フラットディップ装置およびフラットディップ装置のはんだ付け方法
【課題】不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができるはんだ付け装置を実現すること。
【解決手段】搬送コンベア107を被うチャンバ体106を搬送コンベア107と一体に設け、チャンバ体106にはその内部に不活性ガス7を供給する不活性ガス供給ノズル114を設け、一体に設けられた搬送コンベア107とチャンバ体106とをはんだ槽109の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させるアクチュエータ118,119を設け、制御装置が、アクチュエータ118,119の上下方向の移動量を制御して搬送コンベア107により搬送されるプリント配線板3の被はんだ付け面を平面フロー波6に接触させるように制御する構成を特徴とする。
【解決手段】搬送コンベア107を被うチャンバ体106を搬送コンベア107と一体に設け、チャンバ体106にはその内部に不活性ガス7を供給する不活性ガス供給ノズル114を設け、一体に設けられた搬送コンベア107とチャンバ体106とをはんだ槽109の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させるアクチュエータ118,119を設け、制御装置が、アクチュエータ118,119の上下方向の移動量を制御して搬送コンベア107により搬送されるプリント配線板3の被はんだ付け面を平面フロー波6に接触させるように制御する構成を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ槽内の溶融はんだを板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波に搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を接触させてはんだ付けを行うフラットディップ装置およびフラットディップ装置のはんだ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を搭載したプリント配線板をはんだ付けする技術として、電子部品のはんだ付けリードや端子とプリント配線板のはんだ付けランドすなわち被はんだ付け部に溶融はんだを供給するいわゆるフローはんだ付け技術がある。
【0003】
このフローはんだ付け技術を一瞥するには、非特許文献1として挙げた「電子技術1981年6月号 臨時増刊号(1981.Vol.23 No.7)」が便利である。その第48頁の「6.はんだ槽」の項において「図15」を参照しつつ簡便にまとめられている。この中で、「図15(f)」の「フローディップ式」は、噴流式とディップ式の中間の方式と説明されている。即ち、噴流式のようにポンプによりはんだ槽内の溶融はんだを噴流させて噴流波を形成しておき、ディップ式のようにプリント基板を図15(a)(b)の矢印に示されるように上下移動させながら搬送して、該プリント基板を噴流波に浸してはんだ付けをする方式である。
【0004】
また、上記非特許文献1の中で、「図15(f)」の「フローディップ式」では、「部品リードの長いもののはんだ付けに効果」があることが説明されている。これは、プリント配線板が溶融はんだ液面に接触しても該溶融はんだの温度が低下することなく安定しており、その溶融はんだ液面も「たえずきれいなはんだ面を保」ち得ることが可能で「噴流はんだ面も安定」しているからである。そして、部品リードが長くても溶融はんだを噴流する吹き口に該部品リードが当接するなどの不具合を生じないからである。
【0005】
また、このフローディップ式のはんだ付け方法を用いてはんだ付け性を一層向上させる技術として、特許文献1の技術がある。
【0006】
この特許文献1の技術は、プリント配線板を溶融はんだ液面に接触させる際に、該プリント配線板を傾斜させることでその一端から接触を開始して徐々に面接触へ移行し、該プリント配線板と溶融はんだ液面との間に溜まるガスを逃散させるものである。続いて、溶融はんだ液面方向にプリント配線板を移動させることで被はんだ付け部に溶融はんだの動圧を加えて確実にはんだ濡れを生じさせる。そして、最後にプリント配線板の一端から徐々に該プリント配線板を溶融はんだ液面から離脱させ、ピールバック作用により被はんだ付け部のはんだ量を適正化すると供に隣り合う被はんだ付け部間においてはんだブリッジを生じないようにする技術である。
【0007】
一方で、はんだ付けを行う際に、特許文献2に開示されているように、非酸化性の不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気中ではんだ付けを行う技術が用いられている。これにより、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中では被はんだ付け部の酸化を抑制することが可能であり、溶融はんだの表面張力も低下するために、被はんだ付け部へのはんだの濡れ性を大幅に改善することが可能であり、微細な被はんだ付け部への溶融はんだの供給も容易に行うことが可能となっていわゆるマイクロソルダリングも可能となるからである。
【0008】
なお、この特許文献2の技術では、はんだ付け性を改善するために被はんだ付け部に予め塗布されるフラックスの塗布量を激減させることが可能となるため、はんだ付け後のプリント配線板に残るフラックス残渣が殆ど無く、高信頼プリント配線板のはんだ付け実装において必要とされるプリント配線板の洗浄(フラックス残渣の除去)が不要となる。
【0009】
また、はんだ付け装置においてプリント配線板を搬送する搬送コンベアとしては、回動走行する平行2条のチェーンのピン上にプリント配線板の両側端部を保持させる搬送コンベアや、特許文献3に説明されているような回動走行するチェーンに保持爪を設けてプリント配線板を保持する搬送コンベアがある。また、キャリアと呼ぶプリント配線板を保持する専用治具にプリント配線板を保持させ、このキャリアを搬送コンベアで搬送させるものもある。なお、前者をキャリアレス方式と呼称し、後者をキャリア方式と呼称することもある。
【0010】
参考までに、特許文献4には、はんだ付けを行う際の各工程ごとに搬送コンベアを分割して設けて、各工程ごとに最適な条件設定を行えるようにした技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献5には、溶融はんだを噴流させる際に該溶融はんだの位置エネルギーにより噴流させて「半田波の波高」を安定化させた技術が開示されている。
【0012】
さらに、特許文献6には、プリント配線板のはんだ付け部分に限定した領域にのみ溶融はんだを噴流する構成として部分はんだ付けを行ういわゆるシルバニア方式についての技術が開示されている。
【非特許文献1】電子技術1981年6月号 臨時増刊号(1981.Vol.23 No.7)
【特許文献1】特開昭59−76496号公報
【特許文献2】特開平6−198486号公報
【特許文献3】特開平1−133668号公報
【特許文献4】特開昭49−117971号公報
【特許文献5】特開昭53−57156号公報
【特許文献6】英国特許第801510号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、不活性ガス雰囲気中ではんだ付けを行う特許文献2の技術では、はんだ付けの際に非特許文献1に挙げた「(c)フロー式」や「(d)ウェーブ式」「(e)二段ウェーブ式」「(g)カスケード式」の溶融はんだの噴流波が使用される。その理由は、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中を保持するチャンバ体内におけるプリント配線板の搬送が直線的であり、チャンバ体内に搬送コンベアを容易に設けることができるからである。
【0014】
そのため、「(f)フローディップ式」で特許文献1に説明されるような複雑な搬送手段が必要となるはんだ付け技術においては、はんだ付けを不活性ガス雰囲気中で行うはんだ付け装置は存在しなかった。
【0015】
その理由は、特許文献1に挙げられるような複雑な搬送手段を低酸素濃度の不活性ガス雰囲気を保持するチャンバ体内に設けようとすると該チャンバ体の容積が極端に大きくなり、目的とする酸素濃度(例えば100ppm)を維持するために必要となる不活性ガスの単位時間当たりの供給流量を極端に大きくしなければならないからである。
【0016】
また、前記のような搬送手段をチャンバ体の外に設け、チャンバ体を貫通するロッド等によりチャンバ体内のプリント配線板を上下に移動させようとしても、プリント配線板が上下に移動する分のチャンバ体容積が必要となる他にもロッドがチャンバ体を貫通する部分において大気が侵入し易くなり、やはり目的とする酸素濃度を維持するために必要となる不活性ガスの単位時間当たりの供給流量が大きくなってしまう。なお、不活性ガスの単位時間当たりの供給流量が大きいということは、はんだ付け実装生産のコストを増大させてしまうことになる。
【0017】
さらに、部品リードの長い部品を搭載したプリント配線板すなわちプリント配線板が溶融はんだと接触する面(被はんだ付け面)側に長いリード線が飛び出しているプリント配線板のはんだ付けは、特許文献2の技術でははんだ付けを行うことができない。このようなプリント配線板のはんだ付けは、どうしてもフローディップ式によるはんだ付けを行う必要がある。しかし、このフローディップ式で低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中において低コストのはんだ付けを行うはんだ付け装置は上記理由により存在しない。
【0018】
また、既にリフローはんだ付けが行われたプリント配線板にリードの長いコネクタ等の電子部品をはんだ付けする際に、当該の被はんだ付け部やその周辺領域のみに開口を有するマスクプレートを嵌め合わせて(図4(b)参照)フローディップ式のはんだ付けにより部分はんだ付けが行われているが、これを低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で行うことができるはんだ付け装置も上記理由により存在しなかった。そのため、被はんだ付け部に窒素ガスを吹き付けながらはんだ鏝ロボットによるはんだ付けが行われたりしていた。そのため、このコネクタ等のはんだ付け実装の生産性が低かった。
【0019】
なお、特許文献6に示されたシルバニア方式は、プリント配線板の必要とする領域にのみ溶融はんだを供給して部分はんだ付けを行うことができる技術であるが、次の(1)〜(4)のような短所も有している。
【0020】
(1)設備の機構が複雑であるために、機構の調節や故障時の復旧に多大の時間を要し、それが原因で生産性が低下する。
【0021】
(2)はんだ付けを行うプリント配線板の種類毎に専用の吹き口(ノズル)が必要であり、この吹き口体の交換に要する作業時間(約60分程度)が長いために、はんだ付け装置の休止時間が長くなって生産性が低下する。
【0022】
(3)多数の吹き口(ノズル)があるために、その清掃に多大な時間(例えば、約30分程度)を要し、生産性を低下させる要因になる。
【0023】
(4)前記(2)の専用の吹き口(ノズル)はプリント配線板の種類毎に必要であるが、この専用の吹き口(ノズル)が大変に高価(例えば、約100万円/1吹き口)である。
【0024】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができるはんだ付け装置を実現することにある。その結果、プリント配線板に搭載された電子部品のリードが長い場合(これを通常は基板下寸法が長いと言う)においても、また、マスクプレートを使用した部分はんだ付けにおいても、高品質のはんだ付けを低コストで行うことができるようにすることにある。また、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中において高い生産性で部分はんだ付けをできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、チャンバ体内の容積を拡大すること無く最小のままとし、にもかかわらずプリント配線板の上下方向の移動を伴うフローディップ式のはんだ付けを行うことができるように構成したところに特徴がある。なお、フローディップ式のはんだ付けを行う装置は、噴流波の液面が平面状すなわちフラットであることから、本発明の名称のようにフラットディップ装置と呼称されている。
【0026】
(1)すなわち、加熱されて溶融したはんだを収容するはんだ槽の該溶融はんだ液面上方に該溶融はんだのはんだ付けを行おうとする板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい平面状の溶融はんだの噴流波を形成する吹き口体の吹き口を設ける。
【0027】
他方で前記板状の被はんだ付けワークの搬送コンベアと該搬送コンベアを覆うチャンバ体とを一体に設ける。そしてこのチャンバ体の前記噴流波を望む部分には前記吹き口の平面形状よりも大きい開口を設けると供に該開口には前記チャンバ体の外側に延びるスカート部を設ける。また前記チャンバ体には前記板状の被はんだ付けワークの搬入口と搬出口とを設ける。さらに前記チャンバ体にはその内部に不活性ガスを供給する不活性ガス吐出手段を設ける。
【0028】
そして、前記搬送コンベアと一体に設けられたチャンバ体のスカート部を前記はんだ槽の吹き口体を囲んで前記はんだ槽内の溶融はんだ中に挿入されて成ると供に前記一体の搬送コンベアとチャンバ体とを前記はんだ槽の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させるアクチュエータを設ける。さらに前記アクチュエータの上下方向の移動量を制御して前記板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を前記平面状の溶融はんだの噴流波に面接触させる制御装置を設けるように構成する。
【0029】
これにより、チャンバ体内においてプリント配線板を上下方向に移動させる必要がなくなり、チャンバ体容積を拡大することなく最小の容積のままでフローディップ式のはんだ付けを低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で行うことができるようになる。
【0030】
(2)また、前記(1)の構成において、不活性ガス供給流量を調節する手段と該供給流量を制御する制御手段とを有すると供に、この制御手段は搬送コンベアとチャンバ体とを一体に下方へ移動させる場合に前記不活性ガス供給流量を低下あるいは停止させるプログラムまたはシーケンスを有するように構成する。
