説明

フィルタの製造方法

【課題】 樹脂材料の流れ・樹脂圧力によって、シート状メッシュ4の外周端縁14がフィルタ枠の表面に露出して、フィルタ枠の成形強度が低下するのを防止する。
【解決手段】 メッシュフィルタの剛性を高めるためのフィルタ枠の樹脂成形時に、樹脂材料の流れ・樹脂圧力によって、シート状メッシュ4の外周端縁14がフィルタ枠の表面に寄ろうとしても、フィルタ枠を樹脂成形するための成形型の上型側に設けられた第1凸部57および下型側に設けられた第2凸部57が、シート状メッシュ4の板厚方向の両側からシート状メッシュ4の外周端縁14を押さえているため、シート状メッシュ4の外周端縁14がフィルタ枠の表面側または裏面側に移動できない。これによって、シート状メッシュ4の外周端縁14がフィルタ枠の表面または裏面に露出するのを防止できるので、フィルタ枠の成形強度が低下することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気や蒸発燃料等の気体、あるいは燃料、作動油、潤滑油、オイルや水等の液体などの流体中に混入した異物を除去するフィルタを製造する方法に関するもので、特に金属繊維または化学合成繊維等よりなるシート状メッシュとこのシート状メッシュの周端縁を被覆して保護する外枠部とを一体成形してメッシュフィルタを製造する方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、金属繊維または化学合成繊維等よりなるシート状メッシュとゴム状弾性材製のガスケット本体とを一体化してフィルタガスケットを製造する製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、成形型のパーティング部に、ゴム状弾性材製のガスケット本体(外枠部)を成形するためのキャビティが設けられており、このキャビティに、シート状メッシュを押さえるための上下一対のメッシュ押さえ部が設けられており、このメッシュ押さえ部がそれぞれ樹脂またはゴム等の弾性材によって形成されている。そして、成形型のメッシュ押さえ部によってシート状メッシュをその両側から押さえた時に、押圧力の大きさに応じて弾性変形してシート状メッシュの編目に沿ってシート状メッシュに対してその両側から密着し、シート状メッシュの編目による隙間(経線と緯線との交差に形成される隙間)が発生するのを抑えるようにしている。
【0003】
[従来の技術の不具合]
ところが、上記従来の技術においては、成形型のメッシュ押さえ部によってシート状メッシュを押さえた時にシート状メッシュの編目による隙間が発生するのを抑えることができるが、外枠部にインサート成形されるシート状メッシュの周端縁が成形型で直接押さえることができないため、例えば図5に示したように、成形時の成形材の流れ・成形圧力によってフィルタガスケット(メッシュフィルタ)100のシート状メッシュ101の周端縁102が偏って外枠部103の表面に繊維が露出する。これにより、シート状メッシュの周端縁と外枠部との境で、網目が偏ったり、繊維がほつれたりする。また、外枠部の寸法精度不良による外枠部とフィルタガスケットの固定部とのシール性の低下や、外枠部の成形強度の低下が生じる。
【特許文献1】特開2002−102619号公報(第1−4頁、図1−図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、成形時の成形材の流れ・成形圧力により濾過エレメントの周端縁が外枠部の表面に露出するのを防止することのできるフィルタの製造方法を提供することにある。また、シール性の低下や外枠部の成形強度の低下を防止することのできるフィルタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明によれば、外枠部の成形時に成形材の流れ・成形圧力によって、濾過エレメントの周端縁が外枠部の表面に寄ろうとしても、外枠部を成形する成形型のエレメント押さえ部が濾過エレメントの周端縁を、濾過エレメントの板厚方向の両側から押さえているため、濾過エレメントの周端縁が外枠部の表面側に移動できない。これにより、成形時の成形材の流れ・成形圧力によって、濾過エレメントの周端縁が外枠部の表面に露出するのを防止できるので、シール性の低下や外枠部の成形強度の低下を防止することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明によれば、エレメント押さえ部を、濾過エレメントの板厚方向に対して略直交する方向に複数配置することにより、濾過エレメントの周端縁全体を、濾過エレメントの板厚方向の両側から均等に押さえることができる。また、請求項3に記載の発明によれば、外枠部を成形する成形型を、少なくとも上型と下型とによって構成し、エレメント押さえ部を、上型側に設けられる複数の第1凸部と下型側に設けられる複数の第2凸部とによって構成しても良い。
