説明

フルオロカーボンを用いた薄膜

【課題】 再現性があり、容易に調整可能で1nm未満ないしミクロメートルの範囲で極めて一様な厚さを有する薄膜を作製する。
【解決手段】 調製された物体を、コーティングのためのLB−法を使い、単層又は薄い多層、好ましくは1ないし50個の個別層、で適切にコーティングするためのLB−材料としてフルオロカーボンを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Langmuir−Blodgett(LB)薄膜に関するものであり、良く定義されている各々の層から構成される有機材料の薄膜の作製方法であり、構成分子の典型的寸法が一様な厚さである。名称は、物理学者のIrving Langmuir及び彼の共同研究者であるKatherine Blodgettに由来し、彼等が前記の薄膜の研究をした。この薄膜が液面上で浮遊し続けている間は空気−水面でのこのような単層は、Langmuir薄膜と呼ばれている。Blodgettは、各層の極めて一様な厚さが保持されている間に、前記薄膜を単一層として、又は繰り返し、多層として固体物質に移することが出来ることを発見した。このように薄膜は、Langmuir−Blodgett又はLB薄膜、LB−単層又はLB−多層と呼ばれる。このプロセスは図3、4、5及び6に略図が示されていて、詳細は後で説明する。
【0002】
本発明は、更に、化学的安定性、屈折率、接着性及び水ばかりでなく油も反撥することに関して技術に特異で、かつ工業的に有用な諸特性を有する部類の材料であるフッ素化有機材料に関する。
【0003】
本発明は、優れた光学的透明性と組み合わせた特異な低屈折率の材料なので、導波路、誘電ミラー及び反射防止膜のような光学要素に求められ、そしてLB−堆積プロセスにより提案される材料から作製することが出来る薄膜光学コーティングにも関する。
【0004】
LB薄膜の特定の諸特性により、自立型の数種の光学成分を作製すること、又は薄膜又は薄膜組立体を1つの基板から新規基板へ移することが可能であり、それによって、最終組立体は耐水性にしなければならないこと、及び水面から浸漬させることが出来る形状にしなければならない必要性は省かれる。
【背景技術】
【0005】
薄膜は、いろいろの分野で広範囲な用途の技術の中で使用されている。そのような薄膜は、各種の材料から作製することが出来、コーティング対象の表面に堆積させるか、或いは表面に直接化学反応によって形成される。
【0006】
作製の方法には、刷毛塗り、スプレーコーティング、浸漬コーティング、固体ブロック材料で表面を摩擦して空気中で表面を加熱して酸化物層を形成する基礎的技術から、超高真空の中での蒸発を使って表面上に化学気相蒸着又は微粒子を堆積させる技術的に極めて厳しい要求の方法までがある。中程度の複雑さのありふれた方法は、スピンコーティングであり、このスピンコーティングは、半導体産業、光学産業及び微細加工用に広く使用されている。浸漬コーティングは、コーティング対象の物品をコーティング材料の希薄選択の中に浸漬したのち、或る制御された速度のもとで、物品に材料を溶解させることが出来る或る待ち時間の後が多いが、その溶液からその物品を引き上げるプロセスである。薄膜は、材料の吸着及び付着している溶剤薄膜の蒸発により形成するのであり、この蒸発により表面上に溶質が残される。スピンコーティングは、コーティング材料の溶液(通常は極めて高濃度)が平坦で、高速で回転している物質の中心に塗布されるプロセスである。高速回転による表面張力、濡れ、粘度、遠心力及び蒸発の速度が、堆積する薄膜の最終厚さ及び品質を定義する。
【0007】
薄層コーティングの目的も、極めて広範囲をカバーしている。薄膜は、保護層として装飾目的、電気絶縁、反射の低減、反射の向上、或る波長を濾過するのような光学的機能に使用することが出来る。薄膜の大きい部類は接着特性に対するものであり;反対に、もう1つの部類は非粘着性コーティングである。接着性に対しては、通常、金属薄膜のような親水性薄膜が使用される;周知の例は、クロムコーティングの下地のニッケルの薄膜であり、これは鋼物品を腐食から保護するために考えられるものであり、美観と、そして光学的に優れた特性を発現させる。薄いニッケル層は、下地材料と仕上げコーティングとの間に充分に接着性を発現させることが必要である。非粘着性コーティングとして有機シリコーン材料又はフッ素化材料が広く知られている。非粘着性コーティングの具体的用途は、成形プラスチック部品用の離型剤である。幾つかの用途では、成形光学部品にように、このような用途は、成形部品に対してばかりでなく、金型に対しても表面に損傷を与えることなく、離脱品と離脱のし易さに関して極めて厳しく要求されることがある。最も周知の非粘着性材料は、おそらく、商品名Teflon(商標)として比較的良く知られているポリテトラフルオロエチレンである。食器のコーティングとしてTeflonが使用されていることで周知のように、大半のそのような薄膜は、比較的厚く、そしてコーティングの均一さは重要ではない。しかしながら、同じ様な材料がハードディスクドライブの非粘着性コーティングとして使用される場合、この薄膜は極めて薄く、極めて一様でなければならない。本発明の目的は、保護用又は非粘着性コーティングに限定はされないが、数マイクロメートルより遥かに以下の厚さの良く制御された一様性を有する後者のタイプの薄膜である。
【0008】
