フォーカステストマスク、フォーカス計測方法、及び露光装置
【課題】投影光学系のフォーカス情報を高い計測再現性で、かつ高い計測効率で計測する。
【解決手段】フォーカステストレチクルTRに設けられた3つの評価用パターン12A〜12Cの外側パターン14は、それぞれY方向に延びた遮光膜よりなるラインパターン14Aと、ラインパターン14Aの+X方向側に設けられ、線幅がラインパターン14Aより狭く形成された位相シフト部15Cと、ラインパターン14Aの−X方向側に設けられ、線幅がラインパターン14Aより狭く形成された透過部15Bと、位相シフト部15Cの+X方向側に設けられた透過部と、を有し、評価用パターン12A〜12Cの位相シフト部15C及び透過部15Bの線幅b,b1,b2は互いに異なる。
【解決手段】フォーカステストレチクルTRに設けられた3つの評価用パターン12A〜12Cの外側パターン14は、それぞれY方向に延びた遮光膜よりなるラインパターン14Aと、ラインパターン14Aの+X方向側に設けられ、線幅がラインパターン14Aより狭く形成された位相シフト部15Cと、ラインパターン14Aの−X方向側に設けられ、線幅がラインパターン14Aより狭く形成された透過部15Bと、位相シフト部15Cの+X方向側に設けられた透過部と、を有し、評価用パターン12A〜12Cの位相シフト部15C及び透過部15Bの線幅b,b1,b2は互いに異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学系のフォーカス情報(像面情報)を計測するためのパターンが形成されたフォーカステストマスク、このフォーカステストマスクを用いて投影光学系のフォーカス情報を計測するフォーカス計測方法、及びそのフォーカステストマスクを備える露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程中で使用される露光装置においては、投影光学系の像面(ベストフォーカス位置)の情報であるフォーカス情報を計測するために、投影光学系の物体面にテストマスクを配置するとともに投影光学系の像面に基板等を配置し、そして、テストマスクに設けられた所定の評価用パターンを投影光学系を介して基板等に投影し、その評価用パターンの像の位置ずれ量等を計測することが行われている。
【0003】
従来の第1の計測方法として、2本の遮光膜よりなるラインパターン間の各ラインパターンの線幅よりも広いスペース部に照明光の位相を変化させる位相変更部を設けた評価用パターンを用い、この評価用パターンの投影光学系による像をフォトレジストが塗布された基板上に露光する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、現像後にその基板に形成される2本のライン状のレジストパターンの間隔からその基板の表面のデフォーカス量、ひいては像面の位置を求めることができる。
【0004】
また、従来の第2の計測方法として、例えば4本以上の複数の遮光ラインを含み各遮光ラインの外側の位相分布が計測方向に非対称とされた回折格子状の評価用パターンの像と、その複数の遮光ラインの像のうち外側の不要な遮光ラインの像を消すためのトリムパターンの像とをウエハに重ねて露光する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この場合にも、残された中央の複数の遮光ラインの像のシフト量から、ウエハの表面のデフォーカス量を求めることができる。
【0005】
また、従来の第3の計測方法として、複数のラインパターンの近傍にこれらのラインパターンの線幅よりも広い位相シフト部を設けた評価用パターンの空間像の横ずれ量を計測する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。この場合にも、各ラインパターンの像の横ずれ量から受光面のデフォーカス量を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−204305号公報
【特許文献2】特許第3297423号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/004211号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のフォーカス情報の計測方法のうち、第1及び第3の計測方法は、ラインパターンの線幅に比べてそれに接する(又はその近傍の)位相シフト部の幅が広く、計測感度(像の横ずれ量/デフォーカス量)を高めるためにはラインパターンの線幅を狭くすることが好ましい。しかしながら、ラインパターンの線幅を狭くすると、計測再現性が低下する恐れがあるとともに、現像後のレジストパターンの像を観察する場合には、レジストパターンの倒れ等が生じる恐れがある。さらに、そのようにラインパターンの線幅が狭いと、投影光学系の開口数が高い場合に、特にラインパターンの像の投影面がベストフォーカス位置に近い範囲で、計測感度が低下する恐れがある。
【0008】
また、従来の第2の計測方法は、不要なパターンの像を消すために2回の露光を行う必要があるため、計測効率が低く、かつ計測マークからの0次光と、+1次光又は−1次光との干渉を用いて計測パターン像を計測するため、計測可能な照明条件が小σに限られるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、投影光学系のフォーカス情報を高い計測再現性で、かつ高い計測効率で計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、投影光学系を介して物体上に投影される複数のテストパターンが設けられたフォーカステストマスクが提供される。このフォーカステストマスクにおいて、その複数のテストパターンは、それぞれ第1方向にライン状に延び、光を遮光する第1遮光部と、その第1方向と直交する第2方向に関してその第1遮光部の一方側に設けられ、その第1方向にライン状に延びるとともに、その第2方向に関する線幅がその第1遮光部の線幅より狭く形成され、透過するその光の位相を変化させる第1位相シフト部と、その第2方向に関してその第1遮光部の他方側に設けられ、その第1方向にライン状に延びるとともに、その第2方向に関する線幅がその第1遮光部の線幅より狭く形成され、その光を透過する第1透過部と、その第2方向に関してその第1透過部のその第1遮光部とは反対側に設けられ、その第2方向に関する線幅がその第1透過部より広く形成され、透過するその光の位相を変化させる第2位相シフト部と、を有し、その複数のテストパターンのその第1位相シフト部及びその第1透過部のその第2方向の線幅が互いに異なっている。
【0010】
また、本発明の第2の態様によれば、投影光学系の像面情報を計測するフォーカス計測方法において、本発明の第1の態様によるフォーカステストマスクをその投影光学系の物体面側に配置する工程と、そのフォーカステストマスクに設けられたそのテストパターンのその投影光学系による像を計測面に投影する工程と、そのテストパターンの像の計測方向の位置情報を計測する工程と、を含むフォーカス計測方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の態様によれば、露光光でマスクのパターンを照明し、その露光光でそのパターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、本発明の第1の態様によるフォーカステストマスクを保持するマスクステージと、そのフォーカステストマスクのそのテストパターンのその投影光学系による像を投影させるとともに、そのテストパターンの像の計測方向の位置情報に基づいて、その投影光学系の像面情報を求める制御装置と、を備える露光装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフォーカステストマスクによれば、各テストパターンの第1遮光部に対して第2方向の一方に第1位相部が設けられ、その第2方向の他方に第1透過部及び第2位相部が設けられているため、その第2方向に対応する方向におけるその第1遮光部の像の横ずれ量から、投影光学系の像面に対するデフォーカス量、ひいてはフォーカス情報を高い計測効率で求めることができる。この場合、その第1遮光部の幅は第1位相部の幅よりも広いため、そのフォーカス情報を高い計測再現性で計測できる。さらに、複数のテストパターンの第1位相部及び第1透過部の線幅が互いに異なっているため、各テストパターンの計測レンジを組み合わせることによって、計測レンジを広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の一例に係る露光装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】(A)はフォーカステストレチクルTRを示す平面図、(B)は図2(A)の計測点P(i,j)の近傍の3つの評価用パターン12A〜12Cを示す拡大図である。
【図3】(A)は図2(A)中の一つの評価用パターン12Aを示す拡大平面図、(B)は図3(A)のBB線に沿う断面図である。
【図4】(A)はラインパターン13Aの像のデフォーカス量と横ずれ量との関係の一例を示す図、(B)はラインパターン14Aの像のデフォーカス量と横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図5】(A)、(B)、及び(C)は、それぞれ外側パターン14の像14Pと内側パターン13の像13Pとの位置ずれ量の変化を示す拡大図である。
【図6】(A)はフォーカステストレチクルTRのパターンの像が露光されたウエハWを示す平面図、(B)は図6(A)中の一つのショット領域SAkを示す拡大平面図、(C)は図6(B)中の一つの評価用パターン12Aの像12APを示す拡大図である。
【図7】(A)はラインパターンの線幅と検出レートRt及び計測誤差ZErとの関係の一例を示す図、(B)は投影光学系の開口数及びコヒーレンスファクタと計測誤差との関係の一例を示す図である。
【図8】3つの評価用パターンのデフォーカス量と像の横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図9】投影光学系の開口数が大きい場合の種々の評価用パターンのデフォーカス量と像の横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図10】(A)及び(B)はそれぞれコヒーレンスファクタが大きい場合の評価用パターンの位相シフト部の線幅と検出レートとの関係を示す図である。
【図11】フォーカス情報の計測動作の一例を示すフローチャートである。
【図12】(A)、(B)、(C)、及び(B)はそれぞれ通常照明と異なる照明条件下における評価用パターンの位相シフト部の線幅と検出レートとの関係を示す図である。
【図13】(A)は第1変形例における評価用パターンの位相シフト部の線幅と検出レートとの関係を示す図、(B)は第1変形例におけるデフォーカス量と像の横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図14】第2変形例の評価用パターン60を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態の一例につき図1〜図11を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の露光装置EXの概略構成を示す。図1において、露光装置EXは、露光光源(不図示)と、この露光光源から射出される照明光(露光光)ILによりレチクルR(マスク)を照明する照明光学系ILSとを備えている。さらに、露光装置EXは、レチクルRを保持して移動するレチクルステージRSTと、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW(基板)の表面に投射する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系2と、その他の駆動系等とを備えている。
【0015】
以下、投影光学系PLの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに垂直な面(ほぼ水平面)内の直交する2方向にX軸及びY軸を取り、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。本実施形態では、走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY軸に平行な方向(Y方向)である。
【0016】
露光光源としてはArFエキシマレーザ(波長193nm)が使用されている。露光光源として、それ以外にKrFエキシマレーザ(波長248nm)などの紫外パルスレーザ光源、YAGレーザの高調波発生光源、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波発生装置、又は水銀ランプ等の放電ランプ等も使用することができる。
照明光学系ILSは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、回折光学素子等を含み瞳面の光量分布を円形、輪帯状、又は複数極の領域等に設定する光量分布設定光学系、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ、ロッドインテグレータなど)等を含む照度均一化光学系、レチクルブラインド(可変視野絞り)、及びコンデンサ光学系等を含んでいる。
【0017】
照明光学系ILSは、レチクルRのパターン面(レチクル面)において、パターン領域PA上のX方向(非走査方向)に細長い矩形の照明領域10Rを照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明光ILのもとで、レチクルRの照明領域10R内の回路パターンは、両側テレセントリック(又はウエハ側に片側テレセントリック)の投影光学系PLを介して所定の投影倍率(例えば1/4,1/5等の縮小倍率)で、ウエハWの一つのショット領域SA上の露光領域10W(照明領域10Rと共役な領域)に投影される。ウエハWは、例えばシリコン半導体又はSOI(silicon on insulator)等からなる直径が200〜450mm程度の円板状の基材の表面にフォトレジスト(感光材料)を塗布した基板である。投影光学系PLは例えば屈折系であるが、反射屈折系等も使用できる。
【0018】
レチクルRはレチクルホルダ(不図示)を介してレチクルステージRST上に吸着保持されている。レチクルステージRSTはレチクルベースRBのXY平面に平行な上面にエアベアリングを介して載置され、その上面でY方向に一定速度で移動するとともに、X方向、Y方向の位置及びθz方向の回転角の微調整を行う。レチクルステージRSTの少なくともX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む2次元的な位置情報は、一例としてX軸のレーザ干渉計8Xと、Y軸の2軸のレーザ干渉計8YA,8YBとを含むレチクル側干渉計によって計測され、この計測値がステージ駆動系4及び主制御系2に供給される。ステージ駆動系4は、その位置情報及び主制御系2からの制御情報に基づいて、不図示の駆動機構(リニアモータなど)を介してレチクルステージRSTの速度及び位置を制御する。
【0019】
一方、ウエハWはウエハホルダWHを介してウエハステージWSTの上部に吸着保持されている。ウエハステージWSTは、XYステージ24と、この上に設置されウエハWを保持するZチルトステージ22とを含んでいる。XYステージ24は、ウエハベース26のXY平面に平行な上面にエアベアリングを介して載置され、その上面をX方向、Y方向に移動し、必要に応じてθz方向の回転角が補正される。Zチルトステージ22は、例えばZ方向に変位可能な3箇所のZ駆動部(不図示)を個別に駆動して、Zチルトステージ22の上面(ウエハW)の光軸AX方向の位置(Z位置)、及びθx方向、θy方向の傾斜角を制御する。
【0020】
図1において、さらに投影光学系PLの側面に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成で、照射系37a及び受光系37bを含み、ウエハWの表面の複数点でのフォーカス位置を計測する斜入射方式の多点のオートフォーカスセンサ37が設けられている。ステージ駆動系4は、オートフォーカスセンサ37の計測結果に基づいて、露光時には、ウエハWの表面が投影光学系PLの像面(それまでにテストプリント等によって求められている像面)に合致するように、オートフォーカス方式でZチルトステージ22を駆動する。
【0021】
ウエハステージWST(Zチルトステージ22)の少なくともX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む2次元的な位置情報が、一例としてX軸の2軸のレーザ干渉計36XP,36XFと、Y軸の2軸のレーザ干渉計36YA,36YBとを含むウエハ側干渉計によって計測され、この計測値がステージ駆動系4及び主制御系2に供給される。その位置情報はアライメント制御系6にも供給される。ステージ駆動系4は、その位置情報及び主制御系2からの制御情報に基づいて、不図示の駆動機構(リニアモータなど)を介して、ウエハステージWSTのXYステージ24の2次元的な位置を制御する。
【0022】
また、露光装置EXは液浸型であり、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間の局所的な空間に照明光ILを透過する液体(純水等)を供給して回収する局所液浸機構(不図示)が備えられている。局所液浸機構としては、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書、又は欧州特許出願公開第1420298号明細書等に開示されている機構を使用してもよい。
【0023】
また、投影光学系PLの側面において、ウエハWの表面のアライメントマークの位置を計測するための、オフアクシス方式で例えば画像処理方式のウエハアライメント系38が不図示のフレームに支持されている。ウエハアライメント系38の検出結果はアライメント制御系6に供給され、その検出結果からウエハWのアライメントを行うことができる。さらに、Zチルトステージ22の上部のウエハホルダWHの近傍に基準部材28が固定され、基準部材28の上面にスリットパターン30A,30B及び基準マーク32が形成されている。Zチルトステージ22内の基準部材28の底面に、スリットパターン30A,30Bを通過した光束を受光する空間像計測系34が収納され、空間像計測系34の検出信号がアライメント制御系6に供給されている。空間像計測系34によって、レチクルRのアライメントマーク(不図示)の像の位置を計測でき、この計測結果に基づいてレチクルRのアライメントを行うことができる。さらに、空間像計測系34は、後述のフォーカステストレチクルTRの評価用パターンの像の位置を計測できる。この計測結果は、アライメント制御系6から主制御系2に供給される。さらに、基準部材28上の基準マーク32を介して、レチクルRのパターンの像の中心(露光中心)とウエハアライメント系38の検出中心との位置関係(ベースライン)を計測できる。