【0007】
請求項4に記載の発明によれば、濾過エレメントの板厚方向に対して略直交する方向の異なる位置に、複数の第1凸部と複数の第2凸部とが交互に繰り返されるように、複数の第1凸部と複数の第2凸部とを配置することで、濾過エレメントの板厚方向に対して略直交する方向に第1凸部の個数分と第2凸部の個数分とを加算した個数分だけ、例えば所定の間隔でエレメント押さえ部を設けることができるので、外枠部の表面側への濾過エレメントの周端縁の移動量を小さく抑えることができる。
【0008】
請求項5に記載の発明によれば、濾過エレメントの板厚方向に対して略直交する方向の同じ位置に、複数の第1凸部と複数の第2凸部とが濾過エレメントの周縁部を介して互いに向き合うように、複数の第1凸部と複数の第2凸部とを配置することで、濾過エレメントの板厚方向の両側から濾過エレメントの周端縁を確実に押さえることができるので、外枠部の表面側への濾過エレメントの周端縁の移動量を小さく抑えることができる。
【0009】
請求項6に記載の発明によれば、成形型のキャビティ内に成形材を充填して外枠部の成形を行うことにより、所定の製品形状の外枠部を有するフィルタを製造することができる。また、請求項7に記載の発明によれば、外枠部の成形を行うことにより、外枠部の内部に濾過エレメントをインサート成形した製品形状のフィルタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、成形時の成形材の流れ・成形圧力により濾過エレメントの周端縁が外枠部の表面に露出するのを防止するという目的、およびシール性の低下や外枠部の成形強度の低下を防止するという目的を、外枠部を成形する成形型に、濾過エレメントの周端縁を、濾過エレメントの板厚方向の両側から押さえるエレメント押さえ部を設けることで実現した。
【実施例1】
【0011】
[実施例1の構成]
図1ないし図3は本発明の実施例1を示したもので、図1はメッシュフィルタを製造する成形型の主要構造を示した図で、図2はメッシュフィルタを示した図である。
【0012】
本実施例のフィルタ装置は、図3に示したように、電磁弁のハウジング1の内部に流体通路2を形成し、この流体通路2の途中にメッシュフィルタ3を配置した電磁弁用フィルタ装置である。ここで、電磁弁は、例えば自動車等の車両の燃料タンク内で蒸発気化した蒸発燃料等の流体を、キャニスタを経由してエンジン吸気管に吸気管負圧を利用して導入(パージ)することで、蒸発燃料等の流体が大気中へ放出されることを防止する蒸発燃料処理装置に組み込まれている。そして、電磁弁は、キャニスタとエンジン吸気管とを結ぶパージ通路の途中に設置されて、キャニスタ内の吸着剤(例えば活性炭等)に吸着された蒸発燃料等の流体のエンジン吸気管への導入量を調節する電磁式流体流量制御弁(パージVSV:バキューム・スイッチング・バルブ)として機能する。
【0013】
また、電磁弁は、ハウジング1の弁座に対して着座、離座して流体通路2の途中に設けられた弁孔を開放、閉塞する弁体と、この弁体を開弁方向(弁孔を開く側)または閉弁方向(弁孔を閉じる側)に吸引する磁気吸引力を発生するソレノイドコイル、このソレノイドコイルの起磁力によって磁化される可動コアおよび固定コアを有する電磁駆動部と、弁体を閉弁方向(弁孔を閉じる側)または開弁方向(弁孔を開く側)に付勢する付勢力(荷重)を発生するスプリング等の弁体付勢手段(いずれも図示せず)とを備え、弁孔よりも流体流方向の上流側の流体通路2にメッシュフィルタ3を設置している。なお、弁体付勢手段は設けなくても良い。
【0014】
ハウジング1は、樹脂材料によって形成されており、内部に略方形状のフィルタ収容空間を形成するフィルタ保持枠(フレーム)を有している。このハウジング1は、図3に示したように、流体通路2の通路壁面に、流体流方向に対して直交する方向に平行な直線状の第1、第2嵌合溝(凹状の嵌合部、凹状溝)11、12を有している。一対の第1、第2嵌合溝11、12は、フィルタ収容空間を挟んで互いに対向して配置されている。
