説明

フルオロポリマーの製造方法

テトラフルオロエチレンの重合単位を含有するフルオロポリマーの製造のための乳化重合法であって、パーフルオロ脂肪族スルフィネートが分散剤として用いられる方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロ脂肪族スルフィネートが分散剤として用いられるフルオロポリマーの製造のための乳化重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化および溶液重合法による、熱可塑性およびエラストメリックの両方の、フルオロポリマーの製造は、当該技術分野で周知であり;例えば米国特許第4,214,060号明細書;同第4,281,092号明細書;同第4,380,618号明細書;同第4,524,197号明細書;同第5,789,508号明細書;同第6,774,764 B2号明細書を参照されたい。一般に、フルオロポリマーは、水溶性重合開始剤および比較的大量の界面活性剤が用いられる乳化重合法で製造される。
【0003】
Grootaert(米国特許第5,285,002号明細書)およびFarnhamら(米国特許第5,639,837号明細書)は、フルオロ脂肪族スルフィネート還元剤と過硫酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩または次亜塩素酸塩酸化剤とを含むレドックス開始剤系の存在下でのフルオロモノマーの乳化重合を開示している。生じたフルオロポリマーは、フルオロ脂肪族スルフィネートに由来するパーフッ素化末端基を有する。フルオロ界面活性剤を必要としない、フッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマーの重合を除いて、例示される重合のすべてが、フルオロポリマー分散系を安定化させるためにパーフルオロアルキルカルボン酸もしくは塩、フルオロアルキルカルボン酸もしくは塩、パーフルオロアルキルスルホン酸もしくは塩、またはフルオロアルキルスルホン酸もしくは塩などのフルオロ界面活性剤を用いた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、開始剤および分散剤を含む水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合させてフルオロポリマーの水性分散系を得る工程を含む、テトラフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択されるフルオロポリマーの製造のための乳化重合法であって、前記分散剤が少なくとも1つのパーフルオロ脂肪族スルフィネートから本質的になる方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、フルオロポリマーを製造するための乳化重合法であって、前記フルオロポリマーが熱可塑性フルオロポリマーまたはフルオロエラストマーのどちらかである方法を指向する。「熱可塑性フルオロポリマー」とは、結晶性または半結晶性のフルオロポリマーを意味する。「フルオロエラストマー」とは、非晶質のエラストメリックフルオロポリマーを意味する。フルオロポリマーは、部分フッ素化されていてもまたは過フッ素化されていてもよい。
【0006】
本発明によって製造される熱可塑性フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンのホモポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン)または第2の(異なる)フロオロモノマー、炭化水素オレフィンまたは後者の組み合わせである20重量%以下の少なくとも1つのコモノマーを含有するコポリマーであってもよい。かかるコポリマーには、THV、FEPおよびPFAが含まれるが、それらに限定されない。
【0007】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーの重量を基準にして、10〜70重量パーセントのテトラフルオロエチレン(TFE)の共重合単位を含有する。フルオロエラストマー中の残りの単位は、フルオロモノマー(例えばフッ素含有オレフィンもしくはフッ素含有ビニルエーテル)、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の追加の共重合モノマー(すなわち、コモノマー)からなる。
【0008】
本発明によれば、テトラフルオロエチレンと共重合可能なフッ素含有オレフィンには、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(1−HPFP)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびフッ化ビニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0009】
本発明に用いられてもよいフッ素含有ビニルエーテルには、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが含まれるが、それらに限定されない。モノマーとしての使用に好適なパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)には、式
CF2=CFO(Rf'O)n(Rf''O)mf (I)
(式中、Rf'およびRf''は、2〜6個の炭素原子の異なる線状もしくは分岐のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10であり、Rfは、1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
のものが含まれる。
【0010】
好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、式
CF2=CFO(CF2CFXO)nf (II)
(式中、XはFまたはCF3であり、nは0〜5であり、そしてRfは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)
の組成物を含む。
【0011】
