説明

フェノール誘導体及びその製造方法

【課題】 高屈折率を有するフェノール誘導体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 式(4)で表されるフェノール誘導体。
【化22】


(式(4)中、nは0〜3の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、lは1〜1000の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよく、Xは酸素又は硫黄を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフェノール誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新しいポリマー素材はこれまでのように単一機能性ではなく、複合化された多機能性及び高次構造に基づく新しい機能が求められている。
【0003】
例として、グラフトポリマー、ブロックポリマーは従来のポリマーが単一相であるのに対してミクロ的に多相構造を有するポリマーであり、その組み合わせの多様性等から、柔軟性と多面的な機能を持つポリマーとして今後の展開が期待されている。
【0004】
また、枝分かれ構造を有する分岐ポリマーは、直鎖状ポリマーと比較して、慣性半径が小さいことから溶液粘度が低く、有機溶媒に対して高い溶解性を示し、末端官能基数が多いことから機能化に有利であるため、様々な分野への応用が可能である。
【0005】
一方、光学用樹脂の重要な特性のひとつに屈折率がある。屈折率を精密に制御することは、光学レンズ、光導波路等に応用する際、必要不可欠である。屈折率の制御には、樹脂中に様々な置換基を導入する手法が広く用いられている。例えばアクリルその他の樹脂中にフッ素を導入して低屈折率化した検討が数多くなされている(例えば特許文献1参照)。フッ素の導入は低屈折率化のみならず低吸水化や低誘電率化にも有効な手段である。しかしながら樹脂の低屈折率化は、例えばレンズとして使用する場合厚肉化を招く等の欠点も有している。光学樹脂、特に光学特性に優れるアクリル樹脂の高屈折率化は、光導波路や光学レンズ用途に非常に有用である。樹脂の高屈折率化には、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子及び芳香環等の導入が有効とされている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平3−217412号公報
【特許文献2】特開平4−055416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高屈折率を有するフェノール誘導体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、環構造中に硫黄原子を含むフェノール水酸基について化学修飾の検討を詳細に行い、塩素基を有する誘導体を出発原料にしてポリチオエーテル鎖を伸長することにより、高屈折率樹脂を見出すことができた。
本発明によれば、以下のフェノール誘導体及びその製造方法が提供される。
1.式(1)で表されるフェノール誘導体。
【化8】

(式(1)中、nは0〜3の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
2.式(2)で表されるフェノール誘導体。
【化9】

(式(2)中、nは0〜3の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)
3.式(3)で表されるフェノール誘導体。
【化10】

(式(3)中、nは0〜3の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
4.式(4)で表されるフェノール誘導体。
【化11】

(式(4)中、nは0〜3の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、lは1〜1000の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよく、Xは酸素又は硫黄を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
5.下記式で表されるフェノール誘導体にCl−R−COY(Rは式(1)と同じであり、Yはハロゲンである。)を反応させる1記載のフェノール誘導体の製造方法。
【化12】

(式中、nは0〜3の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示す。)
6.1記載の誘導体にR−COS−Z(Rは式(2)と同じであり、Zはアルカリ金属である。)を反応させる2記載のフェノール誘導体の製造方法。
7.2記載の誘導体に、下記式で表されるチイラン誘導体を反応させる3記載のフェノール誘導体の製造方法。
【化13】

(式中、R及びRは式(3)と同じである。)
8.3記載の誘導体に、下記式で表されるエポキシ化合物又はチイラン化合物を反応させる4記載のフェノール誘導体の製造方法。
【化14】

