説明

フラットケーブル用コネクタ

【課題】作業スペースの少ない電子機器でのフラットケーブルの組み立てが容易で、かつ、組立の機械化が可能であり、また、フラットケーブルの電極パターンと該当するコンタクトの接点とを正しく接続できるものを提供すること。
【解決手段】スライダ15の進退動によりフラットケーブル11をハウジング14のコンタクト17に接離するようにしたフラットケーブル用コネクタにおいて、コンタクト17は、S字形に折曲し、途中に低い水平部45、上昇する傾斜部46、高い水平部47と続く段差を折曲形成し、このS字形のばね部44から前方へ伸びた先端部に、下向きV字形の接点21を形成し、スライダ15と一体のくさび板部20に、フラットケーブル11の係止孔49を係止するケーブル係止突起29を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)やFPC(フレキシブル・プリント基板)などのフレキシブルでフラットなケーブル(以下、フラットケーブルという)をプリント基板などに接続するためのフラットケーブル用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から図7(a)(b)(c)に示すように、フラットケーブル11をプリント基板10などに電気的に接続するためのフラットケーブル用コネクタ9が知られている(特許文献1)。
このフラットケーブル用コネクタ9は、ハウジング14のコンタクト差し込み溝18にコンタクト17を圧入固着し、操作レバー16の開閉動作により進退するスライダ15を、前記コンタクト17の挿入口22側に設けてなるものである。このフラットケーブル用コネクタは、ハウジング14の下面の位置合せ突起(図示せず)をプリント基板10の位置合せ孔(図示せず)に嵌合しつつ、プリント基板10の上のパターン電極に前記コンタクト17の後端の端子部48を半田などで電気的にかつ機械的に接続される。
【0003】
このように構成されたフラットケーブル用コネクタ9にフラットケーブル11を接続するには、図7(a)のように操作レバー16を開いて(立ち上がらせて)スライダ15を前方(図中左側)に突出させることにより、スライダ15のくさび板部20をコンタクト17の挿入口22から抜き出し、この状態でフラットケーブル11の先端部の電極パターン13を下向きにしてスライダ15のフラットケーブル差込口19からコンタクト17の挿入口22へ差し込む。フラットケーブル11の先端部が挿入口22の奥まで差し込まれたら、操作レバー16を図7(a)の矢印方向に閉じる(押し倒す)。すると、この操作レバー16の押し倒す動作に連動してスライダ15がハウジング14側に移動する。このスライダ15の移動に伴い、スライダ15のくさび板部20がフラットケーブル11を接点21側へ押し付けつつコンタクト17の挿入口22に圧入して、図7(b)に示すように、フラットケーブル11の電極パターン13がコンタクト17の接点21に電気的に接続される。
【0004】
フラットケーブル11は、可撓性を有するので、フラットケーブル11をコンタクト17からの過度な接触圧を受けずに低挿入力で挿入することが望ましい。この図7に示したフラットケーブル用コネクタ9では、先にフラットケーブル11を挿入した後、スライダ15のくさび板部20で所定の接触圧でコンタクト17に接触するので、低挿入力で電気的接続が可能となるZIF(ゼロ・インサーション・フォース)構造が採用されている。
【特許文献1】特開2002―175848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示した従来のフラットケーブル用コネクタは、以下に示すような若干の問題があった。
(1)図7(a)のように、まず、スライダ15をハウジング14から引き出したままにし、フラットケーブル11の先端部をスライダ15の下側のフラットケーブル差込口19からコンタクト17の挿入口22に水平方向に挿入する。水平方向に挿入するためには、フラットケーブル用コネクタの図中左側に、少なくともスライダ15の図中左端からコンタクト17の挿入口22の奥までの距離mに相当する分だけの作業スペースを必要とするので、特に作業スペースの少ない小型の電子機器の接続組み立てが困難である。
