説明

フィルム状食品

【課題】不安定なサプリメント成分を安定化して、迅速かつ安易な手段で効率的に摂取できる食品を提供する。
【解決手段】不安定なユビキノン、α−リポ酸、カテキン、カルニチン、テアニン、クエン酸、ビタミンB群、ビタミンE、油溶性ビタミンC誘導体、ミネラル類,レチノイド類などのサプリメント成分をシクロデキストリンで包接して、デンプン等のフィルム形成材料からなるフィルムに保持させてなるフィルム状食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサプリメント成分を含むフィルム状食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム状食品としては、従来より種々のものが開発されており、古くはオブラートの名称で知られる澱粉からなるフィルムがある。澱粉からなるものの他に、ゼラチンやプルラン,アルギン酸ナトリウムを主成分とするものなども知られている。近年、種々の食品の包装や、また、フィルム自体にサプリメントや香味料等を保持させた可食性フィルムが提案されている(特許文献1および2)。
【特許文献1】特開2004−222663号公報
【特許文献2】特開2004−248665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これまで不安定なユビキノン、α−リポ酸、カテキン、油溶性ビタミンC誘導体、レチノイド類は安定に食品として供する手段として、ゼラチンなどで成形したハードカプセルやソフトカプセルに封入して製剤化していた。これらの製剤化されたもは、ピルケースなどの容器に入れて持ち運ばなくてはならず、摂取するには水を必要とするなどの問題点があった。
一方、薄いフィルムとすることで口の中で容易に溶けて水を必要とせずに摂取できることから可食性フィルムに種々の成分を担持させることが考えられている。可食性フィルムとして、甘味料や香料などを保持させたものは実用化されたものもあるが、サプリメント成分には湿度や温度に対して不安定なものもあることから、より安定に成分を保持できるようにしたフィルム状食品が求められている。
本発明は、上記サプリメント成分を安定して保持させることができ、かつ摂取し易いフィルム状食品を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のフィルム状食品は、目的とするサプリメント成分をシクロデキストリン(CD)に包接(包摂)させ、得られたCD包接体をフィルム形成材料に混入して所望の厚さのフィルムに成形するか、またはフィルム形成材料からなる可食性フィルムにCD包接体を塗布してしてなることを特徴とするものである。
本発明において、サプリメント成分としては、ユビキノン(コエンザイムQ10)、α−リポ酸、カテキン、カルニチン、テアニン、クエン酸、ビタミンB群、ビタミンE、油溶性ビタミンC誘導体、ミネラル類およびレチノイド類などが挙げられる。
【発明の効果】
【0005】
本発明のフィルム状食品は、サプリメント成分をシクロデキストリンで包接することによって、種々のフィルム形成成分との親和性が向上し、フィルム中に確実に保持されるとともに、任意の厚さの薄い安定なフィルム状とすることができ、種々の成分を含む層の積層フィルムとすることもできる。それによって、携帯が容易で,摂取にあたり水等が不用であるなどの利点を有し、種々の成分を積層することによって種々の成分を一度に摂取できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
サプリメント成分の多くは、フィルム形成材料に対して溶解性、分散性、混和性等が悪
く、フィルム形成が困難である。本発明のサプリメント成分であるユビキノン(コエンザイムQ10)、α−リポ酸、カテキンなどは疎水性の粉末であり、油溶性ビタミンC誘導体、レチノイド類は疎水性の液体であり、そのままではフィルム形成成分との混和性等に問題があるが、シクロデキストリン(CD)に包接させることによって水になじみ易い粉体とすることができる。
シクロデキストリンによる包接効果は、シクロデキストリン自体の物性によるものもあるが、上記サプリメント成分の多くは種々の成分からなる天然物由来のものや、また、合成品であっても副生物を含むものと推測されるが、シクロデキストリンの包接によって包接される成分とされない成分とに分離され、フィルム形成性等を阻害する成分が除かれる等の効果もあるものと思われる。これらのことから、シクロデキストリンの選択効果を利用することによって、サプリメント成分は上記のものに限定されることなく,本発明に使用できる。
【0007】
シクロデキストリンは、サプリメント成分に応じてα−CD、β−CD、γ−CDのなかから選択して使用することができるが、好ましくはβ−CDまたはγ−CDである。
このほかフィルム形成成分との親和性、混和性等で選択してもよく、水溶性の点でα−CDを選択するなどとしてもよい。
シクロデキストリンは、上記のものを併せて使用してもよい。包接は一つのサプリメント成分ごとに通常行うが2成分以上を併せて行ってもよい。
【0008】
フィルム形成成分としては、デンプン、プルラン、アラビノキシラン、グアーガム分解物、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、ペクチン、セルロース等の多糖類、およびゼラチン、シルク分解物、カゼイン分解物等のペプチド系物質など、従来の可食性フィルムに使用されているものが使用できる。これらは、1種または2種以上を併せて使用することができる。
本発明において、好ましくは、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、セルロース等の多糖類、ゼラチン、シルク分解物、カゼイン分解物等が挙げられる。
フィルム形成成分は、フィルムとしての特性を生かすために、薄く成形できること、食したときに口腔内に付着しないこと、適度の速さで溶解すること、目的とするサプリメント成分を充分に保持させることができること、更には、適度の強度を有していること等の種々の要件を満足することを考慮して選択使用される。
【0009】
