説明

フォトレジスト組成物

【課題】本発明の目的は、密集コンタクトホールパターン形成において、ホールブリッジの発生を抑制することができるブリッジ耐性に優れ、さらに解像性を十分満足するフォトレジスト組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、[A]単環のラクトン基を含む構造単位(I−1)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体、[B]多環のラクトン基を含む構造単位(I−2)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体、並びに[C]感放射線性酸発生体を含有するフォトレジスト組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を用いた大規模集積回路装置(LSI)の高集積化のために、回路パターンの微細化技術の開発が進められている。中でも、回路を構成する配線パターンの細線化、絶縁層を介して多層化された配線同士をつなぐコンタクトホールパターンの微細化等が重要となってきている。特に近年では、上記配線パターン及びコンタクトパターンにおいて、波長相当のピッチで密に配置された微細パターンの形成が必要とされるようになってきている。
【0003】
一方、微細パターン形成のためのレジスト組成物には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)やArFエキシマレーザー(波長193nm)等に代表される短波長の露光光源に適応し、感度、解像性等に優れることが求められる。このようなレジスト組成物としては、通常、酸解離性基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する酸発生剤とを含有した化学増幅型のフォトレジスト組成物が用いられている(特開昭59−45439号公報参照)。
【0004】
しかし、従来のフォトレジスト組成物を用いて、波長相当のピッチで密に配置された密集コンタクトホールパターンの形成を行った場合、ホールとホールとが繋がってしまうホールブリッジが起き易く、所望のパターンが得られ難いという不都合がある。
【0005】
このような状況に鑑み、密集コンタクトホールパターン形成において、ホールブリッジを抑制することができ、より解像性に優れるパターンを形成することができるフォトレジスト組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、密集コンタクトホールパターン形成において、ホールブリッジの発生を抑制することができるブリッジ耐性に優れ、さらに解像性を十分満足するフォトレジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]単環のラクトン基を含む構造単位(I−1)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、
[B]多環のラクトン基を含む構造単位(I−2)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体(以下、「[B]重合体」ともいう)、並びに
[C]感放射線性酸発生体(以下、「[C]酸発生体」ともいう)
を含有するフォトレジスト組成物である。
【0009】
本発明のフォトレジスト組成物は、単環のラクトン基を含む[A]重合体及び多環のラクトン基を含む[B]重合体を含有するため、従来のフォトレジスト組成物に比べて現像液に対する親和性が高いため、優れた解像性及びブリッジ耐性を有する。
【0010】
上記単環のラクトン基は、γ−ブチロラクトン基であることが好ましい。上記単環のラクトン基がγ−ブチロラクトン基であると、当該フォトレジスト組成物の現像液に対する親和性をより向上させることができるため、解像性に優れるとともに、少ない脱保護反応でも現像液に溶解し易いため、露光量を減らすことができ、未露光部における無用な脱保護を抑えることができるため、ブリッジ耐性により優れる。
【0011】
構造単位(I−1)は、下記式(1)で表される構造単位であることが好ましい。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、フッ素原子、水酸基又は1価の有機基である。nは0〜3の整数である。)
【0012】
構造単位(I−1)がγ−ブチロラクトン基を含む上記特定構造であると、当該フォトレジスト組成物の現像液に対する親和性をさらに向上させることができるため、解像性及びブリッジ耐性にさらに優れる。
【0013】
上記多環のラクトン基は、ノルボルナンラクトン基であることが好ましい。上記多環のラクトン基がノルボルナンラクトン基であると、当該フォトレジスト組成物の現像液に対する親和性をさらに向上させることができるため、解像度及びブリッジ耐性にさらに優れる。
【0014】
構造単位(I−2)は、下記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R’は、フッ素原子、水酸基又は1価の有機基である。mは、0〜6の整数である。)
【0015】
構造単位(I−2)が、ノルボルナンラクトン基を含む上記特定構造であると、当該フォトレジスト組成物の現像液に対する親和性をさらに向上させることができるため、解像性及びブリッジ耐性にさらに優れる。
【0016】
構造単位(II)は、下記式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
【化3】