保護膜は比較的厚いのが普通であり、周知のように、ペイント、ラッカー、又は油性塗料で厚くなることが多い。しかしながら、コーティング対象の固形物体の平滑な表面のアタックにより、コーティングで抑制されることになっている損傷のメカニズムが進行することが多い。このようなケースでは、コーティングは極めて薄くすることが可能である。この場合の1つの例は、アルミニウムの表面の保護層であり、この場合、表面上に生成する酸化物自体が下地金属を保護する。多くの他の金属の場合、酸化物層も形成するが、酸化物は形成後に剥離してアルミニウムの場合のように下地金属に粘着しない。そのような材料を保護するためには、極めて薄い層で充分である;最上層を正確に変更することにより有効なコーティングが可能である。多くの場合、そのような薄いコーティングは、その他の理由で所望されている。1つの例は、磁気ディスクの保護コーティングである。この用途の非保護膜は、磁気式読み出し及び書き込みヘッドが、磁気層に可能な限り接近出来るように要望されている。しかしながら、表面の腐食性劣化は保護膜を必要とする。更に、読み出し及び書き込みヘッドが非常に近接するので、コーティングはシステムの開始と終了の時点で摩耗による損傷を保護するために非粘着性も持つべきである。これらの操作過程で、このヘッドはディスクに触れるのが普通である。また、損傷は、例えば機械的ショックにより偶然に表面に接触する場合に限定されなければならない。耐食性も非粘着性も(又は低摩擦性)と言う2つの条件は、Teflonのような表面に露出する材料で満たすことが出来る。このようなコーティングの使用に当たっては、幾つかの方法及び材料がある。最も好ましいものの1つは、フッ素化ポリマーである。通常、このポリマーは、スピンコーティングで塗布されるのが普通であるが、このスピンコーティングでは、無視出来る欠陥密度と一様性を有する充分に薄いコーティングが必ずしも常に可能とは限らない。本明細書の主題である材料は、この用途に対して製造業者によって推奨されている。塗布の推奨方法はスピンコーティング又は浸漬コーティングである。
【0009】
物体の表面特性だけが重要である場合のコーティングの別の用途は、表面上の油又は水分の拡がりを防ぐこと又は表面上の蒸気の凝縮を防ぐ隔膜である。ここで重要なことは、或る程度まで、粗さであり、次いで親水性、疎水性又は疎油性である。後者は、物体だけの表面層によって与えられ、従って所望の特性を有する表面は化学基を露出する極く薄い薄膜で充分である。フッ素化材料は、また、このような用途に使用されることが多く、本明細書の主題である材料はこの用途に対して供給業者から推奨されている。薄膜作製の推奨方法は、この場合、刷毛塗りである。
【0010】
薄膜の光学用途も、反射防止のために1種類の材料から作られた1層のような比較的単純なコーティングから、高性能の反射防止のため、又は極めて高反射性を有する高性能のミラーのような異なる材料の層の極めて精巧な組立体まで変化する。そのような用途では、特定の屈折率、及び等方性光学特性を有する光学的に透明な材料を必要とすることは共通している。例えば、基本材料が既に低屈折率ならば、空気との界面における或る層の反射防止膜は、空気の屈折率と、基本材料の屈折率との間の更に低い屈折率を有する薄膜を必要とする。普通のガラス、石英又は光学に有用なポリマーの場合、そのような材料は好ましくは1.4未満、理想的には1.3未満の屈折率を持つべきである。工業的に有用な材料のうちで最後の1.3の要件を満たすのはなく、最初の1.4の要件を満たすものは殆どない。最もありふれたものの1つは、MgF2、即ちフッ化マグネシウムである。図1は、単純な反射防止膜がどのように使用されるかの概略を示している。この例は、例えば、空気との界面にある、例えばガラス上の1層のコーティングを示している。含まれる材料3の屈折率は、基板(ガラス)に対してn1、反射防止膜に対してn2、そして第2媒体(空気)に対してn3と名付けられている。光線Lは、空気からガラスLtへ通過する。単純化して、ガラス表面に対して垂直な光線の入射を考える。光の部分は、反射して空気Lrに戻る。図面の上部は、構造体を貫通する屈折率のプロフィルを示している。屈折率及び薄膜の厚さが或る条件を満たせば、反射線は消失する。本プロセスの詳細は説明は、光学又は物理に関する標準的書籍で見ることが出来る。前記の1層反射防止膜の厚さは、入射光の波長の1/4でなければならず、屈折率は2つの主媒体の屈折率の積の平方根になるべきである。必要な厚さは、’光学厚さ’と呼ばれ、これは真空中よりも媒体中で遅く光が伝播することを考慮している材料の厚さである。理想的屈折率は、普通のガラスに対して極めて低いが、技術的に利用出来る比較的高い値のnでは、既に実用的に有用な結果が得られている。
【0011】
屈折率は、一般的に、波長によって決まり、前述の条件は光の波長による厚さを規定するので、そのような条件は1つの波長だけの場合を正確に満たすことが出来る。適切な厚さの条件も、或る入射角だけの場合にだけ満たされることが出来る。従って、実際に、そして屈折率は自由に選択出来ない材料特性なので、幾つかの層から成る比較的複雑なコーティングが使用されることが多い。しかしながら、低屈折率材料に対するニーズが常にある−屈折率が低ければ低いほど、全ての工業的目的にもそれだけ好ましい。
【0012】
