説明

フレキシブルプリント基板の製法

【課題】 無電解ニッケルめっき層の形成後に高温で加熱することなく、さらに無電解ニッケルめっき層の形成を複数回の工程で行うことなく、長期の熱負荷時の銅の拡散による密着強度の低下を抑制し、長期の熱負荷に対する耐熱性に優れ、且つ、高温短時間の熱負荷に対する耐熱性、ハンダ耐熱性にも優れるフレキシブルプリント基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に各厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を製造する。または、イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理したポリイミドフィルム、または490℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、フレキシブルプリント基板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムの表面に、ニッケルめっき層を形成し、その後銅めっきにより配線パターン形成用の銅層を形成するフレキシブルプリント基板の製造方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリイミドフィルムの表面を親水化し、触媒を付与し、無電解めっきを施し、不活性雰囲気中で熱処理を施し、その後無電解銅めっき、もしくは無電解銅めっきに引き続き電解銅めっきを行なうことにより銅ポリイミド基板を製造するに際し、ポリイミドフィルム表面の親水化処理を、過マンガン酸塩または次亜塩素酸塩のうちの何れか一種を含む水溶液を用いて行ない、触媒付与後、該表面にニッケル、コバルトまたはこれら金属の合金のうちの何れか一種よりなる無電解めっき皮膜を0.01〜0.1μmの厚みで、皮膜中の不純物含有量が10重量%以下であるようにして施し、得られた基板を該基板における最高到達温度が350〜540℃の温度範囲であって、且つ熱負荷係数Dが0.3〜3.5の範囲内になるようにして不活性雰囲気中での熱処理を施すことを特徴とする銅ポリイミド基板の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、ポリイミドフィルムの両面にニッケルめっき層を形成し、各ニッケルめっき層の表面に配線パターン形成用の銅めっき層を形成する工程を備えたフレキシブルプリント基板の製法において、上記ニッケルめっき層の形成を2工程に分け、第1工程で、無電解ニッケルめっきにより薄い、具体的には厚みが0.01〜0.1μmの第1のニッケルめっき層を形成した後、これを乾燥させ、つぎに第2工程で、上記薄い第1のニッケルめっき層の表面に、無電解ニッケルめっきまたは電解ニッケルめっきにより第2のニッケルめっき層を、好ましくは第1のニッケルめっき層の厚みと第2のニッケルめっき層の厚みの合計が0.2〜1.0μmになるように、形成することを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法が開示されている。
【0005】
ポリイミドフィルムと銅めっき層の間に形成されるニッケルめっき層は、フレキシブルプリント基板の実使用における長期の熱負荷時に、回路(銅めっき層)の接着力低下の原因となる、銅のポリイミドフィルム側への拡散移行を防止するものである。しかしながら、このニッケルめっき層は無電解めっき(湿式めっき)により形成され、形成時にポリイミドフィルムが水分を吸収する。ポリイミドフィルムに水分が存在した状態のフレキシブルプリント基板では、はんだ接合のような高温短時間の熱負荷時にポリイミドフィルム内の水分が膨張し、ポリイミドフィルムとニッケルめっき層との接着力の低下を引き起こすため、通常、ニッケルめっき層形成後、銅めっき層形成前に加熱処理して、ポリイミドフィルム内に含まれた水分を蒸発させる。長期の熱負荷時の銅の拡散移行に対するバリア性が発揮されるためには、ニッケルめっき層は所定の厚みが必要であるが、ニッケルめっき層がポリイミドフィルムの両面に形成されている場合は水分の蒸発が困難となり、作製されたフレキシブルプリント基板に高温短時間の熱負荷が加わった時に、ポリイミド樹脂フィルム内の水分が膨張し、ポリイミドフィルムとニッケルめっき層との接着力が低下することがある。特許文献2記載の方法では、上記の通り、表裏両面のニッケルめっき層の形成を2工程に分け、まず、ポリイミドフィルムの両面に薄い第1のニッケルめっき層を形成した後に乾燥させてポリイミドフィルム内の水分を蒸発させ、その後、第2のニッケルめっき層を形成してニッケルめっき層をバリア性が発揮される厚みまで厚くすることで、長期の熱負荷時の銅の拡散移行による接着力低下と、はんだ接合のような高温短時間の熱負荷時のポリイミドフィルム内の水分の急膨張による接着力低下の両方を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−129377号公報
【特許文献2】特開2005−154895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、無電解ニッケルめっき層の形成後に高温で加熱することなく、さらに無電解ニッケルめっき層の形成を複数回の工程で行うことなく、長期の熱負荷時の銅のポリイミドフィルム側への拡散による密着強度の低下を抑制し、長期の熱負荷に対する耐熱性に優れ、且つ、高温短時間の熱負荷に対する耐熱性、ハンダ耐熱性にも優れるフレキシブルプリント基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の事項に関する。
(1) 両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を製造する方法において、
用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に各厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、加熱した積層フィルムであることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法。
(2) 両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成した後、80〜150℃の範囲で加熱した積層フィルムであることを特徴とする上記(1)に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
(3) ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成する前に、アルカリ金属水酸化物又はこれらの水溶液によるポリイミドフィルムの表面処理を行うことを特徴とする上記(1)または(2)に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
(4) 配線加工により得られたフレキシブルプリント基板を80〜250℃の範囲で加熱する工程をさらに有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【0009】
(5) 両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板を製造する方法において、
用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した積層フィルムであることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法。
(6) 両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板を製造する方法において、
用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、490℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した積層フィルムであることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法。
(7) ポリイミドフィルムの両面に形成される無電解ニッケルめっき層の厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満であることを特徴とする上記(5)または(6)に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
(8) ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成する前に、アルカリ金属水酸化物又はこれらの水溶液によるポリイミドフィルムの表面処理を行うことを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
(9) 製造されるフレキシブルプリント基板が、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は全面に金属めっき層を有するものであることを特徴とする上記(5)〜(8)のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【0010】
(10) 配線加工は、セミアディティブ法又はサブトラクティブ法による配線加工であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
(11) 配線加工は、セミアディティブ法による配線加工であり、下記(i)〜(iii)のいずれかの方法でめっきレジスト層を形成する工程を有することを特徴とする上記(10)に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
(i)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層と電解銅めっき層を順次形成後、めっきレジスト層を形成する方法。
(ii)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層を形成後、めっきレジスト層を形成する方法。
(iii)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に、直接、めっきレジスト層を形成する方法。
【0011】
(12) ポリイミドフィルムの一方の面(A)に配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板であり、
1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に各厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により製造されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
(13) ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板であり、
イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により製造されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
(14) ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板であり、
490℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により製造されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法では、1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に各厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を製造する。
【0013】
本製法では、無電解ニッケルめっき層形成後、銅めっき層形成前の熱処理は、配線加工に耐えうるだけの無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性を確保するために行う。そして、銅めっき層形成後、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するように配線を形成することにより、十分にポリイミドフィルム内の水分を除去できるように水分の抜け道を確保し、その後、さらに熱処理を行ってポリイミドフィルム内の水分を除去する。これにより、ポリイミドフィルム内の水分を十分に低減でき、はんだ接合のような高温の熱負荷時の密着強度の低下を抑制することができる。一方で、厚みが0.1μmを超える無電解ニッケルめっき層は、長期の熱負荷時の銅のポリイミドフィルム側への拡散移行を防止できるので、長期の熱負荷時の密着強度の低下も抑制することができる。つまり、長期の熱負荷と、高温の熱負荷の両方に耐えうる無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムの密着性を確保することができる。なお、無電解ニッケルめっき層の厚みが0.3μm以上になると、無電解ニッケルめっき層形成後、銅めっき層形成前の熱処理で、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性が低下することがある。
【0014】
以上のように、本発明によれば、ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層の形成後に高温で加熱することなく、さらに無電解ニッケルめっき層の形成を複数回の工程で行うことなく、長期の熱負荷時の銅のポリイミドフィルム側への拡散による密着強度の低下を抑制し、長期の熱負荷に対する耐熱性に優れ、且つ、高温短時間の熱負荷に対する耐熱性、ハンダ耐熱性にも優れる、一方の面は配線パターンを形成し、他方の面は一部又は全部にポリイミドフィルムが露出した部分を有するフレキシブルプリント基板を得ることができる。
【0015】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法では、イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理して得られたポリイミドフィルム、または、イミド化(最高加熱温度は530℃以上であっても、530℃未満であってもよい。)により得られたポリイミドフィルムを490℃以上で、好ましくは1分以上熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、好ましくは厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板を製造する。ポリイミドフィルムを490℃以上で熱処理する場合、その加熱時間は、例えば1〜5分間である。
【0016】
本製法では、イミド化時に従来よりも高い最高加熱温度530℃以上で熱処理して得られたポリイミドフィルム、または、イミド化時の最高加熱温度に関係なく、イミド化により得られたポリイミドフィルムを490℃以上で、好ましくは1分以上熱処理したポリイミドフィルムを用い、且つ、無電解ニッケルめっき層形成後、銅めっき層形成前の熱処理を比較的長時間、具体的には100〜180℃の温度範囲で2.5時間以上行うが、これにより、無電解ニッケルめっき層がポリイミドフィルムの両面に形成されているにもかかわらず、ポリイミドフィルム内の水分を十分に除去・低減でき、はんだ接合のような高温の熱負荷時の密着強度の低下を抑制することができる。イミド化時の最高加熱温度が530℃未満で、イミド化後に490℃以上で熱処理しなかったポリイミドフィルムを用いた場合は、ポリイミドフィルム内の水分を十分に低減できず、高温の熱負荷時の密着強度の低下を十分には抑制できないことがある。一方で、特には厚みが0.1μmを超える無電解ニッケルめっき層は、長期の熱負荷時の銅のポリイミドフィルム側への拡散移行を十分に防止できるので、長期の熱負荷時の密着強度の低下を抑制することができる。つまり、長期の熱負荷と、高温の熱負荷の両方に耐えうる無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムの密着性を確保することができる。なお、無電解ニッケルめっき層の厚みが0.3μm以上になると、無電解ニッケルめっき層形成後、銅めっき層形成前の熱処理で、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性が低下することがある。
【0017】
この第2のフレキシブルプリント基板の製法では、上記の第1のフレキシブルプリント基板の製法とは異なり、無電解ニッケルめっき層形成後、銅めっき層形成前の熱処理により、十分にポリイミドフィルム内の水分を低減できる。そのため、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は少なくとも一部にポリイミドフィルムが露出する部分を有するように配線を形成して水分の抜け道を確保する必要がない。この第2のフレキシブルプリント基板の製法によれば、一方の面が配線を有し、他方の面は全面に金属層を有するもの、すなわちポリイミドフィルムが露出する部分を有しないフレキシブルプリント基板も製造できる。
【0018】
以上のように、本発明によれば、ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層の形成後に高温で加熱することなく、さらに無電解ニッケルめっき層の形成を複数回の工程で行うことなく、長期の熱負荷時の銅のポリイミドフィルム側への拡散による密着強度の低下を抑制し、長期の熱負荷に対する耐熱性に優れ、且つ、高温短時間の熱負荷に対する耐熱性、ハンダ耐熱性にも優れる、少なくとも一方の面には配線パターンを有するフレキシブルプリント基板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法≫
本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法においては、上記の通り、1回の無電解ニッケルめっきで、ポリイミドフィルムの両面に各厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いる。
【0020】
ポリイミドフィルムとしては、配線基板などの各種基板に好適に用いることができる市販のポリイミドフィルムなどを用いることができる。
【0021】
ポリイミドフィルムとしては、線膨張係数(50〜200℃)がポリイミドフィルムに積層する銅の線膨張係数に近いことが好ましく、ポリイミドフィルムの線膨張係数(50〜200℃)は0.5×10−5〜2.8×10−5cm/cm/℃であることが好ましい。
【0022】
また、ポリイミドフィルムとしては、熱収縮率が0.05%以下のものが、熱変形が小さく好ましい。
【0023】
ポリイミドフィルムとしては、耐熱性、電気絶縁性などに優れるポリイミドフィルムを好適に用いることができる。
【0024】
ポリイミドフィルムの厚みは、特に限定されず、製造や取扱が問題なく行なえ、形成する金属層や配線パターン層を充分に支持できる厚みであればよく、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜200μm、より好ましくは5〜175μm、特に好ましくは5〜100μmであることが好ましい。
【0025】
ポリイミドフィルムとしては、単層、または2層以上を積層した複層のフィルム、またはシート状のものを用いることができる。
【0026】
ポリイミドフィルムは、公知の方法で製造することができ、例えば
単層のポリイミドフィルムは、
(1)ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を支持体に流延又は塗布し、イミド化する方法、
(2)ポリイミド溶液を支持体に流延又は塗布し、必要に応じて加熱する方法、
などにより得ることができ、
2層以上のポリイミドフィルムは、
(3)ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を支持体に流延又は塗布し、さらに2層目以上のポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を逐次、前に支持体に流延又は塗布したポリアミック酸層の上面に流延又は塗布し、イミド化する方法、
(4)2層以上のポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を同時に支持体に流延又は塗布し、イミド化する方法、
(5)ポリイミド溶液を支持体に流延又は塗布し、さらに2層目以上のポリイミド溶液を逐次、前に支持体に流延又は塗布したポリイミド層の上面に流延又は塗布し、必要に応じて加熱する方法、
(6)2層以上のポリイミド溶液を同時に支持体に流延又は塗布し、必要に応じて加熱する方法、
(7)上記(1)から(6)で得られた2枚以上のポリイミドフィルムを直接、又は接着剤を介して積層する方法、などにより得ることができる。
【0027】
ポリイミドフィルムとしては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)及びピロメリット酸二無水物(PMDA)などから選ばれる成分を主成分として含むテトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)及び3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−DADE)などから選ばれる成分を主成分として含むジアミン成分とから合成されるポリイミドを用いることができる。
【0028】
好適なポリイミドフィルムとしては、例えば、以下の(1)〜(4)のポリイミドが挙げられる。
【0029】
(1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)と場合によりさらに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、PPD/4,4’−DADE(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。
【0030】
(2)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、s−BPDA/PMDAは15/85〜85/15で、PPD/4,4’−DADEは90/10〜10/90であることが好ましい。
【0031】
(3)ピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、4,4’−DADE/PPDは90/10〜10/90であることが好ましい。
【0032】
(4)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、BTDA/PMDAが20/80〜90/10、PPD/4,4’−DADEが30/70〜90/10であることが好ましい。