【0015】
メッシュフィルタ3は、流体通路2内を流れる流体(例えば空気や蒸発燃料等)を濾過する略方形状の濾過エレメント(メッシュ状シート:以下シート状メッシュと呼ぶ)4、およびこのシート状メッシュ4の外周端縁を被覆して保護する略方形状の外枠部(枠体:以下フィルタ枠と呼ぶ)5等によって構成されている。
【0016】
シート状メッシュ4は、電磁弁の弁部および電磁弁の可動部側に向かう流体中に混入した異物を捕捉して清浄化するフィルタエレメントであって、金属繊維または化学合成繊維等の細い線材を網目状(格子状)に編み込んで形成されている。このシート状メッシュ4は、フィルタ枠5の空気通過口(後記する)で露出する略方形状の露出部(濾過部)13、およびこの露出部13の周囲を取り囲むように設けられる角環状の外周端縁14を有している。この外周端縁14は、フィルタ枠5にインサート成形されている。なお、シート状メッシュ4を、例えばポリアミド樹脂(PA)製の発泡ネットまたは金属製のネットによって形成しても良い。
【0017】
フィルタ枠5は、樹脂材料(例えばポリプロピレン:PP)によって樹脂一体成形されており、メッシュフィルタ3の剛性を高める枠体である。また、フィルタ枠5には、平行な一組の対辺(短辺、図示左右辺)および平行な一組の対辺(長辺、図示上下辺)を有する角環状部15が設けられている。この角環状部15の内部には、渡し部(一字桟)16が角環状部15の図示上下辺に掛け渡されている。なお、渡し部16の図示上下端部(根元部)は、中央部よりも拡径されている。また、フィルタ枠5の内部には、流体が通過する流体通過口(開口部、窓部)17が2個以上設けられており、これらの流体通過口17にてシート状メッシュ4の露出部13が露出している。また、複数個の流体通過口17の角部は、円弧状に形成されているが、直角状に形成しても良い。また、フィルタ枠5の角環状部15の図示左右辺には、ハウジング1の第1、第2嵌合溝11、12に挿入嵌合される第1、第2嵌合部(凸状の嵌合部)21、22が形成されている。
【0018】
そして、フィルタ枠5の角環状部15の流体通過口側(例えば渡し部16の根元部近傍および流体通過口17の開口端縁部)には、シート状メッシュ4の外周端縁14を、シート状メッシュ4の板厚方向の両側から押さえ込むことが可能なメッシュ押さえ部が設けられている。このメッシュ押さえ部は、シート状メッシュ4の外周端縁14を、シート状メッシュ4の板厚方向の一方側(表面側、流体の流れ方向の上流側)から押さえる複数個の第1凹部31〜36、およびシート状メッシュ4の外周端縁14を、シート状メッシュ4の板厚方向の他方側(裏面側、流体の流れ方向の下流側)から押さえる複数個の第2凹部41〜46を有している。
【0019】
複数個の第1凹部31〜36および複数個の第2凹部41〜46は、シート状メッシュ4の露出部13を取り囲むように、つまり流体通過口17を取り囲むように、シート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向に互い違いに所定の間隔(等間隔または不規則間隔)で配置されている。複数個の第1凹部31、32は、フィルタ枠5の角環状部15の図示左右辺よりも流体通過口側(開口端縁部)に設けられている。また、第1凹部31、32は、共に3個ずつフィルタ枠5の角環状部15の表面よりシート状メッシュ側に凹むように略矩形状に設けられている。そして、複数個の第1凹部33、34は、フィルタ枠5の角環状部15の図示上下辺よりも流体通過口側(開口端縁部)に設けられている。また、第1凹部33、34は、共に4個ずつフィルタ枠5の角環状部15の表面よりシート状メッシュ側に凹むように略矩形状に設けられている。そして、第1凹部35、36は、フィルタ枠5の角環状部15の図示上下辺よりも渡し部16の根元側に設けられている。また、第1凹部35、36は、共に1個ずつフィルタ枠5の角環状部15の表面よりシート状メッシュ側に凹むように矩形状に設けられている。
【0020】