【0024】
露光時には、投影光学系PLとウエハWとの間に液体を供給し、レチクルRの照明領域10R内のパターンの投影光学系PLによる像をウエハWの一つのショット領域上に露光しつつ、レチクルRとウエハWとをY方向に投影倍率を速度比として同期して移動することで、当該ショット領域にレチクルRのパターンの像が走査露光される。その後、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作と、その走査露光動作とを繰り返すことによって、液浸法を用いたステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの各ショット領域にレチクルRのパターン像が露光される。
【0025】
この露光に際して、ウエハWの各ショット領域中に投影光学系PLの像面から許容範囲を超えてデフォーカスしている部分があると、その部分に露光される像の結像特性が劣化し、最終的に製造される半導体デバイス等の歩留まりが低下する。そこで、本実施形態では、走査露光時のウエハの各ショット領域(投影光学系PLの露光フィールド)内の所定配列の複数の計測点の位置におけるデフォーカス量(ベストフォーカス位置からのZ位置のずれ量)である投影光学系PLのフォーカス情報を計測するために、レチクルステージRSTにレチクルRの代わりに複数の評価用パターンが形成されたフォーカステストレチクルTRをロードし、このフォーカステストレチクルTRのパターンの像を評価用のウエハに露光する。
【0026】
図2(A)は、図1のレチクルステージRST上に保持された状態のフォーカステストレチクルTRのパターン配置を示す。図2(A)において、フォーカステストレチクルTRのパターン面(下面)の矩形のパターン領域PAには、一例として、X方向にI行で、Y方向にJ列で計測点P(i,j)が設定されている。なお、I,Jは2以上の整数で、i=1〜I、j=1〜Jである。そして、各計測点P(i,j)の近傍に、それぞれ外側パターン14及び内側パターン13よりなるいわゆるバー・イン・バー型の第1、第2、及び第3の評価用パターン12A,12B,12Cが形成されている。3つの評価用パターン12A〜12Cは互いにほぼ同じ形状であるが、後述のように位相シフト部15C及び透過部15B等の線幅が互いに異なっている(図2(B)参照)。本実施形態では、評価用パターン12A〜12Cは、X方向に7行でY方向に9列で配置されている(I=7,J=9)。また、パターン領域PAのX方向の両側に近接して、かつ照明領域10RのX方向の幅内に収まる位置にアライメントマークAM1,AM2が形成されている。
【0027】
図3(A)は図2(A)の計測点P(i,j)の近傍の第1の評価用パターン12Aを示す。図3(A)において、評価用パターン12Aの外側パターン14(テストパターン)は、X方向(計測方向)に所定間隔で形成されたY方向に細長い矩形の遮光膜(クロム等)からなる2本の同一形状のラインパターン14A(第1遮光部)及びラインパターン14Bを有する。さらに、外側パターン14は、一方のラインパターン14Aの+X方向のエッジ部に沿って順に+X方向に配置された位相シフト部15C(第1位相シフト部)及び透過部15D(第2透過部)と、ラインパターン14Aの−X方向のエッジ部に沿って順に−X方向に配置された透過部15B(第1透過部)及び位相シフト部15A(第2位相シフト部)とを含んでいる。ラインパターン14AのX方向の線幅aは、ラインパターン14Aに接している位相シフト部15C及び透過部15BのX方向の幅bよりも大きい。また、ラインパターン14Aの線幅aは、照明条件を通常照明に設定して、高精度にデフォーカス量を計測するためには、次のように位相シフト部15C及び透過部15Bの幅bの4倍以上であることが好ましい。
【0028】
a≧4×b …(1)
また、以下では線幅a及び幅bの数値は、投影像の段階での数値を示している。この場合、線幅aは200nm以上であることが好ましい。一例として、位相シフト部15C及び透過部15BのX方向の幅bは50〜220nmの範囲である。本実施例において、幅bは50〜70nmの範囲内であることが好ましい。その範囲内で幅bは例えば60nm又は65nmに設定されている。この場合、ラインパターン14AのX方向の線幅aは2〜3μmであることが好ましい。ラインパターン14A、透過部15B、位相シフト部15CのY方向の長さは、一例としてラインパターン14Aの線幅aの10〜15倍である。ラインパターン14A,14BのX方向の間隔は、ラインパターン14Aの長さよりも或る程度長く設定されている。
【0029】
また、位相シフト部15A及び透過部15DのX方向の幅aはラインパターン14Aの線幅と同じである。しかしながら、位相シフト部15A及び透過部15DのX方向の幅は、それらが接している透過部15B及び位相シフト部15Cの幅bよりも広く設定されていればよい。言い換えると、透過部15B及び位相シフト部15CのX方向の幅は、それらが接している位相シフト部15A及び透過部15Dの幅bよりも狭く設定されていればよい。
【0030】
図3(A)のBB線に沿う断面図である図3(B)に示すように、透過部15B,15DはフォーカステストレチクルTRのガラス基板の表面のままであり、位相シフト部15A,15Cは、その表面に例えばエッチングによって形成された深さdの凹部である。この場合、透過部15B,15Dを透過する照明光ILの位相θBDに対して、位相シフト部15A,15Cを透過する照明光ILの位相θACは、例えば90°だけ進むように深さdが設定されている。即ち、位相θBDと位相θACとの位相差δθは90°であることが好ましい。なお、位相差δθの範囲を0°≦δθ<360°で表す場合、位相差δθは、0°及び180°以外の任意の値、例えば、位相差δθは0°〜30°,150°〜210°及び330°〜360°以外の任意の値にすることが好ましい。位相差δθを180°以外の値、例えば、位相差δθを上述した180°近傍以外の値にするのは、位相差δθが180°あるいは180°近傍の値になると、例えば位相シフト部15Aと透過部15Bとの境界線が暗線として転写されてしまうからである。また、位相差δθを0°及び360°近傍以外の値にするのは、デフォーカスに対するパターン13,14の像の間隔変化の感度が低いためである。
【0031】
図3(A)において、外側パターン14の+X方向側のラインパターン14Bの両側にも、ラインパターン14Aの両側に設けられた位相シフト部15A、透過部15B、位相シフト部15C、及び透過部15Dとほぼ同じ構成の位相シフト部15K、透過部15L、位相シフト部15M、及び透過部15Nが設けられている。ただし、位相シフト部15Kは、X方向の幅aの部分とY方向の幅aの部分とを連結した形状であり、透過部15NはX方向の幅がa以上の透過部である点が異なっている。
【0032】
さらに、外側パターン14は、X方向に配列された位相シフト部15A,15K、透過部15B,15L、ラインパターン14A,14B、位相シフト部15C,15M、及び透過部15D,15Nを一体的に90°回転した構成の、Y方向に配列された位相シフト部16A,15K、透過部16B,16L、ラインパターン14C,14D、位相シフト部16C,16M、及び透過部16D,16Nを有する。
【0033】
また、評価用パターン12Aの内側パターン13(補助パターン)は、外側パターン14の2本のラインパターン14A,14Bの間に対称に配列され、ラインパターン14A,14Bと同じX方向の線幅aでY方向の長さが或る程度短い遮光膜からなる2本のラインパターン13A(第2遮光部)及びラインパターン13Bを有する。さらに、内側パターン13は、一方のラインパターン13Aの+X方向のエッジ部に沿って順に+X方向に配置された幅bの透過部15F(第3透過部)及び直角三角形型の位相シフト部15G(第4位相シフト部)と、ラインパターン13Aの−X方向のエッジ部に沿って順に−X方向に配置された幅bの位相シフト部15E(第3位相シフト部)及び幅aの透過部15D(第4透過部)とを含んでいる。位相シフト部15Gは、X方向の平均的な幅が幅aより広い。また、透過部15D(第2透過部及び第4透過部)は、内側パターン13と外側パターン14とで共用されている。幅a及び幅bの条件は、外側パターン14の場合と同じである。また、透過部15D,15Fを透過する照明光ILの位相と、位相シフト部15E,15Gを透過する照明光ILの位相との位相差は、上記の位相差δθと同じく、0°及び180°以外の任意の値が可能であるが、より好ましい角度は90°である。
【0034】
また、内側パターン13の+X方向側のラインパターン13Bの両側にも、ラインパターン13Aの両側に設けられた透過部15D、位相シフト部15E、透過部15F、及び位相シフト部15Gとほぼ同じ構成の透過部15H、位相シフト部15I、透過部15J、及び位相シフト部15Kが設けられている。ただし、透過部15Hは、直角三角形型の領域であり、位相シフト部15K(第4位相シフト部)は、ラインパターン14Bの位相シフト部(第2位相シフト部)と兼用されている。
【0035】
さらに、内側パターン13は、透過部15D,15H、位相シフト部15E,15I、ラインパターン13A,13B、透過部15F,15J、及び位相シフト部15G,15Kを一体的に90°回転した構成の、Y方向に配列された透過部16D,15H、位相シフト部16E,16I、ラインパターン13C,13D、透過部16F,16J、及び位相シフト部15G,15Kを有する。ラインパターン14A及び13Aを含んで第1パターン群が構成され、ラインパターン14B及び13Bを含んで第2パターン群が構成され、ラインパターン14C及び13Cを含んで第3パターン群が構成され、ラインパターン14D及び13Dを含んで第4パターン群が構成されている。
【0036】
即ち、第2パターン群は、透過部15H、及びそれぞれY方向に伸びた位相シフト部15I、ラインパターン13B、透過部15J、位相シフト部15K、透過部15L、ラインパターン14B、位相シフト部15M、透過部15NをX方向に配列したものである。また、第3パターン群は、それぞれX方向にライン状に延びた位相シフト部16A、透過部16B、ラインパターン14C、位相シフト部16C、透過部16D、位相シフト部16E、ラインパターン13C、及び透過部16Fと、位相シフト部15GとをY方向に配列したものである。また、第4パターン群は、透過部15H、及びそれぞれX方向に伸びた位相シフト部16I、ラインパターン13D、透過部16J、位相シフト部15K、透過部16L、ラインパターン14D、位相シフト部16M、透過部16NをY方向に配列したものである。
【0037】
図2(A)の第2及び第3の評価用パターン12B,12Cは、第1の評価用パターン12Aと同様に内側パターン13及び外側パターン14から構成されている。図3(A)において、評価用パターン12B,12Cのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dの線幅は評価用パターン12Aのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dの線幅aと同じである。ただし、第2の評価用パターン12Bの透過部15B,15F,15J,15L,16B,16F,16J,16L及び位相シフト部15C,15E,15I,15M,16C,16E,16I,16Mの線幅b1(図2(B)参照)は、対応する評価用パターン12Aの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅bよりも広く設定されている。さらに、第3の評価用パターン12Cの透過部15B,15F,15J,15L,16B,16F,16J,16L及び位相シフト部15C,15E,15I,15M,16C,16E,16I,16Mの線幅b2は(図2(B)参照)、対応する評価用パターン12Aの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅bよりも広く設定されている。従って、次の関係が成立している。
【0038】
b<b1<b2 …(1A)
一例として、評価用パターン12Bの位相シフト部15C等の線幅b1は、100〜140nmの範囲内で例えば120nmに設定され、評価用パターン12Cの位相シフト部15C等の線幅b2は、180〜220nmの範囲内で例えば200nmに設定される。この場合にも式(1)において、線幅bの代わりにb1又はb2と置いた条件が満足されることが好ましい。即ち、評価用パターン12B,12Cにおいても、ラインパターン13A,14Aの線幅は、位相シフト部15C等の線幅の4倍以上であることが好ましい。従って、線幅b2が200nmであれば、ラインパターン13A,14Aの線幅aは、200nmより太いことが好ましく、さらに600nm以上であることがより好ましい。
【0039】
次に、第1の評価用パターン12Aの内側パターン13のラインパターン13Aの像、及び外側パターン14のラインパターン14Aの像のデフォーカス量と横ずれ量との関係につき図4(A)及び図4(B)を参照して説明する。なお、説明の便宜上、投影光学系PLはX方向に倒立像を形成するものとする。
図4(A)に拡大して示すように、ラインパターン13Aの−X方向側の透過部15D及び位相シフト部15Eを透過する照明光ILの波面17Aは、ほぼ時計回りに傾斜する。同様に、ラインパターン13Aの+X方向側の透過部15F及び位相シフト部15Gを透過する照明光ILの波面17Bも時計回りに傾斜する。従って、ラインパターン13Aの両端部を通過する光束の中心の光線(以下、便宜的に主光線という)17C,17Dは、ほぼ平行に光軸AXに対して時計回りに傾斜するため、ラインパターン13Aの投影光学系PLによる像13APのX方向の両端部を通過する主光線17CP,17DPは光軸AXに対して反時計回りに傾斜する。従って、投影光学系PLの像面側に配置されたウエハWの表面がベストフォーカス位置に対して+Z方向にFZだけデフォーカスすると、像13APの位置は−X方向にΔXだけシフトする。
【0040】
一方、図4(B)に拡大して示すように、ラインパターン14AのX方向の両側に配置された位相シフト部15A及び透過部15Bと位相シフト部15C及び透過部15Dとを透過する照明光ILの波面18A,18Bは、ほぼ反時計回りに傾斜する。従って、ラインパターン14Aの両端部を通過する主光線18C,18Dは、ほぼ平行に光軸AXに対して反時計回りに傾斜するため、ラインパターン14Aの投影光学系PLによる像14APのX方向の両端部を通過する主光線18CP,18DPは光軸AXに対して時計回りに傾斜する。従って、投影光学系PLの像面側でウエハWの表面がベストフォーカス位置に対して+Z方向にFZだけデフォーカスすると、像14APの位置は+X方向にΔXだけシフトする。
【0041】
従って、投影光学系PLの像面側でウエハWの表面がデフォーカスすると、図3(A)の外側パターン14のX方向に配列されたラインパターン14A,14Bの像と内側パターン13のラインパターン13A,13Bの像とはX方向に沿って逆方向にシフトする。同様に、そのデフォーカスに対して、外側パターン14のY方向に配列されたラインパターン14C,14Dの像と内側パターン13のラインパターン13C,13Dの像とはY方向に沿って逆方向にシフトする。
【0042】
その結果、評価用パターン12Aの投影光学系PLによる像をウエハの表面に投影すると、そのウエハの表面がベストフォーカス位置(像面)にあるときには、図5(A)に示すように、評価用パターン12Aの外側パターン14の像14P(ラインパターン14A〜14Dの像14AP〜14DP)の中心14Qと、内側パターン13の像13P(ラインパターン13A〜13Dの像13AP〜13DP)の中心13Qとは同じ位置にある。なお、説明の便宜上、図5(A)〜図5(C)及び後述の図6(B)、図6(C)等では、投影光学系PLの像がX方向、Y方向に正立像であるものとしている。
【0043】
これに対してウエハの表面が+Z方向にデフォーカスすると、図5(B)に示すように、外側パターン14の像14Pの中心14Qに対して内側パターン13の像13Pの中心13Qは、−X方向にDX及び−Y方向にDYだけシフトする。また、ウエハの表面が−Z方向にデフォーカスすると、図5(C)に示すように、外側パターン14の像14Pの中心14Qに対して内側パターン13の像13Pの中心13Qは、+X方向にDX及び+Y方向にDYだけシフトする。従って、予め例えば実測又はシミュレーションによって、ウエハの表面のデフォーカス量FZに対する像14Pの中心14Qに対する像13Pの中心13QのX方向、Y方向のシフト量(間隔の変化量)DX,DYの割合である以下の検出レートRtを求めておけばよい。
【0044】
Rt=DX/FZ …(2A) 又は Rt=DY/FZ …(2B)
なお、式(2A)及び(2B)の平均値を次のように検出レートRtとしてもよい。
Rt={(DX+DY)/2}/FZ …(3)
なお、検出レートRtは定数ではなく、デフォーカス量FZの1次若しくは2次以上の関数でもよく、又は指数関数等の関数であってもよい。仮に式(3)を用いる場合、評価用パターン12Aの像を投影し、像14Pに対する像13Pのシフト量DX,DYを計測し、このシフト量の平均値を検出レートRtで除算することによって、その像が投影された計測点におけるデフォーカス量FZ、ひいてはベストフォーカス位置を求めることができる。
【0045】
次に、図7(A)は、図3(A)の評価用パターン12Aのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dの線幅a(nm)と、式(3)の検出レートRt及び予測される最大のデフォーカス量の計測誤差ZEr(nm)との関係をシミュレーションした結果を示す。シミュレーションの条件は、投影光学系PLの開口数NAが1、照明光学系ILS(照明光IL)のコヒーレンスファクタ(σ値)が0.2、位相シフト部15C,15E等の幅bが60nmである。計測誤差ZErとは、評価用パターン12Aの像の位置の計測誤差に起因するデフォーカス量の誤差と、式(3)に対する近似誤差(非線形誤差)との和である。
【0046】
図7(A)において、各線幅aの位置にある白色の棒ブラフB1は、デフォーカス量FZが±100nmの場合の検出レートRt、ハッチングされた棒グラフB2は、デフォーカス量FZが±200nmの場合の検出レートRtである。また、点線の折れ線C1は、デフォーカス量FZが±100nmの範囲の計測誤差(ここでは、非線形誤差)ZEr(nm)、実線の折れ線C2は、デフォーカス量FZが±200nmの範囲の計測誤差(ここでは、非線形誤差)ZEr(nm)である。図7(A)から、線幅aが600nm以上では、検出レートRt(棒グラフB1,B2)及び計測誤差ZEr(折れ線C1,C2)の値が一定になっておるため、投影光学系PLのフォーカス情報の計測精度は一定になる。また、検出レートRtの直線性の良好な範囲はデフォーカス量がほぼ±200nmの範囲内であるが、線幅aが600nm以上でデフォーカス量が±100nmの範囲内(棒グラフB1及び折れ線C1)では、検出レートRtは0.65を超え、計測誤差(非線形誤差)ZErは1nm以下と良好であることがわかる。
