説明

ファイバレーザ発振装置及びファイバレーザ用NA変換光学系

【課題】より小型化を可能とするファイバレーザ発振装置、及びファイバレーザ発振装置をより小型化するためのファイバレーザ用NA変換光学系を提供する。
【解決手段】ファイバレーザ用光ファイバF2は、励起光L1を内部に閉じ込めることが可能な径で円状に巻回されている。励起光源モジュール10は、巻回されたファイバレーザ用光ファイバの中央部近傍に配置されて、ファイバレーザ用光ファイバの前記円を横切るように励起光L1を出射する。ファイバレーザ用NA変換光学系30は、励起光L1を反射するとともにレーザ光L2を透過する選択反射ミラー35と第1レンズ31と第2レンズ32とで構成され、選択反射ミラーは、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバに接する方向に励起光の進行方向がなるように所定角度で配置され、選択反射ミラーとファイバレーザ用光ファイバの端面との間に、第1レンズと第2レンズとが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザ用光ファイバに励起光を入射して、当該ファイバレーザ用光ファイバ内で励起されて発生したレーザ光を得るファイバレーザ発振装置及びファイバレーザ用NA変換光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファイバレーザ用光ファイバに、半導体レーザ等のレーザ光を励起光として入射し、ファイバレーザ用光ファイバ内で励起されて発生したレーザ光を取り出して加工等に利用する種々のファイバレーザ発振装置が提案されている。
例えば特許文献1に記載された従来技術では、図4に示すように、レーザ電源102によって動作する半導体レーザ101から出射されて図示しない集光手段にて平行光に変換された励起光L1を、ダイクロイックミラー301を透過させてレンズ302にて集光してファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面(コネクタF2Aの側)から入射している。ファイバレーザ用光ファイバF2内で発生したレーザ光は、ファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面及び他方の端面から出射される。一方の端面(コネクタF2Aの側)から出射されたレーザ光は、励起光L1を透過してレーザ光L2を反射するダイクロイックミラー301にて、ファイバレーザ用光ファイバF2内に戻される。なお、ファイバレーザ用光ファイバF2は、入射された励起光を外部に漏らさずに閉じ込めることが可能な所定の径で巻回されている。そして他方の端面(コネクタF2Cの側)から出射されたレーザ光は、レンズ311にて平行光に変換された後、レーザ光L2の一部を反射して残りを透過するダイクロイックミラー312を通過し、所定の分岐比でレーザ光の一部または全部を分岐させる分岐ミラー321、322、323(分岐ミラー323は反射率100%)にて取り出される。取り出されたレーザ光L2の各々は、それぞれレンズ324、325、326にて集光され、伝送用光ファイバF3のそれぞれに入射され、ワークWのレーザ加工等に用いられる。なお図4では、レーザ光L2を吸収するレーザ吸収体、及びダイクロイックミラー312と分岐ミラー321との間に配置されてレーザ光L2をレーザ吸収体の方向に反射する折り返しミラーの記載を省略している。
【特許文献1】特開2007−190560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図4に示す特許文献1に記載されたシステムをファイバレーザ発振装置として図1(A)の例に示すような筐体内に収めた場合、励起光源モジュール100を収容する面積と、励起光L1をファイバレーザ用光ファイバF2に導光する励起光導光モジュール300を収容する面積と、巻回したファイバレーザ用光ファイバF2を収容する面積と、発生したレーザ光L2を伝送用光ファイバF3に導光するレーザ光導光モジュール310を収容する面積と、が必要であり、ファイバレーザ発振装置が非常に大型化する。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、より小型化を可能とするファイバレーザ発振装置、及びファイバレーザ発振装置をより小型化するためのファイバレーザ用NA変換光学系を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりのファイバレーザ発振装置である。
請求項1に記載のファイバレーザ発振装置は、励起光が入射されると励起されたレーザ光を端面から出射するファイバレーザ用光ファイバと、前記ファイバレーザ用光ファイバに入射する励起光を出射する励起光源モジュールと、前記励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射するとともに前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を予め設定したレーザ集光位置に集光するファイバレーザ用NA変換光学系と、を備えたファイバレーザ発振装置である。
前記ファイバレーザ用光ファイバは、入射された励起光を内部に閉じ込めることが可能な径で円状に巻回されて、端面は前記円に接する接線の方向に向けられており、前記励起光源モジュールは、前記巻回されたファイバレーザ用光ファイバの中央部近傍に配置されて、前記ファイバレーザ用光ファイバの前記円を横切るように前記励起光を出射し、前記ファイバレーザ用NA変換光学系は、前記励起光を反射するとともに前記レーザ光を透過する選択反射ミラーと、第1レンズと、第2レンズと、で構成されている。