(2)フラットケーブル11の挿入が手作業になり、機械化ができない。
(3)フラットケーブル11は、スライダ15の下側のフラットケーブル差込口19から電極パターンを下向きにしてコンタクト17の挿入口22に挿入するので、正しい位置まで挿入されているかどうか、途中で引っかかっているかどうかなどの確認ができない。
(4)予めフラットケーブル11を挿入してからスライダ15のくさび板部20を圧入するので、可撓性を有するフラットケーブル11がめくれたり、しわがよったりするおそれがあり、また、幅広のフラットケーブル11がくさび板部20の下面に均一な接触圧で接していないと捩れが生じ、電極パターン13と該当する接点21とが正しく接続することができず、特に、電極パターン13の間隔の狭いものでは、誤接続のおそれがある。
(5)スライダ15の進退動時に、くさび板部20がフラットケーブル11の上を摺動して電極パターン13が不必要に接点21に圧接され、可撓性を有するフラットケーブル11に対するZIFの効果が軽減される。
【0006】
本発明は、作業スペースの少ない電子機器でのフラットケーブルの組み立てが容易で、かつ、機械化が可能であり、また、フラットケーブルの電極パターンと該当するコンタクトの接点とが正しく接続でき、さらに、可撓性を有するフラットケーブルに対するZIFの十分な効果が得られるものを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ハウジング14と、このハウジング14に取り付けられる複数のコンタクト17と、前記ハウジング14に取り付けられた操作レバー16と、この操作レバー16の操作により前記ハウジング14に進退するスライダ15とを具備し、前記スライダ15の進退動によりフラットケーブル11を前記コンタクト17に接離するようにしたフラットケーブル用コネクタにおいて、前記スライダ15と一体のくさび板部20に、前記フラットケーブル11の係止孔49を係止するケーブル係止突起29を形成したことを特徴とするフラットケーブル用コネクタである。
【0008】
さらに詳しくは、前記ハウジング14は、底板部24と、天板部25と、後板部26と、両側の側板部53とで前面を開口した箱状をなし、前記底板部24と天板部25との間に前面の開口から後板部26までケーブル差込みスペース27を形成し、このケーブル差込みスペース27に臨ませて前記コンタクト17を取り付けるための多数のコンタクト差し込み溝18を形成する。
前記コンタクト17は、導電性と弾力性を有する金属の細板を第1ばね部43と第2ばね部44とでS字形に折曲し、このS字形の底部が底板部24のコンタクト差し込み溝18に圧入固定され、このS字形の中間部であって、前記第1ばね部43と第2ばね部44との間に、低い水平部45、上昇する傾斜部46、高い水平部47と続く段差を折曲形成し、このS字形の上部であって、第2ばね部44から前方へ伸びた先端部に、下向きV字形の接点21を形成し、この接点21のある上部と高い水平部47の間の隙間を前記くさび板部20の圧入される挿入口22となす。
前記スライダ15は、肉薄で、先端に丸みをもたせたくさび板部20と、両側の側板部31とを一体に設け、このくさび板部20の上面の両端部に、フラットケーブル11の係止孔49を係合するための上面に丸みをもたせたケーブル係止突起29を設け、このケーブル係止突起29の下面とくさび板部20の上面との間に係止凹部30を形成する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、フラットケーブル用コネクタにおけるスライダと一体のくさび板部に、フラットケーブルの係止孔を係止するケーブル係止突起を形成したので、フラットケーブルを水平の挿入ではなく、スライダの上方からケーブル係止突起に嵌め込み固定でき、水平方向に挿入するのに比較して作業スペースの極めて少ない小型の電子機器の組み立てが可能となるとともに、フラットケーブルの挿入の機械化が可能となる。さらに、フラットケーブルの係止孔をケーブル係止突起に係止するので、コンタクトの挿入口に正しく挿入され、電極パターンと該当する接点とを正しく接続することができる。
