説明

フォーカス制御装置

【課題】交換レンズの種類に応じた高精度なオートフォーカス制御を行うことができるフォーカス制御装置を提供すること。
【解決手段】カメラのジャイロセンサ205の出力によって角速度を検出し、この角速度に基づいてカメラ本体200のパン移動又はチルト移動を検出する。パン移動又はチルト移動が検出された場合でウォブリング動作可能な交換レンズ100が装着されている場合は、ウォブリング動作を開始する。一方、パン移動又はチルト移動が検出された場合でウォブリング動作不可能な交換レンズ100が装着されている場合は、パン移動・チルト移動の終了が検出された時点でフォーカスレンズの駆動を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズとカメラ本体とを有する撮像装置のためのフォーカス制御装置に関し、特に山登り方式を用いてフォーカス制御を行うフォーカス制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正確で且つ高速なオートフォーカス制御を行うための技術が各種提案されている。この中で、特許文献1においては、レンズユニットの角速度の変化量に焦点距離を乗じた値が予め定める閾値を越えたときに、予め定める期間だけ山登り方式のフォーカス制御(以下、山登りAFと言う)を停止させるようにしている。ここで、山登りAFとは、フォーカスレンズをその光軸に沿って移動させながら撮像素子を介して得られる画像のコントラストを検出し、このコントラストの変化に従ってフォーカスレンズの合焦位置を検出するものである。このような特許文献1の技術によれば、手振れやパン移動等が発生した場合には山登りAFが停止させるため、この間にフォーカス制御が不安定状態となることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−322583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、交換レンズとカメラ本体とを有してなる撮像装置のフォーカス制御においては、交換されるレンズ毎に特性が異なるため、交換レンズの種類に応じた最適なフォーカス制御を行うことが望ましい。特に、交換レンズの種類によっては、手振れやパン移動等が発生した場合であってもフォーカス制御を停止させないほうが高精度のフォーカス制御を行えることがある。したがって、特許文献1において開示されている技術を、交換レンズとカメラ本体とを有してなる撮像装置に単純に適用することは望ましくない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、交換レンズの種類に応じた高精度なオートフォーカス制御を行うことが可能なフォーカス制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様のフォーカス制御装置は、光軸方向に移動可能なフォーカスレンズを含み被写体の光学画像を生成する光学系を有する交換レンズと、前記交換レンズを装着可能で且つ前記光学系によって生成された光学画像を撮像して画像を取得する撮像素子を有するカメラ本体とを備える撮像装置のためのフォーカス制御装置であって、前記カメラ本体のパン移動及びチルト移動をそれぞれ検出するパン・チルト検出部と、前記交換レンズがウォブリング動作可能であるか否かを判定するウォブリング可否判定部と、前記撮像素子で得られた画像に基づき、前記被写体に追従するように前記フォーカスレンズを移動させるオートフォーカス動作を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記フォーカスレンズの移動中に前記カメラ本体のパン移動又はチルト移動の開始が検出された場合のオートフォーカス動作を、前記ウォブリング可否判定部の判定結果に基づいて異ならせるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交換レンズの種類に応じた高精度なオートフォーカス制御を行うことが可能なフォーカス制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォーカス制御装置を有する撮像装置の構成図である。
【図2】ウォブリング可否判定処理について示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態における通常時のAF処理について示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるパン・チルト検出時AF処理について示す図である。
【図5】ウォブリング動作可能な交換レンズの場合のAF処理時の状態遷移図である。