そして、前記選択反射ミラーは、前記励起光源モジュールから出射される励起光の出射方向の延長上に配置されているとともに、当該選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向が、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバにおける前記円に接するように、所定角度に設定されて配置されており、前記ファイバレーザ用光ファイバの端面は、前記選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向と向き合うように配置されている。
また、前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に、前記第1レンズと前記第2レンズとが、前記選択反射ミラーに反射された励起光が前記第1レンズを透過して平行光に変換された後に前記第2レンズを透過して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に集光されるように配置されており、前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光が、前記第2レンズを透過して平行光に変換された後に前記第1レンズと前記選択反射ミラーを透過して、前記第1レンズの焦点距離となる位置に設定された前記レーザ集光位置に集光される。
【0005】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりのファイバレーザ発振装置である。
請求項2に記載のファイバレーザ発振装置は、励起光が入射されると励起されたレーザ光を端面から出射するファイバレーザ用光ファイバと、前記ファイバレーザ用光ファイバに入射する励起光を出射する励起光源モジュールと、前記励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射するとともに前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を予め設定したレーザ集光位置に集光するファイバレーザ用NA変換光学系と、を備えたファイバレーザ発振装置である。
前記ファイバレーザ用光ファイバは、入射された励起光を内部に閉じ込めることが可能な径で円状に巻回されて、端面は前記円に接する接線の方向に向けられており、前記励起光源モジュールは、前記巻回されたファイバレーザ用光ファイバの中央部近傍に配置されて、前記ファイバレーザ用光ファイバの前記円を横切るように前記励起光を出射し、前記ファイバレーザ用NA変換光学系は、前記励起光を反射するとともに前記レーザ光を透過する選択反射ミラーと、第1レンズと、第2レンズと、第3レンズと、で構成されている。
そして、前記選択反射ミラーは、前記励起光源モジュールから出射される励起光の出射方向の延長上に配置されているとともに、当該選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向が、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバにおける前記円に接するように、所定角度に設定されて配置されており、前記ファイバレーザ用光ファイバの端面は、前記選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向と向き合うように配置されている。
また、前記励起光源モジュールと前記選択反射ミラーとの間に、前記第1レンズが、前記励起光源から出射された励起光を平行光に変換するように配置されており、前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に、前記第2レンズが、前記選択反射ミラーに反射された平行光の励起光が前記第2レンズを透過して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に集光されるように配置されており、前記ファイバレーザ用光ファイバから出射されたレーザ光の出射方向の延長上、且つ当該レーザ光が前記第2レンズと前記選択反射ミラーを透過した後の位置に前記第3レンズが配置されており、前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光が、前記第2レンズを透過して平行光に変換された後に前記選択反射ミラーと前記第3レンズを透過して、前記第3レンズの焦点距離となる位置に設定された前記レーザ集光位置に集光される。
【0006】
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりのファイバレーザ発振装置である。
請求項3に記載のファイバレーザ発振装置は、請求項1に記載のファイバレーザ発振装置であって、前記選択反射ミラーと前記レーザ集光位置との経路中に、前記レーザ集光位置を前記選択反射ミラーに近づける第3レンズを備えている。
【0007】
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりのファイバレーザ発振装置である。
請求項4に記載のファイバレーザ発振装置は、請求項1〜3のいずれかに記載のファイバレーザ発振装置であって、更に、前記レーザ光を反射して前記レーザ集光位置を任意の方向に変換するレーザ反射ミラーを備え、前記レーザ反射ミラーが、前記ファイバレーザ用光ファイバから出射されたレーザ光の出射方向の延長上、且つ前記選択反射ミラーを透過した後の位置に配置されている。
【0008】
