説明

フィルムコンデンサ

【課題】耐熱性に優れたフィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】フィルムコンデンサの誘電体膜として、ハハロゲン原子を含まない非プロトン性の溶剤と流動開始温度が250℃以上の液晶ポリエステルとを含む溶液組成物の膜を基材に形成した後で、該溶剤を除去し、さらに当該膜から前記基材を分離することによって形成された、流動開始温度が250℃以上の液晶ポリエステル膜を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチップ型フィルムコンデンサ等のフィルムコンデンサに関し、より詳細には、フィルムコンデンサの耐熱性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンデンサの一種として、例えばチップ型フィルムコンデンサが知られている。チップ型フィルムコンデンサは、絶縁性フィルムの表面に導電性フィルムを形成し、かかる絶縁性フィルムを複数枚積層して、さらに巻回することにより、作製される。このような構造によれば、それぞれの絶縁性フィルムは、表裏両側で導電性フィルムと接することになる。そして、これら導電性フィルムの電位差により、各絶縁性フィルムに電荷が蓄積される。フィルムコンデンサは、テレビ、ラジオ、音響機器等の家電製品、船舶、飛行機、宇宙機器、車両等で使用される電子計測器、無線通信機、小型モーター、蛍光灯、水銀灯等の、様々な用途に幅広く利用されている。
【0003】
従来、フィルムコンデンサの絶縁性フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、フッ素樹脂、ポリカーボネート等が使用されていた。下記特許文献には、ポリエステルを用いた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−182351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の絶縁性フィルムは、耐熱性が不十分であった。このため、これらの絶縁性フィルムを用いたフィルムコンデンサは、使用温度範囲が狭いことに加え、半田付け時に破損し易いという欠点があった。
【0006】
また、絶縁性フィルムとして例えばポリ四フッ化エチレンを使用したフィルムコンデンサには、比重が高い、高価である、廃棄作業での燃焼処理時にフッ素含有ガスが発生する等の欠点があった。
【0007】
この発明の目的は、耐熱性が高く、軽量で、燃焼処理時に有毒ガスを発生させないフィルムコンデンサを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明者は、液晶ポリエステルフィルムを用いてフィルムコンデンサを作製することを検討し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、誘電体膜と、該誘電体膜に電圧を印加する導電体膜とを有するフィルムコンデンサであって、前記誘電体膜が、ハロゲン原子を含まない非プロトン性の溶剤と流動開始温度が250℃以上の液晶ポリエステルとを含む溶液組成物の膜を基材に形成した後で、該溶剤を除去し、さらに当該膜から前記基材を分離することによって形成された、液晶ポリエステル膜である、フィルムコンデンサであることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルが、下式(1)で示された第1構造単位と、下式(2)で示された第2構造単位と、下式(3)で示された第3構造単位とを有し、且つ、全構造単位に対する前記第1〜第3構造単位の比が、前記第1構造単位は30.0〜60.0モル%、前記第2構造単位は25.0〜35.0モル%、前記第3構造単位は25.0〜35.0モル%である、フィルムコンデンサであることを特徴とする。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
Ar:フェニレンまたはナフチレン
Ar:フェニレン、ナフチレンまたは下式(4)で表される基
Ar:フェニレンまたは下式(4)で表される基
X:OまたはNH
Y:OまたはNH
(4)−Ar11−Z−Ar12
Ar11:フェニレンまたはナフチレン
Ar12:フェニレンまたはナフチレン
Z:O、COまたはSO
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記Ar、ArまたはArの芳香環に結合している水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されている、フィルムコンデンサであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の構成に加え、前記構造単位Xおよび構造単位Yの少なくとも一方がNHである、フィルムコンデンサであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルにおいて、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が30.0〜60.0モル%、4−アミノフェノールに由来する構造単位が25.0〜35.0モル%、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位および2,6−ナフタレンジカルボル酸に由来する構造単位の合計が25.0〜35.0モル%である、フィルムコンデンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記各請求項に記載の発明によれば、耐熱性が高く、軽量で、燃焼処理時に有毒ガスを発生させないフィルムコンデンサを安価に提供することができる。
