説明

ファインダー装置

【課題】ファインダー装置に組み込まれた有機EL素子から成る発光表示部において、電極線が視認されるのを防止する。
【解決手段】発光表示部16の被写体観察に使用される撮影視野領域22に複数の発光部26A〜26Lを設ける。各発光部26A〜26Lそれぞれに電極線として陽極線27A〜27L及び陰極線(分岐陰極線29A〜29E、接続陰極線30A〜30F)を接続する。各電極線は透明電極であって、その線幅は8μm以下である。また、各電極線は互いに100μm以上離間されて配線される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス素子が組み込まれたファインダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフカメラにおいて、ペンタプリズムと焦点板の間の被写体結像位置近傍に有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子という)が配置されることが知られている。この有機EL素子は、被写体観察を行うための撮影視野領域に発光部が設けられ、その発光部によってフォーカスフレーム等の各種マークが発光させられている(特許文献1参照)。
【0003】
発光部は、陽極層、有機層、陰極層が積層されて構成されると共に、各発光部の陽極層、陰極層それぞれには発光表示部の外部から電流を供給するための電極線が接続される。発光部は、撮影視野領域内に設けられるため、電極線もその一部がファインダー装置の撮影視野領域に配線されることとなる。ここで、電極線は、透明材料から形成されるので、被写体からの光を透過し、電極線が設けられた部分でも被写体観察を行うことができる。
【特許文献1】特許第3539251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ファインダー装置において、撮影視野領域に配線される電極線は、被写体からの光を透過することはできるが、完全に透過できるわけではなく、撮影者によってその存在が認識され、被写体観察の妨げとなる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、有機EL素子から成る発光表示部が内部に配置されるファインダー装置において、発光表示部に配線される電極線が被写体観察の妨げとならないようにすることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るファインダー装置は、透明基板と、透明基板上に設けられ、有機発光材料を含む有機層で構成される発光部と、発光部に電流を供給するために、発光部に接続されるように、透明基板上に配線される電極線とを備え、発光部に電流が供給されると、発光部が発光し、この発光により表示を行う発光表示部を、ファインダー窓から観察させるファインダー装置において、電極線は透明電極線であって、かつその線幅が8μm以下であることを特徴とする。
【0007】
透明基板上には複数の電極線が配線され、複数の電極線は互いに100μm以上離間されて配線されることが好ましい。
【0008】
発光表示部は、被写体からの反射光を透過し、被写体観察に使用される撮影視野領域を含む。この場合、複数の電極線は、撮影視野領域において、互いに100μm以上離間されて配線されていれば良く、撮影視野領域の外部では、例えば、基板の小スペース化を図る目的で、互いに100μm以下に近接されていても良い。
【0009】
同様に、電極線の線幅は撮影視野領域において8μm以下となれば良く、撮影視野領域の外部では、例えば、電気抵抗を抑える目的で、その線幅を8μm以上としても良い。
【0010】
発光部は陽極層、有機層、及び陰極層が順に積層されて構成される。ここで、上記同一の陽極層、又は同一の陰極層には、複数の電極線が接続されることが好ましい。この場合、同一の陽極層又は同一の陰極線に接続された複数の陽極線は、互いに100μm以上離間されていることが好ましい。なお、互いに100μm以上離間された複数の電極線は、並行して配線されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、発光表示部に配線される電極線を透明電極線にするとともに、その線幅を8μm以下とすることにより、電極線を視認しにくくし、電極線が被写体観察の妨げとなることを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態が適用された一眼レフカメラのファインダー装置を示す。なお、以下の説明においては、一眼レフカメラに適用された場合を説明するが、本発明は、顕微鏡、コンパクトカメラ等のその他の光学機器にも適用することが可能である。
