説明

フォトレジスト組成物用の成膜性樹脂の製造方法

【課題】 フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに好適な成膜性樹脂の提供。
【解決手段】 本発明は、フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに適した成膜性樹脂の製造方法であって、溶剤中の成膜性樹脂の溶液を少なくとも二種のフィルターシートに通し、この際、一方のフィルターシートは、粒状強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂を含み、他方のフィルターシートは、粒状強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂を含むものであり、そして前記フィルターシートを、前記の溶液の調製に使用した溶剤ですすぎ、そして成膜性樹脂の溶液を、上記の第一のフィルターシート、次いで上記の第二のフィルターシートに通すことを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィ用組成物、例えばフォトレジストもしくは反射防止膜組成物に使用するのに適した成膜性樹脂の製造方法を提供する。本方法は、金属イオン不純物、痕跡遊離酸及び/またはゲルを含む成膜性樹脂を、以下に記載の一つもしくはそれ以上のフィルターシートに通して、金属イオン不純物、痕跡遊離酸及び/またはゲルを成膜性樹脂から除去することを含む。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト組成物は、微細化された電子部品を製造するためのマイクロリソグラフィプロセス、例えばコンピュータチップ及び集積回路の製造において使用されている。これらのプロセスでは、一般的に、先ずフォトレジスト組成物のフィルムの薄い被膜を、例えば集積回路を製造するために使用されるシリコンウェハなどの基材にコーティングする。このコーティングされた基材を次いでベーク処理してフォトレジスト組成物中の溶剤を蒸発させ、そして基材上に被膜を定着させる。このコーティング、ベーク処理された基材表面を次に放射線による像様露光に付す。
【0003】
この放射線露光は、コーティングされた表面の露光された領域において化学的な変化を引き起こす。可視光線、紫外線(UV)、電子ビーム及びX線放射エネルギーが、現在マイクロリソグラフィプロセスにおいて常用されている放射線種である。この像様露光の後、このコーティングされた基材を現像剤溶液で処理して、基材のコーティングされた表面の放射線露光された領域(ポジ型フォトレジストの場合)または未露光の領域(ネガ型フォトレジストの場合)のいずれかを溶解除去する。
【0004】
金属イオン汚染は、高密度集積回路、コンピュータハードドライブ及びコンピュータチップの製造において昔からの問題であり、しばしば欠陥の増加、収量損失、劣化、及び性能低下を招く。プラズマプロセスでは、ナトリウム及び鉄などの金属イオンがフォトレジスト中に存在すると、特にプラズマ剥離の際に汚染を招く恐れがある。しかし、これらの問題は、例えば、高温アニールサイクルの間に汚染物のHClゲッタリングを利用することによって、製造プロセスにおいて実質的な程度で解決することができる。成膜性樹脂を製造する際には、樹脂及び/または樹脂溶液中には遊離酸が残存する。ゲル粒子の発生もまた問題である。なぜならば、ゲルの存在は、フォトレジストや他の電子材料、例えば反射防止膜、ハードマスクコーティング、層間コーティング及びフィルレイヤーコーティングの不良の原因となるからである。
【0005】
電子デバイスがより精巧なものとなっているため、これらの問題は、解決するのがかなりより困難になっている。シリコンウェハを液状ポジ型フォトレジストでコーティングし、次いで例えば酸素マイクロ波プラズマを用いて剥離する際には、半導体デバイスの性能及び安定性が、非常に低レベルの金属イオンと思われるものの存在によって低下することがしばしば観察される。プラズマ剥離工程を繰り返す程に、デバイスのより大きな劣化がしばしば起こる。これらの問題の主な原因の一つは、フォトレジスト中の金属イオン汚染物、特にナトリウム及び鉄イオンであることが判明している。フォトレジスト中の100ppb(10億分率)未満の金属イオン濃度が、このような電子デバイスの性質に悪影響を及ぼすこともあることが分かっている。フォトレジスト組成物中の不純物濃度は、これまで、また現在も、(1)厳しい不純物濃度規格を充たす、フォトレジスト組成物用の材料を選択すること、及び(2)フォトレジスト組成物中に不純物が入り込まないように、フォトレジストの調合及びプロセスパラメータを注意深く管理することによって管理されている。フォトレジストの用途の進展の故に、不純物に関してのより厳格な規格を定めなければならない。
【0006】
液状フォトレジスト調合物中のポリマー性バインダーとしては、成膜性樹脂(例えば、成膜性ノボラック樹脂及びビニルフェノール樹脂)がしばしば使用される。精巧な半導体及び他の微細電子デバイスを製造するにあたっては、各金属イオン汚染レベルが各々50ppbよりも低い成膜性樹脂を提供することが益々重要な事柄となっている。本発明は、このような金属イオン濃度が非常に低い成膜性樹脂を製造するための方法を提供するものである。
【0007】
フォトレジスト組成物には、ネガ型とポジ型の二つのタイプのものがある。ネガ型フォトレジスト組成物を放射線で像様露光すると、放射線に曝された領域のレジスト組成物が現像剤溶液に溶けにくくなり(例えば架橋反応が起こる)、他方、未露光の領域のフォトレジスト被膜はこのような溶液に対して比較的可溶性のまま残る。それゆえ、露光されたネガ型レジストを現像剤で処理すると、フォトレジスト被膜の未露光の領域が除去されて被膜にネガ型の像が形成され、それによってフォトレジスト組成物が付着していたその下にある基材表面の所望の部分が裸出される。
【0008】
これに対し、ポジ型フォトレジスト組成物を放射線で像様露光すると、放射線に曝された領域のフォトレジスト組成物が現像剤溶液に溶けやすくなり(例えば転位反応が起こる)、他方、未露光の領域は現像剤溶液に対して比較的不溶性のまま残る。それゆえ、露光されたポジ型フォトレジストを現像剤で処理すると、被膜の露光された領域が除去されて、フォトレジスト被膜にポジ型の像が形成される。この場合も、下にある基材表面の所望の部分が裸出される。
【0009】
この現像処理の後、今や部分的に非保護の基材を、基体エッチング液またはプラズマガス等のもので処理することができる。このエッチング液またはプラズマガスは、現像の時にフォトレジスト被膜が除去された部分の基材をエッチングする。フォトレジスト被膜がなお残る基材領域は保護され、それゆえ、放射線による像様露光に使用されたフォトマスクに対応するエッチングされたパターンが基材に形成される。その後、残った領域のフォトレジスト被膜は剥離工程で除去することができ、こうして鮮明にエッチングされた基材表面が得られる。場合により、現像段階の後に、ただしエッチング段階の前に、残ったフォトレジスト層を熱処理して、下にある基材への層の粘着とエッチング液に対する層の耐性を高めることが望ましい。
【0010】
ポジ型フォトレジストは、一般的に、ネガ型レジストよりも解像能力及びパターン転写特性に優れるために、現在、ポジ型フォトレジスト組成物の方が優勢である。フォトレジスト解像度とは、レジスト組成物が、露光及び現像の後に、高いレベルの鋭い像縁をもってフォトマスクから基材へと転写できる最小の図形と定義される。現在、多くの製造用途では、1ミクロン未満のオーダーのレジスト解像度がごく当たり前になっている。加えて、現像されたフォトレジスト壁の側面が、基材に対してほぼ垂直であることが殆どの場合において望ましい。レジスト被膜の現像された領域と現像されていない領域との間のこのような明確な境界画定が、基材へのマスク像の正確なパターン転写につながる。
【0011】
フォトレジストともにしばしば反射防止膜が使用される。波長が短いほどに、基材からの反射が、フォトレジストのリソグラフィ性能にとって益々有害なものとなる。それゆえ、これらの波長では、反射防止膜が有用となる。
【0012】
フォトリソグラフィにおける高吸光性の反射防止膜の使用は、高反射性基材からの光の後方反射(back reflection)を原因とする問題を軽減するためのより簡単なアプローチである。後方反射から被る不利益のうちの主な二つは、薄膜干渉効果と反射ノッチングである。薄膜干渉または定在波は、レジストの厚さが変化すると、レジスト膜中の全光強度が変動することで臨界線幅寸法を変化させるという結果を招く。反射ノッチングは、フォトレジストフィルム中に光を散乱させるようなトポグラフィ図形を含む基材上にパターン形成する際にひどくなり、線幅の変動をまねき、極端な場合には、完全にフォトレジストが失われた領域を生じさせる。
【0013】
底面反射防止膜の使用は、反射の除去のための最良の解決策である。底面反射防止膜は基材上に敷かれ、次いでフォトレジスト層がこの反射防止膜の上に敷かれる。このフォトレジストは像様露光され、そして現像される。次いで、露光された領域の反射防止膜は典型的にはエッチングされて、こうしてフォトレジストパターンが基材に転写される。従来技術において既知の反射防止膜の多くは、ドライエッチングされるように設計されている。反射防止膜のエッチング速度は、エッチング工程の間にレジスト膜が過度に損失されることなく反射防止膜がエッチングされるように、フォトレジストと比べて比較的速いものである必要がある。
