説明

フルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物

少なくとも1個の末端ペルフルオロポリエーテル基と少なくとも2基の(メタ)アクリル基を含む、フルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。好適なペルフルオロポリエーテル基には、F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−基(ここでaは平均して1〜15である)および少なくとも2基の(メタ)アクリル基を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0001】
少なくとも1個の末端ペルフルオロポリエーテル基、たとえばF(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−(ここでaは平均して1〜15である)と、少なくとも2基の(メタ)アクリル基とを含むフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物について記述する。いくつかの実施態様においては、aの平均値は3〜10であるか、またはaの平均値は5〜8である。(メタ)アクリル基は独立して、メタクリレート基およびアクリレート基から選択することができる。
【0002】
別な実施態様においては、本発明は、基材およびその基材の上に配された表面層に関し、ここでその表面層には、上述のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の少なくとも1種を含む。その表面層には、上述のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物を含む重合性組成物の反応生成物が含まれている。
【0003】
別な実施態様においては、本発明は、フルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物および希釈材たとえば溶媒、(メタ)アクリルモノマー、ならびにそれらの混合物を含む、コーティング組成物に関する。溶媒としては、非フッ素化有機溶媒、フッ素化有機溶媒、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0004】
別な実施態様においては、本発明は、バインダー、無機粒子、およびフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物を含む、セラマーに関する。
【0005】
表面層、コーティング、またはセラマーの中のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の量は、0.05重量%〜15重量%の範囲とすることができる。
【0006】
乾燥させ、場合によっては硬化させた表面層は、撥インキ性(ink repellency)を示し、好ましくは耐久性である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、少なくとも1個のフルオロポリエーテル基と少なくとも2個の(メタ)アクリル基を含む化合物について記述する。
【0008】
そのフルオロポリエーテル基は、過フッ素化プロピレンオキシド繰り返し単位を含んでいるのが好ましい。その化合物が、少なくとも1個の末端F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−基(ここで「a」は、平均して少なくとも約3(たとえば、4、5)である)を含むのがより好ましい。さらに、「a」は典型的に、平均して15以下(たとえば、14、13、12、11、10、9、または8)である。いくつかの態様においては、「a」は平均して6〜7である。特に断らない限り、詳細な説明の項において使用する場合、「HFPO−」は、aが平均して約3〜15である末端基を指す。
【0009】
本発明の化合物には、少なくとも2個の(メタ)アクリル基が含まれる。(メタ)アクリル基は、場合によっては水素および/またはフッ素を用いて置換した(メタ)アクリレート基であるのが好ましい。少なくともいくつかの実施態様においては、(メタ)アクリル基がアクリレート基であるのが好ましい。
【0010】
本明細書に記載されるフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物は、式(RfpenQ(X)mを有していて、ここで:
fpeは、式F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−(ここで、aは3〜15)の1価のHFPO部分の残基であり、nは1〜3であり;
Qは、結合価が少なくとも2の結合基であって、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルクアリーレン、場合によってはヘテロ原子O、N、およびS、および場合によってはヘテロ原子含有官能基たとえばカルボニルまたはスルホニルを含む直鎖または分岐鎖または環含有結合基、ならびにそれらの組合せからなる群より選択され;
Xは、(メタ)アクリル官能基−AC(O)C(R)=CH2であり、ここでAはO、SまたはNR1であり、Rは、1〜4個の炭素原子の低級アルキル、またはHまたはFであり、R1はHまたは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、そしてmは2〜10である。
【0011】
例示化合物としてはたとえば以下のようなものが挙げられる:
a)HFPO−C(O)NHC(CH2OC(O)CH=CH23
b)HFPO−C(O)N(CH2CH2OC(O)CH=CH22
c)HFPO−C(O)NHCH2CH2N(C(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2
d)HFPO−C(O)NHC(CH2OC(O)CH=CH22
e)HFPO−C(O)NHC(CH2OC(O)CH=CH22CH3
f)HFPO−C(O)NHC(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3
g)HFPO−C(O)NHCH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2
h)HFPO−C(O)NHCH2CH2CH2N(CH2CH2OC(O)CH=CH22
i)HFPO−C(O)OCH2C(CH2OC(O)CH=CH23
j)HFPO−C(O)NH(CH2CH2N(C(O)CH=CH2))4CH2CH2NC(O)−HFPO
k)CH2=CHC(O)OCH2CH(OC(O)HFPO)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OC(O)HFPO)CH2OCOCH=CH2;および
l)HFPO−CH2O−CH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2
【0012】
本明細書に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物は、式B−O(CH2CH(OB)CH2O)nCH2CH(OB)CH2O−Bを有することができるが、ここでnは0〜20の範囲であり、Bは独立して、H、−C(O)CH=CH2、または−C(O)−HFPOであるが、その中でも少なくとも1個のBが−C(O)−HFPOであり、少なくとも2個のBが−C(O)CH=CH2である。
【0013】
このタイプの一つの例示化合物が、CH2=CHC(O)OCH2CH(OC(O)HFPO)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OC(O)HFPO)CH2OC(O)CH=CH2である。
【0014】
フルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物は、以下の反応シーケンスAおよびBのいずれかの反応生成物であってよい:
反応シーケンスA
【化1】

反応シーケンスB
【化2】

反応シーケンスAおよびBのいずれにおいても、R2は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、フルオロアルキル、アクリル、HFPO−C(O)−であり、R3は独立して、HまたはCH2=C(CH3)C(O)−OC24NHC(O)−であり、R4は、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、フルオロアルキル、アクリル、HFPO−C(O)−、またはCH2=C(CH3)C(O)−OC24NHC(O)−であり、R5は、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、フルオロアルキル、アクリル、HFPO−C(O)−、またはCH2=C(CH3)C(O)−OCH2CH(OH)CH2−であり、R6は独立して、HまたはCH2=C(CH3)C(O)−OCH2CH(OH)CH2−であり、そしてnは、平均して約2〜32である。
【0015】
本明細書に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物は2段のプロセスにより調製することができる。その第一段においては、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)エステルたとえばHFPO−C(O)OCH3または酸ハライドHFPO−C(O)Fを、少なくとも3個のアルコールまたは一級もしくは二級アミノ基を含む物質と反応させることにより、HFPO−アミドポリオールもしくはポリアミン、HFPO−エステルポリオールもしくはポリアミン、またはHFPO−アミド、または混合アミンおよびアルコール基を有するHFPO−エステルを製造する。その第二段においては、(メタ)アクリロイルハライド、(メタ)アクリル酸無水物または(メタ)アクリル酸を用いて、そのアルコールおよび/またはアミン基を(メタ)アクリル化する。その合成の例示は実施例で述べる。
【0016】
低表面エネルギー性を付与するために、各種の物品の表面層としてフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物を採用することができる。
【0017】
その表面エネルギーは、実施例において記述された試験方法に従って測定することにより、接触角や撥インキ性などの各種の方法によって特性づけることが可能である。本明細書に記載の表面層および物品は、少なくとも70度の水との静的接触角を示すのが好ましい。さらに詳しくは、水との接触角が少なくとも80度、さらに好ましくは少なくとも90度(たとえば、少なくとも95度、少なくとも100度)である。それとは別か、またはそれに加えて、ヘキサデカンとの前進接触角が少なくとも50度、より好ましくは少なくとも60度である。表面エネルギーが低いということは、耐汚れ性、さらにはその表面をクリーンにするのが容易であることを示唆している。表面エネルギーが低いことを示唆することとしてはさらに、商品名「サンフォード・シャーピー・ファイン・ポイント・パーマネント・マーカー・no 30001(Sanford Sharpie,Fine Point permanent marker,no 30001)」として市販されているマーカからのインキが玉状になるのが好ましい。さらに、本明細書に記載の表面層および物品が「撥インキ性」を示すということは、ジョージア州ロズウェル(Roswell,GA)のキンバリー・クラーク・コーポレーション(Kimberly Clark Corporation)から商品名「サーパス・フェイシャル・ティッシュー(SURPASS FACIAL TISSUE)」として市販されているティッシューを用いてそのインキをぬぐうと、容易に除去することが可能であることを意味している。
【0018】
