説明

フィルタ

【課題】表面弾性波フィルタが並列接続されたフィルタにおいて、低損失でかつ高減衰なフィルタを提供すること。
【解決手段】本発明は、入力ノード(Nin)と出力ノード(Nout)との間に接続された弾性表面波フィルタである第1フィルタ(10)と、入力ノード(Nin)と出力ノード(Nout)との間に第1フィルタ(10)と並列に接続された弾性表面波フィルタである第2フィルタ(20)と、を具備し、第1フィルタ(10)の総対数をN1、第2フィルタ(20)の総対数をN2としたとき、N2<N1であることを特徴とするフィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタに関し、特に並列接続された弾性表面波フィルタを有するフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及している。例えば、携帯電話端末においては、800MHz〜1.0GHz帯および1.5GHz〜2.0GHz帯といった高周波帯が使用されている。これら移動通信システム用の機器に用いられるフィルタは、通過帯域における挿入損失は低く(低損失)、非通過帯域における減衰量は大きいこと(高減衰特性)が求められている。非通過帯域として例えば携帯電話端末の送信用フィルタにおいては受信帯域での高減衰、受信用フィルタにおいては送信帯域での高減衰が求められている。このような分野においては、弾性表面波素子を用いた弾性表面波フィルタが用いられている。特許文献1には通過帯域における挿入損失の向上のために2重モードフィルタを並列に接続した弾性表面波フィルタが開示されている。
【特許文献1】特開2003−249842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
弾性表面波フィルタを並列接続することで通過帯域の挿入損失は低減できるものの非通過帯域の減衰量を大きくすることは難しい。そこで、例えば、弾性表面波フィルタを並列接続したフィルタにおいて高減衰化のため弾性表面波素子の電極の膜厚を最適化することも考えられる。しかし、この場合、フィルタのインピーダンスがずれて通過帯域の損失が劣化する。このように、低損失でかつ高減衰のフィルタを実現することは困難であった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、表面弾性波フィルタが並列接続されたフィルタにおいて、低損失でかつ高減衰が可能なフィルタを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、入力ノードと出力ノードとの間に接続された弾性表面波フィルタである第1フィルタと、前記入力ノードと前記出力ノードとの間に前記第1フィルタと並列に接続された弾性表面波フィルタである第2フィルタと、を具備し、前記第1フィルタの総対数をN1、前記第2フィルタの総対数をN2としたとき、N2<N1であることを特徴とするフィルタである。本発明によれば、低損失でかつ高減衰が可能なフィルタを提供することができる。
【0006】
上記構成において、N2/N1≦0.8である構成とすることができる。この構成によれば、より高減衰化することができる。
【0007】
本発明は、入力ノードと出力ノードとの間に接続された弾性表面波フィルタである第1フィルタと、前記入力ノードと前記出力ノードとの間に前記第1フィルタと並列に接続された弾性表面波フィルタである第2フィルタと、を具備し、前記第1フィルタの総対数と櫛型電極の交差幅との積をNAp1、前記第2フィルタの総対数と櫛型電極の交差幅との積をNAp2としたとき、NAp2<NAp1であることを特徴とするフィルタである。本発明によれば、低損失でかつ高減衰が可能なフィルタを提供することができる。
【0008】
上記構成において、NAp2/NAp1≦0.8である構成とすることができる。この構成によれば、より高減衰化することができる。
【0009】
上記構成において、前記入力ノードおよび前記出力ノードの少なくとも一方に、直列または並列に共振器を具備する構成とすることができる。この構成によれば、一層高減衰化が可能となる。
【0010】
上記構成において、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは2重モードフィルタである構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは入力IDTおよび出力IDTの一方の2つのIDTの間に前記入力IDTおよび前記出力IDTの他方の1つのIDTが設けられた2重モードフィルタである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表面弾性波フィルタが並列接続されたフィルタにおいて、低損失でかつ高減衰が可能なフィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1の模式図、図2は比較例の模式図を示す。図1を参照に、実施例1に係るフィルタ100は、例えばLiNbOまたはLiTaO等の圧電基板50上に例えばAl等の金属膜からなる電極である櫛型電極IDT(Interdigital Transducer)および反射器が形成されている。フィルタ100は弾性表面波フィルタである第1フィルタ10および第2フィルタ20と共振器30および40とを有している。第1フィルタ10は入力ノードNinと出力ノードNoutとの間に接続されている。第2フィルタ20は入力ノードNinと出力ノードNoutとの間に第1フィルタ10と並列に接続されている。このように、第1フィルタ10と第2フィルタ20とは並列接続されている.共振器30はノードNinと入力端子Tinとの間に直列に接続され、共振器40はノードNoutと出力端子Toutとの間に直列に接続されている。入力端子Tinおよび出力端子Toutはそれぞれ不平衡型の入力端子および出力端子となっている。実施例1の後述する比較例との違いは、第1フィルタ10と第2フィルタ20とが異なる構成であることである。詳細は後述する。
