説明

フォトレジスト用樹脂組成物の製造法

【課題】基板密着性やドライエッチング耐性を損なうことなくアルカリ可溶性機能が向上したフォトレジスト用樹脂組成物の製造法を提供する
【解決手段】酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bを有する重合体Xを含有する混合液に、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2に対応する単量体を61モル%以上含む単量体混合物Mを、重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体の微細加工などを行う際に用いるフォトレジスト用樹脂組成物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
すでに提案されているArFエキシマレーザー対応のフォトレジスト樹脂は、酸の作用によりアルカリ可溶となる単位とシリコンウエハーへの密着性を付与する単位が必須とされている。また、極性のある置換基を有する脂環式骨格を含む単位もドライエッチング耐性などを高める上で有用である(特許文献1,2等)。高いリソグラフィー性能を得るには、フォトレジスト樹脂(共重合体)を構成する単位中、酸の作用によりアルカリ可溶となる単位が多い方が良いと考えられるが、この単位が多いとシリコンウエハーへの密着性を付与する単位及び極性のある置換基を有する脂環式骨格を含む単位の比率が相対的に小さくなり、必要な諸機能が低下し、結果として微細なパターンを安定に且つ精度良く形成することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−26446号公報
【特許文献2】特開平9−73137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、基板密着性やドライエッチング耐性を損なうことなくアルカリ可溶性機能が向上したフォトレジスト用樹脂組成物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位と極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位とを有する重合体と、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位を主体とする重合体とを特定の割合で組み合わせて用いると、基板密着性やドライエッチング耐性を損なうことなくアルカリ可溶性機能を高めることができ、リソグラフィー性能を飛躍的に向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bを有する重合体Xを含有する混合液に、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2に対応する単量体を61モル%以上含む単量体混合物Mを、重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法、
酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位A1を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bを有する重合体Xを含有する混合液に、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位A2に対応する単量体を80モル%以上含む単量体混合物Mを、重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法、
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、環Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは環Zに結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、n個のRのうち少なくとも1つは、−COOR基を示す。前記Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1〜3の整数を示す)
脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2を61モル%以上含む重合体Yを含有する混合液に、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位単位A1に対応する単量体を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bに対応する単量体を含む単量体混合物Mを、単量体混合物M/重合体Y(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法、並びに
脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位A2を80モル%以上含む重合体Yを含有する混合液に、酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位単位A1に対応する単量体を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bに対応する単量体を含む単量体混合物Mを、単量体混合物M/重合体Y(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法である。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、環Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは環Zに結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、n個のRのうち少なくとも1つは、−COOR基を示す。前記Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1〜3の整数を示す)
【0011】
なお、本明細書では、「アクリル」と「メタクリル」とを「(メタ)アクリル」、「アクリロイル」と「メタクリロイル」とを「(メタ)アクリロイル」等と総称する場合がある。また、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の保護基としては、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位と極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位とを有する重合体と、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位を主体とする重合体とを特定の割合で組み合わせて用いるので、現像の際に現像液が後者の重合体の存在によって露光部位の塗膜に浸透しやすくなるためか、基板密着性やドライエッチング耐性を損なうことなくアルカリ可溶性機能を高めることができ、リソグラフィー性能を飛躍的に向上させることができる。そのため、このようなフォトレジスト用樹脂組成物を半導体の製造に用いることにより、微細なパターンを精度よく形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、重合体Xは、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bを有している。
【0014】
酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1としては、露光によって光酸発生剤から発生する酸により脱離してアルカリ現像液に対して可溶性を示すもの(酸脱離性基を有する繰り返し単位)であれば特に限定されず、例えば、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を含有し且つ酸の作用により脱離可能な基を有している(メタ)アクリル酸エステルに対応する繰り返し単位(炭素−炭素二重結合部位で重合した場合の繰り返し単位)などが挙げられる。「炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を含有し且つ酸の作用により脱離可能な基を有している(メタ)アクリル酸エステル」には、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有すると共に、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。前記脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。前記炭素数6〜20の脂環式炭化水素基は単環式炭化水素基であってもよく、多環式(橋かけ環式)炭化水素基であってもよい。このような(メタ)アクリル酸エステルに対応する単位の代表的な例として、前記式(Ia)、(Ib)で表される単位が例示される。
