フォークリフトのエンジン制御装置
【課題】アクセルが大きく操作されたとしてもそのアクセル操作に応じてエンジン回転数を高くする必要のない運転状態であると判定された場合には、エンジン回転数を制限することで、燃料消費量の増大や騒音増大を抑制する。
【解決手段】1)車体が停止状態であって作業機が作動していない状態2)車体が停止状態であって作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態3)車体が停止状態であって作業機がチルト方向のみに単独作動している状態、のいずれかの運転状態である時に、エンジン回転数をエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段は、エンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダルの踏込み操作量に対応するエンジン回転数を得るための制御指令を生成、出力する。
【解決手段】1)車体が停止状態であって作業機が作動していない状態2)車体が停止状態であって作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態3)車体が停止状態であって作業機がチルト方向のみに単独作動している状態、のいずれかの運転状態である時に、エンジン回転数をエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段は、エンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダルの踏込み操作量に対応するエンジン回転数を得るための制御指令を生成、出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトには、走行装置と作業機が備えられている。走行装置は、エンジンによって駆動される。作業機は、エンジンを駆動源として作業機油圧ポンプから吐出される圧油が制御弁を介して作業機油圧アクチュエータに供給されることによって作動する。
【0003】
ここで制御弁は、リフト制御弁、チルト制御弁、アタッチメント制御弁からなる。作業機油圧アクチュエータは、リフトシリンダ、チルトシリンダ、アタッチメントシリンダからなる。
【0004】
フォークリフトには、操作に応じて作業機を作動させる作業機操作手段が備えられている。作業機操作手段をリフト上昇方向に操作することによって作業機のリフトシリンダは、リフト上昇方向に作動し、作業機操作手段をチルト操作方向に操作することによって作業機は、チルト方向に作動する。
【0005】
フォークリフトには、エンジン制御手段が備えられている。エンジン制御手段は、ハイアイドル回転数を上限値として、アクセルペダルの操作に応じたエンジン回転数になるようにエンジンを制御する。
【0006】
作業機油圧ポンプから作業機油圧アクチュエータに供給される最大供給流量は、リフトシリンダを最大速度でリフト上昇方向に作動させるのに必要な流量に設定されている。
【0007】
これに対して、チルトシリンダのみをチルト方向に単独作動させる場合には、作業機油圧ポンプから最大供給流量を吐出させる必要はなく、作業機油圧ポンプの最大供給能力の約50%で足りる。すなわち、リフトシリンダをリフト上昇方向に最大速度に作動させるときの約半分の流量で、チルトシリンダをチルト方向に最大速度で作動させることができる。
【0008】
ここで、作業機油圧ポンプには、固定容量型油圧ポンプまたは可変容量型油圧ポンプが使用される。
【0009】
固定容量型油圧ポンプを作業機油圧ポンプとして使用する場合には、制御弁の開口面積によって作業機油圧アクチュエータに供給される流量が定まる。よって、チルト制御弁の開口面積を、リフト制御弁の開口面積よりも小さく設定して、チルトシリンダに必要な流量が供給されるようにしている。
【0010】
一方、可変容量型油圧ポンプを作業機油圧ポンプとして使用する場合には、通常、制御弁の前後差圧が一定値となるように、作業機油圧ポンプの容量が制御される(差圧一定制御)。この差圧一定制御により、作業機の負荷によらずに、制御弁の開口面積に応じた流量の作動油を作業機油圧アクチュエータに供給するようにしている。したがって、チルトシリンダをチルト方向に作動させる場合には、前後一定制御が行なわれることで作業機油圧ポンプの容量が小さくなりチルトシリンダに必要な流量が供給される。
【0011】
本発明に関連する特許文献として下記特許文献1がある。
【0012】
下記特許文献1には、インチングペダルが踏み込まれたときの最高速度を制限することを解決課題として、エンジンを駆動源とするフォークリフトにおいて、インチングペダルが踏み込まれた場合にエンジンの最高回転数を許容最高回転数よりも低い回転数に制限するという発明が記載されている。また、同特許文献1には、フォークリフトが走行中に荷崩れを起すのを防止することを解決課題として、エンジンを駆動源とするフォークリフトにおいて、リフトシリンダ圧が無負荷の場合にエンジンの最高回転数を許容最高回転数よりも低い回転数に制限するという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−71095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、オペレータは、作業機操作手段がチルト操作方向のみに単独操作されているとき(チルト単独操作時)であっても、アクセルペダルを最大に踏込み操作することがある。このような運転状態のときには、つぎのような問題が発生する。
【0015】
・作業機油圧ポンプが固定容量型油圧ポンプの場合
作業機油圧ポンプからチルト制御弁に供給される油量のうち約50%が余剰流量として、タンクに戻る。しかし、このときチルト制御弁でチルトシリンダに供給されない作動油が無駄に昇圧されるため、油温上昇、エンジン馬力のロス、燃料消費量の増大を招く。
【0016】
・作業機油圧ポンプが可変容量型油圧ポンプの場合
差圧一定制御により作業機油圧ポンプから吐出される流量が必要量に制御されるが、エンジントルク線図上で、ポンプ容量が小さくエンジン回転数が最大域となる点でマッチングしており、騒音増大、燃料消費量の増大を招く。すなわち、図1は、エンジン回転数Nの軸とトルクTの軸を持つエンジンのトルク線図を示している。
【0017】
Lは、エンジンの最大トルク線を示し、F1、F2…Fi…は等燃費線を示している。等燃費線F1、F2…Fi…は、エンジン回転数N、エンジントルクTに応じて、エンジン13の燃料消費量が等しくなるトルク線図上の特性のことであり、時間当たりの燃料消費量を示す。燃料消費量は、F1<F2<…<Fi…の順で大きくなる。
【0018】
チルト単独操作時に、アクセルペダルを最大に踏み込むと、作業機油圧ポンプの吸収トルクと作業機負荷は、ポンプ容量が小さくエンジン回転数が最大域(ハイアイドル回転数NH)となる点P2でマッチングする。このマッチング点P2は、等燃費線からみて燃料消費量が大きい点であり、エンジン回転数Nが最大域(ハイアイドル回転数NH)であることから騒音が大きくなる。
【0019】
チルト単独操作時の場合について説明したが、チルト単独操作時以外にも、アクセルペダルを大きく踏み込むことで燃料消費量の増大や騒音増大を招く運転状態がある。
【0020】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、アクセルが大きく操作されたとしてもそのアクセル操作に応じてエンジン回転数を高くする必要のない運転状態であると判定された場合には、エンジン回転数を制限することで、燃料消費量の増大や騒音増大を抑制することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1発明は、
エンジンによって駆動される走行装置と前記エンジンを駆動源として作業機油圧ポンプから吐出される圧油が供給されることによって作動する作業機を備えたフォークリフトであって、操作に応じて前記作業機を作動させる作業機操作手段を備え、当該作業機操作手段をリフト上昇方向に操作することによって前記作業機をリフト上昇方向に作動させるとともに、前記作業機操作手段をチルト操作方向に操作することによって前記作業機をチルト方向に作動させ、ハイアイドル回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御するエンジン制御手段を備えたフォークリフトのエンジン制御装置において、
車体が停止していることを検出することを検出する車体停止検出手段と、
前記作業機操作手段の操作状態を検出する作業機操作状態検出手段と、
前記車体停止検出手段の検出結果と、前記作業機操作状態検出手段の検出結果とに基づいて、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることを判定する判定手段と、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合に、前記エンジン回転数の上限値を前記ハイアイドル回転数よりも低い回転数に設定するエンジン回転数上限値設定手段と
を備え、
前記エンジン制御手段は、前記エンジン回転数上限値設定手段によって設定されたエンジン回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御すること
を特徴とする。
【0022】
第2発明は、第1発明において、
前記エンジン回転数上限値設定手段は、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合には、
前記作業機への供給油量が前記作業機のチルト動作に必要な油量となるエンジン回転数に、エンジン回転数の上限値を定めること
を特徴とする。
【0023】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
前記作業機油圧ポンプは、可変容量型の油圧ポンプであり、
前記作業機油圧ポンプからチルト制御弁を介して前記作業機に圧油が供給されることにより、前記作業機がチルト動作するものであり、
前記チルト制御弁の前後差圧が一定値となるように、前記作業機油圧ポンプの容量が制御されること
を特徴とする。
【0024】
第4発明は、第1発明または第2発明または第3発明において、
前記車体停止検出手段は、操作に応じて車体の走行方向を指示する走行方向指示手段が中立位置に位置されていることをもって、車体が停止していることを検出する手段であること
を特徴とする。
【0025】
第5発明は、第1発明または第2発明または第3発明または第4発明において、
前記作業機操作手段は、
前記作業機をリフト上昇方向に作動させるリフト操作手段と、前記作業機をチルト方向に作動させるチルト操作手段と、前記作業機をアタッチメントに応じた方向に作動させるアタッチメント操作手段とからなり、
前記作業機操作状態検出手段は、
前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことを検出するとともに、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことを検出するものであり、
前記判定手段は、
前記車体検出手段によって車体停止状態であることが検出され、前記作業機操作状態検出手段によって、前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことが検出され、かつ、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことが検出された場合に、
前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であると判定すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、
a)車体が停止状態であって作業機が作動していない状態、または、
b)車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態、または
c)車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態
というアクセル操作に応じてエンジン回転数を高くする必要のない運転状態でないと判定された場合には、エンジン回転数の上限値がハイアイドル回転数よりも低い回転数に設定されて、その設定されたエンジン回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるようにエンジンが制御される。これにより燃料消費量の増大や騒音増大が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、従来の技術を説明するための図であり、エンジンのトルク線図である。