(式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R及びRは、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に2価の脂環式基を形成していてもよい。また、上記アルキル基及び脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。)
【0017】
[A]重合体及び[B]重合体が有する酸解離性基を含む構造単位(II)が上記特定構造であると、当該フォトレジスト組成物は感度を向上させることができる。
【0018】
[A]重合体における構造単位(I−1)の含有率は10モル%以上70モル%以下であり、かつ[B]重合体における構造単位(I−2)の含有率は10モル%以上70モル%以下であることが好ましい。
【0019】
構造単位(I−1)及び構造単位(I−2)をそれぞれ上記の範囲で含有する[A]重合体と[B]重合体とをブレンドすることで、当該フォトレジスト組成物の現像液に対する反応性をより向上することができ、ブリッジ耐性及び解像性を十分満足することができる。
【0020】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率は20モル%以上80モル%以下であり、かつ[B]重合体における構造単位(II)の含有率は20モル%以上80モル%以下であることが好ましい。
【0021】
構造単位(II)をそれぞれ上記の範囲で含有する[A]重合体と[B]重合体とをブレンドすることで、当該フォトレジスト組成物の感度を十分満足し、ブリッジ耐性及び解像性にも優れる。
【0022】
[A]重合体の含有量は、[B]重合体100質量部に対して25質量部以上400質量部以下であることが好ましい。[A]重合体と[B]重合体を上記割合でブレンドすることで、当該フォトレジスト組成物の現像液に対する反応性をより向上することができ、ブリッジ耐性及び解像性にさらに優れる。
【0023】
なお、本明細書における「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等を含む概念である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフォトレジスト組成物は、現像液に対する反応性が高いため、ホールパターンの形成、特に密集コンタクトホールパターンの形成において、ホールブリッジの発生を抑制することができ、解像性にも優れる。そのため、当該フォトレジスト組成物は、微細パターンを高精度に形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<フォトレジスト組成物>
本発明のフォトレジスト組成物は、[A]重合体、[B]重合体及び[C]酸発生体を含有する。当該フォトレジスト組成物は、単環のラクトン基を含む[A]重合体と、多環のラクトン基を含む[B]重合体とをブレンドすることで、感度及び現像液に対する反応性が適度にバランスされ、ホールパターン形成におけるブリッジ耐性及び解像性に優れる。また、当該フォトレジスト組成物は、[D]酸拡散制御剤、[E]溶媒を含有することが好ましい。さらに、当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について詳述する。
【0026】
<[A]重合体>
[A]重合体は、単環のラクトン基を含む構造単位(I−1)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体である。当該フォトレジスト組成物は、単環のラクトン基及び酸解離性基を含む[A]重合体を含有することで、現像液との反応性を向上させることができる。それにより、当該フォトレジスト組成物は、少ない脱保護反応で高い現像性を実現できるため、ホールブリッジを抑制することができると考えられる。また、本発明の効果を損なわない限り、[A]重合体は他の構造単位を有することができる。なお、[A]重合体は、各構造単位を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。以下、それぞれの構造単位について説明する。
【0027】
[構造単位(I−1)]
構造単位(I−1)は、単環のラクトン基を含む構造単位である。ここで、ラクトン基とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環を1つめの環として数え、ラクトン環のみの場合は単環のラクトン基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環のラクトン基と称する。
【0028】
上記単環のラクトン基としては、例えばβ−ラクトン基、γ−ブチロラクトン基、δ−バレロラクトン基等が挙げられる。これらのうち、現像液との反応性を向上させる観点から、γ−ブチロラクトン基が好ましい。
【0029】
構造単位(I−1)としては、上記式(1)で表される構造単位が好ましい。[A]重合体が有する構造単位(I−1)が上記式(1)で表される構造単位であると、当該フォトレジスト組成物は、現像液との反応性をより向上させることができる。
【0030】
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、フッ素原子、水酸基又は1価の有機基である。nは0〜3の整数である。
【0031】
上記Rで表される1価の有機基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基等が挙げられる。
【0032】
上記Rで表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。これらのうち、メトキシ基及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0033】
上記Rとしては、水酸基、メトキシ基及びシアノ基が好ましい。
【0034】
nとしては、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0035】
構造単位(I−1)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。これらのうち、β−γ−ブチロラクトン(βGBL)がより好ましい。
【0036】
【化4】