薄膜作製用の低屈折率材料は、比較的高い範囲の屈折率と細かく同調することも好ましい。或る薄膜が、異なる屈折率を有する2種類の材料から成り、この薄膜の構造体の典型的寸法が光の波長よりも遥かに短い場合、その薄膜は平均光学屈折率を有する均質な材料のように作用する。従って、2種類の異なる材料の適切な成分を含む薄膜を堆積することにより2種類の材料の中間の屈折率を有する薄膜を作製することが可能である。両材料の極めて薄い薄膜として2種類の純粋な材料の極めて薄い層を交互に配置することにより有効な中間屈折率を得ることが出来る。例えば、材料1の2層、材料2の1層、次いで再び材料1の2層を堆積してこのプロセスを続けると、実効屈折率、neff=(n1*2+n2)/3、を有する層を作製することが出来る。
【0013】
堆積過程で有効(又は平均)組成を徐々に変化させることにより、屈折率が徐々に変化した薄膜を作製することが出来る。これは、組成が徐々に変化する極く薄い層を堆積することによって行なうことが出来る。作製のために蒸発を使用する場合、これは、第1材料を当初、僅かだけ、次いで純粋な材料2と一緒に層が完成するまでパーセントを上げながら第2材料を共蒸発させることにより実施出来る。前述のケースのように、2種類の材料の相対的厚さ又は周期を変更しながら、2種類の材料の極めて薄い層を交互に堆積することによって前記のような薄膜を作製することも出来る。
【0014】
そのような構造体が、基板の片面ではその基板と同じ有効屈折率を示し、一方、別の片面では隣接媒体の屈折率を示し、そして、薄膜の全厚さが、考えている層の波長より大きいならば、この界面における反射は完全に消失することが出来る。出願人等の知る限りでは、このことは、理論によってのみ行なわれてきたが、本プロセスの出願者での概念を用いて液体−ガラス界面に対して実施することが出来る。このケースは、その他の方法とは違って、反射の消失があらゆる波長とあらゆる入射角に対して有効なので特に興味深くなる。そのような反射防止膜も図1に示している。この概念を明らかにするために、図1でも説明されている2種類のコーティングの屈折率のプロフィルも示している。勿論、空気の屈折率を有する薄膜形成材料はなく、従って、この方法は、空気中の光学系には使用することは出来ず、水中、油中、その他の液体中で、又は異なる屈折率の2種類の固体間の界面で使用することが出来る。
【0015】
光学品質を持つ薄いコーティングの更に要求の厳しい用途は、誘電ミラーでの使用である。誘電ミラーは、基本的に厚さが各々、1/4の波長で低屈折率と高屈折率の2種類の材料の交互の層の堆積体である。再び書くが、後者の条件がそのような構造体は考慮中の特定の波長で設計されることを示す。そのような波長の場合、この波長を有する光は構造体の中の屈折率及び層の数に差によって決まる程度まで反射されるので、前記の薄膜の堆積はミラーとして作用する。誘電ミラーの構造を層2に示している。
【0016】
誘電ミラー構造は二次元導波路構造と似ている。これは中間の層より低い屈折率を有する外側2層を含む3層薄膜である。中間層の光はその層の内部に捕捉される。界面における全内部反射のために、光はクラッド層の中には逃げない。この2つの外層のうちの1層は、空気で置き換えることが出来る。二次元導波路は、広く知られている光ファイバーの導波路と等価な2次元導波路である。二次元導波路は、新たに台頭してきた集積光学の分野では重要である。
【0017】
LB−薄膜は、最初に、水−空気界面上に材料の単層を形成し、次いで界面を覆う単層に沿って固形物体を単純に移動することにより、この層をこの固形物体上に堆積することにより作製される。この方法の説明は、科学文献で見ることが出来る。最近、この技術の総括的説明を、G.G.Robertsによる書籍であり、発行はPlenum Press、ニューヨーク及びロンドン、1990年の“Langmuir−Blodgett Films”で見ることが可能である。“フィルムバランス(filmbalance)”の名称で知られるこのような薄膜の作製用装置を図3に略図で示している。この装置は、水で満たされた浅い容器から成り−この装置はpH又はイオン濃度を制御するため加えられた或る種の化学薬品を持つことがある。比較的深い凹部又は窪みが、しばしば名称が示すように、容器の底部又はトラフに取り付けられている。材料の薄膜は、水面に少量の展開溶液を落とすことによりこの表面に形成される。この展開溶液は、一般的に、1mg/モルの薄膜形成材料を好適な溶液に溶かした混合物である。この溶液は、この材料を良く溶解し、この材料を引き連れながら水面全体に素早く拡がり、その後は、水面から素早く且つ完全に蒸発すべきである。溶剤は、薄膜形成材料を分散することを目的として作用するばかりでなく、この溶剤によって薄膜形成に必要とされる極めて少量の材料を比較的容易に取り扱うことも出来る。このような薄膜を形成する材料は反対の湿潤性を有する2種類の部分を有することが多い有機分子である。片方(比較的小さい)部分は親水性であり、有機分子を水面に固定し、もう一方の部分は疎水性であり、水中で有機分子の溶解を防ぐ。この目的のために使用することが出来て、この分類に当てはまらない幾種類かの材料もある:これらの材料は高分子材料であることが多い。優れた薄膜形成の条件は、分子が、互いによりも、水面(大きい分子であることもある添加剤も含めて)との(少しは)相互作用を持つことである。親水性−疎水性スキームは、歴史的理由からこの条件の最も頻繁に使用される手段に過ぎず、そしてこのケースでは相互作用のバランスは他のスキームよりも制御し易いからである。当初の薄膜は、トラフの表面が、最初は1層より少ない分子で被覆されるような少数の分子を含むべきである。この層は、次には圧縮されて緻密な単層、即ち図3に示しているように、水面全面に隔膜を移動することにより分子の1分子の厚い層となる。薄膜の圧縮のこのようなプロセスは、表面張力センサーにより、下相水の表面張力の変化を測定することにより正確に監視することが出来る。各々の薄膜形成材料は、薄膜の密度又は薄膜に利用される面積に対する表面張力のこのように特徴的な依存性(通常、“薄膜圧”と呼ばれ、ミリニュートン/メートル単位で測定される)を有していて、これは隔膜の位置によって与えられる。このような装置も、単層が被覆された水面全体を、スムースに且つ良く制御された速度でコーティング対象の物体を上下に移動することが出来るデバイスも有する。薄膜の堆積により水面上の分子の密度が下るので、表面張力を監視すること及び隔膜位置を適切に調整することにより、この密度を一定に又は好適な狭い範囲内に保持する手段もある。
