説明

フィルム検査システム、フィルム検査方法

【課題】光学異方性を有するフィルムについて、その欠陥を抽出するとともに、欠陥の種類を正確に判別するためのフィルム検査システム等を提供する。
【解決手段】フィルム検査システム1では、光学補償フィルム10を、偏光板51aを介した照明光を照射した状態で、ラインセンサ3aで偏光板31aを介して撮像するとともに、偏光板51bを介した照明光を照射した状態で、ラインセンサ3bで偏光板31bを介して撮像する。偏光板31aと偏光板51a、偏光板31bと偏光板51bの偏光方向は略直交し、偏光板31aの偏光方向と光学補償フィルム10の配向方向とは略45°の角度をなし、偏光板31bの偏光方向と光学補償フィルム10の配向方向とのなす角度は、90°から所定角度ずらしたものである。画像処理装置7は、ラインセンサ3a、3bで光学補償フィルム10を撮像した画像データ20a、20bを基に欠陥候補の検出と欠陥種類の判別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性を有するフィルムの欠陥を検査するためのフィルム検査システム、およびフィルム検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイでは、その視野角特性や色特性の改善を目的とし、位相差フィルムなど光学異方性を有する光学補償フィルムが用いられる。光学補償フィルムは、例えば、透明フィルム基材上に液晶分子の配向方向(長軸方向)を所定の方向に定めた液晶層を積層して形成される。
【0003】
光学補償フィルムの製造時には、製造工程において様々な欠陥が生じる可能性が存在し、不良品の発生の原因となる。欠陥の例としては、液晶層の抜け(ピンホール)の発生や、異物の混入等がある。
【0004】
このような欠陥の検査方法の一例として、検査対象のフィルムの一方の側から光を照射しつつ、該フィルムの他方の側に設けた撮像装置によりフィルムを撮像し、その画像に基づき欠陥の検査を行うものがある。このような検査では、フィルムの照射およびフィルムの撮像が偏光板を介して行われたり、フィルムの撮像が偏光板を介して行われたりする(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327915号公報
【特許文献2】特開2008−322762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、液晶ディスプレイ等では、更なる品質の向上が望まれており、そのためには、前記のような欠陥を抽出するとともに、欠陥の種類を正確に判別し、製造工程での品質保証の取り組みにフィードバックさせることが望ましい。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光学異方性を有するフィルムについて、その欠陥を抽出するとともに、欠陥の種類を正確に判別するためのフィルム検査システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための第1の発明は、光学異方性を有するフィルムの欠陥を検査するフィルム検査システムであって、第1の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第2の偏光板を介して撮像する第1の撮像装置と、第3の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第4の偏光板を介して撮像する第2の撮像装置と、前記第1の撮像装置で撮像した前記フィルムの第1の画像データと、前記第2の撮像装置で撮像した前記フィルムの第2の画像データを用いて、前記フィルムの欠陥候補の検出を行うとともに、前記欠陥候補の種類を判別する画像処理装置と、を具備し、前記第1の偏光板と、前記第2の偏光板の偏光方向は略直交し、前記第3の偏光板と、前記第4の偏光板の偏光方向は略直交し、前記第2の偏光板の偏光方向と、光学異方性を有する前記フィルムの配向方向とが、略45°の角度をなし、前記第4の偏光板の偏光方向と、光学異方性を有する前記フィルムの配向方向とのなす角度を、90°から所定角度ずらしたことを特徴とするフィルム検査システムである。
【0009】
かかる構成により、第1の撮像装置で、光学異方性を有するフィルムを明光位の状態で撮像し、第2の撮像装置で、該フィルムを消光位から少しずれた状態で撮像することができる。これら両方の撮像装置でフィルムを撮像した画像データを用いることで、フィルムに生じた欠陥の候補を抽出し、その欠陥の種類の判定を正確に行うことができる。
すなわち、明光位状態でフィルムを撮像した画像上で、正常部に対する暗領域として現れる箇所は、フィルムに欠陥が生じることにより、フィルムの配向特性が設計値と異なっている箇所である。
フィルムに生じた欠陥は、さらに、消光位から少しずれた状態でフィルムを撮像した画像上でも、その種類により、正常部に対する明領域、あるいは暗領域として現れる。欠陥が暗領域としても現れるのは、フィルムを完全に消光位の状態として撮像を行わないためである。
これら双方の撮像装置でフィルムを撮像した画像を比較参照することで、一方の撮像装置で撮像した画像のみからは判別できない欠陥の種類も、正確に判別できるようになる。
【0010】
前記画像処理装置は、前記第1の画像データから、第1の閾値よりも低輝度の第1の暗領域を欠陥候補として抽出する欠陥候補抽出部と、前記第1の暗領域について、前記第1の閾値より低い第2の閾値よりも低輝度の領域があるか否かを判定する欠陥候補判別部と、を有することが望ましい。
これにより、フィルムの欠陥によりその配向特性が設計値と異なる箇所が、フィルムを明光位状態で撮像した画像上で第1の閾値による暗領域として好適に抽出できる。
さらに、明光位状態でフィルムを撮像した画像の輝度(画素値)を基準として欠陥を判別できる。例えば、欠陥として、光学補償フィルムの液晶層にピンホールが生じている場合や泡が混入している場合等と、光学補償フィルムの液晶層に窪みが生じている場合等では、画像上の輝度が異なり、光学補償フィルムの液晶層にピンホールが生じている場合や泡が混入している場合、より低輝度となる。従って、上記の第1の閾値より低い第2の閾値を用いてこれらを判別できる。
【0011】
さらに、前記欠陥候補判別部は、前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定される場合、前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第3の閾値よりも高輝度の明領域があるか否か、および、該欠陥候補に対応する、前記第3の閾値より低い第4の閾値よりも低輝度の第2の暗領域があるか否かを判定することが望ましい。