このように、本発明によれば、作業スペースの少ない電子機器でのフラットケーブルの組み立てが容易で、かつ、機械化が可能であり、また、フラットケーブルの電極パターンと該当するコンタクトの接点とが正しく接続でき、さらに、可撓性を有するフラットケーブルに対するZIFの十分な効果が得られるという目的を達成することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、ケーブル係止突起は、くさび板部の上面両端部にそれぞれ形成し、このケーブル係止突起の下面とくさび板部の上面との間に外れ防止の係止凹部を形成したので、フラットケーブルは、くさび板部にしっかりと固定され、例えば、フラットケーブルの電極パターンの間隔が0.5mm又はそれ以下の極細のものであっても該当するコンタクトの接点と正しく位置合せができ、確実な接続ができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、フラットケーブル用コネクタにおいて、ハウジングは、底板部と、天板部と、後板部と、両側の側板部とで前面を開口した箱状をなし、底板部と天板部との間に前面の開口から後板部までケーブル差込みスペースを形成し、このケーブル差込みスペースに臨ませて前記コンタクトを取り付けるための多数のコンタクト差し込み溝を形成し、コンタクトは、導電性と弾力性を有する金属の細板を第1ばね部と第2ばね部とでS字形に折曲し、このS字形の底部が底板部のコンタクト差し込み溝に圧入固定され、このS字形の中間部であって、第1ばね部と第2ばね部との間に、低い水平部、上昇する傾斜部、高い水平部と続く段差を折曲形成し、このS字形の上部であって、第2ばね部から前方へ伸びた先端部に、下向きV字形の接点を形成し、この接点のある上部と高い水平部の間の隙間をくさび板部の圧入される挿入口となし、スライダは、肉薄で、先端に丸みをもたせたくさび板部と、両側の側板部とを一体に設け、このくさび板部の上面の両端部に、フラットケーブルの係止孔を係合するための上面に丸みをもたせたケーブル係止突起を設け、このケーブル係止突起の下面とくさび板部の上面との間に係止凹部を形成したので、スライダのくさび板部とともに挿入されるフラットケーブルは、低い水平部の位置では、くさび板部の下面がコンタクトの水平部の上にあり、フラットケーブルの先端部と接点との間に隙間があってまだ接続状態にはなく、上昇する傾斜部の位置では、くさび板部の下面がコンタクトの傾斜部に差し掛かり、フラットケーブルの先端部が接点の位置から僅かな距離eだけ通り過ぎ、フラットケーブルの電極パターンが接点に軽く接触して接続状態を開始し、高い水平部の位置では、くさび板部の下面がコンタクトの傾斜部から高い水平部に載り上がり、くさび板部の先端がコンタクトの挿入口に圧入してフラットケーブルの先端部が接点の位置から距離fだけ通り過ぎ、フラットケーブルの電極パターンが接点に確実に接触して接続状態を保持する。したがって、スライダの進退動時に、くさび板部がフラットケーブルの上を摺動して電極パターンが不必要に接点に圧接されることなく確実に接続され、可撓性を有するフラットケーブルに対するZIFの著しい効果が得られる。また、くさび板部の上面の両端部のケーブル係止突起は丸みをもたせたので、フラットケーブルをスムーズに係脱でき、組立や接続の自動化がよりし易くなる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、前記コンタクトは、導電性と弾力性を有する金属の細板からなり、前方へ伸びた先端部に下向きV字形の接点を形成し、このコンタクトに対峙する底板部の上面に、低い水平部、上昇する傾斜部、高い水平部と続くように段差を形成し、このコンタクトの接点と底板部の上面の高い水平部の間にて前記くさび板部の圧入される挿入口を構成し、前記スライダは、肉薄で、先端に丸みをもたせたくさび板部と、両側の側板部とを一体に設け、このくさび板部の上面の両端部に、フラットケーブルの係止孔を係合するための上面に丸みをもたせたケーブル係止突起を設け、このケーブル係止突起の下面とくさび板部の上面との間に係止凹部を形成したので、低い水平部、上昇する傾斜部、高い水平部と続くように段差を底板部の上面に形成することで、コンタクトの形状を第1ばね部と第2ばね部とでS字形に折曲したり、第1ばね部と第2ばね部との間に、低い水平部、上昇する傾斜部、高い水平部と続く段差を折曲形成したりする必要がないとともに、ハウジングにおける底板部に多数のコンタクト差し込み溝を形成する必要がなく、構造を単純化でき、かつ、寸法誤差も少なくなり、品質のすぐれたものを安価に提供することができる。