【0013】
ファインダー装置10は、対物レンズ11と、クイックリターンミラー12と、ピント板13と、ペンタプリズム14と、接眼レンズ15と、発光表示部16と、ファインダー窓17とを備える。
【0014】
被写体で反射された反射光は、対物レンズ11を介して、クイックリターンミラー12で反射され、ピント板13に導かれ、ピント板13で一旦結像される。その後上記反射光は、ペンタプリズム14で2回反射され、接眼レンズ15を介してファインダー窓内17に入射される。クイックリターンミラー12はレリーズスイッチ(不図示)が押されると、光路上から退避させられ、対物レンズ11によって導かれた反射光は、CCDやフィルム等に導かれ、これらを露光する。
【0015】
発光表示部16は、有機EL素子から構成され、ピント板13と、ペンタプリズム14の間で、被写体からの光が通過する光路に交差する横断領域上に配置される。すなわち、発光表示部16は被写体結像位置近傍に配設される。発光表示部16の各発光部から発せられた光も、ペンタプリズム14、接眼レンズ15を介してファインダー窓17内に入射される。各発光部は、発光表示部16の図1における下面側に設けられ、発光表示部16からの光は、透明基板31(図2参照)を介してファインダー窓17に入射される。なお、発光表示部16は、クイックリターンミラー12とピント板13の間に配置することも可能である。
【0016】
発光表示部16の模式的な平面図を図2に示す。発光表示部16は、矩形のファインダー視野領域21と、ファインダー視野領域21の上下左右の外側を囲み、矩形の枠状に形成されたファインダー視野外領域24とから構成される。ファインダー視野領域21は、ファインダー窓17から視認可能であるが、ファインダー視野外領域24はファインダー窓17から視認することができない領域である。
【0017】
矩形のファインダー視野領域21は、被写体を観察するための矩形の撮影視野領域22と、その撮影視野領域22の上下左右の外側を囲み、矩形の枠状に形成される情報表示領域23とから構成される。撮影視野領域22は被写体からの反射光が入射し、透過される領域であって、被写体観察に使用される光透過領域である。情報表示領域23は、不図示の遮光マスクによって被写体からファインダー窓17(図1参照)に入射される光が遮光される領域であるが、必要に応じて発光部が設けられ各種情報が発光表示されても良い。各種情報としては、撮影に利用される露光値、撮影モードやストロボ発光の有無を示す各種シンボルマークである。
【0018】
発光表示部16には、複数の発光部26A〜26Lが設けられる。発光部26A、26Lは、撮影視野領域22の中心点Pを挟むように、中心点Pを重心とする仮想矩形Rの内部に設けられると共に、発光部26B〜26Iそれぞれは仮想矩形Rの辺上に設けられる。具体的には仮想矩形Rの各隅部に発光部26B〜26Eが設けられると共に、仮想矩形Rの左右上下の各辺の中央に発光部26F〜26Iが設けられる。発光部26J、26Kは、仮想矩形Rの外側に設けられ、仮想矩形Rの左右両側に仮想矩形Rを挟むように設けられる。
【0019】
発光表示部16は透明基板31で構成され、透明基板31の上に、陽極層及び陰極層に挟持された有機層が設けられて、上記各発光部26A〜26Lが形成される。各発光部26A〜26Lは、それぞれ独立して積層された有機層から構成される。そして、発光部26A〜26Kは、独立に電流供給を制御可能な陽極線に接続されているため、それぞれ独立に発光制御可能である。一方、発光部26Lは、後述するように、発光部26Lに電流を供給するための陽極線27Lが発光部26Aの陽極層に接続されているため、独立に発光制御することができず、発光部26Lの発光・非発光の切替は、発光部26Aの発光・非発光の切替に追従する。
【0020】
本実施形態における一眼レフカメラでは、発光部26A〜26Lは合焦ポイントとして使用される。したがって、例えばオートフォーカスで撮影が行われるとき、各発光部26A〜26Lの位置における測距が行われ、ピントが合った位置に対応する1つの発光部26A〜26Lが発光させられる。ただし、撮影視野領域22の中央にピントがあった場合は、発光部26A及び26Lの両方が発光する。
【0021】
