説明

フラーレン類含有分散液

【課題】
樹脂配合用途および充填剤処理用途に好適な、溶媒除去の問題の生じないフラーレン類含有分散液を提供する。
【解決手段】
25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物と、フラーレン類を必須成分として含有する分散液であって、アミノ基を有する化合物が該分散液中に30重量%以上含まれていることを特徴とするフラーレン類含有分散液であり、好適には前記のフラーレン類が、アミノ基を有する化合物に1mg/mL以上溶解しており、また好適には、前記のアミノ基は、一級アミノ基および二級アミノ基のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン類を含有する分散液に関するものである。より詳しくは、本発明は、フラーレン類を高濃度に溶解させた分散液ならびにその分散液で処理した充填剤およびその分散液が配合された樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
60、C70、C76、C82およびC84のようなフラーレン類は、その特異な構造から、高い電子吸引性など独特の性質を有するため、電気電子機器、航空宇宙、自動車、建築資材および工業機械など、様々な用途への適用が検討されている。
【0003】
その独特な性質を十分に利用するためには、フラーレン類を溶媒もしくは樹脂組成物等に十分、溶解もしくは分散させる必要があるが、フラーレン類は一般に溶媒に溶解し難いという問題があるため、フラーレン類の各種用途への適用の障害となっている。また一方で、フラーレン類は、ベンゼンやトルエンなどの一部の芳香族系の溶媒には溶解することが報告され(非特許文献1参照)、フラーレン類の抽出や精製に用いられている。しかしながら、これらのフラーレンの溶液を樹脂組成物に配合したり、充填剤の処理液として用いる場合、溶媒を完全に除去することが難しかったり、溶媒を除去できたとしても多大な労力が必要になる場合がある。また、フラーレン類の溶液を樹脂組成物に配合する場合、溶媒を完全に除去することが出来ないと、樹脂組成物を硬化する際にボイドが生じたり、残存している溶媒が可塑剤として働き機械物性面で悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
また、フラーレン類をエポキシ樹脂に直接配合して分散させ機械物性が向上したという報告があるが(特許文献1参照)、これは分散液を用いる提案ではない。また別に、フラーレン類をアミンを含む溶液に多量に溶解させる方法は知られている(非特許文献2参照)。しかしながらこの方法では、ジメチルスルホキシド(DMSO)やテトラヒドロフラン(THF)などの溶媒を多量に用いており、これらの溶媒を除去し乾燥させるために、真空下で1週間を要するなど多大な労力を掛けているのが現状である。
【0005】
また、フラーレン類と類似の化学物質であるカーボンナノチューブの分散液を得る方法において、アミノ基を有する高分子化合物を分散助剤として用いる方法が知られているが(特許文献2参照)、やはり、分散媒である水や有機溶媒の除去に問題が生じる。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、フラーレン類を高濃度に溶解させた高濃度のフラーレン類含有分散液を得ることに成功し、溶媒の除去等の問題が発生しにくいという課題の本発明に想到した。
【特許文献1】特開2004−182775号公報
【特許文献2】特開2004−250664号公報
【非特許文献1】W. Kratshmer 他3名、Nature、米国、1990年、347、358
【非特許文献2】Zhihua Lu 他2名、 Macromol. Chem. Phys.、1999年、200、1515
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フラーレン類を高濃度に溶解させた溶媒除去の問題の生じないフラーレン類含有分散液を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、フラーレン類を高濃度に溶解させた分散液で処理した充填剤およびその分散液が配合された樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成せんとするものであって、本発明のフラーレン類含有分散液は、25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物と、フラーレン類を必須成分として含有する分散液であって、アミノ基を有する化合物が該分散液中に30重量%以上含まれていることを特徴とするフラーレン類含有分散液である。
【0010】
本発明のフラーレン類含有分散液の好ましい態様によれば、前記のフラーレン類は、アミノ基を有する化合物に1mg/mL以上溶解しており、また、前記のアミノ基は、一級アミノ基および二級アミノ基のいずれかであることである。
【0011】
本発明のフラーレン類含有分散液は、樹脂配合用および充填剤処理用として好適に用いられる。また、フラーレン類含有分散液が配合された樹脂組成物と、フラーレン類含有分散液で処理された充填剤は、充填剤強化複合材料の製造に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶媒除去の問題の生じないフラーレン含有分散液を提供する。これによりフラーレンにより機械物性が向上した充填剤強化複合材料ならびに、その前駆体であるプリプレグ、樹脂組成物、充填剤を提供する。これらは、一般産業用途、自動車用途、航空・宇宙用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のフラーレン類含有分散液とその用途について、詳細に説明する。
