説明

フィルム剥離装置

【課題】基板等の板状部材に貼着された保護フィルムの端縁部を剥離させる際の衝撃を抑制し、基板の破損及び装置の故障を防止することができ、しかも、ロット毎の切り替えが容易なフィルム剥離装置の提供。
【解決手段】標準圧接ローラー15及び傾斜圧接ローラー16を支持させた一対の支持部材20,21を有するローラーユニット17と、ローラーユニット17を板状部材幅方向で移動させる幅方向移動手段とを備え、幅方向移動手段は、支持レール部材27,27に沿ってローラーユニット17を任意の位置に移動させる動作ユニット28と、動作ユニット28を制御する制御ユニットとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、液晶パネル、半導体ウエハー等の板状部材の製造過程において基板等の板状部材の片面又は両面に貼着された保護フィルムを板状部材より剥離させるためのフィルム剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板の製造では、絶縁性の基板本体の片面又は両面に積層させた銅箔等からなる導電層の表面に感光性を有するフォトレジスト層を形成した後、フォトレジスト層の表面に保護フィルムを貼着し、露光前のフォトレジスト層を保護するようにしている。
【0003】
そして、この保護フィルムは、露光されたフォトレジスト層を現像してエッチング処理用のマスクパターンを形成する際に不要であるため、配線パターン像をフォトレジスト層に所定時間露光した後に剥離されるようになっている。
【0004】
この保護フィルムを基板より剥離させる作業には、フィルム剥離装置が使用され、このフィルム剥離装置としては、例えば図6に示す如き基板の片面又は両面に貼着された保護フィルムの端縁部を基板より剥離させる端部剥離機構を備え、この端部剥離機構により剥離させた保護フィルムの端縁部を切掛けとしてエアナイフ等からなる本剥離機構で順次保護フィルム全体を基板より剥離させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
この端部剥離機構は、回転軸を違えた2種類の圧接ローラー201を基板幅方向に並べて支持させた一対の支持部材202,202を有するローラーユニット203を備え、両支持部材202,202を互いに近接する方向に移動させて圧接ローラー201を基板の端縁部の上下両面側よりそれぞれ圧接させ、その状態でローラーユニット203を基板幅方向に移動させることにより、回転軸角度が異なる二つの圧接ローラー201によって保護フィルム端縁部にせん断力を作用させ、それにより基板表面より保護フィルム端縁部を剥離させるようになっている。
【0006】
このローラーユニット203を基板幅方向で移動させる幅方向移動機構は、基板幅方向に向けた支持レール204,204にガイドさせたローラーユニット203をシリンダ機構205により移動させる構造を有し、このシリンダ機構205には、シリンダ本体部に対し出入自在なシャフトを有するエアシリンダ等を使用し、このエアシリンダ本体部を装置本体のフレームに基板幅方向に向けて固定するとともに、シャフトをローラーユニット203に固定することにより、シャフトの出入りに連動してローラーユニット203が支持レール204,204に沿って基板幅方向で移動するようになっている。
【0007】
また、このシリンダ機構205のストローク量は、端部剥離機構200による保護フィルム端縁部の剥離が終了し、本剥離機構206に移送される際にローラーユニット203がその基板の移送を阻害しない位置に回避できるように、ローラーユニット203の幅方向移動の開始位置及び終端位置が基板幅より外側に位置するように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平06−87960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、ローラーユニットの基板幅方向の移動がシリンダ機構のストローク量に依存し、ローラーユニットの幅方向移動の開始位置及び終端位置が基板幅より外側に位置するため、剥離動作の際にローターユニットをシリンダ機構により基板幅方向で移動させた際、圧接ローラーが基板側縁より基板上に乗り上げ又は基板上より脱落し、当該乗り上げ又は脱落の際に基板及び装置に衝撃が生じる。
【0010】
この様な衝撃は、衝撃そのものが基板の破損及び装置の故障を引き起こす原因となる虞があり、また、基板表面に圧接させたローラーを基板幅方向で移動させた際にフォトレジスト層や導電層より生じる微細な破片等を飛散させ、この微細な破片等が基板の汚れや装置の故障の原因となる虞があった。
【0011】
