説明

ピンパッド及び決済端末

【課題】ICカードによる電子的決済でのスキミング被害を防止する。
【解決手段】ICカードリーダライタ14を含むユーザインターフェース12、13、14と、決済端末1から電力を供給する接続ケーブル81と、決済端末1からの電力供給の停止を検出する検出部23と、接続ケーブル81を介して供給される決済端末1からの電力とバッテリ91から供給される電力とを各部に供給する電力部44と、検出部23の検出を条件として、バッテリ91からの電力供給によって、電力供給停止情報を記憶部33に記憶させる制御部35と、を備え、起動に際して記憶部33を参照し、記憶部33に電力供給停止情報が記憶されている場合には、ユーザインターフェース12、13、14を使用不能にさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンパッド及び決済端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現金の代わりに各種のカードによる電子的決済が広く利用されている。各種のカードとしては、例えば、クレジットカード、デビットカード決済に用いられるICカードがある。
【0003】
ICカードによる電子的決済は、例えば特許文献1に示すように、ピンパッドを決済端末に接続させて実行される。ピンパッドは、番号入力を行うための入力装置であって、ICカードに搭載されているICチップに対するデータの読み書きを実行するICカードリーダライタを備えるものである。以下、ピンパッドを決済端末に接続したものを決済端末システムと称することがある。
【0004】
例えば、ICカードがクレジットカードである場合、ピンパッドは、電子的決算に際して、ICカードからクレジットカード番号等のカードデータを読み取ったり、暗証番号の入力を受け付けたりする。
【0005】
そして、決済端末システムでは、入力された暗証番号の認証、読み取ったカードデータに基づく問合せ情報の作成、決済機関コンピュータへの問合せ情報の送信が実行される。決済機関コンピュータでは、信用照会が行われ、問合せに対する承認応答を返信する。決済端末システムでは、承認応答を受信すると、決済処理が実行される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−215834公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したようなICカードによる電子的決済の普及に伴い、ICカードに記憶されているデータが盗み出されるスキミング被害が予想されている。このようなスキミングは、ピンパッドにスキミングマシンと呼ばれる装置が不正に装着されて行われる。
【0008】
ICカードのスキミングの一例について説明する。
【0009】
スキミングの手口としては、まず、不正行為実行者はピンパッドにスキミングマシンを取り付けるため、人目に触れない状態で決済端末からピンパッドを取り外す。
【0010】
次に、不正行為実行者は、取り外したピンパッドのハウジングをこじ開けて、その内部にスキミングマシンを取り付け、再びハウジングを閉じる作業を行う。
【0011】
そして、不正行為実行者は、スキミングマシンを取り付けたピンパッドを再び人目に触れない状態で決済端末に取り付ける。これにより、決済端末システムは、外見上は当初の正常な状態に戻される。
【0012】
この状態で、決済端末システムで電子的決済が行われる毎に、その決済における通信記録等の情報がスキミングマシンに蓄積されていく。
【0013】
こうしてスキミングマシンに不正に情報が蓄積された後、不正行為実行者は、再び、決済端末からピンパッドを取り外し、取り外したピンパッドからスキミングマシンを取り出す作業を行う。そして、スキミングマシンに蓄積された通信記録等の情報を解析することにより、ICカードに記憶されたデータが不正に盗み出されてしまう。そして、盗み出されたデータが使用されることで、不正な電子的決済が行われる。
【0014】
本発明の目的は、ICカードによる電子的決済でのスキミング被害を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のピンパッドは、ICカードに搭載されたICチップに対するデータの読み書きを実行するICカードリーダライタを含むユーザインターフェースと、決済端末に接続されて当該決済端末から電力を供給する接続ケーブルと、前記決済端末からの電力供給の停止を検出する検出部と、前記接続ケーブルを介して供給される前記決済端末からの電力とバッテリから供給される電力とを各部に供給する電力部と、前記検出を条件として、前記バッテリからの電力供給によって、前記決済端末からの電力供給の停止が検出された旨の情報である電力供給停止情報を記憶部に記憶させる制御部と、起動に際して前記記憶部を参照し、当該記憶部に前記電力供給停止情報が記憶されている場合には、前記ユーザインターフェースを使用不能にさせる手段と、を備える。