【0014】
底面反射防止膜の他に、上面反射防止膜も、ドライ及び液浸リソグラフィの両方で使用することができる。上面反射防止膜組成物は、露光の後に現像溶液に高可溶性であり、それゆえパターンの形成に影響を及ぼさない範囲において、上面反射防止膜の形成に使用できるような光透過率が高いポリマーを含む。
【0015】
米国特許第6,103,122号明細書は、粒状濾過助剤及び粒状イオン交換樹脂が中に不動化されている自己支持性の繊維質マトリックスを含むフィルターシートを開示している。この際、前記の粒状濾過助剤及び粒状イオン交換樹脂は、上記のマトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布している。フォトレジスト溶液を上記フィルターシートに通してそこからイオン性不純物を除去することを含む、フォトレジスト溶液からイオン性不純物を除去する方法もこの特許に開示されている。米国特許第6,610,465号明細書は、樹脂を、二種のフィルターシートのうちの少なくとも一つに通し、この際、一つのフィルターシートは粒状イオン交換樹脂を含み、他方は含まない、成膜性樹脂の製造方法を開示している。
【特許文献1】米国特許第6,103,122号明細書
【発明の開示】
【0016】
[発明の概要]
本発明は、フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに好適な成膜性樹脂の製造方法であって、
(a) 溶剤中の成膜性樹脂の溶液を用意すること、
(b) 以下のフィルターシートのうちの少なくとも二つを用意すること、
(i) 自己支持性繊維質マトリックスを含むフィルターシートであって、その繊維質マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂を有しており、この際、前記の粒状濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び前記の強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂粒子は、前記マトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布しているフィルターシート; 及び
(ii) 自己支持性の繊維マトリックスを含むフィルターシートであって、その繊維マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂を有し、この際、前記濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び前記強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂粒子は、前記マトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布しているフィルターシート;
(c) 段階(b)のフィルターシートを、段階(a)の溶剤ですすぐこと; 及び
(d) 前記成膜性樹脂溶液を、段階(c)ですすいだ段階(b)(i)のフィルターシートに通し、次いで、段階(c)ですすいだ段階(b)(ii)のすすぎ済みのフィルターシートに通すこと、
を含み、それによってフォトリソグラフィ用組成物に使用するのに好適な成膜性樹脂を製造する、前記方法を提供する。場合によっては、粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂を含むが、イオン交換樹脂は含まない第三のフィルターシートを、段階(b)(i)のフィルターシートの前に、または段階(b)(i)のフィルターシートの後であるが、ただし段階(b)(ii)のフィルターシートの前に、または段階(b)(ii)のフィルターシートの後に、本方法において使用することができる。場合により使用されるこのフィルターシートもまた、段階(b)(i)及び(b)(ii)のフィルターシートと同じ溶剤ですすぎを行う。
【0017】
また本発明は、フォトリソグラフィ用組成物の製造方法であって、1)上記方法で調製された成膜性樹脂と、2)適当なフォトリソグラフィ用溶剤との混合物を供することを含む上記方法も提供する。
【0018】
更に本発明は、基材上に像を形成することによって微細電子デバイスを製造する方法であって、
a) 上記方法によって調製されたフォトリソグラフィ用(例えばフォトレジスト用)組成物を用意し、
b)その後、段階a)のフォトリソグラフィ用組成物で適当な基材をコーティングし、
c) その後、コーティングされた基材を、実質的に全ての溶剤が除去されるまで熱処理し、そして
d) 該フォトリソグラフィ用組成物を像様露光し、そして該フォトリソグラフィ用組成物の像様露光された領域を適当な現像剤で除去する、
ことを含む、上記方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明は、フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに適した成膜性樹脂を製造するための方法であって、
(a) 溶剤中の成膜性樹脂の溶液を用意すること、
(b) 次のフィルターシートのうちの少なくとも二つを用意すること、
(i) 自己支持性の繊維質マトリックスを含むフィルターシートであって、前記繊維質マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂を有し、この際、前記粒状濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂粒子は、前記マトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布しているフィルターシート; 及び
(ii)自己支持性の繊維マトリックスを含むフィルターシートであって、前記繊維マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂を有し、この際、前記粒状濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂粒子は、前記マトリックスの横断面にわたって実質的に均一に分布しているフィルターシート;
(c) 段階(b)のフィルターシートを、段階(a)の溶剤ですすぐこと、及び
(d) 前記成膜性樹脂溶液を、段階(c)ですすいだ段階(b)(i)のフィルターシートに通し、次いで段階(c)ですすいだ段階(b)(ii)のすすぎ済みフィルターシートに通す、
ことを含み、それによってフォトリソグラフィ用組成物中に使用するのに適した成膜性樹脂を製造する、上記方法を提供する。場合によっては、粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂を含むが、イオン交換樹脂は含まない第三のフィルターシートを、段階(b)(i)のフィルターシートの前に、または段階(b)(i)のフィルターシートの後であるが、段階(b)(ii)のフィルターシートの前に、または段階(b)(ii)のフィルターシートの後に、該方法において使用することができる。この場合により使用されるフィルターシートも、段階(b)(i)及び(b)(ii)のフィルターシートと同じ溶剤ですすぎを行う。
【0020】
また本発明は、フォトリソグラフィ用組成物を製造するための方法であって、1)上記方法によって調製された成膜性樹脂と、2)適当なフォトリソグラフィ用溶剤との混合物を供することを含む上記方法も提供する。
【0021】
更に本発明は、基材上に像を形成することによって微細電子部品を製造する方法であって、
a) 上記方法によって調製されたフォトリソグラフィ用(例えばフォトレジスト用)組成物を用意し、
b) その後、段階a)からのフォトリソグラフィ用組成物で適当な基材をコーティングし、
c) その後、このコーティングされた基材を、実質的に全ての溶剤が除去されるまで熱処理し、そして
d) 該フォトリソグラフィ用組成物を像様露光し、そして該フォトリソグラフィ用組成物の像様露光された領域を適当な現像剤で除去する、
ことを含む、上記方法も提供する。
【0022】
本方法の段階(a)は、溶剤中の成膜性樹脂の溶液を用意することを含む。
【0023】
該フォトリソグラフィ用組成物がフォトレジストの場合には、成膜性樹脂は、典型的には、シクロオレフィンを含む少なくとも一種のモノマー、または酸感応性(acid-labile)アクリレートもしくはメタクリレートモノマーを重合することによって製造される樹脂である。
【0024】
シクロオレフィンは、不飽和結合を含む置換されたもしくは置換されていない任意の多環式炭化水素であることができる。シクロオレフィンモノマーとしては、置換されたもしくは置換されていないノルボルネン、またはテトラシクロドデセンなどが挙げられる。シクロオレフィンモノマー上の置換基は、脂肪族もしくは環状脂肪族アルキル、エステル、酸、ヒドロキシル、ニトリルまたはアルキル誘導体であることができる。シクロオレフィンモノマーの例は、限定はされないが以下のものである:
【0025】
【化1】

【0026】
該ポリマーの合成に使用することができる他のシクロオレフィンモノマーとしては、例えば以下のものも挙げられる。
【0027】
【化2】

【0028】