【0031】
すなわち、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に下方へ移動させる場合には、スカート部が溶融はんだ中に更に挿入されるためにチャンバ体内の容積が減少し、該チャンバ体内の不活性ガスが搬入口および搬出口から吐き出される。したがって、この期間においては、チャンバ体内に供給する不活性ガス供給流量を低下あるいは停止させても該チャンバ体内に大気が侵入することがなく、酸素濃度の上昇を生じることもない。
【0032】
(3)また、前記(1)または(2)の構成において、不活性ガス供給流量を調節する手段と該供給流量を制御する制御手段とを有すると供に、この制御手段は搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方へ移動させる場合に前記不活性ガス供給流量を増加させるプログラムまたはシーケンスを有するように構成する。
【0033】
すなわち、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方へ移動させる場合には、前記(2)とは逆にチャンバ体内の容積が増加し、チャンバ体外の大気が該チャンバ体の搬入口および搬出口から吸い込まれることになる。したがって、この期間についてはチャンバ体内への不活性ガス供給流量を増加させることで、該チャンバ体内への大気の侵入を防止することができるようになり、酸素濃度の上昇を生じることもない。
【0034】
この(2)および(3)は呼吸現象であり、この呼吸量(チャンバ体容積の増減)を打ち消すように不活性ガス供給流量を増減制御することにより、不活性ガス消費量を最小にしつつチャンバ体内への大気の侵入を防止することができるようになる。
【0035】
(4)また、前記(2)または(3)の構成において、不活性ガス吐出手段を複数有し、不活性ガス供給流量を低下あるいは停止しまたは増加させる不活性ガス吐出手段を選択的に行うプログラムまたはシーケンスを有するように構成する。これにより、酸素濃度を増加させるチャンバ体内の不必要な雰囲気流動を生じ難くすることができるようになる。
【0036】
(5)また、前記(1)〜(4)の構成において、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方へ移動させる場合にのみチャンバ体の搬入口および搬出口を閉鎖する開閉手段を有するように構成する。これにより、呼吸現象を大幅に抑制することができるようになる。
【0037】
(6)また、前記(1)〜(4)の構成において、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方向あるいは下方向に移動させた場合に変化するチャンバ体内容積とは逆に容積が変化する連動可変容積手段を有するように構成する。これにより、呼吸現象すなわちチャンバ体容積の変化を打ち消すことができるようになり、チャンバ体の搬入口や搬出口において呼吸現象を生じることがなくなる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができるはんだ付け装置を実現することができる。その結果、搭載されている電子部品のリードが長くプリント配線板の基板下寸法が長いプリント配線板であっても、不活性ガス雰囲気中でフローディップはんだ付けを行うことができるようになる。しかも、不活性ガスの単位時間当たりの供給流量も少なくて済むので、不活性ガス雰囲気中でのはんだ付け実装に伴う生産コストが通常の生産コストよりも大きくなることがない。
【0039】
このため、既にリフローはんだ付けが行われたプリント配線板にリードの長いコネクタ等の電子部品をはんだ付けする際に、当該の被はんだ付け部やその周辺領域のみに開口を有するマスクプレートを嵌め合わせておくことにより、本発明のフラットディップ装置を用いて部分はんだ付けを行うこともできる。
【0040】
したがって、従来のようにはんだ鏝ロボットを使用することなく、各はんだ付け領域の一括したはんだ付けを行うことができるようになるので、その生産性を大幅に向上させることができる。
【0041】
また、通常のフローディップはんだ付け作業とマスクプレートを使用しての部分はんだ付け作業との混流はんだ付け作業が可能であるので、生産計画によってはんだ付けを行うプリント配線板の種類が変わってもそのリードタイムは皆無であり、はんだ付けの生産性を極めて高く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
本発明のフラットディップ装置は、不活性ガス雰囲気中でフローディップはんだ付け作業を行う装置であり、つぎのように実現することができる。なお、通常のはんだ付け装置は、プリント配線板ひいては被はんだ付け部(領域)の予備加熱工程とはんだ付け工程とから構成されている。また、予備加熱工程の前にフラックス塗布工程を設ける。これらについては周知であるので、以下においては、本発明の構成が適用される工程であるはんだ付け工程を中心に説明する。
【0043】
<1.基本的な構成>
図1は、本発明のフラットディップ装置の例を説明する図であり、その側断面を示す図に対応する。
【0044】
図1に示すように、本実施形態のフラットディップ装置は、予備加熱工程1とはんだ付け工程2とから構成され、それぞれにプリント配線板を搬送する搬送コンベア101,107を有している。
【0045】
予備加熱工程1は4つの加熱ゾーンに分割され、それぞれに赤外線や熱風あるいはそれらを併用したヒータ102を設けてある。なお、ヒータ102に用いる赤外線ヒータの表面温度や熱風ヒータの熱風温度は、図示しない温度制御装置により指示し設定することが可能である。
【0046】
103は予備加熱工程1のチャンバ体である。このチャンバ体103は、プリント配線板の予備加熱を均一に促進させる手段であり、搬入口104と搬出口105とを備えている。
【0047】
なお、予備加熱工程1の搬送コンベア101は、プリント配線板3を矢印I方向に搬送するものであり、その搬送の開始と停止、搬送方向、搬送速度等は後述の制御装置301よって制御される。なお、4はマスクプレートであり、プリント配線板3をスポット的及び部分的はんだ付けをする場合に使用する。なお、詳細は図4(b)に示す。
【0048】
また、本発明が適用されるはんだ付け工程2は、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気すなわち窒素ガス雰囲気を保持するためのチャンバ体106に覆われ、このチャンバ体106とプリント配線板の搬送コンベア107とが支持部材120により一体に設けられている。チャンバ体106の底部には開口が設けられ、この開口には下方へ延びるスカート部108が設けられている。そして、このスカート部108をはんだ槽109に設けられた吹き口体110周囲位置の溶融はんだ中に挿入することで、この開口の封止性を得ている。
【0049】
はんだ槽109には溶融はんだ5が収容され、図示しないヒータおよび温度センサそして温度制御装置とにより予め決めた所定の温度の溶融状態に保持されている。また、はんだ槽109内には溶融はんだを吹き口体110ひいてはその吹き口111に供給するポンプ112を設けてある。この吹き口体110の吹き口の大きさは、被はんだ付けワークであるプリント配線板3の平面形状よりも大きい開口であり、ポンプ112により供給された溶融はんだがこの吹き口111から溢流する際に該吹き口111上に平面状の噴流波すなわち平面フロー波6を形成する。なお、整流板113は溶融はんだの流れを整える手段である。
【0050】
また、ポンプ112としては、図示しないモータにより回転駆動される遠心力ポンプが使用され、該モータの回転速度を図示しない速度制御装置により制御する構成である。なお、電磁ポンプを使用することもできる。さらに、溶融はんだを吹き口体へ供給する手段として、特許文献5に説明されるような位置エネルギーを利用した手段を用いることにより、平面フロー波の波高や液面状態を一層安定化させることができる。
【0051】
一方、チャンバ体106内に低酸素濃度の不活性ガス雰囲気を形成するために、窒素ガス7の供給ノズル114a〜114hが複数(図1の例では8本)設けてある。また、チャンバ体106内の搬送コンベア107に沿ってすなわちプリント配線板の搬送方向に沿って、該方向と直交する向きに板状部材すなわち抑止板115を並べてラビリンスシールを構成し、チャンバ体106に設けられた搬入口116および搬出口117を通して大気が侵入することを抑制し、逆にチャンバ体106内の雰囲気がチャンバ体106外へ流出することを抑制している。特に、このラビリンスシールは、搬入口116および搬出口117に集中して設けてラビリンスシール部115Aを構成している。なお、抑止板115の先端にのれんを吊り下げて、搬入口116や搬出口117の開口面積を一層小さくすることも可能であり、ラビリンス部120の作用を一層強めることが可能である。
【0052】
そして、この一体に構成された搬送コンベア107とチャンバ体106とは、搬入口116側の第1のアクチュエータ118と搬出口117側の第2のアクチュエータ119とにより上下方向(矢印III,IV方向)にそれぞれ独立して移動できるように構成し、搬送コンベア107に保持されたプリント配線板3を各種の姿態(傾斜状態等の姿勢)で平面フロー波6に接触させることができるように構成してある。したがって、この上下方向の移動によりチャンバ体106のスカート部108がはんだ槽109内の溶融はんだ5から抜け出ることがないように該スカート部108の長さが選定される。
【0053】
なお、はんだ付け工程2の搬送コンベア107は、プリント配線板3を矢印II方向に搬送するものであり、その搬送の開始と停止、搬送方向、搬送速度等は後述の制御装置301によって制御される。
【0054】
図2は、図1の構成において設けられる窒素ガス供給系を示すシンボル図である。
【0055】
図2において、201は窒素ガス発生装置である。図2に示すように、窒素ガスは窒素ガス発生装置201から供給され、開閉弁202を通ってフィルタ203で不純物を除去した後に圧力制御弁204により安定した圧力で窒素ガスを供給する。そして、2系統に分けられたそれぞれの流路に流量調節弁205,206と流量計207,208とを設け、図1の搬入口116および搬出口117に近接する4本のノズルグループ209(図1に示したノズル114a〜d)とはんだ槽109に近接する4本のノズルグループ210(図1に示したノズル114e〜h)とに窒素ガスを供給する構成である。なお、流量調節弁205,206は後述する制御装置301より遠隔制御が可能である。
【0056】
図3は、図1の構成において設けられる主要制御系を示すブロック図であり、図1,図2と同一のものには同一の符号を付してある。
【0057】
図3に示すように、各搬送コンベア101,107や各アクチュエータ118,119、流量調節弁205,206、さらにポンプ112のポンプ用モータ304等は、コンピュータシステムにより構成された制御装置301により制御する。即ち、制御装置301は、図示しないCPU,RAM,ROM,外部記憶装置,入出力ポート等を有し、上記制御は、ROMや外部記憶装置に格納されるソフトウェアをCPUがRAM上に読み出す等して実行することにより実現できる。
【0058】
また、制御装置301には、LCD等の表示部302とキーボード,マウス等の指示操作部303とを備えている。そして、図示しない入出力ポートから駆動装置305〜311を介して各搬送コンベア101,107、各アクチュエータ118,119、流量調節弁205,206、ポンプ112のポンプ用モータ304等の作動を制御する仕組みである。
【0059】
駆動装置305〜311は、被制御対象が電動の場合はその出力を電力駆動回路で構成し、空気圧や油圧等の流体圧アクチュエータの場合はその出力を流体駆動回路で構成する。なお、制御装置301の入出力ポートと駆動装置305〜311のインターフェイスは双方向インターフェイスであり、その通信により指示制御量の送信と現在制御量の受信とが可能な構成である。また、以上に説明したような各種の制御対象(各搬送コンベア101,107、各アクチュエータ118,119、流量調節弁205,206、ポンプ112のポンプ用モータ304等)は、現在制御量を検出するセンサを備えている。
【0060】
<2.作動例>
図4は、図1に示したはんだ付け装置におけるはんだ付け時の動作について説明する図である。特に、図4(a)は、図1に示したはんだ付け装置において第1のアクチュエータ118と第2のアクチュエータ119を駆動することで一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106とを矢印III,IV方向へ下降させ、プリント配線板3と平面フロー波6とを接触させた状態を説明する図である。この接触状態において搬送コンベア107を駆動し、プリント配線板3を矢印II方向に(往復)移動させることもできる。
【0061】
図4(a)に示すように、予備加熱工程1のチャンバ体103とはんだ付け工程2のチャンバ体106とを分離し、さらにはんだ付け工程2の搬送コンベア107とチャンバ体106とを一体にして移動させるように構成したことにより、はんだ付け工程2のチャンバ体106内容積を拡大することなくフローディップ式のはんだ付け作業を行うことができるようになる。
【0062】
そのため、チャンバ体106に供給する窒素ガス7の単位時間当たりの供給流量も増大させる必要がなく、チャンバ体106の容積に見合った少ない流量で済む。したがって、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中でのフローディップはんだ付け作業を低ランニングコストで行うことができるようになる。
【0063】
また、図4(b)は、部分はんだ付けを行うためにプリント配線板にマスクプレートを嵌め合わせた態様を説明する図である。
【0064】
図4(b)に示すように、スポット的なフローはんだ付けを必要とする場合は、フローはんだ付け個所のみをくり抜いてあるパレット(マスクプレート)4に基板(プリント配線板)3を乗せて投入することで、スポット及び部分的はんだ付けが可能になる。
【0065】
<3.プリント配線板の接液作業例>
図5,図6は、プリント配線板の(平面フロー波から見た)上下移動と横移動とによりプリント配線板が平面フロー波にどのように接液されてはんだ付けが行われるかを説明する図である。
【0066】