【0015】
また、「炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を含有し且つ酸の作用により脱離可能な基を有している(メタ)アクリル酸エステル」には、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有すると共に、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す)が直接又は連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルも含まれる。−COOR基のRにおける第3級炭化水素基としては、例えば、t−ブチル、t−アミル、2−メチル−2−アダマンチル、(1−メチル−1−アダマンチル)エチル基などが挙げられる。この第3級炭化水素基が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、C1−4アルキル基など)、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、オキソ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基などが挙げられる。また、Rにおけるテトラヒドロフラニル基には2−テトラヒドロフラニル基が、テトラヒドロピラニル基には2−テトラヒドロピラニル基が、オキセパニル基には2−オキセパニル基が含まれる。前記連結基としては、アルキレン基(例えば、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等)などが挙げられる。前記脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。前記炭素数6〜20の脂環式炭化水素基は単環式炭化水素基であってもよく、多環式(橋かけ環式)炭化水素基であってもよい。このような(メタ)アクリル酸エステルに対応する単位の代表的な例として、前記式(Ic)で表される単位が例示される。
【0016】
また、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1として、エステル結合を構成する酸素原子がラクトン環のβ位に結合し且つラクトン環のα位に少なくとも1つの水素原子を有する、ラクトン環を含む(メタ)アクリル酸エステルに対応する繰り返し単位(炭素−炭素二重結合部位で重合した場合の繰り返し単位)などを用いることも可能である。前記繰り返し単位A1は1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0017】
繰り返し単位A1としては、前記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位であるのが好ましい。式(Ia)〜(Ic)中、環Zにおける炭素数6〜20の脂環式炭化水素環は単環であっても、縮合環や橋かけ環等の多環であってもよい。代表的な脂環式炭化水素環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などが挙げられる。脂環式炭化水素環には、メチル基等のアルキル基(例えば、C1−4アルキル基など)、塩素原子等のハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、オキソ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基などの置換基を有していてもよい。環Zは多環の脂環式炭化水素環(橋かけ環式炭化水素環)であるのが好ましい。
【0018】
式(Ia)及び(Ib)中、R〜Rにおける炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素1〜6のアルキル基が挙げられる。式(Ic)中、Rにおけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素1〜20程度のアルキル基が挙げられる。Rにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基としては、例えば、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基としては、前記保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキレン基を介して結合している基などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいカルボキシル基としては、−COOR基などが挙げられる。前記Rは水素原子又はアルキル基を示し、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキル基などが挙げられる。Rにおいて、−COOR基のRは前記と同様である。
【0019】
前記極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bとしては、例えば、ラクトン環を含有する炭素数6〜20の脂環式炭化水素基[ラクトン環と単環又は多環(橋かけ環)の脂環式炭素環とが縮合した構造を有する基等]がエステル結合を構成する酸素原子に結合している(メタ)アクリル酸エステルに対応するモノマー単位(炭素−炭素二重結合部位で重合した場合の繰り返し単位)などが挙げられる。このような繰り返し単位の代表的な例として、前記式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)で表される単位が例示される。繰り返し単位Bは、極性基によりシリコンウエハーなどの基板に対する密着性を付与すると共に、脂環式骨格によりドライエッチング耐性を付与する。
【0020】
式(IIa)〜(IIe)中、R〜R30におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜13のアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基としては、例えば、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基としては、前記保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキレン基を介して結合している基などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいカルボキシル基としては、−COOR基などが挙げられる。Rは前記と同様である。
【0021】
重合体Xは、アルカリ可溶性(酸脱離性)、基板密着性、ドライエッチング耐性、レジスト溶剤への溶解性などの特性を損なわない範囲で、前記繰り返し単位A1及びB以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。このような繰り返し単位としては、繰り返し単位A2に対応する単量体及び繰り返し単位Bに対応する単量体と共重合可能な単量体に対応する単位であって、且つレジスト特性を損なわないようなものであれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体、マレイン酸又はその誘導体、フマル酸又はその誘導体、環状オレフィン類などに対応する単位が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸又はその誘導体としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基などの極性基を有する炭素数6〜20の脂環式炭化水素基(特に、橋かけ環式炭化水素基)がエステル結合を構成する酸素原子に結合している(メタ)アクリル酸エステル、ラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
重合体Xにおける前記繰り返し単位A1の含有量は1モル%以上61モル%未満であり、好ましくは10〜59モル%、さらに好ましくは20〜50モル%程度である。繰り返し単位A1の含有量が1モル%未満の場合には、アルカリ現像の際のレジスト膜の溶解性が不十分となり、解像度が低下し、微細なパターンを精度よく形成することが困難となる。また、繰り返し単位A1の含有量が61モル%以上の場合には、基板密着性やドライエッチング耐性が低下し、現像によりパターンが剥がれて残らないという問題が起こりやすい。
【0023】