【0037】
上記式中、Rは、上記式(1)と同義である。
【0038】
[A]重合体における構造単位(I−1)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜70モル%が好ましく、15モル%〜65モル%がより好ましく、20モル%〜60モル%がさらに好ましい。構造単位(I−1)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物の現像液との反応性を向上させることができる。
【0039】
構造単位(I−1)を与える単量体としては、例えば下記式で表される単量体等が挙げられる。
【0040】
【化5】

【0041】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、酸解離性基を含む構造単位である。構造単位(II)としては、上記式(3)で表される構造単位であることが好ましい。[A]重合体が有する構造単位(II)が上記特定構造の酸解離性基を有する構造単位であることで、当該フォトレジスト組成物は適度な感度を有するため、リソグラフィー特性に優れるパターンを形成することができると共に、過剰な脱保護反応によって発生すると考えられるホールブリッジを抑制することができる。
【0042】
上記式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R及びRは、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に2価の脂環式基を形成していてもよい。また、上記アルキル基及び脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0043】
上記R〜Rが表す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0044】
上記R〜Rが表す炭素数4〜20の脂環式基、及びRとRとが互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に形成していてもよい脂環式基としては、例えばアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1種以上で置換されていてもよい。
【0045】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0046】
【化6】

【0047】
上記式中、Rは、上記式(3)と同義である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。m1及びm2は、1〜6の整数である。
【0048】
これらのうち、下記式(3−1)〜(3−23)で表される構造単位が好ましい。
【0049】
【化7】

【0050】
上記式(3−1)〜(3−23)中、Rは上記式(3)と同義である。
【0051】
これらのうち、上記式(3−2)〜(3−6)及び(3−22)〜(3−23)で表される構造単位がより好ましい。
【0052】
[A]重合体において、構造単位(II)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜80モル%が好ましく、25モル%〜75モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジストパターンのリソグラフィー特性がより向上する。
【0053】
構造単位(II)を与える単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−7−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−2−イルエステル、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0054】
【化8】

【0055】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、構造単位(I−1)及び(II)とは異なるその他の構造単位として、極性基を含む構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう)、環状カーボネート構造を含む構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう)を含んでいてもよい。
【0056】
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0057】
【化9】

【0058】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0059】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して0モル%〜40モル%が好ましく、10モル%〜25モル%がより好ましい。
【0060】
構造単位(III)を与える単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0061】
【化10】

【0062】
[構造単位(IV)]
[A]重合体は、環状カーボネート構造を含む構造単位(IV)をさらに有することが好ましい。構造単位(IV)を有することでレジスト膜の基板への密着性を向上できる。
【0063】
構造単位(IV)としては、例えば下記式で示される構造単位等が挙げられる。
【0064】
【化11】

【0065】
上記式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R10は、水素原子又はメチル基である。
【0066】
[A]重合体において、構造単位(IV)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜50モル%が好ましく、10モル%〜30モル%がより好ましい。構造単位(IV)の含有率を上記範囲とすることで、レジストと基板との密着性を向上させることができる。一方、50モル%を超えると良好なパターンが得られないおそれがある。
【0067】
構造単位(IV)を与える単量体としては、例えば国際公開2007/116664号パンフレットに記載の単量体、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0068】
【化12】