最も好ましいクラスのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルには、nが0または1であり、そしてRfが1〜3個の炭素原子を含有するそれらのエーテルが含まれる。かかる過フッ素化エーテルの例には、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)およびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)が挙げられる。他の有用なモノマーには、式
CF2=CFO[(CF2mCF2CFZO]nf (III)
(式中、Rfは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0〜5、そしてZ=FまたはCF3である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーは、式中RfがC37であり、m=0、そしてn=1であるものである。
【0012】
追加のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーには、式
CF2=CFO[(CF2CF{CF3}O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1 (IV)
(式中、mおよびnは独立して=0〜10、p=0〜3、そしてx=1〜5である)
の化合物が含まれる。このクラスの好ましいメンバーには、式中n=0〜1、m=0〜1、そしてx=1である化合物が含まれる。
【0013】
有用なパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の他の例には、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1 (V)
(式中、n=1〜5、m=1〜3、そして式中、好ましくは、n=1である)
が挙げられる。
【0014】
PAVEの共重合単位が本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在する場合、PAVE含有率は一般に、フルオロエラストマーの総重量を基準にして、25〜75重量パーセントの範囲である。パーフルオロ(メチルビニル)エーテルが使用される場合、フルオロエラストマーは好ましくは、30〜60重量%共重合PMVE単位を含有する。
【0015】
本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーに有用な炭化水素オレフィンには、エチレンおよびプロピレンが含まれるが、それらに限定されない。炭化水素オレフィンの共重合単位が本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在する場合、炭化水素オレフィン含有率は、共重合モノマーの合計重量を基準にして一般に4〜30重量パーセントである。
【0016】
本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマーはまた、任意選択的に、1つ以上の硬化部位モノマーの単位を含んでもよい。好適な硬化部位モノマーの例には、i)臭素含有オレフィン、ii)ヨウ素含有オレフィン、iii)臭素含有ビニルエーテル、iv)ヨウ素含有ビニルエーテル、v)ニトリル基を有するフッ素含有オレフィン、vi)ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル、vii)1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、viii)パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテル、およびix)非共役ジエンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0017】
臭素化硬化部位モノマーは、他のハロゲン、好ましくはフッ素を含有してもよい。臭素化オレフィン硬化部位モノマーの例は、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF2CF2Br、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB)、ならびに臭化ビニル,1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、臭化パーフルオロアリル、4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン−1、4−ブロモ−1,1,3,3,4,4−ヘキサフルオロブテン、4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン、6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン、4−ブロモパーフルオロブテン−1および臭化3,3−ジフルオロアリルなどの他のものである。本発明で有用な臭素化ビニルエーテル硬化部位モノマーには、2−ブロモ−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルおよびCF2BrCF2O−CF=CF2などのクラスCF2Br−Rf−O−CF=CF2(Rfはパーフルオロアルキレン基である)のフッ素化化合物、ならびにCH3OCF=CFBrまたはCF3CH2OCF=CFBrなどのグラスROCF=CFBrまたはROCBr=CF2(式中、Rは低級アルキル基またはフルオロアルキル基である)のフルオロビニルエーテルが含まれる。
【0018】