シクロオレフィンモノマーの例には、例えば、t−ブチルノルボルネンカルボキシレート(BNC)、ヒドロキシエチルノルボルネンカルボキシレート(HNC)、ノルボルネンカルボン酸(NC)、t−ブチルテトラシクロ[4.4.0.1.2,61.7,10]ドデカ−8−エン−3−カルボキシレート、及びt−ブトキシカルボニルメチルテトラシクロ[4.4.0.1.2,61.7,10]ドデカ−8−エン−3−カルボキシレートなどが挙げられる。これらの中では、BNC、HNC及びNCが特に好ましい。
【0029】
酸感応性アクリレートもしくはメタクリレートモノマーは、酸感応性基を有する任意のアクリレートもしくはメタクリレートモノマーであることができる。酸感応性基とは、酸性触媒によって簡単に酸加水分解されるものである。一つの態様では、上記酸感応性アクリレートもしくはメタクリレートは、次式で表されるものである。
【0030】
【化3】

【0031】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、そしてR1は、炭素原子数が約3〜20の酸感応性第三級ヒドロカルビル基、炭素原子数が約3〜20の酸感応性トリヒドロカルビルシリル基、または炭素原子数が約5〜約50の酸感応性環状部分である]
本明細書で使用する“ヒドロカルビル置換基”または“ヒドロカルビル基”という用語は、当業者に周知のそれの通常の意味で使用される。具体的には、この用語は、分子の残部に直接結合した炭素原子を有しかつ主に炭化水素の性質を有する基のことを指す。ヒドロカルビル基の例には例えば次のものが挙げられる:
(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えば、アルキルもしくはアルケニル)、環状脂肪族(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、及び芳香族、脂肪族もしくは環状脂肪族基が置換した芳香族置換基、並びに他の部分の分子を介して環が完結している環状置換基(例えば、二つの置換基が一緒になって環状脂肪族基を形成しているような場合);
(2) 置換された炭化水素置換基、すなわち、主として炭化水素の基を本発明の目的上変化させない非炭化水素基(例えば、ハロゲン(特に塩素及びフッ素)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、及びスルホキシ)を含む置換基;
(3) ヘテロ置換基、すなわち本発明の目的上主として炭化水素の性質を有しながら、他は炭素原子から組成される環もしくは鎖中に炭素以外の原子を含む置換基。ヘテロ原子としては、例えば、硫黄、酸素、窒素などが挙げられ、ピリジル、フリル、チエニル及びイミダゾリルなどの置換基が包含される。一般的に、せいぜい二つ、好ましくはせいぜい一つの非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子当たりに存在する。しかし、典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0032】
酸感応性アクリレート/メタクリレートモノマーの例には、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメチルシリル、メバロノラクトンメタクリレート(MLMA)、2−メチルアダマンチルメタクリレート(MAdMA)、イソアダマンチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−1−メタクリロイルオキシアダマンタン、3,5−ジヒドロキシ−1−メタクリロイルオキシアダマンタン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、及びα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(αもしくはβ−GBLMA)、及び5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(MNBL)などが挙げられる。
【0033】
態様の一つでは、シクロオレフィンを含むモノマーは、更に、アクリレートもしくはメタクリレートモノマーを含む。一つの態様では、このアクリレートモノマーは、次の構造式で表されるものである。
【0034】
【化4】

【0035】
式中、Rは水素またはメチルであり、そしてR1は、炭素原子数が約5〜約50、一つの態様では約10〜約30、一つの態様では約20〜約40の環状ヒドロカルビル基(芳香族環状部分及び非芳香族環状部分の両方を包含する)である。−R1基の好ましい構造としては、例えば次のものが挙げられる。
【0036】
【化5】

【0037】
アクリレート及びメタクリレートモノマーの例は、メバロノラクトンメタクリレート(MLMA)、2−メチルアダマンチルメタクリレート(MAdMA)、イソアダマンチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−1−メタクリロイルオキシアダマンタン、3,5−ジヒドロキシ−1−メタクリロイルオキシアダマンタン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、及び5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(MNBL)から選択される。
【0038】
一つの態様では、本発明の成膜性樹脂を製造するのに使用されるモノマーは、シクロオレフィンを含む他、更に環状酸無水物を含む。この環状酸無水物は、任意の酸無水物であることができるが、好ましくは無水マレイン酸または無水イタコン酸である。最も好ましい環状酸無水物は無水マレイン酸である。
【0039】
次の説明に拘束されることは望まないが、上記シクロオレフィン及び環状無水物モノマーは交互ポリマー性構造を形成し、そして成膜性樹脂を製造するために使用するアクリレートもしくはメタクリレートモノマーの量は、最適なリソグラフィー性能を得るために変えることができると考えられる。一つの態様では、成膜性樹脂を製造するために使用されるシクロオレフィン/環状酸無水物モノマーに対するアクリレートモノマーの割合は、約95モル%〜約5モル%、好ましくは約75モル%〜約25モル%、最も好ましくは約55モル%〜約45モル%の範囲である。
【0040】
一つの態様では、成膜性樹脂は、モノマーとしてのMA、MLMA、MAdMA、BNC、HNC及びNCを重合させることによって製造されるコポリマーである。一つの態様では、コポリマーを製造するために使用されるアクリレート及びシクロオレフィンモノマーの量は、無水マレイン酸のモル%で表して、BNC 20〜40モル%、HNC 5〜15モル%、NC 2〜10モル%、MLMA 20〜30モル%、及びMAdMA 20〜30モル%である。一つの態様では、モノマーの相対モル比は、MA 1モル:シクロオレフィンモノマー 0.20モル:アクリレートモノマー 0.80モルからMA 1モル:シクロオレフィンモノマー 0.80モル:アクリレートモノマー0.20モルの範囲である。一つの態様では、モノマーの相対モル比は、MA 1モル:シクロオレフィンモノマー 0.33モル:アクリレートモノマー0.67モル、一つの態様では、MA 1モル:シクロオレフィンモノマー 0.67モル:アクリレートモノマー0.33モルである。一つの態様では、NC:HNC:BNCのモル比は1:2:7であり、MAdMAとMLMAのモル比は1:1である。
【0041】
一つの態様では、成膜性樹脂は、モノマーとしてのMA、MLMA、MAdMA及びBNCを重合させることによって製造されるコポリマーであり、一つの態様では、これらのモノマーのモル比は、MA 1モル:BNC0.33モル:アクリレートモノマー 0.67モルである。
【0042】
一つの態様では、該成膜性樹脂は、MAと、BNCを含む少なくとも一種のシクロオレフィンモノマーとを重合させることによって製造されるコポリマーである。一つの態様では、コポリマーを製造するために使用されるMA:BNCのモル比は1:1である。一つの態様では、BNCを含む上記シクロオレフィンモノマーは、更にHNC及びNCを含む。一つの態様では、コポリマーの製造に使用されるシクロオレフィンモノマーに対するMAのモル比は1:1であり、一つの態様ではBNC:HNC:NCのモル比は7:2:1である。
【0043】
一つの態様では、該成膜性樹脂は、少なくとも一種のフッ素含有シクロオレフィンまたはフッ素含有酸感応性アクリレートもしくはメタクリレートモノマーを重合させることによって製造されるフルオロポリマーを含む。好ましいフッ素含有アクリレート及びメタクリレートモノマーの例は、トリフルオロメタクリル酸、メチルトリフルオロメタクリレート、及びtert−ブチルトリフルオロメタクリレートである。フッ素含有シクロオレフィンモノマーの例は、次式で表されるものである。
【0044】
【化6】

【0045】
式中、R1は、-CH2C(CF3)2OH、-CH2C(CF3)2OR、-CH2C(CF3)2Ot-Boc、-t-Boc、-OC(O)CH3、-COOH、及び-COORからなる群から選択される基であり、この際、Rは、炭素原子数1〜8、一つの態様では1〜4のアルキル基(例えば、t−ブチル基)であり、R2は、−H、−F及び−CF3からなる群から選択される基であり、そしてR3及びR4は、独立して、−Hまたは−Fであるが、ただし、R1〜R4基のうちの少なくとも一つはフッ素原子を含む。
【0046】