【0016】
本発明の決済端末は、ICカードに搭載されたICチップに対するデータの読み書きを実行するICカードリーダライタを含むユーザインターフェースを有するピンパッドがデータ通信可能に接続される接続部と、前記接続部に対する前記ピンパッドの接続/非接続を検出する手段と、前記非接続の検出を条件として、前記接続部に対する前記ピンパッドの非接続が検出された旨の情報である非接続情報を第2の記憶部に記憶させる手段と、前記接続の検出を条件として前記第2の記憶部を参照し、当該第2の記憶部に非接続情報が記憶されている場合には、前記ピンパッドに前記ユーザインターフェースを使用不能にさせる処理を実行させる手段と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、決済端末からピンパッドが取り外されると、そのピンパッドのICカードリーダライタ等が使用不能となるため、ICカードによる電子的決済が行われず、スキミング被害を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図1ないし図4に基づいて説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態における決済端末システム71を示す外観斜視図である。決済端末システム71は、図1に示すように、各々に別体の決済端末1とピンパッド11が接続ケーブル81によってデータ通信可能に接続されて構成されている。
【0021】
まず、決済端末1について説明する。決済端末1は、各部を配置するハウジング2を有する。ハウジング2は、底面が載置面に接し、上面が奥側から手前側に向けて下り勾配に傾いている。
【0022】
このようなハウジング2の手前側から見て右側の位置には、スリット状の読取溝3が設けられている。読取溝3は、磁気カードの磁気ストライプを挿入させて手前側に引き抜くためのものである。したがって、ハウジング2には、カードの磁気ストライプに記録されたデータの読み取りを行うための磁気カードリーダ10(図2参照)が内蔵されている。
【0023】
ハウジング2の上面には、決済端末1の手前側から奥側に向って、キーボード5、レシート発行口8、及び、ディスプレイ6が順に配列されている。
【0024】
キーボード5は、金額等を入力するための「0」から「9」までの置数キー5a、ファンクションキー5b等の各種のキーをブロック毎に配列した外観構造を有している。
【0025】
ディスプレイ6は、LCD(Liquid Crystal Display)を備え、取引内容や操作案内等を表示する。レシート発行口8は、ハウジング2に内蔵されたプリンタ7(図2参照)によって印字されるレシート(図示せず)を発行する発行口となる。
【0026】
レシート発行口8は、ハウジング2の内部に貫通しており、ハウジング2に内蔵されたプリンタ7(図2参照)が印刷したレシート(図示せず)を排紙する位置でハウジング2に形成されている。
【0027】
ハウジング2の背面には、外部電源101(図2参照)と接続された電源ケーブル9が接続されている。電源ケーブル9は、外部電源101からの電力を決済端末1に対して供給する。外部電源101は、一例として、商用電源である。
【0028】
次に、ピンパッド11について説明する。ピンパッド11は、例えば、カード毎に定められている暗証番号の入力を行うための暗証番号入力装置である。ピンパッド11は、ユーザインターフェースとしての、ディスプレイ12、キーボード13、ICカードリーダライタ14(図2参照)を有する。
【0029】
ピンパッド11は、各部を配置するハウジング11aを有する。ハウジング11aは、ディスプレイ12及びキーボード13をその上面に配置する平板状の第1のハウジング11aaと、ICカードリーダライタ14を内蔵し、カード挿入口14aが形成された直方体状の第2のハウジング11abとから構成されている。
【0030】
第1のハウジング11aaは、ディスプレイ12及びキーボード13が配置された上面が奥側から手前側に向って下り勾配に傾いており、手前側の底面辺が載置面に接している。そして、第1のハウジング11aaは、その奥側部分が第2のハウジング11abの略上下中央部分に接続されている。第2のハウジング11abは、その上面にカード挿入口14aが形成され、手前側の底面辺が載置面に接して上面側が僅かに手前に傾斜している。
【0031】