好適なヨウ化硬化部位モノマーには、式:CHR=CH−Z−CH2CHR−I(式中、Rは−Hまたは−CH3であり、Zは線状もしくは分岐の、任意選択的に1つまたは複数のエーテル酸素原子を含有するC1〜C18の(パー)フルオロアルキレン基、または米国特許第5,674,959号明細書に開示されているような(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)のヨウ化オレフィンが含まれる。有用なヨウ化硬化部位モノマーの他の例は、米国特許第5,717,036号明細書に開示されているように、式:I(CH2CF2CF2nOCF=CF2およびICH2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF=CF2など(式中、n=1〜3である)の不飽和エーテルである。加えて、ヨードエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)、3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン、2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン、2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)プロパン、2−ヨードエチルビニルエーテル、3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテン、およびヨードトリフルオロエチレンをはじめとする好適なヨウ化硬化部位モノマーが米国特許第4,694,045号明細書に開示されている。ヨウ化アリルおよび2−ヨード−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルもまた有用な硬化部位モノマーである。
【0019】
有用なニトリル含有硬化部位モノマーには、下に示される式
CF2=CF−O(CF2n−CN (VI)
(式中、n=2〜12、好ましくは2〜6である)
CF2=CF−O[CF2−CF(CF3)−O]n−CF2−CF(CF3)−CN (VII)
(式中、n=0〜4、好ましくは0〜2である)
CF2=CF−[OCF2CF(CF3)]x−O−(CF2n−CN (VIII)
(式中、x=1〜2、そしてn=1〜4である)、および
CF2=CF−O−(CF2n−O−CF(CF3)CN (IX)
(式中、n=2〜4である)
を有するものが含まれる。
【0020】
式(VIII)を有するものが好ましい。特に好ましい硬化部位モノマーは、ニトリル基とトリフルオロビニルエーテル基とを有する過フッ素化ポリエーテルである。最も好ましい硬化部位モノマーは、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN (X)
すなわちパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)または8−CNVEである。
【0021】
非共役ジエン硬化部位モノマーの例には、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3,3,4,4−テトラフルオロ−1,5−ヘキサジエン、ならびにカナダ国特許第2,067,891号明細書および欧州特許第0784064A1号明細書に開示されているものなどの他のものが挙げられるが、それらに限定されない。好適なトリエンは8−メチル−4−エチリデン−1,7−オクタジエンである。
【0022】
上にリストされた硬化部位モノマーのうちで、フルオロエラストマーが過酸化物で硬化させられる状況のための、好ましい化合物には、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);ヨウ化アリル;ブロモトリフルオロエチレンおよび8−CNVEなどのニトリル含有硬化部位モノマーが含まれる。フルオロエラストマーがポリオールで硬化させられるとき、2−HPFPすなわちパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルが好ましい硬化部位モノマーである。フルオロエラストマーがテトラアミンで硬化させられるとき、ビス(アミノフェノール)またはビス(チオアミノフェノール)、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば8−CNVE)が好ましい硬化部位モノマーである。フルオロエラストマーがアンモニアまたは硬化温度でアンモニアを放出する化合物(例えば尿素)で硬化させられるとき、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば8−CNVE)が好ましい硬化部位モノマーである。
【0023】
硬化部位モノマーの単位は、本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在するとき、典型的には0.05〜10重量%(フルオロエラストマーの総重量を基準にして)、好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.05〜3重量%のレベルで存在する。
【0024】
本発明の方法によって製造されてもよい具体的なフルオロエラストマーには、i)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;vii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびエチレン;xiii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;ix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよびフッ化ビニリデン;xi)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニル)エーテル;xii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);xiii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xiv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;ならびにxv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルの共重合単位を含むものが含まれるが、それらに限定されない。
【0025】
さらに、ヨウ素含有末端基、臭素含有末端基またはそれらの混合物は任意選択的に、フルオロエラストマーの製造中の連鎖移動剤または分子量調整剤の使用の結果としてフルオロエラストマーポリマー鎖端の1つまたは両方に存在する可能性がある。用いられるとき、連鎖移動剤の量は0.005〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲のフルオロエラストマー中のヨウ素または臭素レベルをもたらすように計算される。