本発明の成膜性樹脂は、従来技術において公知の技術を用いて合成することができる。これは、開始剤として例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いて遊離基重合技術によって合成することができる。モノマーの混合物を、溶剤、例えばテトラヒドロフランと一緒に反応容器に入れ、そしてAIBNを加える。この反応は、所望の性質を有するポリマーを得るのに適当な温度及び適当な時間量で行われる。反応は溶剤無しで行うこともできる。温度は、約5〜25時間で、約35℃〜約150℃、好ましくは50℃〜90℃の範囲であることができる。反応は、大気圧下またはより高い圧力下に行うことができる。約48,000パスカル〜約250,000パスカルの圧力下に行われる反応が、より一様な性質を有するポリマーを与えることが判明した。このような望ましい性質の例は、分子量、未露光部膜減り、収率などである。未露光部膜減りは、現像溶液に対する未露光のフォトレジスト膜の溶解性の目安であり、最小の膜減りが好ましい。得られたポリマーは、ジエチルエーテル、ヘキサン、またはヘキサン及びエーテル両方の混合物などの適当な溶剤から単離することができる。所望の化学的及び物理的性質を有するポリマーを得るために他の重合技術を使用することもできる。
【0047】
該成膜性樹脂の分子量は特に制限されない。しかし、最適な分子量は、ポリマーに組み入れたモノマー、光活性化合物及び使用した他の化学成分、並びに所望とされるリソグラフィ性能に依存する。典型的には、重量平均分子量は3,000〜50,000の範囲であり、数平均分子量は約1500〜約10,000の範囲であり、そして多分散性は1.1〜5、好ましくは1.5〜2.5の範囲である。
【0048】
反射防止膜に有用なポリマーは当業者には周知であり、そして限定はされないが、例えば、米国特許出願公開第20030215736号明細書、同第20040202959号明細書、同第20020102483号明細書、同第20020172896号明細書及び同第20060058468号明細書、並びに米国特許第5,693,691号明細書、同第6,670,425号明細書、同第6,187,506号明細書、同第6,106,995号明細書及び同第5,652,317号明細書に記載のものである。
【0049】
成膜性樹脂の溶液の調製に使用される溶剤は、フォトリソグラフィ用組成物の調製に有用なものであれば任意の溶剤であることができる。有用な溶剤としては、限定はされないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン4−ヒドロキシ、及び4−メチル2−ペンタノンなどのケトン類、メタノール、エタノール及びプロパノールなどのC1〜C10脂肪族アルコール類; ベンジルアルコールなどの芳香族基含有アルコール; エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート類; 脂肪族もしくは芳香族炭化水素(例えば、ヘキサン、トルエン、キシレンなど及びこれらの類似物); ジオキサン及びテトラヒドロフランなどの環状エーテル; エチレングリコール; プロピレングリコール; へキシレングリコール; エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類; メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類; エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテルなどのエチレングリコールジアルキルエーテル類; ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル類; プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル及びプロピレングリコールブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類; プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート及びプロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類; プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート及びプロピレングリコールブチルエーテルプロピオネートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート類; 2−メトキシエチルエーテル(ジグリム); エーテル部分及びヒドロキシ部分の両方を有する溶剤、例えばメトキシブタノール、エトキシブタノール、メトキシプロパノール及びエトキシプロパノール; 酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチル、3−プロポキシプロピオン酸エチル、3−プロポキシプロピオン酸プロピル、3−プロポキシプロピオン酸ブチル、3−ブトキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル、及び3−ブトキシプロピオン酸ブチルなどのエステル類; 2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−メトキシイソ酪酸メチル、メトキシイソ酪酸エチル、α−エトキシイソ酪酸メチル、α−エトキシイソ酪酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸エチル、β−エトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸エチル、β−イソプロポキシイソ酪酸メチル、β−イソプロポキシイソ酪酸エチル、β−イソプロポキシイソ酪酸イソプロピル、β−イソプロポキシイソ酪酸ブチル、β−ブトキシイソ酪酸メチル、β−ブトキシイソ酪酸エチル、β−ブトキシイソ酪酸ブチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチル、α−ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル、及びα−ヒドロキシイソ酪酸ブチルなどのオキシイソ酪酸エステル類; エーテル部分とヒドロキシ部分の両方を有する溶剤、例えばメトキシブタノール、エトキシブタノール、メトキシプロパノール、及びエトキシプロパノール; 及び他の溶剤、例えば二塩基性エステル、及びガンマ−ブチロラクトン; ケトンエーテル誘導体、例えばジアセトンアルコールメチルエーテル; ケトンアルコール誘導体、例えばアセトールまたはジアセトンアルコール; ラクトン類、例えばブチロラクトン; アミド誘導体、例えばジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド、アニソール、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0050】
成膜性樹脂を製造するための本発明方法の他の段階(b)は、少なくとも二種のフィルターシートを用意することを含む。
【0051】
段階(b)(i)のフィルターシートは、自己支持性繊維質マトリックスを含み、そしてこのマトリックスの中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂を有し、この際、前記粒状濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂粒子は、上記マトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布している。フィルターシートの粒状助剤は好ましくは酸で洗浄される。酸洗浄に使用される酸は、好ましくは、塩酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、スルホン酸、及び硝酸などの酸の溶液である。
【0052】
この種のフィルターシートは、好ましくは、米国特許第6,103,122号に開示されたものであり、そしてCUNO Incorporated(Meriden, Conn, 米国)からZeta Plus(R) 40Qの名称で商業的に入手することが可能である。
【0053】
適当な強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂は特に限定されない。適当な平均粒度を有する強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂が使用され、平均粒度は、好ましくは約2〜約10μmである。好適なカチオン交換樹脂としては、例えば、スルホン化されたフェノール−ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化されたフェノール−ベンズアルデヒド縮合物、スルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化されたメタクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマー、及び他のタイプのスルホン酸もしくはカルボン酸基含有ポリマーなどが挙げられる。カチオン交換樹脂には、典型的には、H+対イオン、NH4+対イオンまたはアルカリ金属対イオン、例えばK+及びNa+対イオンが供されることに留意されたい。好ましくは、本発明で使用されるカチオン交換樹脂は、水素対イオンを有する。このようなカチオン交換樹脂の一つの例は、Purolite社(Bala Cynwyd, Pa.)から入手できるMicrolite PrCHであり、これは、H+対イオンを有するスルホン化されたスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーである。他の例は、AMBERLYST(R)製品群の下にRohm and Haas社から入手できる。