【0018】
薄膜材料、物体の表面特性、温度、下相水のpHの適切な条件、なかでも温度条件のもとで、隔膜物体が水−空気界面全体を移動される毎に単分子薄膜が堆積する。このことは図4ないし6に示されている。図4は、親水性基板の上の薄膜の堆積を示し、図5は疎水性基板上の薄膜の堆積を示している。薄膜分子は、より親水性の強い部分が水の方を向きながら水面上に常に配向し、一方、より疎水性部分は空気の方に向くので、新しい層が堆積する毎に基板の湿潤性が変る。このことにより、堆積のプロセスは、薄膜の全厚さが所望の値に達するまで隔膜物体を水面で上下に単純に反転移動することによって続けることが出来る。勿論、図6に示しているように、後続の浸漬の間に単層の材料を変更して複雑な構造体の組立体を得ることは可能である。
【0019】
一般的に、光学材料は光学異方性を示す。このことは、例えば、分子が互いに配列されるとき、屈折率は、この配列に関してまちまちの方向である。分子のような配列は、いつくかの方法で薄膜を作製する過程で起こることがある。スピンコーティングを考えることは判り易い。コーティング工程での材料の放射状流により分子、特に高分子材料、は放射状パターンで配列される。同様な方法で、浸漬コーティングでは浸漬方向に分子の配列がおこる、極めて類似の効果をLB−堆積過程で見ることが出来る。これについての説明を文献で見ることが出来る(例えば:S.Schwiegk、T.Vahlenkamp、G.Wegner、Y.Xu、Langmuir−Blodgett プロセス過程での硬い棒状高分子の主鎖配向の起源について(On the origin of the main chain orientation of rigid−rod macromolecules during the Langmuir−Blodgett process)、Thin Solid Films 210(1992)6;又はO.Albrecht、H.Matsuda、K.Eguchi、T.Nakagiri、単層に堆積−誘起流動を使うLangmuir−Blodgett薄膜の均質性の制御(Control of the Homogeneity of Langmuir−Blodgett Films using the Deposition−Induced Flow in the Monolayer);Thin Solid Films 210(1992)276)。図3の水面上の矢印は、堆積過程での薄膜の一般的な流れを示している。試料の近くでは異方性分子、特にポリマーの流動配向を引起す集束的流れが存在する。このような配向は有益になることがあり、これを使うと所望の効果を得ることが可能であるが、単純な光学的用途では性能を低下させる。しかしながら、LB−薄膜は、光の波長より遥かに薄く、平均特性は多くの薄い層から作製される薄膜の光によってだけ観察されるので、連続的な浸漬の間にコーティングされる物体をランダムに回転することによりそのような効果を単純に平均的に計算することが出来る。等方性薄膜を得るために類似のスキームは、幾つかの方法で可能であるが、その他の薄膜堆積方法と甲乙付け難い。
【0020】
勿論、薄膜組立体を作製することは可能であり、その場合、薄膜のうちの或る種類だけがLB−薄膜であり、その他の薄膜は別の方法で作製される。従って、LB−法を使って低屈折率の薄膜を堆積すること、及び例えば蒸発を使って組立体の高屈折率層を形成することが出来る、と言うのは、1.6超の高い屈折率層がこの方法で容易に形成されるからである。
【0021】
薄膜の構造に損傷を与えることなく、基板からLB−薄膜を剥離することが出来る、しかも独立の、無支持型薄膜さえも形成出来る方法で、幾種類かのLB−薄膜を作製出来る。発明者等は、独立フィルムの形成も薄膜組立体と一緒に可能であり、その場合、必ずしも全ての層が単独で使用される時に剥離出来るLB−薄膜及び/又は同じ種類とは限らないことを見出した。例えば、本明細書の主題である材料は、独立フィルムを形成するのに剥離されることが出来なくて、この材料及び第2の高屈折率ポリマーから作製される誘電ミラー構造体は剥離されて、独立した誘電ミラーを形成することが出来る。
【0022】