【0033】
ポリイミドの合成において、ポリイミドの物性を損なわない種類と量の他のテトラカルボン酸二無水物やジアミンを使用してもよい。
【0034】
ポリイミドフィルムは、さらにフィルム表面を無機酸化物変性したポリイミドフィルムを用いることができる。フィルム表面を無機酸化物変性したポリイミドフィルムは、より高い密着強度と耐熱性を有することがある。
【0035】
無機酸化物変性したポリイミドフィルムは、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とから得られるポリイミド前駆体(ポリアミック酸など)の溶液を支持体上に流延塗布し、加熱して製造されたポリイミド前駆体溶液の自己支持性フィルムの片面若しくは両面に適当な無機化合物(例えば、金属化合物)を含む溶液を塗布して、無機酸化物変性したフィルムである。無機酸化物変性とは、金属酸化物や、金属酸化物と類似の固体酸化物となる半導体元素の酸化物(以降、単に金属酸化物という)で変性された状態を指し、少なくとも表面の一部に無機物(金属元素または半導体元素)−酸素結合が形成されている状態を指す。
【0036】
ポリイミドフィルムは、好ましくはアルミニウム酸化物変性、チタン酸化物変性若しくはシリコン酸化物変性され、少なくとも表面の一部にアルミニウム−酸素結合、チタン−酸素結合若しくはシリコン(ケイ素)−酸素結合が形成されていることが好ましい。
【0037】
無機酸化物変性された状態は、完全な酸化物でなくても、例えば水酸化アルミニウム、チタンの水酸基、シリコンの水酸基などや、あるいはダングリングボンドなどが一部に存在していたり、有機物との結合が存在していてもよい。
【0038】
ポリイミドフィルムとしては、少なくとも片面がコロナ放電処理、プラズマ処理、化学的粗面化処理、物理的粗面化処理などの表面処理されたポリイミドフィルムを用いることもできる。
【0039】
本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法において用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムの両面に厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を1回のメッキで形成し、その後、好ましくは80〜150℃の範囲で加熱することにより得ることができる。
【0040】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層の厚みが上記範囲より薄い場合は、長期の熱負荷時の銅の拡散による密着強度の低下を十分には抑制できず、長期の熱負荷により密着性が劣化することがある。上記範囲より厚い場合は、両面を無電解ニッケルめっき層で覆われたポリイミドフィルムから水分の抜け道が限りなく遮られることにより、無電解ニッケルめっき層形成後の加熱処理により、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性が劣化することがある。さらに、無電解ニッケルめっき層が厚い場合は、配線パターン形成において、無電解ニッケルめっき層を含む下地の除去が困難となり、除去処理を強くすることにより配線におけるアンダーカットの原因となる場合がある。
【0041】
無電解ニッケルめっき層の厚みは、0.1μmを超えて0.3μm未満であることが好ましく、0.11μmから0.28μmであることがより好ましく、0.12μmから0.27μmであることがより好ましい。
【0042】
本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法においては、ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成した後、得られた両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを加熱する。
【0043】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの加熱温度は、80〜180℃の範囲、好ましくは80〜150℃の範囲、さらに好ましくは90〜140℃の範囲、さらに好ましくは100〜130℃の範囲であることが好ましい。加熱温度が上記の範囲より低い場合、加熱時間が長くなり生産性が問題となる場合があり、上記範囲より高い場合、ポリイミドフィルム内の水分が一度に気化膨張し、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性が低下することがある。
【0044】
加熱時間は適宜最適となるような時間を設定すればよく、例えば好ましくは1分〜24時間、より好ましくは10分〜3時間、さらに好ましくは20分〜2時間の間が好ましい。
【0045】
ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成する場合、前処理として、ポリイミドフィルムの両面がアルカリ金属水酸化物又はこれらの水溶液を用いて表面処理されていることが、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルム界面の密着性を確保するために好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0046】
ポリイミドフィルムより両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを製造する方法の一例としては、ポリイミドフィルムの両面を、少なくとも触媒を付与する工程、無電解ニッケルめっきによりニッケルめっき層を形成する工程、加熱する工程をこの順で行うことができ、さらに、少なくともアルカリ溶液で処理する工程、触媒を付与する工程、無電解ニッケルめっきによりニッケルめっき層を形成する工程、加熱する工程をこの順で行うことができる。また、アルカリ溶液で処理する工程においてアルカリ溶液に塩基性アミノ酸を混合したり、アルカリ溶液で処理する工程の後に、塩基性アミノ酸溶液で処理する工程を加えたり、触媒に塩基性アミノ酸溶液を付与したものを用いることができる。塩基性アミノ酸を用いることにより、ポリイミドフィルム表面へ選択的に多くの金属触媒を吸着させることができ、特に密着力を安定させることができる。
【0047】
ポリイミドフィルムより両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを製造する上記各工程を詳しく以下に示す。
1)アルカリ溶液で処理する工程では、ポリイミドフィルムの表面をアルカリ溶液、例えば水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ溶液に噴きつけや浸漬などの方法で接触させて、ポリイミドフィルムの表面を処理する。例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム10〜200g/Lの水溶液で25〜80℃、10秒〜10分間浸漬処理する方法で行うことができる。
2)触媒を付与する工程では、ポリイミドフィルムの表面に無電解下地金属析出の核を形成するために、ポリイミドフィルムの変性した表面の一部又は全部に触媒を吸着などの方法で付与する。例えば、イオン性パラジウム触媒溶液で30〜60℃、1〜10分間浸漬してポリイミドフィルムの表面にパラジウムイオンを吸着させ、その後、還元溶液に浸漬して、パラジウムイオンを金属パラジウムに還元させることにより行うことができる。
3)ニッケルめっき層を形成する工程では、ニッケルを無電解めっき法により析出させ、無電解下地ニッケル層を形成する。例えば、市販の無電解ニッケルめっき浴で、25〜45℃で2分〜20分間浸漬することにより行うことができる。
4)加熱する工程では、無電解ニッケルめっき層を両面に形成したポリイミドフィルムを加熱する。好ましくは、80℃〜150℃で1分〜24時間加熱することにより、行うことができる。
【0048】
ポリイミドフィルムより両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを製造する方法の別の一例としては、ポリイミドフィルムの両面を、少なくとも界面活性剤を含む酸またはアルカリ性の脱脂液で洗浄する工程、アルカリ溶液で処理する工程、塩基性アミノ酸溶液で処理する工程、触媒を付与する工程、無電解ニッケルめっきによりニッケルめっき層を形成する工程、加熱する工程をこの順で行うことができる。
【0049】
ポリイミドフィルムより両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを製造する上記各工程を詳しく以下に示す。
1)界面活性剤を含む酸またはアルカリ性の脱脂液で洗浄する工程では、ポリイミドフィルムの表面の油脂成分などを除去するために、洗浄効果を有する脱脂液でポリイミドフィルムの表面を処理する。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの界面活性剤と水酸化ナトリウムやモノエタノールアミンなどを含むアルカリ溶液で30〜60℃、1〜10分間浸漬して油脂成分などの汚れを除去し、ポリイミドフィルムを洗浄する。
2)アルカリ溶液で処理する工程では、ポリイミドフィルムの表面をアルカリ溶液、例えば水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ溶液に噴きつけや浸漬などの方法で接触させて、ポリイミドフィルムの表面を処理する。例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム10〜200g/Lの水溶液で25〜80℃、10秒〜10分間浸漬処理する方法で行うことができる。
3)塩基性アミノ酸溶液で処理する工程では、ポリイミドフィルムの表面を、アミノ酸を含む塩基性溶液に噴きつけや浸漬などの方法で接触させる。例えば、水酸化カリウムでpHを6に調整したリシン塩酸塩やアルギニン塩酸塩30〜300g/L水溶液で30〜60℃、10秒〜10分間浸漬処理する方法で行うことができる。
4)触媒を付与する工程では、ポリイミドフィルムの表面に無電解下地金属析出の核を形成するために、ポリイミドフィルムの表面の一部又は全部に触媒を吸着などの方法で付与する。例えば、イオン性パラジウム触媒溶液で30〜60℃、1〜10分間浸漬してポリイミドフィルムの表面にパラジウムイオンを吸着させ、その後、還元溶液に浸漬して、パラジウムイオンを金属パラジウムに還元させることにより行うことができる。
5)ニッケルめっき層を形成する工程では、ニッケルを無電解めっき法により析出させ、無電解下地ニッケル層を形成する。例えば、市販の無電解ニッケルめっき浴で、25〜45℃で2分〜20分間浸漬することにより行うことができる。
6)加熱する工程では、無電解ニッケルめっき層を両面に形成したポリイミドフィルムを加熱する。好ましくは、80℃〜150℃で1分〜24時間加熱することにより、行うことができる。
【0050】
本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法においては、このようにして得られる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線パターンを有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を製造する。
【0051】