【0069】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤と共に適当な溶媒中で混合することにより合成できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0070】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常30℃〜180℃であり、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜140℃がより好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜7時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
【0071】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば限定されない。重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0073】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。なお、上記低分子成分はなるべく少ない方が好ましい。
【0074】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上400,000以下がより好ましい。なお、[A]重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、[A]重合体のMwが500,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0075】
また、[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、フォトレジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0076】
なお、本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0077】
当該フォトレジスト組成物における[A]重合体の含有量としては、[B]重合体100質量部に対して25質量部以上400質量部以下が好ましく、50質量部以上300質量部以下がより好ましく、50質量部以上200質量部以下がさらに好ましく、50質量部以上100質量部以下が特に好ましい。当該フォトレジスト組成物中の[A]重合体の含有率を[B]重合体に対して上記特定の質量比とすることで、当該フォトレジスト組成物は、現像液に対する反応性を向上させることができ、ブリッジ耐性及び解像性により優れる。
【0078】
<[B]重合体>
[B]重合体は、多環のラクトン基を含む構造単位(I−2)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体である。当該フォトレジスト組成物は、上述した[A]重合体と共に多環のラクトン基及び酸解離性基を含む[B]重合体を含有することで、現像液との反応性を向上させることができる。それにより、当該フォトレジスト組成物は、高い現像性を実現できるため、ホールブリッジを抑制することが、かつ解像性にも優れる。さらに、本発明の効果を損なわない限り、[B]重合体は他の構造単位を有することができる。なお、[B]重合体は、各構造単位を1種単独で有してもよいし、2種以上を有してもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0079】
[構造単位(I−2)]
構造単位(I−2)は、多環のラクトン基を含む構造単位である。構造単位(I−2)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0080】
【化13】

【0081】
上記式中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R12は、水素原子又はメトキシ基である。R13は、水素原子、メトキシ基、シアノ基又は水酸基である。Zは、単結合、メチレン基又はエステル基である。Zは、メチレン基又は酸素原子である。aは、0又は1である。
【0082】
これらのうち、構造単位(I−2)としては、上記式(2)で表される構造単位が好ましい。[B]重合体が有する構造単位(I−2)が上記式(2)で表される構造単位であると、当該フォトレジスト組成物は、現像液との反応性をより向上させることができる。
【0083】
上記式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R’は、フッ素原子、水酸基又は1価の有機基である。mは、0〜6の整数である。
【0084】
上記R’で表される1価の有機基については、上記式(1)におけるRで表される1価の有機基の説明を適用できる。
【0085】
上記R’としては、水酸基、メトキシ基及びシアノ基が好ましい。
【0086】
上記mとしては、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0087】
[B]重合体における構造単位(I−2)の含有率としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜70モル%が好ましく、15モル%〜65モル%がより好ましく、20モル%〜60モル%がさらに好ましい。構造単位(I−2)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物の現像液との反応性を向上させることができる。
【0088】
構造単位(I−2)を与える単量体としては、例えば下記式で表される単量体等が挙げられる。
【0089】
【化14】