【0015】
さらに、上記各請求項に記載の発明によれば、従来のフィルムコンデンサと同等の優れた電気特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るチップ型フィルムコンデンサの構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るチップ型フィルムコンデンサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサについて、本発明をチップ型フィルムコンデンサに適用した場合を例に採り、図面を用いて説明する。
【0018】
<フィルムコンデンサの構造>
【0019】
図1は、本実施形態に係るエクステンドホイル型フィルムコンデンサの構造を概略的に示す斜視図であり、(a)は完成前の状態、(b)は完成状態を示している。
【0020】
図1に示したように、本実施形態のフィルムコンデンサ100は、複数枚(ここでは2枚)の液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2を備えている。液晶ポリエステルとは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特性を有するポリエステルである。本実施形態では、後述するような液晶ポリエステルを用いて、絶縁性フィルムを作製する。液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2は、図1(a)に示したように巻回され、これによりコンデンサ本体部101が形成される。
【0021】
液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2には、金属膜102−1,102−2が、例えば蒸着等により形成されている(後述)。ここで、金属膜102−1は、一方の側面が液晶ポリエステルフィルム101−1の側面と略一致し且つ他方の側面が液晶ポリエステルフィルム101−1よりも内側に位置するように形成されている。また、金属膜102−2は、一方の側面が液晶ポリエステルフィルム101−2よりも内側に位置するように形成され且つ他方の側面が液晶ポリエステルフィルム101−1の側面と略一致するように形成されている。
【0022】
電極103,104は、巻回されたコンデンサ本体部101の側面に、半田付け等により接着される。上述のように、金属膜102−1は液晶ポリエステルフィルム101−1と一方の側面のみで一致するように形成され、また、金属膜102−2は液晶ポリエステルフィルム101−2と他方の側面のみで一致するように形成されている。このため、金属膜102−1は電極103のみと導通し、また、金属膜102−2は電極104のみと導通する。したがって、液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2の表面と裏面との間に電極103,104間の電圧に応じた電圧が印加され、その結果、液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2に電荷が蓄積される。
【0023】
<液晶ポリエステル>
【0024】
上述のように、本実施形態では、絶縁性フィルムとして、液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2を使用する。本実施形態に使用する液晶ポリエステルとしては、下記式(1)で表される構造単位(以下、「第1構造単位」という)と、下記式(2)で表される構造単位(以下、「第2構造単位」という)と、下記式(3)で表される構造単位(以下、「第3構造単位」という)とを有し、全構造単位の合計に対して、第1構造単位を30.0〜60.0モル%、第2構造単位を25.0〜35.0モル%、第3構造単位を25.0〜35.0モル%からなるものが好ましい。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
【0025】
ここで、Ar は、フェニレンまたはナフチレンである。また、Ar は、フェニレン、ナフチレンまたは下式(4)で表される基である。Ar は、フェニレンまたは下式(4)で表される基である。X、Yは、それぞれ、OまたはNHを表わす。XとYとが同じ構造である必要はない。なお、Ar 、Ar およびAr の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
(4)−Ar11−Z−Ar12
【0026】
式(4)において、Ar11およびAr12は、それぞれフェニレンまたはナフチレンを表している。Ar11とAr12とが同じ構造である必要はない。ZはO、COまたはO を表している。
【0027】