本明細書で使用するとき、「重量%(wt−%)」は、非重合性の希釈剤の場合など別に示されない限り、固形分重量%を指す。
【0019】
フルオロケミカル表面層には、本明細書記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の少なくとも1種が含まれ、場合によっては、他の重合性成分(たとえば、(メタ)アクリルモノマーおよび/またはクロスリンカー)および/または溶媒が組み合わされる。表面層を形成させるために重合させるコーティング組成物中のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の全量は、典型的には、少なくとも0.05重量%固形分(たとえば、少なくとも約0.10重量%、0.50重量%、1重量%、2重量%、3重量%、および4重量%)である。いくつかの実施態様においては、コーティング組成物には、少なくとも約5重量%固形分のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物が含まれる。他の実施態様、たとえば、本発明のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物をハードコートに添加するような場合には、そのハードコート組成物には、0.1重量%またはそれ以下の少量のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物が含まれていてもよい。
【0020】
コーティング組成物には、上述のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の1種または複数を、95重量%固形分もの大量に含んでいてもよい。一般には、所望の低い表面エネルギーを与える、最小限の濃度のフッ素化化合物を用いるのが、よりコスト的に有利である。したがって、コーティング組成物中に加えるフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の全量は、典型的には、30重量%を超えることはなく、通常は約15重量%以下(たとえば、約14重量%、13重量%、12重量%、および11重量%未満)の量で存在させる。
【0021】
いくつかの態様においては、本発明のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物を含む重合性組成物の反応生成物は、米国特許第6,660,389号明細書(リュウ(Liu)ら)の記載のように、場合によっては、下層のハードコート層の上の表面層として用いることができる。その重合性組成物には、典型的には、1種または複数の(たとえば、非フッ素化)(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマー、または(メタ)アクリルポリマーがさらに含まれる。表面層の耐久性を改良する目的で、その反応生成物が少なくとも1種の架橋剤をさらに含んでいてもよい。本明細書において使用するとき、「架橋剤」および「クロスリンカー」という用語は、相互に置き換え可能であり、少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するモノマーまたはオリゴマーを指している。好ましくは、クロスリンカーには、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含み、従って、ポリ(メタ)アクリレート化合物である。少なくともいくつかの実施態様においては、アクリレート基が好ましい。
【0022】
フッ素化クロスリンカーを使用することも可能ではあるが、一般的には、非フッ素化架橋剤を使用するのがコスト的にはより有利である。いくつかの用途においては、5重量%程度の少量のクロスリンカーによって好適な耐久性を得ることができる。しかしながら、特に非フッ素化(メタ)アクリレートクロスリンカーはフッ素化化合物よりも一般に安価であるので、典型的には、クロスリンカーの濃度が最大になるようにする。したがって、本明細書記載のコーティング組成物には、典型的には、少なくとも20重量%の架橋剤を含む。架橋剤の全量が少なくとも50重量%で含まれていてよく、たとえば、コーティング組成物の少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、さらには約95重量%またはそれ以上であってもよい。
【0023】
有用な架橋剤としてはたとえば、以下のものからなる群より選択されるポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。(a)たとえば以下の化合物を含むジ(メタ)アクリル;1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート;(b)たとえば以下の化合物を含むトリ(メタ)アクリル;グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(たとえば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(たとえば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;(c)たとえば以下の化合物を含む高官能性(メタ)アクリル;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;(d)たとえば以下のようなオリゴマー性(メタ)アクリル;ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;上述のもののポリアクリルアミド類似物;ならびにそれらの組合せ。それらの化合物は広く、たとえば、ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company);ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のUCB・ケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation);およびウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)などの業者から入手することが可能である。有用な(メタ)アクリレート物質としてはさらに、たとえば米国特許第4,262,072号明細書(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載されているような、ヒダントイン部分を含むポリ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0024】
好適な架橋剤には、少なくとも3個の(メタ)アクリレート官能基が含まれる。市販されている架橋剤としては、ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から、たとえば商品名「SR351」として入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート、商品名「SR444」として入手可能なペンタエリスリトールトリアクリレート、商品名「SR399LV」として入手可能なジペンタエリスリトールペンタアクリレート、商品名「SR454」として入手可能なエトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、および商品名「SR494」として入手可能なエトキシル化(4)ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
【0025】
本明細書記載のコーティング組成物には、本発明の(ペル)フルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の1種または複数を各種組み合わせて含んでいてもよい。さらに、本発明の化合物を、他の公知の単官能(ペル)フルオロポリエーテル化合物および多官能(ペル)フルオロポリエーテル化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0026】
それとは別か、またはそれに加えて、本明細書記載のコーティング組成物にはその他各種の反応性および非反応性成分がさらに含まれていてもよい。たとえば、組成物には、アルキル、ペルフルオロアルキル、およびペルフルオロアルキレン残基を含む重合性(メタ)アクリル化合物が含まれていてもよい。それらの化合物の例としては、アクリル酸ブチル、1H,1H−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアクリレート(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から入手可能);1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルアクリレート(ニューハンプシャー州ウィンダム(Windham,NH)のランカスター・シンセシス(Lancaster Synthesis)から入手可能);および、C49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2(国際公開第01/30873A号パンフレットの実施例2Aおよび2Bの手順で合成)、などを挙げることができる。ペルフルオロアルキル残基を有するその他の(メタ)アクリル化合物が、米国特許第4,968,116号明細書および米国特許第5,239,026号明細書に記載されている(アクリル酸(ペルフルオロシクロヘキシル)メチルを含む)。
【0027】
容易に硬化させるために、本発明による重合性組成物にはさらに、少なくとも1種のフリーラジカル熱重合開始剤および/または光重合開始剤が含まれていてもよい。典型的には、そのような開始剤および/または光重合開始剤が存在する場合、それが、重合性組成物の全重量を基準にして、重合性組成物の約10重量パーセント未満、より典型的には約5パーセント未満で含まれる。フリーラジカル硬化技術は当業者には周知であり、たとえば、加熱硬化方法、さらには電子ビームまたは紫外線照射のような放射線硬化方法を挙げることができる。フリーラジカル熱重合および光重合技術に関するさらに詳しいことは、たとえば、米国特許第4,654,233号明細書(グラント(Grant)ら);米国特許第4,855,184号明細書(クラン(Klun)ら);および米国特許第6,224,949号明細書(ライト(Wright)ら)に見出すことができる。
【0028】
有用なフリーラジカル熱重合開始剤としては、たとえば、アゾ、ペルオキシド、過硫酸塩、およびレドックス重合開始剤、ならびにそれらの組合せを挙げることができる。
【0029】