複数個の第2凹部41、42は、フィルタ枠5の角環状部15の図示左右辺よりも流体通過口側(開口端縁部)に設けられている。また、第2凹部41、42は、共に2個ずつフィルタ枠5の角環状部15の裏面よりシート状メッシュ側に凹むように略矩形状に設けられている。そして、複数個の第2凹部43、44は、フィルタ枠5の角環状部15の図示上下辺よりも流体通過口側(開口端縁部)に設けられている。また、第2凹部43、44は、共に4個ずつフィルタ枠5の角環状部15の裏面よりシート状メッシュ側に凹むように略矩形状に設けられている。そして、複数個の第2凹部45、46は、フィルタ枠5の角環状部15の図示左右辺と図示上下辺とが交わる頂点よりも流体通過口側(開口端縁部)に設けられている。また、第2凹部45、46は、それぞれ流体通過口17の図示左右辺側の各コーナ(円弧状部)に、共に2個ずつフィルタ枠5の角環状部15の裏面よりシート状メッシュ側に凹むように略矩形状に設けられている。
【0021】
なお、複数個の第1凹部31〜36および複数個の第2凹部41〜46は、角環状部15の図示左右辺(第1、第2嵌合部21、22)および図示上下辺よりも流体通過口側に設けられているので、ハウジング1の第1、第2嵌合溝11、12よりも流体通路側に位置し、ハウジング1の第1、第2嵌合溝11、12との間に隙間が形成されることはなく、シール性への影響はない。
【0022】
[実施例1の製造方法]
次に、本実施例のメッシュフィルタ3のフィルタ枠5の射出成形方法を図1に基づいて簡単に説明する。
【0023】
フィルタ枠5を樹脂一体成形する成形型(樹脂成形金型、射出成形用金型)は、主に上型(固定金型または可動金型)6と下型(可動金型または固定金型)7とで構成されている。上型6の下端面(図示下端面)51は、シート状メッシュ4の表面よりもフィルタ枠5の板厚の半分程度図示上方側に位置し、下型7の上端面(図示上端面)52は、シート状メッシュ4の裏面よりもフィルタ枠5の板厚の半分程度図示下方側に位置している。また、上型6の下端面51と下型7の上端面52との間には、成形型を型締めした際にメッシュフィルタ3の製品形状、特にフィルタ枠5の製品形状に対応した形状のキャビティ53が形成されている。
【0024】
また、キャビティ53は、成形型の内部に樹脂材料(成形材)を供給する樹脂材料供給装置に接続されている。この樹脂材料供給装置は、成形型の内部に樹脂材料を送り込む樹脂流路の先端部に、加熱されて溶融状態の樹脂材料(例えばPP等の熱可塑性樹脂よりなる溶融樹脂)をキャビティ53内に射出するためのゲート(樹脂材料注入口、成形材注入口)を有している。なお、ゲートは、フィルタ枠5の表面側または裏面側、あるいは両側のいずれかに形成されている。
【0025】
ここで、シート状メッシュ4は、フィルタ枠5の内部にインサート成形されるインサート部品であるため、フィルタ枠5の樹脂成形を開始する前に予め成形型の内部に挿入されて成形型の内部に保持されている。すなわち、シート状メッシュ4は、成形型を型締めした際に、成形型の下端面51および上端面52よりシート状メッシュ側に膨出(突出)するように設けられるメッシュ押さえ部によってシート状メッシュ4の露出部13および外周端縁14がシート状メッシュ4の板厚方向の両側から押さえ込まれることで、上型6と下型7との間に保持される。
【0026】
本実施例のメッシュ押さえ部は、露出側メッシュ押さえ部(第1メッシュ押さえ部)および端縁側メッシュ押さえ部(第1メッシュ押さえ部、エレメント押さえ部)よりなる。露出側メッシュ押さえ部は、上型6の下端面51に設けられる凸状のブロック部(第1ブロック部)54、および下型7の上端面52に設けられる凸状のブロック部(第2ブロック部)55を有している。第1ブロック部54は、フィルタ枠5の流体通過口17に対応した方形状で、フィルタ枠5の角環状部15および渡し部16の表面を形成する下端面51からシート状メッシュ4の露出部13の表面までの距離(メッシュフィルタ3の板厚の半分程度)だけボス状に突出している。また、第2ブロック部55は、フィルタ枠5の流体通過口17に対応した方形状で、フィルタ枠5の角環状部15および渡し部16の裏面を形成する上端面52からシート状メッシュ4の露出部13の裏面までの距離(メッシュフィルタ3の板厚の半分程度)だけボス状に突出している。なお、第1、第2ブロック54、55を、ゴム系弾性材によって形成しても良い。
【0027】