【0014】
本発明のフラーレン類含有分散液は、25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物と、フラーレン類を必須成分として含有する分散液であり、フラーレン類が25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物に一部溶解した状態の分散液を形成している。
【0015】
本発明で用いられる25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物(以下、成分[A]ということがある。)は、フラーレン類に化学的に吸着もしくは反応して結合することにより、フラーレン類の成分[A]への親和性がよくなり、フラーレン類を多量に溶解もしくは均一に分散させるために必須の成分である。また、成分[A]はフラーレン類含有分散液中に少なくとも30重量%含まれていることが必要である。フラーレン類含有分散液中の成分[A]の含有量は、好ましくは30重量%以上99.9重量%以下であり、さらに好ましくは35重量%以上99重量%以下である成分[A]の含有量が30重量%未満では、フラーレン類が十分に成分[A]に親和しないため、フラーレン類の溶解や分散がわるくなりフラーレン類の沈殿物が生じることや、同時に添加する成分[A]以外の有機溶媒の量が増えることがあり成分[A]以外の有機溶媒の除去の問題が生じるために好ましくない。また、成分[A]の量が99.9重量%より多量であると、添加するフラーレン類の量が少なくなり、十分な添加効果が得られないことがある。
【0016】
本発明において、フラーレン類が溶媒中に分散しているとは、フラーレン類が凝集してなるクラスターの数平均粒径が1μm以下で、成分[A]中に均一に分布している状態を指す。クラスターの数平均粒径の下限は0.7nm程度である。また、フラーレン類が溶解しているとは、単分子もしくは、数〜数十個のフラーレン類からなるクラスターで液中に均一に分散している状態を指す。フラーレン類含有分散液中のフラーレン類からなるクラスターの数平均粒径は、温度を25℃として、動的光散乱式流度分布測定装置を用いて、数平均粒径を測定する。本発明では、動的光散乱式流度分布測定装置として、大塚電子(株)製 FPAR―1000を用いた。
【0017】
本発明で用いられるアミノ基を有する25℃以下で液状である化合物とは、ガラス転移温度または融点のいずれかまたは両者が室温(25℃)以下のものであり、室温で流動性を示すものをいう。ここで言うガラス転移温度は示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいてもとめた中間点温度であり、融点は、JIS K7121(1987)に基づいてもとめた融解ピークの温度である。
【0018】
25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物(成分[A])の粘度は、室温で0.1mPa以上10000mPa・s以下であることが好ましい。成分[A]の粘度は、さらに好ましくは4000mPa・s以下であり、特に好ましくは1000mPa・s以下である。[A]成分の粘度が10000mPa・sより高いと、フラーレン類の分散や溶解することにより、更にフラーレン類含有分散液の粘度が上昇し、取り扱い性が悪くあることがあり好ましくない。ここで言う粘度は、E型粘度径を用いて、コーンプレート(直径24mm、角度1°34′)を用い、25℃、回転数10rpmの条件で測定した値である。
【0019】
アミノ基を有する化合物の分子中に含まれるアミノ基は、一級アミノ基、二級アミノ基および三級アミノ基のいずれでも良いが、フラーレン類への親和性の観点から、一級アミノ基もしくは二級アミノ基のいずれかが、分子中に少なくとも1個以上含まれていることが好ましい。アミノ基を有する化合物としては、脂肪族鎖についた脂肪族アミンと、芳香族環に直接ついた芳香族アミンがあり、本発明では脂肪族アミンおよび芳香族アミンいずれを用いても良いが、フラーレン類との親和性の観点から、少なくとも1個以上のアミノ基を有する化合物が、脂肪族アミンであることが好ましい。また、脂肪族アミンが一級アミンもしくは二級アミンであることが好ましい。
【0020】
このようなアミノ基を持つ脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−アミノメチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、オクチルアミン、ノルボルナンジアミンが好ましく用いられる。芳香族アミンとしては、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルトルエンジアミン、グリシジルアニリン、グリシジルトルイジンおよびグリシジルアミノフェノールなどが好ましく用いられる。
【0021】
本発明で用いられるフラーレン類(以下、成分[B]ということがある。)とは、12個の5員環と2個以上の6員環からなる球殻状に閉じた炭素分子のことを指す。フラーレン類としては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、および、炭素数が84よりも多い高次フラーレン類、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0022】