ディスプレイ12は、取引内容や操作案内等を表示する。キーボード13は、暗証番号を入力するための「0」から「9」までの置数キー等の各種のキーの集合から構成されている。ICカードリーダライタ14は、カード挿入口14aに挿入されたICカード(図示せず)に搭載されているICチップ(図示せず)に対する各種データの読み取り及び書き込みを実行する。ここで、ICカードは、いわゆる接触型であり、ICカードリーダライタ14は、ICカードのICチップに接触して、記憶されているデータの読み取り等を実行する。
【0032】
このような決済端末1とピンパッド11とを互いにデータ通信可能に接続する接続ケーブル81は、その一端側がピンパッド11に対して固定的に接続され、他端側が決済端末1に設けられているピンパッド接続インターフェース85(図2参照)に対して接続されている。
【0033】
接続ケーブル81の途中には、バッテリボックス95が設けられている。バッテリボックス95は、その内部に電力を供給するバッテリ91(図2参照)を有する。バッテリ91の電力は、接続ケーブル81によってピンパッド11に供給される。バッテリ91は、一例として、リチウムイオン電池である。
【0034】
図2は、第1の実施形態における決済端末システム71の電気的接続を示すブロック図である。なお、外部電源101及びバッテリ91と他の各部との配線は、図2中から省略している。
【0035】
まず、決済端末1について説明する。決済端末1は、マイクロコンピュータ15を内蔵し、このマイクロコンピュータ15が、前述したキーボード5、ディスプレイ6、プリンタ7、磁気カードリーダ10等の各部をバスライン16と各種制御回路(図示せず)とを介して駆動制御する。このようなマイクロコンピュータ15は、CPU17に、バスライン16を介して、コンピュータプログラム(起動プログラムや制御プログラム)等の固定的データを格納するROM18と各種データを書き換え自在に格納するRAM19とを接続することにより構成されている。
【0036】
マイクロコンピュータ15には、バスライン16を介して、通信インターフェース21、不揮発性メモリ22、及び、ピンパッド接続インターフェース85が接続されている。通信インターフェース21は、通信回線である公衆回線網、CAFIS(Credit And Finance Information Switching System)等の中継センターを介して、クレジット会社や銀行等が備える決済機関コンピュータに接続され、決済機関コンピュータとの間でデータ通信を行う。不揮発性メモリ22は、データを書き換え自在に記憶するメモリであり、各種コンピュータプログラムや各種ファイル等が格納されている。
【0037】
ピンパッド接続インターフェース85の規格は、一例として、USB(Universal Serial Bus)である。したがって、接続ケーブル81は、データ通信のための信号ケーブルとして設計され、決済端末1からの制御信号は接続ケーブル81を介してピンパッド11の後述するマイクロコンピュータ35に入力される。そして、接続ケーブル81は、その一方でピンパッド11の駆動用の電源をピンパッド11に供給する。つまり、外部電源101から電力が決済端末1に供給されて決済端末1が駆動されて、さらに、接続ケーブル81によって電力がピンパッド11に供給されてピンパッド11が駆動される。
【0038】
接続ケーブル81に設けられたバッテリボックス95には、接続ケーブル81を介した決済端末1からの電力供給の停止を検出する電力停止検出回路(図示せず)が設けられ、さらに、P−MOSFET(図示せず)が設けられている。決済端末1からの電力供給が正常である場合、P−MOSFETは閉じ、バッテリ91の電力はピンパッド11に供給されず、決済端末1からの電力のみが接続ケーブル81を介してピンパッド11に供給される。そして、決済端末1からの電力停止による電力停止検出回路の検出に応じてP−MOSFETは開き、バッテリ91からの電力が接続ケーブル81を介してピンパッド11に供給される。
【0039】
次に、ピンパッド11について説明する。ピンパッド11は、マイクロコンピュータ35を内蔵し、このマイクロコンピュータ35が、前述したディスプレイ12、キーボード13、ICカードリーダライタ14等の各部をバスライン36と各種制御回路(図示せず)とを介して駆動制御する。このようなマイクロコンピュータ35は、CPU37にバスライン36を介して、後述する起動プログラムや消去プログラム等のコンピュータプログラム等の固定的データを格納するROM38と各種データを書き換え自在に格納するRAM39とを接続することにより構成されている。RAM39には、後述するフラグエリア33が形成されている。RAM39は、バッテリ91によってバックアップされている。
【0040】