重合体Xにおける前記繰り返し単位Bの含有量は、通常20〜90モル%、好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは40〜70モル%程度である。繰り返し単位Bの含有量が20モル%未満の場合には基板密着性やドライエッチング耐性が低下しやすくなり、90モル%を超えるとアルカリ可溶性単位の導入量が少なくなることから、アルカリ現像の際のレジスト膜の溶解性が不十分になりやすい。
【0024】
重合体Xの重量平均分子量(Mw)は、例えば1000〜500000程度、好ましくは3000〜50000程度であり、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.5〜2.5程度である。なお、前記Mnは数平均分子量を示し、Mn、Mwともにポリスチレン換算の値である。
【0025】
重合体Xは、各繰り返し単位に対応するモノマーの混合物を共重合することにより得ることができる。例えば、前記式(Ia)〜(Ic)、(IIa)〜(IIe)で表される各繰り返し単位は、それぞれ対応する(メタ)アクリル酸エステルをコモノマーとして重合に付すことにより形成できる。
【0026】
[式(Ia)〜(Ic)で表される繰り返し単位]
前記式(Ia)〜(Ic)で表される繰り返し単位に対応するモノマーは、それぞれ下記式(1a)〜(1c)で表される。式(1a)〜(1c)で表される化合物には、それぞれ立体異性体が存在しうるが、それらは単独で又は2種以上の混合物として使用できる。
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、環Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは環Zに結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、n個のRのうち少なくとも1つは、−COOR基を示す。前記Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1〜3の整数を示す)
【0029】
式(1a)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[1−1]2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CH、Z=アダマンタン環)
[1−2]1−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CH、Z=1位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−3]5−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CH、Z=5位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−4]1,3−ジヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CH、Z=1位と3位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−5]1,5−ジヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CH、Z=1位と5位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−6]1,3−ジヒドロキシ−6−(メタ)アクリロイルオキシ−6−メチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CH、Z=1位と3位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−7]2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CHCH、Z=アダマンタン環)
[1−8]1−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CHCH、Z=1位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−9]5−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CHCH、Z=5位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−10]1,3−ジヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CHCH、Z=1位と3位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−11]1,5−ジヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CHCH、Z=1位と5位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−12]1,3−ジヒドロキシ−6−(メタ)アクリロイルオキシ−6−エチルアダマンタン(R=H又はCH、R=CHCH、Z=1位と3位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
【0030】
上記式(1a)で表される化合物は、例えば、対応する環式アルコールと(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体とを、酸触媒やエステル交換触媒を用いた慣用のエステル化法に従って反応させることにより得ることができる。
【0031】
式(1b)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[1−13]1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(R=H又はCH、R=R=CH、Z=アダマンタン環)
[1−14]1−ヒドロキシ−3−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(R=H又はCH、R=R=CH、Z=1位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−15]1−(1−エチル−1−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=R=CHCH、Z=アダマンタン環)
[1−16]1−ヒドロキシ−3−(1−エチル−1−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=R=CHCH、Z=1位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−17]1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=CH、R=CHCH、Z=アダマンタン環)
[1−18]1−ヒドロキシ−3−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=CH、R=CHCH、Z=1位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−19]1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=CH、R=CH(CH、Z=アダマンタン環)
[1−20]1−ヒドロキシ−3−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=CH、R=CH(CH、Z=1位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−21]1,3−ジヒドロキシ−5−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(R=H又はCH、R=R=CH、Z=1位と3位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−22]1−(1−エチル−1−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−3,5−ジヒドロキシアダマンタン(R=H又はCH、R=R=CHCH、Z=3位と5位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−23]1,3−ジヒドロキシ−5−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=CH、R=CHCH、Z=1位と3位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
