説明

フォルト検出回路

【課題】フォルト検出回路において、回路規模を低減し、故障や誤動作がどの部分で起こっているのかを明らかにできるようにする。
【解決手段】論理回路20を自己双対関数によって設計し、外部から同じ内容のデータを2回入力する。論理回路20では、転送1回目のデータが反転されずに演算され、この結果が第4フリップフロップ32に保持され、転送2回目のデータが反転されて演算され、この結果が第3フリップフロップ31に保持される。これにより、出力側エラー検出回路34によって、第4フリップフロップ32に保持されたデータと、第3フリップフロップ31に保持されたデータとが比較され、各データが異なるときにはエラーが出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ転送のエラーを検出するフォルト検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では半導体プロセスの微細化が進み、半導体パッケージ内に存在する微量な放射線物質が放射性崩壊して放射されるアルファ線(α線)によってデジタル回路の誤動作が懸念されている。そこで、特許文献1にて提案された多数決回路のように、計算機の信頼性を高める手法が知られている。
【0003】
図3は、フリップフロップ(以下、FFと記す)を用いてデータ転送のエラーを検出するフォルト検出回路の従来回路図を示したものである。この図に示されるように、FF60およびFF61が並列に配置され、FF62およびFF63が並列に配置されており、各FF60〜63にそれぞれ同じデータ(DATA)が入力される。このように、データを入力する回路が冗長化されている。
【0004】
そして、FF60の出力が一方の論理回路64に入力され、FF61の出力が他方の論理回路65に入力される。また、FF62の出力が一方の論理回路64に入力され、FF63の出力が他方の論理回路65に入力される。各論理回路64、65は同じ関数F(X)を元に処理を行う回路である。したがって、フォルト検出回路は二重化されている。
【0005】
FF60の出力をE、FF61の出力をE’、FF62の出力をF、FF63の出力をF’とすると、一方の論理回路64では関数F(E,F)に従った演算が行われる。また、他方の論理回路65では関数F(E’,F’)に従った演算が行われる。そして、一方の論理回路64の演算結果はFF66に入力され、他方の論理回路65の演算結果はFF67に入力される。FF66の出力はフォルト検出回路の出力(OUT)ともなる。
【0006】
また、FF60およびFF61の出力はXOR回路68に入力され、FF62およびFF63の出力はXOR回路69に入力される。さらに、FF66およびFF67の出力はXOR回路70に入力される。そして、XOR回路68〜70の出力がOR回路71に入力される。
【0007】
このようなフォルト検出回路では、FF60、FF61、論理回路64、およびFF66が回路の一系統となり、FF62、FF63、論理回路65、およびFF67が回路の一系統となる。すなわち、図3に示されるフォルト検出回路は二系統となるように構成され、クロック(CLK)に従って、フォルト検出回路に入力されたデータが同時に処理されていく。
【0008】
そして、FF60およびFF61の出力Eおよび出力E’が同じであれば、XOR回路68の出力は「0」となり、異なれば出力は「1」となる。同じく、FF62およびFF63の出力Fおよび出力F’が同じであれば、XOR回路69の出力は「0」となり、異なれば出力は「1」となる。さらに、一方の論理回路64の結果である出力Gと他方の論理回路65の結果である出力G’とが同じであれば、XOR回路70の出力は「0」となり、異なれば出力は「1」となる。
【0009】
ここで、各FF60〜63、66、67や各論理回路64、65に誤動作や故障が生じ、各XOR回路68〜70において2つの入力が異なることになると、XOR回路68〜70から「1」が出力される。このため、OR回路71からエラー(ERROR)を示す「1」が出力される。これにより、フォルト検出回路の誤作動や故障を検出できるようになっている。
【特許文献1】特開平6−342381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の技術では、フォルト検出回路が二系統で構成されているため、フォルト検出回路の回路規模が一系統の場合の2倍以上に増加してしまうという問題があった。また、回路の誤動作は、同時に同じ値に誤動作しやすい。