(式中、R、R及びXは式(4)と同じである。)
9.重合性基を有する3又は4記載のフェノール誘導体。
10.9記載のフェノール誘導体を含む化合物に加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって得られる3次元硬化物。
11.9記載のフェノール誘導体を含む化合物に加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって得られる3次元硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高屈折率を有するフェノール誘導体及びその製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の式(3)又は(4)で表されるフェノール誘導体は、式(1)乃至式(3)で表されるフェノール誘導体を中間体として製造できる。
【0010】
式(1)〜(4)中のRは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示す。1価のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基がある。Rは好ましくは水素又は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0011】
式(1)〜(4)中のRは、炭素数1〜20の2価の有機基であり、例えばメチレン基、エチレン基等のアルキレン基やフェニレン基等の芳香族基及びそれらの置換化合物であるが、塩素基の反応性の観点から炭素数1〜4のアルキレン基、又はジニトロ置換フェニレン基等の電子吸引性基が望ましい。
【0012】
式(1)〜(4)中のnは、0〜3の整数であり、好ましくは1〜3である。
【0013】
式(2)〜(4)中のRは、炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、シクロヘキシル基、ノルボルネン基等の飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基や、エーテル類、エステル類、アミノ類、及びそれらの置換化合物である。好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で置換された又は非置換のフェニル基又はナフチル基である。
【0014】
式(3)及び式(4)中のR及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えば、互いに独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、シクロヘキシル基、ノルボルネン基等の飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基や、エーテル類、エステル類、アミノ類、及びそれらの置換化合物である。また、RとRが結合して、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン環等の環を形成してもよい。好ましくは、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基で置換された又は非置換のフェノキシアルキル(好ましくは炭素数1〜4)基である。
【0015】
式(3)及び式(4)中のmは1〜1000の整数であり、好ましくは1〜500である。また、mは繰り返し数を表し、好ましくは数平均分子量が1000〜50000である。
【0016】
式(4)中のR及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えば、互いに独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、クロトニル基、アルコキシ基、フェノキシ基、等のアルキル基や、ビニル基、アリル基、アクリロリル基、メタクリロイル基、スチリル基、p−ビニルアリール基、ビニロキシ基等のアルケニル基や、シクロヘキシル基、ノルボルネン基、等の飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基や、エーテル類、エステル類、及びそれらの置換化合物であり、また、RとRが結合して、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン環等の環を形成してもよい。好ましくは、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは(メタ)アクリロキシアルキル(好ましくは炭素数1〜4)基である。
【0017】
式(4)中のlは1〜1000の整数であり、好ましくは1〜500である。また、lは繰り返し数を表し、好ましくは数平均分子量が1000〜50000である。
【0018】
式(1)で示されるフェノール誘導体は、下記式で示される対応するフェノール体
【化15】

(式中、nは0〜3の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示す。)
にCl−R−COY(Rは式(1)と同じであり、Yはハロゲンである。)を反応させることにより得ることができる。好ましくは塩基存在下で反応を行う。
【0019】
用いる塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン等の第3級アミン化合物、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の金属水酸化物等がある。塩基の量はフェノール水酸基に対し好ましくは1〜10倍量、より好ましくは1〜2倍量用いる。
【0020】
反応に用いる溶剤は、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ヘキサンやトルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンやN−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。また、無溶媒でも反応させることができる。
【0021】
反応温度は、通常、−78〜100℃の間で行うが好ましくは−50〜50℃、より好ましくは−50〜20℃である。反応温度が−78℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が100℃を超えると副反応が起こる恐れがある。
【0022】
式(2)で示されるフェノール誘導体は、式(1)で示される化合物に、R−COS−Z(Rは式(2)と同じであり、Zはアルカリ金属である。)を反応させることにより得ることができる。好ましくは塩触媒存在下で反応を行う。
【0023】
塩触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミドやテトラエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩や、リチウムクロリド、リチウムブロミド等の金属塩が用いられる。触媒の添加量は、式(1)で示される化合物100部に対し1〜10部である。R−COS−Zは式(1)で示される化合物に対し大過剰加え、反応途中でさらに追加してもよい。
【0024】
反応に用いる溶媒はエーテル類、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒の他に、N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。
【0025】
反応温度は、通常、−78〜100℃の間で行うが、好ましくは−50〜80℃、より好ましくは−50〜50℃である。反応温度が−78℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が100℃を超えると副反応が起こる恐れがある。
【0026】
式(3)で示されるフェノール誘導体は、式(2)で示される化合物に、下記式で示される対応するチイラン化合物
【化16】