マイクロコンピュータ35には、バスライン36を介して、電源回路44、電圧検出回路23、及び、不揮発性メモリ32が接続されている。
【0041】
電源回路44は、接続ケーブル81を介してピンパッド11に供給される電力から各部の駆動ために必要とされる電力を生成する電力回路である。電源回路44は、生成した電力を各部に供給する。したがって、電源回路44は、接続ケーブル81を介して供給される決済端末1からの電力とバッテリ91から供給される電力とを各部に供給する電力部を構成する。
【0042】
電圧検出回路23は、接続ケーブル81を介してピンパッド11に供給される電力を監視し、監視電圧が規定値を下回った場合には、電圧低下信号をピンパッド11のマイクロコンピュータ35に出力する。バッテリ91から電力が供給されている場合の電圧値は、決済端末1から電力が供給されている場合の電圧値よりも低く、電圧検出回路23における前述の「規定値」は、この両者の中間である。ピンパッド接続インターフェース85から接続ケーブル81が抜かれると、バッテリボックス95ではバッテリ91による電力供給が開始される。このとき、電圧は低下を開始し、途中、前述の規定値に達する。そして、バッテリ91からの電力が供給されるため、電圧は再び上昇する。電圧検出回路23は、決済端末1からの電力供給の停止を検出する検出部を構成する。
【0043】
不揮発性メモリ32には、コンピュータプログラムである制御プログラム34が格納されている。制御プログラム34は、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35が、ディスプレイ12、キーボード13、ICカードリーダライタ14等の各部を使用可能状態にして駆動制御するためのプログラムである。
【0044】
このような決済端末システム71では、クレジットカードであるICカードでの電子的なクレジット決済として、ピンパッド11のキーボード13によって入力された暗証番号の認証、ピンパッド11のICカードリーダライタ14によって読み取られたカードデータに基づく問合せ情報の作成、決済端末1の通信インターフェース21を介した決済機関コンピュータへの問合せ情報の送信等が実行される。決済機関コンピュータでは、信用照会が行われ、問合せに対する承認応答が返信される。決済端末システム71では、承認応答を受信すると、決済処理が実行される。
【0045】
次に、スキミング被害を防止するために実行される処理について説明する。ここで、スキミングは、ピンパッド11の内部に不正に取り付けられたスキミングマシンに電子的決済での通信記録等が蓄積されることで行われるものである。
【0046】
このようなスキミング被害防止のため処理として、以下に説明するスキミング防止第1処理(図3参照)とスキミング防止第2処理(図4参照)とが実行される。
【0047】
まず、ピンパッド11にスキミングマシンを取り付けようとする不正行為実行者がその取り付けのためにピンパッド11を決済端末1から取り外すと(接続ケーブル81をピンパッド接続インターフェース85から引き抜くと)、決済端末1からのピンパッド11に対する電力供給が停止し、電圧検出回路23は電圧低下信号を出力する。これにより、スキミング防止第1処理が実行される。
【0048】
図3は、スキミング防止第1処理を示すフローチャートである。ピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、電圧検出回路23が出力した電圧低下信号の受信を判定すると(ステップS101のY)、RAM39のフラグエリア33に、決済端末1からの電力供給が停止したことを示すフラグである電力供給停止フラグを記憶させる(ステップS102)。このとき、マイクロコンピュータ35には、バッテリ91からの電力が供給されている。
【0049】
つまり、電力供給停止フラグは、決済端末1からの電力供給の停止が検出された旨の情報である電力供給停止情報であり、フラグエリア33は、電力供給停止情報を記憶する記憶部を構成する。そして、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、電圧検出回路23(検出部)による検出を条件として、電源回路44(電力部)によるバッテリ91からの電力供給によって、電力供給停止フラグ(電力供給停止情報)をフラグエリア33(記憶部)に記憶させる制御部を構成する。
【0050】
次いで、スキミングマシンをピンパッド11に取り付けた不正行為実行者は、そのピンパッド11を再び決済端末1に接続させる。つまり、引き抜かれた接続ケーブル81を再びピンパッド接続インターフェース85に接続させる。そして、不正行為実行者は、ピンパッド11に取り付けたスキミングマシンに通信記録等を蓄積させるため、決済端末システム71が起動されて電子的決済が実行されるのを待つのである。
