説明

フッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板およびその製造方法

【課題】 フッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
ステンレス鋼板の化成処理がノンクロメート系処理剤で処理し、熱硬化性樹脂組成物がフッ素樹脂とこれらを架橋硬化させるためのブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂の単独及び併用によりなる該樹脂固形物100質量部あたり固形分量でポリオレフィン系ワックスを0.25〜5質量部含有することで1コート密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性を特徴とする熱硬化性樹脂組成物を1〜10μm焼き付けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物フッ素樹脂に架橋硬化させるための樹脂としてブロックイソシアネート樹脂およびアミノ樹脂よりなる組成物に、硬化触媒としてP−トルエンスルホン酸系触媒を含有することで、1コート密着性・耐候性・耐疵付き性・耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリヤ塗装ステンレス鋼板は金属光沢を活かした高級感のある外観が得られ、かつ表面光沢が非常に高いことから、家電製品の筐体や内装材、表装材に使われるケースが多くなってきた。また近年では屋外用としてのクリヤ塗装ステンレス鋼板が要求されフッ素樹脂を塗装した潤滑性のある高耐候性クリヤ塗装鋼板が一部製造されている。しかし、潤滑性を発現するためにフッ素樹脂粉末を分散させてアクリル樹脂中に入れる、例えば、特開2001−198522(特許文献1)が出されているが、フッ素樹脂粉末は分散が困難であることから均一な塗膜が得られにくいという欠点がある。
【0003】
また、特開2001−137775(特許文献2)には、フッ素樹脂塗膜の硬度を上げるのに平均粒径が10〜200μmの鱗片状無機質添加剤、具体的にはガラスフレークなどを塗料中に配合した高硬度、耐摩耗性に優れた特許が出願されているが、これについても前記同様、粒径が大きいため均一な塗膜が得られにくいという欠点を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−198522
【特許文献2】特開2001−137775
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来のフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板は、塗膜の均一性が得られにくいことが問題であった。さらに、生産性の高い1コートでかつ高機能性を具備するフッ素樹脂クリヤ塗装ステンレス鋼板を製造することも困難であった。塗膜が均一で生産性に優れた1コートで製造可能な、密着性・耐候性・耐疵付き性・耐汚染性に優れた高機能性のフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決する手段を鋭意検討した結果、フッ素樹脂の特性である耐候性をはじめとして密着性・耐疵付き性・耐汚染性に優れた熱硬化性樹脂組成物と該組成物からなるフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板およびその製造方法を確立した。
(1)熱硬化性樹脂組成物がガラス転移点10〜60℃、数平均分子量3000〜20000のフッ素樹脂を主成分として該フッ素樹脂とこれらを架橋硬化させるためのブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂を含む有機溶剤系熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
【0007】
(2)前記熱硬化性樹脂組成物が、前記アミノ樹脂の硬化触媒としてP−トルエンスルホン酸系触媒を熱硬化性樹脂組成物と該架橋樹脂組成物の固形物100質量部あたり固形分量で0.5〜8質量部含有することを特徴とする(1)に記載の密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
(3)前記熱硬化性樹脂組成物の固形物100質量部あたり、ポリオレフィン系ワックスを固形分量で0.25〜5質量部含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
【0008】
(4)塗装する前の化成処理は、ノンクロメート処理であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
(5)前記P−トルエンスルホン酸系触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物を1コートで塗装することを特徴とする生産性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によればクロメートフリーであり、かつ硬さ、加工性、耐候性、耐汚染性、耐疵付き性、耐洗剤性、耐薬品性に優れたフッ素クリア塗装ステンレス鋼板を生産性の高い1コートで製造することができ、建材外装用、家電製品、建材内装材として最適なフッ素クリア塗装ステンレス鋼板およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるフッ素樹脂は、塗料用樹脂として既知の方法により製造された市販品が使用でき、1コートで硬さ、加工性、耐候性、耐汚染性、耐疵付き性、耐洗剤性、耐薬品性に優れたフッ素クリア塗装ステンレス鋼板を得ることが出来るため、2コート品と比べると生産性において格段に優れる。生産性の高い1コートでフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板を造ることができるのは、フッ素樹脂に潤滑効果の高い一定サイズのポリオレフィンワックスを規定量入れることで可能としたものである。また、潤滑性を発現するのに、フッ素樹脂粉末を使わずにポリオレフィンワックスを用いるとともに、硬さや摩耗性を上げるのに鱗片状無機質添加剤、具体的にはガラスフレークなどを入れずにメラミン樹脂でその効果をもたらす。そのため塗料がクリヤータイプで成立することから非常に均一な塗膜を得ることが出来る。