端縁側メッシュ押さえ部は、上型側に設けられる複数個の凸部(第1凸部)56、および下型側に設けられる複数個の凸部(第2凸部)57を有している。これらの第1、第2凸部56、57は、先端面形状が矩形状または方形状で、断面形状が台形状または方形状である。そして、複数個の第1、第2凸部56、57は、シート状メッシュ4の露出部13を取り囲むように、つまり流体通過口17を取り囲むように所定の間隔(等間隔または不規則間隔)で配置されている。また、複数個の第1、第2凸部56、57は、シート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向の異なる位置に、複数個の第1凸部56と複数個の第2凸部57とを配置し、しかも複数個の第1凸部56と複数個の第2凸部57とが交互に繰り返されるように、複数個の第1凸部56と複数個の第2凸部57とが互い違いに配置されている。なお、第1、第2凸部56、57を、ゴム系弾性材によって形成しても良い。
【0028】
複数個の第1凸部56は、フィルタ枠5の角環状部15の表面を形成する下端面51よりも、シート状メッシュ4の外周端縁14の表面までの距離(メッシュフィルタ3の板厚の半分程度)だけ凸状に突出し、シート状メッシュ4の外周端縁14を、シート状メッシュ4の板厚方向の一方側(表面側、流体の流れ方向の上流側)から押さえる。また、複数個の第2凸部57は、フィルタ枠5の角環状部15の裏面を形成する上端面52よりも、シート状メッシュ4の外周端縁14の裏面までの距離(メッシュフィルタ3の板厚の半分程度)だけ凸状に突出し、シート状メッシュ4の外周端縁14を、シート状メッシュ4の板厚方向の他方側(裏面側、流体の流れ方向の下流側)から押さえる。
【0029】
先ず、成形型の型締めを行う(型締め工程)。このとき、成形型によって形成されるキャビティ53内に、予め所定の形状(略方形状)に製造されたシート状メッシュ4を挿入しておくことで、露出側メッシュ押さえ部および端縁側メッシュ押さえ部によってシート状メッシュ4の露出部13および外周端縁14がシート状メッシュ4の板厚方向の両側から押さえ込まれる。次に、成形型によって形成されるキャビティ53内に、加熱されて溶融状態の樹脂材料を注入する。これにより、ゲートから樹脂材料が射出され、キャビティ53内に樹脂材料が充填される(射出・充填工程)。
【0030】
次に、樹脂圧力を徐々に増加させて射出時の樹脂圧力よりも大きな樹脂圧力で保圧を行う。すなわち、樹脂材料に所定の圧力を加えて、成形型に冷却水を導入し、この冷却水による収縮分の樹脂材料をゲートからキャビティ53内に補充する(保圧工程)。したがって、ゲートからキャビティ53内に注入された樹脂材料は、キャビティ53全体を埋め尽くすように回り込む。このとき、一部の樹脂材料は、複数個の第1凸部56とシート状メッシュ4の外周端縁14の表面との間に流れ込み、また、複数個の第2凸部57とシート状メッシュ4の外周端縁14の裏面との間に流れ込む。
【0031】
次に、キャビティ53内に充填された樹脂材料を取り出して、冷却して硬化(固化)させるか、あるいは成形型内で樹脂材料を冷却水等を用いて冷却して硬化(固化)させると、フィルタ枠5の内部にシート状メッシュ4がインサート成形された略方形状(製品形状)のメッシュフィルタ3が、樹脂材料の射出成形によって製造される(図2参照)。なお、上型6の第1ブロック部54および下型7の第2ブロック部55によってシート状メッシュ4の板厚方向の両側から押さえられていた部分、つまりフィルタ枠5の角環状部15の内部および渡し部16の両側には、複数の流体通過口17が形成される。また、端縁側メッシュ押さえ部の第1、第2凸部56、57によってシート状メッシュ4の板厚方向の両側から押さえられていた部分、つまりフィルタ枠5の角環状部15の表面および裏面には、複数個の第1凹部31〜36および複数個の第2凹部41〜46がシート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向に互い違いに形成される。
【0032】
ここで、本実施例では、メッシュフィルタ3の断面形状が、流体通路2を流れる流体の流れ方向に対して略直交する方向に平行な直線形状のメッシュフィルタ3を製造しているが、メッシュフィルタ3の断面形状が、流体通路2を流れる流体の流れ方向の上流側に凸状に湾曲した形状のメッシュフィルタ3を製造しても良い。この場合には、メッシュフィルタ3の凸状の湾曲面の剛性が流体流方向の上流側から加わる外力(流体圧力)に対して高くなる。これにより、流体流方向の上流側からメッシュフィルタ3の凸状の湾曲面に加わる流体圧力によって、メッシュフィルタ3の凸状の湾曲面が流体流方向の下流側に凹む等の変形を防止することができる。また、ハウジング1の第1、第2嵌合溝11、12からメッシュフィルタ3のフィルタ枠5の角環状部15の図示左右辺(第1、第2嵌合部21、22)が外れ難くなる。これにより、ハウジング1の第1、第2嵌合溝11、12の底面とメッシュフィルタ3のフィルタ枠5の第1、第2嵌合部21、22との間のシール性を向上することができる。