有用なフリーラジカル光重合開始剤としては、たとえば、アクリレートポリマーのUV硬化において有用なものが挙げられる。そのような重合開始剤としては以下のようなものが挙げられる:ベンゾフェノンおよびその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンゾインエーテルたとえば、ベンジルジメチルケタール(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,New York)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(IRGACURE)651」として市販)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル;アセトフェノンおよびその誘導体たとえば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「ダロキュア(DAROCUR)1173」として市販)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(これもまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(IRGACURE)184」として市販);2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(これもまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(IRGACURE)907」として市販);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(IRGACURE)369」として市販);芳香族ケトンたとえば、ベンゾフェノンおよびその誘導体ならびにアントラキノンおよびその誘導体;オニウム塩たとえば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩;チタン錯体たとえば、これもまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「CGI 784 DC」として市販されているもの;ハロメチルニトロベンゼン;ならびにモノ−およびビス−アシルホスフィンたとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(IRGACURE)1700」、「イルガキュア(IRGACURE)1800」、「イルガキュア(IRGACURE)1850」,「イルガキュア(IRGACURE)819」、「イルガキュア(IRGACURE)2005」「イルガキュア(IRGACURE)2010」、「イルガキュア(IRGACURE)2020」、および「ダロキュア(DAROCUR)4265」。2種以上の光重合開始剤を組み合わせて使用することもできる。さらに、増感剤たとえば2−イソプロピルチオキサントン(ミシシッピー州パスカグーラ(Pascagoula,MS)のファースト・ケミカル・コーポレーション(First Chemical Corporation)から市販)を、「イルガキュア(IRGACURE)369」のような光重合開始剤と組み合わせて使用することも可能である。
【0030】
コーティング組成物には、その他の任意成分の添加剤、たとえば界面活性剤、静電防止剤(たとえば、導電性ポリマー)、レベリング剤、光増感剤、紫外線(「UV」)吸収剤、安定剤、抗酸化剤、潤滑剤、顔料、染料、可塑剤、懸濁剤などを含むことができる。
【0031】
本明細書記載の組成物は、(ペル)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物によって付与される低表面エネルギーと、炭化水素架橋剤によって付与される良好な耐久性とを組み合わせた相乗効果を得ることができる。本明細書記載の組成物は、典型的には親水性成分(たとえば、モノマー)を含まないが、その理由は、それらを含むと耐汚れ性が低下したり、さらにはある種の媒体(たとえば、基材)に染みをつける傾向があったりするからである。親水性成分はさらに、水系のクリーニング剤に暴露すると分解を受けやすい。
【0032】
さらに本明細書記載の表面層および物品が耐久性であるのが好ましいが、その意味するところは、実施例で記載する試験方法(チーズクロスを用いて725gの重量で200回の拭取りを行う)に従って実施する耐久性試験の後で、その表面が実質的な損傷を示さない、あるいは、その光学的性質を顕著に失うことがない(たとえば、その最初の透過率の97%を維持している)、ということである。さらに、その表面層および物品が、そのような耐久性試験の後であっても、先に説明したような低表面エネルギーの性質(たとえば、接触角、撥インキ性、および玉状化)を示し続けているのが好ましい。
【0033】
ここで説明した表面層は、その物品(たとえば、ディスプレイ)の光学的性質を低下させるものではない。したがって、本発明の物品は、本明細書記載のような表面層を有さない同一の機材またはハードコーティングした基材に比較して、実質的に同等の初期ヘイズおよび透過率の値を示す。そのようなヘイズおよび透過率の値が、耐久性試験の後でも実質的に同じであるのが好ましい。
【0034】
本発明のコーティング組成物は、組成物をコーティングするのに役立つ希釈剤を用いて、独立した表面層として塗布することができる。当業者のよく知るところであるが、所望の希釈剤および希釈レベルは、コーティングする基材または表面、コーティング組成物の成分、およびコーティング条件に応じて選択する。場合によっては、フッ素化溶媒を単独で使用することも、または有機溶媒と組み合わせて使用することもできるが、(ペル)フルオロポリエーテルアクリレートおよび架橋剤は一般に、非フッ素化溶媒に充分に可溶性である。したがって、好都合なことには、コーティング組成物にフッ素化溶媒をまったく含まないようにすることができる。溶媒としては、ケトンたとえばメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチレンケトン(MIBK)、およびメチルプロピルケトン(MPK);ならびに酢酸エステルたとえば酢酸エチルなどが挙げられ、その濃度は、所望のコーティング厚み(たとえば、2%〜3%固形分)で使用する。溶媒に溶解させた後に、典型的には、先に説明したような各種の添加剤を添加する。
【0035】
別な方法として、1種または複数の(メタ)アクリルモノマーを希釈剤として使用することにより、100%固形分の組成物を製造することも可能である。
【0036】
コーティング組成物は、各種の慣用されるコーティング方法を用いて、基材、または基材の上に配したハードコート層に塗布することができる。好適なコーティングとしては、たとえば、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、ダイコーティング法、ワイヤコーティング法、フラッドコーティング法、パジング法、スプレー法、ロールコーティング法、ディッピング法、ブラシ法、泡塗布法などが挙げられる。コーティングは、典型的には強制空気炉を用いて乾燥させる。乾燥させたコーティングを、エネルギー源を用いて、少なくとも部分的に、典型的には全面的に硬化させる。
【0037】
エネルギー源としては、約5〜60ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm2)のUV「C」線量を与える紫外光線硬化装置を挙げることができる。硬化は、微量、たとえば、約100ppm未満の酸素の環境下で起こさせる。窒素ガスが好適な環境である。
【0038】
コーティング組成物は、硬化層を約10ナノメートル、典型的には少なくとも約25ナノメートルの厚みとするのに充分な量で塗布する。硬化層は、約200ナノメートル未満、約100ナノメートル未満、または約75ナノメートル未満の厚みとすることができる。そのような実施態様においては、耐久性のほとんどは、その下にあるハードコート層によって与えられる。
【0039】
物品の上の表面層、またはディスプレイパネルの製造の際に実施されるような表面として、本発明のコーティングを施すのとは別な方法として、本発明のコーティング組成物を保護物品(protective article)の上に用いて(たとえば、表面)層として用いることも可能である。たとえば、そのような保護物品は米国特許第6,660,389号明細書に記載がある(この特許を参照により本明細書に援用する)。
【0040】
保護物品の基材の反対側(すなわち、ハードコートの反対側)の上には、各種の恒久的または除去可能なタイプの接着剤組成物をコーティングして、その物品のディスプレイ表面への搭載を容易とすることができる。好適な接着剤組成物としては、(たとえば、水素化)ブロックコポリマー、たとえばテキサス州ウェストホロウ(Westhollow,TX)のクレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)から市販されている商品名「クレイトン(Kraton)G−1657」や、さらにはその他の(たとえば、類似の)熱可塑性ゴムなどが挙げられる。その他の接着剤の例を挙げれば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、およびエポキシ系の接着剤がある。好適な接着剤は、充分な光学的性質と光安定性を有するものであって、時間の経過や耐候暴露によって接着剤が黄変して光学ディスプレイの表示品質が低下するようなことがないようにしなければならない。接着剤は、たとえばトランスファーコーティング法、ナイフコーティング法、スピンコーティング法、ダイコーティング法など、各種公知のコーティング方法を用いて塗布することができる。接着剤の例については、米国特許出願公開第2003/0012936号明細書に記載がある。そのような接着剤のいくつかは、ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)の3M・カンパニー(3M Company)から、商品名「8141」、「8142」、および「8161」として市販されている。
【0041】
本発明の物品には各種の基材を使用することができる。好適な基材の材料としては、ガラス、さらには熱硬化性または熱可塑性ポリマー、たとえば、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート(たとえば、ポリメタクリル酸メチルすなわちPMMA」)、ポリオレフィン(たとえば、ポリプロピレンすなわち「PP」)、ポリウレタン、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレートすなわち「PET」)、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エポキシなどが挙げられる。典型的には、基材は、目的とする用途における所望の光学的および機械的性質をある程度基準にして選択する。そのような機械的性質としては、典型的には、可撓性、寸法安定性、および耐衝撃性などが挙げられる。基材の厚みもまた、典型的には、目的とする用途に依存する。ほとんどの用途においては、約0.5mm未満の基材厚みが典型的で、より典型的にはその厚みは、約0.02mm〜約0.2mmの範囲である。自立ポリマーフィルムが好ましい。ポリエステルたとえばPET、またはポリオレフィンたとえばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)およびPVC(ポリ塩化ビニル)から製造したフィルムが特に好ましい。ポリマー材料は、慣用されるフィルム製造技術、たとえば押出しと、場合によってはその押出したフィルムを1軸または2軸延伸させることにより形成させることができる。基材を処理して、基材とハードコート層との間の接着性を改良することも可能であるが、そのような処理方法としては、たとえば、化学処理、コロナ処理たとえば空気または窒素コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、または化学線処理などが挙げられる。所望により、任意のタイ層またはプライマーを基材および/またはハードコート層に塗布して、層間接着性を上げることも可能である。
【0042】
ディスプレイパネルや保護物品のような物品の場合には、その基材は光透過性であるが、それは、光がその基材を透過することが可能で、それによってそのディスプレイを見ることができる、ということを意味している。ディスプレイパネルには、透明(たとえば、艶あり)および艶消しのいずれもの光透過性基材も使用される。艶消し基材は、典型的には、通常の艶ありフィルムの場合よりは透過度が低く、ヘイズ値が高い。艶消しフィルムがこの性質を示すのは、典型的には、ミクロンサイズの分散させた、たとえばシリカのような無機充填剤が存在しているからである。艶消しフィルムの例を挙げれば、ジョージア州シダータウン(Cedartown,GA)のU.S.A.キモト・テック(U.S.A.Kimoto Tech.)から商品名「N4D2A」として市販されているものがある。透明基材、ハードコートでコーティングした透明基材、さらには透明基材を含むディスプレイ物品の場合には、そのヘイズ値は好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、さらにより好ましくは1%未満である。それとは別か、またはそれに加えて、その透過率が約90%より高いのが好ましい。