【0026】
連鎖移動剤の例には、ポリマー分子の一端または両端に結合ヨウ素の組み込みをもたらすヨウ素含有化合物が挙げられる。ヨウ化メチレン;1,4−ジヨードパーフルオロ−n−ブタン;および1,6−ジヨード−3,3,4,4,テトラフルオロヘキサンがかかる試剤を代表する。他のヨウ素化連鎖移動剤には、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン;1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン;1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン;1,2−ジ(ヨードジフルオロメチル)−パーフルオロシクロブタン;モノヨードパーフルオロエタン;モノヨードパーフルオロブタン;2−ヨード−1−ヒドロパーフルオロエタンなどが含まれる。欧州特許出願公開第0868447A1号明細書に開示されているシアノ−ヨウ素連鎖移動剤もまた含まれる。ジヨウ素化連鎖移動剤が特に好ましい。
【0027】
臭素化連鎖移動剤の例には、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン;1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン;1−ヨード−2−ブロモ−1,1−ジフルオロエタンおよび米国特許第5,151,492号明細書に開示されているなどの他のものが挙げられる。
【0028】
本発明の方法での使用に好適な他の連鎖移動剤には、米国特許第3,707,529号明細書に開示されているものが含まれる。かかる試剤の例には、イソプロパノール、マロン酸ジエチル、酢酸エチル、四塩化炭素、アセトンおよびドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0029】
硬化部位モノマーおよび連鎖移動剤は、ニートでまたは溶液として反応器に加えられてもよい。重合の開始近くに反応器中へ導入されることに加えて、連鎖移動剤量は、製造中のフルオロエラストマーの所望の組成、使用中の連鎖移動剤、および全反応時間に依存して、全重合反応期間の全体にわたって加えられてもよい。
【0030】
本発明の乳化重合に用いられる分散剤は、1つ以上のパーフルオロ脂肪族スルフィネートからなる。本スルフィネートは、式Rf−SO2M(式中、Rfはパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基である)を有する。本スルフィネートはまた、式Rf'−(SO2M)n(式中、Rf'は多価、好ましくは二価パーフルオロ基であり、nは2〜4の整数、好ましくは2である)を有してもよい。好ましくはパーフルオロ基はパーフルオロアルキレン基である。一般にRfおよびRf'は、1〜20個の炭素原子、好ましくは4〜10個の炭素原子を有する。Mは1の原子価を有するカチオン(例えばH+、Na+、K+、NH4+など)である。かかるフルオロ界面活性剤の具体的な例には、C49−SO2Na;C613−SO2Na;C817−SO2Na;C612−(SO2Na)2;およびC37−O−CF2CF2−SO2Naが挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
本分散剤は、パーフルオロ脂肪族スルフィネート以外のフルオロ界面活性剤を実質的に含まない。言い換えれば、本分散剤は、パーフルオロアルキルカルボン酸もしくは塩、フルオロアルキルカルボン酸もしくは塩、パーフルオロアルキルスルホン酸もしくは塩、およびフルオロアルキルスルホン酸もしくは塩などのフルオロ界面活性剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、パーフルオロ脂肪族スルフィネート以外の任意のフルオロ界面活性剤の、製造されるフルオロポリマーの総重量を基準にして、0.05重量パーセント(重量%)未満、好ましくは0重量%を意味する。
【0032】
水性乳化重合液に用いられるべきパーフルオロ脂肪族スルフィネート界面活性剤の量は、エマルジョン安定性および重合速度を泡発生と比較検討することによって決定される。余りにも少ない界面活性剤が使用される場合、過度の反応器汚染が起こるであろうし、反応速度が望ましくないほどに遅い可能性がある。余りにも多い界面活性剤が使用される場合、過度の泡が発生するであろう。本発明の乳化重合法では、用いられる界面活性剤の量は典型的には、製造されるフルオロポリマーの総重量を基準にして、0.05〜3重量%である。重合されるモノマーのタイプはエマルジョン安定性に影響を及ぼす。前記量は、100%未満の活性成分を含有する界面活性剤溶液の量をではなく、活性成分の量を基準にしている。
【0033】
本発明の乳化重合法は連続、セミバッチ式またはバッチ式プロセスであってもよい。
【0034】
本発明のセミバッチ式乳化重合プロセスでは、所望の組成のガス状モノマー混合物(初期モノマー装入物)が、水性媒体を含有する反応器中へ導入される。反応器は典型的には、蒸気空間が残るように、水性媒体で完全には満たされない。水性媒体は、上に議論されたタイプのパーフルオロ脂肪族フルオロ界面活性剤分散剤を含む。任意選択的に、水性媒体は、重合反応のpHを調節するためのリン酸塩または酢酸塩緩衝剤などの、pH緩衝剤を含有してもよい。緩衝剤の代わりに、NaOHなどの、塩基がpHを調節するために使用されてもよい。一般に、pHは、製造中のフルオロエラストマーのタイプに依存して、1〜7(好ましくは3〜7)に調節される。あるいはまた、またはさらに、pH緩衝剤または塩基が、単独でまたは重合開始剤、任意の液体硬化部位モノマーもしくは任意の連鎖移動剤などの他の原料と組み合わせてのどちらかで、重合反応の全体にわたって様々な時間に反応器に加えられてもよい。また任意選択的に、初期の水性媒体は水溶性の無機過酸化物重合開始剤を含有してもよい。
【0035】
初期のモノマー装入物は、ある量のTFEと、コポリマーが製造される場合には、TFEとは異なる、1つ以上の追加のモノマーとを含有する。初期の装入物に含有されるモノマー混合物の量は、0.5〜10MPaの反応器圧力をもたらすように設定される。
【0036】