上記のほかにフィルム形成成分として、通常この種の分野で使用される成分を用いることができる。例えば、アルギン酸ナトリウムに対するカルシウムイオン、フィルムの可塑剤としてのラクチトール,マルチトール,エリスリトール,マンニトール等、フィルム強化剤としての多糖類、フレーバーおよび甘味料等を含ませてもよい。このほか、CD包接体としなくても安定なサプリメント成分を含ませてもよい。
フィルム形成材料は、上記各成分を含む水溶液または水性分散液として調製される。フィルム形成材料は、食品として使用可能なアルコール、グリセロール、界面活性剤等を用いることができる。
【0010】
本発明のフィルム状食品は、サプリメント成分を含む1枚の可食性フィルムでもよく、またこのようなフィルムを多層に積層したものでもよく、更にはサプリメント成分を含まない可食性フィルムとの積層体であってもよい。
フィルム状食品の成形にあたっては、通常、一つのサプリメント成分包接体を有するフィルムを作るが、2以上のサプリメント成分包接体を含む一つのフィルムとしてもよい。
フィルム状食品は、原理的には、デンプン等からなるフィルム形成材料を適当な濃度の水溶液として、ガラス板等の平滑な基板や平滑なプラスチックフィルム面に薄く塗布し、乾燥してフィルムとし、剥離することによって作成される。工業的には、例えば、平滑面
を有する回転ドラムの表面にフィルム成形材料を塗布し、乾燥して巻き取るなどの連続的な製法によって作られる。
サプリメント成分CD包接体(以下、場合により単に、CD包接体という)は水性分散液として、フィルム形成材料に添加する。
フィルムの積層は、一旦フィルムとして巻き取った後に他のフィルムと積層してもよく、また、巻き取り時に他のフィルムと一体的に巻き取る方法によってもよい。
【0011】
成形されるフィルムの厚さは特に限定されないが、30〜300μm程度とするとよい。
フィルムの厚さは、主としてフィルムの強度と溶解性で選択される。積層フィルムの場合には、表面層のフィルムをサプリメント成分の含まないものとし、強度のあるものを選択することによってフィルム状食品を薄くすることができる。
サプリメント成分を含まないフィルムは、強度のほかに、積層した時の上下のサプり成分含有フィルムの間にあってバリヤーの役割をするとか、また,最表面に設けて水分、空気等を遮断する役割をさせてもよい。例えば、油溶性ビタミンCはシクロデキストリンで包接しても鉄イオンとの反応性は残っているので、褐変現象が生じるがバリヤーフィルムを設けることでこの現象を阻止できる。
【0012】
形成されたフィルムへ後からCD包接体を保持させる方法は、例えば、フィルム形成時にCD包接体の分散液を噴霧する等の方法によって行うことができる。分散液にはデンプン等の結合剤、グリセロール等の付着剤を含ませてもよく、また、単なる水溶液として半乾燥時のフィルム自体の接着力で付着させてもよい。CD包接体を付着させたフィルムは,バリヤーフィルム等と積層するとよい。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の製造例および実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
製造例1 サプリメント成分を含まない可食性フィルムの作成(バリヤーフィルム)
適量のイオン交換水に、攪拌しながら、フィルム形成成分として、デンプン、グリセリン、セルロースを添加し、添加終了後、攪拌を停止する。得られた混合液を加温して糊化して適当な濃度と粘度のデンプン溶液とし、この溶液に甘味料溶液、香料を加え均一な塗布液とし、この塗布液を表面平滑な回転ドラムに適当な厚さに塗布し、乾燥し、乾燥したフィルムを剥離してサプリメント成分を含まない可食性フィルムを得る。
【0014】
製造例2 サプリメントCD包接体を含む可食性フィルムの作成
70℃程度に加温した熱水に、攪拌しながら、フィルム形成成分として、ゼラチン、グリセリン、セルロース、耐熱性サプリメント素材などを添加し、添加終了後、攪拌を停止する。得られた混合液を加温して糊化し、適当な濃度と粘度の溶液とするとともに脱泡する。この脱泡したゼラチン溶液を温度50℃程度の保温釜に移し、再度攪拌しながら、甘味料、色素溶解液、熱に弱いサプリメント素材、乳化済み香料、水又は湯に分散させたサプリメントCD包接体、酸味料溶液を順次加えて均一な塗布液とする。酸味料溶液添加後の塗布液はpH4以上であることが好ましい。このように調製した塗布液を表面平滑な回転ドラムに適当な厚さに塗布し、乾燥し、乾燥したフィルムを回転ドラムから剥離してサプリメント成分を含むフィルム状食品を得る。
【0015】
製造例2のフィルムの作成において、CD包接体としてのサプリメント成分を変えることによって、ユビキノン、α−リポ酸、カテキン、油溶性ビタミンC誘導体、レチノイド類等のそれぞれを含むフィルム状食品が得られる。また、製造例1で得られた可食性フィルムの上面に製造例2の塗布液を塗布し、乾燥して積層したフィルム状食品を得ることができる。
製造例2の製法は、フィルム形成材料にCD包接体を混入する方法であるが、製造例1で形成されたフィルムの表面に、水または湯に分散させたサプリメントCD包接体液を噴霧または塗布してサプリメント成分を保持したフィルム状食品を作成することができる。得られたフィルム状食品のCD包接体保持面にバリヤーフィルを積層して積層フィルム状食品としても良い。
上記製造例において塗布液を回転ドラムに塗布するのではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのプラスチックフィルムの表面に塗布して、乾燥用の回転ドラムや乾燥炉を通して乾燥してプラスチックフィルムと可食性フィルム(フィルム状食品)を分離する方法などによって製造される。
【0016】
以下に実施例を示す。
表1に示す各成分を各配合ごとに水溶液に調製し、各配合をあわせてフィルム形成用混合液とする。得られた混合液を表面平滑なプラスチックシート面に塗布し、乾燥後剥離してカテキンCD包接体を含む可食性フィルム(厚さ100μm)を得た。
フィルム形成成分が、実施例1はカゼインナトリウム、実施例2はトウモロコシ加工デンプン、実施例3はプルラン、実施例4はアルギン酸ナトリウムを用いた例である。
【表1】