フィルムを消光位から少しずれた状態で撮像した画像上で暗領域や明領域として現れる箇所は、欠陥の種類によって、フィルムの配向特性が設計値と異なっている箇所であるので、これにより欠陥の種類の判別を好適に行える。
例えば、明光位状態でフィルムを撮像した画像から、前記の第2の閾値を用いた判定により光学補償フィルムの液晶層にピンホールが生じている、あるいは泡が混入している等とされる場合、消光位から少しずれた状態でフィルムを撮像した画像における暗領域や明領域を参照することにより、ピンホールが生じている場合、泡が混入している場合等を判別できる。
【0012】
また、前記欠陥候補判別部は、前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定されない場合、前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第5の閾値よりも高輝度の輝点があり、かつ前記輝点の位置が該欠陥候補の位置から所定の範囲内にあるか否かを判定することが望ましい。
これにより、例えば、明光位状態でフィルムを撮像した画像から、前記の第2の閾値を用いた判定により、光学補償フィルムに窪み等が生じているとされる場合、前記と同様、消光位から少しずれた状態でフィルムを撮像した画像を参照することにより、光学補償フィルムの液晶層に窪み(のみ)が生じている場合、透明で内部歪みを有する接着材のかす等の異物が混入しその周囲に窪みが生じている場合等を判別できる。
【0013】
第2の発明は、光学異方性を有するフィルムの欠陥を検査するフィルム検査方法であって、第1の撮像装置により、第1の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第2の偏光板を介して撮像するステップと、第2の撮像装置により、第3の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第4の偏光板を介して撮像する撮像ステップと、画像処理装置により、前記第1の撮像装置で撮像した前記フィルムの第1の画像データと、前記第2の撮像装置で撮像した前記フィルムの第2の画像データを用いて、前記フィルムの欠陥候補の検出を行うとともに前記欠陥候補の種類を判別する判別ステップと、を具備し、前記第1の偏光板と、前記第2の偏光板の偏光方向は略直交し、前記第3の偏光板と、前記第4の偏光板の偏光方向は略直交し、前記第2の偏光板の偏光方向と、前記光学異方性を有するフィルムの配向方向とが、略45°の角度をなし、前記第4の偏光板の偏光方向と、前記光学異方性を有するフィルムの配向方向とのなす角度を、90°から所定角度ずらしたことを特徴とするフィルム検査方法である。
【0014】
前記画像処理装置は、前記判別ステップにおいて、前記第1の画像データから、第1の閾値よりも低輝度の第1の暗領域を欠陥候補として抽出し、前記第1の暗領域について、前記第1の閾値より低い第2の閾値よりも低輝度の領域があるか否かを判定することが望ましい。
また、前記画像処理装置は、前記判別ステップにおいて、前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定される場合、前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第3の閾値よりも高輝度の明領域があるか否か、および、該欠陥候補に対応する、前記第3の閾値より低い第4の閾値よりも低輝度の第2の暗領域があるか否かを判定することが望ましい。
さらに、前記画像処理装置は、前記判別ステップにおいて、前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定されない場合、前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第5の閾値よりも高輝度の輝点があり、かつ前記輝点の位置が該欠陥候補の位置から所定の範囲内にあるか否かを判定することが望ましい。
【0015】
第2の発明は、第1の発明のフィルム検査システムに関するフィルム検査方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学異方性を有するフィルムについて、その欠陥を抽出するとともに、欠陥の種類を正確に判別するためのフィルム検査システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】フィルム検査システム1の構成について示す図
【図2】光学補償フィルム10の撮像範囲11a、11bについて示す図
【図3】偏光板31a、31b、51a、51bの偏光方向および光学補償フィルム10の液晶分子配向方向について示す図
【図4】明光位検査部1a、消光位検査部1bについて示す図
【図5】液晶層103の膜厚と、ラインセンサが受光する光量との関係を示す図
【図6】画像処理装置7のハードウェア構成を示すブロック図
【図7】画像処理装置7の機能構成を示す図
【図8】ピンホールの欠陥について説明する図
【図9】泡の欠陥について説明する図
【図10】シミの欠陥について説明する図
【図11】異物の欠陥について説明する図
【図12】フィルム検査システム1による検査手順の流れを示す図
【図13】明光位検査部1aの画像データ20a、および消光位検査部1bの画像データ20bの例を示す図
【図14】欠陥候補の抽出について示す図
【図15】欠陥の種類の判定の流れを示す図
【図16】欠陥候補情報40の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
まず、図1から図7を参照して、本発明の実施形態のフィルム検査システム1の構成について説明する。
【0020】
フィルム検査システム1は、光学補償フィルム10の欠陥を検出するとともに、その欠陥種類の判別を行うもので、図1に示すように、ラインセンサ3a(第1の撮像装置)、3b(第2の撮像装置)、照明5a、5b、画像処理装置7等を有する。
照明5a、5bは、それぞれ偏光板51a(第1の偏光板)、51b(第3の偏光板)を介して光学補償フィルム10を照明し、ラインセンサ3a、3bは、それぞれ偏光板31a(第2の偏光板)、31b(第4の偏光板)を介して光学補償フィルム10を撮像する。
【0021】
ラインセンサ3a、照明5a、偏光板31a、51a、および光学補償フィルム10のラインセンサ3aによる撮像範囲は、暗箱8aの内部にあり、明光位検査部1aを構成する。