【図2】図2は、フォークリフトの車体の側面図であり、フォークリフトの作業機の構造を説明するために示した図である。
【図3】図3は、実施例のフォークリフトの動力伝達系の構成を示す図である。
【図4】図4は、フォークリフトの制御系の構成を示す図である。
【図5】図5(a)は、リフト上昇スイッチから出力される検出信号を示す図で、図5(b)は、チルト前後傾スイッチから出力される検出信号を示す図で、図5(c)は、第1、第2および第3アタッチメントスイッチから出力される検出信号を示す図である。
【図6】図6は、アクセルペダルの踏込み操作量と、エンジン回転数の関係を示す図である。
【図7】図7は、実施例のエンジントルク線図である。
【図8】図8は、リフト操作手段の操作量と、作業機油圧ポンプから吐出されてリフト制御弁を介してリフトシリンダに供給される作動油の流量との関係およびチルト操作手段の操作量と、作業機油圧ポンプから吐出されてチルト制御弁を介してチルトシリンダに供給される作動油の流量との関係を示す図である。
【図9】図9は、第1の制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2の制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明に係るフォークリフトのエンジン制御装置の実施の形態について説明する。
【0029】
図2は、フォークリフト1の車体3の側面図である。図2は、フォークリフト1の作業機2の構造を示している。
【0030】
図2に示すように、フォークリフト1の車体3の前方には、作業機2としてのマスト4およびフォーク5が設けられている。マスト4は、車体3に左右一対のチルトシリンダ8を介して支持されている。
【0031】
運転席には、作業機操作手段6と、走行方向指示手段13と、アクセルペダル25と、ブレーキペダル(インチングペダル)26が設けられている。作業機操作手段6、走行方向指示手段13は、たとえば操作レバーで構成される。
【0032】
走行方向指示手段13は、操作に応じて車体3の走行方向、つまり前進方向Fまたは後進方向Rを指示する。
【0033】
作業機操作手段6の操作に応じて作業機2が駆動されマスト4がチルトされたり、フォーク5がリフトされたりして、フォーク5に載せられた荷物の位置、姿勢を所望の位置、姿勢に変化させることができる。
【0034】
図3は、実施例のフォークリフト1の動力伝達系の構成を示す。
【0035】
フォークリフト1には、走行装置7と作業機2が備えられている。走行装置7は、エンジン8によって駆動される。作業機2は、エンジン8を駆動源として作業機油圧ポンプ9から吐出される圧油が制御弁10を介して作業機油圧アクチュエータ11に供給されることによって作動する。
【0036】
ここで制御弁10は、リフト制御弁10A、チルト制御弁10B、第1アタッチメント制御弁10C、第2アタッチメント制御弁10D、第3アタッチメント制御弁10Eからなる。作業機油圧アクチュエータ11は、リフトシリンダ11A、チルトシリンダ11B、第1アタッチメントシリンダ11C、第2アタッチメントシリンダ11D、第3アタッチメントシリンダ11Eからなる。
【0037】
アタッチメントは、たとえばロールクランプ、ベールクランプ、ガイドシフト、フォークムーバ、回転フォークなどである。アタッチメントシリンダ11C、11D、11Eを作動させることにより、リフト動作、チルト動作以外に、フォーク5の左右移動、クランプ、回転クランプなどの動作を行わせることができる。
【0038】
フォークリフト1には、操作に応じて作業機2を作動させる作業機操作手段6が備えられている。作業機操作手段6は、リフトシリンダ11Aをリフト上昇方向に作動させるリフト操作手段6Aと、チルトシリンダ11Bをチルト前傾方向またはチルト後傾方向に作動させるチルト操作手段6Bと、第1アタッチメントシリンダ11C、第2アタッチメントシリンダ11D、第3アタッチメントシリンダ11Eをそれぞれアタッチメントに応じたA方向またはB方向に作動させる第1アタッチメント操作手段6C、第2アタッチメント操作手段6D、第3アタッチメント操作手段6Eとからなる。
【0039】
エンジン8の駆動力は、PTO軸14を介して作業機油圧ポンプ9およびHST油圧ポンプ16に伝達される。HST油圧ポンプ16から駆動輪24までの動力伝達系は、走行装置7を構成する。
【0040】
静流体駆動式トランスミッション(HST;Hydro-Static Transmission)17は、HST油圧ポンプ16と、HST油圧モータ18と、HST油圧ポンプ16の各ポート16a、16bと、HST油圧モータ18の各流入出口18a、18bとを連通する油路19とからなる。HST油圧ポンプ16の吐出側のポートを切り換えることにより、車体3は前進または後進する。たとえばHST油圧ポンプ16の一方のポート16aから圧油を吐出させると、車体3は前進し、HST油圧ポンプ16の他方のポート16bから圧油を吐出させると、車体3は後進する。また、HST油圧ポンプ16の斜板16cと、HST油圧モータ18の斜板18cの各傾転角を調整して各容量を変化させることにより、変速が行われる。
【0041】
HST油圧モータ18の駆動力は、デファレンシャルギア20を介してアクスル21に伝達される。アクスル21には、ブレーキ装置22とファイナルギア23が設けられている。ファイナルギア23の出力軸は、駆動輪24に連結されている。このためエンジン8が稼動しており、アクセルペダル25が踏込まれ、走行方向指示手段13が前進方向F若しくは後進方向Rに操作された場合には、駆動輪24が回転駆動して前進走行または後進走行する。
【0042】
リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されると、作業機油圧ポンプ9の吐出口9aから吐出された圧油がリフト制御弁10Aを介してリフトシリンダ11Aに供給される。これによりリフトシリンダ11Aが作動してフォーク5が上昇する。また、リフト操作手段6Aがリフト下降方向に操作されると、リフトシリンダ11A内の圧油がタンク43に解放される。これにより自重によってフォーク5が下降する。また、リフト操作手段6Aが中立位置に位置されると、リフト制御弁10Aの開口が閉じられ、リフトシリンダ11Aへの圧油の供給、排出が止まる。これによりフォーク5の高さが維持される。
【0043】
チルト操作手段6Bがチルト前傾方向またはチルト後傾方向に操作されると、作業機油圧ポンプ9の吐出口9aから吐出された圧油がチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される。これによりチルトシリンダ11Bがチルト前傾方向またはチルト後傾方向に作動して、マスト4がチルト前傾方向またはチルト後傾方向に動作する。
【0044】
第1アタッチメント操作手段6Cが操作方向AまたはBに操作されると、作業機油圧ポンプ9の吐出口9aから吐出された圧油が第1アタッチメント制御弁10Cを介して第1アタッチメントシリンダ11Cに供給される。これにより第1アタッチメントシリンダ11CがA方向またはB方向に作動して、アタッチメントがそのアタッチメントに応じた方向に動作する。同様にして、第2アタッチメント操作手段6Dが操作方向AまたはBに操作されると、第2アタッチメント制御弁10Dを介して第2アタッチメントシリンダ11DがA方向またはB方向に作動し、第3アタッチメント操作手段6Eが操作方向AまたはBに操作されると、第3アタッチメント制御弁10Eを介して第3アタッチメントシリンダ11EがA方向またはB方向に作動する。
【0045】
走行方向指示手段13が操作されて前進方向Fが指示されると、HST油圧ポンプ16のポート16aから圧油が吐出され、車体3は前進する。また、走行方向指示手段13が操作されて後進方向Rが指示されると、HST油圧ポンプ16のポート16bから圧油が吐出され、車体3は後進する。
【0046】
ブレーキペダル(インチングペダル)26が踏込み操作されると、その踏込み操作量に応じて、HST油圧ポンプ16の斜板16cが調整されてHST油圧ポンプ16の吸収トルクが低下するとともに、ブレーキ装置22で発生するブレーキ力が大きくなる。したがって、ブレーキペダル(インチングペダル)26の踏込み操作量が大きくなるほど、エンジン8から駆動輪24に伝達される駆動力が小さくなるとともに、ブレーキ装置22で発生するブレーキ力が大きくなり、車体3を停止状態にすることができる。
【0047】
作業機油圧ポンプ9は、可変容量型の油圧ポンプである。本実施例では、差圧一定制御が行われる。チルト制御弁10Bを例にとり説明すると、チルト制御弁10Bの前後差圧が一定値となるように、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量が制御される。
【0048】
図4は、フォークリフト1の制御系の構成を示す。
【0049】
走行方向指示手段13には、走行方向指示手段13が前進方向Fまたは後進方向Rを指示されていること、あるいは中立位置Nに位置されていることを検出するFRスイッチ27が設けられている。FRスイッチ27の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0050】
リフト操作手段6Aには、リフト上昇方向に操作されたことをオン信号として出力するリフト上昇スイッチ28が設けられている。図5(a)は、リフト上昇スイッチ28から出力される検出信号を示す。リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていないとき、つまりリフト操作手段6Aが中立位置またはリフト下降方向に操作されているときには、オフとなる。リフト上昇スイッチ28の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0051】
チルト操作手段6Bには、チルト前傾方向またはチルト後傾方向に操作されたことをオン信号として出力するチルト前後傾スイッチ29が設けられている。図5(b)は、チルト前後傾スイッチ29から出力される検出信号を示す。チルト前後傾スイッチ29の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0052】
第1アタッチメント操作手段6Cには、A方向またはB方向に操作されたことをオン信号として出力する第1アタッチメントスイッチ31が設けられている。第1アタッチメントスイッチ31の検出信号は、コントローラ30に入力される。同様に第2アタッチメント操作手段6Dには、第2アタッチメントスイッチ32が設けられており、第2アタッチメントスイッチ32の検出信号は、コントローラ30に入力され、第3アタッチメント操作手段6Eには、第3アタッチメントスイッチ33が設けられており、第3アタッチメントスイッチ32の検出信号は、コントローラ30に入力される。図5(c)は、第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32および33から出力される検出信号を示す。第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6EがA方向、B方向に操作されていないとき、つまり第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが中立位置に操作されているときには、オフとなる。
【0053】
アクセルペダル25には、踏込み操作量を検出するアクセル検出手段34が設けられている。アクセル検出手段34は、たとえばポテンショメータで構成される。アクセル検出手段34の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0054】
ブレーキペダル(インチングペダル)26には、踏込み操作量を検出するブレーキ検出手段35が設けられている。ブレーキ検出手段35は、たとえばポテンショメータで構成される。ブレーキ検出手段35の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0055】
コントローラ30には、車体停止検出手段36と、作業機操作状態検出手段37と、判定手段38と、エンジン回転数上限値設定手段39と、エンジン制御手段40が設けられている。
【0056】
車体停止検出手段36は、車体3が停止していることを検出する。車体停止検出手段36は、FRスイッチ27の検出信号に基づき走行方向指示手段13が中立位置Nに位置されていることを検出する。
【0057】