フレキシブルプリント基板の一方の面(A)に配線パターンを有するとは、配線パターンとしては、例えば5μm〜1000μmピッチのインナーリードや、5μm〜5000μmピッチのアウターリード、直径20μm〜5000μmのランド、5μm〜10000μm幅のラインなどを有するもので、その配線パターンは特に限定されるものではなく、どのようなパターンであってもよい。
【0052】
フレキシブルプリント基板の他方の面(B)の一部にポリイミドフィルムが露出する部分を有するとは、例えば、面(B)に配線パターンを有する、例えば5μm〜1000μmピッチのインナーリードや、5μm〜5000μmピッチのアウターリード、直径20μm〜5000μmのランド、5μm〜10000μm幅のラインなどを有するもので、その配線パターンは特に限定されるものではなく、どのようなパターンであってもよい。
【0053】
各(A)面、(B)面の配線パターンは特に限定されるものではなく、配線加工後に行う熱処理によって、ポリイミドフィルムと無電解ニッケルめっき層との界面にダメージを与えることなく、ポリイミドフィルム内の水分を除去することができればよい。
【0054】
例えば、(A)面の配線パターンと(B)面の配線パターンが対向してポリイミドフィルムを介して重なり合うパターン部位を、ポリイミドフィルム表面より投影図形としてみた場合、投影図形内の全ての点は、投影図形のエッジまでの最短距離が所定の距離以内にある事が好ましい。この所定の距離(投影図形内の全ての点から投影図形のエッジまでの最短距離の最大値)が短いほど水分が容易に除去され、通常、2.5mm以内であればよく、好ましくは1mm以内、更に好ましくは0.5mm以内である。
【0055】
パターン設計上、投影図形のエッジまでの最短距離が2.5mmを超える点が投影図形内にある場合は(A)面および/または(B)面のパターンにスリットや穴などの水分の抜け道となる開口部を形成してポリイミドフィルムが露出する部位を形成することが好ましい。
【0056】
フレキシブルプリント基板の他方の面(B)の全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するとは、配線パターンや金属層を全く有しないこと、すなわち面(B)は無電解ニッケルめっき層も除去されて、全面にポリイミドフィルムが露出していることである。
【0057】
本発明のフレキシブルプリント基板は、両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、下記(1)〜(2)のいずれかの配線加工方法により製造することができる。
(1)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、セミアディティブ法により配線加工を行い、フレキシブルプリント基板を製造する方法。
(2)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、サブトラクティブ法により配線加工を行い、フレキシブルプリント基板を製造する方法。
【0058】
方法(1)の、両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、セミアディティブ法により配線加工を行うフレキシブルプリント基板を製造する方法は、さらに下記(i)〜(iii)のいずれかの方法で行うことができる。
(i)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層と電解銅めっき層を順次形成後、めっきレジスト層を形成する配線加工によりフレキシブルプリント基板を製造する方法。
(ii)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層を形成後、めっきレジスト層を形成する配線加工によりフレキシブルプリント基板を製造する方法。
(iii)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に、めっきレジスト層を形成する配線加工によりフレキシブルプリント基板を製造する方法。
【0059】
上記の配線加工方法(i)〜(iii)の工程順を表1に示す。表1において、各方法の欄に記載の数値は工程順を示す。なお、上記(i)〜(iii)の方法は、表1に記載の順序以外でも行うことができる。
【0060】
【表1】

【0061】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層と電解銅めっき層を順次形成後、めっきレジスト層を形成する表1の方法(i)に示すセミアディティブ法による配線加工を行うフレキシブルプリント基板の製造方法の一例を説明すると、
少なくとも、
i−1)無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層を形成する無電解銅めっき層形成工程、
i−2)無電解銅めっき層に電解銅めっき層を形成する電解銅めっき層形成工程、
i−3)電解銅めっき層にめっきレジスト層を設けるめっきレジスト層形成工程、
i−4)配線パターンのフォトマスクを介して露光する露光工程、
i−5)めっきレジスト層の配線パターンとなる部位を現像除去する現像工程、
i−6)めっきレジスト層を除去して露出された電解銅めっき層上にさらに電解銅めっきを行い、電解銅パターンめっき層を形成するパターンめっき工程、
i−7)めっきレジスト層を剥離により除去するめっきレジスト層除去工程、
i−8)レジスト層の剥離によって露出した電解銅めっき層と無電解銅めっき層と無電解ニッケルめっき層を除去してポリイミドフィルム表面があらわれるようにして、フィルム表面に配線パターンを形成するフラッシュエッチング工程、
などをこの順序で行うことができる。
【0062】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層を形成後、めっきレジスト層を形成する表1の方法(ii)に示すセミアディティブ法による配線加工を行うフレキシブルプリント基板の製造方法の一例を説明すると、
少なくとも、
ii−1)無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層を形成する無電解銅めっき層形成工程、
ii−2)無電解銅めっき層の上面にめっきレジスト層を設けるめっきレジスト層の形成工程、
ii−3)配線パターンのフォトマスクを介して露光する露光工程、
ii−4)めっきレジスト層の配線パターンとなる部位を現像除去する現像工程、
ii−5)めっきレジスト層を除去して露出された無電解銅めっき層上にさらに電解銅めっきを行い、電解銅パターンめっき層を形成するパターンめっき工程、
ii−6)めっきレジスト層を剥離により除去するめっきレジスト層除去工程、
ii−7)レジスト層の剥離によって露出した無電解銅めっき層と無電解ニッケルめっき層を除去してポリイミドフィルム表面があらわれるようにして、フィルム表面に配線パターンを形成するフラッシュエッチング工程、
などをこの順序で行うことができる。
【0063】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層にめっきレジスト層を形成する表1の方法(iii)に示すセミアディティブ法による配線加工を行うフレキシブルプリント基板の製造方法の一例を説明すると、
少なくとも、
iii−1)無電解ニッケルめっき層の上面にめっきレジスト層を設けるめっきレジスト層の形成工程、
iii−2)配線パターンのフォトマスクを介して露光する露光工程、
iii−3)めっきレジスト層の配線パターンとなる部位を現像除去する現像工程、
iii−4)めっきレジスト層を除去して露出された無電解ニッケルめっき層上に無電解銅めっき層を形成する無電解銅めっき層形成工程、
iii−5)無電解銅めっき層上にさらに電解銅めっきを行い、電解銅パターンめっき層を形成するパターンめっき工程、
iii−6)めっきレジスト層を剥離により除去するめっきレジスト層除去工程、
iii−7)レジスト層の剥離によって露出した無電解ニッケルめっき層を除去してポリイミドフィルム表面があらわれるようにして、フィルム表面に配線パターンを形成するフラッシュエッチング工程、
などをこの順序で行うことができる。
【0064】
セミアディティブ法による配線加工を行うフレキシブルプリント基板の製造方法における各工程を説明する。
【0065】
無電解銅めっき層の形成工程では、公知の無電解銅メッキプロセスを適宜選択して行うことができる。無電解銅めっきは、特に限定されるものではなく、例えば素地金属の溶解による電子を利用して金属イオンが還元されて金属析出する置換タイプの無電解めっきや、還元剤の酸化による電子を利用して金属イオンが還元されて金属析出する還元剤タイプの無電解めっきが挙げられる。置換タイプの無電解銅めっきとしては、例えば荏原ユージライト社製エルフシードプロセスES−PCDが挙げられる。還元剤タイプの無電解銅めっきとしては、例えば上村工業製スルカップPEAが挙げられる。無電解銅めっき層の形成工程で形成される無電解銅めっき層の厚みは、どのような厚みでもよいが、好ましくは0.01〜1μmである。
【0066】
電解銅めっき層の形成工程では、公知の銅メッキプロセスを適宜選択して行うことができ、例えば、銅箔の露出部を酸等で洗浄し、代表的には硫酸銅を主成分とする溶液中で銅箔をカソード電極として0.1〜10A/dmの電流密度で電解銅めっきを行ない、銅層を形成することができる。メッキ液としては、例えば硫酸銅が180〜240g/l、硫酸45〜60g/l、塩素イオン20〜80g/l、添加剤としてチオ尿素、デキストリン又はチオ尿素と糖蜜とを添加したものを用いることができる。電解銅めっき層の形成工程で形成される電解銅めっき層の厚みは、どのような厚みでもよいが、好ましくは片面の厚みが0.1〜1μmである。
【0067】
方法(i)〜(iii)における各工程では、必要に応じて適した洗浄処理を行ってもよい。例えば、めっきレジスト層形成前に、アルカリ水溶液または酸水溶液を使用した洗浄や、パターンめっき工程前に、酸性脱脂や酸性水溶液による洗浄を行うことができる。
【0068】
めっきレジスト層の形成工程では、めっきレジスト層としてフォトレジスト層が設けられ、フォトレジスト層は、ネガ型のフォトレジストやポジ型のフォトレジストを用いることができ、また、液体状、フィルム状のものなどを用いることができる。フォトレジスト層の形成方法としては、代表的には、ネガ型のドライフィルムタイプのレジストを熱ラミネートにより積層して、あるいはポジ型の液状タイプのレジストを塗工乾燥して金属めっき層上に形成する方法が挙げられる。ネガ型の場合は露光部以外が現像で除去され、一方、ポジ型の場合は露光部が現像で除去される。ドライフィルムタイプのレジストは容易に厚い厚みのものが得られる。ネガ型ドライフィルムタイプのフォトレジストとして、例えば旭化成製UFG−155、日立化成製RY−3215などが挙げられる。
【0069】
露光工程では、投影露光、密着露光、レーザーダイレクト露光などを用いることができるが、露光方法に限定は無い。
【0070】
現像工程では、公知のフォトレジスト層を現像除去する薬剤を適宜選択して用いることができ、例えば炭酸ソーダ水溶液(1%など)などをスプレーしてフォトレジスト層を現像除去することができる。
【0071】
パターンめっき工程では、公知の銅メッキプロセスを適宜選択して行うことができ、例えば、銅箔の露出部を酸等で洗浄し、代表的には硫酸銅を主成分とする溶液中で銅箔をカソード電極として0.1〜10A/dmの電流密度で電解銅めっきを行ない、銅層を形成することができる。メッキ液としては、例えば硫酸銅が180〜240g/l、硫酸45〜60g/l、塩素イオン20〜80g/l、添加剤としてチオ尿素、デキストリン又はチオ尿素と糖蜜とを添加したものを用いることができる。