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、フラットケーブルの係止孔は、電極パターンと同じ銅箔で、エッチングにより加工されており、コンタクトとフラットケーブルの電極の位置ずれが少なくでき、狭いピッチに対応可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ハウジング14と、このハウジング14に取り付けられる複数のコンタクト17と、前記ハウジング14に取り付けられた操作レバー16と、この操作レバー16の操作により前記ハウジング14に進退するスライダ15とを具備し、前記スライダ15の進退動によりフラットケーブル11を前記コンタクト17に接離するようにしたフラットケーブル用コネクタに適用される。
前記スライダ15には、一体のくさび板部20に、前記フラットケーブル11の係止孔49を係止するケーブル係止突起29を形成したことを特徴とする。
【0015】
本発明によるフラットケーブル用コネクタにおいて、前記ハウジング14は、底板部24と、天板部25と、後板部26と、両側の側板部53とで前面を開口した箱状をなし、前記底板部24と天板部25との間に前面の開口から後板部26までケーブル差込みスペース27を形成し、このケーブル差込みスペース27に臨ませて前記コンタクト17を取り付けるための多数のコンタクト差し込み溝18を形成する。
前記コンタクト17は、導電性と弾力性を有する金属の細板を第1ばね部43と第2ばね部44とでS字形に折曲し、このS字形の底部が底板部24のコンタクト差し込み溝18に圧入固定され、このS字形の中間部であって、前記第1ばね部43と第2ばね部44との間に、低い水平部45、上昇する傾斜部46、高い水平部47と続く段差を折曲形成し、このS字形の上部であって、第2ばね部44から前方へ伸びた先端部に、下向きV字形の接点21を形成し、この接点21のある上部と高い水平部47の間の隙間を前記くさび板部20の圧入される挿入口22となす。
前記スライダ15は、肉薄で、先端に丸みをもたせたくさび板部20と、両側の側板部31とを一体に設け、このくさび板部20の上面の両端部に、フラットケーブル11の係止孔49を係合するための上面に丸みをもたせたケーブル係止突起29を設け、このケーブル係止突起29の下面とくさび板部20の上面との間に係止凹部30を形成する。
【実施例1】
【0016】
本発明によるフラットケーブル用コネクタの実施例1を図1、2、3、4、5に基き説明する。
図2において、本発明のフラットケーブル用コネクタは、ハウジング14と、このハウジング14の左右両端に嵌め込まれる2個のレバー支持具23と、ハウジング14に進退するスライダ15と、このスライダ15を進退させる操作レバー16と、ハウジング14に挿入固着される多数個のコンタクト17とからなる。これらの各部品を組立てて操作レバー16を閉じた状態を示す図4において、具体的な寸法は、凡そ横23.6mm×縦3.4mm×奥行き6.6mmである。しかし、この寸法に限定されるものではない。
【0017】
前記ハウジング14は、プラスチックなどの絶縁材料を用い、底板部24と、天板部25と、後板部26と、側板部53とで薄くて細長の前面に開口を有する箱状をなし、底板部24と天板部25との間に前面の開口から後板部26までケーブル差込みスペース27が形成されている。また、前記底板部24の上面、天板部25の下面及び後板部26を貫通して、後方から多数のコンタクト17を差し込むためのコンタクト差し込み溝18が形成されている。前記側板部53の下面には、図3に示すように前記レバー支持具23の内側板部36が圧入固定される支持具差込み溝28が設けられ、この支持具差込み溝28の一部が側面に開口している。
なお、ハウジング14の下面には、プリント基板10の位置合せ孔に嵌合する図示しない2個の位置合せ突起が設けられている
【0018】