【0090】
上記式中、R12は、水素原子又はメトキシ基である。R13は、水素原子、メトキシ基、シアノ基又は水酸基である。Zは、単結合、メチレン基、エステル基又はこれらの基を組み合わせてなる基である。Zは、メチレン基又は酸素原子である。aは、0又は1である。多環のラクトン基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0091】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、酸解離性基を含む構造単位である。構造単位(II)としては、上記式(3)で表される構造単位であることが好ましい。[B]重合体が有する構造単位(II)が上記特定構造の酸解離性基を有する構造単位であることで、当該フォトレジスト組成物は適度な感度を有し、過剰な脱保護反応によって発生すると考えられるホールブリッジを抑制することができる。なお、構造単位(II)については、[A]重合体が有する構造単位(II)における説明を適用できる。
【0092】
[B]重合体において、構造単位(II)の含有率としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜80モル%が好ましく、25モル%〜75モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジストパターンのリソグラフィー特性がより向上する。
【0093】
[その他の構造単位]
[B]重合体は、構造単位(I−2)及び(II)以外のその他の構造単位として、極性基を含む構造単位(III)、環状カーボネート基を含む構造単位(IV)等をさらに有してもよい。なお、構造単位(III)及び構造単位(IV)については、[A]重合体における構造単位(III)及び(IV)の説明を適用できる。
【0094】
[B]重合体における構造単位(III)の含有率としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して0モル%〜40モル%が好ましく、10モル%〜25モル%がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、リソグラフィー特性に優れるパターンを形成することができる。
【0095】
[B]重合体において、構造単位(IV)の含有率としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜50モル%が好ましく、10モル%〜30モル%がより好ましい。構造単位(IV)の含有率を上記範囲とすることで、レジストと基板との密着性を向上させることができる。一方、50モル%を超えると良好なパターンが得られないおそれがある。
【0096】
<[B]重合体の合成方法>
上記[B]重合体は、例えば所定の各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤と共に、適当な溶媒中で混合することにより合成できる。
【0097】
上記重合に使用される溶媒及びラジカル重合開始剤としては、例えば[A]重合体の合成方法で挙げたものと同様の溶媒及びラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0098】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0099】
なお、当該フォトレジスト組成物において、[A]重合体における構造単位(I−1)の含有率が10モル%以上70モル%以下であり、かつ[B]重合体における構造単位(I−2)の含有率が10モル%以上70モル%以下であることが好ましい。上記含有率で構造単位(I−1)を有する[A]重合体と、構造単位(I−2)を有する[B]重合体をブレンドすることで、当該フォトレジスト組成物は、現像液に対する反応性が向上し、ブリッジ耐性及び解像性に優れる。
【0100】
<[C]酸発生体>
[C]酸発生体は、レジストパターン形成の一工程である露光工程において、マスクを通過した光によって酸を発生する化合物である。当該フォトレジスト組成物における[C]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の態様(以下、この態様を「[C]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた態様でも、これらの両方の態様でもよい。
【0101】
[C]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの[C]酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0102】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。これらのうち、スルホニウム塩が好ましい。
【0103】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート、下記式で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、下記式で表される化合物が好ましい。
【0104】
【化15】

【0105】
これらの[C]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]酸発生体が「剤」である場合の使用量としては、当該フォトレジスト組成物により形成されるレジスト膜の感度及びリソグラフィー性能を確保する観点から、当該フォトレジスト組成物において[A]重合体及び[B]重合体の質量の合計を100質量部とした場合、1質量部以上25質量部以下が好ましく、5質量部以上20質量部以下がより好ましい。
【0106】
<[D]酸拡散制御剤>
当該フォトレジスト組成物は、さらに[D]酸拡散制御剤を含有することが好ましい。[D]酸拡散制御剤は、露光により[C]酸発生体から生じる酸の、レジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する作用を有するものである。従って、当該フォトレジスト組成物は[A]重合体、[B]重合体及び[C]酸発生体に加えて、[D]酸拡散制御剤を含有することで酸の拡散をより抑制でき、得られるレジストパターンのリソグラフィー特性を向上させることができる。
【0107】
[D]酸拡散制御剤としては、例えばN−t−アルコキシカルボニル基を有する窒素含有化合物が好ましく用いられる。具体的には、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(S)−(−)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−アミロキシカルボニルピロリジン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−(n−ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等が挙げられる。
【0108】
また、[D]酸拡散制御剤としては、上記化合物以外にも、例えば3級アミン化合物、4級アンモニウムヒドロキシド化合物、その他含窒素複素環化合物等の含窒素化合物が用いられる。
【0109】
3級アミン化合物としては、例えば
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;
トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン等のアルカノールアミン類;
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。
【0110】
4級アンモニウムヒドロキシド化合物としては、例えばテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0111】
当該フォトレジスト組成物において、[D]酸拡散制御剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。酸拡散制御剤の使用量としては、[A]重合体及び[B]重合体の使用量の合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。使用量が10質量部を超えると、レジストとしての感度が低下する傾向にある。
【0112】
<[E]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は通常、[E]溶媒を含有する。[E]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、2種以上を併用してもよい。
【0113】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0114】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0115】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0116】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0117】
その他の溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0118】
これらの溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0119】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、フッ素原子含有重合体、脂環式骨格化合物、界面活性剤、増感剤等のその他の任意成分を含有できる。以下、これらの任意成分について詳述する。かかるその他の任意成分は、それぞれを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0120】
[フッ素原子含有重合体]
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[B]重合体よりもフッ素原子含有率が高い重合体をさらに含有していてもよい。当該フォトレジスト組成物が、フッ素原子含有重合体をさらに含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中のフッ素原子含有重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があるので、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、このフッ素原子含有重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該フォトレジスト組成物がフッ素原子含有重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト塗膜を形成することができる。
【0121】
上記フッ素含有重合体としては、フッ素原子を有している限り、特に限定されないが、[A]重合体及び[B]重合体よりフッ素原子含有率(質量%)が高いことを必須とする。[A]重合体よりフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0122】
本発明におけるフッ素原子含有重合体は、フッ素原子を構造中に含む単量体を1種類以上重合することにより形成される。
【0123】
フッ素原子含有重合体が有する構造単位としては、下記式で表される構造単位(以下、「構造単位(V)」ともいう)が挙げられる。
【0124】
【化16】