第1構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位である。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸等を挙げることができる。
【0028】
第2構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位である。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0029】
第3構造単位は、芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンまたは芳香族ジアミンに由来する構造単位である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等を挙げることができる。また、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンとしては、p−アミノフェノール(4−アミノフェノール)、m−アミノフェノール(3−アミノフェノール)等を挙げることができる。一方、芳香族ジアミンとしては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0030】
本実施形態では、溶剤可溶性の液晶ポリエステルを使用する。ここで、溶剤可溶性とは、温度50℃において、1重量%以上の濃度で、溶剤に溶解することを意味する。この場合の溶剤とは、後述する溶液組成物の調製に用いる好適な溶剤の何れか1種である(詳細は後述する)。
【0031】
溶剤可溶性を有する液晶ポリエステルとしては、上述の第3構造単位として、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンに由来する構造単位を含むものや、芳香族ジアミンに由来する構造単位を含むもの、またはこれらの両方を含むものを使用することが好ましい。すなわち、第3構造単位として、XおよびYの少なくとも一方がNHである構造単位(式(3a)参照)を含むものが好ましい。なぜなら、このような液晶ポリエステルは、好適な溶剤(非プロトン性極性溶剤、後述)に対する溶剤可溶性が優れているからである。さらには、実質的に全ての第3構造単位が、式(3a)で示された構造単位であることが、特に好ましい。また、式(3a)の構造単位は、液晶ポリエステルの溶剤溶解性を十分に高く、さらには液晶ポリエステルの吸湿性がより低くなる点でも、有利である。
(3a)−X−Ar3−NH−
【0032】
式(3a)において、Ar およびXは上式(3)と同義である。
【0033】
第3構造単位は、全構造単位の合計に対して25.0〜35.0モル%の範囲で含まれることが好ましく、30.0〜32.5モル%の範囲で含まれることがより好ましい。これにより、液晶ポリエステルの溶剤可溶性は、一層良好になる。また、液晶ポリエステルの第3構造単位が式(3a)の構造単位を有している場合、溶剤に対する溶解性、低吸水性が優れているのに加えて、溶液組成物を用いて絶縁フィルムを製造することが非常に容易になるという利点もある。
【0034】
第1構造単位は、上述のように全構造単位の合計に対して30.0〜60.0モル%の範囲で含まれることが好ましく、35.0〜60.0モル%の範囲で含まれることがより好ましい。このようなモル分率で液晶ポリエステルが第1構造単位を含んでいる場合、液晶性を十分維持しつつ、溶剤に対する溶解性を向上させることができる傾向がある。さらに、第1構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸の入手性も合わせて考慮すると、かかる芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸またはこれらの混合物が好適である。
【0035】
第2構造単位は、上述のように全構造単位の合計に対して25.0〜35.0モル%の範囲で含まれることが好ましく、30.0〜32.5モル%の範囲で含まれることがより好ましい。このようなモル分率で液晶ポリエステルが第2構造単位を含んでいる場合、液晶性を十分維持しつつ、溶剤に対する溶解性を向上させることができる傾向がある。さらに、第2構造単位を誘導する芳香族ジカルボン酸の入手性も合わせて考慮すると、該芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくも1種以上とすることが好ましい。
【0036】
また、得られる液晶ポリエステルに高度の液晶性を発現させるためには、第2構造単位のモル数M2と第3構造単位のモル数M3との比すなわちモル分率M2/M3は、0.9/1.0〜1.0/0.9の範囲が好適である。
【0037】
次に、本実施形態で使用される液晶ポリエステルフィルムの製造方法について、簡単に説明する。
【0038】
本実施形態の液晶ポリエステルは、種々公知の方法により製造可能である。但し、製造工程を簡便化するためには、本実施形態の液晶ポリエステル(すなわち、第1構造単位、第2構造単位および第3構造単位を含む液晶ポリエステル)を製造する場合、これら構造単位を誘導するモノマーを、エステル形成性・アミド形成性誘導体に転換した後で重合させて液晶ポリエステルを製造する方法が好ましい。
【0039】
以下、かかるエステル形成性・アミド形成性誘導体について、例を挙げて説明する。