このため、フォルト検出回路を2重化しても、各系統が同時に誤動作してしまい、どちらの系統が誤動作を起こしているのかを検出できないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記点に鑑み、フォルト検出回路において、回路規模を低減し、故障や誤動作がどの部分で起こっているのかを明らかにできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、外部から同じ内容のデータが2回入力されるようになっており、1回目に入力されたデータと2回目に入力されたデータとに基づいてデータ転送のエラー検出を行うフォルト検出回路であって、変数で表現された論理関数において変数の否定をとり、かつ、論理関数全体の否定をとると変数で表現された論理関数と等しいという自己双対関数に従って演算を行い、その結果を出力する論理回路(20)と、データを保持する第1フリップフロップ(11)と、クロックに従って第1フリップフロップ(11)に保持されたデータを保持する第2フリップフロップ(12)と、第1フリップフロップ(11)に保持されたデータを論理回路(20)に入力する一方、第2フリップフロップ(12)に保持されたデータを反転させて論理回路(20)に入力する入力側選択回路(13)と、第1フリップフロップ(11)に保持されたデータおよび第2フリップフロップ(12)に保持されたデータを入力し、各データが異なる値であるとき、エラーを出力する入力側エラー検出回路(14)とを備えたデータ入力回路(10)と、論理回路(20)から出力された演算結果を保持する第3フリップフロップ(31)と、クロックに従って第3フリップフロップ(31)に保持された演算結果を保持する第4フリップフロップ(32)と、第3フリップフロップ(31)に保持されたデータを外部に出力する一方、第4フリップフロップ(32)に保持されたデータを反転させて外部に出力する出力側選択回路(33)と、第3フリップフロップ(31)に保持されたデータおよび第4フリップフロップ(32)に保持されたデータを入力し、各データが異なる値であるとき、エラーを出力する出力側エラー検出回路(34)とを備えたデータ出力回路(30)とを備えており、各データ入力回路(10)の第1フリップフロップ(11)に外部から1回目のデータの入力がなされたとき、クロックに従って、1回目のデータは第1フリップフロップ(11)から入力側選択回路(13)を介して論理回路(20)に入力されて演算され、論理回路(20)の1回目の演算結果が第3フリップフロップ(31)に保持され、各データ入力回路(10)の第1フリップフロップ(11)に外部から2回目のデータの入力がなされたとき、クロックに従って、第3フリップフロップ(31)に保持された1回目の演算結果が第4フリップフロップ(32)に保持されると共に、第1フリップフロップ(11)に入力された2回目のデータが第2フリップフロップ(12)に入力されて保持され、さらに第2フリップフロップ(12)から入力側選択回路(13)を介して反転されて論理回路(20)に入力されて演算され、論理回路(20)の2回目の演算結果が第3フリップフロップ(31)に保持されるようになっており、入力側エラー検出回路(14)は、第1フリップフロップ(11)に保持された1回目のデータと第2フリップフロップ(12)に保持された2回目のデータとを比較し、各データが等しいときにはエラーを出力しない一方、各データが異なるときにはエラーを出力し、出力側エラー検出回路(34)は、第4フリップフロップ(32)に保持された1回目の演算結果と第3フリップフロップ(31)に保持された2回目の演算結果とを比較し、1回目のデータが反転されずに演算された1回目の演算結果と2回目のデータが反転されて演算された結果とが自己双対関数の性質から等しいときにはエラーを出力しない一方、異なるときにはエラーを出力することを特徴とする。
【0013】
このように、論理回路(20)は自己双対関数によって設計されているため、故障や誤作動が起こらなければ、反転させないデータによる演算結果と反転させたデータによる演算結果とが等しくなることを利用することができる。すなわち、外部から同じ内容のデータを1回目と2回目とに分けて入力し、各データを論理回路(20)で演算してその結果を出力側エラー検出回路(34)にて比較することにより、エラーを検出することができる。
【0014】
したがって、同じ内容の論理回路を2つ用意する必要がなく、フォルト検出回路を二重化しなくてもデータ転送のエラーを検出することができるため、回路規模を低減できる。また、入力側エラー検出回路(14)および出力側エラー検出回路(34)それぞれでエラーを検出することができるため、どの部分で故障や誤作動が起こっているのかを明らかにすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、入力側エラー検出回路(14)の出力と出力側エラー検出回路(34)の出力とをそれぞれ入力し、各出力すべてがエラーを示すものでないときにはエラーを出力しない一方、各出力のうち少なくとも1つがエラーを示すものであるときエラーを出力する中継回路(40)と、クロックを入力し、該クロックを2分周した2分周信号を生成して出力する2分周用フリップフロップ(45)と、2分周用フリップフロップ(45)から入力される2分周信号に従って、中継回路(40)の出力を2回目のデータの転送ごとに外部に出力するエラー出力回路(50)とを備えていることを特徴とする。