これらのフラーレン類は、一般に公知な方法のいずれで製造しても良い。例えば、高温・高圧レーザー蒸発法、抵抗加熱法、アーク放電法、高周波誘導加熱法、燃焼法およびナフタレン熱分解法などが好ましく用いられる。これらのフラーレン類は、合成後に精製することにより、フラーレン類以外の炭化物による影響を除外することができる。また、これらフラーレン類を酸やアルカリで処理することにより、表面に水酸基を付与したり、その他デンドリマーなどの分子を化学的に付加したり、水素プラズマなどにより表面を水素化するなどして誘導体化したフラーレン類を用いることもできる。水酸基や水素を付与することにより、25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物(成分[A])への親和性が良くなる。これらのフラーレン類は、単独で用いてもいいし、複数のものを組み合わせて用いても良い。例えば、C60とC70を組み合わせて用いると成分[A]との親和性がより高くなることがある。フラーレン類を複数混合して用いる場合は、フラーレン類中に、C60もしくはC60の誘導体が合わせて50重量%以上含まれていることが好ましく、更に好ましくは60重量%以上である。
【0023】
このようなフラーレン類の市販品としては、Fullerene(C60,98%)[Aldrich社製]、Fullerene soot(C60,76%、C70,22%)[Aldrich社製]、ナノムパープル(C60)[フロンティアカーボン(株)社製]、ナノムミックス(C60,60%、C70、25%含有)[フロンティアカーボン(株)社製]などが挙げられる。水素化フラーレンや水酸化フラーレンの例としては、ナノムスペクトラ[フロンティアカーボン(株)社製]などが挙げられる。
フラーレン類(成分[B])が、25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物(成分[A])中に、好ましくは1mg/mL以上2000mg/mL以下、より好ましくは5mg/mL以上2000mg/mL以下、さらに好ましくは10mg/mL以上1500mg/mL以下溶解していることにより、樹脂組成物や繊維強化材料に用いた際にフラーレン類の含有量を増やすことができる。また、成分[B]は、フラーレン類含有分散液中に0.1〜70重量%含まれていることが好ましい。より好ましくは0.2〜65重量%含まれていることが好ましい。
本発明においては、フラーレン類(成分[B])は、フラーレン類含有分散液中では、溶解しているものと、数平均粒径が1μm以下のクラスターとして分散しているものが混在している。
本発明のフラーレン類含有分散液の粘度は、室温(25℃)で0.1mPa以上20000mPa・s以下であることが好ましい。フラーレン類含有分散液の粘度は、さらに好ましくは0.1mPa以上10000mPa・s以下であり、特に好ましくは0.1mPa以上4000mPa・s以下である。粘度が20000mPa・sを超えると、フラーレン類含有分散液を樹脂に配合にしたり、フラーレン類含有分散液で充填剤を処理するときに、取り扱い性が悪くなることがある。分散液の粘度は、E型粘度径を用いて、コーンプレート(直径24mm、角度1°34′)を用い、25℃、回転数10rpmの条件で測定した値である。
本発明のフラーレン類含有分散液には、必要に応じて、分散液の粘度を下げるためなどの目的で、希釈剤として有機溶媒等を加えても良い。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、キシレン、スチレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トリクロロメタン、n−ヘキセンおよびn−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらの希釈剤の配合量は、フラーレン類含有分散液中の0〜50重量%の範囲で配合することができる。配合量が50重量%より多くなると、溶媒除去に労力を要するなどの問題がおきることがある。
【0024】
本発明のフラーレン類含有分散液の調整方法は、超音波、自公転式ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、ボールミルおよびビーズミルなど一般的な、固液混合用の方法のいずれでも可能であり、いくつかの方法を組み合わせて調製してもよい。ホモミキサー、ホモジナイザー、ボールミルおよびビーズミルのごとく剪断力の強い混合方法を使うと、フラーレン類の数百〜数千個が凝集してできるクラスターを、より小さなフラーレン類からなるクラスターに解砕することができ、25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物への溶解や分散がはやくなる。フラーレン類(成分[B])と25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物(成分[A])との混合の際、必要ならば、加温もしくは冷却してもよい。溶解度が最大になる温度は、成分[A]により異なるが、溶解度が最大になる温度付近で処理することにより、成分[A]へのフラーレン類の溶解がはやくなる。
【0025】
本発明のフラーレン類含有分散液は、樹脂組成物に配合して用いることができる。組み合わせる樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれでも良い。樹脂組成物中では、フラーレン類は単分子で分散しているか、もしくは、数平均粒径が1μm以下のクラスターとして分散していることが好ましい。数平均粒径が1μm以上であるとフラーレン類の配合量に対する性能向上幅が小さくなることがある。ここでいう樹脂組成物中の数平均粒径は、樹脂組成物の硬化物の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観測し、該硬化物中に存在する少なくとも100個以上のフラーレン類のクラスターの外径を測定し、平均することにより求めることができる。フラーレン類のクラスターは、単分子(C60では直径0.7nm)または、数〜数十分子からなる10nm以下の平均粒径のクラスターとなると、SEMやTEMでも観察が困難になることがあり、フラーレン類が含まれているが観測不可能な場合は10nm以下と見なす。また、観測に際して、化学的、物理的に染色もしくはエッチングしたり金属を蒸着したりしてもよい。具体的に例を挙げると、SEMの測定条件としては下記のとおりである。