透明基板31上には、さらに各有機層に電流を供給するための電極線、すなわち、陽極線及び陰極線が配線される。なお、図2において陽極線は実線で、陰極線は点線で示す。本実施形態では、陽極線として、発光表示部16の外部に設けられた電源部に電気的に接続される複数の陽極線27A〜27Lが配線される。
【0022】
上記複数の陽極線のうち、陽極線27A〜27Jは、ファインダー視野外領域24及び情報表示領域23を介して、撮影視野領域22の上辺22Uから、垂直下向きに撮影視野領域22の内部に延出する。陽極線27A〜27Jは、上辺22Uから垂直方向に直線的に延びて、或いは上辺22Uから垂直方向に直線的に延びた後適宜屈曲等されて、各発光部26A〜26Jまで配線される。一方、上記複数の陽極線のうち、陽極線27Kは、撮影視野領域22の右辺22Rから発光部26Kまで配線される。また、陽極線27Lは、撮影視野領域22の内部で発光部26A、26Lの間に配線される。
【0023】
各発光部26A〜26Kまで延出する各陽極線27A〜27Kの先端部は、発光部の形状に合わせて形成されており、上述した陽極層として形成される。なお、陽極線27Lは、一端が発光部26Aの陽極層に接続されると共に、他端が発光部26Lまで延び、発光部26Lにおいてその他端が陽極層として形成される。
【0024】
各発光部26A〜26Lにおける陽極層の上方には、有機層が重ねられて積層され、その有機層の上には、さらに陰極層が重ねられて積層される。なお、有機層及び陰極層は、発光部の形状に沿って形成されている。
【0025】
陰極線は、主陰極線28と、複数の分岐陰極線29A〜29Eと、接続陰極線30A〜30Fとから構成される。主陰極線28は、撮影視野領域22の外部(すなわち、ファインダー視野外領域24及び情報表示領域23)に配線されると共に、発光表示部16の外部に設けられた電極部に電気的に接続される。主陰極線28は、分岐陰極線29A〜29E及び接続陰極線30A〜30Fそれぞれの線幅より大きい線幅を有し、例えばその線幅は8μmより大きい。
【0026】
分岐陰極線29A〜29Eは、主陰極線28から分岐されて形成され、撮影視野領域22の下辺22Dを介して、撮影視野領域22の外部から内部に延出する。分岐陰極線29A〜29Eそれぞれは、垂直上向きに並行して発光部26J、26D、26I、26E、26Kまで延出し、その発光部26J、26D、26I、26E、26Kそれぞれにおいて、有機層の上に積層された陰極層に接続される。
【0027】
接続陰極線30A〜30Fそれぞれは、分岐陰極線が接続されない発光部を外部の電源部に電気的に接続するために、所定の発光部の間において、垂直方向に延びて配線される。例えば、接続陰極線30A、30Cそれぞれは、発光部26D、26Fの間、及び発光部26E、26Gの間それぞれに配線され、一端それぞれが発光部26D、26Eの陰極層に接続され、他端それぞれが発光部26F、26Gの陰極層に接続される。また、接続陰極線30D、30Fそれぞれも、同様に、発光部26B、26Fの間、及び発光部26C、26Gの間に配線される。
【0028】
また、接続陰極線30Bは、発光部26Iと、発光部26A、26Lとの間に配線され、その一端が発光部26Iの陰極層に接続されると共に、他端が2つに分岐され、その分岐された接続陰極線はそれぞれ発光部26A,26Lの陰極層に接続される。接続陰極線30Eは、同様に、一端が2つに分岐され、その分岐された接続陰極線はそれぞれ発光部26A,26Lに接続されると共に、他端が発光部26Hに接続されている。
【0029】
以上のような構成により、各発光部26A〜26Lは、分岐陰極線を介して、或いは、分岐陰極線、接続陰極線、及び陰極層を介して、主陰極線28に電気的に接続され、各発光部26A〜26Lには、電源部から電流を供給することが可能となる。
【0030】
各電極線(すなわち、陽極線及び陰極線)は、ITO(Indium Tin Oxide)、ATO(antimony doped tindioxide)、ZnO(zinc oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電性金属化合物から形成され、透明電極線として構成される。また、有機層は、正孔輸送層、有機発光材料で構成される有機発光層、電子輸送材料で構成される電子輸送層等が積層されて構成され、それぞれ赤、緑、青、白色等の所定の光を発するように構成される。なお、陽極層は上述したように、陽極線27A〜27Kと一体的に透明導電性金属化合物から形成され、透明電極層として構成される。一方、陰極層は、例えばアルミニウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム、チタニウム、イットリウム、リチウム、及びこれらの合金等の非透過性の陰極金属材料から形成され、非透明電極層として構成されるが、勿論上記透明導電性金属化合物等によって形成され透明電極層として構成されても良い。