LB−薄膜を作製するための前述の方法は、バッチプロセスであり、容易に理解されるように、そのような堆積装置に付着した薄膜は、速やかに引き上げられて用が済み、そして新しい薄膜が繰り返し調製されなければならない。幾つかのケースでは、薄膜の有用性を制限することは、残りの薄膜量が次の層には不足することであるばかりでなく、或る薄膜は時間によって急速に変化して薄膜が旨く堆積することもあること、或いは、同じ僅かな時間に所望の特性を持つこともある。薄膜を再開するには、堆積が整う前に、薄膜の水面の洗浄、消失した下相水の再充填、再度の展開、再圧縮及び度々、薄膜の状態調節のための待ち時間も必要である。この理由から、工業的用途に更に適した手段は、例えば次の文献で説明されている連続式LB−薄膜堆積装置を使用することである、即ちO.Albrecht、H.Matsuda、K.Eguchi、T.Nakagiri、パイロット生産のためのLB−堆積機の建設及び使用方法(Construction and use of LB deposition machines for pilot production);Thin Solid Films 284(1996)152。このような装置では、薄膜のエージングが比較的正確に且つ遥かに便利に制御されながら、薄膜は高速度で連続的に堆積することが出来る。
【0023】
大半の薄膜は、基板上に所望のパターンを形成するように作製出来るだけなので、この薄膜は有用である。このタイプの最も重要な薄膜はフォトレジストである。しかし、なかでも接着用薄膜及び保護用薄膜もパターン化することが必要であることがおおい。このことは、その他の薄膜用に使用される同じ方法によりLB−薄膜で得ることが可能である。しかしながら、これを達成するには幾つかの更なる方法がある。1つのLB−薄膜の特定の方法は、或る種の薄膜が特定の基板上に堆積しないと言う事実を利用することである。大半の薄膜は、親水性表面上に堆積しない−又は更に正確には、大半の薄膜は親水性表面に結合せずに、もし水と再び接触すると洗い流される単層だけを親水性基板上に形成する。このことにより、親水性−疎水性構造体を基板に単純に押し付けてLB−薄膜を堆積することにより薄膜をパターン化することが出来る。薄膜は疎水性部分に堆積することになる。勿論、この場合、パターンの寸法、形状及び配向は最適の結果が得られるように最適化されなければならない。このタイプのパターンニングに極めて当てはまる好適な形状寸法は、縞状又は格子縞模様のパターン様の単純な形状寸法の構造体である。
【0024】
従って、LB−法は、前述の幾つかの用途に対して理想的な層を作製する手段を提供することが出来る、そして比較的安価な方法で妥当な薄膜コーティングが出来ることを考慮すれば、大抵の場合、LB−薄膜の作製費用は桁外れかも知れないが、より多くのことが想像出来る。
【非特許文献1】G.G.Robertsによる書籍であり、発行はPlenum Press、ニューヨーク及びロンドン、1990年の“Langmuir−Blodgett Films”
【非特許文献2】S.Schwiegk、T.Vahlenkamp、G.Wegner、Y.Xu、Langmuir−Blodgett プロセス過程での硬い棒状高分子の主鎖配向の起源について(On the origin of the main chain orientation of rigid−rod macromolecules during the Langmuir−Blodgett process)、Thin Solid Films 210(1992)6
【非特許文献3】O.Albrecht、H.Matsuda、K.Eguchi、T.Nakagiri、単層に堆積−誘起流動を使うLangmuir−Blodgett薄膜の均質性の制御(Control of the Homogeneity of Langmuir−Blodgett Films using the Deposition−Induced Flow in the Monolayer);Thin Solid Films 210(1992)276
【非特許文献4】O.Albrecht、H.Matsuda、K.Eguchi、T.Nakagiri、パイロット生産のためのLB−堆積機の建設及び使用方法(Construction and use of LB deposition machines for pilot production);Thin Solid Films 284(1996)152
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
前述の方法は、類似の用途に対してさえも時々顧客に修正を求めながら慎重に最適手順を用いて研究及び生産におけるいろいろな用途に対して使用される。薄膜作製の過程で見られる共通の課題を次に説明する。
【0026】
層の一様性を確保するのが難しいことが多い。このことは、ペインティング、スプレーコーティング又は浸漬コーティングのような比較的単純な方法の場合によく見られる。また、スピンコーティングは、何時も同じ厚さの一様性が保証されるとは限らない。薄膜の真空蒸発でさえ、特に大きく湾曲した物体の場合、要求される一様性を必ずしも保証するとは限らない、と言うのは材料の点光源からの経路長がコーティング対象の広範囲な基板のいろいろな部分で不揃いとなる距離となるからである。
【0027】
薄膜が抱える第2の課題は、大抵の堆積方法によって仕上がり薄膜上の分子が或る程度配列することがあることである。大抵の材料は光学的異方性を示す、即ち特性は分子の方向によって決まるので、このような薄膜も光学的に異方性となることがある。
【0028】
数層から成るコーティングを作製する場合、厚さのばらつきが重なり、そして後続の層間の界面はますます拡散することがある;即ち、仕上がり表面は最大の粗さを示す。この効果は、厚いコーティングの干渉色の消失及び/又は厚さが増すにつれて透明性が消失することによってよく見かけることが出来る。
【0029】
光学用途用の大抵のコーティングは、親水性、高エネルギー表面を露出している。このような表面は、凝縮によって気相から堆積する材料により、又は油のように表面張力により表面に沿って展開することにより容易に汚染される。