また、ラインセンサ3b、照明5b、偏光板31b、51b、および光学補償フィルム10のラインセンサ3bによる撮像範囲は、暗箱8bの内部にあり、消光位検査部1bを構成する。
これら明光位検査部1a、消光位検査部1bについては後述する。
【0022】
光学補償フィルム10は、前記のように、透明のフィルム基材101上に液晶分子の配向方向(長軸方向)を所定の方向に定めた液晶層103を積層して形成した、光学異方性を有するものである。
光学補償フィルム10は、搬送ローラ等の不図示の搬送手段により、図中矢印に示す搬送方向に搬送されつつ、ラインセンサ3a、3bによる撮像が行われる。
【0023】
照明5a、5bは、光学補償フィルム10を透明フィルム基材101側から照明する。光源としては、例えばハロゲンランプ等を用いることができるが、その他の光源であっても構わない。
【0024】
ラインセンサ3a、3bは、光学補償フィルム10を撮像する撮像装置であり、光学補償フィルム10の液晶層103側で、光学補償フィルム10の幅方向の中央部に対応する平面位置に設けられる。なお、ラインセンサ3a、3bは光学補償フィルム10を撮像可能な撮像装置であればこれに代えることができ、例えばエリアセンサ等用いてもよい。
【0025】
図2は、光学補償フィルム10を上から見た図である。照明5a、5bは、光学補償フィルム10の幅方向全体にわたって設定される、図2に示す長方形状の撮像範囲11a、11bを照射しており、ラインセンサ3a、3bは、それぞれ、撮像範囲11a、11bを透過した照明光を受光することで、撮像範囲11a、11bの撮像を行う。
光学補償フィルム10を図中矢印に示す方向に搬送しつつ、ラインセンサ3a、3bで撮像範囲11a、11bの撮像をそれぞれ行うことにより、明光位検査部1a、消光位検査部1bの双方で光学補償フィルム10全体が撮像される。
【0026】
次に、図3を用いて、前記の偏光板31a、31b、51a、51bの偏光方向および光学補償フィルム10の配向方向の関係について説明する。
図3は、光学補償フィルム10の搬送方向(フィルム搬送方向)を横軸とするとともに、これと直交する光学補償フィルム10の幅方向(フィルム幅方向)を縦軸としたグラフ上で、偏光板31a、31b、51a、51bの偏光方向および光学補償フィルム10の配向方向(フィルム配向方向)を示したものである。
【0027】
図3に示すように、本実施形態では、明光位検査部1aにおいて、偏光板51aの偏光方向は、光学補償フィルム10の幅方向に対応し、偏光板31aの偏光方向は、光学補償フィルム10の搬送方向に対応する。従って、偏光板31aと偏光板51aは、偏光方向が90°の角度をなし直交する。
【0028】
また、消光位検査部1bにおいて、偏光板51bの偏光方向は、光学補償フィルム10の配向方向を反時計回りに所定角度(例えば、θ=5〜10°)回転させずらした方向である。また、偏光板31bの偏光方向は、偏光板51bの偏光方向を、反時計回りに90°回転させた方向である。従って、偏光板31bと偏光板51bも上記と同様、偏光方向が90°の角度をなし直交する。
【0029】
そして、光学補償フィルム10の配向方向は、光学補償フィルム10の搬送方向を反時計回りに45°回転させた方向である。従って、明光位検査部1aにおいては、光学補償フィルム10が明光位(対角位)にあり、消光位検査部1bにおいては、光学補償フィルム10が消光位から前記の角度θ分ずれていることになる。このように、消光位検査部1bでは光学補償フィルム10が消光位から少しずれた状態で撮像されるが、ここでは、便宜上、消光位検査部1bという語を用いる。
【0030】
また、以降の説明では、偏光板31a、31b、51a、51bの偏光方向および光学補償フィルム10の配向方向等について、光学補償フィルム10の搬送方向を0°とし、幅方向を90°とした平面上の角度を用いて説明する。これに沿って述べると、偏光板31a、31b、51a、51bの偏光方向および光学補償フィルム10の配向方向は、順に、0°、(135+θ)°、90°、(45+θ)°、45°となる。
【0031】
図4(a)を参照し、明光位検査部1aにおいて、照明5aから放射されラインセンサ3aに入射する光について説明すると、照明5aから放射される照明光は、各方向の偏光成分が含まれたランダム偏光の状態であるが、偏光方向90°の偏光板51aを透過する際、90°の直線偏光となる。この照明光は、45°の配向方向の液晶層103を透過する際に円偏光となり、続いて偏光方向0°の偏光板31aを透過することにより、0°の直線偏光としてラインセンサ3に入射する。
ラインセンサ3aの受光量は多く、光学補償フィルム10を撮像した画像データ20a(第1の画像データ)の輝度(画素値)は全体的に高くなり明るくなる。
【0032】
一方、図4(b)を参照し、消光位検査部1bにおいて、照明5bから放射してラインセンサ3bに入射する光について説明すると、照明5bから放射される照明光は、上記と同じくランダム偏光の状態であるが、偏光方向(45+θ)°の偏光板51bを透過する際、(45+θ)°の直線偏光となり、続いて45°の配向方向の液晶層103を透過する際、θ°のずれ分、(45+θ)°の直線偏光からずれた楕円偏光となる。この照明光は、偏光方向(135+θ)°の偏光板31bを、前記のθ°のずれ分、若干量のみ、(135+θ)°の直線偏光として透過し、ラインセンサ3bに入射する。
ラインセンサ3bの受光量は少なくなるので、光学補償フィルム10を撮像した画像データ20b(第2の画像データ)の輝度は全体的に低くなり暗くなる。
【0033】
なお、図5は、液晶層103の膜厚と、ラインセンサが受光する光量との関係を示したものである。図に示すように、明光位検査部1aにおけるラインセンサ3aの受光量、および消光位検査部1bにおけるラインセンサ3bの受光量は、それぞれ、液晶層103の膜厚が小さくなれば少なくなる。また、消光位検査部1bでは、膜厚の変化に対する受光量の変化は比較的小さい。
ラインセンサ3a、3bは、それぞれの受光量等に応じて感度やレンズ絞り等が適切なものを用いる。
【0034】
図1の説明に戻る。画像処理装置7は、ラインセンサ3a、3bにより光学補償フィルム10を撮像した画像データ20a、20bを取得し、後述する画像処理により、光学補償フィルム10の欠陥を検出するとともに、検出した欠陥の種類を判定するものである。
【0035】