なお、プリント配線板3の上下移動は図1,図4(a)に示した第1のアクチュエータ118と第2のアクチュエータ119により行われ、プリント配線板3の横移動は図1,図4(a)に示した搬送コンベア107により行われる。そして、これらの制御量の方向や速度は、図3に示した制御装置301により行われる。
【0067】
また、図5の(1)〜(4)と図6の(5)〜(7)は連続する工程を説明するものである。
【0068】
この例では、プリント配線板3にマスクプレート4を嵌め合わせて部分はんだ付けを行う例を示しているが、マスクプレート4が無い場合においても同様である。なお、マスクプレート4としては、耐熱性樹脂などにより構成して繰り返し使用するものと、硬化性樹脂をプリント配線板に塗布して1回のみ使用のものとがある。
【0069】
なお、プリント配線板3の搬送方向(搬入口116から搬出口117に向かう方向)に対してその前端を下降あるいは上昇させるには第2のアクチュエータ119を下降方向あるいは上昇方向に制御する。一方、プリント配線板3の上記搬送方向の後端を下降あるいは上昇させるには第1のアクチュエータ118を下降方向あるいは上昇方向に制御する。また、プリント配線板3を横方向(上記搬送方向に直交する方向)に移動させるには、搬送コンベア107を駆動するモータ(駆動装置306)の回転方向と速度を制御する。
【0070】
まず、プリント配線板3を平面フロー波6に接液する手順について説明する。
【0071】
接液の手順は、先ず図5(1)のようにプリント配線板3を矢印A方向(上述した搬送方向)に搬送し、所定位置に達したら、図5(2)のように搬送方向の前端位置を矢印B方向に下降させて引き続き矢印C方向へ搬送する。
【0072】
そして、図5(3)のように矢印D方向の搬送によりプリント配線板3の前端が平面フロー波6に接液したら該プリント配線板3の後端を矢印E方向に下降させ、プリント配線板(マスクプレート)4の下方側の面すなわち被はんだ付け面の全面を平面フロー波6に接液させる。この図5(1)〜図5(3)の過程では、プリント配線板3と平面フロー波6との間の雰囲気ガスを逃散させることができる。
【0073】
その後、図5(4)のようにプリント配線板3を矢印F方向すなわち横方向(後端方向)に搬送させて被はんだ付け部(領域)に溶融はんだの一層の動圧を加え、該被はんだ付け部(領域)のはんだ濡れ性を向上させる。
【0074】
次に、プリント配線板3を平面フロー波6から離脱する手順について説明する。
【0075】
続いて、図6(5)のようにプリント配線板3の前端を矢印G方向に上昇させつつ矢印H方向に搬送し、被はんだ付け部に溶融はんだのピールバックを生じさせてフィレット形状を整えると供にはんだブリッジを解消する。
【0076】
その後は、図6(6)のように矢印I方向へ搬送し、続いて図6(7)のようにプリント配線板3の後端を矢印K方向に上昇させ、プリント配線板3を矢印J方向に搬出して、一連の接液作業すなわちはんだ付け作業が終了する。
【0077】
<4.窒素ガス供給流量の制御例>
図7,図8は、図1に示したチャンバ体106(ひいてはプリント配線板3)の上下移動に伴う該チャンバ体106への単位時間当たりの窒素ガス供給流量の制御について説明する図である。
【0078】
図7(a)および図8(a)は、横軸に時間tを縦軸にチャンバ体の高さ(位置)を示している。
【0079】
また、その他の図、すなわち図7(b)(c)(d)(e)および図8(b)(c)は、横軸に時間tを縦軸に窒素ガスの単位時間当たりの流量を示している。
【0080】
なお、図7(a)(b)(c)(d)(e)の時間軸(横軸)は時刻において整合しており、図8(a)(b)(c)の時間軸(横軸)も時刻において整合している。
【0081】
また、図7(b)(c)は、1組で窒素ガス供給流量の制御例を示し、図7(b)の縦軸のQ1は、チャンバ体のはんだ槽109に近接する4本のノズルグループ210(図1に示したノズル114e〜h)の単位時間当たりの窒素ガス流量を示し、図7(c)の縦軸のQ2は、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117側に近接する4本のノズルグループ209(図1に示したノズル114a〜d)の単位時間当たりの窒素ガス流量を示している。
【0082】
この例では、チャンバ体106の高さの変化に比例して窒素ガス供給流量を減少あるいは増加させている制御例で、前記各ノズルグループともに相似に制御した例である。
【0083】
まず、チャンバ体の下降する時刻t1〜t3では、窒素ガス供給流量を減少させ、チャンバ体の上昇する時刻t4〜t6では窒素ガス供給流量を増加させている。また、時刻t3〜t4の間は、チャンバ体106が静止しているので窒素ガス供給流量を予め決めた所定の値に戻している。
【0084】
すなわち、チャンバ体内の雰囲気ガスを搬入口116および搬出口117から吐き出す時刻t1〜t3では、窒素ガス供給流量は少なくても大気が該チャンバ体内に流入することは無い。逆に、大気をチャンバ体106内に吸い込もうとする時刻t4〜t6では、窒素ガス供給流量を増大させて大気が該チャンバ体106内に流入しないようにしている。すなわち、チャンバ体106の上下移動に伴う容積変化によってもたらされる呼吸現象を打ち消すように窒素ガスの供給流量を制御している。
【0085】
これにより、窒素ガス供給流量の平均値を増大させることなく、チャンバ体106内の酸素濃度を一層低下させることができるようになる。また、窒素ガス供給流量の平均値を減少させても、従前と同様の酸素濃度を維持することができるようになる。
【0086】
〔他の制御例1〕
また、図7(d)(e)も1組で窒素ガス供給流量の制御例(他の制御例1)を示し、図7(d)の縦軸のQ1と図7(e)の縦軸のQ2は、前記と同様のノズルグループへの窒素ガス供給流量を示している。
【0087】
この例では、前記の例と同様にチャンバ体の高さの変化に応じて窒素ガス供給流量を減少あるいは増加させているが、それはチャンバ体106の搬入口116および搬出口117に近接する4本のノズルグループ209(図1に示したノズル114a〜d)の単位時間当たりの窒素ガス供給流量Q2だけであり、チャンバ体106のはんだ槽109に近接する4本のノズルグループ210(図1に示したノズル114e〜h)の単位時間当たりの窒素ガス流量Q1は変化させていない。すなわち、呼吸現象を打ち消す作用の大きいノズルグループの窒素ガス供給流量のみを制御するようにした例である。しかも、窒素ガス供給流量Q2は時間的に見て階段状に制御した例である。
【0088】
〔他の制御例2,3〕
一方、図8(b)(c)も窒素ガス供給流量の制御例(他の制御例2,3)を示しているが、何れの縦軸も窒素ガス供給流量Q1またはQ2の何れでも良いことを示している。すなわち、このような制御例を図7の制御例に適用すれば良いことを説明するものである。
【0089】
そして、図8(b)の制御例(他の制御例2)では、チャンバ体106の高さの変化速度すなわちチャンバ体106の容積の変化速度の微分値に比例して窒素ガス供給流量を制御する例を示している。
【0090】
また、図8(c)の制御例(他の制御例3)は、図8(b)の制御例と図7(b)の制御例とを組み合わせた制御例である。
【0091】
これらについても窒素ガス供給流量の平均値を増大させることなく、チャンバ体内の酸素濃度を一層低下させることができるようになる。また、窒素ガス供給流量の平均値を減少させても、従前と同様の酸素濃度を維持することができるようになる。
【0092】
なお、これらの制御形態は一例であり、要は一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106の上下方向の移動制御の状態(位置や速度等のプロフィール)に併せて最適なプロフィールを選択すれば良い。
【0093】
以上示したように、本実施形態のフラットディップ装置によれば、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができる。
【0094】
その結果、搭載されている電子部品のリードが長くプリント配線板の基板下寸法が長いプリント配線板であっても、不活性ガス雰囲気中でフローディップはんだ付けを行うことができるようになる。
【0095】
しかも、不活性ガスの単位時間当たりの供給流量も少なくて済むので、不活性ガス雰囲気中でのはんだ付け実装に伴う生産コストが通常の生産コストよりも大きくなることがない。また、プリント配線板の搬送速度も通常の速度で良いので生産性も良好である。
【0096】
そのため、既にリフローはんだ付けが行われたプリント配線板にリードの長いコネクタ等の電子部品をはんだ付けする際に、当該の被はんだ付け部やその周辺領域のみに開口を有するマスクプレートを嵌め合わせておくことにより、本発明のフラットディップ装置を用いて部分はんだ付けを行うこともできる。
【0097】
従って、従来のようにはんだ鏝ロボットを使用することなく、各はんだ付け領域の一括したはんだ付けを行うことができるようになるので、その生産性を大幅に向上させることができる。
【0098】
また、通常のフローディップはんだ付け作業とマスクプレートを使用しての部分はんだ付け作業との混流はんだ付け作業が可能であるので、生産計画に依ってはんだ付けを行うプリント配線板の種類が変わってもそのリードタイムは皆無であり、はんだ付けの生産性を極めて高く維持できる。
【0099】
〔第2実施形態〕
上記第1本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上昇する際に窒素ガス供給量を増加させて、搬入口116と搬出口117から外気が流入すること(チャンバ体106の呼吸現象)を防ぐ構成について説明した。本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上昇する際にのみ、搬入口116と搬出口117がシャッタにより閉鎖する構成について説明する。
【0100】
<5.搬入口および搬出口の開閉手段の例>
図9は、図1に示した一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上昇する際にのみ、その搬入口116と搬出口117がシャッタにより閉鎖されるように構成した例を説明する図であり、図1と同一のものには同一の符号を付してある。なお、図9(a)は図1のはんだ付け工程2に該当する側断面図に対応し、図9(b)は搬入口116における拡大図に対応する。
【0101】
図9に示すように、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117の上縁端に磁石904が設けられ、他方で、これら搬入口116および搬出口117の下端下方位置のチャンバ体106に摺接するシャッタケース902にシャッタ901を摺動可能に嵌め合わせてあり、該シャッタ901の上端には前記磁石904と逆極となる磁石903が設けられている。
【0102】
また、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117の上縁端の側部には、シャッタの真上位置すなわちチャンバ体の移動方向である矢印III,IV方向の真上位置に押し下げ棒905を設けてある。
【0103】
図9(a)に示すシャッタ901の位置は、予備加熱工程2からのプリント配線板3の搬入を待つ通常の待機位置であり、シャッタ901の上端は搬入口116および搬出口117の下縁端に揃った位置に配設されている。そして、チャンバ体106が下降するとその搬入口116および搬出口117はシャッタケース902により閉鎖され、さらにその搬入口116および搬出口117の上縁端に設けた磁石904とシャッタ901の磁石903が吸着する。そのため、チャンバ体106が上昇する際には該チャンバ体106の上昇に併せてシャッタ901が引き上げられ、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117はシャッタ901により閉鎖されたまま上昇する。このシャッタ901の状態を図9(b)に示す。
【0104】
そして、チャンバ体106が通常の待機位置まで上昇すると、押し下げ棒905がシャッタ901の上端に当接して該シャッタ901が相対的にチャンバ体106から押し下げられ、磁石相互が離脱して搬入口116および搬出口117が開く。
【0105】
このように、チャンバ体106の呼吸現象により大気をチャンバ体106に吸い込む上昇工程において、その搬入口116および搬出口117が閉鎖されるため、大気がチャンバ体106内へ侵入し難くなり、チャンバ体106内に安定した低酸素濃度の窒素ガス雰囲気を形成することができるようになる。
【0106】
また、前記の窒素ガス供給流量の制御例と組み合わせればその作用は一層良好となり、窒素ガスの単位時間当たりの供給流量を大幅に少なくすることができるようになる。
【0107】
なお、本実施形態では、磁石903,904,押し下げ棒905により、シャッタ901を開閉させる構成について説明したが、シャッタ901を電子シャッタにより構成し、制御装置301でチャンバ体106の上下移動に応じて電子シャッタの開閉を制御するように構成してもよい。
【0108】
〔第3実施形態〕
上記第1,2本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上下方向に移動するとチャンバ体106の容積が増減する構成について説明した。本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上下方向に移動してもチャンバ体106の容積が変化しないように可変容積手段を設けた構成について説明する。
【0109】
<6.可変容積手段の例>
図10は、一体に構成した搬送コンベアとチャンバ体が上下方向に移動してもその容積が変化しないように可変容積手段を設けた例を説明する図であり、図1に示したはんだ付け工程2に該当する側断面に対応する。
【0110】
図10に示すように、チャンバ体106の下方位置に設けたスカート部108の開口面積と同じ面積の開口1001を該チャンバ体106の上方位置に設け、これを囲んでベローズ1002を設けたものである。このベローズ1002の上端は、前記開口1001の面積と同じ面積の固定板1003により封止されている。
【0111】
したがって、チャンバ体106が上下方向に移動してもそれに併せてベローズ1002が連動して伸縮し、スカート部108がはんだ槽109の溶融はんだ5中に深く侵入する際のチャンバ体106の容積減少をベローズ1002の伸長により打ち消し、逆にスカート部108がはんだ槽の溶融はんだ5中から抜ける方向に移動する際のチャンバ体106の容積増加をベローズ1002の縮小により打ち消すように作動する。