【0017】
実施例1〜4で得られたフィルムは、成形性、強度、溶解性が良好で、CD包接体はいずれのフィルム形成成分でも良好な可食性フィルムが得られることを示している。
サプリメント成分をカテキンに代えてユビキノン、α−リポ酸を用いて行って、上記と同様な結果を得た。
【0018】
次に、CD包接したサプリメント成分と非包接サプリメント成分を含む可食性フィルムについて比較した例を示す。
表2に示す各材料を各配合ごとにそれぞれ溶解して溶液または分散液とし、これらを合
わせて適当な粘度の塗工液に調製した。この塗工液をOPP(配向ポリプロピレン)フィルム面に塗布し、水分含量7%まで乾燥してフィルム(厚さ100μm)を作成した。
【表2】

【0019】
得られたフィルムについて、成形性、耐湿性、耐乾燥性について調査した。
調査は下記の方法によった。
成形性: 上記の製法でOPPフィルム上に形成した可食性フィルムがフィルムとして剥離できるか否かで判定した。
耐湿性: 22×33mmのフィルム24枚をプラスチックケースに入れ、恒温恒湿槽(40℃、R.H.70%)で2日間処理した後のフィルム同士の付着度合いを確認した。プラスチックケースはケース内寸法が22×33×2.5mmで、側端に取り出しスリットを有する非密閉容器である(以下同じ)。
耐乾燥性: 22×33mmのフィルム24枚をプラスチックケースに入れ、恒温恒湿槽(30℃、R.H.32%)で2日間処理した後の脆さを確認した。
結果を表3に示す。
【表3】