前記レバー支持具23は、金属板を外側板部35、底板部37、内側板部36でU字形に折曲したもので、外側板部35には係止長孔38が形成され、また、内側板部36には回動支持孔39が形成され、図3に示すように内側板部36をハウジング14の支持具差込み溝28に挿入することで内側板部36に形成した回動支持孔39が側板部53の側面に露出する。また、レバー支持具23の外側板部35とハウジング14の側板部53との間には、後述するスライダ15の側板部31が嵌め込まれる隙間が形成される。
【0019】
前記コンタクト17は、導電性と弾力性を有する金属の細板を第1ばね部43と第2ばね部44とでS字形に折曲したもので、底部の幅の広い部分がハウジング14における底板部24のコンタクト差し込み溝18に圧入固定され、端部の端子部48が後端部から突出してプリント基板10に接続される。前記第1ばね部43と第2ばね部44との間の中間部には、低い水平部45、上昇する傾斜部46、高い水平部47と続く段部が折曲形成される。第2ばね部44から前方へ屈曲した上部の先端部には、下向きV字形に折曲されて接点21となっている。この接点21のある上部と中間部の高い水平部47の間の隙間が前記くさび板部20の圧入される挿入口22を構成している。
【0020】
前記スライダ15は、プラスチックなどの絶縁材料を用い、肉薄で、先端に丸みをもたせたくさび板部20と、両側の側板部31とを一体に設けたもので、このくさび板部20と側板部31との間には、前記ハウジング14の側板部53に跨って進退するための逃げ溝54が後面から形成されている。また、くさび板部20の上面の両端部には、フラットケーブル11の係止孔49を係合するための上面に丸みをもたせたケーブル係止突起29が設けられ、このケーブル係止突起29の下面とくさび板部20の上面との間に外れ防止の係止凹部30が形成されている。前記側板部31の内側面には、上部と内側部を開口した凹部34が形成され、この凹部34の両側部は、傾斜した引き戻し当接部32と送り出し当接部33となっている。
前記側板部31の側面には、前記レバー支持具23の係止長孔38が係脱するストッパ51とクリック用突起52が設けられている。このうち、ストッパ51は、一方が傾斜面で他方が垂直面をなし、また、クリック用突起52は、両方が傾斜面をなしている。
【0021】
前記操作レバー16は、金属板を折曲形成したもので、細長で水平な操作部55と、両端部から直角に折曲したそれぞれ2個の舌片56、舌片57とからなり、一方の舌片56の下端部を内側へ折曲して回動支点部40とするとともに側面を送り出しカム部42となし、また、他方の舌片57の側面を曲面の引き戻しカム部41としている。
【0022】
前記フラットケーブル11は、フレキシブル絶縁シート12の上に所定(例えば0.5mm)間隔で電極パターン13を形成し、この電極パターン13の先端の一部を露出し、他は絶縁されている。また、電極パターン13の露出した個所の両端部に位置して前記スライダ15のケーブル係止突起29に係合する係止孔49が形成されている。この係止孔49の外周は、電極パターン13と同じ銅箔でエッチング加工により形成され、前記スライダ15のケーブル係止突起29の側壁とは、隙間が生じないように大きさが決められている。
【0023】
以上のような各部品の組立について説明する。
ハウジング14の全てのコンタクト差し込み溝18にコンタクト17をその挿入口22がケーブル差込みスペース27を向くようにして嵌め込み固定する。
図3に示すように、ハウジング14の両側の側板部53における下面の支持具差込み溝28に、それぞれレバー支持具23の内側板部36を下方から圧入固定する。
このレバー支持具23の外側板部35とハウジング14の側板部53の外側との隙間に、スライダ15を嵌め込む。すると、スライダ15のくさび板部20は、ハウジング14の底板部24の上に載り、くさび板部20の先端がハウジング14のケーブル差込みスペース27に臨ませられるとともに、スライダ15の側板部31がレバー支持具23の外側板部35とハウジング14の側板部53の外側との隙間に挿入される。このとき、図5に示すように、側板部31のストッパ51が外側板部35の左端を乗り越えて係止長孔38に係止される。
操作レバー16の両端の舌片56と舌片57を図1(a―2)に示すようにスライダ15の凹部34にそれぞれ挿入する。このとき、舌片56の下端部の回動支点部40を弾性に抗してやや外側に広げながら外側の支持具差込み溝28に沿って圧入すると、回動支点部40が内側板部36の回動支持孔39に一致したところで嵌合する。操作レバー16が直立している状態では舌片56の送り出しカム部42がスライダ15における凹部34の送り出し当接部33に当接しているため、スライダ15は、引き出された状態にある。