【0072】
めっきレジスト層の除去工程では、公知のフォトレジスト層を剥離除去する薬剤を適宜選択して用いることができ、例えば苛性ソーダ水溶液(2%など)などをスプレーしてフォトレジスト層を剥離除去することができる。
【0073】
フラッシュエッチング工程では、フラッシュエッチング液を用いて、浸漬又はスプレーにより露出した銅配線パターン部位以外の薄膜銅(電解銅めっき層と無電解銅めっき層)および無電解ニッケルめっき層を除去する。フラッシュエッチング液としては、公知のものを用いることができ、例えば硫酸に過酸化水素を混合したものや、あるいは希薄な塩化第2鉄の水溶液を主成分とするものが挙げられ、例えば荏原電産製FE−830、旭電化工業製AD−305Eなどが挙げられる。ここで薄銅箔を除去する際、配線パターン部(配線)の銅も溶解するが、薄銅箔を除去するのに必要なエッチング量は少量であるため実質的に問題ない。
【0074】
製造するパターンのピッチがより細かくなり、上記のフラッシュエッチングで無電解ニッケルめっき層が十分に除去できない場合は、必要に応じて無電解ニッケルエッチング液による無電解ニッケルめっき層の除去や、アルカリ性溶液などによるポリイミド表層の除去を行ってもよい。
【0075】
次に、方法(2)の、両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、サブトラクティブ法による配線加工を行うフレキシブルプリント基板を製造する方法の一例を説明すると、
少なくとも、
2−1)無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層を形成する無電解銅めっき層形成工程、
2−2)無電解銅めっき層に電解銅めっき層を形成する電解銅めっき層形成工程、
2−3)電解銅めっき層にエッチングレジスト層を設けるエッチングレジスト層形成工程、
2−4)配線パターンのフォトマスクを介して露光する露光工程、
2−5)エッチングレジスト層の配線パターンとなる部位を現像除去する現像工程、
2−6)エッチングレジスト層で保護されていない部位をエッチング除去するエッチング工程、
2−7)配線パターン部位上のエッチングレジスト層を剥離により除去するエッチングレジスト層の除去工程、
などをこの順序で行うことができる。
【0076】
サブトラクティブ法による配線加工を行うフレキシブルプリント基板を製造する方法における各工程を説明する。
【0077】
無電解銅めっき層の形成工程では、公知の無電解銅メッキプロセスを適宜選択して行うことができる。無電解銅めっきは、特に限定されるものではなく、例えば素地金属の溶解による電子を利用して金属イオンが還元されて金属析出する置換タイプの無電解めっきや、還元剤の酸化による電子を利用して金属イオンが還元されて金属析出する還元剤タイプの無電解めっきが挙げられる。置換タイプの無電解銅めっきとしては、例えば荏原ユージライト社製エルフシードプロセスES−PCDが挙げられる。還元剤タイプの無電解銅めっきとしては、例えば上村工業製スルカップPEAが挙げられる。無電解銅めっき層の形成工程で形成される無電解銅めっき層の厚みは、どのような厚みでもよいが、好ましくは0.01〜1μmである。
【0078】
電解銅めっき層の形成工程では、公知の銅メッキプロセスを適宜選択して行うことができ、例えば、銅箔の露出部を酸等で洗浄し、代表的には硫酸銅を主成分とする溶液中で銅箔をカソード電極として0.1〜10A/dmの電流密度で電解銅めっきを行ない、銅層を形成することができる。メッキ液としては、例えば硫酸銅が180〜240g/l、硫酸45〜60g/l、塩素イオン20〜80g/l、添加剤としてチオ尿素、デキストリン又はチオ尿素と糖蜜とを添加したものを用いることができる。電解銅めっき層の形成工程で形成される電解銅めっき層の厚みは、どのような厚みでもよいが、好ましくは片面の厚みが0.1〜10μmである。
【0079】
各工程においては、必要に応じて適した洗浄処理を行ってもよい。例えば、めっきレジスト層形成前に、アルカリ水溶液または酸水溶液を使用した洗浄を行うことができる。
【0080】
エッチングレジスト層の形成工程では、フォトレジスト層が設けられ、フォトレジスト層は、ネガ型のフォトレジストやポジ型のフォトレジストを用いることができ、また、液体状、フィルム状のものなどを用いることができる。フォトレジスト層の形成方法としては、代表的には、ネガ型のドライフィルムタイプのレジストを熱ラミネートにより積層して、あるいはポジ型の液状タイプのレジストを塗工乾燥して銅箔上に形成する方法が挙げられる。ネガ型の場合は露光部以外が現像で除去され、一方、ポジ型の場合は露光部が現像で除去される。ネガ型ドライフィルムタイプのフォトレジストとして、例えば旭化成製UFG−102などが挙げられる。
【0081】
露光工程では、投影露光、密着露光、レーザーダイレクト露光などを用いることができるが、露光方法に限定は無い。
【0082】
現像工程では、公知のフォトレジスト層を現像除去する薬剤を適宜選択して用いることができ、例えば炭酸ソーダ水溶液(1%など)などをスプレーしてフォトレジスト層を現像除去することができる。
【0083】
エッチング工程では、公知のエッチング液を適宜選択して用いることができ、例えば塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液などをスプレーして電解銅めっき層、無電解銅めっき層、無電解ニッケルめっき層をエッチング除去することができる。
【0084】
エッチングレジスト層の除去工程では、公知のフォトレジスト層を剥離除去する薬剤を適宜選択して用いることができ、例えば苛性ソーダ水溶液(2%など)などをスプレーしてフォトレジスト層を剥離除去することができる。
【0085】
製造するパターンのピッチがより細かくなり、上記のエッチング工程で無電解ニッケルめっき層が十分に除去できない場合は、必要に応じて無電解ニッケルエッチング液による無電解ニッケルめっき層の除去や、アルカリ性溶液などによるポリイミド表層の除去を行ってもよい。
【0086】
本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法においては、このようにして得られた、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を、さらに、好ましくは80〜250℃の範囲、より好ましくは100〜200℃の範囲、さらに好ましくは120〜180℃の範囲で加熱して、ポリイミドフィルム内の水分を除去することが好ましい。
【0087】
配線加工されたフレキシブルプリント基板の加熱温度が上記の範囲より低い場合、加熱時間が長くなり生産性が問題となる場合があり、上記範囲より高い場合、ポリイミドフィルム内の水分が一度に気化膨張し、密着力が低下することがある。
【0088】
加熱時間は適宜最適となるような時間を設定すればよく、例えば好ましくは1分〜24時間、より好ましくは10分〜3時間、さらに好ましくは20分〜2時間の間が好ましい。
【0089】
以上の製造方法により、無電解ニッケルめっき層の形成後に高温で加熱することなく、また、無電解ニッケルめっき層の形成を複数回の工程で行うことなく、長期の熱負荷に対する耐熱性に優れ、且つ、高温短時間の熱負荷に対する耐熱性、ハンダ耐熱性にも優れる、一方の面は配線パターンを有し、他方の面は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を製造することができる。
【0090】
なお、配線は銅配線に限定されるものではなく、その他の金属配線であってもよい。
【0091】
≪本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法≫
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法においては、上記の通り、1回の無電解ニッケルめっきで、イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理して得られたポリイミドフィルム、または、イミド化(最高加熱温度は530℃以上であっても、530℃未満であってもよい。)により得られたポリイミドフィルムを490℃以上で、好ましくは1分以上熱処理したポリイミドフィルムの両面に、好ましくは厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いる。ポリイミドフィルムを490℃以上で熱処理する場合、その熱処理時間は、例えば1〜5分間である。
【0092】
ポリイミドフィルムとしては、例えば、配線基板などの各種基板に好適に用いることができるポリイミドフィルムを構成するテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから最高加熱温度530℃以上でイミド化して得られるポリイミドフィルム、あるいは配線基板などの各種基板に好適に用いることができるポリイミドフィルムを構成するテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリイミドフィルムを490℃以上、好ましくは490〜550℃の範囲で熱処理(以下、追加加熱処理とも言う。)したものを用いることができる。追加加熱処理する場合、その熱処理時間は、例えば1〜5分間である。また、本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法では、配線基板などの各種基板に好適に用いることができる市販のポリイミドフィルムを490℃以上、好ましくは490〜550℃の範囲で熱処理して用いることもできる。市販のポリイミドフィルムを用いる場合も、追加加熱処理する時間は、例えば1〜5分間である。
【0093】
ポリイミドフィルムとしては、線膨張係数(50〜200℃)がポリイミドフィルムに積層する銅の線膨張係数に近いことが好ましく、ポリイミドフィルムの線膨張係数(50〜200℃)は0.5×10−5〜2.8×10−5cm/cm/℃であることが好ましい。
【0094】
また、ポリイミドフィルムとしては、熱収縮率が0.05%以下のものが、熱変形が小さく好ましい。
【0095】
ポリイミドフィルムとしては、耐熱性、電気絶縁性などに優れるポリイミドフィルムを好適に用いることができる。
【0096】
ポリイミドフィルムの厚みは、特に限定されず、製造や取扱が問題なく行なえ、形成する金属層や配線パターン層を充分に支持できる厚みであればよく、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜200μm、より好ましくは5〜175μm、特に好ましくは5〜100μmであることが好ましい。
【0097】
ポリイミドフィルムとしては、単層、または2層以上を積層した複層のフィルム、またはシート状のものを用いることができる。
【0098】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法において用いるポリイミドフィルムは、イミド化時の最高加熱温度を従来よりも高くする、またはイミド化後に所定の追加加熱処理を行うこと以外は公知の方法に従って製造することができる。
【0099】
従来のポリイミドフィルムは、公知の方法で製造することができ、例えば
単層のポリイミドフィルムは、
(1)ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を支持体に流延又は塗布し、イミド化する方法、
(2)ポリイミド溶液を支持体に流延又は塗布し、必要に応じて加熱する方法、
などにより得ることができる。
2層以上のポリイミドフィルムは、