【0047】
さらに、図7(B)は、デフォーカス量の計測誤差ZErを、投影光学系PLの開口数NA及び照明光ILのコヒーレンスファクタ(σ値)を種々に変えて評価した結果の一例を示す。この場合、ラインパターン13A〜13D等の線幅aを1000nm、位相シフト部15C等の幅bを60nm、評価用パターン12Aの像位置の計測誤差を0.5nm、デフォーカス量FZを±100nmとしている。図7(B)において、曲線で囲まれた領域D1の計測誤差(非線形誤差と計測再現性の和)ZErは1〜1.5nm、領域D2の計測誤差ZErは1.5〜2nm、領域D3、D4、D5、…の計測誤差ZErはそれぞれ2〜2.5nm、2.5〜3nm、3〜3.5nm、…と、0.5nmずつ多くなっている。図7(B)より、領域D1及びD2では計測誤差ZErがほぼ2nm以下となり、高精度にデフォーカス量を計測できることが分かる。また、領域D1,D2における開口数NAとσ値との組み合わせの範囲はかなり広いため、開口数NAが1.3に達するように大きい場合でも、さらに種々の照明条件及び開口数の条件のもとでも、高精度にデフォーカス量を計測できることが分かる。
【0048】
また、本実施形態では、評価用パターン12Aの他に評価用パターン12B,12Cが設けられ、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅bに対して評価用パターン12B,12Cの位相シフト部15C等の線幅b1,b2は次第に広く設定されている。一例として、線幅bを65nm、線幅b1を120nm、線幅b2を200nmとした場合について、評価用パターン12A〜12Cの像のデフォーカス量FZと、対応する評価用パターン12A〜12Cの内側パターン13の像と外側パターン14の像とのX方向、Y方向へのシフト量SXYとの関係をシミュレーションで求めた結果を図8に示す。このシミュレーションの条件は、投影光学系PLの開口数NAが0.92、照明条件がσ値が0.25の通常照明である。また、図8の横軸はデフォーカス量FZ(nm)、縦軸はシフト量SXY(nm)であり、曲線C3、曲線C4、及び曲線C5は、それぞれ評価用パターン12A(線幅b)、評価用パターン12B(線幅b1)、及び評価用パターン12C(線幅b2)の像の特性を示している。
【0049】
図8から、デフォーカス量FZがほぼ±400nmまでの範囲では曲線C3がほぼ線形であり、デフォーカス量FZがほぼ±400〜±800nmの範囲では曲線C4がほぼ線形であり、デフォーカス量FZがほぼ±800〜±1600nmの範囲では曲線C5がほぼ線形であることが分かる。従って、例えばデフォーカス量が±400nmまでの範囲では、評価用パターン12Aの像のシフト量SXYからデフォーカス量FZを求め、デフォーカス量が±400〜±800nmの範囲では、評価用パターン12Bの像のシフト量SXYからデフォーカス量FZを求め、デフォーカス量が±800〜±1600nmの範囲では、評価用パターン12Cの像のシフト量SXYからデフォーカス量FZを求めることによって、ほぼ3000nm(3μm)程度の広い計測レンジ内で投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量を高精度に計測できる。
【0050】
この際に、3種類の評価用パターン12A〜12Cの計測値のうち、評価用パターン12Cの像シフト量の絶対値が予め定めた一定値(例えば200nm)以上の場合には、デフォーカス量を評価用パターン12Cの像シフト量から求めてもよい。そして、その値が上記一定値より小さい場合に、評価用パターン12Bの像シフト量の絶対値が別に定めた値(例えば80nm)以上ならば、デフォーカス量を評価用パターン12Bの像シフト量から求め、評価用パターン12Bの像シフト量の絶対値が上記の値より小さいときは、デフォーカス量を評価用パターン12Aの像シフト量から求めてもよい。
【0051】
さらに、図9は、投影光学系PLの開口数NAを1.35(液浸時)、照明条件をσ値が0.25の通常照明とした場合に、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅bを次第に変化させて、ウエハの表面のデフォーカス量FZと、内側パターン13の像に対する外側パターン14の像のシフト量ZXYとの関係をシミュレーションで求めたものである。図9において、横軸はデフォーカス量FZ(nm)、縦軸はシフト量SXY(nm)であり、曲線C11、C12、C13、C14、C15、C16、及びC17は、それぞれ位相シフト部15C等の線幅bが20nm、40nm、60nm、80nm、100nm、120nm、及び140nmの場合の関係を表している。図9の曲線C11〜C17より、開口数NAが1.35と大きい場合にも、評価用パターン12A〜12Cの位相シフト部15C等の線幅b,b1,b2をそれぞれ例えば40nm、80nm、140nmに設定することによって、デフォーカス量を±300nm程度の広い計測レンジ内で計測できることが分かる。
【0052】
さらに、図10(A)は、投影光学系PLの開口数NAを0.92、照明条件をσ値が0.80の通常照明とした場合に、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRt(像のシフト量/デフォーカス量)をシミュレーションで求めたものである。また、図10(B)は、投影光学系PLの開口数NAを1.35、照明条件をσ値が0.80の通常照明とした場合に、位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRtをシミュレーションで求めたものである。図10(A)及び図10(B)より、σ値が大きい場合にも、線幅bと検出レートRtとの関係が安定しているため、評価用パターン12A〜12Cの位相シフト部15C等の線幅b,b1,b3を適切に設定することによって、被検面の投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量を広い計測レンジ内で高精度に計測できることが分かる。
【0053】
次に、本実施形態の露光装置EXにおいて、投影光学系PLのフォーカス情報を計測する際の動作の一例につき図11のフローチャートを参照して説明する。この動作は、主制御系2の制御のもとで、例えば露光工程中で定期的に実行される。
まず、図11のステップ102において、図1のレチクルステージRSTにフォーカステストレチクルTRをロードし、そのアライメントを行う。次のステップ104において、ウエハステージWSTにフォトレジストが塗布された未露光の評価用のウエハ(ウエハWとする)をロードする。次のステップ106において、図6(A)に示すように、ウエハWの多数のショット領域SAk(k=1〜K;Kは2以上の整数)に、液浸法でかつ走査露光方式で、図2(A)のフォーカステストレチクルTRの多数組の評価用パターン12A〜12Cの投影光学系PLによる像を露光する。この際に、各ショット領域SAk毎に露光領域に対する走査方向が+Y方向DPであるか、又は−Y方向DMであるかが記憶される。また、各ショット領域SAkには、図6(B)に拡大して示すように、X方向、Y方向に配列された各計測点Q(i,j)(i=1〜I;j=1〜J)の近傍にそれぞれ評価用パターン12A〜12Cの像12AP〜12CPが露光される。そのうちの像12APは、図5(A)に示すような外側パターン14の像14P及び内側パターン13の像13Pから構成されている。
【0054】
次のステップ108において、露光済みのウエハWをウエハステージWSTからアンロードし、不図示のコータ・デベロッパにおいてウエハWを現像する。この結果、図6(B)のウエハWの各ショット領域SAk内の各計測点Q(i,j)の近傍に、図6(C)の拡大図で示すように、評価用パターン12Aの像12APを構成する内側パターン13の像13P及び外側パターン14の像14Pが凹凸のレジストパターンとして形成される。同様に、評価用パターン12B,12Cの像のレジストパターン(不図示)も形成される。
【0055】
次のステップ110において、現像後のウエハWを重ね合わせ計測装置(不図示)に搬送し、この重ね合わせ計測装置を用いて、ウエハWの各ショット領域SAk(k=1〜K)の各計測点Q(i,j)の評価用パターン12Aの像12AP(図6(C))において、外側パターン14の像14Pの中心14Qに対する内側パターン13の像13Pの中心13QのX方向、Y方向のシフト量(ΔXij,ΔYij)(像の位置関係)を計測する。同様に、評価用パターン12B,12Cの像に関しても、外側パターン14の像の中心に対する内側パターン13の像の中心のX方向、Y方向のシフト量(ΔXij,ΔYij)(像の位置関係)を計測する。これらのシフト量の計測結果は図1の主制御系2に供給される。
【0056】
次のステップ112において、主制御系2内の演算部は、計測された評価用パターン12A〜12Cの像12AP等のシフト量(ΔXij,ΔYij)の平均値を式(3)の既知の検出レートRtで除算して、それぞれ当該計測点Q(i,j)でのデフォーカス量FZijを求める。この際に、図8より、評価用パターン12Cの像から計測されたデフォーカス量が±800〜±1600nmの範囲では、その計測値をデフォーカス量FZijとする。また、評価用パターン12Bの像から計測されたデフォーカス量が±400〜±800nmの範囲では、その計測値をデフォーカス量FZijとする。また、評価用パターン12B,12Cの像から計測されるデフォーカス量が±400nm以内である場合には、評価用パターン12Aの像から計測されるデフォーカス量をデフォーカス量FZijとする。
【0057】
さらに、ステップ114において、主制御系2内の演算部は、ウエハWのショット領域SAkを露光領域に対する走査方向DP,DM別に第1グループ及び第2グループに分け、第1グループのショット領域SAk内の各計測点Q(i,j)におけるデフォーカス量FZijの平均値<FZij>を補間した値を、走査方向DPの露光フィールド内の全面の像面の補正値として記憶する。同様に、第2グループのショット領域SAk内の各計測点Q(i,j)におけるデフォーカス量FZijの平均値<FZij>を補間した値が、走査方向DMの露光フィールド内の全面の像面の補正値として記憶される。
【0058】
その後、ステップ116で図1のレチクルステージRSTにデバイス用のレチクルRがロードされ、ステップ118で、ウエハステージWSTにフォトレジストが塗布されたウエハがロードされる。そして、ステップ120において、ウエハに対してステップ114で記憶した走査方向別の像面の補正値を用いてオートフォーカスセンサ37で計測されるZ位置を補正しながら、ウエハの各ショット領域にレチクルRのパターンの像を走査露光する。この際に、フォーカステストレチクルTRの各評価用パターン12A〜12Cの像に基づいて計測されたデフォーカス量を補正するように、オートフォーカスセンサ37の計測値が補正されているため、ウエハの表面の投影光学系PLの像面に対する合焦精度が向上している。従って、レチクルRのパターンの像がウエハの各ショット領域に高精度に露光される。
【0059】
その後、ステップ122で露光済みのウエハがアンロードされ、ステップ124で次の露光対象のウエハがあるかどうかを判定し、未露光のウエハがある場合にはステップ118〜122を繰り返す。そして、ステップ124で未露光のウエハが尽きたときに露光工程が終了する。
【0060】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置EXは、投影光学系PLのフォーカス情報を計測するためのフォーカステストレチクルTRを備えている。フォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A〜12Cはそれぞれ外側パターン14(テストパターン)を有する。この外側パターン14は、それぞれY方向(第1方向)にライン状に延びたX方向(第2方向)の線幅aの位相シフト部15A(第2位相シフト部)、線幅aより狭い線幅b,b1,b2の透過部15B(第1透過部)、線幅aのラインパターン14A(第1遮光部)、線幅b,b1,b2の位相シフト部15C(第1位相シフト部)、及び幅aの透過部15D(第2透過部)をX方向に配列したものである。さらに、評価用パターン12A,12B,12Cの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅b,b1,b2は互いに異なっている。
【0061】
このフォーカステストレチクルTRによれば、ラインパターン14Aの+X方向側の位相シフト部15C及び透過部15Dを通過する照明光ILの主光線と、ラインパターン14Aの−X方向側の位相シフト部15A及び透過部15Bを通過する照明光ILの主光線とは、同じ方向に傾斜する。従って、評価用パターン12A〜12Cの像を一度露光するのみで、各ラインパターン14Aの像のX方向の横ずれ量から、その像面の形成面の投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量、ひいてはフォーカス情報を高い計測効率で求めることができる。さらに、ラインパターン14Aの線幅aは位相シフト部15C及び透過部15Bの幅bよりも広いため、そのフォーカス情報を高い計測再現性で計測できる。さらに、評価用パターン12A〜12Cの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅b,b1,b2が互いに異なっているため、評価用パターン12A〜12Cの計測レンジを組み合わせることによって、全体として計測レンジを広くできる。
【0062】
(2)また、本実施形態では、透過部15BのX方向の幅b〜b2は位相シフト部15CのX方向の幅b〜b2と同じであり、デフォーカスに対するラインパターン14Aの像の両端部の横ずれ量がほぼ同じで、その像の線幅はほぼ一定である。
なお、透過部15BのX方向の幅と位相シフト部15CのX方向の幅とは異なっていてもよい。
【0063】
また、透過部15D(第2透過部)は必ずしも設ける必要はない。
(3)また、評価用パターン12A〜12Cは、それぞれ外側パターン14の像の位置ずれを計測するための内側パターン13(補助パターン)を有する。従って、外側パターン14の像の位置ずれ量、ひいてはデフォーカス量を高精度に計測できる。
なお、内側パターン13をテストパターンとみなし、外側パターン14を補助パターンとみなすことも可能である。
【0064】
(4)また、その内側パターン13は、それぞれY方向にライン状に延びたX方向の幅aの透過部15D(第4透過部)、幅b〜b2の位相シフト部15E(第3位相シフト部)、線幅aのラインパターン13A(第2遮光部)、幅b〜b2の透過部15F(第3透過部)、及び平均的な幅がa以上の位相シフト部15G(第4位相シフト部)をX方向に配列したものである。
【0065】
この内側パターン13のラインパターン13AのX方向の両側の位相分布は、外側パターン14のラインパターン14AのX方向の両側の位相分布と対称であるため、デフォーカスした場合のラインパターン13Aの像の横ずれ量の方向と、ラインパターン14Aの像の横ずれ量の方向とはX方向に沿って逆方向である。従って、デフォーカス量を2倍の感度で、かつオフセットを相殺して高精度に計測できる。
【0066】
なお、補助パターンとしては、計測感度は低下するが、単なる遮光性のラインパターンを使用することも可能である。
(5)また、本実施形態の投影光学系PLのフォーカス情報の計測方法は、本実施形態のフォーカステストレチクルTRを投影光学系PLの物体面に配置するステップ102と、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12C(外側パターン14及び内側パターン13)の投影光学系PLによる像をウエハWの表面(計測面)に投影するステップ106,108と、評価用パターン12A〜12Cの像の計測方向の位置情報である外側パターン14の像と内側パターン13の像との間隔を計測するステップ110とを含む。従って、その像の間隔(シフト量)から投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量を広い計測レンジで計測できる。
【0067】
(6)また、その像を投影するステップは、ウエハWのフォトレジストを現像するステップ108を含んでいる。従って、その像の間隔を例えば重ね合わせ計測装置を用いて高精度に計測できる。
(7)また、本実施形態の露光装置EXは、照明光ILでレチクルRのパターンを照明し、照明光ILでそのパターン及び投影光学系PLを介してウエハW(基板)を露光する露光装置において、フォーカステストレチクルTRを保持するレチクルステージRSTと、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12Cの投影光学系PLによる像を投影させるとともに、評価用パターン12A〜12Cの像の計測方向の位置情報に基づいて、投影光学系PLの像面の補正値(像面情報)を求める主制御系2(制御装置)とを備えている。
【0068】
従って、レチクルステージRST上のレチクルをフォーカステストレチクルTRと交換して、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12Cの像を評価用のウエハに露光するのみで、投影光学系PLのフォーカス情報を効率的に高精度に、かつ広い計測レンジで計測できる。
なお、本実施形態において、外側パターン14が透過部15D及び16Dを備える構成について説明したが、この透過部15D及び16Dは、内側パターン13が備える構成であってもよい。同様に、外側パターン14が位相シフト部15Kを備える構成について説明したが、この位相シフト部15Kは、内側パターン13が備える構成であってもよい。
【0069】
なお、本実施形態では次のような変形が可能である。
(1)本実施形態では、フォーカステストレチクルTRの各計測点の近傍にそれぞれ3つの評価用パターン12A〜12Cが形成されているが、各計測点の近傍には評価用パターン12A〜12Cのうちの2つの評価用パターンのみを形成しておき、2つの評価用パターンの像からデフォーカス量を計測してもよい。これによっても、デフォーカス量の計測レンジを広くできる。
【0070】
さらに、各計測点の近傍に4個以上の互いに透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅が異なる評価用パターンを形成しておき、これらの評価用パターンの像からデフォーカス量を計測してもよい。