【0024】
以上のような構成によるフラットケーブル用コネクタの動作を説明する。
図1(a―1)及び(a−2)に示すように、操作レバー16が直立してスライダ15がハウジング14から引き出された状態では、くさび板部20の上面のケーブル係止突起29がハウジング14のケーブル差込みスペース27より外側に位置しているので、この左右のケーブル係止突起29にフラットケーブル11を上から被せるようにして係止孔49を嵌め込んでやや引くことにより、係止孔49をケーブル係止突起29の係止凹部30に係止させる。
この図1(a―1)の状態では、くさび板部20の下面がコンタクト17の水平部45の上にあり、フラットケーブル11の先端部と接点21との間に隙間dがあってまだ接続状態にはない。
【0025】
この状態から図1(b)に示すように、操作レバー16の操作部55を図中右方向に倒すと、操作レバー16の回動支点部40と回動支持孔39の係合点を支点として回動し、舌片57の引き戻しカム部41が引き戻し当接部32に当接してスライダ15を図中右方向に移動させ、くさび板部20をケーブル差込みスペース27へ導き入れる。
この図1(b)の状態では、くさび板部20の下面がコンタクト17の傾斜部46に差し掛かり、フラットケーブル11の先端部が接点21の位置から僅かな距離eだけ通り過ぎ、フラットケーブル11の電極パターン13が接点21に軽く接触して接続状態を開始する。
スライダ15の移動にともない、レバー支持具23の図中左側の立ち上がり部がクリック用突起52の傾斜面に乗り上がるのでクリック感が得られる。
【0026】
図1(c―1)及び(c−2)のように、さらに操作レバー16を略水平状態になるまで前方へ押し倒すと、引き戻しカム部41と引き戻し当接部32が接触しながらスライダ15が距離gだけ移動してハウジング14の前面に到達する。
この図1(c―1)の状態では、くさび板部20の下面がコンタクト17の傾斜部46から高い水平部47に載り上がり、くさび板部20の先端がコンタクト17の挿入口22に圧入してフラットケーブル11の先端部が接点21の位置から距離fだけ通り過ぎ、フラットケーブル11の電極パターン13が接点21に確実に接触して接続状態を保持する。
スライダ15の移動にともない、レバー支持具23の図中左側の立ち上がり部がクリック用突起52の傾斜面を乗り越えるのでクリック感が得られるとともに、スライダ15の位置を保持する。
【0027】
フラットケーブル11をフラットケーブル用コネクタから取り出すときには、上記方法と逆に操作レバー16を図1(c―1)及び(c−2)の状態から(b)、(a−1)(a−2)のように持ち上げると、操作レバー16の舌片56における送り出しカム部42が送り出し当接部33に当接して15を図中左方向に引き出す。スライダ15が完全に引き出されたらフラットケーブル11を上方向に持ち上げると、フラットケーブル11は、フラットケーブル用コネクタから取り出すことができる。
フラットケーブル11を組み付けないコネクタ単品状態では、スライダ15とコンタクト17は接触させてあり、コンタクト17の接点21に酸化膜の付着及び異物付着を防止している。
【実施例2】
【0028】
前記実施例1では、コンタクト17は、導電性と弾力性を有する金属の細板を第1ばね部43と第2ばね部44とでS字形に折曲し、底部が底板部24のコンタクト差し込み溝18に圧入固定され、前記第1ばね部43と第2ばね部44との間には、低い水平部45、上昇する傾斜部46、高い水平部47と続くように折曲され、第2ばね部44から前方へ伸びた先端部には、下向きV字形の接点21が形成され、この接点21のある上部と水平部47の間の隙間で前記くさび板部20の圧入される挿入口22を構成した。このため、スライダ15のくさび板部20が挿入口22に圧入されると、第1ばね部43は狭まるように、また、第2ばね部44は開くように湾曲する。したがって、スライダ15のくさび板部20は、直進して挿入口22の間にスムーズに挿入される。
【0029】