また、圧接ローラーが基板上に乗り上げられずに、基板側縁部に接触して基板を曲げてしまう虞があり、更にこのような基板の変形が装置の停止や故障の原因となる虞があった。
【0012】
そこで本発明は、このような従来の問題に鑑み、基板等の板状部材に貼着された保護フィルムの端縁部を剥離させる際の衝撃を抑制し、基板等の板状部材の破損及び装置の故障を防止することができ、しかも、ロット毎の切り替えが容易なフィルム剥離装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、上下方向で互いに近接する位置と離反する位置との間で相対移動可能な一対の支持部材を有し、該各支持部材に回転軸を板状部材移送方向に向けた標準圧接ローラー及び回転軸を板状部材幅方向に傾けた傾斜圧接ローラーを板状部材幅方向に並べて支持させてなるローラーユニットと、該ローラーユニットを板状部材幅方向で移動させる幅方向移動手段とを備え、片面又は両面に保護フィルムが貼着された板状部材の端縁部表面に前記両圧接ローラーを圧接させた状態で前記ローラーユニットを板状部材幅方向に移動させることにより前記保護フィルムの端縁部を前記板状部材表面より剥離させるようにした端部剥離機構を備えてなるフィルム剥離装置において、前記幅方向移動手段は、前記ローラーユニットを板状部材幅方向で移動可能に支持する支持レール部材と、該支持レール部材に沿って前記ローラーユニットを任意の位置に移動させる動作ユニットと、該動作ユニットを制御する制御ユニットとを備えたことにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記動作ユニットは、板状部材幅方向に向けた軌道部材と、前記制御ユニットにより動作が制御される駆動体と、該駆動体の動作に連動して前記軌道部材上の任意の位置に移動するスライダとを備え、該スライダに前記ローラーユニットを固定させたことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記制御ユニットは、前記動作ユニットを制御するためのデータを入力する入力手段と、該入力手段により入力された複数の制御データを記憶する記憶手段とを備えたことにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1、2又は3の構成に加え、前記制御ユニットは、前記板状部材を製造する過程に使用される他の装置からのデータを入力する外部入力手段を備え、該外部入力データに基づき前記動作ユニットを制御するようにしたことにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1〜3又は4の構成に加え、前記支持部材は、前記標準圧接ローラーと前記傾斜圧接ローラーとの間に板状部材側に吐出口を向けたエアノズルを備えたことにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るフィルム剥離装置は、上述したように、上下方向で互いに近接する位置と離反する位置との間で相対移動可能な一対の支持部材を有し、該各支持部材に回転軸を板状部材移送方向に向けた標準圧接ローラー及び回転軸を板状部材幅方向に傾けた傾斜圧接ローラーを板状部材幅方向に並べて支持させてなるローラーユニットと、該ローラーユニットを板状部材幅方向で移動させる幅方向移動手段とを備え、片面又は両面に保護フィルムが貼着された板状部材の端縁部表面に前記両圧接ローラーを圧接させた状態で前記ローラーユニットを板状部材幅方向に移動させることにより前記保護フィルムの端縁部を前記板状部材表面より剥離させるようにした端部剥離機構を備えたことにより、回転軸方向の異なる2種類のローラーにより保護フィルムの端縁部にせん断方向の力を作用させ、それにより基板等の板状部材の表面より保護フィルムの端縁部を剥離させることができる。
【0019】
また、本発明において、前記幅方向移動手段は、前記ローラーユニットを板状部材幅方向で移動可能に支持する支持レール部材と、該支持レール部材に沿って前記ローラーユニットを任意の位置に移動させる動作ユニットと、該動作ユニットを制御する制御ユニットとを備えたことにより、制御ユニットの命令に基づきローラーユニットの移動を精密に制御でき、圧接ローラーの基板等の板状部材に対する乗り上げ又は脱落等を回避し、安定した状態で圧接ローラーを基板等の板状部材の端縁部表面上で移動させることができ、圧接ローラーが板状部材幅方向で移動する際の衝撃等を抑え、微細な破片等の飛散を抑制することができる。
【0020】
また、本発明において、前記動作ユニットは、板状部材幅方向に向けた軌道部材と、前記制御ユニットにより動作が制御される駆動体と、該駆動体の動作に連動して前記軌道部材上の任意の位置に移動するスライダとを備え、該スライダに前記ローラーユニットを固定させたことにより、好適にローラーユニットの移動を制御することができる。