(2)また、本実施形態では、照明条件は通常照明であるが、他の照明条件であっても同様にデフォーカス量が計測できる。
【0071】
一例として、図12(A)〜図12(D)は、投影光学系PLの開口数NAが1.30の場合に、図3(A)の評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRt(像のシフト量/デフォーカス量)をシミュレーションによって求めた結果を示す。また、図12(A)の場合の照明条件は、外側のσ値が0.95で、内側のσ値の比率σRが0.75の輪帯照明であり、図12(B)の場合の照明条件は、σ値が0.95〜0.75の範囲で各二次光源の広がり角が35°の4極照明であり、図12(C)の照明条件は、図3(A)のX方向に対応する方向に離れた2つの二次光源を用いる2極照明であり、図12(D)の照明条件は、図3(A)のY方向に対応する方向に離れた2つの二次光源を用いる2極照明である。
【0072】
図12(A)及び図12(B)より、輪帯照明又は4極照明であれば、線幅bの広い範囲で検出レートRtが安定しているため、デフォーカス量を高精度に広い計測レンジで計測できることが分かる。また、図12(C)及び図12(D)より、2極照明であっても、検出レートRtが比較的安定している範囲内の線幅bを持つ評価用パターンを組み合わせることによって、デフォーカス量を高精度に広い計測レンジで計測できることが分かる。
【0073】
(3)また、本実施形態では、図3(A)の評価用パターン12A(12B,12C)のラインパターン13A〜13D,14A〜14Dは遮光パターンであるが、ラインパターン13A〜13D,14A〜14Dとして、所定の透過率を持ついわゆるハーフトーンパターンを使用してもよい。
一例として、図13(A)は、投影光学系PLの開口数NAが1.35で、照明条件が外側のσ値が0.95で、内側のσ値の比率σRが0.75の輪帯照明であり、図3(A)の評価用パターン12Aのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dが透過率6%で位相が180°遅れるハーフトーンパターンである場合に、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRt(像のシフト量/デフォーカス量)をシミュレーションによって求めた結果を示す。また、図13(B)は、同じ条件下で、位相シフト部15C(位相が90°進むものとしている)等の線幅bが160nmの場合に、デフォーカス量FZ(nm)と評価用パターン12Aの内側パターン13の像と外側パターン14の像とのシフト量SXY(nm)をシミュレーションによって求めた結果を示す。図13(A)及び図13(B)より、ハーフトーンパターンを用いる場合にも、安定した検出レートRtで高精度にデフォーカス量を計測できることが分かる。
【0074】
(4)また、本実施形態では、図3(A)の評価用パターン12A(12B,12C)は、X方向及びY方向に等方的な形状である。しかしながら、例えば図3(A)の2つの評価用パターン12A,12Bの代わりに、図14の一つの非等方的な評価用パターン60を使用することも可能である。
図3(A)に対応する部分に同一符号を付した図14において、評価用パターン60は、X方向の外側パターン14X及び内側パターン13Xと、Y方向の外側パターン14Y及び内側パターン13Yとを有する。そして、X方向の外側パターン14Xは、X方向に配列された位相シフト部15A,15K、透過部15B,15L、ラインパターン14A,14B、位相シフト部15C,15M、及び透過部15D,15Nを有し、Y方向の外側パターン14Yは、Y方向に配列された位相シフト部16A,15K、透過部16B,16L、ラインパターン14C,14D、位相シフト部16C,16M、及び透過部16D,16Nを有する。同様に、X方向の内側パターン13Xは、透過部15D,15H、位相シフト部15E,15I、ラインパターン13A,13B、透過部15F,15J、及び位相シフト部15G,15Kを有し、Y方向の内側パターン13Yは、Y方向に配列された透過部16D,15H、位相シフト部16E,16I、ラインパターン13C,13D、透過部16F,16J、及び位相シフト部15G,15Kを有する。
【0075】
ただし、評価用パターン60においては、X方向の外側パターン14X及び内側パターン13Xにおける透過部15B及び位相シフト部15C等の線幅bと、Y方向の外側パターン14Y及び内側パターン13Yにおける透過部16B及び位相シフト部16C等の線幅b1とは異なっている。一例として、線幅bは50〜70nmの範囲内で例えば65nmに設定され、線幅b1は100〜140nmの範囲内で例えば120nmに設定される。
【0076】
この結果、図14の評価用パターン60の像を投影すると、露光面のデフォーカス量と、X方向の外側パターン14X及び内側パターン13Xの像のシフト量との関係は、図8の曲線C3のようになる。一方、露光面のデフォーカス量と、Y方向の外側パターン14Y及び内側パターン13Yの像のシフト量との関係は、図8の曲線C4のようになる。従って、X方向の像の位置ずれ量から計測されるデフォーカス量と、Y方向の像の位置ずれ量から計測されるデフォーカス量とを組み合わせることによって、広い計測レンジで高精度にデフォーカス量を計測できる。また、このように一つの評価用パターン60で、異なる線幅b,b1を持つ2つの評価用パターン12A,12Bを兼用できるため、フォーカステストレチクルTR内の計測点数を容易に多くできる。
【0077】
(5)また、本実施形態では、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12Cの像をウエハに露光し、現像後に形成されるレジストパターンの位置関係を重ね合わせ計測装置を用いて計測している。
しかしながら、露光装置EXは空間像計測系34を備えている。そこで、評価用パターン12A〜12Cの投影光学系PLによる像(空間像)を図1の空間像計測系34のスリットパターン30AでX方向、Y方向に走査して、空間像計測系34によってその空間像の光強度分布を計測してもよい。この計測結果から評価用パターン12A〜12Cの外側パターン14の像と内側パターン13の像との間隔を求め、この間隔からデフォーカス量を求めることによって、投影光学系PLのフォーカス情報を求めることができる。
【0078】
(6)本実施形態では、フォーカステストレチクルTRをレチクルRと交換してレチクルステージRST上にロードしているが、フォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A等を、レチクルステージRSTのレチクルRが保持される領域に近接した領域に固定されているレチクルマーク板(不図示)に形成しておいてもよい。この場合、必要に応じて、レチクルステージRSTを移動して、そのレチクルマーク板を照明光ILの照明領域に移動することで、投影光学系PLのフォーカス情報を計測できる。
【0079】
(7)また、図3(A)の評価用パターン12A(12B,12C)は、内側パターン13及び外側パターン14を備えているが、評価用パターン12A等は、例えば位相シフト部15A,15C、透過部15B,15D、及びラインパターン14Aのみから構成してもよい。さらに、評価用パターン12A等は、例えば位相シフト部15A,15C、透過部15B,15D、及びラインパターン14Aよりなるテストパターン、並びに例えば位相シフト部15E,15G、透過部15D,15F、及びラインパターン13Aよりなる補助パターンのみから構成してもよい。
【0080】
(8)また、上記の実施形態のフォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A〜12C(テストパターン)等の像の計測方向の位置情報(像シフト量)を計測する際に、複数の評価用パターンのうち、照明条件、計測感度(検出レートRt)、及び計測レンジ(計測可能範囲)の少なくとも一つの条件に関してより適した、即ちその条件に関する特性が最も良好な評価用パターンの像の計測方向の位置情報を計測してもよい。
【0081】
なお、本発明は液浸型の露光装置で露光する場合のみならず、液体を介さないドライ露光型の露光装置の投影光学系のフォーカス情報を計測する場合にも適用できる。また、本発明は、走査露光型の露光装置の外に、ステッパー等の一括露光型の露光装置において投影光学系のフォーカス情報を計測する場合にも適用できる。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、MEMS(Microelectromechanical Systems)、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の露光工程にも適用することができる。
【0082】
さらに、本発明では評価用パターンの透過部と位相シフト部との位相差が90°に限定されないため、その評価用パターンは、光源から複数の波長、例えば水銀ランプから放射されるi線、h線、g線の混合光を用いる投影露光装置のデフォーカス計測にも適用可能である。
また、上記の実施形態のフォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A〜12C等(位相シフト部15Cの線幅が互いに異なっている複数の評価用パターン)を用いて、各評価用パターン12A〜12C等毎の計測感度(検出レートRt)及び計測レンジを求めてもよい。そして、その求められた結果から、例えば計測感度及び/又は計測レンジの良好な1〜3種類程度の評価用パターンを実際のデバイス製造用の回路パターンが形成されたレチクル(製品マスク)の一部に形成しておいてもよい。この場合、そのデバイス製造用のレチクルを用いる露光工程中で、必要に応じてその評価用パターンを用いてその実露光用のレチクルのパターンの像のデフォーカス量を計測できる。
【0083】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0084】
EX…露光装置、ILS…照明光学系、TR…フォーカステストレチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、2…主制御系、12A〜12C…評価用パターン、13…内側パターン、13A〜13D…ラインパターン、14…外側パターン、14A〜14D…ラインパターン、15A,15C,15E…位相シフト部、15B,15D,15F…透過部
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学系のフォーカス情報(像面情報)を計測するためのパターンが形成されたフォーカステストマスク、このフォーカステストマスクを用いて投影光学系のフォーカス情報を計測するフォーカス計測方法、及びそのフォーカステストマスクを備える露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程中で使用される露光装置においては、投影光学系の像面(ベストフォーカス位置)の情報であるフォーカス情報を計測するために、投影光学系の物体面にテストマスクを配置するとともに投影光学系の像面に基板等を配置し、そして、テストマスクに設けられた所定の評価用パターンを投影光学系を介して基板等に投影し、その評価用パターンの像の位置ずれ量等を計測することが行われている。
【0003】
従来の第1の計測方法として、2本の遮光膜よりなるラインパターン間の各ラインパターンの線幅よりも広いスペース部に照明光の位相を変化させる位相変更部を設けた評価用パターンを用い、この評価用パターンの投影光学系による像をフォトレジストが塗布された基板上に露光する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、現像後にその基板に形成される2本のライン状のレジストパターンの間隔からその基板の表面のデフォーカス量、ひいては像面の位置を求めることができる。
【0004】
また、従来の第2の計測方法として、例えば4本以上の複数の遮光ラインを含み各遮光ラインの外側の位相分布が計測方向に非対称とされた回折格子状の評価用パターンの像と、その複数の遮光ラインの像のうち外側の不要な遮光ラインの像を消すためのトリムパターンの像とをウエハに重ねて露光する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この場合にも、残された中央の複数の遮光ラインの像のシフト量から、ウエハの表面のデフォーカス量を求めることができる。
【0005】
また、従来の第3の計測方法として、複数のラインパターンの近傍にこれらのラインパターンの線幅よりも広い位相シフト部を設けた評価用パターンの空間像の横ずれ量を計測する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。この場合にも、各ラインパターンの像の横ずれ量から受光面のデフォーカス量を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−204305号公報
【特許文献2】特許第3297423号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/004211号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のフォーカス情報の計測方法のうち、第1及び第3の計測方法は、ラインパターンの線幅に比べてそれに接する(又はその近傍の)位相シフト部の幅が広く、計測感度(像の横ずれ量/デフォーカス量)を高めるためにはラインパターンの線幅を狭くすることが好ましい。しかしながら、ラインパターンの線幅を狭くすると、計測再現性が低下する恐れがあるとともに、現像後のレジストパターンの像を観察する場合には、レジストパターンの倒れ等が生じる恐れがある。さらに、そのようにラインパターンの線幅が狭いと、投影光学系の開口数が高い場合に、特にラインパターンの像の投影面がベストフォーカス位置に近い範囲で、計測感度が低下する恐れがある。
【0008】
また、従来の第2の計測方法は、不要なパターンの像を消すために2回の露光を行う必要があるため、計測効率が低く、かつ計測マークからの0次光と、+1次光又は−1次光との干渉を用いて計測パターン像を計測するため、計測可能な照明条件が小σに限られるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、投影光学系のフォーカス情報を高い計測再現性で、かつ高い計測効率で計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、投影光学系を介して物体上に投影される複数のテストパターンが設けられたフォーカステストマスクが提供される。このフォーカステストマスクにおいて、その複数のテストパターンは、それぞれ第1方向にライン状に延び、光を遮光する第1遮光部と、その第1方向と直交する第2方向に関してその第1遮光部の一方側に設けられ、その第1方向にライン状に延びるとともに、その第2方向に関する線幅がその第1遮光部の線幅より狭く形成され、透過するその光の位相を変化させる第1位相シフト部と、その第2方向に関してその第1遮光部の他方側に設けられ、その第1方向にライン状に延びるとともに、その第2方向に関する線幅がその第1遮光部の線幅より狭く形成され、その光を透過する第1透過部と、その第2方向に関してその第1透過部のその第1遮光部とは反対側に設けられ、その第2方向に関する線幅がその第1透過部より広く形成され、透過するその光の位相を変化させる第2位相シフト部と、を有し、その複数のテストパターンのその第1位相シフト部及びその第1透過部のその第2方向の線幅が互いに異なっている。
【0010】
また、本発明の第2の態様によれば、投影光学系の像面情報を計測するフォーカス計測方法において、本発明の第1の態様によるフォーカステストマスクをその投影光学系の物体面側に配置する工程と、そのフォーカステストマスクに設けられたそのテストパターンのその投影光学系による像を計測面に投影する工程と、そのテストパターンの像の計測方向の位置情報を計測する工程と、を含むフォーカス計測方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の態様によれば、露光光でマスクのパターンを照明し、その露光光でそのパターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、本発明の第1の態様によるフォーカステストマスクを保持するマスクステージと、そのフォーカステストマスクのそのテストパターンのその投影光学系による像を投影させるとともに、そのテストパターンの像の計測方向の位置情報に基づいて、その投影光学系の像面情報を求める制御装置と、を備える露光装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフォーカステストマスクによれば、各テストパターンの第1遮光部に対して第2方向の一方に第1位相部が設けられ、その第2方向の他方に第1透過部及び第2位相部が設けられているため、その第2方向に対応する方向におけるその第1遮光部の像の横ずれ量から、投影光学系の像面に対するデフォーカス量、ひいてはフォーカス情報を高い計測効率で求めることができる。この場合、その第1遮光部の幅は第1位相部の幅よりも広いため、そのフォーカス情報を高い計測再現性で計測できる。さらに、複数のテストパターンの第1位相部及び第1透過部の線幅が互いに異なっているため、各テストパターンの計測レンジを組み合わせることによって、計測レンジを広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の一例に係る露光装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】(A)はフォーカステストレチクルTRを示す平面図、(B)は図2(A)の計測点P(i,j)の近傍の3つの評価用パターン12A〜12Cを示す拡大図である。
【図3】(A)は図2(A)中の一つの評価用パターン12Aを示す拡大平面図、(B)は図3(A)のBB線に沿う断面図である。
【図4】(A)はラインパターン13Aの像のデフォーカス量と横ずれ量との関係の一例を示す図、(B)はラインパターン14Aの像のデフォーカス量と横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図5】(A)、(B)、及び(C)は、それぞれ外側パターン14の像14Pと内側パターン13の像13Pとの位置ずれ量の変化を示す拡大図である。
【図6】(A)はフォーカステストレチクルTRのパターンの像が露光されたウエハWを示す平面図、(B)は図6(A)中の一つのショット領域SAkを示す拡大平面図、(C)は図6(B)中の一つの評価用パターン12Aの像12APを示す拡大図である。