【図6】ウォブリング動作不可能な交換レンズの場合のAF処理時の状態遷移図である。
【図7】検出回路の出力波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフォーカス制御装置を有する撮像装置の構成図である。図1に示す撮像装置は、交換レンズ100とカメラ本体200とを有している。本撮像装置において、交換レンズ100は、カメラ本体200に設けられた不図示のレンズマウントを介してカメラ本体200に着脱自在になされている。
【0010】
交換レンズ100は、撮影レンズ101と、フォーカスレンズ駆動部102と、レンズ制御部103と、記憶部104とを有している。ここで、実際の交換レンズ100は、絞り制御機構やズーム機構等をさらに有しているが、図1では図示を省略している。
【0011】
撮影レンズ101は、フォーカスレンズを含む光学系であり、図示しない被写体の光学画像を、カメラ本体200の撮像素子201上に生成する。フォーカスレンズ駆動部102は、モータ(フォーカスモータ)等の駆動機構を有しており、レンズ制御部103からの制御信号に従ってフォーカスレンズをその光軸方向(図示A方向)に移動させる。
【0012】
レンズ制御部103は、マイクロコンピュータと、交換レンズ100内の各部を制御する制御回路とを一体化したLSIである。このレンズ制御部103は、カメラ本体200の本体制御部203から出力された制御信号に基づき、フォーカスレンズ駆動部102に制御信号を送る。また、レンズ制御部103は、本体制御部203から送られた同期信号と、この同期信号に対する位相を示す情報とに基づき、フォーカスレンズのウォブリング動作を含むフォーカス制御を行う。このフォーカス制御の詳細については後述する。
【0013】
記憶部104は、交換レンズ100毎に固有の特性情報を記憶している。レンズ制御部103は、本体制御部203の要求に応じて、記憶部104に記憶されている特性情報を本体制御部203に送信する。
ここで、上述の例において、レンズ制御部103は、マイクロコンピュータと、交換レンズ100内の各部を制御する制御回路とを一体化したLSIであるとしている。しかしながら、マイクロコンピュータと制御回路とは必ずしも一体化する必要はなく、複数のLSIで構成するようにしても良い。
【0014】
カメラ本体200は、撮像素子201と、液晶表示部202と、本体制御部203と、マウント接点204と、ジャイロセンサ205と、検出回路206とを有している。ここで、実際のカメラ本体200は、使用者が撮影動作を指示するためのレリーズボタンや、撮影動作によって得られた画像データを記憶する記憶部等をさらに有しているが、図1では図示を省略している。
【0015】
撮像素子201は、交換レンズ100を介して入射する光学画像を電気信号(画像信号)に変換する。この撮像素子201は、CCDイメージセンサやMOSイメージセンサ等から構成されている。ここで、撮像素子201から出力される画像信号に基づいて、撮像素子201を介して生成される画像のコントラストを示すAF評価値を算出することができる。そして、AF評価値に基づいて撮影レンズ101の合焦状態を検出することができる。
【0016】
液晶表示部202は、例えばカメラ本体200の背面に設けられた液晶表示部である。この液晶表示部202は、撮像素子201から出力された画像信号に基づいて本体制御部203で生成された表示用の画像データに基づく画像を表示する。
本体制御部203は、CPUと、カメラ本体200内の各部を制御する制御回路と、各種信号処理を行う信号処理回路とを一体化したLSIである。この本体制御部203は、カメラ本体200における各部を制御して各種動作シーケンスを実行する。また、本体制御部203は、制御部としての機能を有し、レンズマウントを介してレンズ制御部103に対して制御信号や、撮像素子201の露光動作とフォーカスレンズの駆動動作との同期を取るための同期信号VDを出力することも行う。また、本体制御部203は、撮像素子201の動作を制御し、撮像素子201から出力される画像信号をデジタル信号である画像データに変換することも行う。この場合、本体制御部203は、画像データに対してホワイトバランス制御等の各種信号処理を行う。さらに、本体制御部203は、各種信号処理により得られた画像データを液晶表示部202に出力して液晶表示部202における画像の表示を制御することも行う。
【0017】
ここで、上述の例において、本体制御部203は、マイクロコンピュータと、カメラ本体200内の各部を制御する制御回路と、各種信号処理を行う信号処理回路とを一体化したLSIであるとしている。しかしながら、これらを複数のLSIで構成するようにしても良い。
【0018】
マウント接点204は、レンズマウント内に設けられており、レンズ制御部103と本体制御部203とを通信可能に接続するための接点である。