【0021】
また、本発明において、前記制御ユニットは、前記動作ユニットを制御するためのデータを入力する入力手段と、該入力手段により入力された複数の制御データを記憶する記憶手段とを備えたことにより、入力データに基づきローラーユニットの幅方向の移動を精密に制御することができる。また、幅方向移動機構を調整することなく、板状部材幅の異なる複数のロットに対応することができる。
【0022】
更に本発明において、前記制御ユニットは、前記板状部材を製造する過程に使用される他の装置からのデータを入力する外部入力手段を備え、該外部入力データに基づき前記動作ユニットを制御するようにしたことにより、プリント配線基板等の板状部材の製造工程に使用される他の機器と連携して動作させることができる。
【0023】
更にまた、本発明において、前記支持部材は、前記標準圧接ローラーと前記傾斜圧接ローラーとの間に板状部材側に吐出口を向けたエアノズルを備えたことにより、保護フィルム端縁部を好適に剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るフィルム剥離装置の一例の概略示す側面図である。
【図2】図1中の端部剥離機構の概略を示す部分拡大側面図である。
【図3】同上の端部剥離機構の幅方向移動機構部分を示す正面図である。
【図4】図3中の圧接ローラー及び支持部材の取付け状態を示す部分拡大正面図である。
【図5】同上の圧接ローラーの取り付け状態を示す部分拡大平面図である。
【図6】従来のフィルム剥離装置の一例の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係るフィルム剥離装置の実施の態様を図1〜図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Aは板状部材である基板、符号1はフィルム剥離装置である。
【0026】
また、ここで板状部材移送方向とは、図1中の右側より左側に向けた作業工程に基づいて板状部材である基板Aを移送させる方向を言い、板状部材幅方向とは、板状部材移送方向と水平方向で交差する方向を言うものとする。
【0027】
基板Aは、絶縁性の基板本体の片面又は両面に積層させた銅箔等からなる導電層の表面に感光性を有するフォトレジスト層が形成され、さらにフォトレジスト層の表面に保護フィルムBが貼着されている。
【0028】
フィルム剥離装置1は、基板Aを移送する板状部材移送機構2を備えるとともに、その板状部材移送方向の上流側に端部剥離機構3を、下流側に本剥離機構4をそれぞれ備え、板状部材移送機構2、端部剥離機構3及び本剥離機構4が図示しない制御ユニットによる命令に基づきシーケンス制御され、同期して動作するようになっている。
【0029】
板状部材移送機構2は、回転軸を板状部材幅方向に向けた複数の案内ローラー5,5...を板状部材移送方向に間隔を置いた配置に備え、この案内ローラー5,5...を図示しないモータ等からなる駆動手段により回転させるようになっている。
【0030】
また、板状部材移送機構2は、装置フレーム6にエアシリンダ7を介して上下動可能に支持された支持枠8と、支持枠8に回転自在に支持されたピンチローラー9とを備え、エアシリンダ7を動作させてピンチローラー9を基板A上面に圧接させ、案内ローラー5とピンチローラー9との間に基板Aを挟むことにより案内ローラー5による動力が基板Aに伝達され、基板Aが板状部材移送方向に向けて移送されるようになっている。
【0031】
このフィルム剥離装置1では、板状部材移送機構2により基板Aの移送方向前端部が端部剥離機構3に送られ、この端部剥離機構3により基板Aの片面又は両面に貼着された保護フィルムBの端縁部を剥離させた後、基板Aが板状部材移送機構2により本剥離機構4に移送され、剥離させた保護フィルムBの端縁部を切掛けにエアナイフ等からなる本剥離機構4で保護フィルムB全体を順次剥離させるようになっている。
【0032】
端部剥離機構3は、図2に示すように、基板Aを所定の位置に固定するための板状部材固定手段10と、保護フィルムBの端縁部を基板Aより剥離させるフィルム端部剥離手段11とを備え、板状部材移送機構2により送り込まれた基板Aの端部を所定の位置で板状部材固定手段10により固定し、その状態で保護フィルム端縁部をフィルム端部剥離手段11により剥離させるようになっている。
【0033】
板状部材固定手段10は、長手方向を板状部材幅方向に向けた上下で互いに平行に配置された一対の挟持部材12,12と、両挟持部材12,12を互いに近接する位置と離反する位置との間で移動させる上下動ユニット13,13とを備え、両挟持部材12,12間に基板A端部を挟持することにより基板Aを所定の位置で固定するようになっている。