【0054】
段階(b)(ii)では、フィルターシートは、自己支持性繊維マトリックスを含み、そしてこの繊維マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂を有し、この際、前記粒状濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂粒子は、上記マトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布している。
【0055】
適当なアニオン交換樹脂は当技術分野において既知であり、そして例えばSamuelson, Ion Exchange Separations In Analytical Chemistry, John Wiley & Sons, New York, 1963, Ch. 2に記載されている。適当な平均粒度を有する強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂が使用され、平均粒度は好ましくは約2〜約10μmである。アニオン交換樹脂は、水酸基対イオンを有するものであり、この際、水酸基は交換プロセスの間に導入される。一つの例は、樹脂に化学的に結合した第四級アンモニウムヒドロキシド交換基を有する樹脂、例えばAMBERLYST(R)A-26-OHの商号でRohm and Haas Companyから及びDOW G51-OHの商号でDow Chemical Companyから入手できる、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドで置換されたスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーである。他のアニオン交換樹脂は、AMBERLYST(R)A21の商号で入手でき、これは、それの官能基として第三級アミンを有する遊離塩基イオン型として提供される。
【0056】
上記フィルターシートに有利に使用できる粒状濾過助剤には様々な種のものがあり、例えば、珪藻土、マグネシア、パーライト、タルク、コロイダルシリカ、ポリマー性粒状物、例えば乳化重合もしくは懸濁重合によって製造されるもの、例えばポリスチレン、ポリアクリレート、ポリ(ビニルアセテート)、ポリエチレン、(またはEmulsions and Emulsion Technology, Lissant, Kenneth J., Marcel Dekker, 1974に記載の他のこのような材料)、活性炭、分子篩、クレー及びこれらの類似物などが挙げられる。
【0057】
上記のフィルターシートに使用することができる適当な自己支持性繊維質マトリックスとしては、例えば、ポリアクリロニトリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、セルロース繊維、例えばウッドパルプ及び綿、及びセルロースアセテート繊維などが挙げられる。好ましくは、上記自己支持性マトリックスは、セルロース繊維のマトリックスである。セルロース繊維は、好ましくは、米国特許第4,606,824号明細書に開示されるように、約+400〜約+800mlのカナダ標準形ろ水度を有する未叩解セルロースパルプ及び+100〜約−600mlのカナダ標準形ろ水度を有する高度に叩解されたセルロースパルプを含むセルロースパルプ混合物から誘導される。
【0058】
一つの態様では、段階(b)(i)のフィルターシートは、更に、バインダー樹脂を含む。このフィルターシートに使用するのに好適なバインダー樹脂としては、米国特許第4,007,113号明細書及び同第4,007,114号明細書に開示されるようなメラミンホルムアルデヒドコロイド、米国特許第4,859,340号明細書に開示されるようなポリアミド−ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、及び米国特許第4,596,660号明細書に開示されるようなポリアルキレンオキシドなどが挙げられる。ポリアミド−ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂が好ましく、これは、例えば、PolycupTM1884、2002もしくはS2063 (Hercules)、CascamideTM Resin pR-420(Borden)及びNopcobondTM 35(Nopco)などとして、商業的に得ることができる。
【0059】
一つの態様では、段階(b)(i)のフィルターシートは、約0.5〜1.0μmの平均孔径を有する。
【0060】
一つの態様では、本発明の(段階(b)(ii))の第二のフィルターシートは、自己支持性の繊維マトリックスを含むフィルターシートであり、前記マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂を有し、前記強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂は、適当な平均粒度、好ましくは約2〜約10μmの平均粒度を有し、この際、前記粒状濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び前記強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂粒子は、上記マトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布しており、そして該フィルターシートは、0.5〜1.0μmの平均孔径を有する。
【0061】
前記自己支持性繊維質マトリックスは、ポリアクリロニトリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、セルロース繊維及びセルロースアセテート繊維からなる群から選択される繊維を含むことができる。好ましくは、この自己支持性マトリックスは、セルロース繊維のマトリックスである。セルロース繊維は、好ましくは、米国特許第4,606,824号に開示されるように、約+400〜約+800mlのカナダ標準形ろ水度を有する未叩解セルロースパルプ及び+100〜約−600mlのカナダ標準形ろ水度を有する高度に叩解されたセルロースパルプを含むセルロースパルプ混合物から誘導される。
【0062】
段階(b)(i)及び(b)(ii)のフィルターシートの他に使用できる随意のフィルターシートは、自己支持性繊維マトリックスを含むフィルターシートであり、前記マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂を有するが、このフィルター中にはイオン交換樹脂は存在しない。このフィルターシートは、0.05〜0.5μmの平均孔径を有することができ、そしてフィルターシート(b)(i)の前に、フィルターシート(b)(i)の後であるが、フィルターシート(b)(ii)の前に、またはフィルターシート(b)(ii)の後に使用することができる。自己支持性繊維マトリックス及びバインダー樹脂は、上に記載したものと同じである。このフィルターシートは、Zeta Plus(R) 020 ECの商号でCUNO Incorporatedから入手できる。
【0063】
成膜性樹脂を製造するための本発明方法の他の段階(段階(c))は、上記の段階(b)のフィルターシートを、上記の段階(a)の溶剤ですすぐことを含む。
【0064】
本発明方法の他の段階(段階(d))は、上記のすすぎ済みのフィルターシートに成膜性樹脂の溶液を通すことを含む。成膜性樹脂の溶液は、段階(b)(i)のフィルターシートに通し、次いで段階(b)(ii)のフィルターシートに通す。
【0065】
一つの態様では、マイクロリソグラフィ用組成物に使用するのに適した本発明の成膜性樹脂は、各々50ppb(十億分率)未満、一つの態様では各々25ppb未満、一つの態様では各々10ppb未満のナトリウム及び鉄イオン濃度を有する。本発明を使用して他の金属も成膜性樹脂溶液から除去することができる。本発明のフィルターシートの使用は、ポリマー溶液中の痕跡量の遊離酸の除去及び/またはゲルの減少という追加的な利点も有する。
【0066】
成膜性樹脂の製造に使用するモノマーが、シクロオレフィンを含む他、更に環状酸無水物を含む本発明の態様では、本発明は、この樹脂を本発明のフィルターシートに通すことによってそれから金属イオン不純物を除去する際に、得られる成膜性樹脂の酸無水物基が加水分解されないという追加的な利点も供する。
フォトリソグラフィ用組成物の調製方法
本発明は、フォトリソグラフィ用組成物の製造方法であって、1)上記方法によって製造された成膜性樹脂と、2)適当なフォトリソグラフィ用溶剤との混合物を供することを含む前記方法も提供する。
【0067】
該フォトリソグラフィ用組成物がフォトレジスト組成物の場合には、この組成物は、フォトレジスト組成物を感光性化するのに十分な量で感光性成分も含むことは当業者には明らかである。