[1−24]1,3−ジヒドロキシ−5−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン(R=H又はCH、R=CH、R=CH(CH、Z=1位と3位にヒドロキシル基を有するアダマンタン環)
【0032】
上記式(1b)で表される化合物は、例えば、対応する1位に脂環式基を有するメタノール誘導体と(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体とを、酸触媒やエステル交換触媒を用いた慣用のエステル化法に従って反応させることにより得ることができる。
【0033】
式(1c)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[1−25]1−t−ブトキシカルボニル−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン(R=H又はCH、R=t−ブトキシカルボニル基、n=1、Z=アダマンタン環)
[1−26]1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン[R=H又はCH、R=t−ブトキシカルボニル基、n=2、Z=アダマンタン環]
[1−27]1−t−ブトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン(R=H又はCH、R=OH,t−ブトキシカルボニル基、n=2、Z=アダマンタン環)
[1−28]1−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン(R=H又はCH、R=2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、n=1、Z=アダマンタン環)
[1−29]1,3−ビス(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン(R=H又はCH、R=2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、n=2、Z=アダマンタン環)
[1−30]1−ヒドロキシ−3−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン(R=H又はCH、R=OH,2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、n=2、Z=アダマンタン環)
【0034】
上記式(1c)で表される化合物は、例えば、対応する環式アルコールと(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体とを、酸触媒やエステル交換触媒を用いた慣用のエステル化法に従って反応させることにより得ることができる。
【0035】
[式(IIa)〜(IIe)で表される繰り返し単位]
前記式(IIa)〜(IIe)で表される繰り返し単位に対応するモノマーは、それぞれ下記式(2a)〜(2e)で表される。式(2a)〜(2e)で表される化合物には、それぞれ立体異性体が存在しうるが、それらは単独で又は2種以上の混合物として使用できる。
【0036】
【化4】

【0037】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示し、V〜Vは、同一又は異なって、−CH−、−CO−又は−COO−を示す。但し、V〜Vのうち少なくとも1つは−COO−である。R〜R12は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。R13〜R21は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。R22〜R30は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す)
【0038】
式(2a)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[2−1]1−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキソアダマンタン(R=H又はCH、R=R=R=H、V=−CO−、V=V=−CH−)
[2−2]1−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−5−オン(R=H又はCH、R=R=R=H、V=−CO−O−(左側がRの結合している炭素原子側)、V=V=−CH−)
[2−3]1−(メタ)アクリロイルオキシ−4,7−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−5,8−ジオン(R=H又はCH、R=R=R=H、V=−CO−O−(左側がRの結合している炭素原子側)、V=−CO−O−(左側がRの結合している炭素原子側)、V3=−CH−)
[2−4]1−(メタ)アクリロイルオキシ−4,8−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−5,7−ジオン(R=H又はCH、R=R=R=H、V=−O−CO−(左側がRの結合している炭素原子側)、V=−CO−O−(左側がRの結合している炭素原子側)、V=−CH−)
[2−5]1−(メタ)アクリロイルオキシ−5,7−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−4,8−ジオン(R=H又はCH、R=R=R=H、V=−CO−O−(左側がRの結合している炭素原子側)、V=−O−CO−(左側がR6の結合している炭素原子側)、V=−CH−)
【0039】
上記式(2a)で表される化合物は、対応する環式アルコール誘導体と(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体とを、酸触媒やエステル交換触媒を用いた慣用のエステル化法に従って反応させることにより得ることができる。
【0040】
式(2b)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[2−6]5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)(R=H又はCH、R=R=R10=R11=R12=H)
[2−7]5−(メタ)アクリロイルオキシ−5−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(R=H又はCH、R=CH、R=R10=R11=R12=H)
[2−8]5−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(R=H又はCH、R=CH、R=R10=R11=R12=H)
[2−9]5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(R=H又はCH、R10=CH、R=R=R11=R12=H)
[2−10]5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−カルボキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(R=H又はCH、R=R=R11=R12=H、R10=COOH)
[2−11]5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−メトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(R=H又はCH、R=R=R11=R12=H、R10=メトキシカルボニル基)
[2−12]5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−エトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(R=H又はCH、R=R=R11=R12=H、R10=エトキシカルボニル基)
[2−13]5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−t−ブトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(R=H又はCH、R=R=R11=R12=H、R10=t−ブトキシカルボニル基)
【0041】
上記式(2b)で表される化合物は、対応する環式アルコール誘導体と(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体とを、酸触媒やエステル交換触媒を用いた慣用のエステル化法に従って、反応させることにより得ることができる。なお、その際に原料として用いる環式アルコール誘導体は、例えば、対応する5−ノルボルネン−2−カルボン酸誘導体又はそのエステルを過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)又は過酸化物(過酸化水素、過酸化水素+酸化タングステンやタングステン酸などの金属化合物)と反応(エポキシ化及び環化反応)させることにより得ることができる。