【図7】(A)はラインパターンの線幅と検出レートRt及び計測誤差ZErとの関係の一例を示す図、(B)は投影光学系の開口数及びコヒーレンスファクタと計測誤差との関係の一例を示す図である。
【図8】3つの評価用パターンのデフォーカス量と像の横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図9】投影光学系の開口数が大きい場合の種々の評価用パターンのデフォーカス量と像の横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図10】(A)及び(B)はそれぞれコヒーレンスファクタが大きい場合の評価用パターンの位相シフト部の線幅と検出レートとの関係を示す図である。
【図11】フォーカス情報の計測動作の一例を示すフローチャートである。
【図12】(A)、(B)、(C)、及び(B)はそれぞれ通常照明と異なる照明条件下における評価用パターンの位相シフト部の線幅と検出レートとの関係を示す図である。
【図13】(A)は第1変形例における評価用パターンの位相シフト部の線幅と検出レートとの関係を示す図、(B)は第1変形例におけるデフォーカス量と像の横ずれ量との関係の一例を示す図である。
【図14】第2変形例の評価用パターン60を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態の一例につき図1〜図11を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の露光装置EXの概略構成を示す。図1において、露光装置EXは、露光光源(不図示)と、この露光光源から射出される照明光(露光光)ILによりレチクルR(マスク)を照明する照明光学系ILSとを備えている。さらに、露光装置EXは、レチクルRを保持して移動するレチクルステージRSTと、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW(基板)の表面に投射する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系2と、その他の駆動系等とを備えている。
【0015】
以下、投影光学系PLの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに垂直な面(ほぼ水平面)内の直交する2方向にX軸及びY軸を取り、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。本実施形態では、走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY軸に平行な方向(Y方向)である。
【0016】
露光光源としてはArFエキシマレーザ(波長193nm)が使用されている。露光光源として、それ以外にKrFエキシマレーザ(波長248nm)などの紫外パルスレーザ光源、YAGレーザの高調波発生光源、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波発生装置、又は水銀ランプ等の放電ランプ等も使用することができる。
照明光学系ILSは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、回折光学素子等を含み瞳面の光量分布を円形、輪帯状、又は複数極の領域等に設定する光量分布設定光学系、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ、ロッドインテグレータなど)等を含む照度均一化光学系、レチクルブラインド(可変視野絞り)、及びコンデンサ光学系等を含んでいる。
【0017】
照明光学系ILSは、レチクルRのパターン面(レチクル面)において、パターン領域PA上のX方向(非走査方向)に細長い矩形の照明領域10Rを照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明光ILのもとで、レチクルRの照明領域10R内の回路パターンは、両側テレセントリック(又はウエハ側に片側テレセントリック)の投影光学系PLを介して所定の投影倍率(例えば1/4,1/5等の縮小倍率)で、ウエハWの一つのショット領域SA上の露光領域10W(照明領域10Rと共役な領域)に投影される。ウエハWは、例えばシリコン半導体又はSOI(silicon on insulator)等からなる直径が200〜450mm程度の円板状の基材の表面にフォトレジスト(感光材料)を塗布した基板である。投影光学系PLは例えば屈折系であるが、反射屈折系等も使用できる。
【0018】
レチクルRはレチクルホルダ(不図示)を介してレチクルステージRST上に吸着保持されている。レチクルステージRSTはレチクルベースRBのXY平面に平行な上面にエアベアリングを介して載置され、その上面でY方向に一定速度で移動するとともに、X方向、Y方向の位置及びθz方向の回転角の微調整を行う。レチクルステージRSTの少なくともX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む2次元的な位置情報は、一例としてX軸のレーザ干渉計8Xと、Y軸の2軸のレーザ干渉計8YA,8YBとを含むレチクル側干渉計によって計測され、この計測値がステージ駆動系4及び主制御系2に供給される。ステージ駆動系4は、その位置情報及び主制御系2からの制御情報に基づいて、不図示の駆動機構(リニアモータなど)を介してレチクルステージRSTの速度及び位置を制御する。
【0019】
一方、ウエハWはウエハホルダWHを介してウエハステージWSTの上部に吸着保持されている。ウエハステージWSTは、XYステージ24と、この上に設置されウエハWを保持するZチルトステージ22とを含んでいる。XYステージ24は、ウエハベース26のXY平面に平行な上面にエアベアリングを介して載置され、その上面をX方向、Y方向に移動し、必要に応じてθz方向の回転角が補正される。Zチルトステージ22は、例えばZ方向に変位可能な3箇所のZ駆動部(不図示)を個別に駆動して、Zチルトステージ22の上面(ウエハW)の光軸AX方向の位置(Z位置)、及びθx方向、θy方向の傾斜角を制御する。
【0020】
図1において、さらに投影光学系PLの側面に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成で、照射系37a及び受光系37bを含み、ウエハWの表面の複数点でのフォーカス位置を計測する斜入射方式の多点のオートフォーカスセンサ37が設けられている。ステージ駆動系4は、オートフォーカスセンサ37の計測結果に基づいて、露光時には、ウエハWの表面が投影光学系PLの像面(それまでにテストプリント等によって求められている像面)に合致するように、オートフォーカス方式でZチルトステージ22を駆動する。
【0021】
ウエハステージWST(Zチルトステージ22)の少なくともX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む2次元的な位置情報が、一例としてX軸の2軸のレーザ干渉計36XP,36XFと、Y軸の2軸のレーザ干渉計36YA,36YBとを含むウエハ側干渉計によって計測され、この計測値がステージ駆動系4及び主制御系2に供給される。その位置情報はアライメント制御系6にも供給される。ステージ駆動系4は、その位置情報及び主制御系2からの制御情報に基づいて、不図示の駆動機構(リニアモータなど)を介して、ウエハステージWSTのXYステージ24の2次元的な位置を制御する。
【0022】
また、露光装置EXは液浸型であり、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間の局所的な空間に照明光ILを透過する液体(純水等)を供給して回収する局所液浸機構(不図示)が備えられている。局所液浸機構としては、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書、又は欧州特許出願公開第1420298号明細書等に開示されている機構を使用してもよい。
【0023】
また、投影光学系PLの側面において、ウエハWの表面のアライメントマークの位置を計測するための、オフアクシス方式で例えば画像処理方式のウエハアライメント系38が不図示のフレームに支持されている。ウエハアライメント系38の検出結果はアライメント制御系6に供給され、その検出結果からウエハWのアライメントを行うことができる。さらに、Zチルトステージ22の上部のウエハホルダWHの近傍に基準部材28が固定され、基準部材28の上面にスリットパターン30A,30B及び基準マーク32が形成されている。Zチルトステージ22内の基準部材28の底面に、スリットパターン30A,30Bを通過した光束を受光する空間像計測系34が収納され、空間像計測系34の検出信号がアライメント制御系6に供給されている。空間像計測系34によって、レチクルRのアライメントマーク(不図示)の像の位置を計測でき、この計測結果に基づいてレチクルRのアライメントを行うことができる。さらに、空間像計測系34は、後述のフォーカステストレチクルTRの評価用パターンの像の位置を計測できる。この計測結果は、アライメント制御系6から主制御系2に供給される。さらに、基準部材28上の基準マーク32を介して、レチクルRのパターンの像の中心(露光中心)とウエハアライメント系38の検出中心との位置関係(ベースライン)を計測できる。
【0024】
露光時には、投影光学系PLとウエハWとの間に液体を供給し、レチクルRの照明領域10R内のパターンの投影光学系PLによる像をウエハWの一つのショット領域上に露光しつつ、レチクルRとウエハWとをY方向に投影倍率を速度比として同期して移動することで、当該ショット領域にレチクルRのパターンの像が走査露光される。その後、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作と、その走査露光動作とを繰り返すことによって、液浸法を用いたステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの各ショット領域にレチクルRのパターン像が露光される。
【0025】
この露光に際して、ウエハWの各ショット領域中に投影光学系PLの像面から許容範囲を超えてデフォーカスしている部分があると、その部分に露光される像の結像特性が劣化し、最終的に製造される半導体デバイス等の歩留まりが低下する。そこで、本実施形態では、走査露光時のウエハの各ショット領域(投影光学系PLの露光フィールド)内の所定配列の複数の計測点の位置におけるデフォーカス量(ベストフォーカス位置からのZ位置のずれ量)である投影光学系PLのフォーカス情報を計測するために、レチクルステージRSTにレチクルRの代わりに複数の評価用パターンが形成されたフォーカステストレチクルTRをロードし、このフォーカステストレチクルTRのパターンの像を評価用のウエハに露光する。
【0026】
図2(A)は、図1のレチクルステージRST上に保持された状態のフォーカステストレチクルTRのパターン配置を示す。図2(A)において、フォーカステストレチクルTRのパターン面(下面)の矩形のパターン領域PAには、一例として、X方向にI行で、Y方向にJ列で計測点P(i,j)が設定されている。なお、I,Jは2以上の整数で、i=1〜I、j=1〜Jである。そして、各計測点P(i,j)の近傍に、それぞれ外側パターン14及び内側パターン13よりなるいわゆるバー・イン・バー型の第1、第2、及び第3の評価用パターン12A,12B,12Cが形成されている。3つの評価用パターン12A〜12Cは互いにほぼ同じ形状であるが、後述のように位相シフト部15C及び透過部15B等の線幅が互いに異なっている(図2(B)参照)。本実施形態では、評価用パターン12A〜12Cは、X方向に7行でY方向に9列で配置されている(I=7,J=9)。また、パターン領域PAのX方向の両側に近接して、かつ照明領域10RのX方向の幅内に収まる位置にアライメントマークAM1,AM2が形成されている。
【0027】
図3(A)は図2(A)の計測点P(i,j)の近傍の第1の評価用パターン12Aを示す。図3(A)において、評価用パターン12Aの外側パターン14(テストパターン)は、X方向(計測方向)に所定間隔で形成されたY方向に細長い矩形の遮光膜(クロム等)からなる2本の同一形状のラインパターン14A(第1遮光部)及びラインパターン14Bを有する。さらに、外側パターン14は、一方のラインパターン14Aの+X方向のエッジ部に沿って順に+X方向に配置された位相シフト部15C(第1位相シフト部)及び透過部15D(第2透過部)と、ラインパターン14Aの−X方向のエッジ部に沿って順に−X方向に配置された透過部15B(第1透過部)及び位相シフト部15A(第2位相シフト部)とを含んでいる。ラインパターン14AのX方向の線幅aは、ラインパターン14Aに接している位相シフト部15C及び透過部15BのX方向の幅bよりも大きい。また、ラインパターン14Aの線幅aは、照明条件を通常照明に設定して、高精度にデフォーカス量を計測するためには、次のように位相シフト部15C及び透過部15Bの幅bの4倍以上であることが好ましい。
【0028】
a≧4×b …(1)
また、以下では線幅a及び幅bの数値は、投影像の段階での数値を示している。この場合、線幅aは200nm以上であることが好ましい。一例として、位相シフト部15C及び透過部15BのX方向の幅bは50〜220nmの範囲である。本実施例において、幅bは50〜70nmの範囲内であることが好ましい。その範囲内で幅bは例えば60nm又は65nmに設定されている。この場合、ラインパターン14AのX方向の線幅aは2〜3μmであることが好ましい。ラインパターン14A、透過部15B、位相シフト部15CのY方向の長さは、一例としてラインパターン14Aの線幅aの10〜15倍である。ラインパターン14A,14BのX方向の間隔は、ラインパターン14Aの長さよりも或る程度長く設定されている。
【0029】
また、位相シフト部15A及び透過部15DのX方向の幅aはラインパターン14Aの線幅と同じである。しかしながら、位相シフト部15A及び透過部15DのX方向の幅は、それらが接している透過部15B及び位相シフト部15Cの幅bよりも広く設定されていればよい。言い換えると、透過部15B及び位相シフト部15CのX方向の幅は、それらが接している位相シフト部15A及び透過部15Dの幅bよりも狭く設定されていればよい。
【0030】
図3(A)のBB線に沿う断面図である図3(B)に示すように、透過部15B,15DはフォーカステストレチクルTRのガラス基板の表面のままであり、位相シフト部15A,15Cは、その表面に例えばエッチングによって形成された深さdの凹部である。この場合、透過部15B,15Dを透過する照明光ILの位相θBDに対して、位相シフト部15A,15Cを透過する照明光ILの位相θACは、例えば90°だけ進むように深さdが設定されている。即ち、位相θBDと位相θACとの位相差δθは90°であることが好ましい。なお、位相差δθの範囲を0°≦δθ<360°で表す場合、位相差δθは、0°及び180°以外の任意の値、例えば、位相差δθは0°〜30°,150°〜210°及び330°〜360°以外の任意の値にすることが好ましい。位相差δθを180°以外の値、例えば、位相差δθを上述した180°近傍以外の値にするのは、位相差δθが180°あるいは180°近傍の値になると、例えば位相シフト部15Aと透過部15Bとの境界線が暗線として転写されてしまうからである。また、位相差δθを0°及び360°近傍以外の値にするのは、デフォーカスに対するパターン13,14の像の間隔変化の感度が低いためである。
【0031】
図3(A)において、外側パターン14の+X方向側のラインパターン14Bの両側にも、ラインパターン14Aの両側に設けられた位相シフト部15A、透過部15B、位相シフト部15C、及び透過部15Dとほぼ同じ構成の位相シフト部15K、透過部15L、位相シフト部15M、及び透過部15Nが設けられている。ただし、位相シフト部15Kは、X方向の幅aの部分とY方向の幅aの部分とを連結した形状であり、透過部15NはX方向の幅がa以上の透過部である点が異なっている。
【0032】
さらに、外側パターン14は、X方向に配列された位相シフト部15A,15K、透過部15B,15L、ラインパターン14A,14B、位相シフト部15C,15M、及び透過部15D,15Nを一体的に90°回転した構成の、Y方向に配列された位相シフト部16A,15K、透過部16B,16L、ラインパターン14C,14D、位相シフト部16C,16M、及び透過部16D,16Nを有する。
【0033】
また、評価用パターン12Aの内側パターン13(補助パターン)は、外側パターン14の2本のラインパターン14A,14Bの間に対称に配列され、ラインパターン14A,14Bと同じX方向の線幅aでY方向の長さが或る程度短い遮光膜からなる2本のラインパターン13A(第2遮光部)及びラインパターン13Bを有する。さらに、内側パターン13は、一方のラインパターン13Aの+X方向のエッジ部に沿って順に+X方向に配置された幅bの透過部15F(第3透過部)及び直角三角形型の位相シフト部15G(第4位相シフト部)と、ラインパターン13Aの−X方向のエッジ部に沿って順に−X方向に配置された幅bの位相シフト部15E(第3位相シフト部)及び幅aの透過部15D(第4透過部)とを含んでいる。位相シフト部15Gは、X方向の平均的な幅が幅aより広い。また、透過部15D(第2透過部及び第4透過部)は、内側パターン13と外側パターン14とで共用されている。幅a及び幅bの条件は、外側パターン14の場合と同じである。また、透過部15D,15Fを透過する照明光ILの位相と、位相シフト部15E,15Gを透過する照明光ILの位相との位相差は、上記の位相差δθと同じく、0°及び180°以外の任意の値が可能であるが、より好ましい角度は90°である。
【0034】
また、内側パターン13の+X方向側のラインパターン13Bの両側にも、ラインパターン13Aの両側に設けられた透過部15D、位相シフト部15E、透過部15F、及び位相シフト部15Gとほぼ同じ構成の透過部15H、位相シフト部15I、透過部15J、及び位相シフト部15Kが設けられている。ただし、透過部15Hは、直角三角形型の領域であり、位相シフト部15K(第4位相シフト部)は、ラインパターン14Bの位相シフト部(第2位相シフト部)と兼用されている。
【0035】
さらに、内側パターン13は、透過部15D,15H、位相シフト部15E,15I、ラインパターン13A,13B、透過部15F,15J、及び位相シフト部15G,15Kを一体的に90°回転した構成の、Y方向に配列された透過部16D,15H、位相シフト部16E,16I、ラインパターン13C,13D、透過部16F,16J、及び位相シフト部15G,15Kを有する。ラインパターン14A及び13Aを含んで第1パターン群が構成され、ラインパターン14B及び13Bを含んで第2パターン群が構成され、ラインパターン14C及び13Cを含んで第3パターン群が構成され、ラインパターン14D及び13Dを含んで第4パターン群が構成されている。