【0040】
カルボキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、カルボキシル基がポリエステルやポリアミドを生成する反応を促進するように酸塩化物、酸無水物等の反応活性の高い基になっているものや、かかるカルボキシル基がエステル交換・アミド交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するようにアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸や、芳香族ジカルボン酸等を使用できる。
【0041】
フェノール性水酸基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、エステル交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール等を使用できる。
【0042】
また、アミノ基を有するモノマーのアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。例えば、芳香族ジアミンを使用できる。
【0043】
例えば、以下の方法を用いることにより、非常に簡便な工程のみで液晶ポリエステルを製造できる。
【0044】
まず、芳香族ヒドロキシカルボン酸とモノマー(芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミン等のフェノール性水酸基とアミノ基との一方または両方を有するモノマー)とを、脂肪酸無水物でアシル化する。これにより、エステル形成性・アミド形成性誘導体(アシル化物)が得られる。続いて、かかるアシル化物のアシル基とモノマー(カルボキシ基を有するものを使用する)のカルボキシ基とがエステル交換・アミド交換を生じるようにして重合させる。これにより、液晶ポリエステルが得られる。
【0045】
このような液晶ポリエステルの製造方法は、例えば、特開2002−220444号公報や特開2002−146003号公報に記載されている。
【0046】
アシル化においては、フェノール性水酸基とアミノ基との合計に対して、脂肪酸無水物の添加量を1.0〜1.2倍当量とすることが好ましく、1.05〜1.1倍当量とすることがより好ましい。脂肪酸無水物の添加量が1.0倍当量未満の場合は重合時にアシル化物や原料モノマーが昇華して反応系が閉塞し易くなるという傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなってしまうという傾向がある。
【0047】
アシル化は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
【0048】
アシル化に使用される脂肪酸無水物としては、価格と取扱性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸またはこれらから選ばれる2種以上の混合物を使用することが好ましく、無水酢酸を使用することが特に好ましい。
【0049】
アシル化に続く重合は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
【0050】
また、重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
【0051】
アシル化を行う工程および重合を行う工程においては、少なくともこれら工程の一方で、平衡を移動させるために、副生する脂肪酸や未反応の脂肪酸無水物を蒸発させる等して系外へ留去することが好ましい。
【0052】
なお、アシル化や重合は、触媒の存在下に行ってもよい。このときの触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として知られているものを、そのまま使用することができる。例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を、かかる触媒として使用することができる。
【0053】
ただし、金属を含む触媒を使用すると、その金属が液晶ポリエステルに不純物として混入することになり、誘電体フィルムの絶縁性が損なわれるおそれがある。かかる観点からすれば、上述の触媒としては有機化合物触媒を使用する方が好ましく、特に、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾール等の窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましい(特開2002−146003号公報参照)。
【0054】
通常、このような触媒はモノマーと同時に投入され、アシル化後の除去は必ずしも必要ではない。かかる触媒を除去しない場合、アシル化工程から重合工程にそのまま移行することができる。
【0055】
この重合工程で得られた液晶ポリエステルは、流動開始温度が250℃以上であれば、本実施形態の液晶ポリエステルとして、そのまま使用することができる。但し、耐熱性や液晶性という特性の更なる向上のためには、より高分子量化させることが好ましい。また、かかる高分子量化には、固相重合を行うことが好ましい。
【0056】
以下、固相重合に係る一連の操作を説明する。
【0057】