【0031】
陽極線27A〜27Kは、図2から明らかなように、撮影視野領域22の外側(すなわち、ファインダー視野外領域24及び情報表示領域24)において、互いに近接して水平方向に延びて配線され、隣接する陽極線27A〜27K同士は、例えば、所定距離M未満に近接して配線される。
【0032】
このように近接して配線された陽極線27A〜27Jは、撮影視野領域22の外側において離間され、上辺22Uにおいては、隣接する陽極線27A〜27Jは、互いに所定距離M以上離間された状態となる。そして、陽極線27A〜27Jは、その所定距離M以上離間された状態を維持したまま各発光部まで配線される。すなわち、撮影視野領域22の内部において、各陽極線27A〜27Jは互いに、所定距離M以上離間されて配線されている。なお、陽極線27K及び陽極線27Lも同様に、撮影視野領域22の内部においては、他の陽極線27A〜27Lから所定距離M以上離間して配線される。
【0033】
本実施形態では、上記陽極線27A〜27Jは、陽極線が2本ずつ相対的に近接して一纏まりとなって、上辺22Uから垂直下向きに延びるとともに、一纏まりとなった2本の陽極線は他の陽極線から相対的に大きく離間して配置される。ただし、一纏まりとなって近接する2本の陽極線も、上述したように、所定距離M以上離間して配線される。例えば、陽極線27C、27Iは一纏まりとなって垂直下向きに並行して延びるが、これらも所定距離M以上離間している。また、陽極線27C、27Iそれぞれは、これらに隣接する陽極線27G、27Hに対しては相対的に大きく離間される。
【0034】
同様に、撮影視野領域22において、各陰極線(すなわち、分岐陰極線29A〜29E、及び接続陰極線30A〜30F)も互いに、所定距離M以上離間されて配線されている。また、接続陰極線30B、30Eの分岐された部分は、水平方向に延びた後、垂直方向に延びるが、その垂直方向に延びる部分同士も、所定距離M以上離間される。
【0035】
例えば、各分岐陰極線29A〜29Eは、下辺22Dにおいて、所定距離M以上離間されており、その所定距離M以上離間された状態を維持したまま、各発光部26J、26D、26I、26E、26Kまで並行して配線される。また、例えば、接続陰極線30Bは、その左右に並行して配線される接続陰極線30A、30Cから所定距離M以上離間されている。
【0036】
さらに、本実施形態では、各陽極線27A〜27Lそれぞれは、各陰極線(すなわち、分岐陰極線29A〜29E、接続陰極線30A〜30F)それぞれからも所定距離M以上離間されて配置されている。
【0037】
例えば、図2に示すように、撮影視野領域22において陽極線27Iは、所定距離M以上の距離である距離D1離間されつつ、陽極線27C、さらには接続陰極線30F、30Cに並行して配線される。また、例えば、撮影視野領域22において陽極線27Eは距離D2離間しつつ陽極線27Gに並行して垂直下向きに延びた後、距離D3離間しつつ分岐陰極線29Eに並行して垂直方向に配線され、距離D2、D3は、所定距離M以上の距離に設定される。
【0038】
撮影視野領域22の内部における各陽極線27A〜27L、及び各陰極線(すなわち、分岐陰極線29A〜29E、接続陰極線30A〜30F)の線幅は8μm以下に設定され、好ましくは7μm以下に設定される。撮影視野領域における電極線の線幅を上記範囲にすることにより、ファインダー窓から発光表示部を観察したとき、撮影視野領域において、陰極線及び陽極線が視認できにくくなる。
【0039】
上記した所定距離Mは100μmであって、好ましくは300μmである。すなわち、撮影視野領域22の内部において、各電極線(陽極線27A〜27L、分岐陰極線29A〜29E、接続陰極線30A〜30F)は、互いに、100μm以上、好ましくは300μm以上離間されて配線されることとなる。電極線を上記範囲より小さい離間距離で配線すると、電極線の線幅を8μm以下に設定しても、並行して配線される2本又はそれ以上の電極線が1本の纏まった電極線として視認され、観察者の被写体観察の妨げとなる。
【0040】