【0042】
式(2c)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[2−14]8−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン(R=H又はCH
[2−15]9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン(R=H又はCH
【0043】
上記式(2c)で表される化合物は、対応する環式アルコール誘導体と(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体とを、酸触媒やエステル交換触媒を用いた慣用のエステル化法に従って反応させることにより得ることができる。
【0044】
式(2d)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[2−16]4−(メタ)アクリロイルオキシ−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(R=H又はCH、R13=R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=R21=H)
[2−17]4−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メチル−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(R=H又はCH、R14=R15=R16=R17=R18=R19=R20=R21=H、R13=CH
[2−18]4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−メチル−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(R=H又はCH、R13=R15=R16=R17=R18=R19=R20=R21=H、R14=CH
[2−19]4−(メタ)アクリロイルオキシ−4,5−ジメチル−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン(R=H又はCH、R15=R16=R17=R18=R19=R20=R21=H、R13=R14=CH
【0045】
式(2e)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[2−20]6−(メタ)アクリロイルオキシ−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(R=H又はCH、R22=R23=R24=R25=R26=R27=R28=R29=R30=H)
[2−21]6−(メタ)アクリロイルオキシ−6−メチル−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(R=H又はCH、R22=R24=R25=R26=R27=R28=R29=R30=H、R23=CH
[2−22]6−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチル−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(R=H又はCH、R23=R24=R25=R26=R27=R28=R29=R30=H、R22=CH
[2−23]6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,6−ジメチル−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(R=H又はCH、R24=R25=R26=R27=R28=R29=R30=H、R22=R23=CH
【0046】
上記式(2d)及び(2e)で表される化合物は、対応する環式アルコール誘導体と(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体とを、酸触媒やエステル交換触媒を用いた慣用のエステル化法に従って反応させることにより得ることができる。
【0047】
重合体Xを得るに際し、モノマー混合物の重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合など、アクリル系ポリマーを製造する際に用いる慣用の方法により行うことができるが、特に、溶液重合が好適である。さらに、溶液重合のなかでも滴下重合が好ましい。滴下重合は、具体的には、例えば、(i)予め有機溶媒に溶解した単量体溶液と、有機溶媒に溶解した重合開始剤溶液とをそれぞれ調製し、一定温度に保持した有機溶媒中に前記単量体溶液と重合開始剤溶液とを各々滴下する方法、(ii)単量体と重合開始剤とを有機溶媒に溶解した混合溶液を、一定温度に保持した有機溶媒中に滴下する方法、(iii)予め有機溶媒に溶解した単量体溶液と、有機溶媒に溶解した重合開始剤溶液とをそれぞれ調製し、一定温度に保持した前記単量体溶液中に重合開始剤溶液を滴下する方法などの方法により行われる。
【0048】
重合溶媒としては公知の溶媒を使用でき、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル類などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、これらの混合溶媒などが挙げられる。また、重合開始剤として公知の重合開始剤を使用できる。重合温度は、例えば30〜150℃程度の範囲で適宜選択できる。
【0049】
重合により得られたポリマーは、沈殿又は再沈殿により精製できる。沈殿又は再沈殿溶媒は有機溶媒及び水の何れであってもよく、また混合溶媒であってもよい。沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、これらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0050】
中でも、前記沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素)を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、炭化水素(例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素)と他の溶媒(例えば、酢酸エチルなどのエステル類等)との比率は、例えば前者/後者(体積比;25℃)=10/90〜99/1、好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=30/70〜98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=50/50〜97/3程度である。
【0051】
本発明において、重合体Yは、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2を61モル%以上(61〜100モル%)含んでいる。脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2としては、前記繰り返し単位A1として例示したもののうち脂環式骨格を有する単位を用いることができる。繰り返し単位A1と繰り返し単位A2は同一であってもよく、異なっていてもよい。前記繰り返し単位A2は1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。前記脂環式骨格としては特に多環の脂環式骨格(橋かけ環式骨格)が好ましい。
【0052】
繰り返し単位A2としては、前記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位であるのが好ましい。また、式(Ia)〜(Ic)における環Zは、ドライエッチング耐性等を高める観点から、多環の脂環式炭化水素環(橋かけ環式炭化水素環)であるのが特に好ましい。
【0053】
重合体Yにおける繰り返し単位A2の含有量は、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に90モル%以上であるのが好適である。重合体Yにおいて、繰り返し単位A2以外の繰り返し単位としては、繰り返し単位A2に対応する単量体と共重合可能な単量体に対応する単位であって、且つレジスト特性を損なわないようなものであれば特に限定されない。例えば、重合体Xにおいて、繰り返し単位B、繰り返し単位A1及びB以外の繰り返し単位として例示した単位などが挙げられる。
【0054】