【0112】
その結果、チャンバ体106の呼吸現象が発生することが無く、チャンバ体106内を安定して低酸素濃度の窒素ガス雰囲気に維持することができるようになる。
【0113】
〔第4実施形態〕
<7.シルバニア方式への応用例>
先に、プリント配線板にマスクプレートを嵌め併せて部分はんだ付けを行う例を説明したが、本発明のはんだ付け装置を用いていわゆるシルバニア方式の部分はんだ付けを行うこともできる。すなわち、チャンバ体の容積を増大させることなく低酸素濃度の窒素ガス雰囲気中でシルバニア方式の部分はんだ付け行うことができる。
【0114】
例えば、英国特許第801510号に説明されるシルバニア方式は、プリント配線板の部分はんだ付け領域に対応した位置に溶融はんだ溢流ノズルつまり部分吹き口体を設けておき、このノズル群とプリント配線板とを近接させることで前記溢流はんだすなわちフロー波とはんだ付け領域を接触させて当該の部分はんだ付け領域のはんだ付けを行う技術である。
【0115】
図11は、図1に示した吹き口体110の吹き口111の周辺を示す斜視図であり、部分吹き口体ひいては部分吹き口を複数有する嵌合体を前記吹き口体の吹き口に嵌め合わせる様子を説明する図である。
【0116】
図11に示すように、吹き口体110の吹き口111に嵌合する嵌合体1100に、部分吹き口体1101を設けておけば、この部分吹き口体1101の吹き口1102から溶融はんだが溢流して各部分吹き口にフロー波を形成する。
【0117】
この部分吹き口体1101の各部分吹き口1102の位置は、被はんだ付けワークであるプリント配線板3の部分はんだ付け領域に一致するように設けてあるので、当該プリント配線板3をチャンバ体106および搬送コンベア107と一体に下降させる(図4を参照)ことにより、各部分はんだ付け領域とフロー波6とが接触し、当該の部分はんだ付け領域にのみ溶融はんだが供給されてはんだ付けが行われる。
【0118】
すなわち、図4(b)に示したようなマスクプレート4を使用することなく部分はんだ付けを行うことができるようになる。
【実施例】
【0119】
図1に示したフローはんだ付け装置、即ち、フラットディップ装置(不活性ガス雰囲気中でフローディップ式のはんだ付け作業を行う装置)の場合、窒素ガスの供給流量が400リットル/分の際にチャンバ体106内の酸素濃度100ppm以下を実現している。
【0120】
この数値は、特許文献2の技術を用いたはんだ付け装置の数値と同等の数値であり、本発明の技術が極めて有効であることを示している。
【0121】
また、これに図8(b)の窒素ガス供給流量制御を組み合わせることにより、平均380リットル/分の窒素ガス供給流量でチャンバ体内の酸素濃度100ppm以下を実現しており、その性能の高さが明確に現れている。
【0122】
以上示したように、本発明のフラットディップ装置は、溶融はんだを広い開口(板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口)から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波にプリント配線板(電子部品が搭載され該電子部品とプリント配線板との間に被はんだ付け部を形成したプリント配線板)等の板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を面接触させることで複数の被はんだ付け部を一斉に加熱してはんだ付けを行うはんだ付け装置であり、しかもこのはんだ付け作業を、不活性ガスの単位時間当たりの平均供給流量も増大することなく、不活性ガス雰囲気中で行うことが可能となり、不活性ガスの大量供給による生産コストの上昇を抑えることができる。
【0123】
なお、図4(b)に示したように、目的とする領域にのみ開口を有するマスクプレートを板状の被はんだ付けワークに嵌め併せて前記はんだ付け作業を行うことにより、目的とする領域すなわち被はんだ付け領域のみに溶融はんだを供給する部分はんだ付け作業も行うことができる。このような部分はんだ付け作業は、例えば、リフローはんだ付けが行われたプリント配線板に、リフローはんだ付け方法でははんだ付けを行うことができない電子部品をはんだ付けする際に、その電子部品の被はんだ付け部やその周辺領域の被はんだ付け領域にのみ溶融はんだを供給してはんだ付けを行うために使用される。
【0124】
なお、これは一例であり、これに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
【0125】
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0126】
なお、上述した図5〜図8に示した制御が外部からインストールされるプログラムによって、制御装置301により遂行されていてもよい。そして、その場合、CD-ROMやフラッシュメモリやFD等の記憶媒体により、あるいはネットワークを介して外部の記憶媒体から、プログラムを含む情報群を出力装置に供給される場合でも本発明は適用されるものである。
【0127】
また、上記各実施形態を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0128】
以上により、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができるはんだ付け装置を実現することができる。その結果、プリント配線板に搭載された電子部品のリードが長い場合(これを通常は基板下寸法が長いと言う)においても、また、マスクプレートを使用した部分はんだ付けにおいても、高品質のはんだ付けを低コストで行うことができるようになる。また、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中において高い生産性で部分はんだ付けをできるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
電子部品の小型化ひいては表面実装部品化が進むことと併せてプリント配線板のはんだ付け技術としてリフローはんだ付け技術が用いられることが多くなってきている。しかし、プリント配線板に実装された電子回路装置が外部のマンマシンインターフェイスと接続される部分においては、人間から見て等身大の電子部品が使用され、コネクタ等のはんだ付けするべきリードが長いものが多い。
【0130】
このようなはんだ付けリードの長い電子部品や形状の大きい電子部品のはんだ付けは、大量生産に対応するためにはフローディップ式のはんだ付け技術を採用するしかない。しかし、公害防止の観点から採用されている鉛フリーはんだは、大気雰囲気中では濡れ性(はんだ付け性)ひいては信頼性が劣り、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中でのはんだ付け作業が望まれていた。
【0131】
本発明のフラットディップ装置すなわち不活性ガス雰囲気中でフローディップ式のはんだ付け作業を行う装置は、このような時代の要望に応えるものであり、発明されたこの新しいはんだ付け装置の技術によれば、公害発生がなく高信頼性の電子装置を安価に供給できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明のフラットディップ装置の例を説明する図である。
【図2】図1の構成において設けられる窒素ガス供給系を示すシンボル図である。
【図3】図1の構成において設けられる主要制御系を示すブロック図である。
【図4】図1に示したフラットディップ装置におけるはんだ付け時の動作について説明する図である。
【図5】プリント配線板の(平面フロー波から見た)上下移動と横移動とによりプリント配線板が平面フロー波にどのように接液されてはんだ付けが行われるかを説明する図である。
【図6】プリント配線板の(平面フロー波から見た)上下移動と横移動とによりプリント配線板が平面フロー波にどのように接液されてはんだ付けが行われるかを説明する図である。
【図7】図1に示したチャンバ体(ひいてはプリント配線板)の上下移動に伴う該チャンバ体への単位時間当たりの窒素ガス供給流量の制御について説明する図である。
【0133】
である。
【図8】図1に示したチャンバ体(ひいてはプリント配線板)の上下移動に伴う該チャンバ体への単位時間当たりの窒素ガス供給流量の制御について説明する図である。
【0134】
である。
【図9】図1に示した一体に構成した搬送コンベアとチャンバ体が上昇する際にのみ搬入口と搬出口がシャッタにより閉鎖されるように構成した例を説明する図である。
【図10】一体に構成した搬送コンベアとチャンバ体が上下方向に移動してもその容積が変化しないように可変容積手段を設けた例を説明する図である。
【図11】シルバニア方式に応用する際の構成を示す吹き口の周辺の斜視図である。
【符号の説明】
【0135】
1 予備加熱工程
2 はんだ付け工程
3 プリント配線板
4 マスクプレート
6 平面フロー波
7 窒素ガス
106 チャンバ体
107 搬送コンベア
108 スカート部
109 はんだ槽
110 吹き口体
111 吹き口
118 第1のアクチュエータ
119 第2のアクチュエータ
301 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ槽内の溶融はんだを板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波に搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を接触させてはんだ付けを行うフラットディップ装置およびフラットディップ装置のはんだ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を搭載したプリント配線板をはんだ付けする技術として、電子部品のはんだ付けリードや端子とプリント配線板のはんだ付けランドすなわち被はんだ付け部に溶融はんだを供給するいわゆるフローはんだ付け技術がある。
【0003】
このフローはんだ付け技術を一瞥するには、非特許文献1として挙げた「電子技術1981年6月号 臨時増刊号(1981.Vol.23 No.7)」が便利である。その第48頁の「6.はんだ槽」の項において「図15」を参照しつつ簡便にまとめられている。この中で、「図15(f)」の「フローディップ式」は、噴流式とディップ式の中間の方式と説明されている。即ち、噴流式のようにポンプによりはんだ槽内の溶融はんだを噴流させて噴流波を形成しておき、ディップ式のようにプリント基板を図15(a)(b)の矢印に示されるように上下移動させながら搬送して、該プリント基板を噴流波に浸してはんだ付けをする方式である。
【0004】
また、上記非特許文献1の中で、「図15(f)」の「フローディップ式」では、「部品リードの長いもののはんだ付けに効果」があることが説明されている。これは、プリント配線板が溶融はんだ液面に接触しても該溶融はんだの温度が低下することなく安定しており、その溶融はんだ液面も「たえずきれいなはんだ面を保」ち得ることが可能で「噴流はんだ面も安定」しているからである。そして、部品リードが長くても溶融はんだを噴流する吹き口に該部品リードが当接するなどの不具合を生じないからである。
【0005】
また、このフローディップ式のはんだ付け方法を用いてはんだ付け性を一層向上させる技術として、特許文献1の技術がある。
【0006】
この特許文献1の技術は、プリント配線板を溶融はんだ液面に接触させる際に、該プリント配線板を傾斜させることでその一端から接触を開始して徐々に面接触へ移行し、該プリント配線板と溶融はんだ液面との間に溜まるガスを逃散させるものである。続いて、溶融はんだ液面方向にプリント配線板を移動させることで被はんだ付け部に溶融はんだの動圧を加えて確実にはんだ濡れを生じさせる。そして、最後にプリント配線板の一端から徐々に該プリント配線板を溶融はんだ液面から離脱させ、ピールバック作用により被はんだ付け部のはんだ量を適正化すると供に隣り合う被はんだ付け部間においてはんだブリッジを生じないようにする技術である。
【0007】
一方で、はんだ付けを行う際に、特許文献2に開示されているように、非酸化性の不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気中ではんだ付けを行う技術が用いられている。これにより、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中では被はんだ付け部の酸化を抑制することが可能であり、溶融はんだの表面張力も低下するために、被はんだ付け部へのはんだの濡れ性を大幅に改善することが可能であり、微細な被はんだ付け部への溶融はんだの供給も容易に行うことが可能となっていわゆるマイクロソルダリングも可能となるからである。
【0008】
なお、この特許文献2の技術では、はんだ付け性を改善するために被はんだ付け部に予め塗布されるフラックスの塗布量を激減させることが可能となるため、はんだ付け後のプリント配線板に残るフラックス残渣が殆ど無く、高信頼プリント配線板のはんだ付け実装において必要とされるプリント配線板の洗浄(フラックス残渣の除去)が不要となる。
【0009】
また、はんだ付け装置においてプリント配線板を搬送する搬送コンベアとしては、回動走行する平行2条のチェーンのピン上にプリント配線板の両側端部を保持させる搬送コンベアや、特許文献3に説明されているような回動走行するチェーンに保持爪を設けてプリント配線板を保持する搬送コンベアがある。また、キャリアと呼ぶプリント配線板を保持する専用治具にプリント配線板を保持させ、このキャリアを搬送コンベアで搬送させるものもある。なお、前者をキャリアレス方式と呼称し、後者をキャリア方式と呼称することもある。
【0010】
参考までに、特許文献4には、はんだ付けを行う際の各工程ごとに搬送コンベアを分割して設けて、各工程ごとに最適な条件設定を行えるようにした技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献5には、溶融はんだを噴流させる際に該溶融はんだの位置エネルギーにより噴流させて「半田波の波高」を安定化させた技術が開示されている。
【0012】
さらに、特許文献6には、プリント配線板のはんだ付け部分に限定した領域にのみ溶融はんだを噴流する構成として部分はんだ付けを行ういわゆるシルバニア方式についての技術が開示されている。
【非特許文献1】電子技術1981年6月号 臨時増刊号(1981.Vol.23 No.7)
【特許文献1】特開昭59−76496号公報
【特許文献2】特開平6−198486号公報