【0033】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のメッシュフィルタ3の作用を図2に基づいて簡単に説明する。
【0034】
電磁弁の開弁時には、メッシュフィルタ3のシート状メッシュ4に、電磁弁の弁部および電磁弁の可動部に向かう流体中に混入した異物が捕捉される。これにより、流体中に混入した異物が電磁弁の弁孔や電磁駆動部の摺動部(可動コアと固定コアとの摺動部)に侵入し難くなるので、電磁弁の弁体とハウジング(バルブシート)1に設けられる弁座とのシール性が低下したり、電磁弁の可動部(例えば弁体や電磁駆動部の可動コア)の動作不良や固着故障等が生じたりすることはない。
【0035】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のメッシュフィルタ3の剛性を高めるためのフィルタ枠5の樹脂成形時に、成形型の上型6の下端面51と下型7の上端面52との間に形成される、フィルタ枠5の製品形状に対応した形状のキャビティ53内にゲートから注入されて充填される樹脂材料の流れ・樹脂圧力によって、シート状メッシュ4の外周端縁14がフィルタ枠5の角環状部15の表面(または裏面)に寄ろうとしても、フィルタ枠5を樹脂成形するための成形型の上型6の第1凸部56および下型7の第2凸部57が、シート状メッシュ4の板厚方向の両側からシート状メッシュ4の外周端縁14を押さえ込んでいるため、シート状メッシュ4の外周端縁14がフィルタ枠5の角環状部15の表面側(または裏面側)に移動できない。
【0036】
これによって、樹脂成形時の樹脂材料の流れ・樹脂圧力によって、シート状メッシュ4の外周端縁14がフィルタ枠5の角環状部15の表面(または裏面)に露出するのを防止できるので、シート状メッシュ4の外周端縁14とフィルタ枠5の角環状部15との境で、網目が偏ったり、金属繊維または化学合成繊維等の線材がほつれたりすることはない。また、フィルタ枠5の角環状部15の寸法精度不良によるハウジング1の第1、第2嵌合溝11、12とフィルタ枠5の角環状部15の図示左右辺(第1、第2嵌合部21、22)との間のシール性の低下を防止することができ、且つメッシュフィルタ3の剛性を高めるのに必要なフィルタ枠5の角環状部15の成形強度の低下を防止することができる。
【0037】
また、シート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向の異なる位置に、複数個の第1凸部56と複数個の第2凸部57とを配置し、しかも複数個の第1凸部56と複数個の第2凸部57とが交互に繰り返されるように、複数個の第1凸部56と複数個の第2凸部57とを互い違いに所定の間隔(等間隔または不規則間隔)で配置している。これにより、隣設する2つの第1凸部56の間(例えば隣設する2つの第1凸部56の中間位置)に第2凸部57が配置され、また、隣設する2つの第2凸部57の間(例えば隣設する2つの第2凸部57の中間位置)に第1凸部56が配置される。
【0038】
したがって、シート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向に第1凸部56の個数分と第2凸部57の個数分とを加算した個数分だけ、例えば所定の間隔で端縁側メッシュ押さえ部を設けることができるので、成形型の第1、第2凸部56、57間の距離(凸部間隔)を短くすることができる。これにより、フィルタ枠5の角環状部15の表面側(または裏面側)へのシート状メッシュ4の外周端縁14の移動量を小さく抑えることができる。また、面積の小さい凸部、あるいはシート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向に1個だけしかない凸部でシート状メッシュ4の外周端縁14を押さえるのではなく、シート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向に交互に複数配置された上型6の第1凸部56と下型7の第2凸部57とでシート状メッシュ4の外周端縁14を押さえるようにしているので、第1、第2凸部56、57近傍でのシート状メッシュ4の外周端縁14の片寄りを確実に防止することができる。