【0051】
図4は、スキミング防止第2処理を示すフローチャートである。ピンパッド11にスキミングマシンが取り付けられた後、決済端末システム71が導入されている店舗の店員は、業務開始のために所定の操作によってピンパッド11を起動させる。
【0052】
ピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、ピンパッド11の起動に応じて(ステップS201のY)、起動プログラムに従って、RAM39のフラグエリア33を参照する(ステップS202)。そして、フラグエリア33に電力供給停止フラグが記憶されているか否かの判定を実行する(ステップS203)。
【0053】
フラグエリア33に電力供給停止フラグが記憶されていなければ(ステップS203のN)、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、起動プログラムに従った起動を実行して処理を終了することになる。
【0054】
その一方で、フラグエリア33に電力供給停止フラグが記憶されていたならば(ステップS203のY)、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、ROM38に記憶されている消去プログラムに従った処理を実行する。つまり、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、消去プログラムに従って、不揮発性メモリ32にアクセスして、不揮発性メモリ32に格納されている制御プログラム34を消去する処理を実行する(ステップS204)。
【0055】
ここで、制御プログラム34は、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35がディスプレイ12、キーボード13、及び、ICカードリーダライタ14等を駆動制御するためのプログラムである。
【0056】
したがって、ステップS204で制御プログラムが消去されることによって、ディスプレイ12、キーボード13、及び、ICカードリーダライタ14は、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35による駆動制御が不可となり、その使用が不能となる。
【0057】
このように、ICカードリーダライタ14等が使用可能状態とならないため、例えば、ICカードリーダライタ14によるカードデータの読み取りやキーボード13による入力等はできなくなる。こうして、ピンパッド11が使用できなくなるため電子的決済が行われず、ピンパッド11に取り付けられたスキミングマシンによるスキミングを防止することができる。
【0058】
なお、例えば、決済端末1から不揮発性メモリ32に制御プログラム34を格納させることでピンパッド11を再度使用可能にすることができるが、その際にフラグエリア33の電力供給停止フラグもクリアすることができる。
【0059】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図5及び図6に基づいて説明する。
【0060】
図5は、第2の実施形態における決済端末システム71を示す外観斜視図である。図6は、第2の実施形態における決済端末システム71の電気的接続を示すブロック図である。図1ないし図4に基づいて説明した第1の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、その説明も省略する。
【0061】
図5及び図6に基づいて説明する第2の実施形態が図1ないし図4に基づいて説明した第1の実施の形態と大きく異なる点は、バッテリボックス95がピンパッド11のハウジング11aに設けられている点である。より詳細には、バッテリ91は、ICカードリーダライタ14が内蔵されている第2のハウジング11abに内蔵されている。
【0062】
第2の実施の形態では、バッテリボックス95がピンパッド11のハウジング11aに内蔵されていることにより、バッテリボックス95が外観からは視認できない。したがって、第1の実施の形態のようにバッテリボックス95が視認できることで発生し得るレイアウト上の問題等が解消する。
【0063】
そして、第2の実施形態においても、ピンパッド11に取り付けられたスキミングマシンによるスキミングを防止するための処理として、スキミング防止第1処理(図3参照)とスキミング防止第2処理(図4参照)とが実行される。これにより、ピンパッド11のディスプレイ12、キーボード13、及び、ICカードリーダライタ14は、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35による駆動制御が不可となり、その使用が不能となる。こうして、ピンパッド11が使用できなくなるため電子的決済が行われず、ピンパッド11に取り付けられたスキミングマシンによるスキミングを防止することができる。