【0030】
LB−法は周知であり、長い間、精力的に研究されてきているが、産業界では未だに作製プロセスが使用されていない。この場合の主要なポイントは、充分な量と純度で入手出来て、充分な速度で堆積出来、そして充分に長期間安定である好適な材料がないことである。文献によると、大抵の研究者達は、1分当たり0.1mmの極めて遅い堆積速度範囲の特注の合成材料を使用すること、及び一般的に、驚くほど短時間内でそのような薄膜の欠陥及び劣化を記載している数多くの研究があることが判る。また、例外はあるけれども、温度安定性も工業製品には充分ではないことも多い。更なる1つの課題はLB−法は極めて少量の材料しか使用しないがそのような材料の大半は環境的適合性、健康効果及び分解性について未だにチェックされていない。しかしながら、研究では、カドミウム塩がプロセスの中に使用されていることは指摘すべきであり、不可欠なことと思われる。この塩は、堆積機械の単層を支持する下相水の中に混合されるので、この塩により廃棄の問題が生じる。
【0031】
LB−薄膜の光学用途に関しては、課題は、長年、分解を起こさない適切な光学特性を有する材料を見出すことでもある。LB−薄膜は、有機材料から作製され、従って、屈折率の範囲は1.34ないし1.7の有機材料の一般的範囲に限られている。実際に、この範囲は、薄膜を形成出来る構造的要件によって更に狭くなる。一般的なLB−薄膜は、約1.5の極めて狭い範囲の屈折率を示す。
【0032】
LB−出願特許の最初の特許概念の1つは、反射防止膜としてLB−薄膜を使用することであった。このような薄膜を作製するために次に提案された方法は、容易に入手出来る屈折率を含む材料の薄膜を堆積することであり、特定の溶剤の中に溶解度の大幅に異なる2種類の化学種の混合物からこの薄膜を作製したのち、この薄膜の可溶し易い部分を溶出することであった。このことは、2種類の微細にパターン化された材料から平均の有効屈折率を得る前述の方法を有効に使用している。この極端なケースでは、低屈折率を有する第2材料は空気である。そのような薄膜は、充分な均質性で作ることは難しいこと、機械的にさほど安定でないこと、そして汚染、並びに緩い構造の崩壊ばかりでなく比較的安定な形状への材料の熱力学的推進による再組織化によっても劣化し易いことは直ちに明白である。
【課題を解決するための手段】
【0033】
調製された物体を、コーティングのためのLB−法を使い、単層又は薄い多層、好ましくは1ないし50個の個別層、で適切にコーティングするためのLB−材料としてフルオロカーボンを用いたことにより、再現性があり、容易に調整可能で極めて一様な厚さを有する薄膜を作製できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、達成し易い方法で、且つ多くのその他の薄膜形成方法以上の速度で、その他の手段によって達成が極めて難しい特性を有する薄膜を作製することが出来る。
【0035】
勿論、高い生産性に達するには、前述のような連続堆積が出来る堆積装置が必要である。しかしながら、清浄度、特に粒子の低濃度、を確保することが出来、高い生産性が重要でないならば、前記のような薄膜を作るための任意の更に簡単なLB−堆積機が適当である。
【0036】
LB−薄膜の形態での材料の主用途は、光学系であると思われる。しかしながら、光学用途に使用される時でさえ、非粘着性及び撥水と撥油性によって追加の機能が加えられる。例えば、この材料を使って反射防止膜を形成する場合、油で濡れる部品に展開することがある油によって組立体の機械部品が汚染されないようにその他の手段によってオイル隔膜を加える必要はない。
【0037】
支持体使用することなく、誘電ミラーのような低屈折率を組み入れる自立型光学要素を形成出来ることは極めて重要である。発明者等は、そのような目的に対してあらゆるその他の工業的に実行出来る低屈折率、LB−材料を承知していない。
【0038】
勿論、この材料のLB−薄膜の厚さと一様性は、この材料によって更に性能が良くなるその他のあらゆる用途にも使用することが出来る。ハードディスクのLB−コーティングは工業的に重要と思われる。この用途に対して、材料が既に使用されているが、堆積プロセスが異なるプロセスである。薄膜表面は充分に平滑ではなかったので、過去には、或る材料によるハードディスクのLB−コーティングは難しかったが、読み出し/書き込みヘッドと表面との間隔を更に狭くする必要があるハードディスクの益々高まる読み出し/書き込み密度によって、いずれの場合にも更に平滑な表面へとつながり、従って高品位のLB−薄膜の堆積物が実用的代替品となることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
米国の3M社(3M company)又は日本国の3M Sumitomo社製の市販材料EGC−1700は、多くの用途向けに販売されているフッ素化材料(フルオロカーボン)である。この材料の大半は、この材料が高度にフッ素化されている可溶性ポリマーであると言う事実を利用している。構造は、明らかにこの材料の薄膜がTeflonと類似のフッ素化表面を露出する種類のものである。そのことは環境に優しく、環境上問題があることが判った材料の代替物として市場に導入されていると言う事実によって明らかである(PFOS材料側から見た3Mのパンフレット−PFOSは日常的に使用する多くの物品の大量生産用の部分フッ素化材料の大きな系統の構成成分である)。
【0040】