まず、上述の重合で得られた、比較的低分子量の液晶ポリエステルを取り出して粉砕し、パウダー状もしくはフレーク状にする。続いて、粉砕後の液晶ポリエステルを、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気の下、20〜350℃で、1〜30時間、固相状態で加熱処理する。この操作により、固相重合が実施される。
【0058】
このような固相重合は、攪拌しながら行ってもよいし、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお、後述する好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得るためには、この固相重合は、反応温度が210℃を越えることが好ましく、220℃〜350℃の範囲とすることがより好ましい。また、反応時間は1〜10時間の範囲内とすることが好ましい。
【0059】
本実施形態に用いる液晶ポリエステルは、流動開始温度が250℃以上であることが好ましい。優れた耐熱性のフィルムを形成できるからである。かかる観点からすれば、この流動開始温度は、260℃以上であることがさらに好ましい。なお、ここでいう流動開始温度とは、フローテスターによる溶融粘度の評価において、9.8MPaの圧力下で液晶ポリエステルの溶融粘度が4800Pa・秒以下になる温度をいう。流動開始温度の定義は、液晶ポリエステルの分子量の目安として当業者に周知である(例えば、‘小出直之編,「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」,95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行’参照)。
【0060】
一方、液晶ポリエステルの流動開始温度の上限は、かかる液晶ポリエステルの溶剤可溶性が維持できる範囲で決定される。かかる観点からすれば、流動開始温度が300℃以下の液晶ポリエステルを使用することが好ましい。流動開始温度が300℃以下であれば、液晶ポリエステルの溶剤に対する溶解性が、十分に良好である。加えて、流動開始温度が300℃以下の場合、得られる溶液組成物(後述)の粘度が十分に小さく、このため、溶液組成物の取扱性が良好となる。かかる観点からすれば、流動開始温度の上限は、290℃以下であることがさらに好ましい。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような好適な範囲に制御するには、上述した固相重合の重合条件を適宜最適化すればよい。
【0061】
<溶液組成物>
【0062】
本実施形態のチップ型フィルムコンデンサに用いる誘電体フィルムを得るには、液晶ポリエステルおよび溶剤を含む溶液組成物、特に溶剤に液晶ポリエステルを溶解せしめた溶液組成物を用いることが好ましい。
【0063】
上述のように、本実施形態に用いる液晶ポリエステルとしては、第1〜第3構造単位を含む液晶ポリエステル、特に第3構造単位として上式(3a)の構造単位を含む液晶ポリエステルが、好適に使用される。このような液晶ポリエステルは、ハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤に対して、十分な溶解性を発現する。
【0064】
ここで、ハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;γ―ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶剤;アセトニトリル、サクシノニトリル等のニトリル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶剤、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン系溶剤等が使用できる。なお、本実施形態において、液晶ポリエステルの溶剤可溶性(上述)とは、これらから選ばれる少なくとも1つの非プロトン性溶剤に可溶であることを意味している。
【0065】
液晶ポリエステルの溶剤可溶性を可能な限り良好にするため、すなわち溶液組成物を得易くするためには、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性極性溶剤を用いることが好ましい。具体的にいえば、例示した溶剤の中でも、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤が特に好ましく、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)を用いることがさらに好ましい。また、上述の溶剤として、1気圧における沸点が180℃以下の揮発性の高い溶剤を使用することにより、フィルム製膜後に溶媒を除去し易くなるという利点が得られる。このような観点からは、DMF、DMAcが特に好ましい。
【0066】
本実施形態の溶液組成物として上述のような非プロトン性溶剤を用いる場合には、かかる非プロトン性溶剤100重量部に対して、液晶ポリエステルを20〜50重量部、好ましくは22〜40重量部溶解させることが好ましい。これにより、誘電体フィルムを製膜した後で上述の溶剤を乾燥除去する際に、厚みムラ等が生じ難くなるという利点が得られる。
【0067】