モノマー混合物は水性媒体中に分散され、そして、任意選択的に、連鎖移動剤がまた、反応混合物が典型的には機械撹拌によってかき混ぜられながら、この時点で加えられてもよい。初期ガス状モノマー装入物において、各モノマーの相対的な量は、反応速度論によって決定され、共重合モノマー単位の所望の比を有するフルオロポリマーをもたらすように設定される(すなわち非常に遅く反応するモノマーは、製造されるフルオロポリマーの組成物中に望まれるより他のモノマーに対して高い量で存在しなければならない)。
【0037】
セミバッチ式反応混合物の温度は25℃〜130℃、好ましくは50℃〜100℃の範囲に維持される。重合は、開始剤が熱分解するか、還元剤と反応するかのいずれかを経て、生じたラジカルが分散されたモノマーと反応するときに開始する。
【0038】
ガス状の主要なモノマーと任意選択の硬化部位モノマーとの追加量(追加フィード)は、調節された温度で一定の反応器圧力を維持するために、重合の間中調節された速度で加えられる。追加フィード中に含有されるモノマーの相対的な比は、生じるフルオロポリマー中の共重合モノマー単位の所望の比とおよそ同じものであるように設定される。このように、フルオロエラストマーの製造の場合には、追加フィードは、モノマー混合物の総重量を基準にして、10〜70重量パーセントのTFEと合計90〜30重量パーセントの、TFEとは異なる1つ以上の追加のモノマーとを含有する。連鎖移動剤はまた、任意選択的に、重合のこの段階中の任意の時点で反応器中へ導入されてもよい。追加の分散剤および重合開始剤もまた、この段階中に反応器にフィードされてもよい。形成されるフルオロポリマーの量は、追加モノマーフィードの累積量におよそ等しい。当業者は、初期装入物の組成が正確には、選択された最終フルオロポリマー組成について必要とされるものではないので、または追加フィード中のモノマーの一部が、反応せずに、既に形成されたポリマー粒子中へ溶解する可能性があるので、追加フィード中のモノマーのモル比が、生じたフルオロポリマー中の所望の(すなわち選択された)共重合モノマー単位組成のそれと必ずしも正確に同じものではないことを認めるであろう。2〜30時間の範囲の重合時間が典型的にはこのセミバッチ式重合プロセスで用いられる。
【0039】
本発明の連続乳化重合プロセスは、以下のやり方においてセミバッチ式プロセスとは異なる。反応器は、蒸気空間が全くないように水性媒体で完全に満たされる。ガス状モノマーと、水溶性モノマー、連鎖移動剤、緩衝剤、塩基、重合開始剤、分散剤等々の他の原料の溶液とは、一定の速度で別個の流れで反応器にフィードされる。フィード速度は、反応器中の平均フルオロポリマー滞留時間が概して0.2〜4時間であるように調節される。短い滞留時間が反応性モノマーについて用いられるが、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルなどの低い反応性のモノマーはより多くの時間を必要とする。連続プロセス反応混合物の温度は、25℃〜130℃、好ましくは70℃〜120℃の範囲に維持される。
【0040】
本発明の方法において、重合温度は25℃〜130℃の範囲に維持される。温度が25℃より下である場合、重合の速度が商業規模で効率的な反応にとって余りにも遅く、一方温度が130℃より上である場合、重合を維持するために必要とされる反応器圧力が実用的であるには余りにも高い。
【0041】
重合圧力は、0.5〜10MPa、好ましくは1〜6.2MPaの範囲に調節される。セミバッチ式プロセスでは、所望の重合圧力は初期には、初期装入物中のガス状モノマーの量を調節することによって達成され、反応が開始した後は、圧力は追加ガス状モノマーフィードをコントロールすることによって調節される。連続プロセスでは、圧力は、分散系排出ラインでの背圧調整器を用いて調節される。重合圧力は、それが1MPaより下である場合、重合反応系中のモノマー濃度が満足できる反応速度を得るには余りにも低いので、上記の範囲に設定される。加えて、分子量は十分には増加しない。圧力が10MPaより上である場合、必要とされる高圧装置のコストが非常に高い。
【0042】
形成されるフルオロポリマーの量は、装入される追加フィードの量におよそ等しく、水性媒体の100重量部当たり10〜30重量部のフルオロポリマーの範囲に、好ましくは20〜25重量部のフルオロポリマーの範囲にある。フルオロポリマーの形成度は、それが10重量部未満である場合、生産性が望ましくもなく低く、一方それが30重量部より上である場合、固形分が満足できる撹拌にとって余りにも高くなるので、上記の範囲に設定される。
【0043】
本発明で重合を開始させるために使用されてもよい水溶性過酸化物には、例えば、過硫酸水素のアンモニウム、ナトリウムまたはカリウム塩が含まれる。レドックス型開始においては、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤が過酸化物に加えて存在する。これらの水溶性過酸化物は、単独でまたは2つ以上のタイプの混合物として使用されてもよい。使用される量は、一般にポリマーの100重量部当たり0.01〜0.4重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で選択される。重合中にフルオロポリマー鎖端の幾らかは、これらの過酸化物の分解によって発生した断片でキャップされる。
【0044】
任意選択的に、フルオロポリマーゴムまたは小片は、分散系への凝固剤の添加によって本発明の方法によって製造されたフルオロポリマー分散系から単離されてもよい。当該技術分野で公知の任意の凝固剤が使用されてもよい。好ましくは、分散系に含有される界面活性剤と水溶性塩を形成する凝固剤が選ばれる。さもなければ、沈澱する界面活性剤塩が単離されるフルオロエラストマー中に同伴されることになり、その結果ビスフェノール型硬化剤でのフルオロエラストマーの硬化(すなわち架橋)を妨害する可能性がある。
【0045】
一般的な凝固剤には、アルミニウム塩(例えば硫酸カリウムアルミニウム)、カルシウム塩(例えば硝酸カルシウム)またはマグネシウム塩(例えば硫酸マグネシウム)が含まれるが、それらに限定されない。かかる短鎖界面活性剤とのカルシウム、マグネシウム、または一価のカチオンの塩は水溶性であり、従ってフルオロエラストマーから容易に除去可能である。
【0046】
本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーは、シール、ワイヤコーティング、チューブ材料およびラミネートを含む多くの工業用途で有用である。