【0043】
ハードコートには、各種の無機酸化物粒子を使用することができる。その粒子は、典型的には、その形状が実質的に球状であり、そのサイズが比較的均一である。その粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有していてもよいし、あるいは、実質的に単分散分布のものを2種以上ブレンドすることにより得られる多分散の分布を有していてもよい。その無機酸化物粒子は、典型的には非凝集(実質的に分散)であるが、それは、凝集が起きると、無機酸化物粒子が沈降したり、ハードコートのゲル化が起きたりする可能性があるからである。その無機酸化物粒子は、そのサイズが典型的にはコロイド状であって、約0.001〜約0.2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル未満、および約0.03マイクロメートル未満などの平均粒子直径を有している。これらの範囲のサイズであると、バインダー樹脂の中に無機酸化物粒子を分散させるのが容易となり、所望の表面特性と光学的透明度を有するセラマーが得られる。無機酸化物粒子の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、所定の直径の無機酸化物粒子の数を数えることにより、測定することができる。無機酸化物粒子としては、コロイド状シリカ、コロイド状チタニア、コロイド状アルミナ、コロイド状ジルコニア、コロイド状バナジア、コロイド状クロミア、コロイド状酸化鉄、コロイド状酸化アンチモン、コロイド状酸化スズ、およびそれらの混合物などが挙げられる。無機酸化物粒子は、たとえばシリカのような単一の酸化物からなるか、実質的になっていてもよいし、あるいは酸化物の組合せ、たとえばシリカと酸化アルミニウムを含んでいてもよいし、あるいは、一つのタイプの酸化物のコア(または金属酸化物以外の材料のコア)と、その上に他のタイプの酸化物を析出させたものであってもよい。シリカが、一般的な無機粒子である。無機酸化物粒子は、液状媒体の中に無機酸化物粒子のコロイド状分散物を含むゾルの形態で供給されることも多い。そのようなゾルは、各種の方法を用いて種々の形態で調製することが可能であるが、そのような形態としては、たとえばヒドロゾル(これでは、水が液状媒体の役目を果たす)、オルガノゾル(これでは、有機液体がその役目を果たす)、および混合ゾル(これでは、その液状媒体が水と有機液体の両方を含む)があり、たとえば、米国特許第5,648,407号明細書(ゲーツ(Goetz)ら);米国特許第5,677,050号明細書(ビルカディ(Bilkadi)ら)および米国特許第6,299,799号明細書(クレイグ(Craig)ら)に記載がある。(たとえば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することも可能である。ゾルには一般に、ゾルの全重量を基準にして、少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%、多くの場合少なくとも35重量%のコロイド状無機酸化物粒子を含む。コロイド状無機酸化物粒子の量は、典型的には、50重量%以下(たとえば、45重量%)である。その無機粒子の表面を、ビルカディ(Bilkadi)らの記述のように、「アクリレート官能化」させることも可能である。また、ゾルをバインダーのpHに合わせることも可能であるし、対イオンまたは水溶性の化合物(たとえば、アルミン酸ナトリウム)を含んでいてもよく、これらはすべて、カン(Kang)の’798特許に記載されている。
【0044】
ハードコートは、無機酸化物粒子の水性ゾルをフリーラジカル硬化性バインダー前駆体(たとえば、適切な硬化エネルギー源に暴露されると架橋反応に与ることが可能な1種または複数のフリーラジカル硬化性モノマー、オリゴマーまたはポリマー)と混合することにより簡便に調製することができる。通常、得られた組成物を、実質的にすべての水を除去するために、乾燥させてから、塗布する。この乾燥工程は時には「ストリッピング」と呼ばれることもある。得られたセラマー組成物に、その塗布前に有機溶媒を添加して、改良された粘度特性を与え、基材の上へのセラマー組成物のコーティングに役立たせることも可能である。コーティングしてから、セラマー組成物を乾燥させて、添加した溶媒をすべて除去し、次いでその乾燥させた組成物を適切なエネルギー源に暴露させることにより少なくとも部分的に硬化させて、フリーラジカル硬化性バインダー前駆体を少なくとも部分的に硬化させることもできる。
【0045】
ハードコートには、各種のバインダーを用いることができる。バインダーは、ハードコート組成物を基材の上にコーティングしてから光硬化させることが可能な、フリーラジカル重合性前駆体から誘導される。’799特許に記載のアクリル酸のプロトン性基置換エステルまたはアミド、または’799などの特許に記載のエチレン性不飽和モノマーのようなバインダー前駆体が好ましいことが多い。好適なバインダー前駆体を挙げれば以下のようなものがある:多価アルコールのポリアクリル酸またはポリメタクリル酸エステル、たとえばジオール、たとえばエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1−エトキシ−2,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール、レソルシノール、ピロカテコール、ビスフェノールA、およびビス(2−ヒドロキシエチル)フタレートのジアクリレートまたはジ(メタ)アクリレートエステル;トリオールたとえば、グリセリン、1,2,3−プロパントリメタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,3,6,−ヘキサントリオール、1,5,10−デカントリオール、ピロガロール、フロログルシノール、および2−フェニル−2,2−メチロールエタノールのトリアクリル酸またはトリメタクリル酸エステル;テトラオール、たとえば1,2,3,4−ブタンテトロール、1,1,2,2,−テトラメチロールエタン、1,1,3,3,−テトラメチロールプロパンのテトラアクリル酸またはテトラメタクリル酸エステル、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート;アドニトールなどのペントールのペンタアクリル酸またはペンタメタクリル酸エステル;ヘキサノールたとえば、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、ジヒドロキシエチルヒダントインのヘキサアクリル酸またはヘキサメタクリル酸エステル;およびそれらの混合物。バインダーは、カン(Kang)らの’798特許に記載されているように、1種または複数の単官能モノマーから誘導することもできる。バインダーには、ビルカディ(Bilkadi)らに記載されているような、1種または複数のN,N−ジ置換したアクリルアミドおよび/またはN−置換した−N−ビニル−アミドモノマーも含まれる。ハードコートは、セラマー組成物中の固形分の全重量を基準にして、約20〜約80%のエチレン性不飽和モノマーと、約5〜約40%のN,N−ジ置換したアクリルアミドモノマーまたはN−置換した−N−ビニル−アミドモノマーとを含む、セラマー組成物から誘導することができる。
【0046】
ハードコートの中の無機粒子、バインダーおよびその他各種の成分を選択して、硬化されたハードコートの屈折率が基材の屈折率に近いものとする。このことによって、モワレ模様やその他の目に見える干渉縞のようなものを抑制することが可能となる。
【0047】
先に説明したように、ハードコートは、コーティングの前にストリッピングして水を除去し、場合によっては溶媒を用いて希釈して組成物をコーティングしやすくした、水性コーティング組成物から形成させることができる。当業者のよく知るところであるが、所望の溶媒と溶媒使用量の選択は、ハードコート中の個々の成分の性質と、所望の基材およびコーティング条件とに依存する。カン(Kang)らの’798特許には、いくつかの有用な溶媒、溶媒レベル、およびコーティング粘度が記載されている。
【0048】
ハードコートは、各種の反応剤を用いて架橋させることにより、そのハードコートの内部凝集強さまたは耐久性を上げることができる。典型的な架橋剤は、比較的多くの数の利用可能な官能基を有しているもので、たとえば、トリ−およびテトラ−アクリレート、たとえばペンタエリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが上げられる。使用する場合には、架橋剤は、バインダー100重量部あたり、約60部未満たとえば約30〜約50重量部とすることが多い。
【0049】
ハードコートを、コロイド状無機酸化物粒子の水性ゾルとバインダー前駆体とを組み合わせることにより調製する場合には、そのゾルは、その粒子が負の表面電荷を有するようにpHを有するようにする。たとえば、無機粒子のほとんどがシリカ粒子であるような場合には、そのゾルは、7より大、8より大、または9より大のpHを有するアルカリ性とする。そのゾルには水酸化アンモニウムなどを含んでいて、NH+4が負の表面電荷を有する粒子に対する対イオンとして利用できるようにすることができる。コロイド状無機酸化物粒子の表面処理が望ましいような場合には、たとえば、カン(Kang)らの’833特許に記載されているように、適切な表面処理剤をゾルにブレンドすることができる(この特許の開示を、参照により本明細書に援用する)。次いで、フリーラジカル硬化性バインダー前駆体をそのセラマー組成物に添加する。そのセラマー組成物をストリッピングして、実質的にすべての水を除去する。たとえば、セラマー組成物中の約98%の水を除去、したがって約2%の水が残っている場合には、使用可能であることが判った。実質的にすべての水の除去ができたらすぐに、カン(Kang)らの’798特許に記載されているタイプの有機溶媒を、典型的には、そのセラマー組成物が約5%〜約99重量%固形分(約10〜約70%)を含むことになるような量で添加する。
【0050】
硬化させたハードコートが約1〜約100マイクロメートル、約2〜約50マイクロメートル、または約3〜約30マイクロメートルの厚みを持つのに充分なコーティング重量で、セラマー組成物をコーティングする。コーティングをしてから、溶媒(存在すれば)を熱、真空および/または類似の手段を用いて除去する。次いで、そのコーティングされたセラマー組成物を、適切な形態のエネルギー照射、たとえば熱エネルギー、可視光線、紫外光線または電子ビーム照射により硬化させる。環境条件下での紫外光線照射を使用することが多いが、それはこの硬化技術が比較的低コストで、かつ高速で可能であるからである。さらに、場合によっては、ハードコートの表面を粗面化または表面模様化して、艶消し表面とする。これは、当業者にとってはなじみの各種の方法で実施することができるが、たとえば、ビードプラストまたはその他の方法で粗面化させた適切な工具を用いてハードコートをエンボス化させる方法、適切なケイ砂またはガラスビーズのような微少粒子充填剤をハードコートにあてる方法、または、米国特許第5,175,030号明細書(ルー(Lu)ら)および米国特許第5,183,597号明細書(ルー(Lu))に記載されているような、適切な粗面化マスターにあてて硬化をさせる方法などが挙げられる。
【0051】
本発明のコーティング組成物、その反応生成物(すなわち、硬化させたコーティング組成物)さらには保護物品は、低表面エネルギー(たとえば、耐汚れ性、染み抵抗性、撥油性および/または撥水性)と耐久性(たとえば、摩耗抵抗性)の組合せが望まれるが、光学的透明性は保持しておきたいような、各種のディスプレイおよび保護物品において使用することができる。
【0052】