また、本実施形態の溶液組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体に代表されるエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂等、液晶ポリエステル以外の樹脂を一種または二種以上を添加してもよい。ただし、このような他の樹脂を用いる場合には、これら他の樹脂としても上記溶剤に可溶なものを使用することが好ましい。
【0068】
さらに、本実施形態の溶液組成物には、寸法安定性、熱電導性の改善等を目的として、本発明の効果を損なわない範囲で、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機フィラー;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマー等の有機フィラー;シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤が、一種または二種以上添加されてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、溶液組成物の溶液中に含まれる微細な異物を、フィルター等を用いたろ過処理によって、除去してもよい。
【0070】
さらに、溶液組成物に対して、必要に応じ、脱泡処理を行ってもよい。
【0071】
<誘電体フィルムの製造方法>
【0072】
図2は、本実施形態の誘電体フィルム、すなわち液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2(図1参照)の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0073】
まず、上述したような液晶ポリエステルを有機溶剤に溶解して、上述したような溶液組成物を調製する(図2のステップS1参照)。
【0074】
次に、この溶液組成物を、適当な支持基材上に、流延塗工する(図2のステップS2参照)。かかる流延塗工には、たとえばローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。このとき、支持基材は、平滑な表面を有し、使用する溶液組成物に対して化学反応し難く、溶液組成物の流延塗工後の加熱処理等に対して十分な耐久性を有するものであればよい。このような支持基材としては、例えばガラス板、SUS(Stainless Used Steel)板またはSUS箔等が使用できる。
【0075】
続いて、支持基材上に流延塗工された溶液組成物から溶剤を除去する(図2のステップS3,S4参照)。これにより、かかる支持基材上に、フィルムを形成することができる。有機溶剤を除去する方法は特に限定されないが、有機溶剤を蒸発させる方法が好ましい。有機溶剤を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風等の方法が挙げられる。生産効率、取扱性の点からは、加熱して蒸発する方法が好ましく、通風しつつ加熱して蒸発させる方法がより好ましい。
【0076】
以下、この加熱処理について、溶液組成物の調製にN−メチル−2−ピロリドン(沸点:204℃)を用いた場合を例に採って説明する。
【0077】
まず、50〜60℃で約3時間程度、予備乾燥を行う(図2のステップS3参照)。この予備乾燥の温度が低すぎると、乾燥時間に時間がかかる上に、得られる絶縁フィルムの厚みムラが起こりやすくなる。その一方で、予備乾燥の温度が高すぎると、溶剤が急激に蒸発することによって、フィルムの平滑性が損なわれるおそれがある。
【0078】
このような予備乾燥を行った後で、さらに、加熱処理を行う(図2のステップS4参照)。その際の処理条件としては、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、240〜330℃で、1〜30時間加熱処理するといった方法が採用できる。なお、得られる絶縁フィルムの耐熱性をより良好にするためには、この加熱処理は、温度が250℃を越えるようにして行うことが好ましく、260〜320℃の範囲内で行うことがさらに好ましい。この加熱処理の処理時間は1〜10時間の範囲内とすることが、生産性の点で好ましい。このように、予備乾燥を行った後で加熱処理を行うことで、液晶ポリエステルをさらに高分子量化することができる。
【0079】
その後、支持基材から液晶ポリエステルを分離することにより、液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2を完成する(図2のステップS5参照)。
【0080】
このようにして製造された液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2には、フィルムコンデンサ用絶縁性フィルムとして要求される特性を損なわない範囲であれば、必要に応じて表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、スパッタリング処理、溶剤処理、UV処理、プラズマ処理等が挙げることができる。
【0081】
液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2の厚みは、用途に応じて適宜選択することができるが、絶縁性、成形性が保持できる範囲の膜厚であることが望ましい。