【0036】
即ち、第2パターン群は、透過部15H、及びそれぞれY方向に伸びた位相シフト部15I、ラインパターン13B、透過部15J、位相シフト部15K、透過部15L、ラインパターン14B、位相シフト部15M、透過部15NをX方向に配列したものである。また、第3パターン群は、それぞれX方向にライン状に延びた位相シフト部16A、透過部16B、ラインパターン14C、位相シフト部16C、透過部16D、位相シフト部16E、ラインパターン13C、及び透過部16Fと、位相シフト部15GとをY方向に配列したものである。また、第4パターン群は、透過部15H、及びそれぞれX方向に伸びた位相シフト部16I、ラインパターン13D、透過部16J、位相シフト部15K、透過部16L、ラインパターン14D、位相シフト部16M、透過部16NをY方向に配列したものである。
【0037】
図2(A)の第2及び第3の評価用パターン12B,12Cは、第1の評価用パターン12Aと同様に内側パターン13及び外側パターン14から構成されている。図3(A)において、評価用パターン12B,12Cのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dの線幅は評価用パターン12Aのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dの線幅aと同じである。ただし、第2の評価用パターン12Bの透過部15B,15F,15J,15L,16B,16F,16J,16L及び位相シフト部15C,15E,15I,15M,16C,16E,16I,16Mの線幅b1(図2(B)参照)は、対応する評価用パターン12Aの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅bよりも広く設定されている。さらに、第3の評価用パターン12Cの透過部15B,15F,15J,15L,16B,16F,16J,16L及び位相シフト部15C,15E,15I,15M,16C,16E,16I,16Mの線幅b2は(図2(B)参照)、対応する評価用パターン12Aの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅bよりも広く設定されている。従って、次の関係が成立している。
【0038】
b<b1<b2 …(1A)
一例として、評価用パターン12Bの位相シフト部15C等の線幅b1は、100〜140nmの範囲内で例えば120nmに設定され、評価用パターン12Cの位相シフト部15C等の線幅b2は、180〜220nmの範囲内で例えば200nmに設定される。この場合にも式(1)において、線幅bの代わりにb1又はb2と置いた条件が満足されることが好ましい。即ち、評価用パターン12B,12Cにおいても、ラインパターン13A,14Aの線幅は、位相シフト部15C等の線幅の4倍以上であることが好ましい。従って、線幅b2が200nmであれば、ラインパターン13A,14Aの線幅aは、200nmより太いことが好ましく、さらに600nm以上であることがより好ましい。
【0039】
次に、第1の評価用パターン12Aの内側パターン13のラインパターン13Aの像、及び外側パターン14のラインパターン14Aの像のデフォーカス量と横ずれ量との関係につき図4(A)及び図4(B)を参照して説明する。なお、説明の便宜上、投影光学系PLはX方向に倒立像を形成するものとする。
図4(A)に拡大して示すように、ラインパターン13Aの−X方向側の透過部15D及び位相シフト部15Eを透過する照明光ILの波面17Aは、ほぼ時計回りに傾斜する。同様に、ラインパターン13Aの+X方向側の透過部15F及び位相シフト部15Gを透過する照明光ILの波面17Bも時計回りに傾斜する。従って、ラインパターン13Aの両端部を通過する光束の中心の光線(以下、便宜的に主光線という)17C,17Dは、ほぼ平行に光軸AXに対して時計回りに傾斜するため、ラインパターン13Aの投影光学系PLによる像13APのX方向の両端部を通過する主光線17CP,17DPは光軸AXに対して反時計回りに傾斜する。従って、投影光学系PLの像面側に配置されたウエハWの表面がベストフォーカス位置に対して+Z方向にFZだけデフォーカスすると、像13APの位置は−X方向にΔXだけシフトする。
【0040】
一方、図4(B)に拡大して示すように、ラインパターン14AのX方向の両側に配置された位相シフト部15A及び透過部15Bと位相シフト部15C及び透過部15Dとを透過する照明光ILの波面18A,18Bは、ほぼ反時計回りに傾斜する。従って、ラインパターン14Aの両端部を通過する主光線18C,18Dは、ほぼ平行に光軸AXに対して反時計回りに傾斜するため、ラインパターン14Aの投影光学系PLによる像14APのX方向の両端部を通過する主光線18CP,18DPは光軸AXに対して時計回りに傾斜する。従って、投影光学系PLの像面側でウエハWの表面がベストフォーカス位置に対して+Z方向にFZだけデフォーカスすると、像14APの位置は+X方向にΔXだけシフトする。
【0041】
従って、投影光学系PLの像面側でウエハWの表面がデフォーカスすると、図3(A)の外側パターン14のX方向に配列されたラインパターン14A,14Bの像と内側パターン13のラインパターン13A,13Bの像とはX方向に沿って逆方向にシフトする。同様に、そのデフォーカスに対して、外側パターン14のY方向に配列されたラインパターン14C,14Dの像と内側パターン13のラインパターン13C,13Dの像とはY方向に沿って逆方向にシフトする。
【0042】
その結果、評価用パターン12Aの投影光学系PLによる像をウエハの表面に投影すると、そのウエハの表面がベストフォーカス位置(像面)にあるときには、図5(A)に示すように、評価用パターン12Aの外側パターン14の像14P(ラインパターン14A〜14Dの像14AP〜14DP)の中心14Qと、内側パターン13の像13P(ラインパターン13A〜13Dの像13AP〜13DP)の中心13Qとは同じ位置にある。なお、説明の便宜上、図5(A)〜図5(C)及び後述の図6(B)、図6(C)等では、投影光学系PLの像がX方向、Y方向に正立像であるものとしている。
【0043】
これに対してウエハの表面が+Z方向にデフォーカスすると、図5(B)に示すように、外側パターン14の像14Pの中心14Qに対して内側パターン13の像13Pの中心13Qは、−X方向にDX及び−Y方向にDYだけシフトする。また、ウエハの表面が−Z方向にデフォーカスすると、図5(C)に示すように、外側パターン14の像14Pの中心14Qに対して内側パターン13の像13Pの中心13Qは、+X方向にDX及び+Y方向にDYだけシフトする。従って、予め例えば実測又はシミュレーションによって、ウエハの表面のデフォーカス量FZに対する像14Pの中心14Qに対する像13Pの中心13QのX方向、Y方向のシフト量(間隔の変化量)DX,DYの割合である以下の検出レートRtを求めておけばよい。
【0044】
Rt=DX/FZ …(2A) 又は Rt=DY/FZ …(2B)
なお、式(2A)及び(2B)の平均値を次のように検出レートRtとしてもよい。
Rt={(DX+DY)/2}/FZ …(3)
なお、検出レートRtは定数ではなく、デフォーカス量FZの1次若しくは2次以上の関数でもよく、又は指数関数等の関数であってもよい。仮に式(3)を用いる場合、評価用パターン12Aの像を投影し、像14Pに対する像13Pのシフト量DX,DYを計測し、このシフト量の平均値を検出レートRtで除算することによって、その像が投影された計測点におけるデフォーカス量FZ、ひいてはベストフォーカス位置を求めることができる。
【0045】
次に、図7(A)は、図3(A)の評価用パターン12Aのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dの線幅a(nm)と、式(3)の検出レートRt及び予測される最大のデフォーカス量の計測誤差ZEr(nm)との関係をシミュレーションした結果を示す。シミュレーションの条件は、投影光学系PLの開口数NAが1、照明光学系ILS(照明光IL)のコヒーレンスファクタ(σ値)が0.2、位相シフト部15C,15E等の幅bが60nmである。計測誤差ZErとは、評価用パターン12Aの像の位置の計測誤差に起因するデフォーカス量の誤差と、式(3)に対する近似誤差(非線形誤差)との和である。
【0046】
図7(A)において、各線幅aの位置にある白色の棒ブラフB1は、デフォーカス量FZが±100nmの場合の検出レートRt、ハッチングされた棒グラフB2は、デフォーカス量FZが±200nmの場合の検出レートRtである。また、点線の折れ線C1は、デフォーカス量FZが±100nmの範囲の計測誤差(ここでは、非線形誤差)ZEr(nm)、実線の折れ線C2は、デフォーカス量FZが±200nmの範囲の計測誤差(ここでは、非線形誤差)ZEr(nm)である。図7(A)から、線幅aが600nm以上では、検出レートRt(棒グラフB1,B2)及び計測誤差ZEr(折れ線C1,C2)の値が一定になっておるため、投影光学系PLのフォーカス情報の計測精度は一定になる。また、検出レートRtの直線性の良好な範囲はデフォーカス量がほぼ±200nmの範囲内であるが、線幅aが600nm以上でデフォーカス量が±100nmの範囲内(棒グラフB1及び折れ線C1)では、検出レートRtは0.65を超え、計測誤差(非線形誤差)ZErは1nm以下と良好であることがわかる。
【0047】
さらに、図7(B)は、デフォーカス量の計測誤差ZErを、投影光学系PLの開口数NA及び照明光ILのコヒーレンスファクタ(σ値)を種々に変えて評価した結果の一例を示す。この場合、ラインパターン13A〜13D等の線幅aを1000nm、位相シフト部15C等の幅bを60nm、評価用パターン12Aの像位置の計測誤差を0.5nm、デフォーカス量FZを±100nmとしている。図7(B)において、曲線で囲まれた領域D1の計測誤差(非線形誤差と計測再現性の和)ZErは1〜1.5nm、領域D2の計測誤差ZErは1.5〜2nm、領域D3、D4、D5、…の計測誤差ZErはそれぞれ2〜2.5nm、2.5〜3nm、3〜3.5nm、…と、0.5nmずつ多くなっている。図7(B)より、領域D1及びD2では計測誤差ZErがほぼ2nm以下となり、高精度にデフォーカス量を計測できることが分かる。また、領域D1,D2における開口数NAとσ値との組み合わせの範囲はかなり広いため、開口数NAが1.3に達するように大きい場合でも、さらに種々の照明条件及び開口数の条件のもとでも、高精度にデフォーカス量を計測できることが分かる。
【0048】
また、本実施形態では、評価用パターン12Aの他に評価用パターン12B,12Cが設けられ、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅bに対して評価用パターン12B,12Cの位相シフト部15C等の線幅b1,b2は次第に広く設定されている。一例として、線幅bを65nm、線幅b1を120nm、線幅b2を200nmとした場合について、評価用パターン12A〜12Cの像のデフォーカス量FZと、対応する評価用パターン12A〜12Cの内側パターン13の像と外側パターン14の像とのX方向、Y方向へのシフト量SXYとの関係をシミュレーションで求めた結果を図8に示す。このシミュレーションの条件は、投影光学系PLの開口数NAが0.92、照明条件がσ値が0.25の通常照明である。また、図8の横軸はデフォーカス量FZ(nm)、縦軸はシフト量SXY(nm)であり、曲線C3、曲線C4、及び曲線C5は、それぞれ評価用パターン12A(線幅b)、評価用パターン12B(線幅b1)、及び評価用パターン12C(線幅b2)の像の特性を示している。
【0049】
図8から、デフォーカス量FZがほぼ±400nmまでの範囲では曲線C3がほぼ線形であり、デフォーカス量FZがほぼ±400〜±800nmの範囲では曲線C4がほぼ線形であり、デフォーカス量FZがほぼ±800〜±1600nmの範囲では曲線C5がほぼ線形であることが分かる。従って、例えばデフォーカス量が±400nmまでの範囲では、評価用パターン12Aの像のシフト量SXYからデフォーカス量FZを求め、デフォーカス量が±400〜±800nmの範囲では、評価用パターン12Bの像のシフト量SXYからデフォーカス量FZを求め、デフォーカス量が±800〜±1600nmの範囲では、評価用パターン12Cの像のシフト量SXYからデフォーカス量FZを求めることによって、ほぼ3000nm(3μm)程度の広い計測レンジ内で投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量を高精度に計測できる。
【0050】
この際に、3種類の評価用パターン12A〜12Cの計測値のうち、評価用パターン12Cの像シフト量の絶対値が予め定めた一定値(例えば200nm)以上の場合には、デフォーカス量を評価用パターン12Cの像シフト量から求めてもよい。そして、その値が上記一定値より小さい場合に、評価用パターン12Bの像シフト量の絶対値が別に定めた値(例えば80nm)以上ならば、デフォーカス量を評価用パターン12Bの像シフト量から求め、評価用パターン12Bの像シフト量の絶対値が上記の値より小さいときは、デフォーカス量を評価用パターン12Aの像シフト量から求めてもよい。
【0051】
さらに、図9は、投影光学系PLの開口数NAを1.35(液浸時)、照明条件をσ値が0.25の通常照明とした場合に、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅bを次第に変化させて、ウエハの表面のデフォーカス量FZと、内側パターン13の像に対する外側パターン14の像のシフト量ZXYとの関係をシミュレーションで求めたものである。図9において、横軸はデフォーカス量FZ(nm)、縦軸はシフト量SXY(nm)であり、曲線C11、C12、C13、C14、C15、C16、及びC17は、それぞれ位相シフト部15C等の線幅bが20nm、40nm、60nm、80nm、100nm、120nm、及び140nmの場合の関係を表している。図9の曲線C11〜C17より、開口数NAが1.35と大きい場合にも、評価用パターン12A〜12Cの位相シフト部15C等の線幅b,b1,b2をそれぞれ例えば40nm、80nm、140nmに設定することによって、デフォーカス量を±300nm程度の広い計測レンジ内で計測できることが分かる。
【0052】
さらに、図10(A)は、投影光学系PLの開口数NAを0.92、照明条件をσ値が0.80の通常照明とした場合に、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRt(像のシフト量/デフォーカス量)をシミュレーションで求めたものである。また、図10(B)は、投影光学系PLの開口数NAを1.35、照明条件をσ値が0.80の通常照明とした場合に、位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRtをシミュレーションで求めたものである。図10(A)及び図10(B)より、σ値が大きい場合にも、線幅bと検出レートRtとの関係が安定しているため、評価用パターン12A〜12Cの位相シフト部15C等の線幅b,b1,b3を適切に設定することによって、被検面の投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量を広い計測レンジ内で高精度に計測できることが分かる。
【0053】
次に、本実施形態の露光装置EXにおいて、投影光学系PLのフォーカス情報を計測する際の動作の一例につき図11のフローチャートを参照して説明する。この動作は、主制御系2の制御のもとで、例えば露光工程中で定期的に実行される。
まず、図11のステップ102において、図1のレチクルステージRSTにフォーカステストレチクルTRをロードし、そのアライメントを行う。次のステップ104において、ウエハステージWSTにフォトレジストが塗布された未露光の評価用のウエハ(ウエハWとする)をロードする。次のステップ106において、図6(A)に示すように、ウエハWの多数のショット領域SAk(k=1〜K;Kは2以上の整数)に、液浸法でかつ走査露光方式で、図2(A)のフォーカステストレチクルTRの多数組の評価用パターン12A〜12Cの投影光学系PLによる像を露光する。この際に、各ショット領域SAk毎に露光領域に対する走査方向が+Y方向DPであるか、又は−Y方向DMであるかが記憶される。また、各ショット領域SAkには、図6(B)に拡大して示すように、X方向、Y方向に配列された各計測点Q(i,j)(i=1〜I;j=1〜J)の近傍にそれぞれ評価用パターン12A〜12Cの像12AP〜12CPが露光される。そのうちの像12APは、図5(A)に示すような外側パターン14の像14P及び内側パターン13の像13Pから構成されている。
【0054】
次のステップ108において、露光済みのウエハWをウエハステージWSTからアンロードし、不図示のコータ・デベロッパにおいてウエハWを現像する。この結果、図6(B)のウエハWの各ショット領域SAk内の各計測点Q(i,j)の近傍に、図6(C)の拡大図で示すように、評価用パターン12Aの像12APを構成する内側パターン13の像13P及び外側パターン14の像14Pが凹凸のレジストパターンとして形成される。同様に、評価用パターン12B,12Cの像のレジストパターン(不図示)も形成される。
【0055】
次のステップ110において、現像後のウエハWを重ね合わせ計測装置(不図示)に搬送し、この重ね合わせ計測装置を用いて、ウエハWの各ショット領域SAk(k=1〜K)の各計測点Q(i,j)の評価用パターン12Aの像12AP(図6(C))において、外側パターン14の像14Pの中心14Qに対する内側パターン13の像13Pの中心13QのX方向、Y方向のシフト量(ΔXij,ΔYij)(像の位置関係)を計測する。同様に、評価用パターン12B,12Cの像に関しても、外側パターン14の像の中心に対する内側パターン13の像の中心のX方向、Y方向のシフト量(ΔXij,ΔYij)(像の位置関係)を計測する。これらのシフト量の計測結果は図1の主制御系2に供給される。
【0056】
次のステップ112において、主制御系2内の演算部は、計測された評価用パターン12A〜12Cの像12AP等のシフト量(ΔXij,ΔYij)の平均値を式(3)の既知の検出レートRtで除算して、それぞれ当該計測点Q(i,j)でのデフォーカス量FZijを求める。この際に、図8より、評価用パターン12Cの像から計測されたデフォーカス量が±800〜±1600nmの範囲では、その計測値をデフォーカス量FZijとする。また、評価用パターン12Bの像から計測されたデフォーカス量が±400〜±800nmの範囲では、その計測値をデフォーカス量FZijとする。また、評価用パターン12B,12Cの像から計測されるデフォーカス量が±400nm以内である場合には、評価用パターン12Aの像から計測されるデフォーカス量をデフォーカス量FZijとする。
