにより外側溶接代8d,8eを形成した場合、本体部8aには外側溶接代8d,8eの付根部分に外側溶接代8d,8eと同一形状の貫通孔8h,8kが形成される。これによって、開き抑制部材8の外側溶接代8d,8eとヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7cをスポット溶接によって連結する場合、外側溶接代8d,8eの付根部分に形成された貫通孔8h,8kを通ることによって、開き抑制部材8の本体部8aとヒンジリーンフォースメント7の外壁補強部7aとの間の空間に溶接機のノズルNを入り込ませることができる。これによって、外側溶接代8とヒンジリーンフォースメント7の側壁補強部7b,7cとを確実に溶接することができる。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0040】
例えば、本実施形態に係るピラー構造1では、開き抑制部材8として、図4に示すように、本体部8aの車両前後方向の端部付近の一部を車幅方向外側に持ち上げることによって外側溶接代8d,8eが形成されているものを適用したが、これに代えて、図10に示すような開き抑制部材38を適用してもよい。
【0041】
開き抑制部材38は、具体的には、鋼板をヒンジリーンフォースメント37の外壁補強部37aと対向させることによって形成される長方形状の本体部38aを備えると共に、鋼板の車両前側の端部から後側へ向かって切込部を形成し、この切込部より上側を車幅方向内側へ屈曲させることによって形成される内側溶接代38bと、切込部より下側を車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される外側溶接代38dを備えている。また、開き抑制部材38は、鋼板の車両後側の端部から前側へ向かって切込部を形成し、この切込部より上側を車幅方向内側へ屈曲させることによって形成される内側溶接代38cと、切込部より下側を車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される外側溶接代38eを備えている。
【0042】
これによって、開き部材38の本体部38aの車両前側の端部に、車両上下方向に一定の間隔で複数箇所に内側溶接代38bが形成され、内側溶接代38b同士の間に外側溶接代38dが形成される。また、開き部材38の本体部38aの車両後側の端部に、内側溶接代38bと対応する位置に、車両上下方向に一定の間隔で内側溶接代38cが形成され、内側溶接代38c同士の間に外側溶接代38eが形成される。このような構成を有する開き抑制部材38によれば、鋼板に切込部を形成して屈曲させるだけの簡単な加工で内側溶接代38b,38c及び外側溶接代38d,38eを形成することが可能となる。
【0043】
なお、開き抑制部材38の外側溶接代38d,38eをヒンジリーンフォースメント37に溶接する場合は、図11に示すように、内側溶接代38b,38cをスポット溶接した後で、車両上方の開口部分から開き抑制部材38の本体部38aとヒンジリーンフォースメント37の外壁補強部37aの間の空間にスポット溶接機のノズルNを入り込ませて外側溶接代38d,38eを溶接することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、ピラー構造をセンターピラーに適応しているが、センターピラーのみに限らず、フロントピラーやクォーターピラーに適用することも可能である。
【0045】
また、本実施形態においては、開き抑制部材の内側溶接代及び外側溶接代をヒンジリーンフォースメントの側壁補強部を介してピラーアウタリーンフォースメントの側壁部に取り付けていたが、これに代えて、開き抑制部材の内側溶接代及び外側溶接代をピラーアウタリーンフォースメントの側壁部に直接取り付ける構成としてもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、開き抑制部材をヒンジリーンフォースメントに対してスポット溶接によって固定していたが、これに代えて、リベットやボルト及びナットを用いて固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るピラー構造を採用した車両を正面から見た断面図である。
【図2】図1に示すピラー構造の展開斜視図である。
【図3】図1に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2及び図3に示す開き抑制部材の斜視図である。
【図5】開き抑制部材の製造工程を示す図である。
【図6】開き抑制部材をヒンジリーンフォースメントにスポット溶接によって取り付ける工程を示す図である。
【図7】本実施形態に係るピラー構造を採用した車両に、他車両が側突した場合の様子を示す図である。
【図8】従来のピラー構造におけるヒンジリーンフォースメントと開き抑制部材の構成を説明するための断面図である。
【図9】ヒンジリーンフォースメントの変形と曲げ耐力の関係を説明するための図である。
【図10】変形例に係る開き抑制部材を示す斜視図である。
【図11】図10に示す開き抑制部材をヒンジリーンフォースメントにスポット溶接する際の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1…ピラー構造、6…ピラーアウタリーンフォースメント、6a…外壁部、6b,6c…側壁部、7,37…ヒンジリーンフォースメント、7a,37a…外壁補強部、7b,7c,37b,37c…側壁補強部、8,38…開き抑制部材、8a,38a…本体部、8b,8c,38b,38c…内側溶接代(第1の連結部)、8d,8e,38d,38e…外側溶接代(第2の連結部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上下方向に延在し、車幅方向外側の外壁部、及び車両前後方向の一対の側壁部を有するピラーアウタリーンフォースメントと、
前記ピラーアウタリーンフォースメントの前記側壁部同士の間に設けられ、車両側突時に前記側壁部が車両前後方向に開くことを抑制するための開き抑制部材と、を備え、
前記開き抑制部材は、前記ピラーアウタリーンフォースメントの前記外壁部と対向して配置される本体部と、前記本体部の車両前後方向の両端部で車幅方向内側へ屈曲させることによって形成される第1の連結部と、前記本体部の車両前後方向の両端部で車幅方向外側へ屈曲させることによって形成される第2の連結部とを有し、前記第1の連結部及び前記第2の連結部により前記側壁部に連結されることを特徴とするピラー構造。
【請求項2】
前記ピラーアウタリーンフォースメントの前記側壁部同士の間に設けられ、前記ピラーアウタリーンフォースメントの前記外壁部に連結される外壁補強部と、前記側壁部に連結される側壁補強部とを有するヒンジリーンフォースメントを更に備え、
前記開き抑制部材の前記第1の連結部及び前記第2の連結部は、前記ヒンジリーンフォースメントの前記側壁補強部を介して前記ピラーアウタリーンフォースメントの前記側壁部に連結されることを特徴とする請求項1記載のピラー構造。
【請求項3】
前記開き抑制部材の前記第2の連結部は、前記本体部の車両前後方向の一端部側の一部の領域を車幅方向外側へ屈曲させることによって形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のピラー構造。
【請求項4】
前記第1の連結部は、前記本体部の車両前後方向の一端部側から他端部側へ向かって切込部を形成し、前記一端部のうち前記切込部より上側又は下側のいずれか一方を車幅方向内側へ屈曲することによって形成され、前記第2の連結部は、他方を車幅方向外側へ屈曲することによって形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−47165(P2010−47165A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214188(P2008−214188)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】