以上のように、本実施形態においては、撮影視野領域において、各透明電極線の線幅を狭くすると共に、各電極線同士の離間距離を広くすることにより、観察者がファインダー窓を覗いたときに、電極線を視認しにくくすることができる。
【0041】
なお、本明細書における電極線の線幅とは、電極線を上方から見たときに、一方の最縁部から他方の最縁部までの長さをいい、例えば、図3に示すように、下辺が上辺より長い断面台形形状を呈する場合、線幅は下辺における幅Wをいう。
【0042】
また、本実施形態では、例えば、発光部26Fには、陽極線27F及び陰極線30A、30Dが接続されており、発光部26F近傍においては、陽極線27F、陰極線30A、30Dそれぞれは、所定距離M以下に近接されることもある。しかし、本明細書では、同一の発光部に接続されることによって、他の電極線に所定距離M以下に近接する電極線であっても、その発光部近傍以外の部分が他の電極線から所定距離M以上離間していれば、上述した「所定距離M以上離間して配線される電極線」とする。
【0043】
図4は、本発明に係る第2の実施形態に係る発光表示部の右側部分の拡大平面図である。以下第2の実施形態について第1の実施形態との相違点を説明する。
【0044】
本実施形態では、撮影視野領域22において上辺22Uから、同一の発光部それぞれに向けて並行して延びる2本の陽極線が配線される。同一の発光部に向けて延びる2本の陽極線の先端部は、発光部近傍において近づけられると共に、発光部において接続されて1つの陽極層として形成される。ここで、並行して配線される2本の陽極線は、上述した所定距離M以上離間されている。
【0045】
例えば図4に示すように、撮影視野領域22において、陽極線27G1、27G2は、所定距離M以上離間されて互いに略平行に、上辺22Uから発光部26Gに向けて延出する。陽極線27G1、27G2は、その先端部が発光部26G近傍において近づけられて接続され、その接続部分が1つの陽極層として形成される。陽極層の上には、第1の実施形態と同様に有機層、及び陰極層が順に積層される。
【0046】
同様に、発光部26J、26D、26I(図2参照)、26E、26Kそれぞれに向けても、並行する分岐陰極線が2本ずつ主陰極線28から延ばされる。ここで、同一の発光部に向けて延びる2本の分岐陰極線は、所定距離M以上離間されて並行しつつ、各発光部に向けて延びると共に、その先端部は、発光部近傍において近づけられ、発光部において1つの陰極層に接続される。
【0047】
例えば、発光部26Eに向けては、互いに所定距離M以上離されて並行された2本の分岐陰極線28E1、28E2が主陰極線28から垂直上向きに延出されている。2本の分岐陰極線28E1、28E2は、発光部26E近傍で近づけられ、発光部26Eに積層された1つの陰極層に接続される。
【0048】
また、所定の発光部の間に配線される接続陰極線としても、2本の陰極線が所定距離M以上離間しつつ並行して配線される。例えば、発光部26E、26Gの間には、所定距離M以上離されて垂直方向に延びる接続陰極線30C1、30C2が配線される。接続陰極線30C1、30C2は、それらの一端が発光部26Eの近傍において近づき、発光部26Eの陰極層に接続されると共に、それらの他端が発光部26Gの近傍において近づき、発光部26Gの陰極層に接続される。また例えば発光部26Cと26Gの間に配線される接続陰極線30F1、30F2も同様に、所定距離M以上離されて並行して配線され、それらの両端は発光部26C、26Gの陰極層に接続される。
【0049】
上記所定距離Mは、第1の実施形態と同様に、100μm、好ましくは300μmであって、すなわち、撮影視野領域22において、同一の発光部に向けて並行して延びる2本の陽極線、又は2本の陰極線は100μm以上、好ましくは300μm以上離間されている。なお、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、撮影視野領域22における、その他の各電極線同士も、100μm以上であって、好ましくは300μm以上離間されている。
【0050】
陽極線の線幅が上述したように細く設定されると、断線のおそれや抵抗値の増大を招くが、本実施形態では、各陽極層には電流供給のための2本の陽極線が接続される。したがって、各発光部には、2本の陽極線を介して電流が供給され、抵抗値の増大を防止することができる。また、同一の発光部に接続される2本中1本の陽極線に断線が発生しても、他の1本の陽極線によって発光部に電流を供給することができるので、断線による発光部の発光停止が防止できる。陰極線についても、同様に、各発光部に電流供給のための2本の陰極線が接続されるので、抵抗値の増大及び断線による発光部の発光停止が防止できる。