ジャイロセンサ205は、2軸方向の角速度に応じた信号を発生する。なお、以下の説明においては、カメラ本体200を横向きで構えた場合に、地表に対して水平となる方向をX軸、地表に対して垂直となる方向をY軸とする。ジャイロセンサ205は、このように定義されたX軸、Y軸にそれぞれ沿った方向のカメラ本体200の移動に伴う角速度を検出するようになされている。検出回路206は、ジャイロセンサ205の出力信号に対してフィルタ処理(微分処理)等を行い、処理後の出力信号を本体制御部203に出力する。本体制御部203は、検出回路206の出力に基づいて、カメラ本体200がパン移動(地表に対して水平な方向に沿ったカメラ本体200の移動)やチルト移動(地表に対して垂直な方向に沿ったカメラ本体200の移動)されたか否かを検出する。このようなジャイロセンサ205及び検出回路206がパン・チルト検出部として機能する。
【0019】
次に、ウォブリング可否判定部として機能する本体制御部203によるウォブリング可否判定方法について説明する。ここで、「ウォブリング動作」とは、フォーカスレンズをその光軸方向に沿って振動的に移動させながら、徐々にフォーカスレンズを合焦位置まで移動させる動作のことを言うものである。一般に、ウォブリング動作の可否は、交換レンズ100内のフォーカスモータの性能やレンズ群特性によって決定される。通常、ウォブリング動作においては、15Hz〜30Hz程度の周波数(ウォブリング周波数と言う)でフォーカスレンズをその光軸方向に沿って振動させる必要がある。したがって、ウォブリング動作の可否は、交換レンズ100が、15Hz〜30Hz程度でのフォーカスレンズの振動を可能とするフォーカスモータを有しているか、及びそのような比較的高速の振動を可能とする程度に軽量なフォーカスレンズを有しているかによって決定される。さらには、フォーカスレンズを光軸方向に移動すると画角も微妙に変化してしまうため、フォーカスレンズの移動に伴う画角変化が極力起こらないレンズ設計がなされている必要もある。
【0020】
本実施形態においては、以上の対策がなされた交換レンズを「ウォブリング動作を行うことが可能な交換レンズ」であるとする。そして、交換レンズ100がウォブリング動作を行うことが可能な交換レンズであるか否かを示すウォブリング可否情報を交換レンズ100内の記憶部104に記憶させておく。ここで、ウォブリング動作は、撮像素子201の露光動作と同期して行うことが望ましい。このため、本実施形態における記憶部104には、ウォブリング周波数毎に表1の様な形態でウォブリング可否情報を記憶させておく。
【0021】
【表1】

ここで、可否情報の「1」がウォブリング動作可能であることを示し、「0」がウォブリング動作不可能であることを示している。
次に、本体制御部203によってウォブリング可否判定処理について図2を参照して具体的に説明する。
カメラ本体200の電源投入時に、本体制御部203は、ウォブリング可否情報を要求するためのコマンドをレンズ制御部103に対して送信する(ステップS101)。ここでの通信は、例えばシリアル通信を用いた同期通信プロトコル等に従って実行される。
【0022】
レンズ制御部103は、カメラ本体200から受信したコマンドを解読する。解読したコマンドがウォブリング可否情報を要求するコマンドである場合に、レンズ制御部103は、表1に示すウォブリング可否情報を本体制御部203に送信する。これにより、本体制御部203においてウォブリング可否情報が取得される(ステップS102)。本体制御部203は、ウォブリング可否情報を受信すると、予め決定されている撮像素子201の露光周期に対応したウォブリング周波数のウォブリング可否情報を選択する(ステップS103)。ここで、ウォブリング可否情報の選択の際に、撮像素子201の露光周期に対応したウォブリング周波数のウォブリング可否情報がなかった場合は、撮像素子201の露光周期に対応した周波数よりも高い周波数で且つ露光周期に対応した周波数に最も近いウォブリング周波数のウォブリング可否情報を選択するものとする。
【0023】
ウォブリング可否情報の選択後、本体制御部203は、ウォブリング可否の判定を行う(ステップS104)。ステップS104の判定において、ウォブリング可否情報が1の場合に、本体制御部203は、ウォブリング動作が可能であると判定する(ステップS105)。一方、ステップS104の判定において、ウォブリング可否情報が0の場合に、本体制御部203は、ウォブリング動作が不可能であると判定する(ステップS106)。
【0024】
次に、本実施形態におけるフォーカス制御(AF)処理について説明する。まず、図3を参照して通常時のAF処理について説明する。