【0026】
・装置:S−4100走査型電子顕微鏡(日立株式会社製)
・加速電圧:3kV
・蒸着:Pt−Pd 約4μm
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブチルテレフタレート、ABS、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて、ポリマーアロイとして用いても良い。また、熱可塑性樹脂を単独ではなく、熱硬化性樹脂と混ぜ合わせて用いても良い。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ウレア樹脂、ビニルエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂等が好ましく用いられる。中でもエポキシ樹脂やベンゾオキサジン樹脂は、フラーレン含有分散液の溶媒であるアミン類と反応して硬化するもしくはアミン類を骨格中に取り込むため、用いたアミン類の除去を必要としない。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。また、必要に応じて触媒や硬化剤を加えてもよい。
【0028】
エポキシ樹脂としては、特に制限されず、二官能エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂を組み合わせて配合することができる。本発明において多官能エポキシ樹脂とは、1分子中にエポキシ基を3つ以上有するエポキシ樹脂をいう。二官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、ビスフェノールS型エポキシ、グリシジルアニリンおよびグリシジルトルイジンなどが挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂としては、例えば、トリグリシジルアミノフェノール類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびトリスフェニルメタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。樹脂硬化物の引張伸度や樹脂撓み量の観点から、二官能エポキシ樹脂が、全エポキシ樹脂中30重量%以上100重量%以下含まれていることが好ましい。また、室温(25℃)で固形のエポキシと、液状のエポキシを混合して使うことにより、室温での粘度や組成物の融点もしくは軟化点を使用目的に合わせて調製することができる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物、ジシアンジアミド、尿素化合物、ハロゲン化ホウ素のアミン錯体およびスルホニム塩等公知のものを使用することができる。これらの硬化剤は単独で使用してもよく、複数のものを組み合わせて用いても良い。
【0029】
ベンゾオキサジン樹脂とは、フェノール類と、ホルムアルデヒド、アミン類の重縮合物である。具体的には、ビスフェノールAとホルムアルデヒド、アニリンを原料とするビスフェノールA―アニリン型や、ビスフェノールFとホルムアルデヒド、アニリンを原料とするビスフェノールF−アニリン型、フェノールとホルムアルデヒド、ジアミノジフェニルメタンを原料とするフェノールージアミノジフェニルメタン型、およびトリスフェニルメタン、ホルムアルデヒド、アニリンを原料とするトリスフェニルメタンーアニリン型のベンゾオキサジン樹脂があり、これらのベンゾオキサジン樹脂は、いずれも耐熱性や難燃性に優れている。また、フェノールやクレゾールとホルムアルデヒド、アニリンからなる、フェノール−アニリン型もしくはクレゾール−アニリン型のベンゾオキサジン樹脂は、融点が室温以下になるため樹脂組成物としたときに、粘度が低くなるために好ましく用いられる。
【0030】
また、これらの熱硬化性樹脂としては、その硬化物のガラス転移温度が90℃以上のものが好ましく用いられる。ガラス転移温度が90℃未満では、耐熱性が不足することがある。ここで言うガラス転移温度は、示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいて求めた中間点温度である。具体的な測定条件は、窒素雰囲気下で、昇温速度10℃/分で0℃から350℃まで単純に昇温する。
【0031】
樹脂組成物の調整には、ニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロールおよび2軸押出機などが好ましく用いられる。フラーレン類含有分散液と樹脂組成物の混合の際には、加熱もしくは冷却しても良く、必要に応じて加圧もしくは減圧しても良い。
【0032】
本発明のフラーレン類含有分散液は、充填剤の処理剤として用いることもできる。充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、酸化チタンおよびナノクレイなどの粉体や、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、黒鉛化繊維およびケブラー繊維などの強化繊維等が挙げられる。ナノクレイとは、スメクタイトやマイカなどの層状粘度鉱物の未処理品もしくはアミン類などにより有機化を施したものを指す。通常、フラーレン類はこれらのとは親和性にかけるが、フラーレン類含有分散液中にアミン類が含有されていることによって化学的に親和性が付与される。