【特許文献3】特開平1−133668号公報
【特許文献4】特開昭49−117971号公報
【特許文献5】特開昭53−57156号公報
【特許文献6】英国特許第801510号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、不活性ガス雰囲気中ではんだ付けを行う特許文献2の技術では、はんだ付けの際に非特許文献1に挙げた「(c)フロー式」や「(d)ウェーブ式」「(e)二段ウェーブ式」「(g)カスケード式」の溶融はんだの噴流波が使用される。その理由は、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中を保持するチャンバ体内におけるプリント配線板の搬送が直線的であり、チャンバ体内に搬送コンベアを容易に設けることができるからである。
【0014】
そのため、「(f)フローディップ式」で特許文献1に説明されるような複雑な搬送手段が必要となるはんだ付け技術においては、はんだ付けを不活性ガス雰囲気中で行うはんだ付け装置は存在しなかった。
【0015】
その理由は、特許文献1に挙げられるような複雑な搬送手段を低酸素濃度の不活性ガス雰囲気を保持するチャンバ体内に設けようとすると該チャンバ体の容積が極端に大きくなり、目的とする酸素濃度(例えば100ppm)を維持するために必要となる不活性ガスの単位時間当たりの供給流量を極端に大きくしなければならないからである。
【0016】
また、前記のような搬送手段をチャンバ体の外に設け、チャンバ体を貫通するロッド等によりチャンバ体内のプリント配線板を上下に移動させようとしても、プリント配線板が上下に移動する分のチャンバ体容積が必要となる他にもロッドがチャンバ体を貫通する部分において大気が侵入し易くなり、やはり目的とする酸素濃度を維持するために必要となる不活性ガスの単位時間当たりの供給流量が大きくなってしまう。なお、不活性ガスの単位時間当たりの供給流量が大きいということは、はんだ付け実装生産のコストを増大させてしまうことになる。
【0017】
さらに、部品リードの長い部品を搭載したプリント配線板すなわちプリント配線板が溶融はんだと接触する面(被はんだ付け面)側に長いリード線が飛び出しているプリント配線板のはんだ付けは、特許文献2の技術でははんだ付けを行うことができない。このようなプリント配線板のはんだ付けは、どうしてもフローディップ式によるはんだ付けを行う必要がある。しかし、このフローディップ式で低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中において低コストのはんだ付けを行うはんだ付け装置は上記理由により存在しない。
【0018】
また、既にリフローはんだ付けが行われたプリント配線板にリードの長いコネクタ等の電子部品をはんだ付けする際に、当該の被はんだ付け部やその周辺領域のみに開口を有するマスクプレートを嵌め合わせて(図4(b)参照)フローディップ式のはんだ付けにより部分はんだ付けが行われているが、これを低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で行うことができるはんだ付け装置も上記理由により存在しなかった。そのため、被はんだ付け部に窒素ガスを吹き付けながらはんだ鏝ロボットによるはんだ付けが行われたりしていた。そのため、このコネクタ等のはんだ付け実装の生産性が低かった。
【0019】
なお、特許文献6に示されたシルバニア方式は、プリント配線板の必要とする領域にのみ溶融はんだを供給して部分はんだ付けを行うことができる技術であるが、次の(1)〜(4)のような短所も有している。
【0020】
(1)設備の機構が複雑であるために、機構の調節や故障時の復旧に多大の時間を要し、それが原因で生産性が低下する。
【0021】
(2)はんだ付けを行うプリント配線板の種類毎に専用の吹き口(ノズル)が必要であり、この吹き口体の交換に要する作業時間(約60分程度)が長いために、はんだ付け装置の休止時間が長くなって生産性が低下する。
【0022】
(3)多数の吹き口(ノズル)があるために、その清掃に多大な時間(例えば、約30分程度)を要し、生産性を低下させる要因になる。
【0023】
(4)前記(2)の専用の吹き口(ノズル)はプリント配線板の種類毎に必要であるが、この専用の吹き口(ノズル)が大変に高価(例えば、約100万円/1吹き口)である。
【0024】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができるはんだ付け装置を実現することにある。その結果、プリント配線板に搭載された電子部品のリードが長い場合(これを通常は基板下寸法が長いと言う)においても、また、マスクプレートを使用した部分はんだ付けにおいても、高品質のはんだ付けを低コストで行うことができるようにすることにある。また、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中において高い生産性で部分はんだ付けをできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、チャンバ体内の容積を拡大すること無く最小のままとし、にもかかわらずプリント配線板の上下方向の移動を伴うフローディップ式のはんだ付けを行うことができるように構成したところに特徴がある。なお、フローディップ式のはんだ付けを行う装置は、噴流波の液面が平面状すなわちフラットであることから、本発明の名称のようにフラットディップ装置と呼称されている。
【0026】
(1)すなわち、加熱されて溶融したはんだを収容するはんだ槽の該溶融はんだ液面上方に該溶融はんだのはんだ付けを行おうとする板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい平面状の溶融はんだの噴流波を形成する吹き口体の吹き口を設ける。
【0027】
他方で前記板状の被はんだ付けワークの搬送コンベアと該搬送コンベアを覆うチャンバ体とを一体に設ける。そしてこのチャンバ体の前記噴流波を望む部分には前記吹き口の平面形状よりも大きい開口を設けると供に該開口には前記チャンバ体の外側に延びるスカート部を設ける。また前記チャンバ体には前記板状の被はんだ付けワークの搬入口と搬出口とを設ける。さらに前記チャンバ体にはその内部に不活性ガスを供給する不活性ガス吐出手段を設ける。
【0028】
そして、前記搬送コンベアと一体に設けられたチャンバ体のスカート部を前記はんだ槽の吹き口体を囲んで前記はんだ槽内の溶融はんだ中に挿入されて成ると供に前記一体の搬送コンベアとチャンバ体とを前記はんだ槽の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させるアクチュエータを設ける。さらに前記アクチュエータの上下方向の移動量を制御して前記板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を前記平面状の溶融はんだの噴流波に面接触させる制御装置を設けるように構成する。
【0029】
これにより、チャンバ体内においてプリント配線板を上下方向に移動させる必要がなくなり、チャンバ体容積を拡大することなく最小の容積のままでフローディップ式のはんだ付けを低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で行うことができるようになる。
【0030】
(2)また、前記(1)の構成において、不活性ガス供給流量を調節する手段と該供給流量を制御する制御手段とを有すると供に、この制御手段は搬送コンベアとチャンバ体とを一体に下方へ移動させる場合に前記不活性ガス供給流量を低下あるいは停止させるプログラムまたはシーケンスを有するように構成する。
【0031】
すなわち、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に下方へ移動させる場合には、スカート部が溶融はんだ中に更に挿入されるためにチャンバ体内の容積が減少し、該チャンバ体内の不活性ガスが搬入口および搬出口から吐き出される。したがって、この期間においては、チャンバ体内に供給する不活性ガス供給流量を低下あるいは停止させても該チャンバ体内に大気が侵入することがなく、酸素濃度の上昇を生じることもない。
【0032】
(3)また、前記(1)または(2)の構成において、不活性ガス供給流量を調節する手段と該供給流量を制御する制御手段とを有すると供に、この制御手段は搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方へ移動させる場合に前記不活性ガス供給流量を増加させるプログラムまたはシーケンスを有するように構成する。
【0033】
すなわち、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方へ移動させる場合には、前記(2)とは逆にチャンバ体内の容積が増加し、チャンバ体外の大気が該チャンバ体の搬入口および搬出口から吸い込まれることになる。したがって、この期間についてはチャンバ体内への不活性ガス供給流量を増加させることで、該チャンバ体内への大気の侵入を防止することができるようになり、酸素濃度の上昇を生じることもない。
【0034】
この(2)および(3)は呼吸現象であり、この呼吸量(チャンバ体容積の増減)を打ち消すように不活性ガス供給流量を増減制御することにより、不活性ガス消費量を最小にしつつチャンバ体内への大気の侵入を防止することができるようになる。
【0035】
(4)また、前記(2)または(3)の構成において、不活性ガス吐出手段を複数有し、不活性ガス供給流量を低下あるいは停止しまたは増加させる不活性ガス吐出手段を選択的に行うプログラムまたはシーケンスを有するように構成する。これにより、酸素濃度を増加させるチャンバ体内の不必要な雰囲気流動を生じ難くすることができるようになる。
【0036】
(5)また、前記(1)〜(4)の構成において、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方へ移動させる場合にのみチャンバ体の搬入口および搬出口を閉鎖する開閉手段を有するように構成する。これにより、呼吸現象を大幅に抑制することができるようになる。
【0037】
(6)また、前記(1)〜(4)の構成において、搬送コンベアとチャンバ体とを一体に上方向あるいは下方向に移動させた場合に変化するチャンバ体内容積とは逆に容積が変化する連動可変容積手段を有するように構成する。これにより、呼吸現象すなわちチャンバ体容積の変化を打ち消すことができるようになり、チャンバ体の搬入口や搬出口において呼吸現象を生じることがなくなる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができるはんだ付け装置を実現することができる。その結果、搭載されている電子部品のリードが長くプリント配線板の基板下寸法が長いプリント配線板であっても、不活性ガス雰囲気中でフローディップはんだ付けを行うことができるようになる。しかも、不活性ガスの単位時間当たりの供給流量も少なくて済むので、不活性ガス雰囲気中でのはんだ付け実装に伴う生産コストが通常の生産コストよりも大きくなることがない。
【0039】
このため、既にリフローはんだ付けが行われたプリント配線板にリードの長いコネクタ等の電子部品をはんだ付けする際に、当該の被はんだ付け部やその周辺領域のみに開口を有するマスクプレートを嵌め合わせておくことにより、本発明のフラットディップ装置を用いて部分はんだ付けを行うこともできる。
【0040】
したがって、従来のようにはんだ鏝ロボットを使用することなく、各はんだ付け領域の一括したはんだ付けを行うことができるようになるので、その生産性を大幅に向上させることができる。
【0041】
また、通常のフローディップはんだ付け作業とマスクプレートを使用しての部分はんだ付け作業との混流はんだ付け作業が可能であるので、生産計画によってはんだ付けを行うプリント配線板の種類が変わってもそのリードタイムは皆無であり、はんだ付けの生産性を極めて高く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
本発明のフラットディップ装置は、不活性ガス雰囲気中でフローディップはんだ付け作業を行う装置であり、つぎのように実現することができる。なお、通常のはんだ付け装置は、プリント配線板ひいては被はんだ付け部(領域)の予備加熱工程とはんだ付け工程とから構成されている。また、予備加熱工程の前にフラックス塗布工程を設ける。これらについては周知であるので、以下においては、本発明の構成が適用される工程であるはんだ付け工程を中心に説明する。
【0043】
<1.基本的な構成>
図1は、本発明のフラットディップ装置の例を説明する図であり、その側断面を示す図に対応する。
【0044】
図1に示すように、本実施形態のフラットディップ装置は、予備加熱工程1とはんだ付け工程2とから構成され、それぞれにプリント配線板を搬送する搬送コンベア101,107を有している。
【0045】
予備加熱工程1は4つの加熱ゾーンに分割され、それぞれに赤外線や熱風あるいはそれらを併用したヒータ102を設けてある。なお、ヒータ102に用いる赤外線ヒータの表面温度や熱風ヒータの熱風温度は、図示しない温度制御装置により指示し設定することが可能である。
【0046】
103は予備加熱工程1のチャンバ体である。このチャンバ体103は、プリント配線板の予備加熱を均一に促進させる手段であり、搬入口104と搬出口105とを備えている。
【0047】
なお、予備加熱工程1の搬送コンベア101は、プリント配線板3を矢印I方向に搬送するものであり、その搬送の開始と停止、搬送方向、搬送速度等は後述の制御装置301よって制御される。なお、4はマスクプレートであり、プリント配線板3をスポット的及び部分的はんだ付けをする場合に使用する。なお、詳細は図4(b)に示す。
【0048】
また、本発明が適用されるはんだ付け工程2は、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気すなわち窒素ガス雰囲気を保持するためのチャンバ体106に覆われ、このチャンバ体106とプリント配線板の搬送コンベア107とが支持部材120により一体に設けられている。チャンバ体106の底部には開口が設けられ、この開口には下方へ延びるスカート部108が設けられている。そして、このスカート部108をはんだ槽109に設けられた吹き口体110周囲位置の溶融はんだ中に挿入することで、この開口の封止性を得ている。
【0049】