【0125】
上記式中、R14は水素、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Yは連結基である。R15は少なくとも一つ以上のフッ素原子を含有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体である。
【0126】
上記Yで表される連結基としては、例えば単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等が挙げられる。
【0127】
フッ素原子含有重合体は、構造単位(V)以外にも、例えば現像液に対する溶解速度を制御するために酸解離性基を有する構造単位、ラクトン基を含む構造単位、極性基を含む構造単位、基板からの反射による光の散乱を抑えるために芳香族化合物に由来する構造単位等の「他の構造単位」を1種類以上含有することができる。
【0128】
フッ素原子含有重合体のMwとしては、1,000〜50,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましく、1,000〜10,000がさらに好ましい。フッ素原子含有重合体のMwが1,000未満の場合、十分な前進接触角を得ることができない。一方、Mwが50,000を超えると、レジストとした際の現像性が低下する傾向にある。フッ素原子含有重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2である。
【0129】
上記フォトレジスト組成物におけるフッ素原子含有重合体の含有率としては、[A]重合体と[B]重合体の質量の合計100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、0〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましく、1〜8質量部が特に好ましい。上記フォトレジスト組成物における上記フッ素原子含有重合体の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジスト膜表面の撥水性及び溶出抑制性をより高めることができる。
【0130】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。
【0131】
[増感剤]
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを[C]酸発生体に伝達しそれにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該フォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を有する。増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0132】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該フォトレジスト組成物は、例えば[E]溶媒中で[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体、[D]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。当該フォトレジスト組成物は、通常その使用に際して全固形分濃度が1質量%〜30質量%、好ましくは1.5質量%〜25質量%となるように[E]溶媒に溶解した後、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって調製される。
【0133】
<レジストパターンの形成方法>
本発明のフォトレジスト組成物を用いて、例えば下記工程によりレジストパターンを形成することができる。
(1)当該フォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)上記レジスト膜を露光する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「工程(3)」ともいう)
を有する。ホールパターンの形成、特に密集コンタクトホールパターンの形成において、当該フォトレジスト組成物を用いることで、ホールブリッジ耐性及び解像性に優れるレジストパターンを形成できる。従って、当該フォトレジスト組成物から微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。以下、各工程を詳述する。
【0134】
[工程(1)]
本工程では、フォトレジスト組成物又はこれを溶媒に溶解させて得られた当該フォトレジスト組成物の溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるように塗布し、場合によっては通常70℃〜160℃程度の温度でプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を揮発させレジスト膜を形成する。
【0135】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成されたレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し露光させる。なお、この際、コンタクトホールパターン、ライン・アンド・スペースパターン等の目的のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。当該フォトレジスト組成物は、現像液に対する反応性が高く、ブリッジ耐性及び解像性に優れるため、コンタクトホールパターンのうち、特に密集楕円コンタクトホールパターンの形成に好適に用いられる。上記露光に用いられる放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等から適宜選択して照射する。これらのうち、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、EUV(極紫外線、波長13.5nm)等のより微細なパターンを形成可能な光源であっても好適に使用できる。次いで、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[A]重合体及び[B]重合体の酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、通常50℃〜180℃程度である。
【0136】
[工程(3)]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することによりレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0137】
なお、液浸露光を行う場合は、工程(2)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(3)の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報等参照)、工程(3)の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報等参照)のいずれを用いてもよい。
【実施例】
【0138】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例および比較例における各物性値の測定・評価は、下記に示す方法により行った。
【0139】
[分子量(Mw、Mn)測定方法]
各重合体の分子量(Mw、Mn)測定には、東ソー社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は各分子量(Mw、Mn)の測定結果より算出した。
【0140】
13C−NMR分析]
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を使用し、測定した。
【0141】
[単量体由来の低分子量成分量の測定]
ジーエルサイエンス製Intersil ODS-25μmカラム(4.6mmφ×250mm)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒アクリロニトリル/0.1%リン酸水溶液の分析条件で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0142】
<[A]重合体及び[B]重合体の合成>
[A]重合体及び[B]重合体の合成に使用した単量体の構造を下記に示す。
【0143】
【化17】