(式中、R及びRは式(3)と同じである。)
を反応させることによって得ることができる。好ましくは塩触媒存在下で反応行う。
【0027】
塩触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミドやテトラエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩や、リチウムクロリド、リチウムブロミド等の金属塩が用いられる。触媒の添加量は、式(2)で示される化合物の官能基量と等量が好ましい。
【0028】
反応に用いる溶媒はエーテル類、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒の他に、N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。また、無溶媒でも反応させることができる。
【0029】
反応温度は、通常、0〜150℃の間で行うが、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜100℃である。反応温度が0℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が150℃を超えると副反応が起こりやすくなる。
反応は、アンプル封管等、水分を除去できる状態で行うのが望ましい。
【0030】
式(4)で示されるフェノール誘導体は、式(3)で示される化合物に、下記式に示される対応するチイラン化合物又はエポキシ化合物
【化17】

(式中、R、R及びXは式(4)と同じである。)
を反応させることによって得ることができる。好ましくは塩触媒存在下で反応を行う。
【0031】
塩触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミドやテトラエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩や、リチウムクロリド、リチウムブロミド等の金属塩が用いられる。触媒の添加量は、式(3)で示される化合物の官能基量と等量が好ましい。
【0032】
反応に用いる溶媒はエーテル類、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒の他に、N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。また、無溶媒でも反応させることができる。
【0033】
反応温度は、通常、0〜150℃の間で行うが、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜100℃である。反応温度が0℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が150℃を超えると副反応が起こる恐れがある。
反応は、アンプル封管等、水分を除去できる状態で行うのが望ましい。
【0034】
式(3)で示される化合物は、2重結合や3重結合をもつ不飽和炭化水素基や、アクリル基やメタクリル基、シクロプロパン基やシクロブタン基等の高歪炭化水素基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、エポキシ基やオキセタン基等の環状エーテル基等、ラジカル重合性やカチオン、アニオン重合性等の重合性基を含むことができる。例えばR,R,R,R,Rの少なくとも1つが重合性基を含んでもよい。
【0035】
式(4)で示される化合物は、2重結合や3重結合をもつ不飽和炭化水素基や、アクリル基やメタクリル基、シクロプロパン基やシクロブタン基等の高歪炭化水素基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、エポキシ基やオキセタン基等の環状エーテル基等、ラジカル重合性やカチオン、アニオン重合性等の重合性基を含むことができる。好ましくは炭素数2〜4の不飽和炭化水素基、アクリル基又はメタクリル基である。例えばR,R,R,R,R,R,Rの少なくとも1つが重合性基を含んでもよい。
【0036】
式(3)及び(4)の化合物が重合性基を含む場合、対応する重合触媒を加え加熱又は光等の活性エネルギー線を照射することによって、3次元硬化物を得ることができる。
【0037】
熱ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものを例示すると、ベンゾイルパーオキシド、p−クロルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシド、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物である。熱ラジカル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性モノマーの種類や組成によって異なるため一概に限定できないが、重合性基に対して0.01〜10当量%の範囲で用いるのが好適である。重合温度及び重合時間は、重合開始剤の種類と量や重合性モノマーの種類によって大きく変化するので限定できないが、2〜40時間で重合が完結するように条件を選ぶのが好ましい。
【0038】
また紫外線、可視光、あるいは放射線等の活性エネルギー線を用いたラジカル重合の開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものとして、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジルメチルケタール、2−イソプロピルチオキサントン等が用いられる。これらの重合開始剤は、重合性基に対して0.001〜5当量%の範囲で用いるのが一般的である。
【0039】
熱カチオン重合開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものを例示すると、塩化アルミニウム、4塩化スズ、4塩化チタン等が用いられる。熱カチオン重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性モノマーの種類や組成によって異なるため一概に限定できないが、重合性基に対して0.01〜10当量%の範囲で用いるのが好適である。重合温度及び重合時間は、重合開始剤の種類と量や重合性モノマーの種類によって大きく変化するので限定できないが、2〜40時間で重合が完結するように条件を選ぶのが好ましい。
【0040】
また紫外線、可視光、あるいは放射線等の活性エネルギー線を用いたカチオン重合の開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものとして、スルホニウム塩類、ヨードニウム塩類等が用いられる。これらの重合開始剤は、重合性基に対して0.001〜5当量%の範囲で用いるのが一般的である。
【0041】
アニオン重合開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものを例示すると、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、金属リチウム等が用いられる。
【0042】
以上の触媒に、各種増感剤や助触媒を加えてもよい。また、3次元硬化物の物性を制御するために、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、レベリング剤等の各種添加剤を加えてもよい。
【0043】
さらに、3次元硬化物の特性を高める目的で、シリカや酸化チタン等無機フィラーや有機フィラーを任意の割合で加えてもよい。
【0044】
式(3)及び式(4)で示される化合物中に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィン、シロキサンポリマー等の各種ポリマーを任意の割合でブレンドしてもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明の光学用樹脂の製造法について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されない。
実施例1
下記式(5)で示される化合物(以下(5)と略す)を下記の方法で合成した。
【化18】