LB−法での用途向けにこの材料が作製されたことはなかったけれども、発明者等は、この材料が水−空気界面で安定な単層を形成することを見出している。この薄膜の一般的等温線を図7に示している。これらの等温線は、極く僅かながら温度依存性を示し、温度を厳密に制御する必要がないので、堆積プロセスには都合がよい。この薄膜を形成するためには、供給業者によって推奨される或る推奨溶剤で、この材料を、当初濃度の20分の1又は100分の1にまで稀釈したのち、このような濃度の薄めた溶液を使って水面上で薄膜を展開するのが好ましい。少量の材料を取り扱い易くするために、稀釈は必要であるが、次のように堆積する場合、等温線の形状又は堆積薄膜の品質に影響は見られない。
【0041】
適切な形状と充分に均質な表面構造の疎水性物体上に前記の薄膜を堆積するために、前述のように、この物体を単純に薄膜の中に一度又は繰り返し、押し通す。一般的な親水性基板上では堆積は観察されない。このことは、この物体が今まで水の中にあったトラフから現われ、そして次の層が堆積されそうになると再び薄膜が剥離することを意味する。このような親水性物体は、最初にこの物体を疎水性にする層で被覆されなければならない−大抵の場合、このことは、いろいろな材料又はいろいろ厚さの処理の1層LB−薄膜によって行なうことが出来る。或る基板では、第1層が堆積された後の全く長い乾燥時間を充分に利用することが可能である。表面を疎水性にする場合の一般的LB−材料はオクタデシルアミン(ODA)であり、溶液相にしろ気相にしろ、この物体をヘキサデシル−メチル−ジシロキサン(HMDS)に露出する一般的LB−処理は行なわない。両材料は半導体加工で広く使用されている。
【0042】
LB堆積プロセスは、室温で清浄な水で行なわれる。EGC−1700の堆積の薄膜圧は等温線の大きな屈折点の圧力より低く(図7を参照されたい)、好ましくは2ないし5mN/m未満、保持されなければならない。堆積過程でのこの圧力のばらつきは薄膜の厚さの変動につながり、そして堆積過程ではこのような厚さの変動は続くので、このばらつきは小さく保たれるべきである。堆積の一般的に速度は2mm/秒である。この速度は、関連する文献での一般的に堆積速度と比較すると異常に速い堆積速度である。更に高速度でも可能であり、これより低い速度で堆積薄膜の品質を低下させるとは思われない。相当数の単層が好ましくは反射基板に移されたとき、前記薄膜の干渉色は、そのような薄膜の光学厚さを直接示すのであって、その厚さは1層当たり約5ないし6Åであることが判っている。これは異常に薄く、従って、材料の多層の全部の厚さを極めて微細に制御することが出来る。
【0043】
指摘すべきことは、コーティング対象の表面と単層被覆水面が直角を形成しない場合、問題は起こらないことである、但し、このことは表面を平行に接触する条件に達しない限りにおいてである。極端な角度に対して、移動物体の速度をやや下げなければならない。堆積薄膜の一様性はこれによって影響を受けない。従って、平坦な物体と同じような一様性を有する湾曲物体、例えば曲率半径が直径よりさほど大きくない凹凸レンズの両面、をコーティングすることは可能である。
【0044】
この材料の薄膜は、非粘着性又は潤滑性、疎水性、疎油性、充分に厚くしても光学的透明性、極めて明瞭な干渉色を発現し、必要ならば中間接着層を用いて多くの異なる基板上に堆積させることが出来る。LB−プロセスは極めて平滑な表面を必要とするけれども、このような薄膜の用途は、任意の場合だけ表面を平滑にするのに有用である。従ってこれは限度ではない。
【0045】
発明者等は、前記LB−薄膜が時間と共に分解を示さないこと、水、クロロホルム、アルコールのような数種類の溶剤に安定であること、そして水の沸点超の温度で分解を示さないことを見出した。
【0046】
この材料の屈折率は、製造業者により1.38が示されている。このことは、光学部品の組立体には極めて有用となる、と言うのは、このような低屈折率を有する材料は稀であり、特に要件が追加されたときこの材料を優れた光学特性を有する薄膜として堆積出来るからである。
【0047】
この薄膜は、その他の手段によって適用されたとき、材料の推奨方法に応じた特性を示す。従って、LB−法によって光学要素としてこの薄膜を使用出来る程度まで厚さ及び表面の平滑さに更に良好な制御が加えられる。
【0048】
勿論、益々要求が厳しい用途には、半導体産業から伝えられるように、堆積系の清浄度は、標準のクリーンルーム技術を使うことにより確保されなければならない。材料の稀釈用として供給業者から提供される最高度の溶剤を使用することも必要であり、高品位の薄膜が求められる場合には、追加の濾過が有用である。
【0049】
図1:
(a):ARコーティング、屈折率;距離;媒体1;(ガラス);透過;均質な薄膜;媒体3(空気);反射光;入射光、
(b):屈折率;距離;媒体1;(ガラス);透過;勾配型薄膜、n;勾配、n;媒体3(水);反射光=0;入射光;ARコート3d
図1:(a):或る典型的1層の反射防止膜。概略的には、理想的な屈折率が薄膜に利用出来る場合、光の或る入射角と或る波長に対して、反射は消失することが出来る。この場合、薄膜の(光学)厚さは、反射の消失が望まれる光の波長の正確には1/4でなければならない。(b):可変性屈折率を有する薄膜が作製出来る場合、可視光の全領域及び全入射角に対する反射を消失することが出来る。この場合、薄膜の全厚さは光の波長より大きくなければならない。
【0050】
図2:誘電ミラーの略図;基板;(ガラス);媒体1;空気;反射光;入射光;DIELMIRR 3d