作業機操作状態検出手段37は、作業機操作手段6の操作状態を検出する。作業機操作状態検出手段37は、リフト上昇スイッチ28の検出信号と第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32および33の検出信号とに基づき、リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていないことを検出するとともに、第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていないことを検出する。
【0058】
判定手段38は、車体停止検出手段36の検出結果と、作業機操作状態検出手段37の検出結果とに基づいて、車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態であるか、または、車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独単独作動している状態であるか、または、車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態であることを判定する。
【0059】
すなわち、判定手段38は、下記の条件a)、b)、c)のすべてが満足されていることを条件に、下記1)、2)、3)のいずれかの運転状態であることを判定する。
【0060】
a)走行方向指示手段13が中立位置N
b)リフト上昇スイッチ28がオフ(リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていない)
c)第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32、33がオフ(第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていない)
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
エンジン回転数上限値設定手段39では、判定手段38によって、上記1)、2)、3)の運転状態であることが判定された場合に、エンジン回転数Nの上限値をハイアイドル回転数NHよりも低い回転数であるエンジン回転数上限値NLIMに設定する。このエンジン回転数上限値NLIMは、作業機2への供給油量が作業機2のチルト動作に必要な油量QLとなるエンジン回転数に定められる。
【0061】
エンジン8の制御は、エンジン制御手段40とガバナ41と燃料噴射ポンプ42によって行なわれる。
【0062】
エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつハイアイドル回転数NHまたはエンジン回転数上限値設定手段39で設定されたエンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する(図7参照)。
【0063】
図6は、アクセルペダル25の踏込み操作量と、エンジン回転数Nとの関係を示す。
【0064】
エンジン制御手段40は、アクセルペダル25の踏込み操作量が大きくほど、エンジン回転数Nを大きくする制御指令を生成、出力する。エンジン回転数Nの最低回転数は、ローアイドル回転数NLとされる。エンジン回転数Nの最高回転数は、エンジン回転数上限値設定手段39でエンジン回転数上限値NLIMが設定されていない場合には、ハイアイドル回転数NHとされ、エンジン回転数上限値設定手段39でエンジン回転数上限値NLIMが設定された場合には、ハイアイドル回転数NHよりも低いエンジン回転数上限値NLIMに制限される。
【0065】
ガバナ41は、制御指令として与えられたエンジン回転数Nとなり、エンジン出力トルクTを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限する燃料噴射量指令を生成し、燃料噴射ポンプ42に出力する。燃料噴射ポンプ42は、燃料噴射量指令として与えられた燃料噴射量が得られるようにエンジン8に燃料を噴射する。
【0066】
ガバナ41は、オールスピード制御式ガバナであり、機械式の制御または電子制御が行なわれる。
【0067】
図7は、エンジントルク線図を示す。各エンジン回転数N毎に、つまり各アクセル開度毎に、レギュレーションラインLL…LLIM…Li…LHが定められており、アクセル開度(エンジン回転数Ni)が定まると、負荷の大きさに応じて、エンジン回転数Nが減少しながら、対応するレギュレーションラインLi上を、ポンプ吸収トルクと負荷とのマッチング点が移動する。
【0068】
(第1の制御)
つぎに、コントローラ30で行なわれる制御を図9のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
コントローラ30の判定手段38では、前述の条件、
a)走行方向指示手段13が中立位置N
b)リフト上昇スイッチ28がオフ(リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていない)
c)第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32、33がオフ(第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていない)
のすべてが満足されているか否かが判定される(ステップ101)。
【0070】
条件a)、b)、c)のうち少なくとも1つの条件が成立していない場合には(ステップ101の判断;「条件成立せず」)、エンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要はない運転状態であると判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつハイアイドル回転数NHを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。
【0071】
このため、たとえばオペレータがアクセルペダル25を最大開度まで踏込み操作しており、リフト操作手段6Aをリフト上昇方向にフルストローク操作している場合には、図7において、ハイアイドル回転数NHに対応するレギュレーションラインLH上の点P0(定格点)でマッチングすることになり、重量物のある荷物を最大速度でフォーク5によって上昇させることができる。
【0072】
このマッチング点P0は、差圧一定制御が行なわれた結果、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量qが容量q0に制御された点である。
【0073】
このとき作業機油圧ポンプ9から吐出されてリフト制御弁10Aを介してリフトシリンダ11Aに供給される作動油の流量QLは、
QL=q0×NH …(1)
で表される。図8において、LN1は、リフト操作手段6Aの操作量と、作業機油圧ポンプ9から吐出されてリフト制御弁10Aを介してリフトシリンダ11Aに供給される作動油の流量Qとの関係を示す。リフト操作手段6Aがフルストローク操作されている場合には、上記(1)式に示される流量QLが作業機油圧ポンプ9からリフトシリンダ11Aに供給されることになる(ステップ102)。
【0074】
これに対して、条件a)、b)、c)のすべてが成立している場合には(ステップ101の判断;「条件成立」)、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
のいずれかの運転状態であり、エンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつエンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。
【0075】
このため、たとえばオペレータがアクセルペダル25を最大開度まで踏込み操作しており、車体3が停止した状態で作業機操作手段6のうちチルト操作手段6Bのみがチルト前傾方向またはチルト後傾方向にフルストローク操作している場合には、図7において、エンジン回転数上限値NLIMに対応するレギュレーションラインLLIM上の点P1でマッチングすることになり、マスト4を最大速度で前傾または後傾させることができる。
【0076】
このマッチング点P1は、差圧一定制御が行なわれた結果、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量qが容量q1に制御された点である。
【0077】
このとき作業機油圧ポンプ9から吐出されてチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される作動油の流量QTは、
QT=q1×NLIM …(2)
で表される。図8において、LN2は、チルト操作手段6Bの操作量と、作業機油圧ポンプ9から吐出されてチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される流量Qとの関係を示す。チルト操作手段6Bがフルストローク操作されている場合には、上記(2)式に示される流量QTが作業機油圧ポンプ9からチルトシリンダ11Bに供給されることになる(ステップ103)。
【0078】
ここで、本実施例の制御が行われない従来の制御との作用効果上の相違点について説明する。
【0079】
すなわち、従来技術によれば、同じく、オペレータがアクセルペダル25を最大開度まで踏込み操作しており、車体3が停止した状態で作業機操作手段6のうちチルト操作手段6Bのみがチルト前傾方向またはチルト後傾方向にフルストローク操作している場合には、図7において、ハイアイドル回転数NHに対応するレギュレーションラインLH上の点P2でマッチングすることになる。
【0080】
このマッチング点P2は、差圧一定制御が行なわれた結果、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量qが容量q2に制御された点である。ここで容量q2は、(2)式の容量q1よりも小さい容量である。
【0081】
このとき作業機油圧ポンプ9から吐出されてチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される作動油の流量QTは、
QT=q2×NH …(3)
で表される。
【0082】
図8に示すように、作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に供給される最大供給流量は、リフトシリンダ11Aを最大速度でリフト上昇方向に作動させるのに必要な流量QLに設定されている。
【0083】
これに対して、チルトシリンダ11Bのみをチルト方向に作動させる場合には、作業機油圧ポンプ9から最大供給流量を吐出させる必要はなく、作業機油圧ポンプ9の最大供給能力の約50%で足りる。すなわち、リフトシリンダ11Aをリフト上昇方向に最大速度に作動させるときの流量QLの約半分の流量で、チルトシリンダ11Bはチルト方向に最大速度で作動することになる。よって、(3)式の容量q2は、(1)式の容量q0よりも小さい値となる。
【0084】
図7に、図1と同様にして等燃費線F1、F2…Fi…を示している。燃料消費量は、F1<F2<…<Fi…の順で大きくなる。
【0085】
従来の制御が行なわれた場合には、エンジントルク線図上で、ポンプ容量qがq2と小さく、かつエンジン回転数Nがハイアイドル回転数NHと高い点P2でマッチングする。このマッチング点P2は、等燃費線からみて燃料消費量が大きい点であり、エンジン回転数Nが最大域(ハイアイドル回転数NH)であることから騒音が大きくなる。図7において、LNは、マッチング点P2を通過するエンジン8の等馬力線を示している。
【0086】
これに対して本実施例の制御が行なわれた場合には、エンジントルク線図上で、ポンプ容量qがq1と大きく、かつエンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMと低い点P1でマッチングする。このマッチング点P1は、等燃費線からみて燃料消費量が小さい点であり、エンジン回転数Nがハイアイドル回転数NHよりも低回転であることから騒音が小さくなる。また、エンジン8の馬力が低くなり、ヒートバランスが改善される。
【0087】
以上、「車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態」について説明したが、「車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態」、「車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態」についても同様にして、エンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMに制限され、燃料消費の抑制と騒音の低減が図られる。
【0088】