【0144】
[合成例1]
構造単位(I−1)を与える上記化合物(M−13)51.29g(60モル%)、並びに構造単位(II)を与える上記化合物(M−1)19.72g(20モル%)及び化合物(M−2)28.28g(20モル%)を、200gの2−ブタノンに溶解し、AIBN4.13g(5モル%)を添加して単量体溶液を調製した。100gの2−ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。2,000gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を300gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−1)を得た(67g、収率67%)。得られた重合体(A−1)のMwは6,700であり、Mw/Mnは1.51であり、低分子量成分の残存割合は1%であった。また、13C−NMR分析の結果、化合物(M−13)由来の構造単位:化合物(M−1)由来の構造単位:化合物(M−2)由来の構造単位の含有率は、66:17:17(モル%)であった。
【0145】
[合成例2〜8]
表1に記載の各単量体を所定量配合した以外は、合成例1と同様に操作して各重合体を合成した。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を表2に示す。なお、表中の「−」は、その成分を使用しなかったことを示す。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
<フォトレジスト組成物の調製>
各実施例及び比較例のフォトレジスト組成物の調製に用いた[C]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤及び[E]溶媒は以下の通りである。
【0149】
<[C]酸発生剤>
下記式で表される化合物
【0150】
【化18】

【0151】
<[D]酸拡散制御剤>
下記式で表される化合物
【0152】
【化19】

【0153】
<[E]溶媒>
E−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E−2:シクロヘキサノン
E−3:γ−ブチロラクトン
【0154】
[実施例1]
[A]重合体としての共重合体(A−1)50質量部、[B]重合体としての共重合体(B−1)50質量部、[C]酸発生剤としての(C−1)14.6質量部、[D]酸拡散制御剤としての(D−1)2.0質量部、並びに[E]溶媒としての(E−1)2,336質量部及び(E−3)30質量部を混合し、各成分を混合して均一溶液とした。その後、孔径0.20μmのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、フォトレジスト組成物を調製した。
【0155】
[実施例2〜4及び比較例1〜2]
表3に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例1と同様に操作して、各フォトレジスト組成物を調製した。
【0156】
【表3】