【0064】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について図7ないし図9に基づいて説明する。
【0065】
図7は、第3の実施形態における決済端末システム71の電気的接続を示すブロック図である。図1ないし図6に基づいて説明した他の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、その説明も省略する。
【0066】
第3の実施形態においても、接続ケーブル81がピンパッド接続インターフェース85に接続されて決済端末1とピンパッド11とはデータ通信可能となっている。決済端末1のピンパッド接続インターフェース85は、ピンパッド11がデータ通信可能に接続される接続部を構成する。
【0067】
第3の実施形態における決済端末1のRAM19には、フラグエリア19aが形成されている。フラグエリア19aには、ピンパッド接続インターフェース85に対して接続ケーブル81が非接続となった旨を示すフラグである非接続フラグが、決済端末1のマイクロコンピュータ15によって記憶される。つまり、非接続フラグは、接続部であるピンパッド接続インターフェース85に対するピンパッド11の非接続が検出された旨の情報である非接続情報であり、フラグエリア19aは、非接続情報を記憶する第2の記憶部を構成する。
【0068】
第3の実施形態における決済端末1のマイクロコンピュータ15は、制御プログラムに従って、ピンパッド接続インターフェース85に対する接続ケーブル81の接続/非接続の検出が可能である。これは、一例として接続規格がUSBであることにより実現される。ここで、接続ケーブル81の接続/非接続は、接続部であるピンパッド接続インターフェース85に対するピンパッド11の接続/非接続を意味することになる。
【0069】
次に、第3の実施形態における決済端末1が、ピンパッド11に取り付けられたスキミングマシンによるスキミングを防止するために実行する処理(スキミング防止第1処理(図8参照)、スキミング防止第2処理(図9参照))について説明する。
【0070】
まず、ピンパッド11にスキミングマシンを取り付けようとする不正行為実行者は、その取り付けのためにまず、ピンパッド11を決済端末1から取り外す。つまり、接続ケーブル81をピンパッド接続インターフェース85から引き抜くことになる。
【0071】
図8は、第3の実施形態におけるスキミング防止第1処理を示すフローチャートである。不正行為実行者の接続ケーブル81が引き抜かれることによって、ピンパッド接続インターフェース85に対する接続ケーブル81の非接続を検出したならば(ステップS301のY)、決済端末1のマイクロコンピュータ15は、決済端末1のRAM19のフラグエリア19aに非接続フラグを記憶させる(ステップS302)。
【0072】
そして、スキミングマシンをピンパッド11に取り付けた不正行為実行者は、そのピンパッド11を再び決済端末1に接続させる。つまり、引き抜かれた接続ケーブル81を再びピンパッド接続インターフェース85に接続させる。
【0073】
図9は、第3の実施形態におけるスキミング防止第2処理を示すフローチャートである。決済端末1のマイクロコンピュータ15は、ピンパッド接続インターフェース85に対する接続ケーブル81の接続検出に待機している(ステップS401)。そして、ピンパッド接続インターフェース85に対する接続ケーブル81の接続を検出したならば(ステップS401のY)、決済端末1のマイクロコンピュータ15は、決済端末1のRAM19のフラグエリア19aを参照して、このフラグエリア19aにおける非接続フラグの有無を判定する(ステップS403)。
【0074】
フラグエリア19aに非接続フラグが記憶されていなければ(ステップS403のN)、決済端末1のマイクロコンピュータ15は、そのまま処理を終える。
【0075】
その一方で、フラグエリア19aに非接続フラグが記憶されていれば(ステップS403のY)、決済端末1のマイクロコンピュータ15は、制御プログラム34(ピンパッド11の不揮発性メモリ32に格納されている)を消去させる制御プログラム消去指示を、ピンパッド11に対して送信する(ステップS404)。この制御プログラム消去指示は、ピンパッド接続インターフェース85と接続ケーブル81とを介して、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35に送信される。
【0076】