図6は、画像処理装置7のハードウェア構成を示すブロック図である。図に示すように、画像処理装置7は、制御部11、記憶部12、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、表示部16、周辺機器I/F部17等が、バス18を介して接続された構成である。
【0036】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
CPUは、記憶部12、ROM、記憶媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス18を介して接続された各装置を駆動制御し、画像処理装置7が行う後述する処理を実現する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部12、ROM、記憶媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部11が各処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0037】
記憶部12は、HDD(ハードディスクドライブ)等であり、制御部11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述する処理を実行するためのアプリケーションプログラムが格納されている。
これらの各プログラムコードは、制御部11により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0038】
メディア入出力部13(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、CDドライブ(−ROM、―R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、―R、−RW等)等のメディア入出力装置を有する。
通信制御部14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、他の装置との通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して他の装置との通信制御を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
【0039】
入力部15は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
表示部16は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、およびディスプレイ装置と連携して、表示機能を実現するための論理回路等を有する。
【0040】
周辺機器I/F部(インタフェース)部17は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部17を介して周辺機器とのデータ送受信を行う。周辺機器I/F部17は、USB等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
バス18は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0041】
図7は、画像処理装置7の機能構成を示す図である。
図7に示すように、画像処理装置7は、画像データ取得部71、欠陥候補抽出部73、欠陥種類判別部75、結果出力部77等を有し、記憶部12に画像データ20(20a、20b)を記憶する。
【0042】
画像データ取得部71は、画像処理装置7の制御部11が、明光位検査部1a、のラインセンサ3a、消光位検査部1bのラインセンサ3bで光学補償フィルム10を撮像した画像データ20a、20bを取得し、記憶部12に記憶するものである。なお、画像処理装置7により光学補償フィルム10の撮像時の照明5a、5bの点灯を制御してもよい。
【0043】
欠陥候補抽出部73は、画像処理装置7の制御部11が、画像データ20a等に基づき、光学補償フィルム10の欠陥候補を抽出するものである。
【0044】
欠陥種類判別部75は、画像処理装置7の制御部11が、上記抽出した欠陥候補について、その種類の判別処理を行うものである。
【0045】
結果出力部77は、画像処理装置7の制御部11が、上記の欠陥抽出、および欠陥種類の判別の結果を表示部16等で表示するなどして出力するものである。
【0046】
次に、図8〜図11を用いて、検出される欠陥の種類と、明光位検査部1a、消光位検査部1bにおいて撮像された画像データ20a、20bについて説明する。
【0047】
まず、図8を参照して、ピンホールの欠陥の場合について説明する。ここで、ピンホールとは、光学補償フィルム10において、透明フィルム基材101上に液晶層103が形成されない部分を指す。
【0048】
液晶層103に抜けが生じピンホール105が形成されると、明光位検査部1aでは、偏光板51aを透過した偏光方向90°の直線偏光の照明光のうち、ピンホール105を透過したものは、前記のように円偏光とならず偏光方向90°の直線偏光の状態が維持される。
従って、該照明光は偏光方向0°の偏光板31aを透過せず、ピンホール105が形成された部分は、画像データ20a上で、周囲の正常部に対し低輝度となる。
【0049】
一方、消光位検査部1bの場合も同様、ピンホール105を透過する照明光は、偏光板51bの偏光方向、すなわち、偏光方向(45+θ)°の直線偏光の状態が維持され、偏光方向が(135+θ)°である偏光板31bを透過しなくなるので、ピンホール105が形成された部分は、画像データ20b上でも、周囲の正常部に対し低輝度となる。
【0050】
次に、図9を参照して、泡の欠陥の場合について説明する。液晶層103に泡106が混入すると、光学補償フィルム10において、液晶層103で泡106の部分に空洞が形成され、液晶層103が薄くなる。
【0051】
明光位検査部1aの場合、偏光板51aを透過した偏光方向90°の直線偏光の照明光が、泡106が形成された液晶層103を透過する際、液晶層103の薄さのために偏光方向90°の直線偏光の状態がほぼ維持される一方、一部は泡106により乱れが生じ各方向の偏光成分を有するようになり、その一部が偏光板31aを透過し、偏光方向0°の直線偏光としてラインセンサ3aに入射する。
ただし、泡106が形成された液晶層103を透過した照明光が、偏光方向0°の偏光板31aを透過する量は、周囲の正常部を透過した照明光に比べ小さく、泡106が形成された部分は、画像データ20a上で、正常部に対しピンホール105の場合と同程度に低輝度となる。
【0052】