(3)ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を支持体に流延又は塗布し、さらに2層目以上のポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を逐次、前に支持体に流延又は塗布したポリアミック酸層の上面に流延又は塗布し、イミド化する方法、
(4)2層以上のポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を同時に支持体に流延又は塗布し、イミド化する方法、
(5)ポリイミド溶液を支持体に流延又は塗布し、さらに2層目以上のポリイミド溶液を逐次、前に支持体に流延又は塗布したポリイミド層の上面に流延又は塗布し、必要に応じて加熱する方法、
(6)2層以上のポリイミド溶液を同時に支持体に流延又は塗布し、必要に応じて加熱する方法、
(7)上記(1)から(6)で得られた2枚以上のポリイミドフィルムを直接、又は接着剤を介して積層する方法、などにより得ることができる。
【0100】
ポリイミドフィルムとしては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)及びピロメリット酸二無水物(PMDA)などから選ばれる成分を主成分として含むテトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)及び3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−DADE)などから選ばれる成分を主成分として含むジアミン成分とから合成されるポリイミドを用いることができる。
【0101】
好適なポリイミドフィルムとしては、例えば、以下の(1)〜(4)のポリイミドが挙げられる。
【0102】
(1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)と場合によりさらに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、PPD/4,4’−DADE(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。
【0103】
(2)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、s−BPDA/PMDAは15/85〜85/15で、PPD/4,4’−DADEは90/10〜10/90であることが好ましい。
【0104】
(3)ピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、4,4’−DADE/PPDは90/10〜10/90であることが好ましい。
【0105】
(4)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DADE)とから製造されるポリイミド。この場合、BTDA/PMDAが20/80〜90/10、PPD/4,4’−DADEが30/70〜90/10であることが好ましい。
【0106】
ポリイミドの合成において、ポリイミドの物性を損なわない種類と量の他のテトラカルボン酸二無水物やジアミンを使用してもよい。
【0107】
ポリイミドフィルムは、さらにフィルム表面を無機酸化物変性したポリイミドフィルムを用いることができる。フィルム表面を無機酸化物変性したポリイミドフィルムは、より高い密着強度と耐熱性を有することがある。
【0108】
無機酸化物変性したポリイミドフィルムは、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とから得られるポリイミド前駆体(ポリアミック酸など)の溶液を支持体上に流延塗布し、加熱して製造されたポリイミド前駆体溶液の自己支持性フィルムの片面若しくは両面に適当な無機化合物(例えば、金属化合物)を含む溶液を塗布して、無機酸化物変性したフィルムである。無機酸化物変性とは、金属酸化物や、金属酸化物と類似の固体酸化物となる半導体元素の酸化物(以降、単に金属酸化物という)で変性された状態を指し、少なくとも表面の一部に無機物(金属元素または半導体元素)−酸素結合が形成されている状態を指す。
【0109】
ポリイミドフィルムは、好ましくはアルミニウム酸化物変性、チタン酸化物変性若しくはシリコン酸化物変性され、少なくとも表面の一部にアルミニウム−酸素結合、チタン−酸素結合若しくはシリコン(ケイ素)−酸素結合が形成されていることが好ましい。
【0110】
無機酸化物変性された状態は、完全な酸化物でなくても、例えば水酸化アルミニウム、チタンの水酸基、シリコンの水酸基などや、あるいはダングリングボンドなどが一部に存在していたり、有機物との結合が存在していてもよい。
【0111】
ポリイミドフィルムとしては、少なくとも片面がコロナ放電処理、プラズマ処理、化学的粗面化処理、物理的粗面化処理などの表面処理されたポリイミドフィルムを用いることもできる。この表面処理は、後述するポリイミドフィルムの追加加熱処理する場合は、追加加熱処理の前に行ってもよいし、追加加熱処理の後に行ってもよい。
【0112】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法において用いるポリイミドフィルムは、イミド化時の最高加熱温度を530℃以上、好ましくは540〜580℃として加熱・イミド化して製造されるものであるか、または、最高加熱温度530℃未満で加熱・イミド化して製造したポリイミドフィルムを490℃以上、好ましくは490〜550℃で、好ましくは1分以上熱処理(追加加熱処理)したものである。また、最高加熱温度530℃以上で加熱・イミド化してポリイミドフィルムを製造した場合でも、得られたポリイミドフィルムを490℃以上、好ましくは490〜550℃で追加加熱処理して用いてもよい。
【0113】
イミド化のための加熱処理は特に限定されないが、追加加熱処理しない場合は、通常、約100℃〜580℃の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を0.05〜5時間で徐々に行うことが適当である。
【0114】
この場合のイミド化のための加熱処理における最高加熱温度は、上記の通り、530℃以上、好ましくは540〜580℃であり、ポリイミドの組成、フィルムの厚みなどに応じて適宜選択することができる。
【0115】
530℃以上、好ましくは540〜580℃で加熱する時間は、適宜選択することができるが、好ましくは5秒〜3分、より好ましくは10秒〜2分である。なお、加熱温度は一定でなくてもよい。
【0116】
このような加熱・イミド化の連続工程における最高加熱温度を530℃以上にする方法の他に、本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法では、イミド化時の最高加熱温度が530℃未満で製造したポリイミドフィルム、または市販のポリイミドフィルムを490℃以上、好ましくは490〜550℃、さらに好ましくは510〜530℃で、好ましくは1分以上加熱処理(追加加熱処理)してもよい。この熱処理の時間は、例えば1〜5分間、好ましくは1.5〜3分間である。また、最高加熱温度530℃以上でイミド化のための加熱処理を行った場合でも、得られたポリイミドフィルムを490℃以上、好ましくは490〜550℃で追加加熱処理してもよい。
【0117】
追加加熱処理する場合、イミド化のための加熱処理は特に限定されないが、最初に約100℃〜400℃の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を約0.05〜5時間、特に0.1〜3時間で徐々に行うことが適当である。
【0118】
追加加熱処理における加熱温度は、490℃以上、好ましくは490〜550℃の範囲であり、ポリイミドの組成、フィルムの厚みなどに応じて適宜選択することができる。加熱温度は、500℃以上がより好ましく、510℃以上がさらに好ましい。また、加熱温度は、540℃以下がより好ましく、530℃以下がさらに好ましい。なお、加熱温度は一定でなくてもよい。
【0119】
追加加熱処理時間(490℃以上、好ましくは490〜550℃で加熱する時間)は、適宜選択することができるが、好ましくは1〜5分間、より好ましくは1.5〜3分間である。追加加熱処理時間が長すぎると、得られるポリイミドフィルムの物性が低下してくることがある。
【0120】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法においては、市販のポリイミドフィルムを490℃以上、好ましくは490〜550℃、さらに好ましくは510〜530℃で熱処理したものを用いることもできる。市販のポリイミドフィルムを熱処理する熱処理時間は、例えば1〜5分間であり、より好ましくは、1.5〜3分間である。
【0121】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法において用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、上記のようなイミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理して得られたポリイミドフィルム、または、イミド化(最高加熱温度は530℃以上であっても、530℃未満であってもよい。)により得られたポリイミドフィルム(市販品であってもよい。)を490℃以上で、好ましくは1分以上熱処理したポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層、好ましくは厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を1回のメッキで形成し、その後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱することにより得ることができる。
【0122】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層の厚みが上記範囲より薄い場合は、長期の熱負荷時の銅の拡散による密着強度の低下を十分には抑制できず、長期の熱負荷により密着性が劣化することがある。上記範囲より厚い場合は、両面を無電解ニッケルめっき層で覆われたポリイミドフィルムから水分の抜け道が限りなく遮られることにより、無電解ニッケルめっき層形成後の加熱処理により、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性が劣化することがある。さらに、無電解ニッケルめっき層が厚い場合は、配線パターン形成において、無電解ニッケルめっき層を含む下地の除去が困難となり、除去処理を強くすることにより配線におけるアンダーカットの原因となる場合がある。
【0123】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法においては、ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成した後、得られた両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを100〜180℃、好ましくは130〜160℃で2.5時間以上、好ましくは3〜24時間加熱する。なお、加熱温度は一定でなくてもよい。