図3に示すAF処理の開始後、本体制御部203は、ウォブリング可否判定処理の結果から、交換レンズ100が、ウォブリング動作可能な交換レンズであるか否かを判定する(ステップS201)。
【0025】
ステップS201の判定において、交換レンズ100がウォブリング動作可能な交換レンズである場合に、本体制御部203は、フォーカスレンズをその光軸に沿って微小振動するように移動させながら徐々にフォーカスレンズを合焦位置まで移動させていくウォブリング動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS202)。なお、ウォブリング動作の細かい技術に関しては、例えば特開2010−9009号公報において開示された公知の技術である。したがって、ここでは詳しい説明については省略する。また、ウォブリング動作中の撮像素子201の露光周期は、図2において示した予め決定されている露光周期とする。
【0026】
ウォブリング動作の実行後、本体制御部203は、微小振動させたときのAF評価値(即ちコントラスト)の変化から、現在のフォーカスレンズの位置に対して合焦位置が光軸上のどちらの向きにあるのか、即ちAF評価値が増加する方向が近距離方向と遠距離方向の何れであるかを判定する(ステップS203)。
【0027】
次に、本体制御部203は、山登りAFが必要であるか否かを判定する(ステップS204)。ステップS204においては、撮影レンズ101の合焦位置が大きくずれている場合等のウォブリング動作のみでは被写体を追従してのフォーカス制御を行えない場合に山登りAFが必要であるとする。なお、撮影レンズ101の合焦位置が大きくずれている場合とは、例えばAF評価値が所定値よりも低い場合である。
【0028】
ステップS204の判定において、山登りAFが必要である場合に、本体制御部203は、合焦位置に向けてフォーカスレンズを微小量ずつ移動させるスキャン動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS205)。ここで、ウォブリング動作可能な交換レンズ100が装着されている場合には、AF評価値のピークを越えるまでのフォーカスレンズのスキャン動作は行わず、合焦位置(AF評価値のピークに対応したフォーカスレンズ位置)までの最後の合わせ込みはウォブリング動作で行うこととする。このために、本体制御部203は、スキャン動作中にAF評価値の変化を検出し、例えばAF評価値がピーク位置付近を示すある一定量だけ増加した時点でスキャン動作を停止させるようにレンズ制御部103に指示を送る。スキャン動作の停止後、本体制御部203は、ウォブリング動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS206)。
【0029】
ウォブリング動作の後、本体制御部203は、フォーカスレンズが合焦位置に達したか否か、即ちAF評価値がピークとなったか否かを判定する(ステップS207)。ステップS207の判定において、フォーカスレンズが合焦位置に達した場合に、本体制御部203はステップS212の処理を行う。一方、ステップS207の判定において、フォーカスレンズが合焦位置に達していない場合に、本体制御部203はステップS213の処理を行う。
【0030】
また、ステップS201の判定において、交換レンズ100がウォブリング動作不可能な交換レンズである場合には、ステップS202〜ステップS207で示したウォブリング動作を利用したフォーカス制御が不可能である。この場合に、本体制御部203は、山登りAFのみを行う。このために、本体制御部203は、フォーカスレンズを微小量だけ移動させるスキャン動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS208)。そして、本体制御部203は、スキャン動作の結果から、合焦位置の方向を判定する(ステップS209)。その後、本体制御部203は、山登りAFのためのスキャン動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS210)。山登りAFの完了後、本体制御部203は、フォーカスレンズが合焦位置に達したか否か、即ちAF評価値がピークを超えたか否かを判定する(ステップS211)。ステップS211の判定において、フォーカスレンズが合焦位置に達した場合に、本体制御部203はステップS212の処理を行う。一方、ステップS211の判定において、フォーカスレンズが合焦位置に達していない場合に、本体制御部203はステップS213の処理を行う。
【0031】