ただし、このような運転状態は、「車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態」と異なり、作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のない状態であり、必要な流量を確保するためにエンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMまで大きく設定するには及ばない。
【0089】
そこで、「車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態」、「車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態」という作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のない状態であると判断された場合のエンジン回転数上限値を、「車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態」という作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のある状態のときのエンジン回転数上限値NLIMよりも低く設定する実施も可能である。以下、第2の制御について説明する。
【0090】
(第2の制御)
この第2の制御では、エンジン回転数上限値設定手段39は、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
であると判定された場合に、エンジン回転数Nの上限値をエンジン回転数上限値NLIMよりも低い回転数、たとえばローアイドル回転数NLに設定する。また、
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
であると判定された場合には、エンジン回転数Nの上限値をエンジン回転数上限値NLIMに設定する。
【0091】
第2の制御の処理手順を図10に示す。第2の制御では、図10に示すフローチャートにしたがいコントローラ30で処理が行われる。
【0092】
すなわち、コントローラ30の判定手段38では、図9のステップ101と同様に、条件、
a)走行方向指示手段13が中立位置N
b)リフト上昇スイッチ28がオフ(リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていない)
c)第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32、33がオフ(第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていない)
のすべてが満足されているか否かが判定される(ステップ201)。
【0093】
条件a)、b)、c)のうち少なくとも1つの条件が成立していない場合には(ステップ201の判断;「条件成立せず」)、エンジン回転数Nをハイアイドル回転数NHよりも低い回転数に制限する必要はない運転状態であると判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつハイアイドル回転数NHを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。このため図7に示すように、たとえばハイアイドル回転数NHに対応するレギュレーションラインLH上の点P0でマッチングさせ、重量物のある荷物を最大速度でフォーク5によって上昇させることができる(ステップ202)。
【0094】
これに対して、条件a)、b)、c)のすべてが成立している場合には(ステップ201の判断;「条件成立」)、更に条件、
d)チルト前後傾スイッチ29がオフ(チルト操作手段6Bがチルト前傾方向またはチルト後傾方向に操作されていない)
が満足されているか否かが判定される(ステップ203)。
【0095】
条件d)が成立していない場合には(ステップ203の判断;「条件成立せず」)、
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
であり、エンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつエンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。このため、図7において、たとえばエンジン回転数上限値NLIMに対応するレギュレーションラインLLIM上の点P1でマッチングすることになり、マスト4を最大速度で前傾または後傾させることができる(ステップ204)。
【0096】
一方、条件d)が成立している場合には(ステップ203の判断;「条件成立」)、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
のいずれかの運転状態であり、エンジン回転数Nをローアイドル回転数NLに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつアクセルペダル25の踏込み操作量いかんにかかわらずエンジン回転数Nをローアイドル回転数NLにするための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。このため図7に示すように、ローアイドル回転数NLに対応するレギュレーションラインLL上の点P3でマッチングさせることができる(ステップ205)。
【0097】
以上、第2の制御によれば、第1の制御と同様にして、燃料消費が抑制され、騒音が低減され、ヒートバランスが改善される。さらに、作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のない運転状態のときには、アクセル開度いかんにかかわらずエンジン回転数Nがローアイドル回転数NLに制限されるため、無用なエンジンの空吹かしを抑制することができ、燃料消費の抑制および騒音の低減が一層促進されることになる。
【0098】
なお、図4において、チルト前後傾スイッチ29を示しているが、第1の制御が実施される場合には、同チルト前後傾スイッチ29の配設を省略することができる。
【0099】
また、上述した実施例では、車体停止検出手段36は、FRスイッチ27の検出信号に基づき、車体3が停止していることを検出するようにしているが、ブレーキ検出手段35の検出信号に基づき、車体3が停止していることを検出してもよい。たとえば、ブレーキペダル(インチングペダル)26の踏込み操作量が所定のしきい値以上になった場合に、車体3が停止したことを検出する。
【0100】
また、上述した実施例では、作業機油圧ポンプ9が可変容量型の油圧ポンプである場合を想定し、差圧一定制御が行われるものとして説明した。
【0101】
しかし、作業機油圧ポンプ9が固定容量型の油圧ポンプであって、差圧一定制御が行なわれない場合にも、同様にして本発明を適用することができる。
【0102】
この場合の発明の効果について図8を用いて説明する。
【0103】
従来の制御の場合には、チルト単独操作が行われるとき、作業機油圧ポンプ9からチルト制御弁10Bに供給される油量QLのうち約50%、つまり必要流量QTとの差分QL−QTが余剰流量として、タンク43に戻ることになっていた。これによりチルト制御弁10Bでチルトシリンダ11Bに供給されない作動油が無駄に昇圧されるため、油温上昇、エンジン馬力のロス、燃料消費量の増大を招くことになっていた。
【0104】
これに対して本発明によれば、
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
の場合には、エンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMに制限されるため、作業機油圧ポンプ9からチルト制御弁10Bに供給される油量が、従来の制御のQLからより低い油量に、たとえば必要流量QT丁度に低減されることになる。この結果、油温低下、エンジン馬力のロス抑制、燃料消費量の抑制、騒音低減が図られることになる。
【0105】
また、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
の場合にも、同様にして、エンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMあるいはそれよりも低い回転数、たとえばローアイドル回転数NLに制限されるため、作業機油圧ポンプ8から無駄な作動油が吐出されることがなくなり、油温低下、エンジン馬力のロス抑制、燃料消費量の抑制、騒音低減が図られるとともに、エンジン8の空吹かしを抑制することができるようになる。
【符号の説明】
【0106】
1 フォークリフト、2 作業機、3 車体、6 作業機操作手段、6A リフト操作手段、6B チルト操作手段、6C、6D、6E アタッチメント操作手段、7 走行装置、8 エンジン、9 作業機油圧ポンプ、25 アクセルペダル、36 車体停止検出手段、37 作業機操作状態検出手段、38 判定手段、39 エンジン回転数上限値設定手段、40 エンジン制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトには、走行装置と作業機が備えられている。走行装置は、エンジンによって駆動される。作業機は、エンジンを駆動源として作業機油圧ポンプから吐出される圧油が制御弁を介して作業機油圧アクチュエータに供給されることによって作動する。
【0003】
ここで制御弁は、リフト制御弁、チルト制御弁、アタッチメント制御弁からなる。作業機油圧アクチュエータは、リフトシリンダ、チルトシリンダ、アタッチメントシリンダからなる。
【0004】
フォークリフトには、操作に応じて作業機を作動させる作業機操作手段が備えられている。作業機操作手段をリフト上昇方向に操作することによって作業機のリフトシリンダは、リフト上昇方向に作動し、作業機操作手段をチルト操作方向に操作することによって作業機は、チルト方向に作動する。
【0005】
フォークリフトには、エンジン制御手段が備えられている。エンジン制御手段は、ハイアイドル回転数を上限値として、アクセルペダルの操作に応じたエンジン回転数になるようにエンジンを制御する。
【0006】
作業機油圧ポンプから作業機油圧アクチュエータに供給される最大供給流量は、リフトシリンダを最大速度でリフト上昇方向に作動させるのに必要な流量に設定されている。
【0007】
これに対して、チルトシリンダのみをチルト方向に単独作動させる場合には、作業機油圧ポンプから最大供給流量を吐出させる必要はなく、作業機油圧ポンプの最大供給能力の約50%で足りる。すなわち、リフトシリンダをリフト上昇方向に最大速度に作動させるときの約半分の流量で、チルトシリンダをチルト方向に最大速度で作動させることができる。
【0008】
ここで、作業機油圧ポンプには、固定容量型油圧ポンプまたは可変容量型油圧ポンプが使用される。
【0009】
固定容量型油圧ポンプを作業機油圧ポンプとして使用する場合には、制御弁の開口面積によって作業機油圧アクチュエータに供給される流量が定まる。よって、チルト制御弁の開口面積を、リフト制御弁の開口面積よりも小さく設定して、チルトシリンダに必要な流量が供給されるようにしている。
【0010】
一方、可変容量型油圧ポンプを作業機油圧ポンプとして使用する場合には、通常、制御弁の前後差圧が一定値となるように、作業機油圧ポンプの容量が制御される(差圧一定制御)。この差圧一定制御により、作業機の負荷によらずに、制御弁の開口面積に応じた流量の作動油を作業機油圧アクチュエータに供給するようにしている。したがって、チルトシリンダをチルト方向に作動させる場合には、前後一定制御が行なわれることで作業機油圧ポンプの容量が小さくなりチルトシリンダに必要な流量が供給される。
【0011】
本発明に関連する特許文献として下記特許文献1がある。
【0012】
下記特許文献1には、インチングペダルが踏み込まれたときの最高速度を制限することを解決課題として、エンジンを駆動源とするフォークリフトにおいて、インチングペダルが踏み込まれた場合にエンジンの最高回転数を許容最高回転数よりも低い回転数に制限するという発明が記載されている。また、同特許文献1には、フォークリフトが走行中に荷崩れを起すのを防止することを解決課題として、エンジンを駆動源とするフォークリフトにおいて、リフトシリンダ圧が無負荷の場合にエンジンの最高回転数を許容最高回転数よりも低い回転数に制限するという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−71095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、オペレータは、作業機操作手段がチルト操作方向のみに単独操作されているとき(チルト単独操作時)であっても、アクセルペダルを最大に踏込み操作することがある。このような運転状態のときには、つぎのような問題が発生する。