【0034】
各挟持部材12は、長手方向両端部が図示しない上下方向に向けた支持レール部材を介して装置のフレーム6に移動自在に支持されている。
【0035】
一方、上下動ユニット13には、シリンダ本体部に対し出入自在なシャフト13aを有するエアシリンダ等を使用し、シャフト13a側を互いに対向させて上下に配置された上下一対のエアシリンダ13,13を動作させることによりシャフト先端に連結された両挟持部材12,12が互いに近接する位置と離反する位置との間で移動するようになっている。
【0036】
また、この板状部材固定手段10は、図示しない位置決め手段を備え、この位置決め手段により所定の位置、即ち、後述する上下に配置された圧接ローラー間に基板Aの端縁部が差し込まれる位置で基板Aを停止させ、且つその位置において基板Aの前端縁部より上流側部を両挟持部材12,12により挟持し、基板Aを固定するようになっている。
【0037】
フィルム端部剥離手段11は、圧接ローラー15,16を有するローラーユニット17と、ローラーユニット17を板状部材幅方向で移動させる幅方向移動手段18とを備えている。
【0038】
ローラーユニット17は、図2〜図5に示すように、平板状のベース部材19と、ベース部材19の板状部材移送方向手前側面に上下方向で相対移動可能に支持された一対の支持部材20,21とを備え、上下両支持部材20,21の板状部材移送方向手前側面に回転軸角度の異なる2種類の圧接ローラー15,16がそれぞれ回転自在に支持されている。
【0039】
ベース部材19は、縦方向に長い長方形状に形成され、その板状部材移送方向手前側面に上下に向けた一対の丸棒状のスライドガイド部材22,22が板状部材幅方向に間隔を置いた平行配置に固定されている。
【0040】
上下の支持部材20,21は、このスライドガイド部材22,22に上下方向で移動可能にガイドされ、下側支持部材21が受け部23を介してベース部材19に支持されるとともに、ベース部材19に固定されたエアシリンダ24のシャフト24aの先端が上側支持部材20の上面部に連結され、エアシリンダ24を動作させることにより両支持部材20,21が互いに近接する位置と離反する位置との間で相対移動するようになっている。
【0041】
尚、受け部23は、ベース部材19に固定された受け部本体23aと、受け部本体23aに上下方向に向けて螺合された高さ調整ボルト23bとを備え、この高さ調整ボルト23bの上端部が下側支持部材21の下面部に当接され、高さ調整ボルト23bを回転させて受け部本体23aに対して上下方向に移動させることによりそれに連動して下側支持部材21の高さ位置を調整できるようになっている。
【0042】
上下各支持部材20,21は、図5に示すように、直方体状のブロック材をもって形成され、板状部材移送方向手前側面部に回転軸15aを板状部材移送方向に向けた標準圧接ローラー15と、回転軸16aが板状部材移送方向手前側を水平方向に傾けた傾斜圧接ローラー16とが回転自在に支持されている。
【0043】
両圧接ローラー15,16は、傾斜圧接ローラー16が一対の標準圧接ローラー15、15間に位置するように板状部材幅方向に直列配置され、両支持部材20,21を互いに近接する方向に移動させることにより、基板Aを挟んで上下側に配置された圧接ローラー15,16、15,16間に基板Aを挟持し、両圧接ローラー15,16が基板A表面(保護フィルムB表面)に圧接されるようになっている。
【0044】
そして、両圧接ローラー15,16を基板A表面(保護フィルムB表面)に圧接させた状態でローラーユニット17を板状部材幅方向で移動させることにより、保護フィルムBの端縁部表面に方向の異なる力が作用し、それにより保護フィルムBに歪みが生じるようになっている。
【0045】
また、両圧接ローラー15,16間には、板状部材移送方向手前側に吐出口を向けたエアノズル25が備えられ、両圧接ローラー15,16により生じた基板Aより剥離された部分に図示しない空気供給手段より供給された圧縮空気を吹き込むようになっている。
【0046】
一方、ベース部材19の板状部材移送方向奥側面部には、スライド軸受26が固定され、このスライド軸受26を介してローラーユニット17全体が幅方向移動手段18を構成する支持レール部材27,27に板状部材幅方向に移動自在に支持されている。
【0047】
幅方向移動手段18は、長手方向を板状部材幅方向に向けた一対の支持レール部材27,27と、支持レール部材27,27に沿ってローラーユニット17を任意の位置に任意の速度で移動させる動作ユニット28とを備え、動作ユニット28は制御ユニットにより制御されるようになっている。
【0048】