ステップS207又はステップS211の判定において、フォーカスレンズが合焦位置に達した場合に、本体制御部203は、待機状態に遷移する(ステップS212)。また、ステップS207又はステップS211の判定において、フォーカスレンズが合焦位置に達しなかった場合に、本体制御部203は、合焦できなかった旨を示す表示を液晶表示部202に表示させる等の非合焦処理を行う(ステップS213)。その後、本体制御部203は、待機状態に遷移する。
【0032】
待機状態において、本体制御部203は、コントラストが変化したか否かを判定する(ステップS214)。即ち、本体制御部203は、待機前の状態でのAF評価値と現在のAF評価値とを比較しており、この2者の値の差が一定以上となった場合に、コントラストが変化したと判定する。ステップS214の判定において、コントラストが変化していない場合に、本体制御部203は、パン移動又はチルト移動が行われたか否かを判定する(ステップS215)。ステップS215において、パン移動又はチルト移動が行われていない場合に、本体制御部203は、待機状態を継続する。一方、ステップS214の判定において、コントラストが変化していた場合、又は、ステップS215の判定において、パン移動又はチルト移動が行われたと判断された場合には処理がステップS201に戻り、再度のフォーカス制御が行われる。
【0033】
ここで、コントラストが変化していなくても、カメラ本体200の向きが大きく変化した場合には合焦状態が悪化している可能性が高い。したがって、この場合には待機状態を終了させる必要がある。次に、カメラ本体200の向きが大きく変化した場合に行われる、パン・チルト検出時AF処理について図4を参照して説明する。図4の処理は、例えば、図3の処理中においてカメラ本体200のパン移動又はチルト移動が開始されたと判定された場合に、割り込み処理によって実行されるものである。なお、本実施形態では、下記の何れかの条件を満たした場合、パン移動又はチルト移動が開始されたと判定する。
abs(x)≧パン・チルト開始判定閾値Th/撮影レンズ101の焦点距離
abs(y)≧パン・チルト開始判定閾値Th/撮影レンズ101の焦点距離
(式1)
ここで、(式1)のabs(x)はジャイロセンサ205によって検出されたX軸方向の角速度の大きさであり、abs(y)はジャイロセンサ205によって検出されたY軸方向の角速度の大きさである。また、(式1)の焦点距離は、撮影レンズ101を構成する光学系全体としての焦点距離である。
【0034】
ここで、閾値Thを焦点距離で除算しているのは、焦点距離によって閾値を正規化するためである。パン・チルト開始判定閾値Thは、動画記録時のAF処理中であるか、動画記録時以外(例えば静止画記録時)のAF処理中であるかによって変更する。動画記録時のパン・チルト開始判定閾値Thは例えば3.0程度とする。これに対し、動画記録中でない場合は、液晶表示部202に表示される画像が見苦しくならない程度にレンズの駆動を行ってしまっても問題がない。このため、動画記録中でない場合は、パン・チルト開始判定閾値Thを3.0よりも小さい例えば1.0程度とする。これにより、動画記録中でない場合には、パン移動又はチルト移動が開始されたと判定されやすくして被写体に対する追従性を良くする。なお、現在が動画記録中であるか否かは例えばカメラ本体200の動作モードによって決定されるものとする。そして、カメラ本体200の動作モードは例えば使用者によって設定されるものである。
【0035】
なお、上記の例では動画記録中でない場合のパン・チルト開始判定閾値Thを1.0程度としているが、実際には動画記録中でなくともフォーカスレンズがスキャン動作中の場合には動画記録時と同様にTh=3.0程度としておくことが望ましい。
また、本実施形態における検出回路206においては、例えばジャイロセンサ205から出力される角速度信号に対して2次の微分(例えばハイパスフィルタ(HPF)処理)を行った後、その出力を積算し、再度のHPF処理を行っている。この場合、実際の検出回路206の出力は、図7に示すような加速度のような波形となる。
【0036】
上記の条件を満たした場合に、図4の処理が開始される。このとき、本体制御部203は、現在、フォーカスレンズがスキャン動作中であるか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301の判定において、フォーカスレンズがスキャン動作中の場合に、本体制御部203は、フォーカスレンズの駆動を一旦停止させるようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS302)。その後、本体制御部203は、ウォブリング可否判定処理の結果から、交換レンズ100が、ウォブリング動作可能な交換レンズであるか否かを判定する(ステップS303)。また、ステップS301の判定において、フォーカスレンズがスキャン動作中でない場合に、本体制御部203は、現在、フォーカスレンズがウォブリング動作中であるか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304の判定において、フォーカスレンズがウォブリング動作中でない場合に、本体制御部203は、ステップS306の処理を行う。