【実施例2】
【0039】
図4は本発明の実施例2を示したもので、メッシュフィルタを示した図である。
【0040】
本実施例では、上型側に設けられる複数個の第1凸部56と、下型側に設けられる複数個の第2凸部57とを、シート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向の同じ位置に配置し、しかも複数個の第1凸部56と複数個の第2凸部57とを、シート状メッシュ4の外周端縁14を介して互いに向き合うように配置している。これにより、フィルタ枠5の角環状部15の表面および裏面には、複数個の第1凹部31〜36および複数個の第2凹部41〜46が互いに向き合うように同じ位置に形成される。なお、第2凹部45、46は、第1凹部35、36と互いに向き合うように同一位置に配置されている。
【0041】
このように、フィルタ枠5の樹脂成形上何ら支障がなければ、シート状メッシュ4の板厚方向に対して直交する方向の同じ位置に第1、第2凸部56、57を設けても良い。この場合には、シート状メッシュ4の板厚方向の両側からシート状メッシュ4の外周端縁14を確実に押さえることができるので、フィルタ枠5の角環状部15の表面側(または裏面側)へのシート状メッシュ4の外周端縁14の移動量を小さく抑えることができる。
【0042】
[変形例]
本実施例では、本発明のフィルタ装置を、自動車等の車両の蒸発燃料処理装置に組み込まれた電磁弁用フィルタ装置(電磁弁)に適用しているが、これに限定する必要はなく、その他の電磁式流体流量制御弁、電磁式流体圧力制御弁、電磁式開閉弁に適用しても良い。また、電動式流体流量制御弁、電動式流体圧力制御弁、電動式開閉弁に適用しても良い。なお、シート状メッシュ4をこの板厚方向に通過する流体としては、エア(空気)や蒸発燃料等の気体だけでなく、気相冷媒等の気体、水、燃料、オイルや液相冷媒等の液体、あるいは気液二相状態の流体を使用することができる。
【0043】
本実施例では、フィルタとして、剛性を有するシート状のメッシュフィルタ3を採用したが、フィルタとして、可撓性を有するシート状のメッシュフィルタを採用しても良く、また、蛇腹状のフィルタを採用しても良い。なお、濾過エレメントを、蛇腹状のフィルタエレメント(濾紙や繊維等)によって構成しても良いし、また、厚みの薄いメッシュ状(網目状またはハニカム状)シートによって構成しても良い。また、濾過エレメントを、金属材料または樹脂材料によって形成しても良い。また、フィルタ枠(外枠部)を、方形状の角環状部とこの角環状部の内部に位置する渡し部(格子状部、十字桟、一字桟)とを金属材料または樹脂材料によって一体的に形成しても良い。また、フィルタ枠を角環状部のみで構成しても良い。
【0044】
本実施例では、メッシュフィルタ3のフィルタ枠5を樹脂材料によって形成しているが、メッシュフィルタ3のフィルタ枠5をゴム系弾性材によって形成しても良い。また、シート状メッシュ4のフィルタ枠5の形状(流体流方向の上流側から見た正面形状、流体流方向の上流側面を前面とした場合には前面形状、流体流方向の下流側面を後面とした場合には後面形状)を、少なくとも平行な二辺(対辺)を含む形状(例えば略長円形状、略台形状、略平行四辺形状等)とし、これらの平行な二辺(対辺)がハウジング1の第1、第2嵌合溝11、12にそれぞれ挿入嵌合されるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】成形型の主要構造を示した断面図である(実施例1)。
【図2】(a)はメッシュフィルタを示した正面図で、(b)は(a)のA−A断面図である(実施例1)。
【図3】(a)、(b)はハウジングの内部にメッシュフィルタを組み付けた状態を示した断面図である(実施例1)。
【図4】(a)はメッシュフィルタを示した正面図で、(b)は(a)のB−B断面図である(実施例2)。
【図5】(a)はメッシュフィルタを示した正面図で、(b)、(c)はメッシュフィルタを示した断面図である(従来の技術)。
【符号の説明】
【0046】
1 ハウジング
2 流体通路
3 メッシュフィルタ
4 シート状メッシュ(濾過エレメント)
5 フィルタ枠(外枠部)
6 上型(成形型)
7 下型(成形型)
11 ハウジングの第1嵌合溝
12 ハウジングの第2嵌合溝
13 シート状メッシュの露出部
14 シート状メッシュの外周端縁