図2:誘電ミラーの概略構造。低屈折率から高い方の屈折率までの各転移個所で入射光の一部分が反射される。屈折率n1及びn2を有する全ての層が作用波長の4分の1の光学厚さを有するならば、この波長の光は積極的に干渉し、反射され、その他の波長の光は透過される。従って、誘電ミラーは作用波長には停止フィルターとして、その他の色に対しては通過フィルターとして作用する。効率は屈折率の差及びn1/n2二重層の数によって決まる。
【0051】
図3.LB−薄膜堆積プロセスの略図。(a)は平面図であり、(b)は側面図である。下相水で満たされたトラフ1、薄膜の表面濃度を制御するための薄膜圧力(又は表面張力)計2、薄膜を圧縮する移動隔膜3、コーティング対象のプレート4、点線5が、薄膜被覆の表面を示している。刷毛様の構造体は、薄膜を表し(一部分のみであり、勿論、一定の比率ではない)、これは点線の下の全体範囲を覆っている。6及び7は、堆積過程での薄膜の移動の概略を示す矢印である。8は、堆積過程での引き上げモードにおける隔膜及び基板の移動を表す矢印である。
【0052】
図4:第1層、親水性スライド;空気;水
図4:親水性基板、例えば清浄なガラス又は酸化シリコン−ウェーハ、上のLB−薄膜の堆積。具体的ケースは次図による1層でコーティングされた物体である。
【0053】
図5:第1層、疎水性スライド;空気、水
図5:疎水性基板、例えばTeflonプレート又はフッ化水素酸エッチングシリコンウェーハ上のLB−薄膜の堆積。具体的ケースは先行の図面による1層を用いて被覆された物体である。
【0054】
図6:LB−薄膜組立体の略図。1は基板であり、2、3及び4は異なる材料から堆積された各層の記号である。同じ材料が上部で繰り返されていて、一部分異なる配向に対しては“r”の印が付けられている。
【0055】
図7:表面圧、mN/m;面積、m2/mg
図7:異なる温度のおけるEGC−1700の等温線。目立つ特徴は、面積が狭くなるにつれて薄膜圧の明確な定義の開始、約12mN/mにおける曲線の変化、及び温度が高くなるにつれて面積が狭くなることを示す屈折点の後の圧力の更なる上昇である。約12mN/mの大きい屈折点のやや下の圧力で、材料を堆積すると1層から1000層超の優れた品質の薄膜が得られる。これらの曲線は約10ないし35℃の温度で測定され、良く堆積することが出来る高分子材料の単層の典型的挙動を示している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】或る典型的1層の反射防止膜。
【図2】誘電ミラーの概略構造。
【図3】LB−薄膜堆積プロセスの略図。
【図4】親水性基板、例えば清浄なガラス又は酸化シリコン−ウェーハ、上のLB−薄膜の堆積。
【図5】疎水性基板、例えばTeflonプレート又はフッ化水素酸エッチングシリコンウェーハ上のLB−薄膜の堆積。
【図6】LB−薄膜組立体の略図。
【図7】異なる温度のおけるEGC−1700の等温線。
【符号の説明】
【0057】
1 基板
2,3,4 各層の記号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製された物体を、コーティングのためのLB−法を使い、単層又は薄い多層、好ましくは1ないし50個の個別層、で適切にコーティングするためのLB−材料としてフルオロカーボンを用いたことを特徴とする薄膜。
【請求項2】
撥油性コーティングとして機能することを特徴とする請求項1記載の薄膜。
【請求項3】
前記物体の部分だけに撥油性を付与するために前記薄膜がパターン化されることを特徴とする請求項2記載の薄膜。
【請求項4】
撥水性コーティングとして機能することを特徴とする請求項1記載の薄膜。
【請求項5】
前記物体の部分だけに撥水性を付与するために前記薄膜がパターン化されることを特徴とする請求項4記載の薄膜。
【請求項6】
前記表面に非粘着性を付与することを特徴とする請求項1記載の薄膜。
【請求項7】
前記物体の部分だけに非粘着性を付与するために前記薄膜がパターン化されることを特徴とする請求項6記載の薄膜。
【請求項8】
極めて平滑な表面を必要とする射出成形部品用の金型の表面で離型剤として機能するために前記非粘着性が使用されることを特徴とする請求項6又は7記載の薄膜。
【請求項9】
基板と、前記基板上に堆積された前記薄膜を上に作製されたデバイス又は部品の間に分離平面として機能するために前記非粘着性が使用されることを特徴とする請求の範囲項6又は7記載の薄膜。
【請求項10】
潤滑層として機能するために前記非粘着性が使用されることを特徴とする請求項6又は7記載の薄膜。
【請求項11】
物体の表面の腐食を防止するために前記組み合わせ特性が使用されることを特徴とする請求項1、3又は6記載の薄膜。
【請求項12】
薄膜によって被覆される物体が、機械的読み出し/書き込みヘッドを有するメモリ記憶装置の表面であることを特徴とする請求項10又は11記載の薄膜。
【請求項13】
屈折率を修正するためにフルオロカーボンがその他の材料と一緒に使用されることを特徴とする請求項12記載の薄膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−150187(P2006−150187A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342069(P2004−342069)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】