【0037】
ステップS303の判定において交換レンズ100がウォブリング動作可能な交換レンズである場合又はステップS304の判定においてフォーカスレンズがウォブリング動作中である場合に、本体制御部203は、図3で示した通常時のAF処理のときよりも振動の振幅を拡大してウォブリング動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS306)。これは、パン移動やチルト移動中ではもともとのブレ量が大きいので、ウォブリング動作時の振幅を増やしてもフォーカスレンズの微小振動による画像の変動(レンズ位置の振動や、画角の振動による)の影響が小さいためである。なお、振幅の増加量は例えば通常時の振幅の1.5倍程度とする。ただし、パン移動やチルト移動の量が大きい場合等では、振幅の増加量を1.5倍よりも大きくしても良い。
【0038】
ステップS306においてウォブリング動作を開始した後、本体制御部203は、パン移動及びチルト移動が終了されたか否かを判定する(ステップS307)。ここでは下記の何れかの条件を満たした場合、パン移動又はチルト移動が終了されたと判定する。
abs(DetAxis)<0.3×パン・チルト開始判定閾値Th/撮影レンズ101の焦点距離
abs(DetAxis)の符号が、パン移動又はチルト移動の開始時の符号と逆転した場合
(式2)
ここで、(式2)のabs(DetAxis)は、パン移動又はチルト移動が開始されたとの判定がなされた軸方向のジャイロセンサで検出された角速度である。
【0039】
ステップS307の判定において、パン移動又はチルト移動が終了した場合に、本体制御部203は、振動の振幅を図3で示した通常時のAF処理のときの振幅に戻してウォブリング動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS308)。これは、パン移動又はチルト移動が終了した後は、ウォブリング動作時の振幅を減らさないと、フォーカスレンズの振動による影響が画像上で見えてしまうためである。
【0040】
ここで、ステップS306又はステップS308のウォブリング動作によってフォーカスレンズが合焦に至った場合には図3のステップS212の待機状態となる。また、ステップS308のウォブリング動作時において、現在のフォーカスレンズの位置に対して合焦位置が大きくずれている等の理由でスキャン動作を行う必要が生じた場合には、図3のステップS205〜S207で示したのと同様のスキャン動作を行うことが望ましい。
【0041】
また、ステップS303の判定において交換レンズ100がウォブリング動作不可能な交換レンズである場合に、本体制御部203は、待機状態に遷移する(ステップS309)。これは、パン移動又はチルト移動中にスキャン動作を行ってしまうと、被写体変化によるコントラストの変化等により、AF評価値のピークを誤検出してしまう可能性があるためである。待機状態において、本体制御部203は、パン移動及びチルト移動が終了されたか否かを判定する(ステップS310)。ステップS310の判定において、パン移動及びチルト移動が終了されていない場合に、本体制御部203は待機状態を継続する。一方、ステップS310の判定において、パン移動及びチルト移動が終了された場合に、本体制御部203は、山登りAFのためのスキャン動作を行うようにレンズ制御部103に指示を送る(ステップS311)。ステップS311の山登りAFによってフォーカスレンズが合焦に至った場合には図3のステップS212の待機状態となる。
【0042】
以上の図3及び図4を参照して説明したAF処理を、図5、図6の状態遷移図にまとめて示す。ここで、図5は交換レンズ100がウォブリング動作可能な交換レンズの場合の状態遷移図であり、図6は交換レンズ100がウォブリング動作不可能な交換レンズの場合の状態遷移図である。
【0043】
ウォブリング動作可能な交換レンズの場合のAF処理においては、図5に示すように、撮像装置の状態がウォブリング動作状態、スキャン動作状態、待機状態の3種類の何れかに遷移する。まず、フォーカスレンズが合焦しているとき等においては撮像装置の状態が待機状態となっている。この待機状態においてAF評価値(コントラスト)の変化が検出された場合や、パン移動又はチルト移動の開始が検出された場合には、撮像装置の状態がウォブリング動作状態に遷移してウォブリング動作が実行される(図3のステップS202、図4のステップS306)。ウォブリング動作状態においてウォブリング動作のみでは被写体が追従しきれないほど合焦位置がずれている場合には撮像装置の状態がスキャン動作状態に遷移する(図3のステップS205)。また、スキャン動作中においてAF評価値がピーク付近になった場合、ピークの検出後の合わせ込みを行う場合、パン移動又はチルト移動の開始が検出された場合には撮像装置の状態がウォブリング動作状態に遷移する(図3のステップS206、図4のステップS306)。ウォブリング動作状態においてAF評価値がピークとなった時点で撮像装置の状態が待機状態に遷移する(図3のステップS212)。