各種の照光式および非照光式ディスプレイパネルが知られている。そのようなディスプレイとしては、マルチキャラクター(multi−character)、特にマルチキャラクター・マルチラインディスプレイたとえば、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロントプロジェクションおよびリアプロジェクションディスプレイ、陰極線管(「CRT」)、看板、さらにはシングルキャラクターまたはバイナリーディスプレイたとえば発光ダイオード(「LED」)、信号ランプ、スイッチなどが挙げられる。そのようなディスプレイパネルの光透過性(すなわち、露出された)基材は、「レンズ」とも呼ばれる。本発明は、通常の使用においても損傷を受けやすい表示表面を有するディスプレイにおいて特に有用である。
【0053】
本発明のコーティング組成物、その反応生成物(すなわち、乾燥および硬化させたコーティング組成物)さらには保護物品は、各種の可搬式または非可搬式の情報ディスプレイ機器において使用することが可能であって、そのようなものとしては、たとえば携帯情報端末、携帯電話(携帯情報端末と携帯電話を組み合わせたものも含む)、タッチセンサースクリーン、腕時計、カーナビシステム、全地球測位システム、測深器、計算機、電子ブック、CDまたはDVDプレーヤー、投影型テレビスクリーン、コンピューターのモニター、ノートパソコンのディスプレイ、計器ゲージ、インストルメントパネルカバー、看板たとえばグラフィックディスプレイ(屋内用および屋外用グラフィックスなどを含む)、などが挙げられる。それらの機器は、平面的な表示面を有していてもよいし、あるいはたとえば典型的なCRTのわずかに湾曲している面のような非平面的な表示面を有していてもよい。典型的には、そのディスプレイ要素は、情報ディスプレイ機器の表示面から、かなりの距離で離すよりは、それらの上または物理的に極めて近くに位置させる。
【0054】
同様にして、それらのコーティング組成物、反応生成物、および保護物品は各種その他の物品に使用することが可能であって、そのような物品の例を挙げれば以下のようなものがある:カメラレンズ、めがねレンズ、双眼鏡のレンズ、再帰反射シート、レイズド・ペーブメント・メイカー(レンズ)(raised pavement makers(lenses))、自動車の窓、ビルの窓、列車の窓、船舶の窓、航空機の窓、自動車の前照灯および尾灯、陳列ケース、めがね、船体、道路舗装マーキング、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、家具、床仕上げ、バス停のプラスチック表示、腕時計のカバー、さらには光学記録ディスクおよび磁気光学記録ディスクなど。
【0055】
以下の実施例によって、本発明の目的と利点をさらに説明するが、それらの実施例で引用する特定の材料およびその量、さらにはその他の条件および詳細が、本発明を限定すると不当に考えてはならない。
【実施例】
【0056】
試験方法
1.接触角
IPAの中でコーティングを手で1分間かけて揺することにより洗浄してから、水およびヘキサデカンの接触角の測定にかけた。マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,MA)のミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)から得られた濾過システムを通して濾過した、購入したままの試薬グレードのヘキサデカン(アルドリッチ(Aldrich))および脱イオン水を用い、マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,MA)のAST・プロダクツ(AST Products)から商品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角分析計により、測定を行った。報告値は、少なくとも3滴の液滴について、それらの液滴の右側および左側からの測定値を平均したものであり、表2に示す。液滴の容積は、静的測定の場合には5μLであり、前進接触角および後退接触角の場合には1〜3μLである。ヘキサデカンの場合には、前進接触角および後退接触角のみを報告しているが、その理由は、静的接触角と前進接触角がほぼ同じであることが見出されたからである。
【0057】
2.耐久性試験
硬化させたフィルムの摩耗抵抗性は、スタイラス(ゴムガスケットの手段により)に固定したチーズクロスまたはスチールウールをフィルムの表面に対して振動させることが可能な機械装置を使用することにより、コーティング方向に対してクロスウェブに試験した。スタイラスを、10cmの掃引幅で、3.5拭取り/秒の速度で振動させたが、ここで「拭取り(wipe)」という用語は、10cmを1回移動させることと定義する。スタイラスは、フラットで円柱の形状を有していて、その直径がチーズクロスの場合で1.25インチ(3.2cm)、スチールウールの場合で6mmである。その装置にはプラットホームが備え付けられていて、その上におもりを載せて、フィルムの表面に対して直角にしたスタイラスにより加わる力を増やした。チーズクロスは、ペンシルバニア州ハッツフィールド(Hatsfield,PA)のEMS・アクイジション・コーポレーション(EMS Acquisition Corp.)のサブディビションである、サマーズ・オプティカル・EMS・パッケージング(Summers Optical,EMS Packaging)から入手した、商品名「ミル・スペック(Mil Spec)CCC−c−440製品#S12905」であった。チーズクロスは折りたたんで12層とした。スチールウールは、ワシントン州ベリングハム(Bellingham,WA)のホーマックス・プロダクツ(Homax Products)のディビジョン、ローデス−アメリカン(Rhodes−American)から入手した、商品名「#0000−スーパー・ファイン(Super−Fine)」であって、入手したままのものを使用した。それぞれの実施例では1個の試料について試験したが、スタイラスに加えた重量(グラム)および試験の際の拭取り数を表3および4に報告する。
【0058】
3.玉状化(bead−up)
商品名「サンフォード・シャーピー・ファイン・ポイント・パーマネント・マーカー・no 30001(Sanford Sharpie,Fine Point permanent marker,no 30001)」として市販されているペンを用いて、インキのマーキングを表面層に加えた。観察することによって、その表面に加えたときに、そのインキのマークが玉状化するか(すなわち、表3および4における「yes」)、あるいは玉状化しないか(すなわち、表3および4における「no」)のいずれになるかを判定した。
【0059】
4.撥インキ性(Ink Repellency)
商品名「サンフォード・シャーピー・ファイン・ポイント・パーマネント・マーカー・no 30001(Sanford Sharpie,Fine Point permanent marker,no 30001)」として市販されているペンを用いて、インキのマーキングを表面層に加えた。観察することによって、ジョージア州ロズウェル(Roswell,GA)のキンバリー・クラーク・コーポレーション(Kimberly Clark Corporation)から商品名「サーパス・ファイシャル・ティッシュー(SURPASS FACIAL TISSUE)」として市販されているような、乾燥したティッシューで拭取ることによって、そのインキのマークが容易に除去できるかどうかを判定した。(すなわち、表3および4における「yes」)、あるいは玉状化しないか(すなわち、表3および4における「no」)。
【0060】
5.キングマーカー抵抗性試験
キングサイズ(KING SIZE)パーマネントブラックマーカーのチップをカミソリの刃を用いて、広いマーキング幅が得られるような角度に切断した。試験試料の上に、定規を用い約6インチ/秒の速度で、そのマーキングで直線を描いた。次いでそのマーキングした試料を1〜5の評価標準の横に置いたが、ここで1が最も薄く、5が最も濃い。この手順を3回繰り返し、三回の試験の平均を採用した。
【0061】
6.ヘイズおよび透過率
コーティングしたフィルムの値は、BYK・ガードナー・ヘイズ−クラリティ−トランスミッション・メーター(BYK Gardner Haze−Clarity−Transmission meter)を使用して測定した。測定値はパーセントの単位で報告している。
【0062】
成分
実施例で使用する場合、「HFPO−」は末端基を指し、aの平均値は約6.3である。
【0063】
F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)COOCH3、ここで、aは平均して約6.3であり、平均分子量が1,211g/モル、そして、米国特許第3,250,808号明細書(ムーア(Moore)ら)に報告されている方法に従って調製することが可能であり、分別蒸留により精製した(この特許を、参照により本明細書に援用する)。
【0064】
分子量約1115のF(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)C(O)Fは、米国特許第3,250,808号明細書(ムーア(Moore)ら)に報告されている方法に従って調製することが可能であり、分別蒸留により精製した。
【0065】
トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)は、ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から商品名「SR351」として得た(AC−1)。
【0066】
ペンタエリスリトールテトラアクリレートは、サルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から商品名「SR295」として得た(AC−2)。
【0067】
トリエチレングリコールジアクリレートは、サルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から商品名「SR306」として得た(AC−3)。
【0068】
アミン:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、および2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、および3−アミノ−1,2−プロパンジオールは、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から得た。
【0069】
塩化アクリロイルは、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から得た。
【0070】
ω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート(H−C48−CH2O−C(O)−CH=CH2)は、サウスカロライナ州ウェスト・コロンビア(West Columbia,S.C.)のオークウッド・プロダクツ(Oakwood Products)から得た(MP−2)。
【0071】
使用したUV光重合開始剤は、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・プロダクツ(Ciba Specialty Products)から商品名「ダロキュア(Darocur)「1173」として得た。
【0072】
HFPO−C(O)−NH−CH2CH2−OH出発物質(すなわち、HFPO−AE−OH)の調製