また、本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりのファイバレーザ用NA変換光学系である。
請求項5に記載のファイバレーザ用NA変換光学系は、励起光源モジュールから出射された励起光を、ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射して、前記励起光にて励起された前記ファイバレーザ用光ファイバが出射したレーザ光を、予め設定したレーザ集光位置に集光する、ファイバレーザ用NA変換光学系である。
ファイバレーザ用NA変換光学系は、前記励起光源モジュールから出射されて第1方向に進行する励起光を反射して前記第1方向とは異なる第2方向に前記励起光の進行方向を変更するとともに、前記第2方向の延長上に配置された前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から前記第2方向と反対の第3方向に出射されたレーザ光を透過する選択反射ミラーと、前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に配置されて、前記選択反射ミラーにて反射された励起光を平行光に変換する第1レンズと、前記第1レンズと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に配置されて、前記平行光に変換された励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射する第2レンズと、を備え、前記第2レンズは、前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を平行光に変換し、前記第1レンズは、前記平行光に変換されたレーザ光を、前記第3方向の延長上に設定されたレーザ集光位置に集光する。
【0009】
また、本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりのファイバレーザ用NA変換光学系である。
請求項6に記載のファイバレーザ用NA変換光学系は、励起光源モジュールから出射された励起光を、ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射して、前記励起光にて励起された前記ファイバレーザ用光ファイバが出射したレーザ光を、予め設定したレーザ集光位置に集光する、ファイバレーザ用NA変換光学系である。
ファイバレーザ用NA変換光学系は、前記励起光源モジュールから出射されて第1方向に進行する励起光を反射して前記第1方向とは異なる第2方向に前記励起光の進行方向を変更するとともに、前記第2方向の延長上に配置された前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から前記第2方向と反対の第3方向に出射されたレーザ光を透過する選択反射ミラーと、前記励起光源モジュールと前記選択反射ミラーとの間に配置されて、前記励起光源モジュールから出射された励起光を平行光に変換する第1レンズと、前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に配置されて、前記平行光に変換された励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射するとともに前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を平行光に変換する第2レンズと、前記第3方向の延長上、且つ前記ファイバレーザ用光ファイバから出射されたレーザ光が前記第2レンズと前記選択反射ミラーを透過した後の位置に配置されて、前記第3方向の延長上に設定されたレーザ集光位置に前記レーザ光を集光する第3レンズと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のファイバレーザ発振装置によれば、励起光源モジュールと、巻回したファイバレーザ用光ファイバと、ファイバレーザ用NA変換光学系と、を筐体内に収めてファイバレーザ発振装置を構成する場合に、励起光源モジュールを収容する面積と巻回したファイバレーザ用光ファイバを収容する面積とを重ね合わせることができるので、より小型化することができる。
【0011】
また、請求項2に記載のファイバレーザ発振装置によれば、請求項1と同様に、励起光源モジュールと、巻回したファイバレーザ用光ファイバと、ファイバレーザ用NA変換光学系と、を筐体内に収めてファイバレーザ発振装置を構成する場合に、励起光源モジュールを収容する面積と巻回したファイバレーザ用光ファイバを収容する面積とを重ね合わせることができるので、より小型化することができる。
【0012】
また、請求項3に記載のファイバレーザ発振装置によれば、例えばレーザ集光位置に、レーザ光が入射されてワークの加工個所までレーザ光を導光する伝送用光ファイバの入射端面を配置する場合、レーザ集光位置を選択反射ミラーに近づけるので、ファイバレーザ発振装置をより小型化することができる。
【0013】
また、請求項4に記載のファイバレーザ発振装置によれば、ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されるレーザ光の出射方向に制限されることなくレーザ集光位置を設定できるので、ファイバレーザ発振装置をより小型化するために便利である。
【0014】
また、請求項5に記載のファイバレーザ用NA変換光学系によれば、請求項1に記載した、より小型化が可能なファイバレーザ発振装置を実現することができる。
【0015】