支持レール部材27,27は、その両端が端部剥離機構3の両側部に設置された支柱29,29に固定部材30を介して固定され、両支柱29,29間に上下で互いに平行配置に架設されている。
【0049】
動作ユニット28は、板状部材幅方向に向けた軌道部材31と、軌道部材31に沿って移動するスライダ32と、制御ユニットにより制御される駆動体33とを備え、スライダ32にローラーユニット17を構成するベース部材19が固定されている。
【0050】
この動作ユニット28では、スライダ軌道部材31内にその長さ方向に向けた図示しないボールねじを備え、このボールねじを駆動体33により回転させることにより、ボールねじを構成するナット部と一体化させたスライダ32が軌道部材31に沿った方向で移動するようになっている。
【0051】
駆動体33には、例えば、サーボモータやパルスモータ(ステッピングモータ)等のように回転(角度)及び回転速度を制御可能なモータ等を使用し、制御ユニットからの命令に基づき駆動体33の回転(角度)及び回転速度を制御することにより、この駆動体33の回転動作に連動してスライダ32を任意の位置に移動させることができ、また、スライダ32を任意の移動距離、速度、移動(往復)回数等で移動させることができるようになっている。
【0052】
尚、ローラーユニット17は、図3中実線で示す一方に片寄せた位置、即ち基板A幅より外側に回避した位置を原点位置とし、原点位置においては、ローラーユニット17が基板Aの端部剥離機構3から本剥離機構4への移送を阻害しないようになっている。
【0053】
制御ユニットは、動作ユニット28を制御するためのデータを入力するタッチパネル等の入力手段と、入力手段により入力された複数の制御データを記憶する記憶手段とを備え、入力手段により直接入力されたデータに基づいて動作ユニット28を制御でき、また、記憶手段に記憶された複数の制御データから製品(製造ロット)に応じて選択された制御データに基づいて制御することもできる。
【0054】
また、制御ユニットは、プリント配線基板A等の板状部材を製造する過程に使用される他の装置、例えば、基板投入機等から出力されたデータを入力する外部入力手段を備え、その外部入力データに基づいてその他の装置と同期させて動作ユニット28を制御できるようになっている。
【0055】
このように構成されたフィルム剥離装置1では、片面又は両面に保護フィルムBが貼着された基板A等の板状部材が装置に投入されると、板状部材移送機構2により基板Aが板状部材移送方向に沿って移送されて端部剥離機構3に移動し、基板Aが所定の位置に到達すると図示しない位置決め手段により停止させられる。
【0056】
そして、その位置において板状部材固定手段10のエアシリンダ13を動作させ、基板A端部を両挟持部材12,12間に挟持して固定し、その位置でフィルム端部剥離手段11により保護フィルムBの端縁部を基板Aより剥離させる。
【0057】
このフィルム端部剥離手段11による剥離作業は、ローラーユニット17の両支持部材20,21を互いに近接方向に移動させ、回転軸角度が異なる2種類の圧接ローラー15,16を基板A表面に圧接させ、その状態でローラーユニット17を板状部材幅方向に移動させることにより、2種類の圧接ローラー15,16より方向の異なる力が作用して保護フィルムBを歪ませるとともに、その歪み部にエアノズル25より圧縮空気を噴射することにより保護フィルムBの端縁部を基板Aより剥離させるようになっている。
【0058】
このとき、動作ユニット28が制御ユニットにより制御されているので、作業を任意の位置から開始することができる。
【0059】
例えば、ローラーユニット17を原点位置より基板Aの板状部材幅方向のほぼ中央部まで移動させ、その位置で上下両支持部材20,21を互いに近接する方向に移動させて両圧接ローラー15,16を基板A表面に圧接させ、その位置から剥離動作を開始し、基板Aの両側部まで移動させるようにしてもよい。このようにすることにより、圧接ローラー15,16が側縁より基板A上に乗り上げること或いは基板A上より脱落することがなく、それにより生じる衝撃又は基板Aの破損を防止することができる。
【0060】
また、ローラーユニット17を入力されたデータに基づき原点位置から一方の板状部材幅方向の基板A側端部に移動させ、その位置で上下両支持部材20,21を互いに近接する方向に移動させて両圧接ローラー15,16を基板A表面に圧接させ、その位置から他方の基板A側端部まで移動させるようにしてもよい。この場合であっても、動作ユニット28が制御ユニットにより精密に制御することができるので、圧接ローラー15,16が基板Aに対して乗り上げ又は脱落することなく、基板Aの端から端まで圧接ローラー15,16を圧接させた状態でローラーユニット17を移動させることができる。