【0015】
・作業機油圧ポンプが固定容量型油圧ポンプの場合
作業機油圧ポンプからチルト制御弁に供給される油量のうち約50%が余剰流量として、タンクに戻る。しかし、このときチルト制御弁でチルトシリンダに供給されない作動油が無駄に昇圧されるため、油温上昇、エンジン馬力のロス、燃料消費量の増大を招く。
【0016】
・作業機油圧ポンプが可変容量型油圧ポンプの場合
差圧一定制御により作業機油圧ポンプから吐出される流量が必要量に制御されるが、エンジントルク線図上で、ポンプ容量が小さくエンジン回転数が最大域となる点でマッチングしており、騒音増大、燃料消費量の増大を招く。すなわち、図1は、エンジン回転数Nの軸とトルクTの軸を持つエンジンのトルク線図を示している。
【0017】
Lは、エンジンの最大トルク線を示し、F1、F2…Fi…は等燃費線を示している。等燃費線F1、F2…Fi…は、エンジン回転数N、エンジントルクTに応じて、エンジン13の燃料消費量が等しくなるトルク線図上の特性のことであり、時間当たりの燃料消費量を示す。燃料消費量は、F1<F2<…<Fi…の順で大きくなる。
【0018】
チルト単独操作時に、アクセルペダルを最大に踏み込むと、作業機油圧ポンプの吸収トルクと作業機負荷は、ポンプ容量が小さくエンジン回転数が最大域(ハイアイドル回転数NH)となる点P2でマッチングする。このマッチング点P2は、等燃費線からみて燃料消費量が大きい点であり、エンジン回転数Nが最大域(ハイアイドル回転数NH)であることから騒音が大きくなる。
【0019】
チルト単独操作時の場合について説明したが、チルト単独操作時以外にも、アクセルペダルを大きく踏み込むことで燃料消費量の増大や騒音増大を招く運転状態がある。
【0020】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、アクセルが大きく操作されたとしてもそのアクセル操作に応じてエンジン回転数を高くする必要のない運転状態であると判定された場合には、エンジン回転数を制限することで、燃料消費量の増大や騒音増大を抑制することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1発明は、
エンジンによって駆動される走行装置と前記エンジンを駆動源として作業機油圧ポンプから吐出される圧油が供給されることによって作動する作業機を備えたフォークリフトであって、操作に応じて前記作業機を作動させる作業機操作手段を備え、当該作業機操作手段をリフト上昇方向に操作することによって前記作業機をリフト上昇方向に作動させるとともに、前記作業機操作手段をチルト操作方向に操作することによって前記作業機をチルト方向に作動させ、ハイアイドル回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御するエンジン制御手段を備えたフォークリフトのエンジン制御装置において、
車体が停止していることを検出することを検出する車体停止検出手段と、
前記作業機操作手段の操作状態を検出する作業機操作状態検出手段と、
前記車体停止検出手段の検出結果と、前記作業機操作状態検出手段の検出結果とに基づいて、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることを判定する判定手段と、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合に、前記エンジン回転数の上限値を前記ハイアイドル回転数よりも低い回転数に設定するエンジン回転数上限値設定手段と
を備え、
前記エンジン制御手段は、前記エンジン回転数上限値設定手段によって設定されたエンジン回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御すること
を特徴とする。
【0022】
第2発明は、第1発明において、
前記エンジン回転数上限値設定手段は、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合には、
前記作業機への供給油量が前記作業機のチルト動作に必要な油量となるエンジン回転数に、エンジン回転数の上限値を定めること
を特徴とする。
【0023】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
前記作業機油圧ポンプは、可変容量型の油圧ポンプであり、
前記作業機油圧ポンプからチルト制御弁を介して前記作業機に圧油が供給されることにより、前記作業機がチルト動作するものであり、
前記チルト制御弁の前後差圧が一定値となるように、前記作業機油圧ポンプの容量が制御されること
を特徴とする。
【0024】
第4発明は、第1発明または第2発明または第3発明において、
前記車体停止検出手段は、操作に応じて車体の走行方向を指示する走行方向指示手段が中立位置に位置されていることをもって、車体が停止していることを検出する手段であること
を特徴とする。
【0025】
第5発明は、第1発明または第2発明または第3発明または第4発明において、
前記作業機操作手段は、
前記作業機をリフト上昇方向に作動させるリフト操作手段と、前記作業機をチルト方向に作動させるチルト操作手段と、前記作業機をアタッチメントに応じた方向に作動させるアタッチメント操作手段とからなり、
前記作業機操作状態検出手段は、
前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことを検出するとともに、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことを検出するものであり、
前記判定手段は、
前記車体検出手段によって車体停止状態であることが検出され、前記作業機操作状態検出手段によって、前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことが検出され、かつ、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことが検出された場合に、
前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であると判定すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、
a)車体が停止状態であって作業機が作動していない状態、または、
b)車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態、または
c)車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態
というアクセル操作に応じてエンジン回転数を高くする必要のない運転状態でないと判定された場合には、エンジン回転数の上限値がハイアイドル回転数よりも低い回転数に設定されて、その設定されたエンジン回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるようにエンジンが制御される。これにより燃料消費量の増大や騒音増大が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、従来の技術を説明するための図であり、エンジンのトルク線図である。
【図2】図2は、フォークリフトの車体の側面図であり、フォークリフトの作業機の構造を説明するために示した図である。
【図3】図3は、実施例のフォークリフトの動力伝達系の構成を示す図である。
【図4】図4は、フォークリフトの制御系の構成を示す図である。
【図5】図5(a)は、リフト上昇スイッチから出力される検出信号を示す図で、図5(b)は、チルト前後傾スイッチから出力される検出信号を示す図で、図5(c)は、第1、第2および第3アタッチメントスイッチから出力される検出信号を示す図である。
【図6】図6は、アクセルペダルの踏込み操作量と、エンジン回転数の関係を示す図である。
【図7】図7は、実施例のエンジントルク線図である。
【図8】図8は、リフト操作手段の操作量と、作業機油圧ポンプから吐出されてリフト制御弁を介してリフトシリンダに供給される作動油の流量との関係およびチルト操作手段の操作量と、作業機油圧ポンプから吐出されてチルト制御弁を介してチルトシリンダに供給される作動油の流量との関係を示す図である。
【図9】図9は、第1の制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2の制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明に係るフォークリフトのエンジン制御装置の実施の形態について説明する。
【0029】
図2は、フォークリフト1の車体3の側面図である。図2は、フォークリフト1の作業機2の構造を示している。
【0030】
図2に示すように、フォークリフト1の車体3の前方には、作業機2としてのマスト4およびフォーク5が設けられている。マスト4は、車体3に左右一対のチルトシリンダ8を介して支持されている。
【0031】
運転席には、作業機操作手段6と、走行方向指示手段13と、アクセルペダル25と、ブレーキペダル(インチングペダル)26が設けられている。作業機操作手段6、走行方向指示手段13は、たとえば操作レバーで構成される。
【0032】
走行方向指示手段13は、操作に応じて車体3の走行方向、つまり前進方向Fまたは後進方向Rを指示する。
【0033】
作業機操作手段6の操作に応じて作業機2が駆動されマスト4がチルトされたり、フォーク5がリフトされたりして、フォーク5に載せられた荷物の位置、姿勢を所望の位置、姿勢に変化させることができる。
【0034】
図3は、実施例のフォークリフト1の動力伝達系の構成を示す。
【0035】
フォークリフト1には、走行装置7と作業機2が備えられている。走行装置7は、エンジン8によって駆動される。作業機2は、エンジン8を駆動源として作業機油圧ポンプ9から吐出される圧油が制御弁10を介して作業機油圧アクチュエータ11に供給されることによって作動する。
【0036】
ここで制御弁10は、リフト制御弁10A、チルト制御弁10B、第1アタッチメント制御弁10C、第2アタッチメント制御弁10D、第3アタッチメント制御弁10Eからなる。作業機油圧アクチュエータ11は、リフトシリンダ11A、チルトシリンダ11B、第1アタッチメントシリンダ11C、第2アタッチメントシリンダ11D、第3アタッチメントシリンダ11Eからなる。
【0037】
アタッチメントは、たとえばロールクランプ、ベールクランプ、ガイドシフト、フォークムーバ、回転フォークなどである。アタッチメントシリンダ11C、11D、11Eを作動させることにより、リフト動作、チルト動作以外に、フォーク5の左右移動、クランプ、回転クランプなどの動作を行わせることができる。
【0038】
フォークリフト1には、操作に応じて作業機2を作動させる作業機操作手段6が備えられている。作業機操作手段6は、リフトシリンダ11Aをリフト上昇方向に作動させるリフト操作手段6Aと、チルトシリンダ11Bをチルト前傾方向またはチルト後傾方向に作動させるチルト操作手段6Bと、第1アタッチメントシリンダ11C、第2アタッチメントシリンダ11D、第3アタッチメントシリンダ11Eをそれぞれアタッチメントに応じたA方向またはB方向に作動させる第1アタッチメント操作手段6C、第2アタッチメント操作手段6D、第3アタッチメント操作手段6Eとからなる。
【0039】
エンジン8の駆動力は、PTO軸14を介して作業機油圧ポンプ9およびHST油圧ポンプ16に伝達される。HST油圧ポンプ16から駆動輪24までの動力伝達系は、走行装置7を構成する。
【0040】
静流体駆動式トランスミッション(HST;Hydro-Static Transmission)17は、HST油圧ポンプ16と、HST油圧モータ18と、HST油圧ポンプ16の各ポート16a、16bと、HST油圧モータ18の各流入出口18a、18bとを連通する油路19とからなる。HST油圧ポンプ16の吐出側のポートを切り換えることにより、車体3は前進または後進する。たとえばHST油圧ポンプ16の一方のポート16aから圧油を吐出させると、車体3は前進し、HST油圧ポンプ16の他方のポート16bから圧油を吐出させると、車体3は後進する。また、HST油圧ポンプ16の斜板16cと、HST油圧モータ18の斜板18cの各傾転角を調整して各容量を変化させることにより、変速が行われる。
【0041】