そして、制御プログラム消去指示を受信したピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、その受信に応じて、図4に示したフローチャートのステップS204で説明した消去プログラムに従った処理を実行する。つまり、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35は、ROM38に記憶されている消去プログラムに従って、不揮発性メモリ32にアクセスして、不揮発性メモリ32に格納されている制御プログラム34を消去する処理を実行する。これにより、ピンパッド11のディスプレイ12、キーボード13、及び、ICカードリーダライタ14は、ピンパッド11のマイクロコンピュータ35による駆動制御が不可となり、その使用が不能となる。
【0077】
こうして、ピンパッド11が使用できなくなるため電子的決済が行われず、ピンパッド11に取り付けられたスキミングマシンによるスキミングを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1の実施形態における決済端末システムを示す外観斜視図である。
【図2】第1の実施形態における決済端末システムの電気的接続を示すブロック図である。
【図3】スキミング防止第1処理を示すフローチャートである。
【図4】スキミング防止第2処理を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態における決済端末システムを示す外観斜視図である。
【図6】第2の実施形態における決済端末システムの電気的接続を示すブロック図である。
【図7】第3の実施形態における決済端末システムの電気的接続を示すブロック図である。
【図8】第3の実施形態におけるスキミング防止第1処理を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態におけるスキミング防止第2処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
1…決済端末、11…ピンパッド、11a…ハウジング、14…ICカードリーダライタ、19a…フラグエリア(第2の記憶部)、23…電圧検出回路(検出部)、33…フラグエリア(記憶部)、35…マイクロコンピュータ(制御部)、44…電源回路(電力部)、81…接続ケーブル、85…ピンパッド接続インターフェース(接続部)、91…バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードに搭載されたICチップに対するデータの読み書きを実行するICカードリーダライタを含むユーザインターフェースと、
決済端末に接続されて当該決済端末から電力を供給する接続ケーブルと、
前記決済端末からの電力供給の停止を検出する検出部と、
前記接続ケーブルを介して供給される前記決済端末からの電力とバッテリから供給される電力とを各部に供給する電力部と、
前記検出を条件として、前記バッテリからの電力供給によって、前記決済端末からの電力供給の停止が検出された旨の情報である電力供給停止情報を記憶部に記憶させる制御部と、
起動に際して前記記憶部を参照し、当該記憶部に前記電力供給停止情報が記憶されている場合には、前記ユーザインターフェースを使用不能にさせる手段と、
を備えるピンパッド。
【請求項2】
前記接続ケーブルを介して前記バッテリの電力が供給される、
請求項1記載のピンパッド。
【請求項3】
各部を配置するハウジングを備え、
前記バッテリは、当該ハウジングに設けられている、
請求項1記載のピンパッド。
【請求項4】
ICカードに搭載されたICチップに対するデータの読み書きを実行するICカードリーダライタを含むユーザインターフェースを有するピンパッドがデータ通信可能に接続される接続部と、
前記接続部に対する前記ピンパッドの接続/非接続を検出する手段と、
前記非接続の検出を条件として、前記接続部に対する前記ピンパッドの非接続が検出された旨の情報である非接続情報を第2の記憶部に記憶させる手段と、
前記接続の検出を条件として前記第2の記憶部を参照し、当該第2の記憶部に非接続情報が記憶されている場合には、前記ピンパッドに前記ユーザインターフェースを使用不能にさせる処理を実行させる手段と、
を備える決済端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−70165(P2009−70165A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238232(P2007−238232)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】