【0033】
充填剤を処理する方法としては、フラーレン類含有分散液を充填剤に直接スプレーしても良いし、充填剤をフラーレン類含有分散液中に浸漬してもよい。充填剤が強化繊維の場合は、フラーレン類含有分散液中に一定速度で浸漬し巻き取ることにより、繊維表面への均一な付着が可能になり取り扱い性の面でも優れている。フラーレン類含有分散液の充填剤への付着量は、用途により異なるが、充填剤に対してフラーレン類含有分散液が0.01%〜10重量%の範囲であることが好ましい。付着量の測定は、充填剤の種類により変える必要があるが、充填剤を有機溶媒などで洗浄したり、もしくは300℃以上の温度でフラーレン類含有分散液を焼き飛ばすことなどの操作を行う前後の重量を測定することにより求めることができる。例えば、炭素繊維や黒鉛化繊維へのフラーレン類含有分散液の付着量は、次のようにして求められる。
【0034】
炭素繊維もしくは黒鉛化繊維束を秤量(W1)した後、50リットル/分の窒素気流中、温度450℃に設定した電気炉に15分間放置し、フラーレン類含有分散液剤を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維もしくは黒鉛化繊維束を秤量(W2)して、次式によりフラーレン類含有分散液の付着量を求める。
フラーレン類含有分散液の付着量(重量%)=[W1−W2]/W1×100
本発明の充填剤強化複合材料は、充填剤と樹脂組成物からなり、上記のフラーレン類含有分散液を配合した樹脂組成物、もしくは、フラーレン類含有分散液で処理した充填剤の少なくとも一方を含む。充填剤強化複合材料を得る方法としては、前駆体としてプリプレグ経る方法に加えて、レジンフィルムインフュージョン法や、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法およびレジン・トランスファー・モールディング法等の成形法によっても作製することができる。強化繊維機材を用いる場合、強化繊維機材の形態としては、一方向織物、二方向織物、、ニット、マット、不織布、組み紐、一方向に引き揃えた長繊維および10mm以下の長さにチョップした短繊維が挙げられる。ここで言う、長繊維とは実質的に10mm以上連続な単糸もしくは繊維束のことをさす。また、短繊維とは10mm未満の長さに切断された繊維束である。
【0035】
繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、黒鉛化繊維および“ケブラー”(登録商標)繊維の中から少なくとも1種類以上含まれていることが好ましい。また、比強度・比弾性率の観点から炭素繊維や黒鉛繊維のいずれかが含まれていることが好ましい。炭素繊維や黒鉛繊維としては、軽量化の観点から、JIS R7601(1986)に基づいて求められるストランド引張弾性率が150〜650GPaであることが好ましく、ストランド引張弾性率はより好ましくは200〜550GPaであり、さらに好ましくは300〜500GPaである。
【0036】
粉体を用いる場合、粉体の形状はどのようなものでも良いが、流動性の観点から球形のものが好ましく用いられる。また、2種類以上の平均粒径の異なる粒子を混合して使うことにより、大きな粒径の充填剤粒子の隙間に小さな粒径の充填剤粒子が入りこむため、充填剤量を増やすことができる。複数の粒子を用いる場合、材質は同じものでも良いし、異なるものを用いても良い。粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、酸化チタンおよびナノクレイ等が好ましく用いられる。粒子の数平均粒径としては、50nm〜1mmのものが好ましく用いられる。粒子の数平均粒径は、SEM観察もしくは、光学顕微鏡観察を行い、無作為に100個以上の粒子の外径を測定し平均することで求めることができる。
本発明の充填剤強化複合材料は、下記のプリプレグを賦形し、硬化することにより製造することができる。プリプレグの賦形は、単数または複数のプリプレグを型上やコア材上に積層してもよく、マンドレルに単数または複数のプリプレグを捲回してもよい。コア材としては、フォームコアやハニカムコアなどが好ましく用いられる。フォームコアとしては、ポリウレタン樹脂やポリイミド樹脂が好ましく用いられる。ハニカムコアとしては、アルミニウムコア、ガラスコアおよびアラミドコアなどが好ましく用いられる。
プリプレグは、リバースロールコーターやナイフコーターなどにより樹脂組成物を離型紙上に塗布してフィルム化し、強化繊維に樹脂組成物のフィルムを重ねて加熱加圧して含浸させたり、または繊維基材を直接、樹脂組成物の溶液にディップし乾燥させる、または、繊維基材上に樹脂組成物を直接吐出させることにより製造することができる。
【0037】
プリプレグは、単位面積あたりの強化繊維量が100〜2000g/mであることが好ましい。かかる強化繊維量が、100g/m未満では、所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、作業が繁雑となることがある。一方で、強化繊維量が2000g/mを超えると、プリプレグのドレープ性が悪くなる。また、繊維重量含有率は、好ましくは30〜90重量%であり、より好ましくは35〜85重量%であり、更に好ましくは40〜80重量%である。繊維重量含有率が30重量%未満では、樹脂の量が多すぎて、比強度と比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られなかったり、繊維強化複合材料の成形の際の発熱量が高くなりすぎることがある。また、繊維重量含有率が90重量%を超えると、樹脂の含浸不良が生じ、得られる複合材料はボイドの多いものとなる恐れがある。