【0157】
<評価>
上記各フォトレジスト組成物について、下記のように密集楕円コンタクトホールパターンを形成し、各種物性を評価した。結果を表4に示す。
【0158】
<密集楕円コンタクトホールパターンの形成>
下層反射防止膜(ARC66、日産化学社製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、各フォトレジスト組成物によって、膜厚90nmのレジスト膜を形成し、100℃で60秒間PBを行った。このレジスト膜上にLithius Pro−i(東京エレクトロン社製)を用い、TCX041(JSR社製)をスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて90℃でPBを行い、膜厚90nmのトップコート膜を形成した。次に、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR S610C、NIKON社製)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Dipoleの条件により、短軸が46nmSpace85nmPitchかつ長軸が138nmSpace161nmPitchの楕円コンタクトホールのマスクパターンを介して露光した。露光後、各フォトレジスト組成物について表4に示す温度及び時間のPEBを行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、短軸が46nmSpace85nmPitchかつ長軸が138nmSpace161nmPitchの楕円コンタクトホールのマスクパターンを介して露光した楕円コンタクトホールの短軸が30nmを形成する露光量(mJ/cm)を最適露光量(Eop)とした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(CG4000、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
【0159】
[ブリッジ耐性]
上記Eopより大きい露光量の放射線で露光したとき、短軸が46nmSpace85nmPitchかつ長軸が138nmSpace161nmPitchの楕円コンタクトホールのマスクパターンを介して形成した楕円コンタクトホールパターンにおいて、隣り合うコンタクトホールパターン同士が繋がらない最大の短軸長(nm)を測長値(I)とした。測長値(I)を用いて下記の式にて余裕度(%)を算出し、ブリッジ耐性とした。この余裕度の値が大きい程ブリッジ耐性に優れており、15%以上の場合、ブリッジ耐性は「良好」であり、15%未満の場合、ブリッジ耐性は「不良」と判断した。
余裕度(%)={測長値(I)−30}/{測長値(I)}×100
【0160】
[解像性]
上記Eopにおいて、短軸が46nmSpace85nmPitchかつ長軸が138nmSpace161nmPitchの楕円コンタクトホールのマスクパターンを介して形成した楕円コンタクトホールパターンの長軸長(nm)を測長値(II)とした。測長値(II)を用いて、以下の式にて短長軸比率を算出し、解像性とした。この解像性は、上記短長軸比率の値が大きい程よく、3.33以上の場合「良好」、3.33未満の場合「不良」と判断した。
短長軸比率={測長値(II)}/30
【0161】
【表4】

【0162】
表4に示される結果から明らかなように、当該フォトレジスト組成物を用いることにより、楕円の密集コンタクトホールパターンにおいて優れたブリッジ耐性と解像性を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明のフォトレジスト組成物は、現像液に対する反応性が高いため、ホールパターンの形成、特に密集コンタクトホールパターンの形成において、ホールブリッジの発生を抑制することができ、解像性にも優れる。そのため、当該フォトレジスト組成物は、微細パターンを高精度に形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]単環のラクトン基を含む構造単位(I−1)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体、
[B]多環のラクトン基を含む構造単位(I−2)及び酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体、並びに
[C]感放射線性酸発生体
を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項2】
上記単環のラクトン基が、γ−ブチロラクトン基である請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項3】
構造単位(I−1)が、下記式(1)で表される請求項1又は請求項2に記載のフォトレジスト組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、フッ素原子、水酸基又は1価の有機基である。nは0〜3の整数である。)
【請求項4】
上記多環のラクトン基が、ノルボルナンラクトン基である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項5】
構造単位(I−2)が、下記式(2)で表される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R’は、フッ素原子、水酸基又は1価の有機基である。mは、0〜6の整数である。)
【請求項6】
構造単位(II)が、下記式(3)で表される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【化3】

(式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R及びRは、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に2価の脂環式基を形成していてもよい。また、上記アルキル基及び脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。)
【請求項7】
[A]重合体における構造単位(I−1)の含有率が10モル%以上70モル%以下であり、かつ[B]重合体における構造単位(I−2)の含有率が10モル%以上70モル%以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項8】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率が20モル%以上80モル%以下であり、かつ[B]重合体における構造単位(II)の含有率が20モル%以上80モル%以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
[A]重合体の含有量が、[B]重合体100質量部に対して25質量部以上400質量部以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。


【公開番号】特開2013−88763(P2013−88763A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231719(P2011−231719)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】