はんだ槽109には溶融はんだ5が収容され、図示しないヒータおよび温度センサそして温度制御装置とにより予め決めた所定の温度の溶融状態に保持されている。また、はんだ槽109内には溶融はんだを吹き口体110ひいてはその吹き口111に供給するポンプ112を設けてある。この吹き口体110の吹き口の大きさは、被はんだ付けワークであるプリント配線板3の平面形状よりも大きい開口であり、ポンプ112により供給された溶融はんだがこの吹き口111から溢流する際に該吹き口111上に平面状の噴流波すなわち平面フロー波6を形成する。なお、整流板113は溶融はんだの流れを整える手段である。
【0050】
また、ポンプ112としては、図示しないモータにより回転駆動される遠心力ポンプが使用され、該モータの回転速度を図示しない速度制御装置により制御する構成である。なお、電磁ポンプを使用することもできる。さらに、溶融はんだを吹き口体へ供給する手段として、特許文献5に説明されるような位置エネルギーを利用した手段を用いることにより、平面フロー波の波高や液面状態を一層安定化させることができる。
【0051】
一方、チャンバ体106内に低酸素濃度の不活性ガス雰囲気を形成するために、窒素ガス7の供給ノズル114a〜114hが複数(図1の例では8本)設けてある。また、チャンバ体106内の搬送コンベア107に沿ってすなわちプリント配線板の搬送方向に沿って、該方向と直交する向きに板状部材すなわち抑止板115を並べてラビリンスシールを構成し、チャンバ体106に設けられた搬入口116および搬出口117を通して大気が侵入することを抑制し、逆にチャンバ体106内の雰囲気がチャンバ体106外へ流出することを抑制している。特に、このラビリンスシールは、搬入口116および搬出口117に集中して設けてラビリンスシール部115Aを構成している。なお、抑止板115の先端にのれんを吊り下げて、搬入口116や搬出口117の開口面積を一層小さくすることも可能であり、ラビリンス部120の作用を一層強めることが可能である。
【0052】
そして、この一体に構成された搬送コンベア107とチャンバ体106とは、搬入口116側の第1のアクチュエータ118と搬出口117側の第2のアクチュエータ119とにより上下方向(矢印III,IV方向)にそれぞれ独立して移動できるように構成し、搬送コンベア107に保持されたプリント配線板3を各種の姿態(傾斜状態等の姿勢)で平面フロー波6に接触させることができるように構成してある。したがって、この上下方向の移動によりチャンバ体106のスカート部108がはんだ槽109内の溶融はんだ5から抜け出ることがないように該スカート部108の長さが選定される。
【0053】
なお、はんだ付け工程2の搬送コンベア107は、プリント配線板3を矢印II方向に搬送するものであり、その搬送の開始と停止、搬送方向、搬送速度等は後述の制御装置301によって制御される。
【0054】
図2は、図1の構成において設けられる窒素ガス供給系を示すシンボル図である。
【0055】
図2において、201は窒素ガス発生装置である。図2に示すように、窒素ガスは窒素ガス発生装置201から供給され、開閉弁202を通ってフィルタ203で不純物を除去した後に圧力制御弁204により安定した圧力で窒素ガスを供給する。そして、2系統に分けられたそれぞれの流路に流量調節弁205,206と流量計207,208とを設け、図1の搬入口116および搬出口117に近接する4本のノズルグループ209(図1に示したノズル114a〜d)とはんだ槽109に近接する4本のノズルグループ210(図1に示したノズル114e〜h)とに窒素ガスを供給する構成である。なお、流量調節弁205,206は後述する制御装置301より遠隔制御が可能である。
【0056】
図3は、図1の構成において設けられる主要制御系を示すブロック図であり、図1,図2と同一のものには同一の符号を付してある。
【0057】
図3に示すように、各搬送コンベア101,107や各アクチュエータ118,119、流量調節弁205,206、さらにポンプ112のポンプ用モータ304等は、コンピュータシステムにより構成された制御装置301により制御する。即ち、制御装置301は、図示しないCPU,RAM,ROM,外部記憶装置,入出力ポート等を有し、上記制御は、ROMや外部記憶装置に格納されるソフトウェアをCPUがRAM上に読み出す等して実行することにより実現できる。
【0058】
また、制御装置301には、LCD等の表示部302とキーボード,マウス等の指示操作部303とを備えている。そして、図示しない入出力ポートから駆動装置305〜311を介して各搬送コンベア101,107、各アクチュエータ118,119、流量調節弁205,206、ポンプ112のポンプ用モータ304等の作動を制御する仕組みである。
【0059】
駆動装置305〜311は、被制御対象が電動の場合はその出力を電力駆動回路で構成し、空気圧や油圧等の流体圧アクチュエータの場合はその出力を流体駆動回路で構成する。なお、制御装置301の入出力ポートと駆動装置305〜311のインターフェイスは双方向インターフェイスであり、その通信により指示制御量の送信と現在制御量の受信とが可能な構成である。また、以上に説明したような各種の制御対象(各搬送コンベア101,107、各アクチュエータ118,119、流量調節弁205,206、ポンプ112のポンプ用モータ304等)は、現在制御量を検出するセンサを備えている。
【0060】
<2.作動例>
図4は、図1に示したはんだ付け装置におけるはんだ付け時の動作について説明する図である。特に、図4(a)は、図1に示したはんだ付け装置において第1のアクチュエータ118と第2のアクチュエータ119を駆動することで一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106とを矢印III,IV方向へ下降させ、プリント配線板3と平面フロー波6とを接触させた状態を説明する図である。この接触状態において搬送コンベア107を駆動し、プリント配線板3を矢印II方向に(往復)移動させることもできる。
【0061】
図4(a)に示すように、予備加熱工程1のチャンバ体103とはんだ付け工程2のチャンバ体106とを分離し、さらにはんだ付け工程2の搬送コンベア107とチャンバ体106とを一体にして移動させるように構成したことにより、はんだ付け工程2のチャンバ体106内容積を拡大することなくフローディップ式のはんだ付け作業を行うことができるようになる。
【0062】
そのため、チャンバ体106に供給する窒素ガス7の単位時間当たりの供給流量も増大させる必要がなく、チャンバ体106の容積に見合った少ない流量で済む。したがって、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中でのフローディップはんだ付け作業を低ランニングコストで行うことができるようになる。
【0063】
また、図4(b)は、部分はんだ付けを行うためにプリント配線板にマスクプレートを嵌め合わせた態様を説明する図である。
【0064】
図4(b)に示すように、スポット的なフローはんだ付けを必要とする場合は、フローはんだ付け個所のみをくり抜いてあるパレット(マスクプレート)4に基板(プリント配線板)3を乗せて投入することで、スポット及び部分的はんだ付けが可能になる。
【0065】
<3.プリント配線板の接液作業例>
図5,図6は、プリント配線板の(平面フロー波から見た)上下移動と横移動とによりプリント配線板が平面フロー波にどのように接液されてはんだ付けが行われるかを説明する図である。
【0066】
なお、プリント配線板3の上下移動は図1,図4(a)に示した第1のアクチュエータ118と第2のアクチュエータ119により行われ、プリント配線板3の横移動は図1,図4(a)に示した搬送コンベア107により行われる。そして、これらの制御量の方向や速度は、図3に示した制御装置301により行われる。
【0067】
また、図5の(1)〜(4)と図6の(5)〜(7)は連続する工程を説明するものである。
【0068】
この例では、プリント配線板3にマスクプレート4を嵌め合わせて部分はんだ付けを行う例を示しているが、マスクプレート4が無い場合においても同様である。なお、マスクプレート4としては、耐熱性樹脂などにより構成して繰り返し使用するものと、硬化性樹脂をプリント配線板に塗布して1回のみ使用のものとがある。
【0069】
なお、プリント配線板3の搬送方向(搬入口116から搬出口117に向かう方向)に対してその前端を下降あるいは上昇させるには第2のアクチュエータ119を下降方向あるいは上昇方向に制御する。一方、プリント配線板3の上記搬送方向の後端を下降あるいは上昇させるには第1のアクチュエータ118を下降方向あるいは上昇方向に制御する。また、プリント配線板3を横方向(上記搬送方向に直交する方向)に移動させるには、搬送コンベア107を駆動するモータ(駆動装置306)の回転方向と速度を制御する。
【0070】
まず、プリント配線板3を平面フロー波6に接液する手順について説明する。
【0071】
接液の手順は、先ず図5(1)のようにプリント配線板3を矢印A方向(上述した搬送方向)に搬送し、所定位置に達したら、図5(2)のように搬送方向の前端位置を矢印B方向に下降させて引き続き矢印C方向へ搬送する。
【0072】
そして、図5(3)のように矢印D方向の搬送によりプリント配線板3の前端が平面フロー波6に接液したら該プリント配線板3の後端を矢印E方向に下降させ、プリント配線板(マスクプレート)4の下方側の面すなわち被はんだ付け面の全面を平面フロー波6に接液させる。この図5(1)〜図5(3)の過程では、プリント配線板3と平面フロー波6との間の雰囲気ガスを逃散させることができる。
【0073】
その後、図5(4)のようにプリント配線板3を矢印F方向すなわち横方向(後端方向)に搬送させて被はんだ付け部(領域)に溶融はんだの一層の動圧を加え、該被はんだ付け部(領域)のはんだ濡れ性を向上させる。
【0074】
次に、プリント配線板3を平面フロー波6から離脱する手順について説明する。
【0075】
続いて、図6(5)のようにプリント配線板3の前端を矢印G方向に上昇させつつ矢印H方向に搬送し、被はんだ付け部に溶融はんだのピールバックを生じさせてフィレット形状を整えると供にはんだブリッジを解消する。
【0076】
その後は、図6(6)のように矢印I方向へ搬送し、続いて図6(7)のようにプリント配線板3の後端を矢印K方向に上昇させ、プリント配線板3を矢印J方向に搬出して、一連の接液作業すなわちはんだ付け作業が終了する。
【0077】
<4.窒素ガス供給流量の制御例>
図7,図8は、図1に示したチャンバ体106(ひいてはプリント配線板3)の上下移動に伴う該チャンバ体106への単位時間当たりの窒素ガス供給流量の制御について説明する図である。
【0078】
図7(a)および図8(a)は、横軸に時間tを縦軸にチャンバ体の高さ(位置)を示している。
【0079】
また、その他の図、すなわち図7(b)(c)(d)(e)および図8(b)(c)は、横軸に時間tを縦軸に窒素ガスの単位時間当たりの流量を示している。
【0080】
なお、図7(a)(b)(c)(d)(e)の時間軸(横軸)は時刻において整合しており、図8(a)(b)(c)の時間軸(横軸)も時刻において整合している。
【0081】
また、図7(b)(c)は、1組で窒素ガス供給流量の制御例を示し、図7(b)の縦軸のQ1は、チャンバ体のはんだ槽109に近接する4本のノズルグループ210(図1に示したノズル114e〜h)の単位時間当たりの窒素ガス流量を示し、図7(c)の縦軸のQ2は、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117側に近接する4本のノズルグループ209(図1に示したノズル114a〜d)の単位時間当たりの窒素ガス流量を示している。
【0082】
この例では、チャンバ体106の高さの変化に比例して窒素ガス供給流量を減少あるいは増加させている制御例で、前記各ノズルグループともに相似に制御した例である。
【0083】
まず、チャンバ体の下降する時刻t1〜t3では、窒素ガス供給流量を減少させ、チャンバ体の上昇する時刻t4〜t6では窒素ガス供給流量を増加させている。また、時刻t3〜t4の間は、チャンバ体106が静止しているので窒素ガス供給流量を予め決めた所定の値に戻している。
【0084】
すなわち、チャンバ体内の雰囲気ガスを搬入口116および搬出口117から吐き出す時刻t1〜t3では、窒素ガス供給流量は少なくても大気が該チャンバ体内に流入することは無い。逆に、大気をチャンバ体106内に吸い込もうとする時刻t4〜t6では、窒素ガス供給流量を増大させて大気が該チャンバ体106内に流入しないようにしている。すなわち、チャンバ体106の上下移動に伴う容積変化によってもたらされる呼吸現象を打ち消すように窒素ガスの供給流量を制御している。
【0085】
これにより、窒素ガス供給流量の平均値を増大させることなく、チャンバ体106内の酸素濃度を一層低下させることができるようになる。また、窒素ガス供給流量の平均値を減少させても、従前と同様の酸素濃度を維持することができるようになる。
【0086】
〔他の制御例1〕
また、図7(d)(e)も1組で窒素ガス供給流量の制御例(他の制御例1)を示し、図7(d)の縦軸のQ1と図7(e)の縦軸のQ2は、前記と同様のノズルグループへの窒素ガス供給流量を示している。
【0087】
この例では、前記の例と同様にチャンバ体の高さの変化に応じて窒素ガス供給流量を減少あるいは増加させているが、それはチャンバ体106の搬入口116および搬出口117に近接する4本のノズルグループ209(図1に示したノズル114a〜d)の単位時間当たりの窒素ガス供給流量Q2だけであり、チャンバ体106のはんだ槽109に近接する4本のノズルグループ210(図1に示したノズル114e〜h)の単位時間当たりの窒素ガス流量Q1は変化させていない。すなわち、呼吸現象を打ち消す作用の大きいノズルグループの窒素ガス供給流量のみを制御するようにした例である。しかも、窒素ガス供給流量Q2は時間的に見て階段状に制御した例である。
【0088】
〔他の制御例2,3〕
一方、図8(b)(c)も窒素ガス供給流量の制御例(他の制御例2,3)を示しているが、何れの縦軸も窒素ガス供給流量Q1またはQ2の何れでも良いことを示している。すなわち、このような制御例を図7の制御例に適用すれば良いことを説明するものである。
【0089】
そして、図8(b)の制御例(他の制御例2)では、チャンバ体106の高さの変化速度すなわちチャンバ体106の容積の変化速度の微分値に比例して窒素ガス供給流量を制御する例を示している。
【0090】
また、図8(c)の制御例(他の制御例3)は、図8(b)の制御例と図7(b)の制御例とを組み合わせた制御例である。