【実施例】
【0047】
試験方法
ムーニー(Mooney)粘度、ML(1+10)は、1分の予熱時間および10分の回転子操作時間を用いて、121℃でL(大きい)タイプの回転子を使ってASTM D1646に従って測定した。
【0048】
固有粘度は、メチルエチルケトン溶媒中(100mlの溶媒中0.1gのポリマー)30℃で測定した。
【0049】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、それらに限定されない。
【0050】
本発明の乳化重合法での使用に好適なパーフルオロ脂肪族スルフィネートは、次の手順によって製造した。
【0051】
パーフルオロオクチルスルフィネート[C817−SO2Na]の製造:
温度プローブ、機械撹拌機および冷却器を備えた1Lの3口フラスコを一晩にわたり窒素流れ下に放置した。フラスコに1−ヨードパーフルオロオクタン(136.5g、0.25モル)、引き続き重炭酸ナトリウム(21g、0.25モル)を装入した。混合物を、脱酸素蒸留水(100mL)を加える前に5分間撹拌した。機械撹拌機で撹拌しながら、亜ジチオン酸ナトリウム(52.25g)を30〜40分の期間にわたってゆっくり加えた。混合物は発泡し、温度は約32℃に上昇した。亜ジチオン酸ナトリウムすべての添加後に、アセトニトリル(75mL)を導入した。泡形成および幾らかの発熱が再び観察された。反応混合物を周囲温度で一晩にわたり撹拌するに任せ、次に75℃に追加の3時間加熱した。反応混合物を冷却し、濾過した。濾過した固体(約134グラム)をおよそ700mLのアセトンに溶解させた。幾つかのスクープのカーボンブラックを加え、溶液を数時間撹拌した。室温での濃縮(すなわちロータリーエバポレーターでの溶媒の除去)および濾過後に、約69gの白色固体生成物を回収した。反応混合物からの濾液をさらに濃縮して約62グラムの物質を得て、それをアセトンおよびカーボンブラックで同様に処理した。乾燥後に、追加の41gの生成物を得た。全収率は約86%であった。19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.1(m,3F),−122.9(m,6F),−123.6(s,br,4F),−127.1(s,2F),−132.7(s,2F)。
【0052】
パーフルオロヘキシルスルフィネート[C613−SO2Na]の製造:
機械攪拌機、冷却器および温度プローブを備えた丸底フラスコに、窒素の流れ下に1−ヨードパーフルオロヘキサン(100g、0.22モル)、重炭酸ナトリウム(18.8g、0.22モル)、および脱酸素蒸留水(93mL)を加えた。撹拌しながら、亜ジチオン酸ナトリウム(46.1g、0.26モル)をゆっくり加えた。反応混合物は発泡し、発熱し、それは温度を約32℃に上昇させた。反応液は黄色がかった色になり始めた。亜ジチオン酸ナトリウムすべての添加後に、アセトニトリル(72mL)を次に加えた。反応混合物を70℃〜75℃に4〜5時間加熱し、反応混合物はより深い黄色に変わった。冷却後に、反応混合物を濾過し、集めた固体を酢酸エチルに溶解させた。有機溶液を分液漏斗で分離し、脱酸素水で2回洗浄した。溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、高真空下にさらに乾燥させた。所望の生成物を白色固体として得た(83グラム、91.2%収率)。19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.2(m,3F),−123.2(m,2F),−123.7(m,2F),−124.0(m,2F),−127.2(s,2F),−132.6(s,2F)。
【0053】
他のパーフルオロアルキルおよびパーフルオロアルコキシスルフィネートを類似の手順によって製造した。
【0054】
パーフルオロブチルスルフィネート[C49−SO2Na]:
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.5(m,3F),−124.5(m,2F),−127.5(m,2F),−131.4(s,br,2F)。
【0055】
1,6−パーフルオロヘキシルジスルフィネート[C612−(SO2Na)2]:
19F−NMR(376.89MHz,D2O):−122.5(m,4F),−122.8(m,4F),−130.3(m,4F)。
【0056】
3−オキサ−パーフルオロヘキシルスルフィネート[C37−O−CF2CF2−SO2Na]:
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−83.5(m,3F),−83.8〜−85.3(m,4F),−131.1(s,br,2F),−135.7(s,br,2F)。
【0057】
実施例1
1リットルの反応器に脱酸素蒸留水(450mL)、リン酸水素二ナトリウム七水和物(2.0g)、過硫酸アンモニウム(0.4g)、およびパーフルオロオクチルスルフィネート(4.5g)を装入した。反応器を密閉し、冷却し、排気し、次にテトラフルオロエチレン(TFE、45g)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE、40g)とを反応器中へ移した。重合反応を900rpmのかき混ぜ速度で70℃で8時間進行させた。反応物を冷却し、得られたラテックスを飽和硫酸マグネシウム水溶液で凝固させた。沈澱したポリマーを濾過によって集めた。ポリマーを温水で数回洗浄し、真空オーブン中80℃で24時間乾燥させた。白色ポリマー(72g)を得た。このポリマーは、ヘキサフルオロベンゼン溶媒中30℃で19F NMR分光分析法によって測定した際にTFE/PMVE=66.1/33.9(モル%)の組成を有した。ポリマーは、DSC(二次加熱曲線)によって測定した際に−6.8℃でのTgを有した。
【0058】
実施例2