【0011】
上記フッ素樹脂は、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)やヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のフルオロオレフィン類と各種共重合性単量体を有機溶剤と重合開始剤の存在下、高圧反応器中で加熱重合して製造されたものが使用できる。樹脂の硬さのパラメーターであるガラス転移点は10〜60℃が好ましく、さらに好ましくは20〜50℃である。樹脂のガラス転移点が10℃未満の場合は、連続プレス時の摩擦、加工発熱のため鋼板表面の温度が80〜100℃に上昇することにより、塗膜の軟化を生じ、金型に塗膜樹脂が付着する。また、60℃超の場合には、ピンホール、レベリング不足等の塗装時の作業性が悪い。
【0012】
また、その数平均分子量は3000〜20000が好ましく、さらに好ましくは4000〜15000である。3000未満では架橋剤との反応性が乏しすぎて塗膜にはならず、20000を超える場合、溶剤での溶解性が不足して樹脂液にならない。市販品としてはゼッフルGK500、GK550、GK570(ダイキン工業株式会社製)、セフラルコートA402B、A610X、A670X(セントラル硝子株式会社製)、ルミフロンLF100、LF200、LF302、LF400、LF504、LF600(旭硝子株式会社製)などが挙げられ単独もしくは併用して使用してよい。フッ素樹脂系熱硬化性樹脂成分のもう一つの構成成分である架橋剤は、ブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂である。
【0013】
ブロックイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、該ポリイソシアネートのビューレットタイプの付加物、イソシアヌル環タイプ付加物等であり、これらのポリイソシアネートをフェノール類、オキシム類、活性メチレン類、ε−カプロラクタム類、トリアゾール類、ピラゾール類等のブロック剤で封鎖したものであり、市販品としてはデスモジュールBL1100、BL1265MPA/X、VPLS2253、BL3475BS/SN、BL3272MPA、BL3370MPA、BL4265SN、デスモーサム2170、スミジュール3175(以上、住化バイエルウレタン(株)製)デュラネート17B−60PX、TPA−B80X、MF−B60X、MF−K60X(以上、旭化成工業(株)製)バーノックDB−980K、D−550、B3−867、B7−887−60(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、コロネート2515、2507、2513(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)などが挙げられ単独もしくは併用して使用してよい。
【0014】
アミノ樹脂はアミノ化合物(メラミン、グアナミン、尿素)とホルムアルデヒド(ホルマリン)を付加反応させ、アルコールで変性した樹脂を総称し、塗料用樹脂としてはメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、グリコールウリル樹脂、アセトグアナミン樹脂、シクロヘキシルグアナミン樹脂があるが、その中でも熱硬化性に起因する耐指紋性、耐疵付き性、耐薬品性という面からメラミン樹脂が好ましい。
【0015】
変性するアルコールの種類によってメチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、混合アルキル化メラミン樹脂等に分かれる。市販品ではメチル化メラミン樹脂としては、サイメル300、301,303、350、370、771、325、327、703、712、715,701、267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207(以上、三井サイテック株式会社製)、LUWIPAL063、066、068、069、072、073(以上 BASF製)、スーパーベッカミンL−105(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)メラン522、523、620、622、623(以上、日立化成工業株式会社製)、n−ブチル化メラミン樹脂としてはマイコート506、508(以上、三井サイテック株式会社製)、ユーバン20SB、20SE、21R、22R、122、125、128、220、225、228、28−60、20HS、2020、2021、2028、120(以上、三井化学株式会社製)、PLASTOPAL EBS 100A、100B、400B、600B、CB(以上、BASF製)スーパーベッカミンJ−820、L−109、L−117、L−127、L−164(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、メラン21A、22、220、2000、8000(以上、日立化成工業株式会社製)、テスアジン3020、3021、3036(以上、日立化成ポリマー株式会社製)、イソブチル化メラミン樹脂としてはユーバン60R、62、62E、360、361、165、166−60、169、2061(以上、三井化学株式会社製)、スーパーベッカミンG−821、L−145、L−110、L−125(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、PLASTOPAL