【0038】
また、本発明の充填剤強化複合材料は、前記のの強化繊維基材および樹脂組成物の少なくとも一方含む、強化繊維基材および樹脂組成物からなるフィルムを積層し、得られた積層体を硬化させることにより製造することができる。強化繊維基材とフィルム状の樹脂組成物を積層する際に、単に強化繊維基材を重ね合わせるだけでなく、各種型やコア材に貼り付けてプリフォームしても良い。フィルム状の樹脂組成物とは、予め離型紙や離型フィルム上に所定量の樹脂組成物を均一な厚みで塗布したものを指す。このようになんらかの方法で繊維基材と樹脂組成物を積層した後に、これらを密閉して脱気してもよい。繊維重量含有率は、好ましくは30〜80重量%であり、より好ましくは35〜70重量%であり、更に好ましくは40〜65重量%である。繊維重量含有率が30%未満では、樹脂の量が多すぎて、比強度と比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られなかったり、繊維強化複合材料の成形の際の発熱量が高くなりすぎることがある。また、繊維重量含有率が80重量%を超えると樹脂の含浸不良が生じ、得られる複合材料はボイドの多いものとなる恐れがある。
【0039】
本発明の充填剤強化複合材料は、充填剤を型中に配置し、その後、液状の樹脂組成物を流し込み、硬化させることによっても製造することができる。充填剤として強化繊維を用いる場合、強化繊維基材を型内に配置する際、これらを積層し、賦形し、結着剤やステッチなどの手段で形態を固定してプリフォームとしたものを用いても良い。型は、剛体からならクローズドモールドを用いても良く、剛体のオープンモールドとフィルム(バッグ)を用いてもよい。繊維重量含有率は、好ましくは30〜80重量%であり、より好ましくは35〜70重量%であり、更に好ましくは40〜70重量%である。繊維重量含有率が30重量%未満では樹脂の量が多すぎて、比強度、比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られなかったり繊維強化複合材料の成形の際の発熱量が高くなりすぎることがある。また、繊維重量含有率が80重量%を超えると、樹脂の含浸不良が生じ、得られる複合材料はボイドの多いものとなる恐れがある。
【0040】
本発明の充填剤強化複合材料は、充填剤と樹脂組成物の混合物を加熱・加圧して、型に注入し、硬化もしくは冷却し固化させることによっても製造することができる。充填剤と樹脂組成物の混合方法は、公知の方法ならどのような方法を用いてもよい。充填剤の比率は、混合物の5〜95重量%が好ましく用いられる。充填剤が5重量%未満では、充填剤による物性の向上効果が乏しくなり、95重量%を超えると、混合物の流動性が乏しくなるため、ボイド等の原因になることがある。
【0041】
本発明の繊維強化複合材における樹脂組成物の硬化方法としては、湿気、熱、可視光・紫外線・電子線・放射線などのエネルギー線を用いることができる。また、硬化の際、必要に応じて、減圧したり加圧しても良い。加熱は、オートクレーブ、オーブンおよびプレスなどの装置により行われる。樹脂組成物をオーブン内やプレスで硬化温度まで一気に上げても良いし、室温から徐々に温度を上げて硬化温度まで上げても良い。室温から硬化温度まで上げる際には、硬化温度まで一定の昇温速度で上げてもよいし、途中の温度で一定時間保持し、その後、硬化温度まで上げても良い。硬化温度としては、硬化剤にもよるが、硬化後の耐熱性の観点から、80〜220℃の温度が好ましく用いられる。昇温速度は、0.1〜10℃/分昇温が好ましく用いられる。昇温速度が0.1℃/分未満では、目標とする硬化温度までの到達時間が非常に長くなり作業性が低下することがある。また、昇温速度が10℃/分を超えると、強化繊維基材各所での温度差が生じてしまうため、均一な硬化物が得られなくなることがある。
【実施例】
【0042】
フラーレン類として、C60(Aldrich社製)を用いた。
【0043】
(1)フラーレン類含有分散液の調整
ビーカーに、一定量の25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物(成分[A])を秤量する。この成分[A]にフラーレンC60(成分[B])を添加し、室温で超音波処理を行い、分散もしくは溶解させた。
【0044】
(2)フラーレン類含有分散液を配合した樹脂組成物の調合
樹脂組成物を調合した後、これに上記(1)で調整したフラーレンC60含有分散液を配合し、フラーレン類含有分散液を配合した樹脂組成物を調合した。
【0045】
(3)樹脂硬化物の曲げ弾性率
上記(2)で調合した樹脂組成物を80℃の温度に加熱して、2mm厚のテフロン(登録商標)製スペーサーにより2mm厚に設定したモールドに注入し、130℃の温度のオーブン中で1時間硬化して、厚さ2mmの樹脂硬化物の板を作成した。次に、得られた樹脂硬化物の板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171(1994)に従い曲げ弾性率を求めた。
【0046】
(4)プリプレグの作製
プリプレグは、下記のようにして作製した。未硬化の前記(2)で調合した樹脂組成物をナイフコーターを用いて、目付52g/mで離型紙上にフィルム化し、樹脂フィルムとした。この樹脂フィルムを用いて、一方向に引き揃えた炭素繊維(目付190g/m)の両面から加熱加圧含浸し、一方向プリプレグを得た。炭素繊維は、T700G(東レ社製)を使用した。
【0047】
(5)繊維強化複合材料の0°圧縮強度