【0061】
更に、基板A端縁部上の板状部材幅方向の一定範囲内でローラーユニット17を往復動作させ、一部分のみを剥離させることもできる。
【0062】
尚、板状部材は、上述した基板に限定されるものではなく、本願装置は、液晶パネルや半導体ウエハー等の板状部材の片面又は両面に保護フィルムを貼着させたものにも対応させることができる。
【0063】
また、上述の実施例では、動作ユニット28がボールねじを備え、このボールねじをサーボモータ等の駆動体33により回転させることにより、ボールねじを構成するナット部と一体化させたスライダ32が軌道部材31に沿った方向で移動するようにしたものについて説明したが、動作ユニット28は、このような構成に限定されるものではなく、例えば、サーボモータ等の駆動体33の回転に連動して動作する駆動ベルトを用いた構造であってもよく、また、モータを使用しないものであっても、制御ユニットの命令に基づいてスライダ32を軌道部材上の任意の位置に任意の速度で移動させることができる構造のものであればよい。
【符号の説明】
【0064】
A 基板
B 保護フィルム
1 フィルム剥離装置
2 板状部材移送機構
3 端部剥離機構
4 本剥離機構
5 案内ローラー
6 フレーム
7 エアシリンダ
8 支持枠
9 ピンチローラー
10 板状部材固定手段
11 フィルム端部剥離手段
12 挟持部材
13 上下動ユニット(エアシリンダ)
14 フローティングジョイント
15 標準圧接ローラー
16 傾斜圧接ローラー
17 ローラーユニット
18 幅方向移動手段
19 ベース部材
20 上側支持部材
21 下側支持部材
22 スライドガイド部材
23 受け部
24 エアシリンダ
25 エアノズル
26 スライド軸受
27 支持レール部材
28 動作ユニット
29 支柱
30 固定部材
31 軌道部材
32 スライダ
33 駆動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向で互いに近接する位置と離反する位置との間で相対移動可能な一対の支持部材を有し、該各支持部材に回転軸を板状部材移送方向に向けた標準圧接ローラー及び回転軸を板状部材幅方向に傾けた傾斜圧接ローラーを板状部材幅方向に並べて支持させてなるローラーユニットと、該ローラーユニットを板状部材幅方向で移動させる幅方向移動手段とを備え、
片面又は両面に保護フィルムが貼着された板状部材の端縁部表面に前記両圧接ローラーを圧接させた状態で前記ローラーユニットを板状部材幅方向に移動させることにより前記保護フィルムの端縁部を前記板状部材表面より剥離させるようにした端部剥離機構を備えてなるフィルム剥離装置において、
前記幅方向移動手段は、前記ローラーユニットを板状部材幅方向で移動可能に支持する支持レール部材と、該支持レール部材に沿って前記ローラーユニットを任意の位置に移動させる動作ユニットと、該動作ユニットを制御する制御ユニットとを備えたことを特徴としてなるフィルム剥離装置。
【請求項2】
前記動作ユニットは、板状部材幅方向に向けた軌道部材と、前記制御ユニットにより動作が制御される駆動体と、該駆動体の動作に連動して前記軌道部材上の任意の位置に移動するスライダとを備え、該スライダに前記ローラーユニットを固定させた請求項1に記載のフィルム剥離装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記動作ユニットを制御するためのデータを入力する入力手段と、該入力手段により入力された複数の制御データを記憶する記憶手段とを備えた請求項1又は2に記載のフィルム剥離装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記板状部材を製造する過程に使用される他の装置からのデータを入力する外部入力手段を備え、該外部入力データに基づき前記動作ユニットを制御するようにした請求項1、2又は3に記載のフィルム剥離装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記標準圧接ローラーと前記傾斜圧接ローラーとの間に板状部材側に吐出口を向けたエアノズルを備えた請求項1〜3又は4に記載のフィルム剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89826(P2013−89826A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230327(P2011−230327)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(598091088)株式会社エムイーイー (3)
【Fターム(参考)】