一方、消光位検査部1bの場合も同様、偏光板51bを透過した偏光方向(45+θ)°の直線偏光の照明光が、泡106が形成された液晶層103を透過する際、偏光方向(45+θ)°の直線偏光の状態がほぼ維持される一方、一部は泡106により乱れが生じ各方向の偏光成分を有するようになり、その一部が偏光板31bを透過し、偏光方向(135+θ)°の直線偏光としてラインセンサ3bに入射する。
消光位検査部1bの場合、泡106が形成された液晶層103を透過した照明光が、偏光方向(135+θ)°の偏光板31bを透過する量は、周囲の正常部を透過した照明光に比べ大きくなる。従って、泡106が形成された部分は、画像データ20b上で、正常部に対し高輝度となる。
【0053】
次に、図10を参照して、シミの欠陥の場合について説明する。ここで、シミは、液晶層103で、中心に向かうにつれ深さが大きくなる窪み107が形成され、液晶層103が薄くなることを指す。
【0054】
液晶層103に窪み107が形成され薄くなると、明光位検査部1aの場合、偏光板51aを透過した偏光方向90°の直線偏光の照明光が、配向方向45°の液晶層103の窪み107を透過する際、図4(a)等で説明した、円偏光を生じさせる位相差の設計値からのずれにより、円偏光から少しずれた(90°方向成分が卓越した)楕円偏光となる。
この円偏光からのずれ分、偏光方向0°の偏光板31aを透過しラインセンサ3aに入射する照明光の光量は減少する。上記の円偏光からのずれは、窪み107の中心に向かい膜厚が小さくなるほど大きくなるので、窪み107の部分は、画像データ20a上で、周囲の正常部に対し、中心に向かうにつれ輝度が低下する。ただし、本実施形態では、画像データ20a上の窪み107の部分は、最も暗い箇所であってもピンホール32や泡33の箇所よりも高輝度である。
【0055】
一方、消光位検査部1bの場合、偏光板51bを透過した偏光方向(45+θ)°の直線偏光の照明光が、配向方向45°の液晶層103の窪み107の部分を透過する際、図4(b)等で説明した、楕円偏光を生じさせる位相差の設計値からのずれにより、偏光方向(45+θ)°の直線偏光から楕円偏光へのずれ量が小さくなる。
この楕円偏光へのずれ量が小さくなった分(偏光方向(45+θ)°の直線偏光に近づいた分)、偏光方向(135+θ)°の偏光板31bを透過しラインセンサ3bに入射する照明光の光量は減少する。楕円偏光へのずれは、窪み107の中心に向かい膜厚が小さくなるほど小さくなるので、窪み107の部分は、画像データ20b上で、周囲の正常部に対し、中心に向かうにつれ輝度が低下する。ただし、図5等で説明したように、消光位検査部1bでは膜厚の変化による受光量の変化は緩やかであり、周囲の正常部との輝度差は比較的小さい。また、前記と同様、画像データ20b上の窪み107の部分は、最も暗い箇所であってもピンホール32の箇所よりも高輝度である。
【0056】
次に、図11を参照して、異物の欠陥の場合について説明する。液晶層103に異物108が混入すると、光学補償フィルム10において、液晶層103の異物108の周囲部分に、異物108を中心とし異物108に向かうにつれ深さが大きくなる窪み109が形成され、液晶層103が薄くなる。なお、本実施形態では異物108は光学補償フィルム10の製造工程で用いる接着剤等のかすを想定し、透明かつ内部に歪を有するものであるとする。
【0057】
上記の窪み109による画像データ20a、20bにおける輝度変化は、前記の窪み107によるものと同様である。
【0058】
液晶層103の異物108については、明光位検査部1a、消光位検査部1bの双方において、透明の異物108の内部歪により、偏光板51a、51bを透過した直線偏光の照明光に乱れが生じ、各方向の偏光成分を有する状態となる。この照明光の一部が、偏光板31a、31bを透過して直線偏光としてラインセンサ3a、3bに入射するので、異物108は、画像データ20a上では、周囲の窪み109部分に対して高輝度となり、画像データ20b上では、正常部に対しても高輝度となる。
【0059】
次に、フィルム検査システム1による検査手順について図12〜図16を参照して説明する。
【0060】
図12に示すように、フィルム検査システム1では、まず、光学補償フィルム10を図示しない搬送ローラなどの搬送装置で搬送しつつ、明光位検査部1aのラインセンサ3a、消光位検査部1bのラインセンサ3bにより、照明5a、5bで照明された前記の撮像範囲11a、11bで光学補償フィルム10の撮像を行う(S101)。
【0061】
各ラインセンサ3a、3bは、光学補償フィルム10を撮像した画像データ20a、20bを画像処理装置7に送信する。画像処理装置7の制御部11は、これらの画像データ20a、20bを受信して取得し、記憶部12に記憶する(S102)。
【0062】
次に、画像処理装置7の制御部11は、各画像データ20a、20bについて、後述する明領域や暗領域を好適に抽出するための前処理を行う(S103)。
【0063】
S103において、画像処理装置7の制御部11は、明光位検査部1a、消光位検査部1bからの各画像データ20a、20bについて、光学補償フィルム10の幅方向の両端部における受光量の減少や、光源の輝度ばらつきを補正するシェーディング補正、画像の平滑化によるノイズの除去、微分処理による欠陥部の強調など、予め定めた、あるいはユーザ操作により指定された必要なものを実行する。
【0064】
この状態の、明光位検査部1aの画像データ20a、および消光位検査部1bの画像データ20bの例をそれぞれ示したものが図13(a)、図13(b)である。ここでは、説明のため、光学補償フィルム10に、上から順に、ピンホール32、泡33、シミ34、異物35の不良が発生しているものとする。
【0065】
続いて、画像処理装置7の制御部11は、明光位検査部1a、消光位検査部1bからの画像データ20a、20bについて、それぞれ、欠陥候補の抽出を行う(S104)。
【0066】
S104では、明光位検査部1aからの画像データ20aについては、光学補償フィルム10の正常時の輝度値より低い閾値TH1(第1の閾値)を予め定めておき、2値化を行い閾値TH1より低輝度となる暗領域21(第1の暗領域)を欠陥候補として抽出する。
図14(a)は、閾値TH1により検出された、ピンホール32の暗領域21、泡33の暗領域21、シミ34の暗領域21、異物35の暗領域21を示したものである。閾値TH1は、画像データ20a上でピンホール32、泡33、シミ34、異物35の欠陥候補を暗領域21として抽出できるように適当な値を定め、記憶部12に記憶させておく。