【0016】
これにより、入力側エラー検出回路(14)の出力と出力側エラー検出回路(34)の出力とを集約でき、フォルト検出回路のエラーとして該エラーを2回目のデータの転送ごとに外部に出力することができる。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示されるフォルト検出回路は、例えばデジタル回路においてデータを転送する際にデータが正しく転送されたか否かを検出するものである。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るフォルト検出回路の全体回路図である。この図に示されるように、フォルト検出回路は、複数のデータ入力回路10と、論理回路20と、データ出力回路30と、中継回路40と、2分周用フリップフロップ45(以下、2分周用FF45という)と、エラー出力回路50とを備えている。
【0020】
複数のデータ入力回路10それぞれは、第1フリップフロップ11(以下、第1FF11という)と、第2フリップフロップ12(以下、第2FF12という)と、入力側選択回路13と、入力側エラー検出回路14とを備えている。
【0021】
第1FF11および第2FF12は、入力されたデータを保持するものである。第1FF11の入力端子には外部からデータ(DATA)が入力される。本実施形態では、第1FF11の出力端子が第2FF12の入力端子に接続されている。そして、第1FF11にクロック(CLK)が入力されると第1FF11に保持されたデータが第2FF12に入力され第2FF12にて保持されるようになっている。第1FF11および第2FF12は、例えばDフリップフロップである。
【0022】
入力側選択回路13は、第1FF11に保持されたデータを論理回路20に入力する一方、第2FF12に保持されたデータを反転させて論理回路20に入力するものである。このため、入力側選択回路13の非反転入力端子が第1FF11の出力端子に接続され、反転入力端子が第2FF12の出力端子に接続されている。また、入力側選択回路13の出力端子が論理回路20に接続されている。
【0023】
入力側エラー検出回路14は、排他的論理和を演算するものであり、いわゆるXOR回路である。すなわち、入力側エラー検出回路14は、第1FF11に保持されたデータおよび第2FF12に保持されたデータをそれぞれ入力し、各データが異なる値であるとき、エラーを出力する。「エラー」とはエラーを示す信号である。エラーでなければ、エラーではないことを示す信号が出力される。このため、入力側エラー検出回路14の一方の入力端子が第1FF11の出力端子に接続され、他方の入力端子が第2FF12の出力端子に接続されている。また、入力側エラー検出回路14の出力端子が中継回路40に接続されている。
【0024】
本実施形態では、データ入力回路10はフォルト検出回路に2つ設けられ、一方は通常の回路とされ、他方は検査用の回路とされる。いずれのデータ入力回路10も同じ構成であり、データ転送に冗長性を持たせている。
【0025】
論理回路20は、自己双対関数で設計された回路である。自己双対関数とは、変数で表現された論理関数において変数の否定をとり、かつ、論理関数全体の否定をとると変数で表現された論理関数と等しくなる関数である。論理回路20は、この自己双対関数に従って演算を行い、その結果を出力する。この自己双対関数の具体的な関係式を図2に示す。
【0026】
図2に示された式(1)がいわゆる自己双対関数を簡潔に表した関係式である。変数Xの否定をとって関数全体の否定をとると元の関数F(X)と同じになることを表している。
【0027】
そして、図2中の式(2)が本実施形態に係る自己双対関数である。ここで、図2の式(2)における各項をA〜Dの記号で置き換えると、図2中の式(3)として表現できる。以下では、式(2)の各項についてはA〜Dという記号で表現する。
【0028】
例えば、変数xn+1=1とすると、A=1、C=0であるから、図2中の式(2)からG(X,xn+1)=Bという結果が得られる。一方、変数xn+1=0とすると、A=0、C=1であるから、図2中の式(2)からG(X,xn+1)=Dという結果が得られる。このとき、Dは、Bの変数Xの否定をとって関数全体の否定をとると図2中の式(1)に基づいてBと等しくなる。
【0029】
したがって、データを論理回路20に入力することで得られた演算結果と、反転させたデータを論理回路20に入力することで得られた演算結果とは、図2中の式(1)の関係から等しいということになる。すなわち、フォルト検出回路は同じ内容のデータを2回受け取り、一方のデータを反転させて論理回路20で処理し、他方のデータを反転させないで論理回路20で処理し、その結果を後述する出力側エラー検出回路34によって比較する。これにより、各演算結果が等しいか否かを判定することでデータが正しく転送されているか否かを判定できるようになっている。
【0030】