50.0gのHFPO−C(O)OCH3(すなわち、Mw=1211g/モル)を200mLの丸底フラスコに入れた。そのフラスコを窒素を用いてパージし、50℃以下の温度に保った水浴に入れた。そのフラスコに3.0g(0.045モル)の2−アミノエタノールを加えた。その反応混合物を、約1時間撹拌してから、その反応混合物の赤外スペクトルを測定すると、1790cm-1におけるメチルエステル吸収帯が完全に消失し、1710cm-1に強いアミドカルボニル伸縮振動が存在することが判った。200mLのメチルt−ブチルエーテル(MTBE)をその反応混合物に加え、水/HCl(約5%)を用いてその有機層を2回抽出して、未反応のアミンとメタノールを除去した。MgSO4を用いて、MTBE層を乾燥させた。MTBEを減圧下に除去すると、透明で粘稠な液状物が得られた。1H核磁気共鳴スペクトル法(NMR)および赤外スペクトル法(IR)により、上述の化合物が生成していることを確認した。
【0073】
単官能ペルフルオロポリエーテルアクリレート(MP−1)の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2OC(O)CH=CH2(HFPO−AEA)
機械式撹拌器、還流冷却器、滴下ロート、および窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた3口丸底フラスコの中で、HFPO−AE−OH(600g)を酢酸エチル(600g)およびトリエチルアミン(57.9g)に加えた。その混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、加熱して40℃とした。そのフラスコに、塩化アクリロイル(51.75g、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から入手)を、滴下ロートから約30分かけて滴下により加えた。その混合物を40℃で一夜撹拌した。次いでその混合物を放冷して室温とし、2N HCl水溶液300mLを用いて希釈し、分液ロートに移した。水層を除き、別な2NのHClの300mLを用いて酢酸エチル層を抽出した。次いでNaHCO3の5重量%水溶液を用いてその有機相を1回抽出し、分離し、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。ロータリーエバポレーターを用いて揮発性成分を除去すると、596gの反応生成物が得られた(収率93%)。1H NMRおよびIRスペクトル法により、上述の化合物が生成していることを確認した。
【0074】
ペルフルオロポリエーテルポリアクリレート化合物の合成
1.HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3出発物質の調製
撹拌バーと環流冷却器を取り付けた500mLの3口フラスコに、11.91g(0.1モル)のH2NC(CH2OH)2CH2CH3および60gのTHFを仕込んだ。次いで、浴温約85℃として、滴下ロートから121.1g(0.1モル)のHFPO−C(O)OCH3を約80分かけて添加した。その反応液は最初は濁っていたが、反応条件下で約1時間おくと透明となった。添加が完了してから、加熱浴を外し、その反応液を週末の間、放冷しておいた。その物質をアスピレーターの減圧下に55℃で濃縮すると、130.03gの薄く着色したシロップ状物が得られた。NMR分析から、その反応生成物は以下の構造IとIIの87:13の混合物であることが判った。
【化3】

【0075】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレートの調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3(FC−1)
頭頂撹拌器を取り付けた250mLの3口丸底フラスコに、65g(0.05モル)の上述のようにして得られた反応生成物混合物のHFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3、12.65g(0.125モル)のトリエチルアミンおよび65gの酢酸エチルを仕込んだ。室温のフラスコに、11.31g(0.125モル)の塩化アクリロイルを、均圧滴下ロートを用いて12分かけて添加すると、反応温度は25℃から最高40℃まで上昇した。追加の5gの酢酸エチルを用いて滴下ロートを洗って、それを反応液に加え、次いで40℃の浴に入れて、さらに2時間10分反応させた。次いでその有機層を、65gの2%硫酸水溶液、65gの2%重炭酸ナトリウム水溶液、および65gの水の順に用いて洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、16mgのメトキシヒドロキノン(MEHQ)を用いて処理し、45℃でロータリーエバポレーターにかけて濃縮すると、62.8gの粗生成物が得られた。次いで、35gのその物質を、溶出剤として酢酸エチル:ヘプタン(25:75)を用いて、600mLのシリカゲル(SX0143U−3、グレード62、60〜200メッシュ、EM・サイエンス(EM Science)製)のクロマトグラフィーにかけた。第一の2つのフラクションが250mLの容積で、残りのフラクションは125mLの容積とした。フラクション4〜10を合わせて、それらのフラクションに8mgのMEHQを添加し、それを55℃でロータリーエバポレーターにかけて濃縮すると、25.36gの反応生成物が得られたので、それをNMRにより分析すると、構造IIIのIVに対する比率が88:12であることが判った。
【化4】

【0076】
2.HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2H出発物質の調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3を調製したのと同様の方法により、51gのTHF中で、106.74g(0.088モル)のHFPO−C(O)CH3を8.03g(0.088モル)の2−アミノ−1,3−プロパンジオールを用いて処理すると、アミドジオール:エステルアミノ−アルコールの比率が93:7の反応生成物が得られた。
【0077】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレートの調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22H(FC−2)
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3を調製したのと同様の方法において、100gの酢酸エチル中で、50g(0.3936モル)のHFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2H出発物質を、8.55g(0.0945モル)の塩化アクリロイルと9.56g(0.946モル)のトリエチルアミンとを用いて処理すると、仕上げおよびクロマトグラフィーの後には、ジアクリレートのアクリルアミド−アクリレートに対する比率が93:7の混合物が得られた。
【0078】
3.HFPO−C(O)N(H)CH2CH2NHCH2CH2OH出発物質の調製
100mLの丸底フラスコに、50.0g(0.413モル)のHFPO−C(O)OCH3を仕込み、油浴の中で40℃に加熱した。フラスコを浴から取り出し、4.30(0.413モル)の2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールをフラスコに仕込んだ。その内容物を揺り混ぜてから、油浴中65℃で3時間撹拌しながら加熱し、次いで、アスピレーターの減圧下でロータリーエバポレーターにより65℃で濃縮すると、反応生成物が得られた。
【0079】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレートの調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2N(C(O)CH=CH2)CH2CH2OC(O)CH=CH2(FC−3)
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3を調製したのと同様の方法において、65gの酢酸エチル中で、64.15g(0.050モル)のHFPO−C(O)N(H)CH2CHNHCH2CH2OHを、11.26g(0.125モル)の塩化アクリロイルおよび12.65g(0.125モル)のトリエチルアミンと反応させると、仕上げおよびクロマトグラフィーの後には、所望の反応生成物が得られた。
【0080】
4.HFPO−C(O)N(H)CH2CH(OH)CH2OH出発物質の調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3を調製したのと同様の方法により、55.7gのTHF中で、121.1g(0.100モル)のHFPO−C(O)CH3を、9.11g(0.100モル)の1−アミノ−2,3−プロパンジオールと反応させると、反応生成物が得られ、そのものは、アミドジオールのエステルアミノ−アルコールに対する比率が86:14であった。
【0081】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレート(FC−4)の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3を調製したのと同様の方法において、100gの酢酸エチル中で、63.5g(0.050モル)のHFPO−C(O)N(H)CH2CH(OH)CH2OHを、11.26g(0.0945モル)の塩化アクリロイルおよび9.56g(0.946モル)のトリエチルアミンと反応させると、仕上げおよびクロマトグラフィーの後には、ジアクリレートのアクリルアミド−アクリレートに対する比率が86:14の混合物が得られた。
【0082】
5.HFPO−C(O)−NH−C(CH3)(CH2−OH)2出発物質の調製
2−アミノ−2−メチル1,3−プロパンジオール(2.8g、0.027モル、アルドリッチ(Aldrich)からの市販品)を200mLの丸底フラスコに仕込み、窒素を用いてパージした。そのアミンを、40gのメチルt−ブチルエーテルおよびメタノールの混合物(重量比3:1)に溶解させ、環流温度に加熱した。アミンを完全に溶解させてから、オリゴマー性HFPOメチルエステル(HFPO−C(O)OCH3、25.0g、0.021モル、Mw=1211g/モル)をその溶液に加え、約24時間反応を進行させておいた。その反応混合物をIRスペクトル法により分析した。そのスペクトルでは、1717cm-1にアミドの信号が存在し、1790cm-1のメチルエステルの信号が無くなっていた。その反応混合物に、250mLの水/HCl(15重量%)を添加、次いで抽出、さらにメチルT−ブチルエーテルを添加することにより仕上げた。有機相と水相の間の相分離を促すために、CaCl2を用いた。MTBE層を合わせ、MgSO4を用いて乾燥させた。MTBEを減圧下に除去すると、透明で粘稠な液状物が得られた。0.1mmHg、室温で16時間かけてさらに乾燥させると、23.1g(収率85%)のものが得られた。1H NMRおよびIRスペクトル法により、上述の化合物が生成していることを確認した。
【0083】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレートの調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH3(FC−5)
磁気撹拌バー、温度計、冷却器および滴下ロートを取り付けた100mLの3口丸底フラスコに、15g(0.011モル)のHFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH3、上で得られた反応混合物、2.97g(0.023モル)のN,N−ジイソプロピルエチルアミン、および25gの酢酸エチルを仕込んだ。そのフラスコを加熱して40℃とした。そのフラスコに、2.08g(0.023モル)の塩化アクリロイルを、約10分かけて滴下により添加した。その滴下ロートを追加の5gの酢酸エチルを用いて洗い、それを反応液に加えた。その反応液を40℃で一夜放置した。次いで有機層を冷却し、25gの2N塩酸で2回、25gの5%重炭酸ナトリウム水溶液で2回、25gの水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムの上で乾燥させ、濾過し、50℃でロータリーエバポレーターを用いて乾燥させると、10.14gの反応生成物が得られた。