また、請求項6に記載のファイバレーザ用NA変換光学系によれば、請求項2に記載した、より小型化が可能なファイバレーザ発振装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明のファイバレーザ発振装置1の一実施の形態を示しており、図1(A)は外観(斜視図)の例を示しており、図1(B)は内部構造(平面図)の例を示している。
【0017】
●[第1の実施の形態(図1、図2)]
第1の実施の形態にて説明するファイバレーザ発振装置1は、図1(A)の例に示すように、動作状態等表示手段H、各種の操作スイッチSW等が正面パネルに設けられており、背面からは、発生したレーザ光が導光された伝送用光ファイバF3が取り付けられている。なお、伝送用光ファイバF3は後述するレーザ集光位置に着脱可能であり、ファイバレーザ発振装置1から省略されていてもよい。
なお、図1(A)に示すファイバレーザ発振装置1は、以下に説明する構造を有することで、より小型化されており、一般的な規定サイズのラックに収めることが可能である。
【0018】
次に、図1(B)を用いてファイバレーザ発振装置1の内部構造について説明する。
ファイバレーザ発振装置1の筐内には、ファイバレーザ用光ファイバF2に入射する励起光L1を出射する励起光源モジュール10と、Yb(イッテルビウム)等の稀土類元素がドープされたコア部を有して入射された励起光で励起されるとレーザ光を発生するファイバレーザ用光ファイバF2と、ミラーやレンズ等で構成されたファイバレーザ用NA変換光学系30と、電源40、制御装置50等が収容されている。
励起光源モジュール10は、例えば半導体レーザアレイLDの各発光部から出射されたレーザ光の各々を励起光用光ファイバF1の一方の端面から導光し、励起光用光ファイバF1の他方の端面を束ねた結束部F1Aから、励起光L1として利用するレーザ光を出射する。
【0019】
ファイバレーザ用光ファイバF2は、一方の端面(図1(B)の例ではコネクタF2Aの側の端面)から入射された励起光L1を内部に閉じ込めることが可能な径で円状に巻回されて、当該一方の端面は、円状に巻回された円に接する接線の方向に向けられている。また、ファイバレーザ用光ファイバF2の他方の端面には、励起されて当該他方の端面から出射されるレーザ光を反射して、ファイバレーザ用光ファイバF2に戻すレーザ反射手段F2Bが設けられている。これにより、ファイバレーザ用光ファイバF2内で励起されたレーザ光L2は、コネクタF2Aの側の一方の端面から出射される。
そして、励起光源モジュール10は、巻回されたファイバレーザ用光ファイバF2の中央部近傍に配置されて(ファイバレーザ用光ファイバF2の中央部近傍の上または下等)、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバF2の円を横切るように励起光L1を出射する。
【0020】
ファイバレーザ用NA変換光学系30は、図2に示すように、励起光L1を反射するとともにファイバレーザ用光ファイバF2から出射されたレーザ光L2を透過する選択反射ミラー35と、第1レンズ31と、第2レンズ32と、第3レンズ33と、レーザ光L2をレーザ集光位置Pの方向に反射するレーザ反射ミラー36とを備えている。なお、図1〜図2に示す第1の実施の形態では、第3レンズ33とレーザ反射ミラー36は省略してもよい。
選択反射ミラー35は、例えば、励起光L1の波長の光を反射してレーザ光L2の波長の光を透過するダイクロイックミラーであり、励起光源モジュール10の結束部F1Aから出射される励起光L1の出射方向(第1方向に相当)の延長上に配置されているとともに、当該選択反射ミラー35が反射した励起光L1の進行方向が、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバF2における前記円に接するように、所定角度に設定されて配置されている。
ファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面(コネクタF2Aの側の端面)は、選択反射ミラー35が反射した励起光L1の進行方向(第2方向に相当)と向き合うように配置されている。
【0021】
選択反射ミラー35とファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面との間には、選択反射ミラー35に反射された励起光L1が、第1レンズ31を透過して平行光に変換された後に第2レンズを透過してファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面に集光されるように、第1レンズ31と第2レンズ32とが配置されている。つまり、第1レンズ31の焦点距離は、第1レンズ31から選択反射ミラー35までの距離(光軸の距離)に、選択反射ミラー35から励起光源モジュール10の出射位置までの距離(光軸の距離)を加えた距離である。また、第2レンズ32の焦点距離は、第2レンズ32からファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面までの距離(光軸の距離)である。
【0022】
そして、ファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面から出射されたレーザ光L2は、第2レンズ32を透過して平行光に変換された後に第1レンズ31と選択反射ミラー35を透過して、レーザ光L2の出射方向(第3方向に相当)の延長上における第1レンズ31の焦点距離の位置に集光される。なお、図1(B)及び図2の例では、レーザ光L2を反射するレーザ反射ミラー36をレーザ光L2の出射方向の延長上に配置して、レーザ集光位置Pの方向にレーザ光L2の進行方向を変更している。また、選択反射ミラー35とレーザ集光位置Pとの経路中(選択反射ミラー35とレーザ反射ミラー36との間、またはレーザ反射ミラー36とレーザ集光位置Pとの間)に、レーザ集光位置Pを選択反射ミラー35に近づける第3レンズ33が配置されている。なお、レーザ集光位置Pには、伝送用光ファイバF3の一方の端面が配置される。また、F3Aは伝送用光ファイバF3の端面の位置をレーザ集光位置Pに固定するためのコネクタである。