15 フィルタ枠の角環状部
16 フィルタ枠の渡し部
17 フィルタ枠の流体通過口
21 フィルタ枠の第1嵌合部
22 フィルタ枠の第2嵌合部
31 フィルタ枠の第1凹部
32 フィルタ枠の第1凹部
33 フィルタ枠の第1凹部
34 フィルタ枠の第1凹部
35 フィルタ枠の第1凹部
36 フィルタ枠の第1凹部
41 フィルタ枠の第2凹部
42 フィルタ枠の第2凹部
43 フィルタ枠の第2凹部
44 フィルタ枠の第2凹部
45 フィルタ枠の第2凹部
46 フィルタ枠の第2凹部
51 上型の下端面
52 下型の上端面
53 キャビティ
54 上型の第1ブロック部(露出側メッシュ押さえ部)
55 下型の第2ブロック部(露出側メッシュ押さえ部)
56 上型の第1凸部(第1凸部、端縁側メッシュ押さえ部)
57 下型の第2凸部(第2凸部、端縁側メッシュ押さえ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に通過する流体を濾過する板状またはシート状の濾過エレメントと、この濾過エレメントの周端縁を被覆する外枠部とが一体化されたフィルタを製造する方法であって、
前記外枠部を成形する成形型の内部に前記濾過エレメントを挿入して、
前記濾過エレメントを前記成形型で押さえ込んだ状態で、前記外枠部の成形を行うフィルタの製造方法において、
前記成形型は、前記濾過エレメントの周端縁を、前記濾過エレメントの板厚方向の両側から押さえるエレメント押さえ部を有していることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタの製造方法において、
前記エレメント押さえ部は、前記濾過エレメントの板厚方向に対して略直交する方向に複数配置されていることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルタの製造方法において、
前記成形型は、少なくとも上型と下型とで構成され、
前記エレメント押さえ部は、前記上型側に設けられる複数の第1凸部、および前記下型側に設けられる複数の第2凸部を有していることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のフィルタの製造方法において、
前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部とは、前記濾過エレメントの板厚方向に対して略直交する方向の異なる位置に、しかも前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部とが交互に繰り返されるように配置されていることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のフィルタの製造方法において、
前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部とは、前記濾過エレメントの板厚方向に対して略直交する方向の同じ位置に、しかも前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部とが前記濾過エレメントの周縁部を介して互いに向き合うように配置されていることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のフィルタの製造方法において、 前記成形型は、少なくとも上型と下型とで構成され、
前記上型の下端面と前記下型の上端面との間には、前記外枠部の製品形状に対応したキャビティが形成されており、
前記キャビティ内に成形材を充填して前記外枠部の成形を行うことを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載のフィルタの製造方法において、 前記外枠部の成形を行うことで、前記外枠部の内部に前記濾過エレメントをインサート成形した製品形状のフィルタを製造することを特徴とするフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−305979(P2006−305979A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134118(P2005−134118)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】