【0091】
これらについても窒素ガス供給流量の平均値を増大させることなく、チャンバ体内の酸素濃度を一層低下させることができるようになる。また、窒素ガス供給流量の平均値を減少させても、従前と同様の酸素濃度を維持することができるようになる。
【0092】
なお、これらの制御形態は一例であり、要は一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106の上下方向の移動制御の状態(位置や速度等のプロフィール)に併せて最適なプロフィールを選択すれば良い。
【0093】
以上示したように、本実施形態のフラットディップ装置によれば、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができる。
【0094】
その結果、搭載されている電子部品のリードが長くプリント配線板の基板下寸法が長いプリント配線板であっても、不活性ガス雰囲気中でフローディップはんだ付けを行うことができるようになる。
【0095】
しかも、不活性ガスの単位時間当たりの供給流量も少なくて済むので、不活性ガス雰囲気中でのはんだ付け実装に伴う生産コストが通常の生産コストよりも大きくなることがない。また、プリント配線板の搬送速度も通常の速度で良いので生産性も良好である。
【0096】
そのため、既にリフローはんだ付けが行われたプリント配線板にリードの長いコネクタ等の電子部品をはんだ付けする際に、当該の被はんだ付け部やその周辺領域のみに開口を有するマスクプレートを嵌め合わせておくことにより、本発明のフラットディップ装置を用いて部分はんだ付けを行うこともできる。
【0097】
従って、従来のようにはんだ鏝ロボットを使用することなく、各はんだ付け領域の一括したはんだ付けを行うことができるようになるので、その生産性を大幅に向上させることができる。
【0098】
また、通常のフローディップはんだ付け作業とマスクプレートを使用しての部分はんだ付け作業との混流はんだ付け作業が可能であるので、生産計画に依ってはんだ付けを行うプリント配線板の種類が変わってもそのリードタイムは皆無であり、はんだ付けの生産性を極めて高く維持できる。
【0099】
〔第2実施形態〕
上記第1本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上昇する際に窒素ガス供給量を増加させて、搬入口116と搬出口117から外気が流入すること(チャンバ体106の呼吸現象)を防ぐ構成について説明した。本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上昇する際にのみ、搬入口116と搬出口117がシャッタにより閉鎖する構成について説明する。
【0100】
<5.搬入口および搬出口の開閉手段の例>
図9は、図1に示した一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上昇する際にのみ、その搬入口116と搬出口117がシャッタにより閉鎖されるように構成した例を説明する図であり、図1と同一のものには同一の符号を付してある。なお、図9(a)は図1のはんだ付け工程2に該当する側断面図に対応し、図9(b)は搬入口116における拡大図に対応する。
【0101】
図9に示すように、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117の上縁端に磁石904が設けられ、他方で、これら搬入口116および搬出口117の下端下方位置のチャンバ体106に摺接するシャッタケース902にシャッタ901を摺動可能に嵌め合わせてあり、該シャッタ901の上端には前記磁石904と逆極となる磁石903が設けられている。
【0102】
また、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117の上縁端の側部には、シャッタの真上位置すなわちチャンバ体の移動方向である矢印III,IV方向の真上位置に押し下げ棒905を設けてある。
【0103】
図9(a)に示すシャッタ901の位置は、予備加熱工程2からのプリント配線板3の搬入を待つ通常の待機位置であり、シャッタ901の上端は搬入口116および搬出口117の下縁端に揃った位置に配設されている。そして、チャンバ体106が下降するとその搬入口116および搬出口117はシャッタケース902により閉鎖され、さらにその搬入口116および搬出口117の上縁端に設けた磁石904とシャッタ901の磁石903が吸着する。そのため、チャンバ体106が上昇する際には該チャンバ体106の上昇に併せてシャッタ901が引き上げられ、チャンバ体106の搬入口116および搬出口117はシャッタ901により閉鎖されたまま上昇する。このシャッタ901の状態を図9(b)に示す。
【0104】
そして、チャンバ体106が通常の待機位置まで上昇すると、押し下げ棒905がシャッタ901の上端に当接して該シャッタ901が相対的にチャンバ体106から押し下げられ、磁石相互が離脱して搬入口116および搬出口117が開く。
【0105】
このように、チャンバ体106の呼吸現象により大気をチャンバ体106に吸い込む上昇工程において、その搬入口116および搬出口117が閉鎖されるため、大気がチャンバ体106内へ侵入し難くなり、チャンバ体106内に安定した低酸素濃度の窒素ガス雰囲気を形成することができるようになる。
【0106】
また、前記の窒素ガス供給流量の制御例と組み合わせればその作用は一層良好となり、窒素ガスの単位時間当たりの供給流量を大幅に少なくすることができるようになる。
【0107】
なお、本実施形態では、磁石903,904,押し下げ棒905により、シャッタ901を開閉させる構成について説明したが、シャッタ901を電子シャッタにより構成し、制御装置301でチャンバ体106の上下移動に応じて電子シャッタの開閉を制御するように構成してもよい。
【0108】
〔第3実施形態〕
上記第1,2本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上下方向に移動するとチャンバ体106の容積が増減する構成について説明した。本実施形態では、一体に構成した搬送コンベア107とチャンバ体106が上下方向に移動してもチャンバ体106の容積が変化しないように可変容積手段を設けた構成について説明する。
【0109】
<6.可変容積手段の例>
図10は、一体に構成した搬送コンベアとチャンバ体が上下方向に移動してもその容積が変化しないように可変容積手段を設けた例を説明する図であり、図1に示したはんだ付け工程2に該当する側断面に対応する。
【0110】
図10に示すように、チャンバ体106の下方位置に設けたスカート部108の開口面積と同じ面積の開口1001を該チャンバ体106の上方位置に設け、これを囲んでベローズ1002を設けたものである。このベローズ1002の上端は、前記開口1001の面積と同じ面積の固定板1003により封止されている。
【0111】
したがって、チャンバ体106が上下方向に移動してもそれに併せてベローズ1002が連動して伸縮し、スカート部108がはんだ槽109の溶融はんだ5中に深く侵入する際のチャンバ体106の容積減少をベローズ1002の伸長により打ち消し、逆にスカート部108がはんだ槽の溶融はんだ5中から抜ける方向に移動する際のチャンバ体106の容積増加をベローズ1002の縮小により打ち消すように作動する。
【0112】
その結果、チャンバ体106の呼吸現象が発生することが無く、チャンバ体106内を安定して低酸素濃度の窒素ガス雰囲気に維持することができるようになる。
【0113】
〔第4実施形態〕
<7.シルバニア方式への応用例>
先に、プリント配線板にマスクプレートを嵌め併せて部分はんだ付けを行う例を説明したが、本発明のはんだ付け装置を用いていわゆるシルバニア方式の部分はんだ付けを行うこともできる。すなわち、チャンバ体の容積を増大させることなく低酸素濃度の窒素ガス雰囲気中でシルバニア方式の部分はんだ付け行うことができる。
【0114】
例えば、英国特許第801510号に説明されるシルバニア方式は、プリント配線板の部分はんだ付け領域に対応した位置に溶融はんだ溢流ノズルつまり部分吹き口体を設けておき、このノズル群とプリント配線板とを近接させることで前記溢流はんだすなわちフロー波とはんだ付け領域を接触させて当該の部分はんだ付け領域のはんだ付けを行う技術である。
【0115】
図11は、図1に示した吹き口体110の吹き口111の周辺を示す斜視図であり、部分吹き口体ひいては部分吹き口を複数有する嵌合体を前記吹き口体の吹き口に嵌め合わせる様子を説明する図である。
【0116】
図11に示すように、吹き口体110の吹き口111に嵌合する嵌合体1100に、部分吹き口体1101を設けておけば、この部分吹き口体1101の吹き口1102から溶融はんだが溢流して各部分吹き口にフロー波を形成する。
【0117】
この部分吹き口体1101の各部分吹き口1102の位置は、被はんだ付けワークであるプリント配線板3の部分はんだ付け領域に一致するように設けてあるので、当該プリント配線板3をチャンバ体106および搬送コンベア107と一体に下降させる(図4を参照)ことにより、各部分はんだ付け領域とフロー波6とが接触し、当該の部分はんだ付け領域にのみ溶融はんだが供給されてはんだ付けが行われる。
【0118】
すなわち、図4(b)に示したようなマスクプレート4を使用することなく部分はんだ付けを行うことができるようになる。
【実施例】
【0119】
図1に示したフローはんだ付け装置、即ち、フラットディップ装置(不活性ガス雰囲気中でフローディップ式のはんだ付け作業を行う装置)の場合、窒素ガスの供給流量が400リットル/分の際にチャンバ体106内の酸素濃度100ppm以下を実現している。
【0120】
この数値は、特許文献2の技術を用いたはんだ付け装置の数値と同等の数値であり、本発明の技術が極めて有効であることを示している。
【0121】
また、これに図8(b)の窒素ガス供給流量制御を組み合わせることにより、平均380リットル/分の窒素ガス供給流量でチャンバ体内の酸素濃度100ppm以下を実現しており、その性能の高さが明確に現れている。
【0122】
以上示したように、本発明のフラットディップ装置は、溶融はんだを広い開口(板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口)から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波にプリント配線板(電子部品が搭載され該電子部品とプリント配線板との間に被はんだ付け部を形成したプリント配線板)等の板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を面接触させることで複数の被はんだ付け部を一斉に加熱してはんだ付けを行うはんだ付け装置であり、しかもこのはんだ付け作業を、不活性ガスの単位時間当たりの平均供給流量も増大することなく、不活性ガス雰囲気中で行うことが可能となり、不活性ガスの大量供給による生産コストの上昇を抑えることができる。
【0123】
なお、図4(b)に示したように、目的とする領域にのみ開口を有するマスクプレートを板状の被はんだ付けワークに嵌め併せて前記はんだ付け作業を行うことにより、目的とする領域すなわち被はんだ付け領域のみに溶融はんだを供給する部分はんだ付け作業も行うことができる。このような部分はんだ付け作業は、例えば、リフローはんだ付けが行われたプリント配線板に、リフローはんだ付け方法でははんだ付けを行うことができない電子部品をはんだ付けする際に、その電子部品の被はんだ付け部やその周辺領域の被はんだ付け領域にのみ溶融はんだを供給してはんだ付けを行うために使用される。
【0124】
なお、これは一例であり、これに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
【0125】
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0126】
なお、上述した図5〜図8に示した制御が外部からインストールされるプログラムによって、制御装置301により遂行されていてもよい。そして、その場合、CD-ROMやフラッシュメモリやFD等の記憶媒体により、あるいはネットワークを介して外部の記憶媒体から、プログラムを含む情報群を出力装置に供給される場合でも本発明は適用されるものである。
【0127】
また、上記各実施形態を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0128】
以上により、窒素ガス等の不活性ガスの単位時間当たりの供給流量すなわち消費量を少なくしてフローディップはんだ付けを行うことができるはんだ付け装置を実現することができる。その結果、プリント配線板に搭載された電子部品のリードが長い場合(これを通常は基板下寸法が長いと言う)においても、また、マスクプレートを使用した部分はんだ付けにおいても、高品質のはんだ付けを低コストで行うことができるようになる。また、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中において高い生産性で部分はんだ付けをできるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
電子部品の小型化ひいては表面実装部品化が進むことと併せてプリント配線板のはんだ付け技術としてリフローはんだ付け技術が用いられることが多くなってきている。しかし、プリント配線板に実装された電子回路装置が外部のマンマシンインターフェイスと接続される部分においては、人間から見て等身大の電子部品が使用され、コネクタ等のはんだ付けするべきリードが長いものが多い。
【0130】
このようなはんだ付けリードの長い電子部品や形状の大きい電子部品のはんだ付けは、大量生産に対応するためにはフローディップ式のはんだ付け技術を採用するしかない。しかし、公害防止の観点から採用されている鉛フリーはんだは、大気雰囲気中では濡れ性(はんだ付け性)ひいては信頼性が劣り、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中でのはんだ付け作業が望まれていた。
【0131】
本発明のフラットディップ装置すなわち不活性ガス雰囲気中でフローディップ式のはんだ付け作業を行う装置は、このような時代の要望に応えるものであり、発明されたこの新しいはんだ付け装置の技術によれば、公害発生がなく高信頼性の電子装置を安価に供給できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明のフラットディップ装置の例を説明する図である。