【0044】
また、ウォブリング動作不可能な交換レンズの場合のAF処理においては、図6に示すように、撮像装置の状態が、スキャン動作状態、待機状態の2種類の何れかに遷移する。まず、フォーカスレンズが合焦しているとき等においては待機状態となっている。この待機状態においてAF評価値(コントラスト)の変化が検出された場合や、パン移動又はチルト移動の終了が検出された場合には、撮像装置の状態がスキャン動作状態に遷移する(図3のステップS208、図4のステップS311)。また、スキャン動作中においてAF評価値がピークとなった場合や、パン移動又はチルト移動の開始が検出された場合には撮像装置の状態が待機状態に遷移する(図3のステップS212、図4のステップS309)。パン移動又はチルト移動の開始によって待機状態に遷移した場合には、パン移動又はチルト移動中は待機状態が継続する。
【0045】
次に、パン移動及びチルト移動の開始判定の抑制について説明する。図7は、本実施形態の検出回路206の出力波形の一例を示す図である。上述したように、検出回路206の出力は加速度のような波形となっている。この場合、図7に示すように、パン移動又はチルト移動を停止させたにも関わらず、ジャイロセンサ205の出力値が大きく逆方向に振れてしまう時間帯(図7に示す抑制期間)が発生する。したがって、下記の条件を満たす時間帯は、パン移動及びチルト移動の検出を実行しないこととする。ただし、抑制時間帯において検出を抑制するのは、パン移動又はチルト移動が開始されたとの判定がなされた軸方向のみとする。
パン移動及びチルト移動の終了判定がなされた後の経過時間が一定時間以下で且つabs(DetAxis)の符号が開始時の符号と逆転したまま元に戻らない間
また、抑制期間中でも、下記の条件を満たす場合には、パン移動又はチルト移動が開始されたと判定する。
abs(DetAxis,現在)≧max{abs(DetAxis,パン移動又はチルト移動の開始後から終了までの間)}
ここで、abs(DetAxis,現在)は、現在のジャイロセンサ出力であり、max{abs(DetAxis,パン移動又はチルト移動の開始後から終了までの間)}は、パン移動又はチルト移動の開始の判定後から終了の判定がなされるまでの間のVD期間中のジャイロセンサ出力の絶対値の最大値である。また、VD期間とは図7の横軸で示す同期信号の出力期間である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、交換レンズ100内のフォーカスレンズがウォブリング動作可能か否かを判定し、ウォブリング動作可能な交換レンズ100が装着されている場合とウォブリング動作不可能な交換レンズが装着されている場合とで、パン移動又はチルト移動の検出後のフォーカス制御を異ならせるようにしている。具体的には、カメラ本体200のパン移動又はチルト移動が検出された場合であって且つウォブリング動作可能な交換レンズ100が装着されている場合には、ウォブリング動作を利用したフォーカス制御を行うようにしている。また、カメラ本体200のパン移動又はチルト移動が検出された場合であってもウォブリング動作不可能な交換レンズ100が装着されている場合には、カメラ本体200のパン移動及びチルト移動の終了が検出されるまでフォーカス制御を待機するようにしている。このため、ウォブリング動作可能な交換レンズ100の装着時にはパン移動又はチルト移動中であっても高精度のフォーカス制御を行うことができる。また、ウォブリング動作不可能な交換レンズ100の装着時にはパン移動又はチルト移動中のAF評価値のピークの誤検出が抑制される。
【0047】
また、ウォブリング動作の実行中に再度のパン移動又はチルト移動の開始が検出された場合であっても、フォーカスレンズが停止されないので高速のフォーカス制御を行うことが可能となる。
ここで、上述の実施形態においては、角速度センサを例に示したが、加速度センサでも問題ない。また、角速度センサを手振れ補正用の角速度センサと兼用するようにしても良い。ただし、この場合には、手振れ補正が無効となっている場合であっても、AF処理時において、角速度センサに電源及び制御信号の供給を行う必要がある。