【0057】
さらに、ステップ114において、主制御系2内の演算部は、ウエハWのショット領域SAkを露光領域に対する走査方向DP,DM別に第1グループ及び第2グループに分け、第1グループのショット領域SAk内の各計測点Q(i,j)におけるデフォーカス量FZijの平均値<FZij>を補間した値を、走査方向DPの露光フィールド内の全面の像面の補正値として記憶する。同様に、第2グループのショット領域SAk内の各計測点Q(i,j)におけるデフォーカス量FZijの平均値<FZij>を補間した値が、走査方向DMの露光フィールド内の全面の像面の補正値として記憶される。
【0058】
その後、ステップ116で図1のレチクルステージRSTにデバイス用のレチクルRがロードされ、ステップ118で、ウエハステージWSTにフォトレジストが塗布されたウエハがロードされる。そして、ステップ120において、ウエハに対してステップ114で記憶した走査方向別の像面の補正値を用いてオートフォーカスセンサ37で計測されるZ位置を補正しながら、ウエハの各ショット領域にレチクルRのパターンの像を走査露光する。この際に、フォーカステストレチクルTRの各評価用パターン12A〜12Cの像に基づいて計測されたデフォーカス量を補正するように、オートフォーカスセンサ37の計測値が補正されているため、ウエハの表面の投影光学系PLの像面に対する合焦精度が向上している。従って、レチクルRのパターンの像がウエハの各ショット領域に高精度に露光される。
【0059】
その後、ステップ122で露光済みのウエハがアンロードされ、ステップ124で次の露光対象のウエハがあるかどうかを判定し、未露光のウエハがある場合にはステップ118〜122を繰り返す。そして、ステップ124で未露光のウエハが尽きたときに露光工程が終了する。
【0060】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置EXは、投影光学系PLのフォーカス情報を計測するためのフォーカステストレチクルTRを備えている。フォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A〜12Cはそれぞれ外側パターン14(テストパターン)を有する。この外側パターン14は、それぞれY方向(第1方向)にライン状に延びたX方向(第2方向)の線幅aの位相シフト部15A(第2位相シフト部)、線幅aより狭い線幅b,b1,b2の透過部15B(第1透過部)、線幅aのラインパターン14A(第1遮光部)、線幅b,b1,b2の位相シフト部15C(第1位相シフト部)、及び幅aの透過部15D(第2透過部)をX方向に配列したものである。さらに、評価用パターン12A,12B,12Cの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅b,b1,b2は互いに異なっている。
【0061】
このフォーカステストレチクルTRによれば、ラインパターン14Aの+X方向側の位相シフト部15C及び透過部15Dを通過する照明光ILの主光線と、ラインパターン14Aの−X方向側の位相シフト部15A及び透過部15Bを通過する照明光ILの主光線とは、同じ方向に傾斜する。従って、評価用パターン12A〜12Cの像を一度露光するのみで、各ラインパターン14Aの像のX方向の横ずれ量から、その像面の形成面の投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量、ひいてはフォーカス情報を高い計測効率で求めることができる。さらに、ラインパターン14Aの線幅aは位相シフト部15C及び透過部15Bの幅bよりも広いため、そのフォーカス情報を高い計測再現性で計測できる。さらに、評価用パターン12A〜12Cの透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅b,b1,b2が互いに異なっているため、評価用パターン12A〜12Cの計測レンジを組み合わせることによって、全体として計測レンジを広くできる。
【0062】
(2)また、本実施形態では、透過部15BのX方向の幅b〜b2は位相シフト部15CのX方向の幅b〜b2と同じであり、デフォーカスに対するラインパターン14Aの像の両端部の横ずれ量がほぼ同じで、その像の線幅はほぼ一定である。
なお、透過部15BのX方向の幅と位相シフト部15CのX方向の幅とは異なっていてもよい。
【0063】
また、透過部15D(第2透過部)は必ずしも設ける必要はない。
(3)また、評価用パターン12A〜12Cは、それぞれ外側パターン14の像の位置ずれを計測するための内側パターン13(補助パターン)を有する。従って、外側パターン14の像の位置ずれ量、ひいてはデフォーカス量を高精度に計測できる。
なお、内側パターン13をテストパターンとみなし、外側パターン14を補助パターンとみなすことも可能である。
【0064】
(4)また、その内側パターン13は、それぞれY方向にライン状に延びたX方向の幅aの透過部15D(第4透過部)、幅b〜b2の位相シフト部15E(第3位相シフト部)、線幅aのラインパターン13A(第2遮光部)、幅b〜b2の透過部15F(第3透過部)、及び平均的な幅がa以上の位相シフト部15G(第4位相シフト部)をX方向に配列したものである。
【0065】
この内側パターン13のラインパターン13AのX方向の両側の位相分布は、外側パターン14のラインパターン14AのX方向の両側の位相分布と対称であるため、デフォーカスした場合のラインパターン13Aの像の横ずれ量の方向と、ラインパターン14Aの像の横ずれ量の方向とはX方向に沿って逆方向である。従って、デフォーカス量を2倍の感度で、かつオフセットを相殺して高精度に計測できる。
【0066】
なお、補助パターンとしては、計測感度は低下するが、単なる遮光性のラインパターンを使用することも可能である。
(5)また、本実施形態の投影光学系PLのフォーカス情報の計測方法は、本実施形態のフォーカステストレチクルTRを投影光学系PLの物体面に配置するステップ102と、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12C(外側パターン14及び内側パターン13)の投影光学系PLによる像をウエハWの表面(計測面)に投影するステップ106,108と、評価用パターン12A〜12Cの像の計測方向の位置情報である外側パターン14の像と内側パターン13の像との間隔を計測するステップ110とを含む。従って、その像の間隔(シフト量)から投影光学系PLの像面に対するデフォーカス量を広い計測レンジで計測できる。
【0067】
(6)また、その像を投影するステップは、ウエハWのフォトレジストを現像するステップ108を含んでいる。従って、その像の間隔を例えば重ね合わせ計測装置を用いて高精度に計測できる。
(7)また、本実施形態の露光装置EXは、照明光ILでレチクルRのパターンを照明し、照明光ILでそのパターン及び投影光学系PLを介してウエハW(基板)を露光する露光装置において、フォーカステストレチクルTRを保持するレチクルステージRSTと、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12Cの投影光学系PLによる像を投影させるとともに、評価用パターン12A〜12Cの像の計測方向の位置情報に基づいて、投影光学系PLの像面の補正値(像面情報)を求める主制御系2(制御装置)とを備えている。
【0068】
従って、レチクルステージRST上のレチクルをフォーカステストレチクルTRと交換して、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12Cの像を評価用のウエハに露光するのみで、投影光学系PLのフォーカス情報を効率的に高精度に、かつ広い計測レンジで計測できる。
なお、本実施形態において、外側パターン14が透過部15D及び16Dを備える構成について説明したが、この透過部15D及び16Dは、内側パターン13が備える構成であってもよい。同様に、外側パターン14が位相シフト部15Kを備える構成について説明したが、この位相シフト部15Kは、内側パターン13が備える構成であってもよい。
【0069】
なお、本実施形態では次のような変形が可能である。
(1)本実施形態では、フォーカステストレチクルTRの各計測点の近傍にそれぞれ3つの評価用パターン12A〜12Cが形成されているが、各計測点の近傍には評価用パターン12A〜12Cのうちの2つの評価用パターンのみを形成しておき、2つの評価用パターンの像からデフォーカス量を計測してもよい。これによっても、デフォーカス量の計測レンジを広くできる。
【0070】
さらに、各計測点の近傍に4個以上の互いに透過部15B及び位相シフト部15Cの線幅が異なる評価用パターンを形成しておき、これらの評価用パターンの像からデフォーカス量を計測してもよい。
(2)また、本実施形態では、照明条件は通常照明であるが、他の照明条件であっても同様にデフォーカス量が計測できる。
【0071】
一例として、図12(A)〜図12(D)は、投影光学系PLの開口数NAが1.30の場合に、図3(A)の評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRt(像のシフト量/デフォーカス量)をシミュレーションによって求めた結果を示す。また、図12(A)の場合の照明条件は、外側のσ値が0.95で、内側のσ値の比率σRが0.75の輪帯照明であり、図12(B)の場合の照明条件は、σ値が0.95〜0.75の範囲で各二次光源の広がり角が35°の4極照明であり、図12(C)の照明条件は、図3(A)のX方向に対応する方向に離れた2つの二次光源を用いる2極照明であり、図12(D)の照明条件は、図3(A)のY方向に対応する方向に離れた2つの二次光源を用いる2極照明である。
【0072】
図12(A)及び図12(B)より、輪帯照明又は4極照明であれば、線幅bの広い範囲で検出レートRtが安定しているため、デフォーカス量を高精度に広い計測レンジで計測できることが分かる。また、図12(C)及び図12(D)より、2極照明であっても、検出レートRtが比較的安定している範囲内の線幅bを持つ評価用パターンを組み合わせることによって、デフォーカス量を高精度に広い計測レンジで計測できることが分かる。
【0073】
(3)また、本実施形態では、図3(A)の評価用パターン12A(12B,12C)のラインパターン13A〜13D,14A〜14Dは遮光パターンであるが、ラインパターン13A〜13D,14A〜14Dとして、所定の透過率を持ついわゆるハーフトーンパターンを使用してもよい。
一例として、図13(A)は、投影光学系PLの開口数NAが1.35で、照明条件が外側のσ値が0.95で、内側のσ値の比率σRが0.75の輪帯照明であり、図3(A)の評価用パターン12Aのラインパターン13A〜13D,14A〜14Dが透過率6%で位相が180°遅れるハーフトーンパターンである場合に、評価用パターン12Aの位相シフト部15C等の線幅b(nm)を次第に変化させて、式(3)の検出レートRt(像のシフト量/デフォーカス量)をシミュレーションによって求めた結果を示す。また、図13(B)は、同じ条件下で、位相シフト部15C(位相が90°進むものとしている)等の線幅bが160nmの場合に、デフォーカス量FZ(nm)と評価用パターン12Aの内側パターン13の像と外側パターン14の像とのシフト量SXY(nm)をシミュレーションによって求めた結果を示す。図13(A)及び図13(B)より、ハーフトーンパターンを用いる場合にも、安定した検出レートRtで高精度にデフォーカス量を計測できることが分かる。
【0074】
(4)また、本実施形態では、図3(A)の評価用パターン12A(12B,12C)は、X方向及びY方向に等方的な形状である。しかしながら、例えば図3(A)の2つの評価用パターン12A,12Bの代わりに、図14の一つの非等方的な評価用パターン60を使用することも可能である。
図3(A)に対応する部分に同一符号を付した図14において、評価用パターン60は、X方向の外側パターン14X及び内側パターン13Xと、Y方向の外側パターン14Y及び内側パターン13Yとを有する。そして、X方向の外側パターン14Xは、X方向に配列された位相シフト部15A,15K、透過部15B,15L、ラインパターン14A,14B、位相シフト部15C,15M、及び透過部15D,15Nを有し、Y方向の外側パターン14Yは、Y方向に配列された位相シフト部16A,15K、透過部16B,16L、ラインパターン14C,14D、位相シフト部16C,16M、及び透過部16D,16Nを有する。同様に、X方向の内側パターン13Xは、透過部15D,15H、位相シフト部15E,15I、ラインパターン13A,13B、透過部15F,15J、及び位相シフト部15G,15Kを有し、Y方向の内側パターン13Yは、Y方向に配列された透過部16D,15H、位相シフト部16E,16I、ラインパターン13C,13D、透過部16F,16J、及び位相シフト部15G,15Kを有する。
【0075】
ただし、評価用パターン60においては、X方向の外側パターン14X及び内側パターン13Xにおける透過部15B及び位相シフト部15C等の線幅bと、Y方向の外側パターン14Y及び内側パターン13Yにおける透過部16B及び位相シフト部16C等の線幅b1とは異なっている。一例として、線幅bは50〜70nmの範囲内で例えば65nmに設定され、線幅b1は100〜140nmの範囲内で例えば120nmに設定される。
【0076】
この結果、図14の評価用パターン60の像を投影すると、露光面のデフォーカス量と、X方向の外側パターン14X及び内側パターン13Xの像のシフト量との関係は、図8の曲線C3のようになる。一方、露光面のデフォーカス量と、Y方向の外側パターン14Y及び内側パターン13Yの像のシフト量との関係は、図8の曲線C4のようになる。従って、X方向の像の位置ずれ量から計測されるデフォーカス量と、Y方向の像の位置ずれ量から計測されるデフォーカス量とを組み合わせることによって、広い計測レンジで高精度にデフォーカス量を計測できる。また、このように一つの評価用パターン60で、異なる線幅b,b1を持つ2つの評価用パターン12A,12Bを兼用できるため、フォーカステストレチクルTR内の計測点数を容易に多くできる。
【0077】
(5)また、本実施形態では、フォーカステストレチクルTRの評価用パターン12A〜12Cの像をウエハに露光し、現像後に形成されるレジストパターンの位置関係を重ね合わせ計測装置を用いて計測している。
しかしながら、露光装置EXは空間像計測系34を備えている。そこで、評価用パターン12A〜12Cの投影光学系PLによる像(空間像)を図1の空間像計測系34のスリットパターン30AでX方向、Y方向に走査して、空間像計測系34によってその空間像の光強度分布を計測してもよい。この計測結果から評価用パターン12A〜12Cの外側パターン14の像と内側パターン13の像との間隔を求め、この間隔からデフォーカス量を求めることによって、投影光学系PLのフォーカス情報を求めることができる。
【0078】
(6)本実施形態では、フォーカステストレチクルTRをレチクルRと交換してレチクルステージRST上にロードしているが、フォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A等を、レチクルステージRSTのレチクルRが保持される領域に近接した領域に固定されているレチクルマーク板(不図示)に形成しておいてもよい。この場合、必要に応じて、レチクルステージRSTを移動して、そのレチクルマーク板を照明光ILの照明領域に移動することで、投影光学系PLのフォーカス情報を計測できる。
【0079】
(7)また、図3(A)の評価用パターン12A(12B,12C)は、内側パターン13及び外側パターン14を備えているが、評価用パターン12A等は、例えば位相シフト部15A,15C、透過部15B,15D、及びラインパターン14Aのみから構成してもよい。さらに、評価用パターン12A等は、例えば位相シフト部15A,15C、透過部15B,15D、及びラインパターン14Aよりなるテストパターン、並びに例えば位相シフト部15E,15G、透過部15D,15F、及びラインパターン13Aよりなる補助パターンのみから構成してもよい。
【0080】
(8)また、上記の実施形態のフォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A〜12C(テストパターン)等の像の計測方向の位置情報(像シフト量)を計測する際に、複数の評価用パターンのうち、照明条件、計測感度(検出レートRt)、及び計測レンジ(計測可能範囲)の少なくとも一つの条件に関してより適した、即ちその条件に関する特性が最も良好な評価用パターンの像の計測方向の位置情報を計測してもよい。
【0081】
なお、本発明は液浸型の露光装置で露光する場合のみならず、液体を介さないドライ露光型の露光装置の投影光学系のフォーカス情報を計測する場合にも適用できる。また、本発明は、走査露光型の露光装置の外に、ステッパー等の一括露光型の露光装置において投影光学系のフォーカス情報を計測する場合にも適用できる。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、MEMS(Microelectromechanical Systems)、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の露光工程にも適用することができる。
【0082】
さらに、本発明では評価用パターンの透過部と位相シフト部との位相差が90°に限定されないため、その評価用パターンは、光源から複数の波長、例えば水銀ランプから放射されるi線、h線、g線の混合光を用いる投影露光装置のデフォーカス計測にも適用可能である。
また、上記の実施形態のフォーカステストレチクルTRに形成された複数の評価用パターン12A〜12C等(位相シフト部15Cの線幅が互いに異なっている複数の評価用パターン)を用いて、各評価用パターン12A〜12C等毎の計測感度(検出レートRt)及び計測レンジを求めてもよい。そして、その求められた結果から、例えば計測感度及び/又は計測レンジの良好な1〜3種類程度の評価用パターンを実際のデバイス製造用の回路パターンが形成されたレチクル(製品マスク)の一部に形成しておいてもよい。この場合、そのデバイス製造用のレチクルを用いる露光工程中で、必要に応じてその評価用パターンを用いてその実露光用のレチクルのパターンの像のデフォーカス量を計測できる。
【0083】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0084】