論理回路20には、複数のデータ入力回路10からデータが入力されるが、基本的には論理回路20は通常の回路としてのデータ入力回路10から入力されたデータを処理する。なお、これは一例であり、複数のデータ入力回路10から入力したデータを論理回路20にてどのように扱うかは自由に設定すれば良い。
【0031】
データ出力回路30は、第3フリップフロップ31(以下、第3FF31という)と、第4フリップフロップ32(以下、第4FF32という)と、出力側選択回路33と、出力側エラー検出回路34とを備えている。
【0032】
第3FF31および第4FF32は、第1FF11および第2FF12と同様に、入力されたデータを保持するものである。具体的には、第3FF31の入力端子が論理回路20に接続されており、出力端子が第4FF32の入力端子に接続されている。そして、第3FF31にクロックが入力されると第3FF31に保持されたデータが第4FF32に入力され第4FF32にて保持されるようになっている。第3FF31および第4FF32は、第1FF11および第2FF12と同様に、例えばDフリップフロップである。
【0033】
出力側選択回路33は、第3FF31に保持されたデータを外部に出力する一方、第4FF32に保持されたデータを反転させて外部に出力するものである。このため、出力側選択回路33の非反転入力端子が第3FF31の出力端子に接続され、反転入力端子が第4FF32の出力端子に接続されている。また、出力側選択回路33の出力端子が外部の回路に接続されている。
【0034】
出力側エラー検出回路34は、入力側エラー検出回路14と同様に排他的論理和を演算するものであり、XOR回路である。すなわち、出力側エラー検出回路34は、第3FF31に保持されたデータおよび第4FF32に保持されたデータをそれぞれ入力し、各データが異なる値であるとき、エラーを出力する。このため、出力側エラー検出回路34の一方の入力端子が第3FF31の出力端子に接続され、他方の入力端子が第4FF32の出力端子に接続されている。また、出力側エラー検出回路34の出力端子が中継回路40に接続されている。
【0035】
中継回路40は、論理和を演算するものであり、いわゆるOR回路である。このような中継回路40は、各入力側エラー検出回路14の各出力と出力側エラー検出回路34の出力とをそれぞれ入力する。そして、中継回路40は、各出力すべてがエラーを示すものでないときにはエラーを出力しない一方、各出力のうち少なくとも1つがエラーを示すものであるときエラーを出力する。
【0036】
2分周用FF45は、クロック(CLK)を2分周した信号でエラー出力回路50をマスクするものである。具体的には、図1に示されるように、2分周用FF45はクロック(CLK)を入力し、該クロックを2分周すなわちクロックの周期を1/2倍した2分周信号を生成し、該2分周信号をFF出力として出力する。これは、2回目のデータの転送ごとにエラー出力回路50からエラー信号を出力させるためである。
【0037】
エラー出力回路50は、論理積を演算するものであり、いわゆるAND回路である。このエラー出力回路50は、2分周用FF45からFF出力が入力されるタイミングで、中継回路40から入力される信号をエラー信号(ERROR)として外部に出力するものである。この場合、エラー出力回路50は、中継回路40からエラーを示す信号が入力されなければエラーではないことを示す信号を外部に出力し、中継回路40からエラーを示す信号が入力されれば、エラーを示す信号をエラー信号として外部に出力する。以上が、フォルト検出回路の全体構成である。
【0038】
次に、上記のフォルト検出回路の作動について説明する。フォルト検出回路は、外部から同じ内容のデータを2回入力するようになっており、1回目に入力されたデータと2回目に入力されたデータとに基づいてデータ転送のエラー検出を行う。
【0039】
まず、クロックに従って、外部から各データ入力回路10の第1FF11にデータの転送1回目の入力がそれぞれ行われる。そして、クロックに従って、転送1回目のデータは第1FF11から出力されると共に入力側選択回路13を介して論理回路20に入力され、論理回路20にて処理される。こうして論理回路20で処理された1回目の演算結果は、第3FF31に入力されて保持される。
【0040】
例えばデータが「1」の場合、転送1回目のデータは「1」として論理回路20に入力されて処理される。したがって、上述のように、図2中の式(2)によってBという演算結果が第3FF31に保持される。
【0041】
続いて、クロックに従って、外部から各データ入力回路10の第1FF11にデータの転送2回目の入力がそれぞれ行われる。これにより、第3FF31に保持された1回目の演算結果が第4FF32に保持される。また、第1FF11に入力された2回目のデータが第2FF12に入力されて保持され、さらに第2FF12から入力側選択回路13を介して反転されて論理回路20に入力されて演算される。
【0042】
すなわち、「1」だったデータが、転送2回目では入力側選択回路13で反転されて「0」として論理回路20に入力されて処理される。そして、論理回路20の2回目の演算結果が第3FF31に保持される。