HST油圧モータ18の駆動力は、デファレンシャルギア20を介してアクスル21に伝達される。アクスル21には、ブレーキ装置22とファイナルギア23が設けられている。ファイナルギア23の出力軸は、駆動輪24に連結されている。このためエンジン8が稼動しており、アクセルペダル25が踏込まれ、走行方向指示手段13が前進方向F若しくは後進方向Rに操作された場合には、駆動輪24が回転駆動して前進走行または後進走行する。
【0042】
リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されると、作業機油圧ポンプ9の吐出口9aから吐出された圧油がリフト制御弁10Aを介してリフトシリンダ11Aに供給される。これによりリフトシリンダ11Aが作動してフォーク5が上昇する。また、リフト操作手段6Aがリフト下降方向に操作されると、リフトシリンダ11A内の圧油がタンク43に解放される。これにより自重によってフォーク5が下降する。また、リフト操作手段6Aが中立位置に位置されると、リフト制御弁10Aの開口が閉じられ、リフトシリンダ11Aへの圧油の供給、排出が止まる。これによりフォーク5の高さが維持される。
【0043】
チルト操作手段6Bがチルト前傾方向またはチルト後傾方向に操作されると、作業機油圧ポンプ9の吐出口9aから吐出された圧油がチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される。これによりチルトシリンダ11Bがチルト前傾方向またはチルト後傾方向に作動して、マスト4がチルト前傾方向またはチルト後傾方向に動作する。
【0044】
第1アタッチメント操作手段6Cが操作方向AまたはBに操作されると、作業機油圧ポンプ9の吐出口9aから吐出された圧油が第1アタッチメント制御弁10Cを介して第1アタッチメントシリンダ11Cに供給される。これにより第1アタッチメントシリンダ11CがA方向またはB方向に作動して、アタッチメントがそのアタッチメントに応じた方向に動作する。同様にして、第2アタッチメント操作手段6Dが操作方向AまたはBに操作されると、第2アタッチメント制御弁10Dを介して第2アタッチメントシリンダ11DがA方向またはB方向に作動し、第3アタッチメント操作手段6Eが操作方向AまたはBに操作されると、第3アタッチメント制御弁10Eを介して第3アタッチメントシリンダ11EがA方向またはB方向に作動する。
【0045】
走行方向指示手段13が操作されて前進方向Fが指示されると、HST油圧ポンプ16のポート16aから圧油が吐出され、車体3は前進する。また、走行方向指示手段13が操作されて後進方向Rが指示されると、HST油圧ポンプ16のポート16bから圧油が吐出され、車体3は後進する。
【0046】
ブレーキペダル(インチングペダル)26が踏込み操作されると、その踏込み操作量に応じて、HST油圧ポンプ16の斜板16cが調整されてHST油圧ポンプ16の吸収トルクが低下するとともに、ブレーキ装置22で発生するブレーキ力が大きくなる。したがって、ブレーキペダル(インチングペダル)26の踏込み操作量が大きくなるほど、エンジン8から駆動輪24に伝達される駆動力が小さくなるとともに、ブレーキ装置22で発生するブレーキ力が大きくなり、車体3を停止状態にすることができる。
【0047】
作業機油圧ポンプ9は、可変容量型の油圧ポンプである。本実施例では、差圧一定制御が行われる。チルト制御弁10Bを例にとり説明すると、チルト制御弁10Bの前後差圧が一定値となるように、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量が制御される。
【0048】
図4は、フォークリフト1の制御系の構成を示す。
【0049】
走行方向指示手段13には、走行方向指示手段13が前進方向Fまたは後進方向Rを指示されていること、あるいは中立位置Nに位置されていることを検出するFRスイッチ27が設けられている。FRスイッチ27の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0050】
リフト操作手段6Aには、リフト上昇方向に操作されたことをオン信号として出力するリフト上昇スイッチ28が設けられている。図5(a)は、リフト上昇スイッチ28から出力される検出信号を示す。リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていないとき、つまりリフト操作手段6Aが中立位置またはリフト下降方向に操作されているときには、オフとなる。リフト上昇スイッチ28の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0051】
チルト操作手段6Bには、チルト前傾方向またはチルト後傾方向に操作されたことをオン信号として出力するチルト前後傾スイッチ29が設けられている。図5(b)は、チルト前後傾スイッチ29から出力される検出信号を示す。チルト前後傾スイッチ29の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0052】
第1アタッチメント操作手段6Cには、A方向またはB方向に操作されたことをオン信号として出力する第1アタッチメントスイッチ31が設けられている。第1アタッチメントスイッチ31の検出信号は、コントローラ30に入力される。同様に第2アタッチメント操作手段6Dには、第2アタッチメントスイッチ32が設けられており、第2アタッチメントスイッチ32の検出信号は、コントローラ30に入力され、第3アタッチメント操作手段6Eには、第3アタッチメントスイッチ33が設けられており、第3アタッチメントスイッチ32の検出信号は、コントローラ30に入力される。図5(c)は、第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32および33から出力される検出信号を示す。第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6EがA方向、B方向に操作されていないとき、つまり第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが中立位置に操作されているときには、オフとなる。
【0053】
アクセルペダル25には、踏込み操作量を検出するアクセル検出手段34が設けられている。アクセル検出手段34は、たとえばポテンショメータで構成される。アクセル検出手段34の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0054】
ブレーキペダル(インチングペダル)26には、踏込み操作量を検出するブレーキ検出手段35が設けられている。ブレーキ検出手段35は、たとえばポテンショメータで構成される。ブレーキ検出手段35の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0055】
コントローラ30には、車体停止検出手段36と、作業機操作状態検出手段37と、判定手段38と、エンジン回転数上限値設定手段39と、エンジン制御手段40が設けられている。
【0056】
車体停止検出手段36は、車体3が停止していることを検出する。車体停止検出手段36は、FRスイッチ27の検出信号に基づき走行方向指示手段13が中立位置Nに位置されていることを検出する。
【0057】
作業機操作状態検出手段37は、作業機操作手段6の操作状態を検出する。作業機操作状態検出手段37は、リフト上昇スイッチ28の検出信号と第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32および33の検出信号とに基づき、リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていないことを検出するとともに、第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていないことを検出する。
【0058】
判定手段38は、車体停止検出手段36の検出結果と、作業機操作状態検出手段37の検出結果とに基づいて、車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態であるか、または、車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独単独作動している状態であるか、または、車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態であることを判定する。
【0059】
すなわち、判定手段38は、下記の条件a)、b)、c)のすべてが満足されていることを条件に、下記1)、2)、3)のいずれかの運転状態であることを判定する。
【0060】
a)走行方向指示手段13が中立位置N
b)リフト上昇スイッチ28がオフ(リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていない)
c)第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32、33がオフ(第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていない)
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
エンジン回転数上限値設定手段39では、判定手段38によって、上記1)、2)、3)の運転状態であることが判定された場合に、エンジン回転数Nの上限値をハイアイドル回転数NHよりも低い回転数であるエンジン回転数上限値NLIMに設定する。このエンジン回転数上限値NLIMは、作業機2への供給油量が作業機2のチルト動作に必要な油量QLとなるエンジン回転数に定められる。
【0061】
エンジン8の制御は、エンジン制御手段40とガバナ41と燃料噴射ポンプ42によって行なわれる。
【0062】
エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつハイアイドル回転数NHまたはエンジン回転数上限値設定手段39で設定されたエンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する(図7参照)。
【0063】
図6は、アクセルペダル25の踏込み操作量と、エンジン回転数Nとの関係を示す。
【0064】
エンジン制御手段40は、アクセルペダル25の踏込み操作量が大きくほど、エンジン回転数Nを大きくする制御指令を生成、出力する。エンジン回転数Nの最低回転数は、ローアイドル回転数NLとされる。エンジン回転数Nの最高回転数は、エンジン回転数上限値設定手段39でエンジン回転数上限値NLIMが設定されていない場合には、ハイアイドル回転数NHとされ、エンジン回転数上限値設定手段39でエンジン回転数上限値NLIMが設定された場合には、ハイアイドル回転数NHよりも低いエンジン回転数上限値NLIMに制限される。
【0065】
ガバナ41は、制御指令として与えられたエンジン回転数Nとなり、エンジン出力トルクTを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限する燃料噴射量指令を生成し、燃料噴射ポンプ42に出力する。燃料噴射ポンプ42は、燃料噴射量指令として与えられた燃料噴射量が得られるようにエンジン8に燃料を噴射する。
【0066】
ガバナ41は、オールスピード制御式ガバナであり、機械式の制御または電子制御が行なわれる。
【0067】
図7は、エンジントルク線図を示す。各エンジン回転数N毎に、つまり各アクセル開度毎に、レギュレーションラインLL…LLIM…Li…LHが定められており、アクセル開度(エンジン回転数Ni)が定まると、負荷の大きさに応じて、エンジン回転数Nが減少しながら、対応するレギュレーションラインLi上を、ポンプ吸収トルクと負荷とのマッチング点が移動する。
【0068】
(第1の制御)
つぎに、コントローラ30で行なわれる制御を図9のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
コントローラ30の判定手段38では、前述の条件、
a)走行方向指示手段13が中立位置N
b)リフト上昇スイッチ28がオフ(リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていない)
c)第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32、33がオフ(第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていない)
のすべてが満足されているか否かが判定される(ステップ101)。
【0070】