レーザ反射ミラー36により、レーザ光L2の出射方向に制限されることなくレーザ集光位置Pの向き及び位置を設定できるので、ファイバレーザ発振装置をより小型化するために便利である。
また、第3レンズ33により、レーザ集光位置Pを選択反射ミラー35に近づけるので、ファイバレーザ発振装置1をより小型化することができる。
【0023】
●[第2の実施の形態(図3)]
次に図3を用いて、ファイバレーザ発振装置1及びファイバレーザ用NA変換光学系30の第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態では、ファイバレーザ用NA変換光学系30の構成が第1の実施の形態と異なり、励起光源モジュール10及びファイバレーザ用光ファイバF2の形態及び配置等、他は同じであるので、この相違点について説明する。
【0024】
第2の実施の形態におけるファイバレーザ用NA変換光学系30は、図3に示すように、励起光L1を反射するとともにファイバレーザ用光ファイバF2から出射されたレーザ光L2を透過する選択反射ミラー35と、第1レンズ31と、第2レンズ32と、第3レンズ33と、レーザ光L2をレーザ集光位置Pの方向に反射するレーザ反射ミラー36とを備えている。なお、図3に示す第2の実施の形態では、レーザ反射ミラー36は省略してもよい。
選択反射ミラー35は、第1の実施の形態と同様に、例えば、励起光L1の波長の光を反射してレーザ光L2の波長の光を透過するダイクロイックミラーであり、励起光源モジュール10の結束部F1Aから出射される励起光L1の出射方向(第1方向に相当)の延長上に配置されているとともに、当該選択反射ミラー35が反射した励起光L1の進行方向が、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバF2における前記円に接するように、所定角度に設定されて配置されている。
ファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面(コネクタF2Aの側の端面)は、第1の実施の形態と同様に、選択反射ミラー35が反射した励起光L1の進行方向(第2方向に相当)と向き合うように配置されている。
【0025】
励起光源モジュール10の結束部F1Aと選択反射ミラー35との間には、結束部F1A(出射部)から出射された励起光L1を平行光に変換する第1レンズ31が配置されている。
選択反射ミラー35とファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面との間には、選択反射ミラー35にて反射された平行光の励起光L1が、ファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面に集光されるように第2レンズ32が配置されている。つまり、第1レンズ31の焦点距離は、結束部F1Aから第1レンズ31までの距離(光軸の距離)である。また、第2レンズ32の焦点距離は、第2レンズ32からファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面までの距離(光軸の距離)である。
【0026】
そして、ファイバレーザ用光ファイバF2の一方の端面から出射されたレーザ光L2は、第2レンズ32を透過して平行光に変換された後に選択反射ミラー35を透過して、レーザ光L2の出射方向(第3方向に相当)の延長上、且つレーザ光L2が第2レンズ32と選択反射ミラー35を透過した後の位置に配置された第3レンズ33を透過して、第3レンズ33の焦点距離の位置に集光される。なお、図3の例では、レーザ光L2を反射するレーザ反射ミラー36をレーザ光L2の出射方向の延長上に配置して、レーザ集光位置Pの方向にレーザ光L2の進行方向を変更している。また、選択反射ミラー35とレーザ集光位置Pとの経路中(選択反射ミラー35とレーザ反射ミラー36との間、またはレーザ反射ミラー36とレーザ集光位置Pとの間)に、第3レンズ33が配置されていればよい。なお、レーザ集光位置Pには、伝送用光ファイバF3の一方の端面が配置される。また、F3Aは伝送用光ファイバF3の端面の位置をレーザ集光位置Pに固定するためのコネクタである。
レーザ反射ミラー36により、レーザ光L2の出射方向に制限されることなくレーザ集光位置Pの向き及び位置を設定できるので、ファイバレーザ発振装置をより小型化するために便利である。
【0027】
以上、本実施の形態にて説明したファイバレーザ発振装置1は、複数の機能を第1レンズ31(第1の実施の形態)、第2レンズ32(第1、第2の実施の形態)に持たせることで(励起光のコリメート、励起光の集光、レーザ光のコリメート、レーザ光の集光)、図4に示す従来の構成に対して、より少ない部品点数で、励起光のファイバレーザ用光ファイバF2への結合、レーザ光L2の伝送用光ファイバF3への結合が可能であり、よりコンパクトにファイバレーザ発振装置1を構成することができる。
また、巻回したファイバレーザ用光ファイバF2の中央近傍に励起光源モジュール10を配置して上下に重ねるように配置することができるので、容積率が高く、ファイバレーザ発振装置1をよりコンパクトに構成することができる。
また、励起光源モジュール10、ファイバレーザ用NA変換光学系30をモジュール毎に交換できるため、保守性に優れている。