1リットルの反応器に脱酸素蒸留水(450mL)、リン酸水素二ナトリウム七水和物(2.0g)、過硫酸アンモニウム(0.4g)、およびパーフルオロヘキシルスルフィネート(4.2g)を装入した。反応器を密閉し、冷却し、排気し、次にテトラフルオロエチレン(TFE、45g)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE、40g)とを反応器中へ移した。重合反応を900rpmのかき混ぜ速度で70℃で8時間進行させた。反応物を冷却し、得られたラテックスの約半分を飽和硫酸マグネシウム水溶液で凝固させた。沈澱したポリマーを濾過によって集めた。ポリマーを温水で数回洗浄し、真空オーブン中80℃で24時間乾燥させた。白色ポリマー(28.6グラム)を得た。このポリマーは、ヘキサフルオロベンゼン溶媒中30℃で19F NMR分光分析法によって測定した際にTFE/PMVE=64.5/33.5(モル%)の組成を有した。ポリマーは、DSC(二次加熱曲線)によって測定した際に−8.5℃でのTgを有した。
【0059】
実施例3
37.0gのパーフルオロヘキシルフルフィン酸ナトリウム、18.5gのリン酸二ナトリウム七水和物および24,907gの脱イオン脱酸素水の溶液を40リットルの反応器に装入した。この溶液を80℃に加熱した。微量の酸素の除去後に、反応器を4.1重量パーセント(重量%)フッ化ビニリデンと、86.0重量%ヘキサフルオロプロペンと、9.9重量%テトラフルオロエチレンとの2139グラムの混合物で加圧した。加圧の終わりに、反応器圧力は2.0MPaであった。反応器に1重量%過硫酸アンモニウムと5重量%リン酸二ナトリウム七水和物との50.0mlの開始剤溶液を装入して重合を開始した。反応器圧力が降下するので、35.0重量%フッ化ビニリデンと、37.1重量%ヘキサフルオロプロペンと、27.9重量%テトラフルオロエチレンとの混合物を反応器にフィードして2.0MPa圧力を維持した。追加の開始剤溶液を、重合速度を維持するために加えた。計170mlの開始剤溶液および16.2時間に対応して、計8333gの追加モノマーをフィードした後、モノマーおよび開始剤フィードを止めた。反応器を冷却し、反応器中の圧力は大気圧に下がった。生じたフルオロエラストマーラテックスは、24.3重量%固体の固形分と、2.95のpHと、BI−9000 Particle Sizing、Brookhaven Instruments Corporationによって測定される、355nmの平均粒径とを有した。ラテックスを硫酸アルミニウム溶液で凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。
【0060】
実施例4
37.0gのパーフルオロヘキシルスルフィン酸ナトリウム、18.5gのリン酸二ナトリウム七水和物および24,907gの脱イオン脱酸素水の溶液を40リットルの反応器に装入した。この溶液を80℃に加熱した。微量の酸素の除去後に、反応器を4.1重量%フッ化ビニリデン(VF2)と、85.9重量%ヘキサフルオロプロペン(HFP)と、10.0重量%テトラフルオロエチレン(TFE)との2121グラムの混合物で加圧した。加圧の終わりに、反応器圧力は2.0MPaであった。反応器に1重量%過硫酸アンモニウムと5重量%リン酸二ナトリウム七水和物との50.0mlの開始剤溶液を装入して重合を開始した。反応器圧力が降下するので、35.0重量%フッ化ビニリデンと、37.1重量%ヘキサフルオロプロペンと、27.9重量%テトラフルオロエチレンとの混合物を反応器にフィードして2.0MPa圧力を維持した。45gのこのモノマー混合物をフィードした後、37.29モルパーセント(モル%)1,4−ジヨードパーフルオロブタンと、46.38モル%1,6−ジヨードパーフルオロヘキサンと、11.98モル%1,8−ジヨードパーフルオロオクタンと、3.76モル%1,10−ジヨードパーフルオロデカンとの25.0gの混合物を反応器に装入した。追加の開始剤溶液を、重合速度を維持するために加えた。3700gのモノマー混合物を加えた後、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)を、1000gのモノマー当たり5.0gのITFBのフィード速度で反応器に導入した。計350mlの開始剤溶液、20.4gのITFBおよび16.2時間に対応して、計8333gの追加主要モノマーをフィードした後、モノマーおよび開始剤フィードを止めた。反応器を冷却し、反応器中の圧力は大気圧に下がった。生じたフルオロエラストマーラテックスは、24.4重量%固体の固形分と、3.12のpHと、BI−9000 Particle Sizing、Brookhaven Instruments Corporationによって測定される、339nmの平均粒径とを有した。ラテックスを硫酸アルミニウム溶液で凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。このフルオロエラストマーは、0.40dl/gの固有粘度、38のMooney粘度、121℃でのML(1+10)を有し、34.3重量%VF2、36.6重量%HFP、28.9重量%TFEおよび0.24重量%Iを含有した。
【0061】
実施例5
74.1gのパーフルオロヘキシルスルフィン酸ナトリウム、18.5gのリン酸二ナトリウム七水和物および24,907gの脱イオン脱酸素水の溶液を40リットルの反応器に装入した。この溶液を80℃に加熱した。微量の酸素の除去後に、反応器を4.0重量%フッ化ビニリデンと、86.0重量%ヘキサフルオロプロペンと、10.0重量%テトラフルオロエチレンとの2125gの混合物で加圧した。加圧の終わりに、反応器圧力は2.0MPaであった。反応器に1重量%過硫酸アンモニウムと5重量%リン酸二ナトリウム七水和物との50.0mlの開始剤溶液を装入して重合を開始した。反応器圧力が降下するので、35.0重量%フッ化ビニリデンと、37.1重量%ヘキサフルオロプロペンと、27.9重量%テトラフルオロエチレンとの混合物を反応器にフィードして2.0MPa圧力を維持した。45gのこのモノマー混合物をフィードした後、37.29モル%1,4−ジヨードパーフルオロブタンと、46.38モル%1,6−ジヨードパーフルオロヘキサンと、11.98モル%1,8−ジヨードパーフルオロオクタンと、3.76モル%1,10−ジヨードパーフルオロデカンとの25.0gの混合物を反応器に装入した。追加の開始剤溶液を、重合速度を維持するために加えた。3700gのモノマー混合物を加えた後、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)を、1000gのモノマー当たり5.0gのITFBのフィード速度で反応器に導入した。計350mlの開始剤溶液、20.4gのITFBおよび15.4時間に対応して、計8333gの追加主要モノマーをフィードした後、モノマーおよび開始剤フィードを止めた。