上記(4)に記載のプリプレグを150×150mmの大きさにカットして、0°方向に6層積層した。これをオートクレーブを用いて130℃の温度で2時間で硬化させ試験用材料を得た。同様にしてつくった繊維強化複合材料を45×150mmの大きさに4枚カットしタブを作成した、このタブを130℃硬化用の接着フィルムを用いて、片面に2枚ずつ両側で同じ位置にタブ間が4.8mmになるように試験用材料に張り合わせ、130℃の温度で2時間で加熱し接着フィルムを硬化させた。
【0048】
タブ付け後、試験片を幅12.7mm、タブの長さが上下38mmずつ残るように長さ80.8mmにカットした。JIS K7076(1991)に従い、この試験片をインストロン万能試験機を用いて、クロスヘッドスピード1.27mm/分で圧縮を行い、0°圧縮強度を測定した。
【0049】
[実施例1]
成分[A]として一級アミノ基を持つ脂肪族アミンであるオクチルアミン(融点:−18℃、粘度:10mPa・s)を用い、これに、成分[B]のフラーレン類としてC60を290mg/mL均一に分散させたところ、沈殿物は生じなかった。また、クラスターの平均粒径は得られず、10nm以下のサイズで分散もしくは溶解した分散液になっていることがわかった。このとき、成分[A]の含有量は73.1重量%であった。このとき、得られた分散液の25℃における粘度は100mPa・sであった。また、数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0050】
[実施例2]
成分[A]として一級アミノ基を持つ脂肪族アミンであるエチレンジアミン(融点:−8.5℃、粘度:100mPa・s)を用い、これに、成分[B]のフラーレン類としてC60を290mg/mL均一に分散させたところ、沈殿物は生じなかった。また、クラスターの平均粒径は得られず、10nm以下のサイズで分散もしくは溶解した分散液になっていることがわかった。このとき、成分[A]の含有量は76.6重量%であった。このとき、この得られた分散液の25℃における粘度は800mPa・sであった。また、数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0051】
[実施例3]
成分[A]として一級アミノ基と二級アミノ基を持つ脂肪族アミンであるジエチレントリアミン(融点:−39℃、粘度:150mPa・s)を用い、これに、成分[B]のフラーレンとしてC60を290mg/mL均一に分散させたところ、沈殿物は生じなかった。また、クラスターの平均粒径は得られず、10nm以下のサイズで分散もしくは溶解した分散液になっていることがわかった。このとき、成分[A]の含有量は76.6重量%であった。このとき、この得られた分散液の25℃における粘度は1200mPa・sであった。また、数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0052】
[実施例4]
成分[A]として一級アミノ基を持つ脂肪族アミンであるn−アミノメチルエタノールアミン(融点:0℃以下、粘度:140mPa・s)を用い、これに、成分[B]のフラーレン類としてC60を、200mg/mL均一に分散させたところ、沈殿物は生じなかった。また、クラスターの平均粒径は得られず、10nm以下のサイズで分散もしくは溶解した分散液になっていることがわかった。このとき、成分[A]の含有量は83.7重量%であった。このとき、この得られた分散液の25℃における粘度は1000mPa・sであった。また、数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0053】
[実施例5]
成分[A]として一級アミノ基を持つ脂肪族アミンであるベンジルアミン(融点:−20℃、粘度:100mPa・s)を用い、これに、成分[B]のフラーレン類としてC60を、50mg/mL均一に分散させたところ、沈殿物は生じなかった。また、クラスターの平均粒径は得られず、10nm以下のサイズで分散もしくは溶解した分散液になっていることがわかった。このとき、成分[A]の含有量は95.1重量%であった。このとき、この得られた分散液の25℃における粘度は200mPa・sであった。また、数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0054】
[比較例1]
トルエン(融点:−95℃、粘度:0.6mPa・s以下)に、成分[B]のフラーレン類としてC60は2.8mg/mLで、沈殿が生じた。フラーレン分散後の25℃における粘度は、0.6mPa・sであった。沈殿物を取り除いた上澄み液の数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0055】
[比較例2]
n−メチルピロドリン(融点:−23℃、粘度:1.0mPa・s)に、成分[B]のフラーレン類としてC60を、0.89mg/mLで、沈殿が生じた。フラーレンC60分散後の25℃における粘度は、1.0mPa・sであった。沈殿物を取り除いた上澄み液の数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0056】
[比較例3]
n−ヘキサン(融点:−95℃、粘度:0.4mPa・s)に、成分[B]のフラーレン類としてC60を、0.043mg/mLで、沈殿が生じた。フラーレン分散後の25℃における粘度は、0.4mPa・sであった。沈殿物を取り除いた上澄み液の数平均粒径は測定下限以下の10nm以下であった。
【0057】
実施例1〜5と比較例1〜3の比較から、アミノ基を有する化合物を分散媒として用いるにより、飛躍的に沈殿が生じにくくなる。すなわち、溶解もしくは分散性がよくなっていることがわかる
[実施例6]