【0068】
感光性成分は、当技術分野の通常の知識を有するものには周知である。感光性化合物の適当な例としては、限定はされないが、オニウム塩、例えばジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ハライド及びエステルなどが挙げられるが、露光時に酸を生成する感光性化合物ならば任意のものを使用することができる。オニウム塩は、通常は、有機溶剤中に可溶の形、殆どの場合にヨードニウム塩またはスルホニウム塩として使用され、それの例は、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート及びこれらの類似物などである。露光時に酸を生成する他の化合物、例えばトリアジン類、オキサゾール類、オキサジアゾール類、チアゾール類、置換された2−ピロン類も使用することができる。フェノール性スルホン酸エステル、ビス−スルホニルメタン類、ビス−スルホニルメタン類またはビス−スルホニルジアゾメタン類も有用である。
【0069】
フォトリソグラフィ用溶剤は、上記の成膜性樹脂の溶液の調製に使用した溶剤と同じか、または異なることができる。
【0070】
フォトリソグラフィ用組成物が反射防止膜組成物の場合には、この組成物が樹脂と架橋できる化合物を含むこと、及び反射防止膜組成物に追加的に加えられているかまたは樹脂に結合している染料が存在することは当業者には明らかである。
任意成分
本発明のフォトリソグラフィ用組成物のための任意成分としては、例えば、着色剤、染料、アンチストライエーション剤、レベリング剤、成膜性樹脂を架橋させることができる化合物、光酸発生剤、熱酸発生剤、可塑剤、粘着促進剤、増速剤、溶剤、及び非イオン性界面活性剤などの界面活性剤、感光化剤及び溶剤などが挙げられる。これらは、該フォトリソグラフィ用組成物を基材上にコーティングする前に該成膜性樹脂の溶液に加えることができる。該フォトリソグラフィ用組成物と一緒に使用できる染料添加剤の例としては、メチルバイオレット2B(C.I. No. 42535)、クリスタルバイオレット(C.I. 42555)、マラカイトグリーン(C.I. No. 42000)、ビクトリアブルーB(C.I. No. 44045)及びニュートラルレッド(C.I. No. 50040)などが挙げられ、これらは、成膜性樹脂と感光化剤との合計重量を基準にして1〜10重量%の量で使用できる。染料添加剤は、基材からの光の後方散乱(back scattering)を抑えることによって向上した解像度を供する助けをする。
【0071】
アンチストライエーション剤は、成膜性樹脂と感光化剤との合計重量を基準にして5重量%までの量で使用することができる。使用できる可塑剤としては、例えば、リン酸トリ(ベータ−クロロエチル)エステル、ステアリン酸、ジカンフル、ポリプロピレン、アセタール樹脂、フェノキシ樹脂及びアルキル樹脂などが挙げられ、これらは、成膜性樹脂と感光化剤との合計重量を基準にして1〜10重量%の量で使用できる。可塑剤添加剤は、材料のコーティング性を向上し、滑らかでかつ均一な厚さの膜を基材に塗布することを可能にする。
【0072】
使用できる粘着性促進剤としては、例えば、ベータ−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−メチル−ジシラン−メチルメタクリレート、ビニルトリクロロシラン、及びガンマ−アミノ−プロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、これらは、成膜性樹脂と感光化剤との合計重量を基準にして4重量%までの量で使用できる。使用できる現像増速剤としては、例えば、ピクリン酸、ニコチン酸またはニトロケイ皮酸などが挙げられ、これらは、成膜性樹脂と感光化剤との合計重量を基準にして20重量%までの量で使用できる。これらの増速剤は、フォトレジスト被膜の溶解性を、例えば露光された領域及び未露光の領域の両方で高める傾向がある。それゆえ、これらは、たとえコントラストが若干犠牲になろうとも、現像速度が最も考慮すべき事柄であるような用途に使用される。すなわち、フォトレジスト被膜の露光領域は現像剤によってより短時間に溶解されるようになるものの、増速剤は、未露光の領域からもフォトレジスト被膜を多量に損失させる。
【0073】
溶剤は、組成物中の固形物の最大95重量%までの量で組成物全体に存在することができる。溶剤は、当然ながら、フォトリソグラフィ用溶液を基材上にコーティングし、次いで乾燥した後は、実質的に除去される。使用し得る非イオン性界面活性剤としては、例えば、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、オクチルフェノキシエタノールなどが挙げられ、これらは、成膜性樹脂と感光化剤との合計重量を基準にして10重量%までの量で使用し得る。
微細電子デバイスの製造法
本発明は、基材上に像を形成することによって微細電子デバイスを製造する方法であって、
a)上記のフォトリソグラフィ用組成物を用意すること;
b)その後、段階a)のフォトリソグラフィ用組成物で適当な基材をコーティングすること;
c)その後、コーティングされた基材を、実質的に全ての溶剤が除去されるまで熱処理すること; 及び
d)コーティングされた基材を像様露光し、次いでこのコーティングされた基材の像様露光された領域を適当な現像剤で除去すること;
を含む上記方法も提供する。
【0074】
該フォトリソグラフィ用組成物は、フォトリソグラフィの分野において使用される任意の慣用の方法で基材上に塗布することができる。このような方法には、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、遠心除滴(whirling)コート法、及びスピンコート法などが挙げられる。例えば、スピンコート法の場合には、利用されるスピンコート装置の種類及びスピンコートプロセスに許される時間量の下に、所望の厚さの被膜を得るためにレジスト溶液を固形物含有率に関して調節することができる。適当な基材には、ケイ素、アルミニウム、ポリマー性樹脂、二酸化ケイ素、ドーピングした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、タンタル、銅、ポリシリコン、セラミック、アルミニウム/銅混合物、ヒ化ガリウム、及び他のこのような第III/V族化合物などが挙げられる。該フォトリソグラフィ用組成物は、これがフォトレジスト組成物の場合には、本発明方法により処理された樹脂を含む反射防止膜の上に塗布することもできる。
【0075】
上記方法によって製造されるフォトリソグラフィ用組成物は、例えばマイクロプロセッサや、他の微細化された集積回路部品の製造に利用されるような、熱成長させたケイ素/二酸化ケイ素被覆ウェハに使用するのに特に適している。アルミニウム/酸化アルミニウムウェハも使用できる。基材は、様々なポリマー性樹脂、特にポリエステルなどの透明なポリマーからなることもできる。基材は、適当な組成の粘着性が促進された層、例えばヘキサ−アルキルジシラザン、好ましくはヘキサメチルジシラザン(HMDS)を含む層を有していてもよい。
【0076】
該フォトリソグラフィ用組成物がフォトレジト組成物の場合には、このフォトレジスト組成物は基材上にコーティングされ、そしてこのコーティングされた基材は、実質的に全ての溶剤が除去されるまで熱処理される。一つの態様では、このコーティングされた基材の熱処理は、ホットプレートを用いた場合は30秒〜180秒間または熱対流炉を用いた場合は15〜90分間、70℃〜150℃の温度でのコーティングされた基材の加熱を含む。この温度処理は、フォトレジスト組成物中の残留溶剤の濃度を減少させるために選択され、感光化剤を熱分解させることは実質的にない。一般的に、溶剤の濃度は最小にすることが望まれるので、この最初の温度処理は、実質的に全ての溶剤が蒸発し、そして1ミクロンのオーダーの厚さのフォトレジスト組成物の薄い被膜が基材上に残るまで行われる。好ましい態様の一つでは、その温度は95℃〜120℃である。この処理は、溶剤除去の変化の割合が比較的取るに足らないものになるまで行われる。温度と時間の選択は、ユーザーが望むフォトレジストの性質、並びに使用した装置や、商業的に望ましいコーティング時間に依存する。
【0077】
次いで、コーティングされた基材を、適当なマスク、ネガ、ステンシル、テンプレートなどの使用によって形成される任意の所望のパターンに、化学線、例えば100nm〜300nmの波長の紫外線、X線、電子ビーム、イオンビームまたはレーザー線で露光することができる。
【0078】
上記フォトレジスト組成物でコーティングされた基材は、次いで場合によっては、現像の前または後のいずれかに、露光後第二ベーク処理または熱処理に付す。その加熱温度は90℃〜150℃、より好ましくは100℃〜130℃の範囲であることができる。この加熱は、ホットプレートを用いた場合は30秒間〜2分間、より好ましくは60秒間〜90秒間、または熱対流炉を用いた場合は30〜45分間、行うことができる。
【0079】