EBS 4001、FIB、H731B、LR8824(以上、BASF製)メラン27、28、28D、245、265、269、289(以上、日立化成工業株式会社製)、テスアジン3027、3028、3029、3030、3037(以上、日立化成ポリマー株式会社製)、混合アルキル化メラミン樹脂としてはサイメル267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207(以上、三井サイテック株式会社製)などが挙げられ単独もしくは併用で使用しても良い。
【0016】
一般にアミノ樹脂の硬化触媒としてスルホン酸系の触媒が使用されるが、短時間焼付けを可能とするにはスルホン酸系触媒の中でもP−トルエンスルホン酸系触媒が好ましく、熱硬化性樹脂組成物と該架橋樹脂組成物の固形物100質量部あたり固形分量で0.5〜8質量部、好ましくは2〜4質量部含有することが望ましい。0.5質量部以下では、その効果が得られず、8質量部以上では硬化が飽和するだけでなく、加工性、耐沸騰水性が劣化する。
【0017】
また、ブロックイソシアネート化合物の硬化を促進するための硬化触媒を含んでも良い。硬化触媒としては、ジブチルチンジラウリレート、テトラ−nブチル、1.3ジアセトキシシスタノキサン等が挙げられ、必要に応じて混合して使用しても良い。更に一般塗料用に使われる添加剤としてレベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、シランカップリング剤等を混合させ、塗料化しても良いし、顔料又は染料を分散させ、カラークリアとすることも可能である。また、必要に応じてエポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を含んで良い。
【0018】
上記熱硬化性樹脂組成物と該樹脂固形物100質量部あたり、固形分量でポリオレフィン系ワックスを0.25〜5質量部含有することを特徴として、ポリオレフィン系ワックスとしては、パラフィン、マイクロクロスタリン、ポリエチレン、ポリエチレン−フッ素等の炭化水素系ワックス等が挙げられる。加工時には、素材の加工発熱と摩擦熱により皮膜温度が上昇するためワックスの融点は70〜160℃が適切であり、70℃未満では加工時に軟化溶融して固形潤滑添加物としての優れた特性が発揮できず、160℃を超えるものは、硬い粒子が表面に存在することにより摩擦特性を低下させるので、高度の成形加工性は得られない。
【0019】
これらのワックス粒径は0.1〜7.0μmが適切である。7.0μmを超えるものは、固形化したワックスの分布が不均一となり低光沢になるばかりか耐疵付き性も好ましくない。また、0.1μm未満の場合は、潤滑効果が出ず、加工性が不十分である。ポリオレフィン系ワックスの量は熱硬化性樹脂組成物と該樹脂固形物100質量部あたり0.25〜5質量部が適当である。0.25質量部未満では加工性は不十分であり、5質量部を超えると塗膜表面にムラが発生して、クリア鋼板の外観を損なう。
【0020】
ステンレス鋼板を塗装する前の化成処理は、金属被覆鋼材用に好適であり、クロムを含まず塗料の前処理として使われているノンクロメート系金属表面処理剤が使われる。一般に金属表面処理剤中にアミノシラン系、エポキシシラン系カップリング剤の1種類又は2種類及びその加水分解縮合物や水分散性シリカさらに加工性の向上に水溶性アクリル樹脂やフェノール樹脂を含んだものが好適であり、付着量が2〜50mg/m2 (蛍光X線にてSiO2 量を測定)になるように処理し、ステンレス鋼板素材の表面温度(MT)が60〜140℃で乾燥させる。付着量が50mg/m2 を超えると化成処理の水可溶な成分が増加し、塗膜表面にブリスタ−を生じる。好ましくは2〜10mg/m2 である。
【0021】
アミノシラン系カップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシランが挙げられ、エポキシ系シランカップリング剤としては、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0022】
処理液の塗布は、スプレー、ロールコーター、カーテンフローコート、静電塗布等の方法を用いて行うことができる。乾燥は、水分を蒸発させれば良く、その温度は60〜140℃が適当である。この処理に際し、必要に応じてアルカリ脱脂や酸、アルカリによるエッチング等の公知の前処理を施しても構わない。
【0023】
クロメート処理は、僅かであるが6価クロムを含有し、有害であるとともにクロム処理を化成処理とした場合、ステンレス表面が僅かに黄色未を帯びるのであるが、標記のクリア処理は無色透明であるとともに、本発明の請求項1、2の塗膜を1〜10μm塗布し、ステンレス素材の表面温度(MT)180〜250℃で焼き付けることにより、白色度が高いフッ素クリア塗装ステンレス鋼板を得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
表1に示すように各成分を配合して塗料を作成しバーコーターで塗膜が5μmになるように塗付し、電気乾燥炉でステンレス鋼板SUS430/No.4研磨仕上げ材の表面温度が表中になるように焼付け、フッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板を1コート1ベークで作製した。なお、ステンレス鋼板に塗装する前に、アミノシラン系の化成処理塗膜処理液をロールコーターにて蛍光X線でSiO2 が2〜50mg/m2 になるように塗装し、板温が100℃になるよう乾燥させた。なお、比較のためにクリヤ塗装が本発明の範囲を外れるステンレス鋼板を前記の発明例と同様の方法で処理して、表2に示す比較例No.1〜13のステンレス鋼板を得た。