また、ファイバレーザ発振装置1を上下の2層で構成し、一方の層に励起光源モジュール10とファイバレーザ用NA変換光学系30を配置し、他方の層にファイバレーザ用光ファイバF2を配置することで、ファイバレーザ用光ファイバF2の交換も容易となり、保守性に優れている。
【0028】
本発明のファイバレーザ発振装置1、及びファイバレーザ用NA変換光学系30は、本実施の形態で説明した外観、構成等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のファイバレーザ発振装置1の一実施の形態における外観、及び内部構造を説明する図である。
【図2】ファイバレーザ用NA変換光学系30の構成における第1の実施の形態を説明する図である。
【図3】ファイバレーザ用NA変換光学系30の構成における第2の実施の形態を説明する図である。
【図4】従来のファイバレーザ発振装置の構造の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ファイバレーザ発振装置
10 励起光源モジュール
30 ファイバレーザ用NA変換光学系
31 第1レンズ
32 第2レンズ
33 第3レンズ
35 選択反射ミラー
36 レーザ反射ミラー
LD 半導体レーザアレイ
F1 励起光用光ファイバ
F2 ファイバレーザ用光ファイバ
F3 伝送用光ファイバ
F1A 結束部
F2A、F3A コネクタ
P レーザ集光位置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光が入射されると励起されたレーザ光を端面から出射するファイバレーザ用光ファイバと、
前記ファイバレーザ用光ファイバに入射する励起光を出射する励起光源モジュールと、
前記励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射するとともに前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を予め設定したレーザ集光位置に集光するファイバレーザ用NA変換光学系と、を備えたファイバレーザ発振装置において、
前記ファイバレーザ用光ファイバは、入射された励起光を内部に閉じ込めることが可能な径で円状に巻回されて、端面は前記円に接する接線の方向に向けられており、
前記励起光源モジュールは、前記巻回されたファイバレーザ用光ファイバの中央部近傍に配置されて、前記ファイバレーザ用光ファイバの前記円を横切るように前記励起光を出射し、
前記ファイバレーザ用NA変換光学系は、前記励起光を反射するとともに前記レーザ光を透過する選択反射ミラーと、第1レンズと、第2レンズと、で構成されており、
前記選択反射ミラーは、前記励起光源モジュールから出射される励起光の出射方向の延長上に配置されているとともに、当該選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向が、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバにおける前記円に接するように、所定角度に設定されて配置されており、
前記ファイバレーザ用光ファイバの端面は、前記選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向と向き合うように配置されており、
前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に、前記第1レンズと前記第2レンズとが、前記選択反射ミラーに反射された励起光が前記第1レンズを透過して平行光に変換された後に前記第2レンズを透過して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に集光されるように配置されており、
前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光が、前記第2レンズを透過して平行光に変換された後に前記第1レンズと前記選択反射ミラーを透過して、前記第1レンズの焦点距離となる位置に設定された前記レーザ集光位置に集光される、
ファイバレーザ発振装置。
【請求項2】
励起光が入射されると励起されたレーザ光を端面から出射するファイバレーザ用光ファイバと、
前記ファイバレーザ用光ファイバに入射する励起光を出射する励起光源モジュールと、
前記励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射するとともに前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を予め設定したレーザ集光位置に集光するファイバレーザ用NA変換光学系と、を備えたファイバレーザ発振装置において、
前記ファイバレーザ用光ファイバは、入射された励起光を内部に閉じ込めることが可能な径で円状に巻回されて、端面は前記円に接する接線の方向に向けられており、
前記励起光源モジュールは、前記巻回されたファイバレーザ用光ファイバの中央部近傍に配置されて、前記ファイバレーザ用光ファイバの前記円を横切るように前記励起光を出射し、
前記ファイバレーザ用NA変換光学系は、前記励起光を反射するとともに前記レーザ光を透過する選択反射ミラーと、第1レンズと、第2レンズと、第3レンズと、で構成されており、
前記選択反射ミラーは、前記励起光源モジュールから出射される励起光の出射方向の延長上に配置されているとともに、当該選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向が、円状に巻回されたファイバレーザ用光ファイバにおける前記円に接するように、所定角度に設定されて配置されており、