このフォトレジストがコーティングされそして露光された基材は、アルカリ性現像溶液中に浸漬するかまたはスプレー現像法によって現像して、像様露光された領域(ポジ型フォトレジスト)または未露光の領域(ネガ型フォトレジスト)を溶解、除去する。この溶液は、好ましくは、例えば窒素噴出攪拌によって攪拌する。基材は、全てのもしくは実質的に全てのフォトレジスト被膜が、露光された領域または未露光の領域から溶解除去されるまで現像剤に曝しておく。現像剤としては、水酸化アンモニウム類またはアルカリ金属水酸化物類の水溶液などを挙げることができる。好ましい水酸化物の一つはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。コーティングされたウェハを現像溶液から取り出した後は、任意の現像後熱処理またはベーク処理を行って、被膜の粘着性、及びエッチング液及び他の物質に対する塗膜の耐薬品性を高めることができる。この現像後熱処理は、被膜の軟化点以下での被膜及び基材のオーブンベーク処理からなることができる。工業的な用途、特にケイ素/二酸化ケイ素タイプの基材上に超小型回路ユニットを製造する場合には、この現像された基材を、緩衝したフッ化水素酸に基づくエッチング液で処理することができる。本発明のフォトレジスト組成物は、酸に基づくエッチング液に耐性があり、そして基材の未露光のフォトレジスト被覆領域に効果的な保護を与える。
【0080】
本明細書に定めるように成膜性樹脂を処理することによって、成膜性樹脂の製造工程に由来するものであろう痕跡量の遊離酸及び/またはゲル粒子が除去されて、欠陥の無いフォトレジスト組成物を得ることができる。
【0081】
該フォトリソグラフィ用組成物が反射防止膜の場合には、基材を、先ず、この反射防止膜でコーティングし、次いでこの反射防止被膜を加熱し、そしてこの反射防止被膜の上にフォトレジスト組成物をコーティングし、次いでこのフォトレジスト組成物を加熱して溶剤を除去し、次いでフォトレジスト被膜を像様露光し、水性現像剤で現像し、場合により現像の前及び後に加熱処理し、そして反射防止被膜をドライエッチングする。
【0082】
以下の具体例は、本発明の組成物を製造、使用する方法の詳細な例示である。しかし、これらの例は、本発明の範囲を如何様にも限定もしくは減縮することを意図したものではなく、本発明を実施するために排他的に利用しなければならない条件、パラメータまたは値を教示するものと解釈されるべきものではない。特に断りがない限りは、全ての部及び百分率は重量に基づく値である。
【実施例】
【0083】
例1
フォトレジスト用の成膜性樹脂として使用するのに好適なコポリマー(MAdMA/MNBL/GBLMA; 50/25/25)を得た。
例1A:
例1からのコポリマーを、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)中に溶解して10%の溶液を得た。この溶液の一定分量中のゲル粒子の数を、GPC−マルチアングル光散乱によって測定した。
例1B:
ステンレススチール製の圧力ホルダを、電子工業等級のアセトン及びPGMEAの両方で洗浄した。Zeta Plus(R)40Qディスクフィルターシートを、このステンレススチール製圧力ホルダに設置し、そしてこのホルダを、200mlの電子工業等級PGMEAで充たした。このPGMEAは、1.0psi(6894パスカル)の窒素圧を用いて上記40Qフィルターに通して濾過した。次いで、前記フォルダを例1Aのポリマー溶液で充たし、そしてこのポリマー溶液を、4.0psi(27,576パスカル)の窒素圧で40Qフィルターに通して濾過した。その濾液の一定分量を、GPC−マルチアングル光散乱を用いてゲル粒子に関して分析した。
例1C:
ステンレススチール製圧力ホルダを、電子工業等級のアセトン及びPGMEAの両方で洗浄した。Amberlyst 21を含むディスクフィルターシートを、このステンレススチール製圧力ホルダに取り付け、そしてこのホルダを200mlの電子工業等級のPGMEAで充たした。このPGMEAは、1.0psi(6894パスカル)の窒素圧で、Amberlyst 21を含む上記ディスクフィルターシートに通して濾過した。次いで、前記ホルダを、例1Bで上記40Qフィルターに通した残りの濾液で充たし、そしてその濾液を、4.0psi(27,576パスカル)の窒素圧で、Amberlyst 21を含む前記ディスクフィルターシートに通して濾過した。その濾液の一定分量を、GPC−マルチアングル光散乱を用いてゲル粒子について分析した。
【0084】
GPC−マルチアングル光散乱を用いて測定したゲル粒子の相対数を、このGPC−マルチアングル光散乱測定から得られた曲線の下の面積を測ることによって求めた。その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
例2
例1A、1B及び1Cからの濾液について金属分析を行った。その結果を表2に示す(ppbで測定)。
【0087】
【表2】

【0088】
例3
例3A
例1Bからのポリマー2.1470g、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.0707g、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルジメチルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.0249g、PGMEA中1重量%のジイソプロパノールアミン0.3464g、PGMEA中1%のBC−L−AME 0.3671g、及び界面活性剤(フルオロ脂肪族ポリマー性エステル,3M)の10重量%PGMEA溶液0.0360gを、PGMEA19.4219g及びPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)8.3250g中に溶解して、30gのフォトレジストを得た。
例3B:
例1Cからのポリマー2.1470g、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.0707g、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルジメチルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.0249g、PGMEA中1重量%のジイソプロパノールアミン0.3464g、PGMEA中1%のBC−L−AME 0.3671g、及び界面活性剤(フルオロ脂肪族ポリマー性エステル,3M)の10重量%PGMEA溶液0.0360gを、PGMEA19.4219g及びPGME8.3250g中に溶解して、30gのフォトレジストを得た。
例3C
ケイ素基材を、底面反射防止膜(AZ Electronic Materials USA Corp., Somerville, NJから入手可能)でコーティングし、そして200℃で60秒間ベーク処理した。この底面反射防止膜厚は37nmであった。次いで、例3A及び3Bからのフォトレジスト溶液を、各々、これらのコーティングされたケイ素基材上に塗布した。スピン速度は、フォトレジストの被膜厚が150nmとなるように調節した。次いで、このフォトレジストを露光した(Nikon 306C 0.78NA & 4/5 環状照射, ソフトベーク120℃/90秒, PEB 120℃/90秒, 現像時間: 60秒 (ACT12), 6% PSM)。この像が形成されたフォトレジストを、次いで、AZ(R) 300MIFを用いて60秒間現像した。例3Bから得られたパターンは、例3Aよりも優れていることが確認された。
【0089】
例4
フォトレジスト用の成膜性樹脂として使用するのに適したコポリマー(MAdMA/HAdMA/GBLMA; 50/25/25)を得た。
例4A
例4からのコポリマーをPGMEA中に溶解して10%の溶液とした。この溶液の一定分量中のゲル粒子の数を、GPC−マルチアングル光散乱によって測定した。
例4B
ステンレススチール製の圧力ホルダを、電子工業等級のアセトン及びPGMEAの両方で洗浄した。Zeta Plus(R) 40Qディスクフィルターシートをこのステンレススチール製圧力ホルダに取り付け、そしてこのホルダを、電子工業等級のPGMEA200mlで充たした。このPGMEAは、1.0psi(6894パスカル)の窒素圧で、上記40Qフィルターに通して濾過した。次いで、このホルダを、例4Aからのポリマー溶液で充たし、そしてこのポリマー溶液を、4.0psi(27,576パスカル)の窒素圧で上記40Qフィルターに通して濾過した。その濾液の一定分量を、GPC−マルチアングル光散乱を用いてゲル粒子について分析した。
例4C
ステンレススチール製圧力ホルダを、電子工業等級のアセトン及びPGMEAの両方で洗浄した。Amberlyst 21を含むディスクフィルターシートを、このステンレススチール製圧力ホルダに取り付け、そしてこのホルダを、200mlの電子工業等級のPGMEAで充たした。このPGMEAを、1.0psi(6894パスカル)の窒素圧で、Amberlyst 21を含む前記ディスクフィルターシートに通して濾過した。このホルダを、例4Bで40Qフィルターに通した残りの濾液で充たし、次いでこの濾液を、4.0psi(27,576パスカル)の窒素圧で、Amberlyst 21を含む前記ディスクフィルターシートに通して濾過した。その濾液の一定分量を、GPC−マルチアングル光散乱を用いてゲル粒子について分析した。
【0090】
GPC−マルチアングル光散乱を用いて測定したゲル粒子の相対数を、GPC−マルチアングル光散乱測定からの曲線の下の面積を測ることによって求めた。その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
例5
例4A、4B及び4Cからの濾液について金属分析を行った。結果は、例1A、1B及び1Cからの結果と同様であった。