【0051】
なお、第1及び第2の実施形態において、陽極線と陰極線は逆にされても良く、陽極線が外部の電源部に接続される1本の主電極線から複数の分岐電極線に分岐されて構成されると共に、陰極線が外部の電源部に接続される複数の電極線から構成されても良い。また、第2の実施形態においては、各陽極層及び各陰極層それぞれに、電流供給のための2本の電極線が接続されたが、いずれか一方のみに2本の電極線が接続され、他方には1本の電極線のみが接続されても良い。勿論、各陽極層及び各陰極層それぞれには、電流供給のための3本以上の陽極線及び3本以上の陰極線が接続されていても良い。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の効果を確認するために以下に示す実施例を実施したが、本発明は以下に示す実施例に限定されるわけではない。
【0053】
[実施例1]
実施例1においては、図5に示すパターンの電極線及び陽極層を、透明基板100の上に配線させた。透明基板100としては、14mm×27mm、透過率85%のガラス基板を使用した。実施例1においては、透明基板100の上に、円形にパターニングされた第1〜第6の陽極層101〜106を形成した。第1及び第4の陽極層101、104は、透明基板100の左側部分に上下に並べられ、その直径が0.3mmであった。第2及び第5の陽極層102、105は透明基板100の中央部分で上下に並べられ、その直径が0.5mmであった。第3及び第6の陽極層103、106は、透明基板100の右側部分に上下に並べられ、直径が0.7mmであった。
【0054】
第1〜第3の陽極層101〜103それぞれの上端には、垂直方向に2本並行して延びる電極線107、108を接続させた。第1〜第3の陽極層101〜103それぞれに接続される2本の電極線107、108の離間距離は10μm、30μm、100μmであった。また、第4〜第6の陽極層104〜106のそれぞれの上端には、垂直方向に1本単線で延びる電極線109を接続させた。なお、第1〜第3の陽極層101〜103に各々接続される電極線107、108の長さは4mmであった。また、同様に、第4〜第6の陽極層104〜106に接続される電極線の長さも、4mmであった。
【0055】
透明基板100の左側部分、中央部分、右側部分それぞれにおいては、2つの陽極層の左側に、陽極層から2mm程度離間し、透明基板100の上端から下端まで垂直方向に延びる電極線110を1本単線で配線した。また、これら電極線110のさらに左側には、電極線110から2mm程度離間した位置において、透明基板100の上端から下端まで垂直方向に、2本並行して延びる電極線111、112を配線した。このとき、並行する2本の電極線111、112の離間距離は、左側からそれぞれ10μm、30μm、100μmであった。
【0056】
実施例1における各電極線107〜112の線幅実測値は6.0μmであった。また、上記各電極線107〜112、及び陽極層101〜106はITOをスパッタ法により成膜した後、フォトリソグラフィーにより所定のパターンにパターニングした。このとき、透明基板には、所定のマスクを被せてパターニングしたが、各電極線を形成するための開口幅は9μmであった。なお、第1〜第6の陽極層101〜106それぞれの右側には、2本並行して、又は1本単線で水平方向に延びる電極線を配線したが、これら電極線については評価を行わなかった。
【0057】
[実施例2]
実施例2においては、各電極線107〜112の線幅実測値を、7.5μmにした以外は実施例1と同様にして実施した。なお、電極線を形成するときに使用されるマスクにおいて、各電極線を形成するための開口幅は11μmであった。
【0058】
[比較例1]
比較例1においては、各電極線107〜112の線幅実測値を、8.5μmにした以外は実施例1と同様にして実施した。なお、電極線を形成するときに使用されるマスクにおいて、各電極線を形成するための開口幅は13μmであった。
【0059】
[評価方法]
上記実施例1〜2、及び比較例1の透明基板100を、一眼レフカメラ(ペンタックス社製、商品名.*istD)のファインダー装置内の被写体結像位置近傍に配置した。そして、無差別に観察者を抽出し、観察者が各電極線を視認できたか否かを確認した。その結果を表1に示す。なお、本評価においては、透明基板100は、陽極層及び電極線が形成された面とは反対側の面から観察されたため、図5に示す平面図とは左右が反転して観察された。