重合体Yの重量平均分子量(Mw)は、例えば1000〜500000程度、好ましくは3000〜50000程度であり、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.5〜2.5程度である。重合体Yは、各繰り返し単位に対応するモノマー又はモノマー混合物を(共)重合することにより得ることができる。例えば、前記式(Ia)〜(Ic)で表される各繰り返し単位は、それぞれ対応する(メタ)アクリル酸エステルをコモノマーとして重合に付すことにより形成できる。
【0055】
重合体Yの合成方法及び精製方法としては前記重合体Xの場合と同様の方法を採用できる。
【0056】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、前記重合体Xと重合体Yとを、重合体X/重合体Y(重量比)=75/25〜99/1の割合で含んでいる。この割合が75/25よりも小さいと、基板密着性やドライエッチング耐性が低下し、現像によりパターンが剥がれて残らないという問題が起こりやすい。また、この割合が99/1より大きいと、アルカリ現像の際のレジスト膜の溶解性が不十分となり、解像度が低下し、微細なパターンを精度よく形成することが困難となる。前記割合は、好ましくは75/25〜95/5であり、さらに好ましくは80/20〜93/7程度である。
【0057】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、レジスト性能を損なわない範囲で、前記重合体X及び重合体Y以外のポリマーを含んでいてもよい。このような重合体X及び重合体Y以外のポリマーの割合は、通常、全ポリマーの30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0058】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、通常、光酸発生剤を含んでいる。光酸発生剤としては、露光により効率よく酸を生成する慣用乃至公知の化合物、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェートなど)、スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネートなど)、スルホン酸エステル[例えば、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、1,2,3−トリスルホニルオキシメチルベンゼン、1,3−ジニトロ−2−(4−フェニルスルホニルオキシメチル)ベンゼン、1−フェニル−1−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)−1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルメタンなど]、オキサチアゾール誘導体、s−トリアジン誘導体、ジスルホン誘導体(ジフェニルジスルホンなど)、イミド化合物、オキシムスルホネート、ジアゾナフトキノン、ベンゾイントシレートなどを使用できる。これらの光酸発生剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
光酸発生剤の使用量は、光照射により生成する酸の強度やポリマーおける各繰り返し単位の比率などに応じて適宜選択でき、例えば、ポリマー100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度の範囲から選択できる。
【0060】
フォトレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシル基含有樹脂など)などのアルカリ可溶成分、着色剤(例えば、染料など)、有機溶媒(例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、アミド類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、グリコールエーテルエステル類、これらの混合溶媒など)などを含んでいてもよい。
【0061】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、例えば、下記の方法により調製できる。
【0062】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物の第1の製造法は、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bを有する重合体Xを含有する混合液に、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2に対応する単量体を61モル%以上含む単量体混合物Mを、重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含んでいる。
【0063】
より具体的には、例えば、前記の方法により合成した重合体Xの有機溶媒溶液(重合体Xの重合後の反応液、精製した重合体Xを有機溶媒に溶解した溶液など)に、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2に対応する単量体を61モル%以上含む単量体混合物Mを、重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加え、上記方法(滴下重合法など)により重合させ、これに光酸発生剤などを添加することにより、或いは、得られたポリマーを精製した後、光酸発生剤などとともに適宜な有機溶媒に溶解させることにより、フォトレジスト用樹脂組成物を調製することができる。
【0064】
単量体混合物Mにおいて、繰り返し単位A2に対応する単量体の含有量は、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に90モル%以上であるのが好適である。繰り返し単位A2に対応する単量体以外の単量体としては、繰り返し単位A2に対応する単量体と共重合可能な単量体であって、且つレジスト特性を損なわないようなものであれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体、マレイン酸又はその誘導体、フマル酸又はその誘導体、環状オレフィン類などが挙げられる。(メタ)アクリル酸又はその誘導体としては前記のものが例示できる。重合体Xと単量体混合物Mの比率は、好ましくは重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜95/5であり、さらに好ましくは80/20〜93/7程度である。
【0065】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物の第2の製造法は、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2を61モル%以上含む重合体Yを含有する混合液に、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1に対応する単量体を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bに対応する単量体を含む単量体混合物Mを、単量体混合物M/重合体Y(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含んでいる。
【0066】
より具体的には、例えば、前記の方法により調製した重合体Yの有機溶媒溶液(重合体Yの重合後の反応液、精製した重合体Yを有機溶媒に溶解した溶液など)に、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1に対応する単量体を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bに対応する単量体を含む単量体混合物Mを単量体混合物M/重合体Y(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加え、上記方法(滴下重合法など)により重合させ、これに光酸発生剤などを添加することにより、或いは、得られたポリマーを精製した後、光酸発生剤などとともに適宜な有機溶媒に溶解させることによりフォトレジスト用樹脂組成物を調製することができる。
【0067】
単量体混合物Mにおいて、繰り返し単位A1に対応する単量体の含有量は、好ましくは10〜59モル%、さらに好ましくは20〜50モル%程度である。また、繰り返し単位Bに対応する単量体の含有量は、通常20〜90モル%、好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは40〜70モル%程度である。単量体混合物Mと重合体Yの比率は、好ましくは単量体混合物M/重合体Y(重量比)=75/25〜95/5であり、さらに好ましくは80/20〜93/7程度である。