【0093】
例6
例6A:
例4Bからのポリマー2.147g、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.07g、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルジメチルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.024g、PGMEA中1重量%のジイソプロパノールアミン0.346g、PGMEA中1%のBC−L−AME 0.3671g、及び界面活性剤(フルオロ脂肪族ポリマー性エステル,3M)の10重量%PGMEA溶液0.0360gを、PGMEA19.40g及びPGME8.22g中に溶解して30gのフォトレジストを得た。
例6B
例4Cからのポリマー2.147g、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.07g、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルジメチルスルホニウムテトラフルオロエトキシノナフルオロブタンスルホネート0.024g、PGMEA中1重量%のジイソプロパノールアミン0.346g、PGMEA中1%のBC−L−AME0.3671g、及び界面活性剤(フルオロ脂肪族ポリマー性エステル,3M)の10%PGMEA溶液0.0360gを、PGMEA19.40g及びPGME8.22g中に溶解して30gのフォトレジストを得た。
例6C
ケイ素基材を、底面反射防止膜(AZ Electronic Materials USA Corp., Somerville, NJから入手可能)でコーティングし、そして200℃で60秒間ベーク処理した。その底面反射防止膜の厚さは37nmであった。次いで、例6A及び6Bからのフォトレジスト溶液を、上記のコーティングされた各基材上にコーティングした。フォトレジスト被膜の厚さが150nmとなるようにスピン速度を調節した。次いで、このフォトレジストを露光した(Nikon 306C 0.78NA & 4/5 環状照射, ソフトベーク 120℃/90秒, PEB 120°C /90秒, 現像時間: 60秒 (ACT12), 6% PSM)。この像が形成されたフォトレジストを、次いで、AZ(R) 300MIFを用いて60秒間、現像した。例6Bから得られたパターンが、例6Aよりも優れていることが確認された。
【0094】
上記の実施例及び他に明示している場合を除き、本明細書において材料の量、反応条件(例えば、温度)、分子量、炭素原子数などを特定するための全ての数値は、“約”という言葉によって修飾される。
【0095】
以上、本発明をその好ましい態様に関連して説明したが、これらの様々な改変は、本明細書を読めば当業者には明らかである。それゆえ、本明細書に開示の発明は、添付の特許請求の範囲内のものである限りこのような改変も包含することを意図されているものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに適した成膜性樹脂の製造方法であって、次の段階、すなわち
(a) 溶剤中の成膜性樹脂の溶液を用意する段階、
(b) 以下のフィルターシートの少なくとも二つを用意する段階、
(i) 自己支持性の繊維質マトリックスを含むフィルターシートであって、前記マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂を有し、この際、前記濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び強カチオン性もしくは弱カチオン性イオン交換樹脂粒子は、上記マトリックスの横断面にわたって実質的に均一に分布しているフィルターシート; 及び
(ii) 自己支持性の繊維マトリックスを含むフィルターシートであって、前記マトリックスは、その中に不動化された粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂、及び粒状強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂を有し、この際、前記粒状濾過助剤、場合により使用されるバインダー樹脂、及び強アニオン性もしくは弱アニオン性イオン交換樹脂粒子は、前記マトリックスの横断面にわたり実質的に均一に分布しているフィルターシート;
(c) 段階(b)のフィルターシートを、段階(a)の溶剤ですすぐ段階、及び
(d) 前記成膜性樹脂の溶液を、段階(c)ですすいだ段階(b)(i)のフィルターシートに通し、次いで段階(c)ですすいだ段階(b)(ii)のすすぎ済みのフィルターシートに通す段階、
を含み、それによってフォトリソグラフィ用組成物に使用するのに好適な成膜性樹脂を製造する、上記方法。
【請求項2】
フィルターシート(b)(i)の粒状濾過助剤が酸洗浄される、請求項1の方法。
【請求項3】
フィルターシート(b)(i)が、粒状強カチオン性イオン交換樹脂を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
フィルターシート(b)(ii)が、粒状弱アニオン性イオン交換樹脂を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
フィルターシート(b)(ii)が、粒状強アニオン性イオン交換樹脂を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
フィルターシート(b)(i)が、粒状弱カチオン性イオン交換樹脂を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
フィルターシート(b)(ii)が、更にバインダー樹脂を含む、請求項1の方法。
【請求項8】
段階(d)において、成膜性樹脂の溶液を段階(b)(i)のフィルターシートに通す前に、粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂を含むが、ただしイオン交換樹脂を含まないフィルターシートに成膜性樹脂の溶液を通す、請求項1の方法。
【請求項9】
段階(d)において、成膜性樹脂の溶液を段階(b)(i)のフィルターシートに通した後であるが、ただし成膜性樹脂の溶液を段階(b)(ii)のフィルターシートに通す前に、粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂を含むが、ただしイオン交換樹脂は含まないフィルターシートに成膜性樹脂の溶液を通す、請求項1の方法。
【請求項10】
段階(d)において、成膜性樹脂の溶液を段階(b)(i)のフィルターシートに通した後に、粒状濾過助剤、場合により及びバインダー樹脂を含むが、イオン交換樹脂は含まないフィルターシートに成膜性樹脂の溶液を通す、請求項1の方法。
【請求項11】
段階(d)の後に、フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに適した上記成膜性樹脂が、各々50ppb未満のナトリウム及び鉄イオン濃度を有する、請求項1の方法。
【請求項12】
段階(d)の後に、フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに適した上記成膜性樹脂が、各々25ppb未満のナトリウム及び鉄イオン濃度を有する、請求項1の方法。
【請求項13】
段階(d)の後に、フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに適した上記成膜性樹脂が、各々10ppb未満のナトリウム及び鉄イオン濃度を有する、請求項1の方法。
【請求項14】
段階(d)の後に、フォトリソグラフィ用組成物に使用するのに適した上記成膜性樹脂が、GPC−マルチアングル光散乱によって測定してゲル粒子を含まない、請求項1の方法。
【請求項15】
1)請求項1の方法によって製造された成膜性樹脂と、2)適当なフォトレジスト溶剤との混合物を供することを含む、フォトリソグラフィ用組成物の製造方法。
【請求項16】
前記混合物が、フォトレジスト組成物を感光性化するのに十分な量で感光性成分を更に含む、請求項15の方法。
【請求項17】
前記混合物が、前記成膜性樹脂と架橋することができる化合物を更に含む、請求項15の方法。
【請求項18】
基材上に像を形成することによって微細電子デバイスを製造する方法であって、
a) 請求項16の方法で製造されたフォトレジスト組成物を用意し、
b) その後、段階a)からのフォトレジスト組成物で適当な基材をコーティングし、
c) その後、上記のコーティングされた基材を、実質的に全てのフォトレジスト溶剤が除去されるまで熱処理し、そして
d) フォトレジスト組成物を像様露光し、そしてこのフォトレジスト組成物の像様露光された領域を適当な現像剤で除去する、
ことを含む、上記方法。

【公開番号】特開2007−291387(P2007−291387A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105563(P2007−105563)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(305010827)エイゼット・エレクトロニック・マテリアルズ・ユーエスエイ・コーポレイション (81)
【Fターム(参考)】