これらの供試材について塗膜の加工性、硬さ、耐候性、耐疵つき性、耐汚染性、耐洗剤性、耐薬品性を調べた。結果を表1、表2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
塗膜の評価方法は以下の通りである。
(1)塗膜の加工性
JIS K5600 5−2(耐カッピング性)に従って評価した。
5:7mm以上(合格)
4:5〜7mm未満(合格)
3:3〜5mm未満(不合格)
2:1〜3mm未満(不合格)
1:1mm未満(不合格)
【0028】
(2)硬さ
JIS K5600 5−4引っかき硬度(鉛筆法)に従って評価を行った。
5:6H以上(合格)
4:5H(合格)
3:4H(不合格)
2:3H(不合格)
1:2H以下(不合格)
【0029】
(3)耐候性
SWOM試験4000hr後の光沢保持率(%)にて評価した。
5:光沢保持率80〜100% (合格)
4:光沢保持率60〜80%未満(合格)
3:光沢保持率40〜60%未満(不合格)
2:光沢保持率20〜40%未満(不合格)
1:光沢保持率0〜20%未満 (不合格)
【0030】
(4)耐疵付き性
研磨剤入り家庭用洗剤「JIF」(日本リーバ製)をガーゼを4枚重ねた上に滴下し1Kgの荷重で100回こすり、疵付き性を評価する。
5:疵がない(合格)
4:ほとんど疵が目立たない(合格)
3:はっきりと疵が確認できる(不合格)
2:疵で塗膜の光沢がなくなっている(不合格)
1:塗膜が削れ素地に達している(不合格)
【0031】
(5)耐汚染性
供試材を油性マジックで書き、拭き取ったときの塗膜のマジック付着具合を評価した。 5:跡が全く無い (合格)
4:跡が僅かに認められる (合格)
3:跡がやや目立つ (不合格)
2:跡が濃く残る (不合格)
1:剥離する (不合格)
【0032】
(6)耐洗剤性
供試材を40℃で72時間マジックリンにつけ塗膜の状態を観察、評価した。
5:跡が全く無い (合格)
4:跡が僅かに認められる (合格)
3:跡がやや目立つ (不合格)
2:跡が濃く残る (不合格)
1:剥離する (不合格)
【0033】
(7)耐薬品性
5%硫酸と5%NaOHを供試材に2mL滴下し、蓋をしたのち、16時間後の塗膜の状態を観察、評価した。
5:跡が全く無い (合格)
4:跡が僅かに認められる (合格)
3:跡がやや目立つ (不合格)
2:跡が濃く残る (不合格)
1:剥離する (不合格)
【0034】
本発明によれば、クロメートフリーであり、かつ硬さ、加工性、耐候性、耐汚染性、耐疵付き性、耐洗剤性、耐薬品性に優れたフッ素クリア塗装ステンレス鋼板を生産性の高い1コート1ベークで得ることができる。
一方、比較例では、樹脂がフッ素樹脂でなくアクリル樹脂やポリエステル樹脂で本発明範囲を外れるもの(比較例No.1、2)は耐汚染性、耐疵つき性や耐候性に劣る。架橋剤の量が本発明範囲を外れるもの(比較例No.3、4)は、耐疵つき性や塗膜の加工性が劣る。触媒の量が本発明範囲を外れるもの(比較例No.5、6)は、耐疵つき性や塗膜の加工性が劣る。ポリオレフィンワックスの量が本発明範囲を外れるもの(比較例No.7〜12)は、塗膜の加工性や耐疵つき性および光沢度が劣る。また、比較例No.13はポリオレフィンワックスの量が本発明範囲を外れるため、塗膜の加工性や硬さおよび耐疵付き性が充分でなく、特に2コート2ベークによる製造であるため生産性が悪い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物がガラス転移点10〜60℃、数平均分子量3000〜20000のフッ素樹脂を主成分として該フッ素樹脂を架橋硬化させるためのブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂を含む有機溶剤系熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物が、前記アミノ樹脂の硬化触媒としてP−トルエンスルホン酸系触媒を熱硬化性樹脂組成物の固形物100質量部あたり、固形分量で0.5〜8質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物の固形物100質量部あたり、ポリオレフィン系ワックスを固形分量で0.25〜5質量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
【請求項4】
塗装する前の化成処理は、ノンクロメート処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の密着性、耐候性、耐疵付き性、耐汚染性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板。
【請求項5】
前記P−トルエンスルホン酸系触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物を1コートで塗装することを特徴とする生産性に優れたフッ素クリヤ塗装ステンレス鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2007−118291(P2007−118291A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311414(P2005−311414)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(503378420)新日鐵住金ステンレス株式会社 (247)
【出願人】(000199991)川上塗料株式会社 (12)
【Fターム(参考)】