前記ファイバレーザ用光ファイバの端面は、前記選択反射ミラーが反射した励起光の進行方向と向き合うように配置されており、
前記励起光源モジュールと前記選択反射ミラーとの間に、前記第1レンズが、前記励起光源から出射された励起光を平行光に変換するように配置されており、
前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に、前記第2レンズが、前記選択反射ミラーに反射された平行光の励起光が前記第2レンズを透過して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に集光されるように配置されており、
前記ファイバレーザ用光ファイバから出射されたレーザ光の出射方向の延長上、且つ当該レーザ光が前記第2レンズと前記選択反射ミラーを透過した後の位置に前記第3レンズが配置されており、
前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光が、前記第2レンズを透過して平行光に変換された後に前記選択反射ミラーと前記第3レンズを透過して、前記第3レンズの焦点距離となる位置に設定された前記レーザ集光位置に集光される、
ファイバレーザ発振装置。
【請求項3】
請求項1に記載のファイバレーザ発振装置であって、
前記選択反射ミラーと前記レーザ集光位置との経路中に、前記レーザ集光位置を前記選択反射ミラーに近づける第3レンズを備えている、
ファイバレーザ発振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のファイバレーザ発振装置であって、
更に、前記レーザ光を反射して前記レーザ集光位置を任意の方向に変換するレーザ反射ミラーを備え、
前記レーザ反射ミラーが、前記ファイバレーザ用光ファイバから出射されたレーザ光の出射方向の延長上、且つ前記選択反射ミラーを透過した後の位置に配置されている、
ファイバレーザ発振装置。
【請求項5】
励起光源モジュールから出射された励起光を、ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射して、前記励起光にて励起された前記ファイバレーザ用光ファイバが出射したレーザ光を、予め設定したレーザ集光位置に集光する、ファイバレーザ用NA変換光学系であって、
前記励起光源モジュールから出射されて第1方向に進行する励起光を反射して前記第1方向とは異なる第2方向に前記励起光の進行方向を変更するとともに、前記第2方向の延長上に配置された前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から前記第2方向と反対の第3方向に出射されたレーザ光を透過する選択反射ミラーと、
前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に配置されて、前記選択反射ミラーにて反射された励起光を平行光に変換する第1レンズと、
前記第1レンズと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に配置されて、前記平行光に変換された励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射する第2レンズと、を備え、
前記第2レンズは、前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を平行光に変換し、
前記第1レンズは、前記平行光に変換されたレーザ光を、前記第3方向の延長上に設定されたレーザ集光位置に集光する、
ファイバレーザ用NA変換光学系。
【請求項6】
励起光源モジュールから出射された励起光を、ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射して、前記励起光にて励起された前記ファイバレーザ用光ファイバが出射したレーザ光を、予め設定したレーザ集光位置に集光する、ファイバレーザ用NA変換光学系であって、
前記励起光源モジュールから出射されて第1方向に進行する励起光を反射して前記第1方向とは異なる第2方向に前記励起光の進行方向を変更するとともに、前記第2方向の延長上に配置された前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から前記第2方向と反対の第3方向に出射されたレーザ光を透過する選択反射ミラーと、
前記励起光源モジュールと前記選択反射ミラーとの間に配置されて、前記励起光源モジュールから出射された励起光を平行光に変換する第1レンズと、
前記選択反射ミラーと前記ファイバレーザ用光ファイバの端面との間に配置されて、前記平行光に変換された励起光を集光して前記ファイバレーザ用光ファイバの端面に入射するとともに前記ファイバレーザ用光ファイバの端面から出射されたレーザ光を平行光に変換する第2レンズと、
前記第3方向の延長上、且つ前記ファイバレーザ用光ファイバから出射されたレーザ光が前記第2レンズと前記選択反射ミラーを透過した後の位置に配置されて、前記第3方向の延長上に設定されたレーザ集光位置に前記レーザ光を集光する第3レンズと、を備えている、
ファイバレーザ用NA変換光学系。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−103159(P2010−103159A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270925(P2008−270925)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】