【0068】
こうして得られるフォトレジスト用樹脂組成物を基材又は基板上に塗布し、乾燥した後、所定のマスクを介して、塗膜(レジスト膜)に光線を露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いで現像することにより、微細なパターンを高い精度で形成できる。
【0069】
基材又は基板としては、シリコンウエハ、金属、プラスチック、ガラス、セラミックなどが挙げられる。フォトレジスト用樹脂組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータなどの慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば0.1〜20μm、好ましくは0.3〜2μm程度である。
【0070】
露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、半導体レジスト用では、通常、g線、i線、エキシマレーザー(例えば、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArClなど)などが使用される。露光エネルギーは、例えば1〜1000mJ/cm、好ましくは10〜500mJ/cm程度である。
【0071】
光照射により光酸発生剤から酸が生成し、この酸により、例えば前記ポリマーの酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位(酸脱離性基を有する繰り返し単位=アルカリ可溶性ユニット)のカルボキシル基等の保護基(脱離性基)が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシル基等が生成する。そのため、水又はアルカリ現像液による現像により、所定のパターンを精度よく形成できる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、化合物番号(モノマー番号)の後ろに「アクリレート」とあるのは、明細書中に記載の化合物番号に相当する2つの化合物のうちアクリロイルオキシ基を有する化合物を示し、「メタクリレート」とあるのは、前記2つの化合物のうちメタクリロイルオキシ基を有する化合物を示す。重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、検出器として屈折率計(RI)を用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC測定により、標準ポリスチレン換算で求めた。GPC測定は昭和電工(株)製カラム「KF−806L」(商品名)を3本直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、RI温度40℃、溶離液の流速0.8ml/分の条件で行った。
【0073】
実施例1
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)を70g入れ、この中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン[化合物番号[1−13](メタクリレート)]4.00g(15.2ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]0.37g(1.66ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)0.23g、及びTHF18gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。
次いで、この反応液中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン[化合物番号[1−13](メタクリレート)]20.3g(77.4ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]17.2g(77.4ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)1.90g、及びTHF150gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、室温に冷却した。
反応液(重合液)に酢酸エチル160gを加えた後、この溶液をヘキサン1900g中に落とし、生じた沈殿物を濾別し、ヘキサン200gで2回リンスし、減圧乾燥することにより、所望の樹脂34.7gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が9000、分子量分布(Mw/Mn)が1.9であった。
【0074】
実施例2
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)を70g入れ、この中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン[化合物番号[1−1](メタクリレート)]3.16g(13.5ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]0.74g(3.32ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)0.23g、及びTHF18gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。
次いで、この反応液中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン[化合物番号[1−1](メタクリレート)]18.1g(77.4ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]17.2g(77.4ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)1.90g、及びTHF150gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、室温に冷却した。
反応液(重合液)に酢酸エチル160gを加えた後、この溶液をヘキサン1900g中に落とし、生じた沈殿物を濾別し、ヘキサン200gで2回リンスし、減圧乾燥することにより、所望の樹脂33.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8900、分子量分布(Mw/Mn)が1.9であった。
【0075】
実施例3
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)を70g入れ、この中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン[化合物番号[1−1](メタクリレート)]3.16g(13.5ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]0.74g(3.32ミリモル)、1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン1.00g(4.23ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)0.23g、及びTHF18gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。
次いで、この反応液中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン[化合物番号[1−1](メタクリレート)]12.1g(51.6ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]11.5g(51.6ミリモル)、1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン12.2g(51.6ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)1.90g、及びTHF150gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、室温に冷却した。
反応液(重合液)に酢酸エチル160gを加えた後、この溶液をヘキサン1900g中に落とし、生じた沈殿物を濾別し、ヘキサン200gで2回リンスし、減圧乾燥することにより、所望の樹脂33.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8600、分子量分布(Mw/Mn)が1.8であった。
【0076】
実施例4