EX…露光装置、ILS…照明光学系、TR…フォーカステストレチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、2…主制御系、12A〜12C…評価用パターン、13…内側パターン、13A〜13D…ラインパターン、14…外側パターン、14A〜14D…ラインパターン、15A,15C,15E…位相シフト部、15B,15D,15F…透過部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系を介して物体上に投影される複数のテストパターンが設けられたフォーカステストマスクであって、
前記複数のテストパターンは、それぞれ、
第1方向にライン状に延び、光を遮光する第1遮光部と、
前記第1方向と直交する第2方向に関して前記第1遮光部の一方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第1遮光部の線幅より狭く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第1位相シフト部と、
前記第2方向に関して前記第1遮光部の他方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第1遮光部の線幅より狭く形成され、前記光を透過する第1透過部と、
前記第2方向に関して前記第1透過部の前記第1遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第1透過部より広く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第2位相シフト部と、を有し、
前記複数のテストパターンの前記第1位相シフト部及び前記第1透過部の前記第2方向の線幅が互いに異なることを特徴とするフォーカステストマスク。
【請求項2】
前記第1透過部の前記第2方向の線幅は、前記第1位相シフト部の前記第2方向の線幅と同じであることを特徴とする請求項1に記載のフォーカステストマスク。
【請求項3】
前記複数のテストパターンは、それぞれ、
前記第2方向に関して前記第1位相シフト部の前記第1遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第1位相シフト部より広く形成され、前記光を透過する第2透過部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフォーカステストマスク。
【請求項4】
前記第2透過部の前記第2方向の線幅は、前記第2位相シフト部の前記第2方向の線幅と同じであることを特徴とする請求項3に記載のフォーカステストマスク。
【請求項5】
前記第1遮光部の前記第2方向の線幅は、前記第1位相シフト部の前記第2方向の線幅の少なくとも4培であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項6】
前記第1遮光部の前記第2方向の線幅は、前記第2透過部の前記第2方向の線幅及び前記第2位相シフト部の前記第2方向の線幅と同じであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のフォーカステストマスク。
【請求項7】
前記第1遮光部の前記投影光学系による像の前記第2方向の線幅は少なくとも200nmであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項8】
前記複数のテストパターンの像のそれぞれの位置ずれを計測するための補助パターンを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項9】
前記補助パターンは、
前記第1方向にライン状に延び、光を遮光する第2遮光部と、
前記第2方向に関して前記第2遮光部の一方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第2遮光部の線幅より狭く形成され、
前記光を透過する第3透過部と、
前記第2方向に関して前記第2遮光部の他方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第2遮光部の線幅より狭く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第3位相シフト部と、
前記第2方向に関して前記第3透過部の前記第2遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第3透過部より広く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第4位相シフト部と、
を有することを特徴とする請求項8に記載のフォーカステストマスク。
【請求項10】
前記複数のテストパターンは、それぞれ、
前記第2方向に関して前記第1位相シフト部の前記第1遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第1位相シフト部より広く形成され、前記光を透過する第2透過部を有し、
前記補助パターンは、
前記第2方向に関して前記第3位相シフト部の前記第2遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第3位相シフト部より広く形成され、前記光を透過する第4透過部を有することを特徴とする請求項9に記載のフォーカステストマスク。
【請求項11】
前記テストパターン及び対応する前記補助パターンで構成される複数のパターン群を有し、
前記複数のパターン群のうち第1パターン群は、前記テストパターンと前記補助パターンとが、前記第2方向の一方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項10に記載のフォーカステストマスク。
【請求項12】
前記第2位相シフト部は、前記第4位相シフト部を兼用することを特徴とする請求項11に記載のフォーカステストマスク。
【請求項13】
前記複数のパターン群のうち第2パターン群は、前記第2方向の他方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のフォーカステストマスク。
【請求項14】
前記複数のパターン群のうち第3パターン群は、前記第1方向の一方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項15】
前記複数のパターン群のうち第4パターン群は、前記第1方向の他方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項16】
投影光学系の像面情報を計測するフォーカス計測方法において、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のフォーカステストマスクを前記投影光学系の物体面側に配置する工程と、
前記フォーカステストマスクに設けられた前記テストパターンの前記投影光学系による像を計測面に投影する工程と、
前記テストパターンの像の計測方向の位置情報を計測する工程と、
を含むことを特徴とするフォーカス計測方法。
【請求項17】
前記テストパターンの像の計測方向の位置情報を計測する工程は、
前記フォーカステストマスクに設けられた前記複数のテストパターンのうち、照明条件、計測感度、及び計測可能範囲の少なくとも一つの条件に関してより適したテストパターンの像の前記計測方向の位置情報を計測することを特徴とする請求項16に記載のフォーカス計測方法。
【請求項18】
前記フォーカステストマスクは、前記複数のテストパターンの像の位置ずれをそれぞれ計測するための補助パターンを有し、
前記テストパターンの像の前記計測方向の位置情報は、前記テストパターンの像と前記補助パターンの像との前記計測方向の間隔を含むことを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のフォーカス計測方法。
【請求項19】
前記テストパターンの前記投影光学系による像を投影する工程は、
前記像を感光基板に投影する工程と、前記感光基板を現像する工程とを含むことを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか一項に記載のフォーカス計測方法。
【請求項20】
前記テストパターンの像及び前記補助パターンの像の前記計測方向の位置情報を計測する工程は、前記像の前記計測方向の光強度分布を空間像計測系を用いて計測する工程を含むことを特徴とする請求項18に記載のフォーカス計測方法。
【請求項21】
露光光でマスクのパターンを照明し、前記露光光で前記パターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のフォーカステストマスクを保持するマスクステージと、
前記フォーカステストマスクの前記テストパターンの前記投影光学系による像を投影させるとともに、前記テストパターンの像の計測方向の位置情報に基づいて、前記投影光学系の像面情報を求める制御装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項22】
前記フォーカステストマスクは、前記マスクステージの前記マスクが保持される領域に近接した領域に保持されることを特徴とする請求項21に記載の露光装置。
【請求項23】
前記テストパターンの前記投影光学系による像を検出する空間像計測系を備えることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の露光装置。
【請求項1】
投影光学系を介して物体上に投影される複数のテストパターンが設けられたフォーカステストマスクであって、
前記複数のテストパターンは、それぞれ、
第1方向にライン状に延び、光を遮光する第1遮光部と、
前記第1方向と直交する第2方向に関して前記第1遮光部の一方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第1遮光部の線幅より狭く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第1位相シフト部と、
前記第2方向に関して前記第1遮光部の他方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第1遮光部の線幅より狭く形成され、前記光を透過する第1透過部と、
前記第2方向に関して前記第1透過部の前記第1遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第1透過部より広く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第2位相シフト部と、を有し、
前記複数のテストパターンの前記第1位相シフト部及び前記第1透過部の前記第2方向の線幅が互いに異なることを特徴とするフォーカステストマスク。
【請求項2】
前記第1透過部の前記第2方向の線幅は、前記第1位相シフト部の前記第2方向の線幅と同じであることを特徴とする請求項1に記載のフォーカステストマスク。
【請求項3】
前記複数のテストパターンは、それぞれ、
前記第2方向に関して前記第1位相シフト部の前記第1遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第1位相シフト部より広く形成され、前記光を透過する第2透過部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフォーカステストマスク。
【請求項4】
前記第2透過部の前記第2方向の線幅は、前記第2位相シフト部の前記第2方向の線幅と同じであることを特徴とする請求項3に記載のフォーカステストマスク。
【請求項5】
前記第1遮光部の前記第2方向の線幅は、前記第1位相シフト部の前記第2方向の線幅の少なくとも4培であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項6】
前記第1遮光部の前記第2方向の線幅は、前記第2透過部の前記第2方向の線幅及び前記第2位相シフト部の前記第2方向の線幅と同じであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のフォーカステストマスク。
【請求項7】
前記第1遮光部の前記投影光学系による像の前記第2方向の線幅は少なくとも200nmであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項8】
前記複数のテストパターンの像のそれぞれの位置ずれを計測するための補助パターンを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項9】
前記補助パターンは、
前記第1方向にライン状に延び、光を遮光する第2遮光部と、
前記第2方向に関して前記第2遮光部の一方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第2遮光部の線幅より狭く形成され、
前記光を透過する第3透過部と、
前記第2方向に関して前記第2遮光部の他方側に設けられ、前記第1方向にライン状に延びるとともに、前記第2方向に関する線幅が前記第2遮光部の線幅より狭く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第3位相シフト部と、
前記第2方向に関して前記第3透過部の前記第2遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第3透過部より広く形成され、透過する前記光の位相を変化させる第4位相シフト部と、
を有することを特徴とする請求項8に記載のフォーカステストマスク。
【請求項10】
前記複数のテストパターンは、それぞれ、
前記第2方向に関して前記第1位相シフト部の前記第1遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第1位相シフト部より広く形成され、前記光を透過する第2透過部を有し、
前記補助パターンは、
前記第2方向に関して前記第3位相シフト部の前記第2遮光部とは反対側に設けられ、前記第2方向に関する線幅が前記第3位相シフト部より広く形成され、前記光を透過する第4透過部を有することを特徴とする請求項9に記載のフォーカステストマスク。
【請求項11】
前記テストパターン及び対応する前記補助パターンで構成される複数のパターン群を有し、
前記複数のパターン群のうち第1パターン群は、前記テストパターンと前記補助パターンとが、前記第2方向の一方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項10に記載のフォーカステストマスク。
【請求項12】
前記第2位相シフト部は、前記第4位相シフト部を兼用することを特徴とする請求項11に記載のフォーカステストマスク。
【請求項13】
前記複数のパターン群のうち第2パターン群は、前記第2方向の他方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のフォーカステストマスク。
【請求項14】
前記複数のパターン群のうち第3パターン群は、前記第1方向の一方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項15】
前記複数のパターン群のうち第4パターン群は、前記第1方向の他方側から、前記第2透過部、前記第1位相シフト部、前記第1遮光部、前記第1透過部、前記第2位相シフト部、前記第4位相シフト部、前記第3透過部、前記第2遮光部、前記第3位相シフト部、前記第4透過部の順に配列されて形成されることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のフォーカステストマスク。
【請求項16】
投影光学系の像面情報を計測するフォーカス計測方法において、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のフォーカステストマスクを前記投影光学系の物体面側に配置する工程と、
前記フォーカステストマスクに設けられた前記テストパターンの前記投影光学系による像を計測面に投影する工程と、
前記テストパターンの像の計測方向の位置情報を計測する工程と、
を含むことを特徴とするフォーカス計測方法。
【請求項17】
前記テストパターンの像の計測方向の位置情報を計測する工程は、
前記フォーカステストマスクに設けられた前記複数のテストパターンのうち、照明条件、計測感度、及び計測可能範囲の少なくとも一つの条件に関してより適したテストパターンの像の前記計測方向の位置情報を計測することを特徴とする請求項16に記載のフォーカス計測方法。
【請求項18】
前記フォーカステストマスクは、前記複数のテストパターンの像の位置ずれをそれぞれ計測するための補助パターンを有し、
前記テストパターンの像の前記計測方向の位置情報は、前記テストパターンの像と前記補助パターンの像との前記計測方向の間隔を含むことを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のフォーカス計測方法。
【請求項19】
前記テストパターンの前記投影光学系による像を投影する工程は、
前記像を感光基板に投影する工程と、前記感光基板を現像する工程とを含むことを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか一項に記載のフォーカス計測方法。
【請求項20】
前記テストパターンの像及び前記補助パターンの像の前記計測方向の位置情報を計測する工程は、前記像の前記計測方向の光強度分布を空間像計測系を用いて計測する工程を含むことを特徴とする請求項18に記載のフォーカス計測方法。
【請求項21】
露光光でマスクのパターンを照明し、前記露光光で前記パターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のフォーカステストマスクを保持するマスクステージと、
前記フォーカステストマスクの前記テストパターンの前記投影光学系による像を投影させるとともに、前記テストパターンの像の計測方向の位置情報に基づいて、前記投影光学系の像面情報を求める制御装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項22】
前記フォーカステストマスクは、前記マスクステージの前記マスクが保持される領域に近接した領域に保持されることを特徴とする請求項21に記載の露光装置。
【請求項23】
前記テストパターンの前記投影光学系による像を検出する空間像計測系を備えることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−221312(P2011−221312A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90975(P2010−90975)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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