【0067】
一方、消光位検査部1bからの画像データ20bについては、光学補償フィルム10の正常時の輝度値より高い閾値TH2(第3の閾値)と、正常時の輝度値および前記の閾値TH2より低い閾値TH3(第4の閾値)を予め定めておき、閾値TH2による2値化を行い閾値TH2より高輝度となる明領域22を欠陥候補として抽出するとともに、閾値TH3による2値化を行い閾値TH3より低輝度となる暗領域23(第2の暗領域)を欠陥候補として抽出する。
図14(b)の左図は、閾値TH2により検出された、泡33の明領域22、異物35の明領域22を示したものである。また、図14(b)の右図は、閾値TH3により検出されたピンホール32の暗領域23を示したものである。閾値TH2は、画像データ20b上で泡33等の欠陥候補を明領域22として抽出できるように、また閾値TH3は画像データ20b上でピンホール32の欠陥候補を暗領域23として抽出できるように、適当な値を定め記憶部12に記憶させておく。
【0068】
その後、画像処理装置7の制御部11は、欠陥候補の種類を判定する処理を行う(S105)。
【0069】
S105の処理の詳細を示したものが、図15である。S105において、画像処理装置7の制御部11は、まず、光学補償フィルム10の欠陥候補について、欠陥候補情報を取得する(S201)。
【0070】
S201では、暗領域21、23、明領域22として抽出される欠陥候補ごとに、欠陥領域(暗領域21、23、明領域22)の重心座標、面積、欠陥領域の二値画像、および重心座標を中心に画像データ20a、20bからトリミングした欠陥領域の画像(元画像)を欠陥候補情報として取得し、RAM等に記憶する。
【0071】
これらの欠陥候補情報は、図16の欠陥候補情報40a〜40cに示すように、画像データ20a上の暗領域21、画像データ20b上の明領域22、および画像データ20b上の暗領域23についてそれぞれ取得する。図の欠陥候補情報40a、40b、40cは、それぞれ、暗領域21、明領域22、暗領域23として抽出された欠陥候補に対応する。
【0072】
次に、画像処理装置7の制御部11は、明光位検査部1aの画像データ20aより抽出された暗領域21の欠陥候補の画像(元画像)を参照し、これが、前記の閾値TH1より低い閾値THp(第2の閾値)よりも低輝度の領域を有するか否かを判定する(S202)。
閾値THpは、画像データ20a上でピンホール32、泡33の欠陥候補と、それ以外の欠陥候補(シミ34等)の箇所の輝度を判別できるように予め適当な値を定めておき、記憶部12に記憶しておく。
【0073】
閾値THpより低輝度の領域がある場合(S202;Yes)、画像処理装置7の制御部11は、欠陥候補をピンホール32(後述する異物が存在する場合を含む)もしくは泡33と判定し、次に、消光位検査部1bの画像データ20bに、暗領域21の欠陥候補と対応する明領域22の欠陥候補があるか、および、暗領域21の欠陥候補と対応する暗領域23の欠陥候補があるかを判定する(S203)。
例えば、画像処理装置7の制御部11は、画像データ20aで暗領域21として抽出された欠陥候補について、これと重心座標が一致するとみなせる所定の範囲を重心座標とする画像データ20b上の明領域22や暗領域23の欠陥候補があるかを、欠陥候補情報40b、40cを照合して判定する。上記の所定の範囲はあらかじめ記憶部12に記憶しておく。
【0074】
画像データ20b上に、対応する明領域22の欠陥候補のみある場合(S203;明領域)、画像処理装置7の制御部11は、これを、泡33であると判定する(S204)。
すなわち、図14(a)、図14(b)に示すように、画像データ20aで暗領域21として抽出される(かつ閾値THpより低輝度の箇所を有する)泡33の欠陥候補は、画像データ20b上で明領域22としてのみ抽出されるためである。
【0075】
一方、画像データ20b上に、対応する暗領域23の欠陥候補のみある場合(S203;暗領域)、画像処理装置7の制御部11は、これを、ピンホール32であると判定する(S205)。
すなわち、図14(a)、図14(b)に示すように、画像データ20aで暗領域21として抽出される(かつ閾値THpより低輝度の箇所を有する)ピンホール32の欠陥候補は、画像データ20b上で暗領域23としてのみ抽出されるためである。
【0076】
なお、画像データ20b上で、対応する明領域22と暗領域23の欠陥候補が両方ある場合(S203;両方)、画像処理装置7の制御部11は、これを、(異物108と同様の)異物の存在するピンホール32であると判定する(S206)。
図14(a)、図14(b)の例にはないが、前記の異物108と同様の異物がピンホール32の内部に存在する場合、異物については、図11で説明した例と同様、消光位検査部1bの画像データ20b上で明領域22として現れるとともに、ピンホール32については、図8で説明した例と同様、消光位検査部1bの画像データ20b上で暗領域23として現れるためである。
【0077】
一方、前記のS202で、暗領域21の欠陥候補の画像に、前記の閾値THpよりも低輝度の領域が無いと判定される場合(S202;NO)、画像処理装置7の制御部11は、消光位検査部1bの画像データ20bに、暗領域21の欠陥候補に対応する、前記の閾値TH3および正常部の輝度より高い閾値TH4(第5の閾値)よりも高輝度の輝点(明領域)があり、かつ、該輝点の位置(重心座標等)が、暗領域21の位置(重心座標等)と一致するとみなせる所定の範囲内にあるかを判定する(S207)。上記の範囲は予め適当なものに定め記憶部12に記憶しておく。
【0078】
本実施形態では、閾値TH4の値を閾値TH2と同じものとする。この時、上記の輝点が前記の明領域22に対応するので、S207では欠陥候補情報40cを検索して上記の判定を行う。なお、S207では、閾値TH2とは異なる閾値TH4による明領域を輝点として別に抽出した上で、同様の判定を行ってもよい。あるいは、前記の暗領域21に対応する画像データ20b上の領域を抽出し、該領域の重心座標から所定の範囲に閾値TH4より高輝度の輝点があるかを判定してもよい。
【0079】
S207の条件を満たす場合(S207;YES)、画像処理装置7の制御部11は、これを(周囲に窪みが形成された)異物35であると判定する(S208)。
図14(a)、図14(b)に示すように、窪み部分を周囲に有する異物35は、周囲の窪み部分が画像データ20a上の暗領域21として抽出されるとともに、画像データ20bにおいて該暗領域21の重心に対応する位置に、異物35が明領域22として現れるためである。
【0080】