エポキシ樹脂YD128(東都化成社製、エポキシ当量189)100重量部に、硬化剤としてジシアンジアミド6.3重量部、硬化触媒としてDCMU(保土谷化社学製)を3重量部添加した樹脂組成物に、実施例1で得られたフラーレン類含有分散液を5重量部加えて、樹脂組成物中にフラーレン類が3重量部になるように添加し樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を前記(3)のようにして硬化せさせたところ、ボイドは発生しなかった。また、曲げ弾性率は3.3GPaとなり、ガラス転移温度は105℃となった。また、この樹脂硬化物の断面をSEM観察したところ、フラーレンのクラスターは観察されず、観測限界の10nm以下のクラスターで分散していることがわかった。この樹脂組成物を用いて前記(4)のようにしてプリプレグを作成し、硬化させ繊維重量含有率64.2重量%の繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料の0°圧縮強度は、1500MPaとなった。
【0058】
[比較例4]
エポキシ樹脂YD128(東都化成社製、エポキシ当量189)100重量部に、硬化剤としてジシアンジアミド6.3重量部、硬化触媒としてDCMU(保土谷化社学製)を3重量部添加した樹脂組成物に、オクチルアミンを5重量部加えた樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を硬化させたところ、ボイドは発生しなかった。また、硬化物の曲げ弾性率は3.1GPaでとなり、ガラス転移温度は100℃となった。この樹脂組成物を用いて前記(4)のようにしてプリプレグを作成し、硬化させ繊維重量含有率64.2重量%の繊維強化複合材料を得た。この繊維強化複合材料の0°圧縮強度は1420MPaとなった。
【0059】
実施例6と比較例4の比較により、フラーレンC60の配合により、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度、曲げ弾性率および繊維強化複合材料の0°圧縮強度が向上することがわかる。
【0060】
[実施例7]
エポキシ樹脂YD128(東都化成社製、エポキシ当量189)100重量部に、ジシアンジアミド6.3重量部、硬化触媒としてDCMU(保土谷化社学製)を3重量部添加した樹脂組成物に、3重量部のフラーレンC60をモノエタノールアミン(融点:10.5℃、粘度:24mPa・s)7.5重量部に分散させしたフラーレンC60含有分散液(成分[A]71.4重量%、25℃粘度250mPa・s)を添加し、樹脂組成物を得た。前記(3)のようにしてこの樹脂組成物を硬化させたところ、ボイドは発生しなかった。また、硬化物の曲げ弾性率は3.7GPaで、ガラス転移温度は96℃となった。また、この樹脂組成物の硬化物の断面をSEM観察したところ、フラーレンのクラスターは観察されず、観測限界の10nm以下のクラスターで分散していることがわかった。
【0061】
[比較例5]
エポキシ樹脂YD128(東都化成社製、エポキシ当量189)100重量部に、ジシアンジアミド6.3重量部、硬化触媒としてDCMU(保土谷化社学製)を3重量部添加した樹脂組成物に、モノエタノールアミン(融点:10.5℃、粘度:24mPa・s)を7.5重量部加え樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率は3.5GPaでとなった。ガラス転移温度は91℃となった。
【0062】
実施例7と比較例5の比較により、フラーレンC60の配合により、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度と曲げ弾性率が向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のフラーレン類含有分散液は、フラーレン類を高濃度に溶解させた分散液であり、これにより、従来ではなしえなかった高濃度のフラーレン類含有分散液で処理した充填剤や、フラーレン類含有分散液を配合した樹脂組成物を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃以下の温度で液体のアミノ基を有する化合物と、フラーレン類を必須成分として含有する分散液であって、アミノ基を有する化合物が該分散液中に30重量%以上含まれていることを特徴とするフラーレン類含有分散液。
【請求項2】
フラーレン類が、アミノ基を有する化合物に1mg/mL以上溶解していることを特徴とする請求項1記載のフラーレン類含有分散液。
【請求項3】
アミノ基が、一級アミノ基および二級アミノ基のいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載のフラーレン類含有分散液。
【請求項4】
樹脂配合用である請求項1〜3のいずれかに記載のフラーレン類含有分散液。
【請求項5】
充填剤処理用である請求項1〜3のいずれかに記載のフラーレン類含有分散液。
【請求項6】
請求項4記載のフラーレン類含有分散液が配合された樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5記載のフラーレン類含有分散液で処理された充填剤。
【請求項8】
請求項6記載の樹脂組成物および/または請求項7記載の充填剤を含むことを特徴とする充填剤強化複合材料。

【公開番号】特開2007−169374(P2007−169374A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366264(P2005−366264)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】