条件a)、b)、c)のうち少なくとも1つの条件が成立していない場合には(ステップ101の判断;「条件成立せず」)、エンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要はない運転状態であると判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつハイアイドル回転数NHを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。
【0071】
このため、たとえばオペレータがアクセルペダル25を最大開度まで踏込み操作しており、リフト操作手段6Aをリフト上昇方向にフルストローク操作している場合には、図7において、ハイアイドル回転数NHに対応するレギュレーションラインLH上の点P0(定格点)でマッチングすることになり、重量物のある荷物を最大速度でフォーク5によって上昇させることができる。
【0072】
このマッチング点P0は、差圧一定制御が行なわれた結果、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量qが容量q0に制御された点である。
【0073】
このとき作業機油圧ポンプ9から吐出されてリフト制御弁10Aを介してリフトシリンダ11Aに供給される作動油の流量QLは、
QL=q0×NH …(1)
で表される。図8において、LN1は、リフト操作手段6Aの操作量と、作業機油圧ポンプ9から吐出されてリフト制御弁10Aを介してリフトシリンダ11Aに供給される作動油の流量Qとの関係を示す。リフト操作手段6Aがフルストローク操作されている場合には、上記(1)式に示される流量QLが作業機油圧ポンプ9からリフトシリンダ11Aに供給されることになる(ステップ102)。
【0074】
これに対して、条件a)、b)、c)のすべてが成立している場合には(ステップ101の判断;「条件成立」)、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
のいずれかの運転状態であり、エンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつエンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。
【0075】
このため、たとえばオペレータがアクセルペダル25を最大開度まで踏込み操作しており、車体3が停止した状態で作業機操作手段6のうちチルト操作手段6Bのみがチルト前傾方向またはチルト後傾方向にフルストローク操作している場合には、図7において、エンジン回転数上限値NLIMに対応するレギュレーションラインLLIM上の点P1でマッチングすることになり、マスト4を最大速度で前傾または後傾させることができる。
【0076】
このマッチング点P1は、差圧一定制御が行なわれた結果、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量qが容量q1に制御された点である。
【0077】
このとき作業機油圧ポンプ9から吐出されてチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される作動油の流量QTは、
QT=q1×NLIM …(2)
で表される。図8において、LN2は、チルト操作手段6Bの操作量と、作業機油圧ポンプ9から吐出されてチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される流量Qとの関係を示す。チルト操作手段6Bがフルストローク操作されている場合には、上記(2)式に示される流量QTが作業機油圧ポンプ9からチルトシリンダ11Bに供給されることになる(ステップ103)。
【0078】
ここで、本実施例の制御が行われない従来の制御との作用効果上の相違点について説明する。
【0079】
すなわち、従来技術によれば、同じく、オペレータがアクセルペダル25を最大開度まで踏込み操作しており、車体3が停止した状態で作業機操作手段6のうちチルト操作手段6Bのみがチルト前傾方向またはチルト後傾方向にフルストローク操作している場合には、図7において、ハイアイドル回転数NHに対応するレギュレーションラインLH上の点P2でマッチングすることになる。
【0080】
このマッチング点P2は、差圧一定制御が行なわれた結果、作業機油圧ポンプ9の斜板9cが調整されて作業機油圧ポンプ9の容量qが容量q2に制御された点である。ここで容量q2は、(2)式の容量q1よりも小さい容量である。
【0081】
このとき作業機油圧ポンプ9から吐出されてチルト制御弁10Bを介してチルトシリンダ11Bに供給される作動油の流量QTは、
QT=q2×NH …(3)
で表される。
【0082】
図8に示すように、作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に供給される最大供給流量は、リフトシリンダ11Aを最大速度でリフト上昇方向に作動させるのに必要な流量QLに設定されている。
【0083】
これに対して、チルトシリンダ11Bのみをチルト方向に作動させる場合には、作業機油圧ポンプ9から最大供給流量を吐出させる必要はなく、作業機油圧ポンプ9の最大供給能力の約50%で足りる。すなわち、リフトシリンダ11Aをリフト上昇方向に最大速度に作動させるときの流量QLの約半分の流量で、チルトシリンダ11Bはチルト方向に最大速度で作動することになる。よって、(3)式の容量q2は、(1)式の容量q0よりも小さい値となる。
【0084】
図7に、図1と同様にして等燃費線F1、F2…Fi…を示している。燃料消費量は、F1<F2<…<Fi…の順で大きくなる。
【0085】
従来の制御が行なわれた場合には、エンジントルク線図上で、ポンプ容量qがq2と小さく、かつエンジン回転数Nがハイアイドル回転数NHと高い点P2でマッチングする。このマッチング点P2は、等燃費線からみて燃料消費量が大きい点であり、エンジン回転数Nが最大域(ハイアイドル回転数NH)であることから騒音が大きくなる。図7において、LNは、マッチング点P2を通過するエンジン8の等馬力線を示している。
【0086】
これに対して本実施例の制御が行なわれた場合には、エンジントルク線図上で、ポンプ容量qがq1と大きく、かつエンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMと低い点P1でマッチングする。このマッチング点P1は、等燃費線からみて燃料消費量が小さい点であり、エンジン回転数Nがハイアイドル回転数NHよりも低回転であることから騒音が小さくなる。また、エンジン8の馬力が低くなり、ヒートバランスが改善される。
【0087】
以上、「車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態」について説明したが、「車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態」、「車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態」についても同様にして、エンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMに制限され、燃料消費の抑制と騒音の低減が図られる。
【0088】
ただし、このような運転状態は、「車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態」と異なり、作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のない状態であり、必要な流量を確保するためにエンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMまで大きく設定するには及ばない。
【0089】
そこで、「車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態」、「車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態」という作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のない状態であると判断された場合のエンジン回転数上限値を、「車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態」という作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のある状態のときのエンジン回転数上限値NLIMよりも低く設定する実施も可能である。以下、第2の制御について説明する。
【0090】
(第2の制御)
この第2の制御では、エンジン回転数上限値設定手段39は、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
であると判定された場合に、エンジン回転数Nの上限値をエンジン回転数上限値NLIMよりも低い回転数、たとえばローアイドル回転数NLに設定する。また、
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
であると判定された場合には、エンジン回転数Nの上限値をエンジン回転数上限値NLIMに設定する。
【0091】
第2の制御の処理手順を図10に示す。第2の制御では、図10に示すフローチャートにしたがいコントローラ30で処理が行われる。
【0092】
すなわち、コントローラ30の判定手段38では、図9のステップ101と同様に、条件、
a)走行方向指示手段13が中立位置N
b)リフト上昇スイッチ28がオフ(リフト操作手段6Aがリフト上昇方向に操作されていない)
c)第1、第2および第3アタッチメントスイッチ31、32、33がオフ(第1、第2および第3アタッチメント操作手段6C、6Dおよび6Eが操作されていない)
のすべてが満足されているか否かが判定される(ステップ201)。
【0093】
条件a)、b)、c)のうち少なくとも1つの条件が成立していない場合には(ステップ201の判断;「条件成立せず」)、エンジン回転数Nをハイアイドル回転数NHよりも低い回転数に制限する必要はない運転状態であると判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつハイアイドル回転数NHを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。このため図7に示すように、たとえばハイアイドル回転数NHに対応するレギュレーションラインLH上の点P0でマッチングさせ、重量物のある荷物を最大速度でフォーク5によって上昇させることができる(ステップ202)。
【0094】
これに対して、条件a)、b)、c)のすべてが成立している場合には(ステップ201の判断;「条件成立」)、更に条件、
d)チルト前後傾スイッチ29がオフ(チルト操作手段6Bがチルト前傾方向またはチルト後傾方向に操作されていない)
が満足されているか否かが判定される(ステップ203)。
【0095】
条件d)が成立していない場合には(ステップ203の判断;「条件成立せず」)、
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
であり、エンジン回転数Nをエンジン回転数上限値NLIMに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつエンジン回転数上限値NLIMを回転数上限値として、アクセルペダル25の踏込み操作量に対応するエンジン回転数Nを得るための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。このため、図7において、たとえばエンジン回転数上限値NLIMに対応するレギュレーションラインLLIM上の点P1でマッチングすることになり、マスト4を最大速度で前傾または後傾させることができる(ステップ204)。
【0096】
一方、条件d)が成立している場合には(ステップ203の判断;「条件成立」)、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
のいずれかの運転状態であり、エンジン回転数Nをローアイドル回転数NLに制限する必要があるものと判断して、エンジン制御手段40は、エンジン出力トルクを、最大トルク線Lで規定される最大トルク値以下に制限し、かつアクセルペダル25の踏込み操作量いかんにかかわらずエンジン回転数Nをローアイドル回転数NLにするための制御指令を生成し、ガバナ35に出力する。このため図7に示すように、ローアイドル回転数NLに対応するレギュレーションラインLL上の点P3でマッチングさせることができる(ステップ205)。
【0097】