反応器を冷却し、反応器中の圧力は大気圧に下がった。生じたフルオロエラストマーラテックスは、24.7重量%固体の固形分と、2.97のpHと、BI−9000 Particle Sizing、Brookhaven Instruments Corporationによって測定される、302nmの平均粒径とを有した。ラテックスを硫酸アルミニウム溶液で凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。このフルオロエラストマーは、0.39dl/gの固有粘度、32のMooney粘度、121℃でのML(1+10)を有し、33.7重量%VF2、37.1重量%HFP、29.0重量%TFEおよび0.24重量%Iを含有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始剤および分散剤を含む水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合させてフルオロポリマーの水性分散系を得る工程を含む、テトラフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択されるフルオロポリマーの製造のための乳化重合法であって、前記分散剤が少なくとも1つのパーフルオロ脂肪族スルフィネートから本質的になる方法。
【請求項2】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式Rf−SO2M(式中、Rfは、1〜20個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基であり、Mは1の原子価を有するカチオンである)のものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Rfが4〜10個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式C49−SO2Na;C613−SO2Na;C817−SO2Na;およびC37−O−CF2CF2−SO2Naのものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式Rf'−(SO2M)n(式中、Rf'は1〜20個の炭素原子を含有する多価パーフルオロ基であり、Mは1の原子価を有するカチオンであり、nは2〜4の整数である)のものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
f'が4〜10個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキレン基である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パーフルオロ脂肪族スルフィネートが式C612−(SO2Na)2のものである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレンのホモポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレンのコポリマーである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのコモノマーをテトラフルオロエチレンと共重合させ、前記少なくとも1つのコモノマーが、フッ素含有オレフィン、フッ素含有ビニルエーテルおよび炭化水素オレフィンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フッ素含有オレフィンが、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレンおよびフッ化ビニルからなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フッ素含有ビニルエーテルがパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素オレフィンが、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記フルオロポリマーが、i)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレンおよび1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;vii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびエチレン;viii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;ix)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、プロピレンおよびフッ化ビニリデン;xi)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニル)エーテル;xii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);xiii)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xiv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;ならびにxv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルからなる群から選択される共重合単位を含むフルオロエラストマーである請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503299(P2011−503299A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533266(P2010−533266)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082755
【国際公開番号】WO2009/062006
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】