一方、欠陥候補がS207の条件に該当しない場合(S207;NO)、画像処理装置7の制御部11は、これをシミ34であると判定する(S209)。
図14(a)、図14(b)に示すように、シミ34の欠陥の場合、液晶層103の窪み部分が画像データ20a上の暗領域21として抽出され、かつ画像データ20bにおいて該暗領域21の重心に対応する位置に、異物35の場合のような明領域22が存在しないためである。
【0081】
このようにして判定を終えた後、全ての暗領域21の欠陥候補の判定を終えていなければ(S210;NO)、S202に戻り、次の欠陥候補の欠陥の種類の判定に移行する。このようにして、全ての暗領域21の欠陥候補の欠陥の種類の判定を終えれば(S210;YES)、図12のS105における欠陥候補の種類の判定を終了する。その後、画像処理装置7は、検出した欠陥とその種類を検査結果として表示部16に表示するなどして出力し(S106)、フィルム検査システム1における処理を終了する。
【0082】
なお、警報装置を画像処理装置7に接続しておき、欠陥が検出された場合に警報を行いオペレータに欠陥が発生している旨を知らせるようにしてもよい。警報装置としては、例えばランプの点灯により警報を行うものや、音声により警報を行うもの、あるいはモニタ等に欠陥が発生している旨を表示するもの等を用いることができる。
【0083】
このように、本実施形態によれば、明光位検査部1aのラインセンサ3aで、光学補償フィルム10を明光位の状態で撮像し、消光位検査部1bのラインセンサ3bで、該光学補償フィルム10を消光位から少しずれた状態で撮像する。これら両方の画像データ20a、20bを用いることで、光学補償フィルム10に生じた欠陥の候補を抽出し、その欠陥の種類の判定を正確に行うことができる。
すなわち、明光位状態で光学補償フィルム10を撮像した画像データ20a上で、正常部に対する暗領域21として現れる箇所は、光学補償フィルム10に欠陥が生じることにより、光学補償フィルム10の配向特性が設計値と異なっている箇所である。
光学補償フィルム10に生じた欠陥は、さらに、消光位から少しずれた状態で光学補償フィルム10を撮像した画像データ20b上でも、その種類により、正常部に対する明領域22、あるいは暗領域23として現れる。欠陥が暗領域23としても現れるのは、フィルムを完全に消光位の状態として撮像を行わないためである。
これら双方の画像データ20a、20bを比較参照して、一方の画像データのみからは判別できない欠陥の種類も、正確に判別できるようになる。
【0084】
より具体的には、上記のように、光学補償フィルム10の欠陥候補は、これを明光位状態で撮像した画像データ20a上で前記の閾値TH1による暗領域21として好適に抽出できる。
さらに、この画像データ20aにより、輝度を基準として欠陥を判別できる。例えば、欠陥として、光学補償フィルム10の液晶層103にピンホール105が生じている場合や泡106が混入している場合等と、光学補償フィルム10の液晶層103に窪み107が生じている場合等では、画像上の輝度が異なり、光学補償フィルム10の液晶層103にピンホール105が生じている場合や泡106が混入している場合、より低輝度となる。従って、閾値TH1より低い前記の閾値THpを用いてこれらを判別できる。
【0085】
また、光学補償フィルム10を消光位から少しずれた状態で撮像した画像データ20b上で、閾値TH2による明領域22、もしくは閾値TH3による明領域23として現れる箇所は、欠陥の種類によって、該フィルムの配向特性の影響が設計値と異なっている箇所であるので、これにより欠陥の種類の判別を好適に行える。
本実施形態では、明光位検査部1aの画像データ20aから、前記の閾値THpを用いた判定により、光学補償フィルム10の液晶層103にピンホール105が生じている、あるいは泡106が混入している等とされる場合、消光位検査部1bの画像データ20bにおける明領域22や暗領域23を参照することにより、ピンホール105が生じている場合、泡106が混入している場合等を判別できる。
一方、明光位検査部1aの画像データ20bから、前記の閾値THpを用いた判定により、光学補償フィルム10に窪み107等が生じているとされる場合にも、消光位検査部1bの画像データ20bを参照することにより、光学補償フィルム10の液晶層103に窪み107(のみ)が生じている場合、異物108が混入しその周囲に窪み109が生じている場合等を判別できる。
【0086】
これに対し、例えば、明光位検査部1aの画像データ20aのみの検査では、欠陥領域がほぼ同程度の輝度になるため、ピンホール32と泡33の判別が難しい。また、消光位検査部1bの画像データ20bのみでは、シミ34の検査が難しく(窪み107の部分と正常部との輝度差が小さく、閾値を定めて暗領域23として抽出することが難しいため)、また、泡33と異物35の判別も難しい(双方で明領域22のみが抽出されるため)。さらに、完全な消光位の状態で光学補償フィルム10とした場合では、ピンホール32やシミ34等を暗領域23として抽出できない。
本実施形態のフィルム検査システム1は、前記のように明光位状態で光学補償フィルム10を撮像した画像データ20aと、消光位から少しずれた状態で光学補償フィルム10を撮像した画像データ20bを比較参照することにより、このような、一方の画像データのみでは欠陥の種類を判別困難なものについても、その種類を精度よく判別可能としたものである。
【0087】
なお、本実施形態では、偏光板31aと偏光板51a、および偏光板31bと偏光板51bの偏光方向はそれぞれ90°の角度をなし直交するものとし、偏光板31aと光学補償フィルム10の配向方向は45°の角度をなすが、これらの関係は許容範囲であれば微小角度ずれていてもよい。
【0088】
また、図11では、異物35(異物108)を透明かつ内部に歪を有するものとして説明したが、異物が照明光を透過しないものである場合、あるいは内部に歪を有しないものである場合、該異物は図11における画像データ20a、20b中で輝度の低い黒点として現れる。
このような場合、前記のS202の判定ではYESとなるが、その後、画像データ20aで暗領域21として抽出された欠陥候補について、暗領域21の元画像中に閾値THpより高輝度かつ閾値TH1より低輝度の領域(即ち、図11の液晶層103の窪み109部分の輝度に対応する領域)が存在するか(所定の面積を有するか)を判定し、該領域が存在する場合に、照明光を透過しない、あるいは内部に歪を有しない異物が混入した欠陥であると判定することができる。