【0015】
第1フィルタ10は2重モードフィルタであり、2つの反射器R1の間に3つのIDT11、IDT12およびIDT13が設けられている。IDT11とIDT13とは出力ノードNoutに接続された出力IDTであり、IDT12は入力ノードNinに接続された入力IDTである。同様に、第2フィルタ20は2つの反射器R2の間にIDT21、IDT22およびIDT23が設けられており、IDT21、IDT23は出力ノードNoutに接続され、IDT22は入力ノードNinに接続されている。このように、第1フィルタ10および第2フィルタ20は入力IDTおよび出力IDTの一方の2つのIDTの間に入力IDTおよび出力IDTの他方の1つのIDTが設けられたフィルタである。共振器30は2つの反射器R3の間にIDT30が設けられ、共振器40は2つの反射器R4の間にIDT40が設けられている。
【0016】
図2を参照に、比較例に係るフィルタ102は、図1の実施例1と同様に、第1フィルタ12、第2フィルタ22、共振器30および共振器40が接続されている。実施例1と異なり、第1フィルタ12と第2フィルタ22とは同じ構成のフィルタである。すなわち、2つの反射器R10の間にIDT1、IDT2およびIDT3が設けられている。IDT1およびIDT3は出力ノードNoutに接続され、IDT2は入力ノードNinに接続されている。
【0017】
次に、実施例1の第1フィルタ10および第2フィルタ20の構成について説明する。ここで、図2の第2フィルタ22を参照に対数とはIDTの入出力電極(入力または出力ノードに接続された電極)の入出力電極指とグランド電極(グランドに接続された電極)のグランド電極指のペアを1対とする電極指の数である。電極波長λとは電極ピッチ×2の長さである。櫛型電極の交差幅である電極交差幅ApとはIDTの入出力電極指とグランド電極指の重なる幅である。
【0018】
図1を参照に、実施例1の第1フィルタ10の電極交差幅Ap1は93μmである。またIDT11、IDT12およびIDT13の対数はそれぞれ11.5対、35.5対および32.5対であり、電極波長はそれぞれ約2.3μm、約2.33μmおよび約2.33μmである。第2フィルタ20の電極交差幅Ap2は71μmである。またIDT21、IDT22およびIDT23の対数はそれぞれ6.5対、11.5対および5.5対であり、電極波長はそれぞれ約2.32μm、約2.3μmおよび2.34μmである。共振器30の電極交差幅、対数および電極波長はそれぞれ67μm、83対および約2.28μmであり、共振器40の電極交差幅、対数および電極波長はそれぞれ59μm、118対および約2.28μmである。
【0019】
図2を参照に、実施例2の第1フィルタ12および第2フィルタ22の電極交差幅Apは80μmである。またIDT1、IDT2およびIDT3の対数はそれぞれ14対、44対および14対であり、電極波長はそれぞれ約2.3μm、約2.33μmおよび2.3μmである。共振器30および共振器40の電極交差幅、対数および電極波長はそれぞれ80μm、200対および約2.29μmである。
【0020】
実施例1における第1フィルタ10のIDT11、IDT12およびIDT13の対数の和である総対数N1は79.5対、電極交差幅Ap1は93μm、第2フィルタ20の総対数N2は23.5対、電極交差幅Ap2は71μmである。よって、
N2/N1=0.3、
Ap2/Ap1=0.76である。
また、第1フィルタ10の総対数N1と電極交差幅Ap1との積をNAp1、第2フィルタ20の総対数N2と電極交差幅Ap2との積をNAp2とすると、
NAp2/NAp1=0.26
である。
【0021】
ここで、実施例1に係るフィルタ100と比較例に係るフィルタ102においては、挿入損失を同程度とするため、入力ノードNinと出力ノードNout間のインピーダンスがほぼ同等になるように対数および電極交差幅を設計している。実施例1の第1フィルタ10のインピーダンスは約60Ωであり、第2フィルタ20のインピーダンスは約300Ωである。一方、比較例の第1フィルタ12および第2フィルタ22のインピーダンスはいずれも約100Ωである。よって、実施例1、比較例とも入力ノードNinと出力ノードNoutとの間のインピーダンスは約50Ωである。
【0022】
図3は実施例1および比較例に係るフィルタの通過特性を示す図である。なお、周波数はフィルタの通過帯域の中心値で規格化している。実施例1(実線)と比較例(破線)とでは通過帯域における挿入損失は同程度となっている。これは、実施例1の第1フィルタ10と第2フィルタ20とを並列接続した際のインピーダンスと、比較例の第1フィルタ12と第2フィルタ22とを並列接続した際のインピーダンスとをほぼ同じとしたためである。一方、通過帯域の高周波側の帯域(実施例1および比較例のフィルタが送信帯域とした場合、受信帯域に相当する帯域)1.04から1.08において、実施例1は比較例に比較し減衰量は大きくなっている。このように、実施例1によれば、弾性表面波フィルタが並列に接続されているため低損失化でき、かつ比較例に対し非通過帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0023】