【0043】
このように、データの転送1回目および2回目が行われることにより、第4FF32には転送1回目のデータの演算結果が保持され、第3FF31には転送2回目の反転データの演算結果が保持される。
【0044】
第3FF31および第4FF32に保持されたデータは、出力側選択回路33を介して外部に出力される。第3FF31に保持された転送2回目のデータは、出力側選択回路33からそのまま外部に出力される。一方、第4FF32に保持された転送1回目のデータは、出力側選択回路33にて反転されて出力される。
【0045】
また、各データ入力回路10では、データを2回入力した際に、第1FF11に保持された転送1回目のデータと第2FF12に保持された転送2回目のデータとを入力側エラー検出回路14にて比較する。これにより、転送1回目のデータと転送2回目のデータとが等しいか否かが判定され、各データ入力回路10の故障や誤作動が検出される。そして、各データが異なるときにはエラーを示す信号が中継回路40に入力され、各データが等しいときにはエラーを示さない信号が中継回路40に入力される。
【0046】
さらに、第4FF32に保持された転送1回目のデータの演算結果と第3FF31に保持された転送2回目のデータの演算結果とが出力側エラー検出回路34にて比較される。すなわち、転送1回目のデータが反転されずに演算された結果と転送2回目のデータが反転されて演算された結果とが自己双対関数の性質から等しいか否かが判定される。そして、各データが異なるときにはエラーを示す信号が中継回路40に入力され、各データが等しいときにはエラーを示さない信号が中継回路40に入力される。
【0047】
各入力側エラー検出回路14および出力側エラー検出回路34からエラーを示す信号が少なくとも1つ入力されれば、中継回路40から該エラーを示す信号がエラー出力回路50に入力される。そして、エラー出力回路50では、2分周用FF45から入力されるFF出力のタイミングに従って、つまり2回目のデータの転送ごとのタイミングで、エラー出力回路50からエラー信号が出力される。もちろん、各入力側エラー検出回路14および出力側エラー検出回路34からエラーを示す信号が中継回路40に入力されない場合には、エラー出力回路50からはエラーを示す信号は出力されない。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、論理回路20は自己双対関数によって設計されていることが特徴となっている。これによると、故障や誤作動が起こらなければ、同じ内容のデータにおいて、反転させないデータによる論理回路20の演算結果と反転させたデータによる論理回路20の演算結果とが等しくなることを利用することができる。すなわち、図2中の式(1)に示される関係を利用することができる。
【0049】
そして、反転させたデータの演算結果と反転させないデータの演算結果とを出力側エラー検出回路34にて比較することにより、論理回路20の故障や誤作動を検出することができ、ひいてはエラーとして外部に出力することができる。
【0050】
このように、フォルト検出回路に備える論理回路20は1つで済むため、フォルト検出回路を二重化しなくても良く、回路規模を低減できる。また、出力側エラー検出回路34だけでなく、論理回路20にデータが入力される前の段階で入力側エラー検出回路14によってエラーを検出することができる。このため、フォルト検出回路のどの部分で故障や誤作動が起こっているのかを明らかにすることができる。
【0051】
(他の実施形態)
上記実施形態では、データ入力回路10が複数設けられているが、これは冗長性を高めるためであり、1つだけでも良いし、3つ以上設けられていても良い。
【0052】
上記実施形態では、フォルト検出回路に中継回路40やエラー出力回路50が備えられた構成が示されているが、これはフォルト検出回路の構成の一例であって、中継回路40やエラー出力回路50が備えられていなくても良い。すなわち、各入力側エラー検出回路14や出力側エラー検出回路34の各出力をそのまま外部に出力する構成であっても良い。もちろん、中継回路40やエラー出力回路50が備えられていれば、各入力側エラー検出回路14の出力や出力側エラー検出回路34の出力を集約して外部にエラーを出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォルト検出回路の全体回路図である。
【図2】自己双対関数の数式を示した図である。
【図3】従来のフォルト検出回路の回路図である。
【符号の説明】
【0054】
10 データ入力回路
11 第1フリップフロップ
12 第2フリップフロップ
13 入力側選択回路
14 入力側エラー検出回路
20 論理回路
30 データ出力回路
31 第3フリップフロップ
32 第4フリップフロップ
33 出力側選択回路
34 出力側エラー検出回路
40 中継回路