【0089】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本実施形態は光学補償フィルムの検査を行う例を示したが、光学異方性を有するフィルム状の対象物であれば、同様の検査を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1………フィルム検査システム
1a………明光位検査部
1b………消光位検査部
3a、3b………ラインセンサ
5a、5b………照明
7………画像処理装置
10………光学補償フィルム
20、20a、20b………画像データ
31a、31b、51a、51b………偏光板
71………画像データ取得部
73………欠陥候補抽出部
75………欠陥種類判別部
77………結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性を有するフィルムの欠陥を検査するフィルム検査システムであって、
第1の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第2の偏光板を介して撮像する第1の撮像装置と、
第3の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第4の偏光板を介して撮像する第2の撮像装置と、
前記第1の撮像装置で撮像した前記フィルムの第1の画像データと、前記第2の撮像装置で撮像した前記フィルムの第2の画像データを用いて、前記フィルムの欠陥候補の検出を行うとともに、前記欠陥候補の種類を判別する画像処理装置と、を具備し、
前記第1の偏光板と、前記第2の偏光板の偏光方向は略直交し、
前記第3の偏光板と、前記第4の偏光板の偏光方向は略直交し、
前記第2の偏光板の偏光方向と、光学異方性を有する前記フィルムの配向方向とが、略45°の角度をなし、
前記第4の偏光板の偏光方向と、光学異方性を有する前記フィルムの配向方向とのなす角度を、90°から所定角度ずらしたことを特徴とするフィルム検査システム。
【請求項2】
前記画像処理装置は、
前記第1の画像データから、第1の閾値よりも低輝度の第1の暗領域を欠陥候補として抽出する欠陥候補抽出部と、
前記第1の暗領域について、前記第1の閾値より低い第2の閾値よりも低輝度の領域があるか否かを判定する欠陥候補判別部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のフィルム検査システム。
【請求項3】
前記欠陥候補判別部は、
前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定される場合、
前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第3の閾値よりも高輝度の明領域があるか否か、および、該欠陥候補に対応する、前記第3の閾値より低い第4の閾値よりも低輝度の第2の暗領域があるか否かを判定することを特徴とする請求項2記載のフィルム検査システム。
【請求項4】
前記欠陥候補判別部は、
前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定されない場合、
前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第5の閾値よりも高輝度の輝点があり、かつ前記輝点の位置が該欠陥候補の位置から所定の範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項2または請求項3記載のフィルム検査システム。
【請求項5】
光学異方性を有するフィルムの欠陥を検査するフィルム検査方法であって、
第1の撮像装置により、第1の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第2の偏光板を介して撮像するステップと、
第2の撮像装置により、第3の偏光板を介して照明光が照射された前記フィルムを、第4の偏光板を介して撮像する撮像ステップと、
画像処理装置により、前記第1の撮像装置で撮像した前記フィルムの第1の画像データと、前記第2の撮像装置で撮像した前記フィルムの第2の画像データを用いて、前記フィルムの欠陥候補の検出を行うとともに前記欠陥候補の種類を判別する判別ステップと、を具備し、
前記第1の偏光板と、前記第2の偏光板の偏光方向は略直交し、
前記第3の偏光板と、前記第4の偏光板の偏光方向は略直交し、
前記第2の偏光板の偏光方向と、前記光学異方性を有するフィルムの配向方向とが、略45°の角度をなし、
前記第4の偏光板の偏光方向と、前記光学異方性を有するフィルムの配向方向とのなす角度を、90°から所定角度ずらしたことを特徴とするフィルム検査方法。
【請求項6】
前記画像処理装置は、前記判別ステップにおいて、
前記第1の画像データから、第1の閾値よりも低輝度の第1の暗領域を欠陥候補として抽出し、
前記第1の暗領域について、前記第1の閾値より低い第2の閾値よりも低輝度の領域があるか否かを判定することを特徴とする請求項5記載のフィルム検査方法。
【請求項7】
前記画像処理装置は、前記判別ステップにおいて、
前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定される場合、
前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第3の閾値よりも高輝度の明領域があるか否か、および、該欠陥候補に対応する、前記第3の閾値より低い第4の閾値よりも低輝度の第2の暗領域があるか否かを判定することを特徴とする請求項6記載のフィルム検査方法。
【請求項8】
前記画像処理装置は、前記判別ステップにおいて、
前記第1の暗領域として抽出される欠陥候補について、前記第2の閾値よりも低輝度の領域があると判定されない場合、
前記第2の画像データにおいて、該欠陥候補に対応する、第5の閾値よりも高輝度の輝点があり、かつ前記輝点の位置が該欠陥候補の位置から所定の範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項6または請求項7記載のフィルム検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−68500(P2013−68500A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206814(P2011−206814)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】