また、角速度センサ又は加速度センサを交換レンズ100内に搭載しても良い。この場合、レンズ制御部103によって、マウント接点204を介して、検出回路の出力を本体制御部203に入力すれば良い。
【0048】
本発明は、特定の実施形態について説明されてきたが、当業者にとっては他の多くの変形例、修正、他の利用が明らかである。それゆえ、本発明は、ここでの特定の開示に限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得る。
ここで、本発明の要旨をまとめると以下のようなものを含む。
(1) 前記制御部は、前記パン・チルト検出部によりパン移動又はチルト移動の開始が検出された場合のウォブリング動作時の振幅を、前記パン・チルト検出部によりパン移動又はチルト移動の開始が検出されていない場合のウォブリング動作時の振幅よりも拡大させることを特徴とする請求項2に記載のフォーカス制御装置。
【0049】
(2)前記制御部は、前記フォーカスレンズの移動中にパン移動又はチルト移動の開始が検出された場合で且つ前記交換レンズがウォブリング動作不可能な交換レンズである場合は、前記パン・チルト検出部によって前記パン移動又はチルト移動の終了が検出された後に前記フォーカスレンズを移動させるオートフォーカス制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【0050】
(3) 前記パン・チルト検出部は、角速度を微分処理して得られる出力をabsとしたときに、abs≧閾値/前記光学系の焦点距離の場合に、パン移動又はチルト移動が開始されたことを検出し、
動画記録中の場合は前記閾値が第1の閾値であり、動画記録中でない場合は前記閾値が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値であることを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【0051】
(4) 前記パン・チルト検出部は、手振れ補正用の角速度センサであり、
前記手振れ補正が無効に設定されている場合であっても、前記フォーカス制御時においては電源及び制御信号の供給が行われることを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【符号の説明】
【0052】
100…交換レンズ、101…撮影レンズ、102…フォーカスレンズ駆動部、103…レンズ制御部、104…記憶部、200…カメラ本体、201…撮像素子、202…液晶表示部、203…本体制御部、204…マウント接点、205…ジャイロセンサ、206…検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に移動可能なフォーカスレンズを含み被写体の光学画像を生成する光学系を有する交換レンズと、前記交換レンズを装着可能で且つ前記光学系によって生成された光学画像を撮像して画像を取得する撮像素子を有するカメラ本体とを備える撮像装置のためのフォーカス制御装置であって、
前記カメラ本体のパン移動及びチルト移動をそれぞれ検出するパン・チルト検出部と、
前記交換レンズがウォブリング動作可能であるか否かを判定するウォブリング可否判定部と、
前記撮像素子で得られた画像に基づき、前記被写体に追従するように前記フォーカスレンズを移動させるオートフォーカス動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記フォーカスレンズの移動中に前記カメラ本体のパン移動又はチルト移動の開始が検出された場合のオートフォーカス動作を、前記ウォブリング可否判定部の判定結果に基づいて異ならせるように制御することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記フォーカスレンズの移動中に前記カメラ本体のパン移動又はチルト移動の開始が検出されて且つ前記交換レンズがウォブリング動作可能であると判定された場合には、前記フォーカスレンズのウォブリング動作を開始させることを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ウォブリング動作の開始後は、前記カメラ本体のパン移動又はチルト移動の開始が再び検出されても、前記ウォブリング動作を継続することを特徴とする請求項2に記載のフォーカス制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−180262(P2011−180262A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42573(P2010−42573)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】