300ml三つ口フラスコに、上記式(6)のフェノール誘導体(東京化成工業株式会社製)1.23g(4mmol)、ピリジン2.85ml(36mmol)、テトラヒドロフラン100mlを加え、0℃窒素雰囲気下で攪拌した。クロロアセチルクロリド4.07ml(36mmol)を滴下し24時間攪拌後、酢酸エチルを100ml加え、1N塩酸100mlで1回、5mol%炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで3回洗浄し、さらに水100mlで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を濾別後、溶媒留去した。得られた褐色液体をn−へキサンで洗浄後、クロロホルムとn−へキサンの混合溶媒(1:5)を用いて再結晶し、(5)を白色針状結晶として0.68g(収率31%)得た。
得られた化合物の分析結果を以下に示す。
IR(cm−1):2956、2869、1775、1601、1503、1203、1166、688
H−NMR(600MHz、DMSO−d):δ(ppm)4.61(s、6H)、5.75(s、1H)、7.16(dd、6H)、7.21(dd、6H)
【0046】
実施例2
下記式(7)で示される化合物(以下(7)と略す)を下記の方法で合成した。
【化19】

50mlフラスコに、チオ安息香酸カリウム1.59g(9.0mmol)、(6)1.07g(2.0mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.15g(0.3mmol)、N−メチルピロリドン10mlを加え室温で攪拌した。24時間攪拌後、酢酸エチル20mlを加え水20mlで3回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾別後、溶媒留去した。得られた褐色液体をn−へキサンで洗浄後、得られた淡黄色粉末固体をクロロホルムとn−へキサンの混合溶媒(1:5)で再結晶し、(7)を白色粉末固体として0.68g(収率43%)得た。
得られた化合物の分析結果を以下に示す。
IR(cm−1):2976、2869、1759、1667、1595、1503、1126、1204、688
H−NMR(500MHz、DMSO−d):δ(ppm)4.26(s、6H)、5.73(s、1H)、7.12(d、12H)、7.19(d、12H)、7.59(t、6H)、7.73(d、3H)、7.97(d、6H)
【0047】
実施例3
下記式(8)で示される化合物(以下(8)と略す)を下記の方法で合成した。
【化20】

湿度10%以下に保ったドライボックス中で、アンプル管にテトラブチルアンモニウムクロリド0.017g(0.06mmol)、(7)0.017g(0.02mmol)、3−フェノキシプロピレンスルフィド0.05g(0.3mmol)、N−メチルピロリドン0.04mlを加え封管した。アンプル管を90℃で24時間攪拌後、適当量のテトラヒドロフランを加え、メタノール中に再沈殿した。得られた固体を再びテトラヒドロフランに溶解し、メタノール100ml中に再沈殿し、(8)を黄色固体として0.065g(収率97%)得た。
得られた化合物の分子量をGPC法で測定したところ、数平均分子量1.9x10、分散度1.24であった。GPC法の測定条件は以下の通りであった。
(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(SEC):東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフィー(SEC)HLC−8020型
(b)カラム:TSKgelG1000H
(c)展開溶媒:テトラヒドロフラン
(d)標準物質:ポリスチレン
得られた化合物のIR結果を以下に示す。
IR(cm−1):1737、1681、1598、1496、1240、1172、754
また、3−フェノキシプロピレンスルフィドの量を変えて同様の条件で反応を行い、得られた化合物について以下の方法で屈折率を測定した。
種々のポリマー20mgを、テトラヒドロフラン2mlに溶解させ、この溶液0.2mlをシリコンウエハー上に滴下し、スピンコータ(浅沼製作所株式会社製)により塗布した。次いで、この溶液が塗布されたシリコンウエハーを室温で24時間減圧乾燥後、エリプソメータ(ガードナー社製、115B型)により波長632.8nmにおける屈折率測定を5回行い、最大値と最小値を除いた3回の測定値の平均を屈折率とした。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例4
下記式(9)で示される化合物(以下(9)と略す)を下記の方法で合成した。
【化21】