【0084】
6.HFPO−C(O)NH(C24NH)5C(O)−HFPOの調製:
密封した120mLのパイレックス(登録商標)(Pyrex)管の中で、20gのHFPO−CO2Me(20ミリモル)を、2.32gのNH2(C24NH)5H(10ミリモル)と混合し、マグネチックスターラーで撹拌しながら110℃で4時間反応させた。20分たたない内に、その混合物は透明で均一な溶液となった。その溶液を5時間反応させておいた。FTIR分析から、1787cm-1(−CO2Me)の信号が消え、対応するアミド結合が1718cm-1に現れた。全真空下でメタノールをストリッピングすると、対応する、MWが約2626.38のペルフルオロエーテルアミンオリゴマーが得られた。
【0085】
7.HFPO−C(O)NH(C24NH)5C(O)−HFPO/IEM(比率1/2)の調製:
【化5】

3は独立して、HまたはCH2=C(CH3)C(O)−OC24NHC(O)−(比率1/1)である。
100mLのフラスコに、5.96gのHFPO−C(O)NH(C24NH)5−C(O)−HFPO(2.27ミリモル)、5.0gのHFE−7100および15gのEtOAcを仕込んだ。上述の透明な溶液に室温で、5gのEtOAc中の0.73g(4.7ミリモル)のIEMを添加した。発熱反応が始まり、溶液が濁った。0.5時間反応を続けてから、溶媒をストリッピングし、残分をアセトンに溶解させた。NMRから、−CONH−およびCH2=CMe−に相当する、1714.16cm-1および1637.20cm-1が観察されたが、−NCOの信号は認められなかった。
【0086】
8.HFPO−C(O)NH(C24NH)5C(O)−HFPO/メタクリル酸グリシジル(比率1/4)の調製:
【化6】

100mLのフラスコに、13.43gのHFPO−C(O)NH(C24NH)5C(O)−HFPO(5.11ミリモル)を仕込んだ。メタクリル酸グリシジル(MW=142.15、2.88g、20.26ミリモル)を添加し、その混合物を70℃で2時間反応させると、ワックス状の固形物が生成したが、そのものはIPAに可溶であった。
【0087】
コーティング溶液の調製:
表1に示した材料と重量を用いて、基材に重合性組成物をコーティングした。重合性成分はすべて、メチルエチルケトン中で全固形分が10重量パーセントになるように希釈した。重合性組成物中に2重量パーセントの光重合開始剤PI−1が含まれるようにしたが、それにはメチルエチルケトン中10パーセント固形分の光重合開始剤を用いた。光重合開始剤を添加してから、最終的な全固形分重量パーセントへの希釈を行った。最終的な全固形分重量パーセントへの希釈は、メチルイソブチルケトンを用いて実施した。
【0088】
コーティング、乾燥、硬化プロセス
それぞれハードコート表面層を有する、2種の異なった基材を実施例では使用した。第一の基材(S−1)は、透明な厚み5.0ミルでプライマー処理した表面を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(e.i. Dupont de Nemours and Company)から商品名「メリネックス(Melinex)618」として得たもの)から、調製した。米国特許第6,299,799号明細書の実施例3と実質的に同様であるハードコート組成物を、そのプライマー処理した表面の上にコーティングし、酸素が50パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満のUVチャンバーで硬化させた。そのUVチャンバーには、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg,Maryland)のヒュージョン・UV・システムズ(Fusion UV systems)からの600ワットHタイプ電球が取り付けられていて、全出力で使用した。第二の基材(S−2)は、あらかじめ塗布されたハードコート表面層を有する艶消しフィルムであって、ジョージア州シダータウン(Cedartown,GA)のユー・エス・エー・キモト・テック(U.S.A. Kimoto Tech.)から商品名「N4D2A」として市販されているものである(S−2)。その艶消しフィルムを、さらなる変更を加えることなく使用した。
【0089】
ハードコートをメリネックス(Melinex)618フィルムに塗布するには、計量プレシジョンダイコーティング法を用いた。IPAを用いてハードコートを30重量%固形分にまで希釈し、5ミルのPETバッキングの上にコーティングして、その乾燥厚みが5ミクロンになるようにした。流量計を用いて、加圧容器からの原料の流量を検知、設定した。流量は密閉容器の中の空気圧を変化させることにより調節し、その空気圧で液体を管に強制的に押出し、フィルター、流量計、次いでダイを通過させた。乾燥、硬化させたフィルムをロールに巻き取り、下記のコーティング溶液のためのインプットバッキングとして使用した。
【0090】
S−1のためのハードコートコーティングおよび乾燥のためのパラメーターは以下の通りであった:
【0091】
【表1】

【0092】
本発明のコーティング組成物を、プレシジョン、計量ダイコーターを用いて、S−1またはS−2のいずれかのハードコート層の上にコーティングした。この工程においては、シリンジポンプを用いて、ダイの中に溶液を計量仕込みした。その溶液は、2〜2.5%メチルエチルケトン濃度に希釈し、乾燥厚みが40〜60nmになるように、ハードコート層の上にコーティングした。その物質を常用される空気浮遊(air flotation)炉の中で乾燥させ、次いで、酸素50ppm未満のUVチャンバーを通した。そのUVチャンバーには、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg,Maryland)のヒュージョン・UV・システムズ(Fusion UV systems)からの600ワットHタイプ電球が取り付けられていて、全出力で使用した。
【0093】
表面層のコーティングおよび乾燥のためのパラメーターは以下の通りであった:
【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
【表6】

【0099】
ハードコート組成物
また別な実施例(実施例21)においては、具体化されたペルフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物をハードコート配合の成分とした。硬化可能な液状セラマー組成物を、0.02gのFC−5と25gのハードコート組成物(米国特許第6,299,799号明細書の実施例3と実質的に同じもの)(「S−1」)を小型のガラスバイアル中で希釈することにより調製した。その混合物を充分に混合してから、1グラムのフッ素含有ハードコート配合をバイアルの中に量り込み、7.0gのハードコートを用いて希釈することにより、希釈した。得られた混合物を、#30巻線バーを用いて、PETフィルムの上にコーティングした。未硬化の混合物を室温で5分乾燥させてから、60℃で5分乾燥させ、次いで、UVチャンバーの中を1回通過させてUV硬化をさせた。
【0100】
試験結果:
ペルフルオロエーテルジアクリレートを含み、UV硬化させたハードコートは撥インキ性を示した。
【0101】
22.CH2=CHCO(O)CH2CH(OC(O)Rf)CH2OCH2CH(OR)CH2OCH2CH(OCORf)CH2OC(O)CH=CH2の調製(ここでRfはHFPO、MW1115であり、中央のORは、OHとOCORfの混合物である)。(HFPO3−DGDA)
3.5g(0.01モル)のグリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート(アルドリッチ(Aldrich))、4.0gのジイソプロピルエチルアミン、および100mLのCH2Cl2の混合物を、35.5gの分子量約1115のF(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)C(O)Fを用いて処理し、不均質な混合物として3時間撹拌した。約50mLの水を用いてその混合物を2回洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ストリッピングすると、29.3gの淡黄色の油状物が得られた(nD1.3553(21.1℃))。2D−nmrから、2個のアクリレートあたり約2.9個のHFPO鎖を有する錯体混合物であることが判ったが、いくつかの二級OH、さらにはいくつかのCOOHが存在し、そのアクリレートのいくつかは、アルドリッチ(Aldrich)の構造がアサインされているような一級ではなく、二級であった。
【0102】
23.UV硬化性ハードコート溶液は、硬化可能な液状セラマー組成物中の、0.4phrのHFPO3−DGDAを用いて調製された。そのセラマーハードコートは、0.2078グラムのフルオロケミカル変性剤および0.20gのH(CF24CH2OHを、100グラムの50%固形分ハードコート組成物(米国特許第6,299,799号明細書の実施例3と実質的に同じもの、「S−1」)に添加することによって調製された。#8巻線を用いてその混合物を、ポリエステルフィルム基材(ミツビシ(Mitsubishi)から商品名「ホスタファン(Hostaphan)(登録商標)4507」として市販されているもの)の上にコーティングした。そのコーティングしたフィルムを5分間風乾させ、次いで70℃の炉の中で5分間加熱し、次いで、加工装置の中をワンパスで通過させてUV硬化させた。
【0103】
試験結果:
透明なフィルムが得られ、それは撥インキ性とクリーンな拭取りを示した。静的な水接触角は100度、静的なヘキサデカン接触角は65度であった。
【0104】
ビニルシートの上へのコーティング
HFPOジヒドロアルコール、F−[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)CH2OH(ここで、a=5〜7)の調製
機械式撹拌器および窒素バブラーを取り付けた3Lの丸底フラスコに、1リットルのグライム、ホウ水素化ナトリウム(85g、2.2モル)を仕込み、77℃に加熱した。米国特許第3,114,778号明細書の記載に従って調製した、オリゴマー性HFPOエステル、F−[CF(CF3)O]aCF(CF3)COOCH3、(a=5〜7)(810g、0.8モル)を、撹拌しているスラリーに1時間かけて添加した。発熱が観察されたが、88℃で18時間加熱した。熱を除去し、300gのメタノールを3時間かけて添加すると、水素が発生した。1kgの水中に290gの濃硫酸の混合物を用いて反応を停止させた。溶媒を加熱により除去したが、最終的な塔頂温度は93℃となった。フルオロケミカルの下側層を分離し、真空加熱して水を除去した。オリゴマーHFPOジヒドロアルコール、F−[CF(CF3)O]aCF(CF3)CH2OH、(a=5〜7)(688g、0.7モル)が収率88%で合成され、その構造はFTIRならびにHNMRおよびFNMRにより確認した。
【0105】
25.オリゴマー性HFPOジヒドログリシドールジアクリレートの調製
F−[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)CH2OCH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2(a=5〜7)