表3に示すとおり、CDで包接したα−リポ酸を含むフィルムの方がCDで包接しないα−リポ酸を含むフィルムに比して、耐湿性、耐乾燥性に優れており、折り曲げ強度も優れていることがわかる。
【0020】
試験例:フィルムサプリの効果
CD包接体としたサプリメント成分とCD包接しないサプリメント成分を含むフィルム(フィルムサプリ)の美容等に及ぼす効果について比較した。
I.試験試料
実施例A1:
前記実施例1の処方で作成した、美容系サプリメント成分としてα−リポ酸、カテキン、コエンザイムQ10、真珠粉、ビタミンCの各CD包接体を含むフィルムサプリ(フィルム形成成分:カゼインナトリウム)。
比較例B1:
実施例A1と同じ処方で、サプリメント成分としてCD包接しない実施例A1に記載の成分を含むフィルムサプリ。
実施例A2:
前記実施例2の処方で作成した、健康系サプリメント成分としてα−リポ酸、カテキン、コエンザイムQ10、クエン酸、ビタミンB1、ビタミンB6の各CD包接体を含むフィルムサプリ(フィルム形成成分:トウモロコシデンプン)。
比較例B2:
実施例A2と同じ処方で、サプリメント成分としてCD包接しない実施例A2に記載の成分を含むフィルムサプリ。

II.フィルムサプリの仕様は、22×33×0.1mm(横×縦×厚さ)

III.判定基準
A 顕著に改善した
B 改善した
C わずかに改善
D 変化認めず
E 増悪
【0021】
〔モニターテスト〕
(1)肌状態改善効果
肌に衰えを訴えた30〜40歳台の女性ボランティアを1群10名で2群募り、1群には実施例A1(フィルムサプリ;美容系)をもう1群には比較例B1を1日5枚ずつ2週間連続摂取させた。その後前記の判定基準に基づいて使用前後の肌状態を、肌のうるおい感、肌のつや、肌のハリ、血色の4項目についてモニター試験を行った。なお、本試験期間を通して身体に異常を訴えた者はなかった。
実施例A1には比較例B1に比べて、明瞭な肌質改善作用が認められた。結果を表4〜7に示す。
【0022】
【表4】

【表5】

【0023】
(2)心身改善効果
心身に衰えを訴えた40〜50歳台の女性ボランティアを1群10名で2群募り、1群には実施例A2(フィルムサプリ;元気系)をもう1群には比較例B2を1日5枚ずつ2週間連続摂取させた。その後前記の判定基準に基づいて使用前後の心身の状態を、寝起き、就労中の倦怠感、就労後の疲労感の3項目についてモニター試験を行った。なお、本試験期間を通して身体に異常を訴えた者はなかった。
【0024】
【表6】

【0025】
上記表4〜10に示すとおり、CD包接体を含むフィルムサプリは、美容および健康の面で非包接成分を含むフィルムサプリに比べて良好な結果を示した。また、CD包接体を含むフィルムサプリは、フィルム同士が付着したり、摂取時にフィルムが欠けたりすることも無く、口腔内での良好であるとのパネラーからの報告も得られた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
空気中で不安定であるとか、非水溶性であるため水に分散または溶解し難い物質や、また、カテキンのように天然物由来の物質であるため多数の化合物の混合体であるため従来の可食性フィルムの製法では包含させることができなかったものも、本発明によるシクロデキストリンの使用方法によって、選択的に包接させた包接体を用いることによって、安定化した充分にサプリメント成分を含むフィルム状食品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンに包接させたサプリメント成分を澱粉等からなる可食性フィルムに保持させたことを特徴とするフィルム状食品。
【請求項2】
サプリメント成分が、ユビキノン、α−リポ酸、カテキン、カルニチン、テアニン、クエン酸、ビタミンB群、ビタミンE、油溶性ビタミンC誘導体、ミネラル類およびレチノイド類からなる群から選ばれる1種または2種の物質であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状食品。
【請求項3】
可食性フィルムが、デンプン、プルラン、アラビノキシラン、グアーガム分解物、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、ペクチン、セルロース等の多糖類、およびゼラチン、シルク分解物、カゼイン分解物等のペプチド系物質から選ばれるフィルム形成成分よりなることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状食品。
【請求項4】
サプリメント成分を保持させた可食性フィルムを2以上に積層するか、またはサプリメント成分を保持させた可食性フィルムと成分非保持可食性フィルムを多層に積層してなる請求項1に記載のフィルム状食品。
【請求項5】
サプリメント成分をシクロデキストリンに包接させ、得られたCD包接体をフィルム形成材料に混入して所要の粘度の溶液とし、該溶液を所望の厚さのフィルムに成形することからなるフィルム状食品の製造方法。

【公開番号】特開2008−72915(P2008−72915A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253264(P2006−253264)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【出願人】(591091043)株式会社ツキオカ (38)
【Fターム(参考)】