次に、第1フィルタ10および第2フィルタ20の対数、電極交差幅を変化させた場合の通過帯域の高周波側の帯域1.04から1.08の減衰量(この帯域で最も悪い減衰量)を計算した。図4および図5は、第1フィルタ10の総対数N1を48から80、第2フィルタ20の総対数N2を18から73、第1フィルタ10の電極交差幅Ap1を27λから52λ、第2フィルタ20の電極交差幅Ap2を17λから36λ、電極波長λを2μmから2.5μmの範囲で変化させ、N2/N1およびNAp2/NAp1に対する減衰量を示した図である。図4および図5において、点は各計算結果を示し曲線は近似線を示す。また、N2/N1、NAp2/NAp1が1.0の白丸で囲った点は比較例に相当する点、N2/N1、NAp2/NAp1が0.2から0.3付近の白丸で囲った点は実施例1に相当する点である。図4よりN2/N1<1とすると減衰量は大きくなり、N2/N1≦0.8とすると減衰量は急激に大きくなる。図5より、NAp2/NAp1<1とすると減衰量は大きくなり、NAp2/NAp1≦0.8とすると減衰量は急激に大きくなる。
【0024】
図4および図5のように、N2<N1またはNAp2<NAp1とすることにより、通過帯域の高周波側の減衰量を大きくすることができる。さらに、N2/N1≦0.8またはNAp2/NAp1≦0.8とすることが好ましい。N2/N1≦0.5またはNAp2/NAp1≦0.5とすることが一層好ましい。さらに、入力ノードNinおよび出力ノードNoutの少なくとも一方に直列または並列に共振器を有することが好ましい。これにより、通過帯域の高周波側に減衰極を形成することができる。よって、さらに通過帯域の高周波側の減衰を大きくすることができる。なお、入力ノードNinに直列の共振器を有するとは、入力ノードNinと入力端子Tinとの間に共振器を有することである。一方、入力ノードNinに並列の共振器を有するとは入力ノードNinとグランドとの間に共振器を有することである。出力ノードについても同様である。実施例1は2重モードフィルタの例を示したが、他の弾性表面波フィルタに適用することもできる。
【0025】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は実施例1に係るフィルタの模式図である。
【図2】図2は比較例に係るフィルタの模式図である。
【図3】図3は実施例1および比較例に係るフィルタの通過特性を示す図である。
【図4】図4はN2/N1に対する通過帯域の高周波側の減衰量の計算結果である。
【図5】図5はNAp2/NAp1に対する通過帯域の高周波側の減衰量の計算結果である。
【符号の説明】
【0027】
10、12 第1フィルタ
20、22 第2フィルタ
30、40 共振器
50 圧電基板
100、102 フィルタ
Nin 入力ノード
Nout 出力ノード
Tin 入力端子
Tout 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ノードと出力ノードとの間に接続された弾性表面波フィルタである第1フィルタと、
前記入力ノードと前記出力ノードとの間に前記第1フィルタと並列に接続された弾性表面波フィルタである第2フィルタと、を具備し、
前記第1フィルタの総対数をN1、前記第2フィルタの総対数をN2としたとき、
N2<N1
であることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
N2/N1≦0.8
であることを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
入力ノードと出力ノードとの間に接続された弾性表面波フィルタである第1フィルタと、
前記入力ノードと前記出力ノードとの間に前記第1フィルタと並列に接続された弾性表面波フィルタである第2フィルタと、を具備し、
前記第1フィルタの総対数と櫛型電極の交差幅との積をNAp1、前記第2フィルタの総対数と櫛型電極の交差幅との積をNAp2としたとき、
NAp2<NAp1
であることを特徴とするフィルタ。
【請求項4】
NAp2/NAp1≦0.8
であることを特徴とする請求項3記載のフィルタ。
【請求項5】
前記入力ノードおよび前記出力ノードの少なくとも一方に、直列または並列に共振器を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載のフィルタ。
【請求項6】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは2重モードフィルタであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一方記載のフィルタ。
【請求項7】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは入力IDTおよび出力IDTの一方の2つのIDTの間に前記入力IDTおよび前記出力IDTの他方の1つのIDTが設けられた2重モードフィルタであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−35007(P2008−35007A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204139(P2006−204139)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【Fターム(参考)】