【0060】
【表1】


※表1の各欄において、左下の数字は電極線が見えた人の割合。右下の数字は電極線の全幅。
※電極線の見えた人の割合が20%未満の場合は◎、20%以上50%未満の場合は○、50%以上90%未満の場合は△、90%以上の場合は×とした。
【0061】
比較例1のように、各電極線の線幅を8.5mmとすると、電極線を単線で配線した場合、及び2本並行させて配線した場合のいずれにおいても、半数以上の観察者によって電極線が視認された。
【0062】
一方、実施例2に示すように、電極線の線幅を、7.5mmとすると、電極線を単線で配線した場合、及び2本並行させかつその離間距離を100μm以上とした場合、半数未満の人のみに電極線が視認された。また、実施例1に示すように、電極線の線幅を、6.0mmとすると、電極線を単線で配線した場合、及び2本並行させかつその離間距離を10、30、100μm以上としたときのいずれの場合においても、半数未満の人のみに電極線が視認された。
【0063】
以上の評価結果から明らかなように、本発明においては、ファインダー装置に透明基板を配置したとき、電極線の線幅を8μm以下にすると、観察者によって視認されにくくなることが理解できる。また、電極線を2本並行させる場合、その2本の電極線同士の離間距離は100μm以上にすると、観察者によって視認されにくくなることも理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】カメラのファインダー装置の平面図である。
【図2】第1の実施形態における発光部の平面図である。
【図3】電極線の断面図である。
【図4】第2の実施形態における発光表示部の平面図である。
【図5】実施例1において、陽極層及び各電極線が形成された透明基板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 ファインダー装置
16 発光表示部
17 ファインダー窓
22 撮影視野領域
26A〜26L 発光部
27A〜27L 陽極線
28 主陰極線
29A〜29E 分岐陰極線
30A〜30F 接続陰極線
31 透明基板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に設けられ、有機発光材料を含む有機層で構成される発光部と、前記発光部に電流を供給するために、前記発光部に接続されるように、前記透明基板上に配線される電極線とを備え、前記発光部に電流が供給されると、前記発光部が発光し、この発光により表示を行う発光表示部を、ファインダー窓から観察させるファインダー装置において、前記電極線は透明電極線であって、かつその線幅が8μm以下であることを特徴とするファインダー装置。
【請求項2】
前記透明基板上には複数の前記電極線が配線され、前記複数の電極線は互いに100μm以上離間されて配線されることを特徴とする請求項1に記載のファインダー装置。
【請求項3】
前記発光表示部は、被写体からの反射光を透過し、被写体観察に使用される撮影視野領域を含み、
前記複数の電極線は、前記撮影視野領域において、互いに100μm以上離間されて配線されることを特徴とする請求項2に記載のファインダー装置。
【請求項4】
前記発光表示部は、被写体からの反射光を透過し、被写体観察に使用される撮影視野領域を含み、
前記電極線の線幅は前記撮影視野領域において8μm以下となることを特徴とする請求項1に記載のファインダー装置。
【請求項5】
前記発光部は陽極層、有機層、及び陰極層が順に積層されて構成され、
前記陽極層及び陰極層の少なくとも一方は、前記複数の電極線に接続されることを特徴とする請求項1に記載のファインダー装置。
【請求項6】
前記陽極層又は陰極線に接続された複数の電極線は、互いに100μm以上離間されていることを特徴とする請求項5に記載のファインダー装置。
【請求項7】
前記互いに100μm以上離間された複数の電極線は、並行して配線されることを特徴とする請求項2、3、又は6のうちいずれか一項に記載のファインダー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−268719(P2008−268719A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114173(P2007−114173)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】