【0082】
このような製造方法により、本実施形態では、耐熱性に優れ且つ十分な電気特性を有する液晶ポリエステルフィルムを作製することができる。
【0083】
<チップ型フィルムコンデンサの製造方法>
【0084】
本実施形態のチップ型フィルムコンデンサ(図1参照)は、例えば以下のような方法で製造することができる。
【0085】
まず、上述のようにして作製した液晶ポリエステルフィルム101−1,101−2の表面に、導電体膜としての金属膜102−1,102−2を形成する。金属膜102−1,102−2としては、例えば、金属箔や金属蒸着膜等を積層してなるものを採用することができる。
【0086】
金属箔の種類は特に限定されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔、錫箔、金箔、銀箔、ステンレス箔、または、ニッケル-クロム、銅−ニッケルなどの合金箔などを採用することができる。なかでも、銅箔、アルミニウム箔、錫箔、金箔が好ましい。
【0087】
また、金属蒸着膜の種類も特に限定されず、導電性の良好な金属蒸着膜を適宜目的に応じて選択することができる。例えば、銅、アルミニウム、錫、金、銀、ステンレス、または、ニッケル−クロムのような合金の蒸着膜を使用することができる。なかでも、銅、アルミニウム、金の蒸着膜が好ましい。
【0088】
また、金属蒸着膜と金属箔との積層体を使用することも可能である。
【0089】
その後、電極103,104を、半田付け等によって接続する。
【0090】
フィルムコンデンサの構造は、図1に限定されるものではない。例えば、タブ型フィルムコンデンサ、すなわち金属箔と液晶性ポリマーからなるフィルムとを交互に重ね併せて、金属箔の長さ方向のほぼ半分の位置にリード線を溶接し、これらフィルムを巻回してはんだ付けまたは圧着などで固定した構造のコンデンサにも、本発明を適用することができる。また、積層型フィルムコンデンサ、すなわち、液晶性ポリマーからなるフィルムと金属箔とを一定の寸法に切って、巻回せずに積み重ね、金属溶射を施してリード線を付けたコンデンサにも、本発明を適用することができる。
【0091】
また、積層構造としては、例えば、液晶ポリエステルフィルム上に金属膜(金属箔または金属蒸着膜)を形成した構造や、金属膜を二枚の液晶ポリエステルフィルムで挟み込んだ構造等が採用し得る。なかでも、金属膜を二枚の液晶ポリエステルフィルムで挟み込む構造が、特に好ましい。
本実施形態においては、チップ型フィルムコンデンサの各構成成分間に接着剤層を介在させることができる。かかる接着剤としては、ドライラミネーション用接着剤、溶融押し出し用接着剤もしくは樹脂などを、目的に応じて用いることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、耐熱性が高く、且つ、従来のフィルムコンデンサと同等の電気特性を有する、フィルムコンデンサを安価に提供することができる。また、液晶ポリエステルフィルムを使用するので、軽量で、燃焼処理時に有毒ガスを発生することがない。このフィルムコンデンサは、従来のフィルムコンデンサの適用分野すべてに適用することが可能である。
【実施例】
【0092】
次に、本発明の実施例として、上記実施形態に係るフィルムコンデンサの評価結果について、表1を用いて説明する。なお、その主旨を超えない範囲内において、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
以下、実施例に係るサンプルおよび評価方法について説明する。
(1)実施例サンプルの製造方法
【0094】
まず、攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入菅、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 941g(5.0モル)、4−アミノフェノール273g(2.5モル)、イソフタル酸 415.3g(2.5モル)および無水酢酸1123g(11モル)を仕込んだ。
【0095】
続いて、反応器内の大気を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、この温度を保持した状態で3時間還流させた。
【0096】
その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。
【0097】
そして、得られた固形分を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。得られた粉末は、350℃で偏光顕微鏡により液晶相に特有のシュリーレン模様が観察された。
【0098】
得られた液晶ポリエステル粉末8gをN−メチル−2−ピロリドン92gに加え、160℃に加熱して完全に溶解した。これにより、褐色透明な溶液が得られた。
【0099】
次に、この溶液を攪拌および脱泡することにより、液晶ポリエステル溶液を得た。
【0100】
さらに、得られた液晶ポリエステル溶液を、支持基材としての銅箔(三井金属鉱業製3EC−VLP)のシャイン面(平滑面)上にフィルムアプリケーターを用いてキャストし、送風乾燥機で50℃、2時間乾燥した。
【0101】