しかし、本発明は、これに限られるものではなく、コンタクト17は、導電性と弾力性を有する金属の細板にて第2ばね部44と接点21だけを有する上部と、この上部から端子部48に直接連続する構成とし、また、このコンタクト17に対峙する底板部24の上面に、低い水平部45、上昇する傾斜部46、高い水平部47と続く段差を成型時に形成し、コンタクト17の接点21と底板部24の高い水平部47の間に前記くさび板部20の圧入される挿入口22を構成するようにしてもよい。この場合、スライダ15のくさび板部20が挿入口22に圧入されると、コンタクト17のみが第2ばね部44にて上昇するように湾曲し、水平部47は固定したままとなる。このとき、くさび板部20の先端部が挿入口22の間にスムーズに挿入されるには、傾斜部46から高い水平部47に沿って上向きに湾曲する必要があるので、スライダ15のくさび板部20は、弾力性を有する構造又は材料とすることが必要である。
【0030】
前記実施例1では、図2に示すように、フラットケーブル11の係止孔49の全外周の内側縁まで電極パターン13と同じ銅箔50を形成した。しかし、これに限られるものではなく、図6に示すように、係止孔49の全外周に銅箔50を形成するが、前記係止孔49の側面60は、内側縁まで銅箔とし、前後面61は、内側縁の一部をフレキシブル絶縁シート12の露出部分とし、この露出部分がスライダ15のケーブル係止突起29と接することでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるフラットケーブル用コネクタによりフラットケーブル11をコンタクト17に接離する動作順序を示すもので、(a−1)は、操作レバー16を立ち上げてスライダ15を引き出した状態の図5におけるA―A線断面図、(a−2)は、操作レバー16を立ち上げてスライダ15を引き出した状態の図5におけるB―B線断面図、(b)は、図5において操作レバー16を途中まで倒してスライダ15を途中まで移動させた状態の図5におけるA―A線断面図、(c−1)は、操作レバー16を倒してスライダ15を引き戻した状態の図4におけるD―D線断面図、(c−2)は、操作レバー16を倒してスライダ15を引き戻した状態の図4におけるE―E線断面図である。
【図2】本発明によるフラットケーブル用コネクタの実施例1を示す一部切り欠いた分解斜視図である。
【図3】図5における操作レバー16を立ち上げてスライダ15を引き出した状態の図5におけるC―C線断面図である。
【図4】本発明の各部品を組立てたフラットケーブル用コネクタにおいて、操作レバー16を倒してスライダ15を引き戻した状態の全体の斜視図である。
【図5】本発明の各部品を組立てたフラットケーブル用コネクタにおいて、操作レバー16を立ち上げてスライダ15を引き出した状態の全体の斜視図である。
【図6】フラットケーブル11の他の実施例を示す斜視図である。
【図7】従来のフラットケーブル用コネクタを示すもので、(a)は、スライダ15を引き出した状態の断面図、(b)は、スライダ15を引き戻した状態の断面図、(c)は、フラットケーブル11の平面図である。
【符号の説明】
【0032】
10…プリント基板、11…フラットケーブル、12…フレキシブル絶縁シート、13…電極パターン、14…ハウジング、15…スライダ、16…操作レバー、17…コンタクト、18…コンタクト差し込み溝、19…フラットケーブル差込口、20…くさび板部、21…接点、22…挿入口、23…レバー支持具、24…底板部、25…天板部、26…後板部、27…ケーブル差込みスペース、28…支持具差込み溝、29…ケーブル係止突起、30…係止凹部、31…側板部、32…引き戻し当接部、33…送り出し当接部、34…凹部、35…外側板部、36…内側板部、37…底板部、38…係止長孔、39…回動支持孔、40…回動支点部、41…引き戻しカム部、42…送り出しカム部、43…第1ばね部、44…第2ばね部、45…低い水平部、46…傾斜部、47…高い水平部、48…端子部、49…係止孔、50…補強箔、51…ストッパ、52…クリック用突起、53…側板部、54…逃げ溝、55…操作部、56…舌片、57…舌片、60…側面、61…前後面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングに取り付けられる複数のコンタクトと、前記ハウジングに取り付けられた操作レバーと、この操作レバーの操作により前記ハウジングに進退するスライダとを具備し、前記スライダの進退動によりフラットケーブルを前記コンタクトに接離するようにしたフラットケーブル用コネクタにおいて、前記スライダと一体のくさび板部に、前記フラットケーブルの係止孔を係止するケーブル係止突起を形成したことを特徴とするフラットケーブル用コネクタ。