【0124】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの加熱温度は、100〜180℃の範囲、好ましくは130〜160℃の範囲、さらに好ましくは140〜155℃の範囲であることが好ましい。加熱温度が上記の範囲より低い場合、ポリイミドフィルム内の水分を十分に除去・低減できない場合があり、上記範囲より高い場合、ポリイミドフィルム内の水分が一度に気化膨張し、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性が低下することがある。
【0125】
加熱時間は、2.5時間以上、好ましくは3〜24時間、より好ましくは3〜10時間であることが好ましい。加熱時間の上限については特に限定されるものではないが、加熱時間が長くなりすぎると、生産性が問題となる場合がある。
【0126】
ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成する場合、前処理として、ポリイミドフィルムの両面がアルカリ金属水酸化物又はこれらの水溶液を用いて表面処理されていることが、無電解ニッケルめっき層とポリイミドフィルム界面の密着性を確保するために好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0127】
ポリイミドフィルムより両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを製造する方法としては、上記の本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法で説明した方法が挙げられる。本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法においても、第1のフレキシブルプリント基板の製法と同様な方法で、両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを製造することができる。但し、無電解ニッケルめっき層を両面に形成したポリイミドフィルムを加熱する工程では、上記の通り、両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを100〜180℃、好ましくは130〜160℃で2.5時間以上、好ましくは3〜24時間加熱する。
【0128】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法においては、このようにして得られる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線パターンを有するフレキシブルプリント基板を製造する。本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法で製造するポリイミドフィルムは、両方の面が配線パターンを有する、または一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有する必要がない。本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法によれば、一方の面が配線を有し、他方の面は全面に金属層を有するフレキシブルプリント基板も製造することができる。
【0129】
フレキシブルプリント基板の一方の面に配線パターンを有するとは、配線パターンとしては、例えば5μm〜1000μmピッチのインナーリードや、5μm〜5000μmピッチのアウターリード、直径20μm〜5000μmのランド、5μm〜10000μm幅のラインなどを有するもので、その配線パターンは特に限定されるものではなく、どのようなパターンであってもよい。
【0130】
本発明のフレキシブルプリント基板は、両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、下記(1)〜(2)のいずれかの配線加工方法により製造することができる。
(1)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、セミアディティブ法により配線加工を行い、フレキシブルプリント基板を製造する方法。
(2)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、サブトラクティブ法により配線加工を行い、フレキシブルプリント基板を製造する方法。
【0131】
本発明の第2のフレキシブルプリント基板の製法においても、上記の本発明の第1のフレキシブルプリント基板の製法の場合と同様にして、セミアディティブ法、またはサブトラクティブ法により配線加工を行い、フレキシブルプリント基板を製造することができる。
【0132】
銅めっき皮膜の強化のために、必要に応じて、得られたフレキシブルプリント基板を、好ましくは80〜250℃の範囲で加熱することができる。
【0133】
以上の製造方法により、無電解ニッケルめっき層の形成後に高温で加熱することなく、また、無電解ニッケルめっき層の形成を複数回の工程で行うことなく、長期の熱負荷に対する耐熱性に優れ、且つ、高温短時間の熱負荷に対する耐熱性、ハンダ耐熱性にも優れるフレキシブルプリント基板を製造することができる。
【0134】
なお、配線は銅配線に限定されるものではなく、その他の金属配線であってもよい。
【0135】
なお、ここでは本質を明確に説明するために、単純なポリイミドフィルムへの実施の形態を示したが、なんらこれに制限されるものではない。例えば、ポリイミドフィルムにレーザー加工やパンチなどで両面を導通させるための貫通孔を形成したものを用いて、両面と貫通孔内を同時に無電解ニッケルめっき等を行ってもよい。更に、両面のポリイミドフィルム間に接着層や内層基板を有するものであっても効果は同じであり、代表的には、内層基板の両面にポリイミドフィルムを積層した多層配線板の外層配線の形成に本発明は適用可能である。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例により制限されるものではない。
【0137】
(無電解ニッケルめっき層の厚み測定)
無電解ニッケルめっき層の厚みは、次のようにして求めた。すなわち、無電解ニッケルめっき層を形成したポリイミドフィルムに、ドライフィルムレジストUFG−072(旭化成イーマテリアルズ社製)を熱ラミネートにてラミネートした後、その一部を露光装置UFX−2023B−AJM01(ウシオ電機社製)にて露光量140mJ/cmで露光した。つづいて、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて露光されていないドライフィルムレジストを除去した後、塩化第二鉄水溶液を用いてドライフィルムが除去されて露出した無電解ニッケルめっき層を除去した。つづいて、2%水酸化ナトリウム水溶液を用いてドライフィルムレジストを除去して、無電解ニッケルめっき層のある部位とない部位の段差を形成した。その段差を原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社製、NANOSCOPE IIIa)により直接厚みを測定した。そして、この測定をそれぞれ任意の10点の位置で行い、その平均値を採用した。
【0138】
(ピール強度の測定)
配線加工により形成した幅10mmのライン幅を有するフレキシブルプリント配線板から幅10mmのラインを含み帯状に切り取ったものに対して、引張試験機(荏原製作所社製)を用い、銅めっき層の引き剥がしにて90°ピール強度測定を初期と、高温短時間の熱負荷後と、長期の熱負荷後とで行った。ここで、初期とは、配線加工後に150℃で1時間の熱処理を行ったものであり、高温短時間の熱負荷後とは、初期状態からさらに、回路形成面が半田に接するように260℃のはんだ槽に10秒間接液したものであり、長期の熱負荷後とは、初期状態からさらに、150℃×168時間のオーブン加熱を行ったものである。
【0139】
(実施例A1〜A3、参考例A1〜A2、比較例A1〜A2)
〔脱脂処理およびアルカリ金属水酸化物水溶液による表面処理〕
まず、10cm×10cmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、ユーピレックス25SGA)を、エルフシードプロセス クリーナー ES−100(荏原ユージライト社製)を用いて、上記ポリイミドフィルムの両面を50℃で2分間処理することにより脱脂処理を行った後、エルフシードプロセス モディファイヤー ES−200(荏原ユージライト社製)を用いて、50℃で30秒処理することによりアルカリ金属水酸化物水溶液による表面処理を行った。
【0140】
〔触媒付与および還元処理〕
上記改質処理したポリイミドフィルムの両面を、エルフシードプロセス アクチベーター ES−300(荏原ユージライト社製)にて50℃で2分間処理することにより触媒付与を行った後、エルフシードプロセス アクセレレータ ES−400(荏原ユージライト社製)にて35℃で2分間処理することにより還元処理を行った。
【0141】
〔無電解ニッケルめっき層の形成〕
つづいて、無電解ニッケルめっき ES−500(荏原ユージライト社製)にて35℃で表2に示す時間で無電解ニッケルめっきを行い、ポリイミドフィルムの両面に、表2に示す厚みの無電解ニッケルめっき層を形成した。
【0142】
〔加熱処理〕
無電解ニッケルめっき層を形成した後、乾燥オーブンにて、表2に示す加熱処理の時間と温度で熱処理を行った後、乾燥オーブンから取り出した。
【0143】
〔回路形成用の銅めっき層の形成〕
電解銅めっきに先だって、置換タイプの無電解銅めっきであるエルフシードプロセスES−PDCにて25℃で1分間処理することにより無電解ニッケルめっき皮膜の活性化、導電性の向上処理を行った後、硫酸銅めっき浴にて電流密度2A/dmで22分間電解銅めっきを行った。電解銅めっき厚みは10μmであった。
【0144】
〔回路形成〕
上記方法(2)で記載したサブトラクティブ法を用いた配線加工により、ポリイミドフィルムの一方の面(A)には10mm配線幅を有し、他方の面(B)は全面にポリイミドフィルムが露出するフレキシブルプリント基板を作製した。
【0145】
回路形成の詳細を以下に示す。
電解銅めっき層を両面に形成したポリイミドフィルムを、2%水酸化ナトリウム水溶液、5%硫酸水溶液により基板洗浄を行った。続いて、ドライフィルムレジストUFG−072(旭化成イーマテリアルズ社製)を熱ラミネートにてラミネートした後、その一部を露光装置UFX−2023B−AJM01(ウシオ電機社製)にて露光量140mJ/cmで10mm幅のラインが形成できるマスクを介して露光した。つづいて、1%炭酸ナトリウム水溶液にて露光されていないドライフィルムレジストを除去した後、塩化第二鉄水溶液にてドライフィルムが除去されて露出した電解銅めっき層、無電解銅めっき層、及び無電解ニッケルめっき層を同時に除去した。つづいて、2%水酸化ナトリウム水溶液にてドライフィルムレジストを除去して、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は10mmライン幅を有し、他方の面(B)は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を作製した。
【0146】
得られたフレキシブルプリント基板を150℃、1時間熱処理した後、初期のピール強度を測定した。さらに、フレキシブルプリント基板の高温短時間の熱負荷後のピール強度及び長期の熱負荷後のピール強度を測定した。結果を表2に示す。
【0147】
【表2】

【0148】