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)を70g入れ、この中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン[化合物番号[1−1](メタクリレート)]31.6g(135ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]7.40g(33.2ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)2.3g、及びTHF180gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、室温に冷却した。得られた反応液を反応液1とする。
別に、還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)を70g入れ、この中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン[化合物番号[1−1](メタクリレート)]18.1g(77.4ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]17.2g(77.4ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)1.90g、及びTHF150gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、室温に冷却した。得られた反応液を反応液2とする。
反応液1を29gと反応液2の全量を混合し、この混合液に酢酸エチル160gを加えた。得られた溶液をヘキサン1900g中に落とし、生じた沈殿物を濾別し、ヘキサン200gで2回リンスし、減圧乾燥することにより、所望の樹脂33.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8900、分子量分布(Mw/Mn)が1.9であった。
【0077】
比較例1
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコにTHF(テトラヒドロフラン)を70g入れ、この中に、窒素雰囲気下、反応系の温度を60℃に保ちながら、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン[化合物番号[1−13](メタクリレート)]20.3g(77.4ミリモル)、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン)[化合物番号[2−6](メタクリレート)]17.2g(77.4ミリモル)、開始剤(和光純薬工業製「V−601」;ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート)1.90g、及びTHF150gの混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、室温に冷却した。
反応液(重合液)に酢酸エチル160gを加えた後、この溶液をヘキサン1900g中に落とし、生じた沈殿物を濾別し、ヘキサン200gで2回リンスし、減圧乾燥することにより、所望の樹脂32.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量(Mw)が8500、分子量分布(Mw/Mn)が1.9であった。
【0078】
評価試験
上記実施例及び比較例で得られた各ポリマーについて、ポリマー100重量部とトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート3重量部及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン2重量部をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)と混合して、ポリマー濃度15重量%のフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。得られた組成物を0.1μmのミクロフィルターで濾過し、シリコンウエハー上にスピンコーティング法により塗布し、厚み約0.4μmの感光層を形成した。それにマスクを介して、波長193nmのArFエキシマレーザーで露光した後、温度120℃で90秒間加熱処理を行い、0.3Mのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像し、純水でリンスした。その結果、実施例のポリマーを用いた場合は何れも、0.15μmのライン・アンド・スペースパターンが鮮明に精度良く得られたが、比較例のポリマーを用いた場合には、該パターンの精度は悪く鮮明さに欠けていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A1を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bを有する重合体Xを含有する混合液に、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2に対応する単量体を61モル%以上含む単量体混合物Mを、重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法。
【請求項2】
酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位A1を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bを有する重合体Xを含有する混合液に、脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位A2に対応する単量体を80モル%以上含む単量体混合物Mを、重合体X/単量体混合物M(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法。
【化1】

(式中、環Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは環Zに結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、n個のRのうち少なくとも1つは、−COOR基を示す。前記Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1〜3の整数を示す)
【請求項3】
脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位A2を61モル%以上含む重合体Yを含有する混合液に、酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位単位A1に対応する単量体を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bに対応する単量体を含む単量体混合物Mを、単量体混合物M/重合体Y(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法。
【請求項4】
脂環式骨格を有し且つ酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位A2を80モル%以上含む重合体Yを含有する混合液に、酸の作用によりアルカリ可溶となる、下記式(Ia)〜(Ic)から選択された少なくとも1種の繰り返し単位単位A1に対応する単量体を1モル%以上61モル%未満含み且つ極性基及び脂環式骨格を有する繰り返し単位Bに対応する単量体を含む単量体混合物Mを、単量体混合物M/重合体Y(重量比)=75/25〜99/1となるような量だけ加えて重合させる工程を含むフォトレジスト用樹脂組成物の製造法。
【化2】

(式中、環Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは環Zに結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、n個のRのうち少なくとも1つは、−COOR基を示す。前記Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1〜3の整数を示す)

【公開番号】特開2009−155661(P2009−155661A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99545(P2009−99545)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【分割の表示】特願2003−41752(P2003−41752)の分割
【原出願日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】