機械式撹拌器および窒素バブラーを取り付けた500mLの3口丸底フラスコに、上述のようにして合成したオリゴマー性HFPOジヒドロアルコール(200g、0.2モル)およびナトリウムメトキシド(メタノール中25%)(43g、0.2モル)を仕込み、95℃に加熱した。1時間後、揮発分と共にメタノールをストリッピングしてから、45℃にまで冷却した。グリシドール(15g、0.2モル)を加え、フラスコを100℃で18時間加熱した。反応液を冷却して25℃とし、200gのCFCl2CF2Cl溶媒を、25mLの10%硫酸溶液と共に添加した。混合物を水洗し、フルオロケミカル相をMgSO4を用いて乾燥させ、濾過し、真空乾燥させると、オリゴマーHFPOジヒドログリシドール(131g、0.62モル)が収率62%で得られ、それはHNMRおよびFNMRにより確認した。機械式撹拌器および窒素バブラーを取り付けた250mLの丸底フラスコに、オリゴマーHFPOジヒドログリシドール(30g、0.2モル)、50gのグライム、および5gのトリエチルアミンを仕込んだ。18gのCFCl2CF2Cl溶媒を添加することにより、1相となったが、それを45℃で30分間加熱した。塩化アクリロイル(4.6g、0.05モル)を30分かけて添加すると、発熱と沈殿の生成が認められた。63gの水を加え、下側のフルオロケミカル相をMgSO4を用いて乾燥させ、濾過し、真空下でストリッピングして乾燥させた。収率65%でオリゴマー性HFPOジヒドログリシドールジアクリレート、F−[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)CF2CH2OCH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2(a=5〜7)が得られ、それはHNMRおよびFNMRにより確認した。
【0106】
24および25.コーティング組成物の調製
0.025gのC37O−[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)CH2OCH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2(a=4〜6)(上述のようにして調製したもの)を、9.975gの脂肪族アクリレート(サルトマー(Sartomer)から商品名「サルトマー(Sartomer)306」として市販されているもの)に添加した。実施例25も同様にして調製したが、ただし、「サルトマー(Sartomer)306」と「サルトマー(Sartomer)492」の9:1ブレンド物を使用した。実施例24と25それぞれに、0.05gの「ダロキュア(Darocur)1173」光重合開始剤を添加した。それら3種の物質をバイアルの中で一緒に混合し、約5分間シェーカーにかけてから、コーティングした。次いでそれぞれの試料を、ペンシルバニア州ランカスター(Lancaster,PA)のアームストロング(Armstrong)から得た白色軟質ビニル「エクセロン(Excelon)」(4”×6”)の上にコーティングした。試料は、#10マイヤー(Meyer)バーを用いて手でコーティングし、次いでPRC・UVプロセッサー(PRC UV processor)(モデル#84−502)を使用し、ライン速度30フィート/分で光重合させた。これにより、光沢のある滑らかなハードコートが得られた。
【0107】
次いで2種の処理済みビニル試料について、撥インキ性および後退接触角の試験を行った。実施例24および25は、ヘキサデカン後退接触角がそれぞれ62および48であり、いずれの試料も、キング・サイズ・パーマネント・マーカー・レジスタンス(King Size Permanent Marker Resistance)は「1」であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の末端ペルフルオロポリエーテル基と少なくとも2基の(メタ)アクリル基を含む、フルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項2】
前記ペルフルオロポリエーテル基が、F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−(ここでaは平均して1〜15)である、請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項3】
aの平均が3〜10である、請求項2に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項4】
aの平均が5〜8である、請求項2に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル基が独立して、メタクリレート基およびアクリレート基から選択される、請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項6】
前記化合物が式(RfpenQ(X)mのものであって:
fpeが、式F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−(ここで、aは3〜15)の1価のHFPO部分の残基であり、そして、nは1〜3であり;
Qが、結合価が少なくとも2の結合基であって、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルクアリーレン、場合によってはヘテロ原子O、N、およびS、および場合によってはヘテロ原子含有官能基たとえばカルボニルまたはスルホニルを含む直鎖または分岐鎖または環含有結合基、ならびにそれらの組合せからなる群より選択され;
Xが、(メタ)アクリル官能基−AC(O)C(R)=CH2であり、ここでAはO、SまたはNR1であり、Rは、1〜4個の炭素原子の低級アルキル、またはHまたはFであり、R1はHまたは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、そしてmが、2〜10である、請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項7】
前記化合物が、式B−O(CH2CH(OB)CH2O)nCH2CH(OB)CH2O−Bのものであり、ここでnが0〜20の範囲であり、Bが独立して、H、−C(O)CH=CH2、または−C(O)−HFPOであるが、その中でも少なくとも1個のBが−C(O)−HFPOであり、少なくとも2個のBが−C(O)CH=CH2である、請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項8】
前記化合物が下記の反応の生成物である、
A)
【化1】

または
B)
【化2】

[式中、
2は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、フルオロアルキル、アクリル、HFPO−C(O)−であり、
3は独立して、HまたはCH2=C(CH3)C(O)−OC24NHC(O)−であり、
4は、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、フルオロアルキル、アクリル、HFPO−C(O)−、またはCH2=C(CH3)C(O)−OC24NHC(O)−であり、
5は、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、フルオロアルキル、アクリル、HFPO−C(O)−、またはCH2=C(CH3)C(O)−OCH2CH(OH)CH2−であり、
6は独立して、HまたはCH2=C(CH3)C(O)−OCH2CH(OH)CH2−であり、
そしてnは、平均して約2〜32である]
請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項9】
前記化合物が、
a)HFPO−C(O)NHC(CH2OC(O)CH=CH23
b)HFPO−C(O)N(CH2CH2OC(O)CH=CH22
c)HFPO−C(O)NHCH2CH2N(C(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2
d)HFPO−C(O)NHC(CH2OC(O)CH=CH22H;
e)HFPO−C(O)NHC(CH2OC(O)CH=CH22CH3
f)HFPO−C(O)NH(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3
g)HFPO−C(O)NHCH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2
h)HFPO−C(O)NHCH2CH2CH2N(CH2CH2OC(O)CH=CH22
i)HFPO−C(O)OCH2C(CH2OC(O)CH=CH23
j)HFPO−C(O)NH(CH2CH2N(C(O)CH=CH2))4CH2CH2NC(O)−HFPO;
k)CH2=CHC(O)OCH2CH(OC(O)HFPO)CH2OCH2CH(OH)CH2OCH2CH(OC(O)HFPO)CH2OCOCH=CH2;および
l)HFPO−CH2O−CH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2
からなる群より選択される、請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物。
【請求項10】
基材、および請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物を含む表面層を含む物品。
【請求項11】
前記表面層が、請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物を含む重合性組成物の反応生成物を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
少なくとも1種の請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物と、溶媒、(メタ)アクリルモノマー、およびそれらの混合物から選択される希釈剤とを含む、コーティング組成物。
【請求項13】
フルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物の量が、0.05重量%固形分〜15重量%固形分の範囲である、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記溶媒が、非フッ素化有機溶媒、フッ素化有機溶媒、およびそれらの混合物から選択される、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記組成物が、第二のフッ素化化合物をさらに含む、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記第二のフッ素化化合物が、フルオロポリエーテルアクリレートである、請求項15に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
ポリ(メタ)アクリル架橋剤をさらに含む、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記架橋剤がフッ素化されていない、請求項17に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
前記乾燥させ、場合によっては硬化させたコーティング組成物が撥インキ性を示す、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
バインダー、無機粒子、および請求項1に記載のフルオロポリエーテルポリ(メタ)アクリル化合物を含む、セラマー。

【公表番号】特表2007−536409(P2007−536409A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511565(P2007−511565)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/015529
【国際公開番号】WO2005/113641
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】