50 エラー出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から同じ内容のデータが2回入力されるようになっており、1回目に入力されたデータと2回目に入力されたデータとに基づいてデータ転送のエラー検出を行うフォルト検出回路であって、
変数で表現された論理関数において前記変数の否定をとり、かつ、論理関数全体の否定をとると前記変数で表現された論理関数と等しいという自己双対関数に従って演算を行い、その結果を出力する論理回路(20)と、
前記データを保持する第1フリップフロップ(11)と、クロックに従って前記第1フリップフロップ(11)に保持されたデータを保持する第2フリップフロップ(12)と、前記第1フリップフロップ(11)に保持されたデータを前記論理回路(20)に入力する一方、前記第2フリップフロップ(12)に保持されたデータを反転させて前記論理回路(20)に入力する入力側選択回路(13)と、前記第1フリップフロップ(11)に保持されたデータおよび前記第2フリップフロップ(12)に保持されたデータを入力し、前記各データが異なる値であるとき、エラーを出力する入力側エラー検出回路(14)とを備えたデータ入力回路(10)と、
前記論理回路(20)から出力された演算結果を保持する第3フリップフロップ(31)と、前記クロックに従って前記第3フリップフロップ(31)に保持された前記演算結果を保持する第4フリップフロップ(32)と、前記第3フリップフロップ(31)に保持されたデータを外部に出力する一方、前記第4フリップフロップ(32)に保持されたデータを反転させて外部に出力する出力側選択回路(33)と、前記第3フリップフロップ(31)に保持されたデータおよび前記第4フリップフロップ(32)に保持されたデータを入力し、前記各データが異なる値であるとき、エラーを出力する出力側エラー検出回路(34)とを備えたデータ出力回路(30)とを備えており、
前記データ入力回路(10)の前記第1フリップフロップ(11)に外部から1回目のデータの入力がなされたとき、前記クロックに従って、前記1回目のデータは前記第1フリップフロップ(11)から前記入力側選択回路(13)を介して前記論理回路(20)に入力されて演算され、前記論理回路(20)の1回目の演算結果が前記第3フリップフロップ(31)に保持され、
前記データ入力回路(10)の前記第1フリップフロップ(11)に外部から2回目のデータの入力がなされたとき、前記クロックに従って、前記第3フリップフロップ(31)に保持された前記1回目の演算結果が前記第4フリップフロップ(32)に保持されると共に、前記第1フリップフロップ(11)に入力された前記2回目のデータが前記第2フリップフロップ(12)に入力されて保持され、さらに前記第2フリップフロップ(12)から前記入力側選択回路(13)を介して反転されて前記論理回路(20)に入力されて演算され、前記論理回路(20)の2回目の演算結果が前記第3フリップフロップ(31)に保持されるようになっており、
前記入力側エラー検出回路(14)は、前記第1フリップフロップ(11)に保持された前記1回目のデータと前記第2フリップフロップ(12)に保持された前記2回目のデータとを比較し、前記各データが等しいときにはエラーを出力しない一方、前記各データが異なるときにはエラーを出力し、
前記出力側エラー検出回路(34)は、前記第4フリップフロップ(32)に保持された前記1回目の演算結果と前記第3フリップフロップ(31)に保持された前記2回目の演算結果とを比較し、前記1回目のデータが反転されずに演算された前記1回目の演算結果と前記2回目のデータが反転されて演算された結果とが前記自己双対関数の性質から等しいときにはエラーを出力しない一方、異なるときにはエラーを出力することを特徴とするフォルト検出回路。
【請求項2】
前記入力側エラー検出回路(14)の出力と前記出力側エラー検出回路(34)の出力とをそれぞれ入力し、前記各出力すべてがエラーを示すものでないときにはエラーを出力しない一方、前記各出力のうち少なくとも1つがエラーを示すものであるときエラーを出力する中継回路(40)と、
前記クロックを入力し、該クロックを2分周した2分周信号を生成して出力する2分周用フリップフロップ(45)と、
前記2分周用フリップフロップ(45)から入力される前記2分周信号に従って、前記中継回路(40)の出力を前記2回目のデータの転送ごとに外部に出力するエラー出力回路(50)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のフォルト検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−73083(P2010−73083A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242102(P2008−242102)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】