湿度10%以下に保ったドライボックス中で、アンプル管にテトラブチルアンモニウムクロリド0.033g(0.12mmol)、(7)0.033g(0.04mmol)、3−フェノキシプロピレンスルフィド(以下、スルフィドAという)0.590g(3.50mmol)、3−メタクリロイルオキシプロピレンスルフィド(以下、スルフィドBという)0.028g(0.11mmol)、N−メチルピロリドン0.04mlを加え封管した。アンプル管を90℃で24時間攪拌後、適当量のテトラヒドロフランを加え、メタノール中に再沈殿した。得られた固体を再びテトラヒドロフランに溶解し、メタノール100ml中に再沈殿し、(9)を黄色固体として0.631g(収率97%)得た。
得られた化合物の分子量を実施例3と同様にGPC法で測定したところ、数平均分子量8.0x10、分散度2.61であった。
得られた化合物のIR結果を以下に示す。
IR(cm−1):1737、1681、1598、1496、1240、1172、754
また、スルフィドAとスルフィドBの仕込み比を種々変えて反応を同様に行い、得られた化合物の屈折率を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
実施例5
(9)を用いて3次元硬化物を下記の方法で合成した。
(9)1.0gをテトラヒドロフラン1mlに溶解し、Irgacure907(0.003g)、2−エチルアントラキノン0.001gを加えた。溶液を臭化カリウム板上に塗布しフィルムを形成した。その後、光源として250W超高圧水銀灯を用いて15分間光照射を行い、3次元硬化物を得た。
また、スルフィドAとスルフィドBの仕込み比を種々変えて得られた化合物について光硬化反応を行い、得られた3次元硬化物の屈折率を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のフェノール誘導体を用いることにより、屈折率調整可能であり、高屈折率を有する樹脂を提供できる。また、光照射することでさらに高屈折率な硬化物が得ることができる。この樹脂は光学レンズ、光学フィルム、光学フィルムを用いた液晶表示装置等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるフェノール誘導体。
【化1】

(式(1)中、nは0〜3の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
【請求項2】
式(2)で表されるフェノール誘導体。
【化2】

(式(2)中、nは0〜3の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)
【請求項3】
式(3)で表されるフェノール誘導体。
【化3】

(式(3)中、nは0〜3の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
【請求項4】
式(4)で表されるフェノール誘導体。
【化4】

(式(4)中、nは0〜3の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、lは1〜1000の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよく、Xは酸素又は硫黄を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
【請求項5】
下記式で表されるフェノール誘導体にCl−R−COY(Rは式(1)と同じであり、Yはハロゲンである。)を反応させる請求項1記載のフェノール誘導体の製造方法。
【化5】

(式中、nは0〜3の整数を表し、Rは水素、−OH又は炭素数1〜10の1価のアルキル基を示す。)
【請求項6】
請求項1記載の誘導体にR−COS−Z(Rは式(2)と同じであり、Zはアルカリ金属である。)を反応させる請求項2記載のフェノール誘導体の製造方法。
【請求項7】
請求項2記載の誘導体に、下記式で表されるチイラン誘導体を反応させる請求項3記載のフェノール誘導体の製造方法。
【化6】

(式中、R及びRは式(3)と同じである。)
【請求項8】
請求項3記載の誘導体に、下記式で表されるエポキシ化合物又はチイラン化合物を反応させる請求項4記載のフェノール誘導体の製造方法。
【化7】

(式中、R、R及びXは式(4)と同じである。)
【請求項9】
重合性基を有する請求項3又は4記載のフェノール誘導体。
【請求項10】
請求項9記載のフェノール誘導体を含む化合物に加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって得られる3次元硬化物。
【請求項11】
請求項9記載のフェノール誘導体を含む化合物に加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって得られる3次元硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2007−22991(P2007−22991A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210503(P2005−210503)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】