【請求項2】
ケーブル係止突起は、くさび板部の上面両端部にそれぞれ形成し、このケーブル係止突起の下面とくさび板部の上面との間に外れ防止の係止凹部を形成したことを特徴とする請求項1記載のフラットケーブル用コネクタ。
【請求項3】
ハウジングと、このハウジングに取り付けられる複数のコンタクトと、前記ハウジングに取り付けられた操作レバーと、この操作レバーの操作により前記ハウジングに進退するスライダとを具備し、前記スライダの進退動によりフラットケーブルを前記コンタクトに接離するようにしたフラットケーブル用コネクタにおいて、前記ハウジングは、底板部と、天板部と、後板部と、両側の側板部とで前面を開口した箱状をなし、前記底板部と天板部との間に前面の開口から後板部までケーブル差込みスペースを形成し、このケーブル差込みスペースに臨ませて前記コンタクトを取り付けるための多数のコンタクト差し込み溝を形成し、前記コンタクトは、導電性と弾力性を有する金属の細板を第1ばね部と第2ばね部とでS字形に折曲し、このS字形の底部が底板部のコンタクト差し込み溝に圧入固定され、このS字形の中間部であって、前記第1ばね部と第2ばね部との間に、低い水平部、上昇する傾斜部、高い水平部と続く段差を折曲形成し、このS字形の上部であって、第2ばね部から前方へ伸びた先端部に、下向きV字形の接点を形成し、この接点のある上部と高い水平部の間の隙間を前記くさび板部の圧入される挿入口となし、前記スライダは、肉薄で、先端に丸みをもたせたくさび板部と、両側の側板部とを一体に設け、このくさび板部の上面の両端部に、フラットケーブルの係止孔を係合するための上面に丸みをもたせたケーブル係止突起を設け、このケーブル係止突起の下面とくさび板部の上面との間に係止凹部を形成したことを特徴とするフラットケーブル用コネクタ。
【請求項4】
ハウジングと、このハウジングに取り付けられる複数のコンタクトと、前記ハウジングに取り付けられた操作レバーと、この操作レバーの操作により前記ハウジングに進退するスライダとを具備し、前記スライダの進退動によりフラットケーブルを前記コンタクトに接離するようにしたフラットケーブル用コネクタにおいて、前記ハウジングは、底板部と、天板部と、後板部と、両側の側板部とで前面を開口した箱状をなし、前記底板部と天板部との間に前面の開口から後板部までケーブル差込みスペースを形成し、このケーブル差込みスペースに臨ませ、かつ、天板部の下面に前記コンタクトを取り付けるための多数のコンタクト差し込み溝を形成し、前記コンタクトは、導電性と弾力性を有する金属の細板からなり、前方へ伸びた先端部に下向きV字形の接点を形成し、このコンタクトに対峙する底板部の上面に、低い水平部、上昇する傾斜部、高い水平部と続くように段差を形成し、このコンタクトの接点と底板部の上面の高い水平部の間にて前記くさび板部の圧入される挿入口を構成し、前記スライダは、肉薄で、先端に丸みをもたせたくさび板部と、両側の側板部とを一体に設け、このくさび板部の上面の両端部に、フラットケーブルの係止孔を係合するための上面に丸みをもたせたケーブル係止突起を設け、このケーブル係止突起の下面とくさび板部の上面との間に係止凹部を形成したことを特徴とするフラットケーブル用コネクタ。
【請求項5】
フラットケーブルの係止孔は、少なくともスライダの係止突起と接する側面が銅箔で形成されているフラットケーブルと組み合わされることを特徴とする請求項1又は2記載のフラットケーブル用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−123018(P2007−123018A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312846(P2005−312846)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】