そして、窒素雰囲気の熱風オーブン中で、昇温速度約5℃/分で、室温から300℃まで1時間かけて昇温し、さらに、300℃で90分保持する熱処理を行った。その後、室温に戻すことで、樹脂層厚み30μmの銅箔付きフィルムが得られた。
【0102】
次いで、銅箔付きフィルムから銅箔(すなわち支持基材)をエッチング除去することにより、単層の液晶ポリエステルフィルムを得た。
【0103】
その後、この液晶ポリエステルフィルムから、幅4.8mm、長さ14.74mm、厚さ0.042mmの実施例サンプルを得た。
【0104】
なお、公知の工程により、同じサイズのポリエチレンナフタレートフィルムおよびポリエチレンテレフタレートフィルムを作製し、比較例サンプルとした。
【0105】
そして、これらのフィルムに対し、以下のようにして、熱特性、誘電特性、絶縁破壊電圧を評価した。
(2)熱特性
【0106】
上述の実施例サンプルおよび比較例サンプルについて、ティー・エイ・インスツルメント社製粘弾性測定装置DMA Q−800を用い、昇温速度10℃/分、測定周波数10MHzで、ガラス転移点を測定した。
(3)誘電特性
【0107】
各サンプルの表面にAu蒸着で電極を形成し、以下の装置で静電容量Cp[F]とコンダクタンスG[S]とを測定し、さらに、下記測定式により誘電正接tanδを求めた。
【0108】
装置本体:Agilent社製 4284PRECISION LCR METER
【0109】
装置冶具:Agilent社製 16451B DIELECTRIC TEST FIXTURE
【0110】
測定式:tanδ=G/(2πfCp) f:測定周波数[Hz]
【0111】
測定方向:膜厚方向
(4)絶縁破壊電圧
【0112】
JIS-C-2318の測定法に準じ、直流電圧を用いて測定した。
【0113】
表1に示したように、本実施例に係る液晶ポリエステルフィルムは、比較例サンプルと比較して、非常に高い熱特性(すなわち、ガラス転移点)を示した。これにより、本実施例に係る液晶ポリエステルフィルムによって、耐熱性に優れたフィルムコンデンサを作製し得ることが証明された。
【0114】
また、誘電特性や絶縁破壊特性についても、比較例サンプルと同等の、優れた評価結果が得られた。
【表1】

【符号の説明】
【0115】
100 フィルムコンデンサ
101−1,101−2 液晶ポリエステルフィルム
102−1,102−2 金属膜
103,104 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体膜と、該誘電体膜に電圧を印加する導電体膜とを有するフィルムコンデンサであって、
前記誘電体膜が、ハロゲン原子を含まない非プロトン性の溶剤と流動開始温度が250℃以上の液晶ポリエステルとを含む溶液組成物の膜を基材に形成した後で、該溶剤を除去し、さらに当該膜から前記基材を分離することによって形成された、液晶ポリエステル膜であることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、下式(1)で示された第1構造単位と、下式(2)で示された第2構造単位と、下式(3)で示された第3構造単位とを有し、且つ、
全構造単位に対する前記第1〜第3構造単位の比が、前記第1構造単位は30.0〜60.0モル%、前記第2構造単位は25.0〜35.0モル%、前記第3構造単位は25.0〜35.0モル%であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
Ar:フェニレンまたはナフチレン
Ar:フェニレン、ナフチレンまたは下式(4)で表される基
Ar:フェニレンまたは下式(4)で表される基
X:OまたはNH
Y:OまたはNH
(4)−Ar11−Z−Ar12
Ar11:フェニレンまたはナフチレン
Ar12:フェニレンまたはナフチレン
Z:O、COまたはSO
【請求項3】
前記Ar、ArまたはArの芳香環に結合している水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていることを特徴とする請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記構造単位Xおよび構造単位Yの少なくとも一方がNHであることを特徴とする請求項2または3に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記液晶ポリエステルにおいて、
p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が30.0〜60.0モル%、
4−アミノフェノールに由来する構造単位が25.0〜35.0モル%、
テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位および2,6−ナフタレンジカルボル酸に由来する構造単位の合計が25.0〜35.0モル%、
であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−9596(P2011−9596A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153263(P2009−153263)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】