結果より、実施例A1〜A3のフレキシブルプリント基板は、初期および高温短時間の熱負荷後、長期の熱負荷後ともに良好な密着強度が得られている。参考例A1は、初期および高温短時間の熱負荷後は、実施例A1〜A3と同程度の密着強度が得られているものの、長期の熱負荷後は著しく密着強度が劣化している。参考例A2では、初期から十分な密着強度が得られなかった。また、比較例A1は、無電解ニッケルめっきが均一に析出しなかった。比較例A2は、無電解ニッケルめっき後の熱処理にて、ふくれが発生した。これらのことから、ポリイミドフィルムの両面に厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を1回で形成しても、良好な密着信頼性を有することがわかる。
【0149】
(実施例B1〜B4、比較例B1〜B6)
〔ポリイミドフィルムの製造〕
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド、パラフェニレンジアミン(PPD)を加えた後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)をPPDと略等モルまで添加して反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。そして、このポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルを添加し、ポリアミック酸溶液組成物を得た。
【0150】
このポリアミック酸溶液組成物をTダイ金型のスリットから連続的にキャスティング・乾燥炉の平滑な金属支持体上に押出して薄膜を形成し、150℃で所定時間加熱後、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。
【0151】
次いで、この自己支持性フィルムの幅方向の両端部を把持して連続加熱炉(キュア炉)へ挿入し、100℃から最高加熱温度が表3に示す温度となる条件で当該フィルムを加熱、イミド化して、平均膜厚が25μmの長尺状ポリイミドフィルムを製造した。
【0152】
実施例B3、実施例B4、及び比較例B6では、このようにして得られたポリイミドフィルムの四辺を金属製の枠にクリップを用いて把持し、520℃の加熱炉内で2.5分間、追加加熱処理した。
【0153】
〔脱脂処理およびアルカリ金属水酸化物水溶液による表面処理〕
上記のようにして得られたポリイミドフィルムを10cm×10cmの正方形状に切り取り、エルフシードプロセス クリーナー ES−100(荏原ユージライト社製)を用いて、ポリイミドフィルムの両面を50℃で2分間処理することにより脱脂処理を行った後、エルフシードプロセス モディファイヤー ES−200(荏原ユージライト社製)を用いて、50℃で20秒処理することによりアルカリ金属水酸化物水溶液による表面処理を行った。
【0154】
〔触媒付与および還元処理〕
上記改質処理したポリイミドフィルムの両面を、エルフシードプロセス アクチベーター ES−300(荏原ユージライト社製)にて50℃で2分間処理することにより触媒付与を行った後、エルフシードプロセス アクセレレータ ES−400(荏原ユージライト社製)にて35℃で2分間処理することにより還元処理を行った。
【0155】
〔無電解ニッケルめっき層の形成〕
つづいて、無電解ニッケルめっき ES−500(荏原ユージライト社製)にて35℃で8分間無電解ニッケルめっきを行い、ポリイミドフィルムの両面に厚み0.13μmの無電解ニッケルめっき層を形成した。
【0156】
〔加熱処理〕
無電解ニッケルめっき層を形成した後、乾燥オーブンにて、表3に示す加熱処理の時間と温度で熱処理を行った後、乾燥オーブンから取り出した。
【0157】
〔銅めっき層の形成〕
電解銅めっきに先だって、置換タイプの無電解銅めっきであるエルフシードプロセスES−PDCにて25℃で1分間処理することにより無電解ニッケルめっき皮膜の活性化、導電性の向上処理を行った後、硫酸銅めっき浴にて電流密度2A/dmで22分間電解銅めっきを行い、ポリイミドフィルムの両面に銅めっき層を形成した両面基板を作製した。電解銅めっき厚みは10μmであった。
【0158】
得られた両面基板を150℃、1時間熱処理した後、初期のピール強度を測定した。さらに、フレキシブルプリント基板の高温短時間の熱負荷後のピール強度及び長期の熱負荷後のピール強度を測定した。結果を表3に示す。
【0159】
【表3】

【0160】
結果より、実施例B1〜B4の両面基板は、初期および高温短時間の熱負荷後、長期の熱負荷後ともに良好な密着強度が得られている。イミド化時の最高加熱温度が520℃で、イミド化後に追加加熱処理しなかったポリイミドフィルムを用いた比較例B1〜B4は、長期の熱負荷後は著しく密着強度が劣化した。最高加熱温度550℃でイミド化したポリイミドフィルム、イミド化後に520℃で2.5分間熱処理したポリイミドフィルムを用いているが、無電解ニッケルめっき層形成後の加熱処理の加熱時間が2分と短い比較例B5〜B6も、長期の熱負荷後は著しく密着強度が劣化した。これらのことから、イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理したポリイミドフィルム、またはイミド化後に490〜550℃の範囲で1〜5分間熱処理したポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を1回で形成し、その後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いた場合は、得られるフレキシブルプリント基板は良好な密着信頼性を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板を製造する方法において、
用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に各厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、加熱した積層フィルムであることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項2】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成した後、80〜150℃の範囲で加熱した積層フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項3】
ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成する前に、アルカリ金属水酸化物又はこれらの水溶液によるポリイミドフィルムの表面処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項4】
配線加工により得られたフレキシブルプリント基板を80〜250℃の範囲で加熱する工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項5】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板を製造する方法において、
用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した積層フィルムであることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項6】
両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板を製造する方法において、
用いる両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムは、490℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した積層フィルムであることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項7】
ポリイミドフィルムの両面に形成される無電解ニッケルめっき層の厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項8】
ポリイミドフィルムの両面に無電解ニッケルめっき層を形成する前に、アルカリ金属水酸化物又はこれらの水溶液によるポリイミドフィルムの表面処理を行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項9】
製造されるフレキシブルプリント基板が、ポリイミドフィルムの一方の面(A)は配線を有し、他方の面(B)は全面に金属めっき層を有するものであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項10】
配線加工は、セミアディティブ法又はサブトラクティブ法による配線加工であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
【請求項11】
配線加工は、セミアディティブ法による配線加工であり、下記(i)〜(iii)のいずれかの方法でめっきレジスト層を形成する工程を有することを特徴とする請求項10に記載のフレキシブルプリント基板の製法。
(i)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層と電解銅めっき層を順次形成後、めっきレジスト層を形成する方法。
(ii)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に無電解銅めっき層を形成後、めっきレジスト層を形成する方法。
(iii)両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムの無電解ニッケルめっき層に、直接、めっきレジスト層を形成する方法。
【請求項12】
ポリイミドフィルムの一方の面(A)に配線を有し、他方の面(B)は一部又は全面にポリイミドフィルムが露出する部分を有するフレキシブルプリント基板であり、
1回のめっきでポリイミドフィルムの両面に各厚みが0.1μmを超えて0.3μm未満の無電解ニッケルめっき層を形成した後、加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により製造されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項13】
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板であり、
イミド化時に最高加熱温度530℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により製造されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項14】
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に配線を有するフレキシブルプリント基板であり、
490℃以上で熱処理したポリイミドフィルムの両面に、1回のめっきで、無電解ニッケルめっき層を形成した後、100〜180℃の範囲で2.5時間以上加熱した両面ニッケルめっき積層ポリイミドフィルムを用いて、配線加工により製造されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント基板。

【公開番号】特開2012−69939(P2012−69939A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184081(P2011−184081)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】