【図2】図1の構成において設けられる窒素ガス供給系を示すシンボル図である。
【図3】図1の構成において設けられる主要制御系を示すブロック図である。
【図4】図1に示したフラットディップ装置におけるはんだ付け時の動作について説明する図である。
【図5】プリント配線板の(平面フロー波から見た)上下移動と横移動とによりプリント配線板が平面フロー波にどのように接液されてはんだ付けが行われるかを説明する図である。
【図6】プリント配線板の(平面フロー波から見た)上下移動と横移動とによりプリント配線板が平面フロー波にどのように接液されてはんだ付けが行われるかを説明する図である。
【図7】図1に示したチャンバ体(ひいてはプリント配線板)の上下移動に伴う該チャンバ体への単位時間当たりの窒素ガス供給流量の制御について説明する図である。
【0133】
である。
【図8】図1に示したチャンバ体(ひいてはプリント配線板)の上下移動に伴う該チャンバ体への単位時間当たりの窒素ガス供給流量の制御について説明する図である。
【0134】
である。
【図9】図1に示した一体に構成した搬送コンベアとチャンバ体が上昇する際にのみ搬入口と搬出口がシャッタにより閉鎖されるように構成した例を説明する図である。
【図10】一体に構成した搬送コンベアとチャンバ体が上下方向に移動してもその容積が変化しないように可変容積手段を設けた例を説明する図である。
【図11】シルバニア方式に応用する際の構成を示す吹き口の周辺の斜視図である。
【符号の説明】
【0135】
1 予備加熱工程
2 はんだ付け工程
3 プリント配線板
4 マスクプレート
6 平面フロー波
7 窒素ガス
106 チャンバ体
107 搬送コンベア
108 スカート部
109 はんだ槽
110 吹き口体
111 吹き口
118 第1のアクチュエータ
119 第2のアクチュエータ
301 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ槽内の溶融はんだを板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波に搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を接触させてはんだ付けを行うフラットディップ装置であって、
前記搬送手段を被うチャンバ体を前記搬送コンベアと一体に設け、このチャンバ体の前記噴流波を望む部分には前記吹き口の平面形状よりも大きい開口を設けると供に該開口には前記チャンバ体の外側に延び前記はんだ槽の吹き口体を囲んで前記はんだ槽内の溶融はんだ中に挿入されるスカート部を設け、このチャンバ体にはその内部に不活性ガスを供給する不活性ガス吐出手段を設け、
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体とを前記はんだ槽の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させる移動手段を設け、
前記移動手段の上下方向の移動量を制御して前記搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を前記平面状の溶融はんだの噴流波に接触させるように制御する制御手段を設けた、
ことを特徴とするフラットディップ装置。
【請求項2】
前記移動手段を複数設け、
前記制御手段は、前記複数の移動手段の上下方向の移動量を独立に制御して前記搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を傾斜させながら前記平面状の溶融はんだの噴流波に接触又は離脱させるように制御可能なことを特徴とする請求項1記載のフラットディップ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動手段により前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上下方向へ移動させる場合に、該上下方向移動に基づいて、前記不活性ガス吐出手段による不活性ガス供給流量を制御することを特徴とする請求項1又は2記載のフラットディップ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記移動手段により前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を下方へ移動させる場合に、該下方移動量に基づいて、前記不活性ガス吐出手段による不活性ガス供給流量を低下あるいは停止させるように制御することを特徴とする請求項3記載のフラットディップ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記移動手段により前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上方へ移動させる場合に、該上方移動量に基づいて、前記不活性ガス吐出手段による不活性ガス供給流量を増加させるように制御することを特徴とする請求項3又は4記載のフラットディップ装置。
【請求項6】
前記不活性ガス吐出手段を複数設け、
前記制御手段は、前記複数の不活性ガス吐出手段の不活性ガス供給流量を選択的に制御可能なことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項7】
前記チャンバ体は、前記被はんだ付けワークの搬入口と搬出口とを有するものであり、
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上下方向へ移動させる場合にのみ、前記チャンバ体の搬入口および搬出口を閉鎖する開閉手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項8】
前記チャンバ体に、前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上下方向へ移動させる場合に変化するチャンバ体内容積とは逆に容積が変化する連動可変容積手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項9】
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体は、被はんだ付けワークを予備加熱する予備加熱工程に属する搬送手段及びチャンバ体と分離されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項10】
はんだ槽内の溶融はんだを板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波に搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を接触させてはんだ付けを行うフラットディップ装置のはんだ付け方法であって、
前記搬送手段を被うチャンバ体を前記搬送コンベアと一体に設け、このチャンバ体の前記噴流波を望む部分には前記吹き口の平面形状よりも大きい開口を設けると供に該開口には前記チャンバ体の外側に延び前記はんだ槽の吹き口体を囲んで前記はんだ槽内の溶融はんだ中に挿入されるスカート部を設け、このチャンバ体にはその内部に不活性ガスを供給する不活性ガス吐出手段を設け、
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体とを前記はんだ槽の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させる移動手段を設け、
前記移動手段の上下方向の移動量を制御して前記搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を前記平面状の溶融はんだの噴流波に接触させてフローはんだ付けをすることを特徴とするフラットディップ装置のはんだ付け方法。
【請求項1】
はんだ槽内の溶融はんだを板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波に搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を接触させてはんだ付けを行うフラットディップ装置であって、
前記搬送手段を被うチャンバ体を前記搬送コンベアと一体に設け、このチャンバ体の前記噴流波を望む部分には前記吹き口の平面形状よりも大きい開口を設けると供に該開口には前記チャンバ体の外側に延び前記はんだ槽の吹き口体を囲んで前記はんだ槽内の溶融はんだ中に挿入されるスカート部を設け、このチャンバ体にはその内部に不活性ガスを供給する不活性ガス吐出手段を設け、
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体とを前記はんだ槽の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させる移動手段を設け、
前記移動手段の上下方向の移動量を制御して前記搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を前記平面状の溶融はんだの噴流波に接触させるように制御する制御手段を設けた、
ことを特徴とするフラットディップ装置。
【請求項2】
前記移動手段を複数設け、
前記制御手段は、前記複数の移動手段の上下方向の移動量を独立に制御して前記搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を傾斜させながら前記平面状の溶融はんだの噴流波に接触又は離脱させるように制御可能なことを特徴とする請求項1記載のフラットディップ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動手段により前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上下方向へ移動させる場合に、該上下方向移動に基づいて、前記不活性ガス吐出手段による不活性ガス供給流量を制御することを特徴とする請求項1又は2記載のフラットディップ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記移動手段により前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を下方へ移動させる場合に、該下方移動量に基づいて、前記不活性ガス吐出手段による不活性ガス供給流量を低下あるいは停止させるように制御することを特徴とする請求項3記載のフラットディップ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記移動手段により前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上方へ移動させる場合に、該上方移動量に基づいて、前記不活性ガス吐出手段による不活性ガス供給流量を増加させるように制御することを特徴とする請求項3又は4記載のフラットディップ装置。
【請求項6】
前記不活性ガス吐出手段を複数設け、
前記制御手段は、前記複数の不活性ガス吐出手段の不活性ガス供給流量を選択的に制御可能なことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項7】
前記チャンバ体は、前記被はんだ付けワークの搬入口と搬出口とを有するものであり、
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上下方向へ移動させる場合にのみ、前記チャンバ体の搬入口および搬出口を閉鎖する開閉手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項8】
前記チャンバ体に、前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体を上下方向へ移動させる場合に変化するチャンバ体内容積とは逆に容積が変化する連動可変容積手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項9】
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体は、被はんだ付けワークを予備加熱する予備加熱工程に属する搬送手段及びチャンバ体と分離されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のフラットディップ装置。
【請求項10】
はんだ槽内の溶融はんだを板状の被はんだ付けワークの平面形状よりも大きい形状の吹き口から噴流させて平面状の噴流波を形成しておいて、この平面状噴流波に搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を接触させてはんだ付けを行うフラットディップ装置のはんだ付け方法であって、
前記搬送手段を被うチャンバ体を前記搬送コンベアと一体に設け、このチャンバ体の前記噴流波を望む部分には前記吹き口の平面形状よりも大きい開口を設けると供に該開口には前記チャンバ体の外側に延び前記はんだ槽の吹き口体を囲んで前記はんだ槽内の溶融はんだ中に挿入されるスカート部を設け、このチャンバ体にはその内部に不活性ガスを供給する不活性ガス吐出手段を設け、
前記一体に設けられた搬送手段とチャンバ体とを前記はんだ槽の溶融はんだ液面に対して上下方向に移動させる移動手段を設け、
前記移動手段の上下方向の移動量を制御して前記搬送手段により搬送される板状の被はんだ付けワークの被はんだ付け面を前記平面状の溶融はんだの噴流波に接触させてフローはんだ付けをすることを特徴とするフラットディップ装置のはんだ付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−165472(P2007−165472A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357940(P2005−357940)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000232450)日本電熱計器株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000232450)日本電熱計器株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
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