以上、第2の制御によれば、第1の制御と同様にして、燃料消費が抑制され、騒音が低減され、ヒートバランスが改善される。さらに、作業機油圧ポンプ9から作業機油圧アクチュエータ11に作動油を供給する必要のない運転状態のときには、アクセル開度いかんにかかわらずエンジン回転数Nがローアイドル回転数NLに制限されるため、無用なエンジンの空吹かしを抑制することができ、燃料消費の抑制および騒音の低減が一層促進されることになる。
【0098】
なお、図4において、チルト前後傾スイッチ29を示しているが、第1の制御が実施される場合には、同チルト前後傾スイッチ29の配設を省略することができる。
【0099】
また、上述した実施例では、車体停止検出手段36は、FRスイッチ27の検出信号に基づき、車体3が停止していることを検出するようにしているが、ブレーキ検出手段35の検出信号に基づき、車体3が停止していることを検出してもよい。たとえば、ブレーキペダル(インチングペダル)26の踏込み操作量が所定のしきい値以上になった場合に、車体3が停止したことを検出する。
【0100】
また、上述した実施例では、作業機油圧ポンプ9が可変容量型の油圧ポンプである場合を想定し、差圧一定制御が行われるものとして説明した。
【0101】
しかし、作業機油圧ポンプ9が固定容量型の油圧ポンプであって、差圧一定制御が行なわれない場合にも、同様にして本発明を適用することができる。
【0102】
この場合の発明の効果について図8を用いて説明する。
【0103】
従来の制御の場合には、チルト単独操作が行われるとき、作業機油圧ポンプ9からチルト制御弁10Bに供給される油量QLのうち約50%、つまり必要流量QTとの差分QL−QTが余剰流量として、タンク43に戻ることになっていた。これによりチルト制御弁10Bでチルトシリンダ11Bに供給されない作動油が無駄に昇圧されるため、油温上昇、エンジン馬力のロス、燃料消費量の増大を招くことになっていた。
【0104】
これに対して本発明によれば、
3)車体3が停止状態であって作業機2がチルト方向のみに単独作動している状態
の場合には、エンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMに制限されるため、作業機油圧ポンプ9からチルト制御弁10Bに供給される油量が、従来の制御のQLからより低い油量に、たとえば必要流量QT丁度に低減されることになる。この結果、油温低下、エンジン馬力のロス抑制、燃料消費量の抑制、騒音低減が図られることになる。
【0105】
また、
1)車体3が停止状態であって作業機2が作動していない状態
2)車体3が停止状態であって作業機2がリフト下降方向のみに単独作動している状態
の場合にも、同様にして、エンジン回転数Nがエンジン回転数上限値NLIMあるいはそれよりも低い回転数、たとえばローアイドル回転数NLに制限されるため、作業機油圧ポンプ8から無駄な作動油が吐出されることがなくなり、油温低下、エンジン馬力のロス抑制、燃料消費量の抑制、騒音低減が図られるとともに、エンジン8の空吹かしを抑制することができるようになる。
【符号の説明】
【0106】
1 フォークリフト、2 作業機、3 車体、6 作業機操作手段、6A リフト操作手段、6B チルト操作手段、6C、6D、6E アタッチメント操作手段、7 走行装置、8 エンジン、9 作業機油圧ポンプ、25 アクセルペダル、36 車体停止検出手段、37 作業機操作状態検出手段、38 判定手段、39 エンジン回転数上限値設定手段、40 エンジン制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって駆動される走行装置と前記エンジンを駆動源として作業機油圧ポンプから吐出される圧油が供給されることによって作動する作業機を備えたフォークリフトであって、操作に応じて前記作業機を作動させる作業機操作手段を備え、当該作業機操作手段をリフト上昇方向に操作することによって前記作業機をリフト上昇方向に作動させるとともに、前記作業機操作手段をチルト操作方向に操作することによって前記作業機をチルト方向に作動させ、ハイアイドル回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御するエンジン制御手段を備えたフォークリフトのエンジン制御装置において、
車体が停止していることを検出することを検出する車体停止検出手段と、
前記作業機操作手段の操作状態を検出する作業機操作状態検出手段と、
前記車体停止検出手段の検出結果と、前記作業機操作状態検出手段の検出結果とに基づいて、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることを判定する判定手段と、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合に、前記エンジン回転数の上限値を前記ハイアイドル回転数よりも低い回転数に設定するエンジン回転数上限値設定手段と
を備え、
前記エンジン制御手段は、前記エンジン回転数上限値設定手段によって設定されたエンジン回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御すること
を特徴とするフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジン回転数上限値設定手段は、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合には、
前記作業機への供給油量が前記作業機のチルト動作に必要な油量となるエンジン回転数に、エンジン回転数の上限値を定めること
を特徴とする請求項1記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項3】
前記作業機油圧ポンプは、可変容量型の油圧ポンプであり、
前記作業機油圧ポンプからチルト制御弁を介して前記作業機に圧油が供給されることにより、前記作業機がチルト動作するものであり、
前記チルト制御弁の前後差圧が一定値となるように、前記作業機油圧ポンプの容量が制御されること
を特徴とする請求項1または2記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項4】
前記車体停止検出手段は、操作に応じて車体の走行方向を指示する走行方向指示手段が中立位置に位置されていることをもって、車体が停止していることを検出する手段であること
を特徴とする請求項1または2または3記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項5】
前記作業機操作手段は、
前記作業機をリフト上昇方向に作動させるリフト操作手段と、前記作業機をチルト方向に作動させるチルト操作手段と、前記作業機をアタッチメントに応じた方向に作動させるアタッチメント操作手段とからなり、
前記作業機操作状態検出手段は、
前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことを検出するとともに、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことを検出するものであり、
前記判定手段は、
前記車体検出手段によって車体停止状態であることが検出され、前記作業機操作状態検出手段によって、前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことが検出され、かつ、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことが検出された場合に、
前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であると判定すること
を特徴とする請求項1または2または3または4記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項1】
エンジンによって駆動される走行装置と前記エンジンを駆動源として作業機油圧ポンプから吐出される圧油が供給されることによって作動する作業機を備えたフォークリフトであって、操作に応じて前記作業機を作動させる作業機操作手段を備え、当該作業機操作手段をリフト上昇方向に操作することによって前記作業機をリフト上昇方向に作動させるとともに、前記作業機操作手段をチルト操作方向に操作することによって前記作業機をチルト方向に作動させ、ハイアイドル回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御するエンジン制御手段を備えたフォークリフトのエンジン制御装置において、
車体が停止していることを検出することを検出する車体停止検出手段と、
前記作業機操作手段の操作状態を検出する作業機操作状態検出手段と、
前記車体停止検出手段の検出結果と、前記作業機操作状態検出手段の検出結果とに基づいて、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることを判定する判定手段と、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合に、前記エンジン回転数の上限値を前記ハイアイドル回転数よりも低い回転数に設定するエンジン回転数上限値設定手段と
を備え、
前記エンジン制御手段は、前記エンジン回転数上限値設定手段によって設定されたエンジン回転数を上限値として、アクセル操作に応じたエンジン回転数になるように前記エンジンを制御すること
を特徴とするフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジン回転数上限値設定手段は、
前記判定手段によって、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であることが判定された場合には、
前記作業機への供給油量が前記作業機のチルト動作に必要な油量となるエンジン回転数に、エンジン回転数の上限値を定めること
を特徴とする請求項1記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項3】
前記作業機油圧ポンプは、可変容量型の油圧ポンプであり、
前記作業機油圧ポンプからチルト制御弁を介して前記作業機に圧油が供給されることにより、前記作業機がチルト動作するものであり、
前記チルト制御弁の前後差圧が一定値となるように、前記作業機油圧ポンプの容量が制御されること
を特徴とする請求項1または2記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項4】
前記車体停止検出手段は、操作に応じて車体の走行方向を指示する走行方向指示手段が中立位置に位置されていることをもって、車体が停止していることを検出する手段であること
を特徴とする請求項1または2または3記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【請求項5】
前記作業機操作手段は、
前記作業機をリフト上昇方向に作動させるリフト操作手段と、前記作業機をチルト方向に作動させるチルト操作手段と、前記作業機をアタッチメントに応じた方向に作動させるアタッチメント操作手段とからなり、
前記作業機操作状態検出手段は、
前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことを検出するとともに、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことを検出するものであり、
前記判定手段は、
前記車体検出手段によって車体停止状態であることが検出され、前記作業機操作状態検出手段によって、前記リフト操作手段がリフト上昇方向に操作されていないことが検出され、かつ、前記アタッチメント操作手段が操作されていないことが検出された場合に、
前記車体が停止状態であって前記作業機が作動していない状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がリフト下降方向のみに単独作動している状態であるか、または、前記車体が停止状態であって前記作業機がチルト方向のみに単独作動している状態であると判定すること
を特徴とする請求項1または2または3または4記載のフォークリフトのエンジン制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−52457(P2012−52457A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194796(P2010−194796)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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