説明

フレキシブルプリント配線基板用積層体及びフレキシブルプリント配線基板並びにこれらの製造方法

【課題】超ファインピッチの配線を効率よく形成でき、超ファインピッチのCOFフィルムキャリアテープなどに用いることができるフレキシブルプリント配線基板用積層体及びフレキシブルプリント配線基板並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 導通用貫通孔13が形成された絶縁基11と、この絶縁基材11の一方面に接着された導電体層14とを具備し、前記導通用貫通孔13には埋設導電体めっき層15がその上面が前記絶縁基材11の表面と面一になるように設けられ、前記絶縁基材11の表面及び前記埋設導電体めっき層15の上面を覆う導電体めっき層18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COFフィルムキャリアテープなどに用いることができるフレキシブルプリント配線基板用積層体及びフレキシブルプリント配線基板並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁フィルム、接着剤層および導電性金属箔から形成された配線パターンが形成された3層構造のTABテープあるいは絶縁フィルム上に直接導電性金属箔からなる配線パターンが形成された2層構造のCOFテープなどのプリント配線板の出力側アウターリードおよび入力側アウターリードは、例えば、液晶パネルあるいはリジッドプリント配線板の回路部と異方性導電フィルム(ACF;Anisotoropic Conductive Film)で電気的に接続される。
【0003】
近年液晶画面の高精細化に伴ってドライバーICチップの金バンプのファインピッチ化が進むに従いCOFなどのIC実装用プリント配線板においてもインナーリードピッチを20μm以下に細線化された回路を形成することが必要になりつつあり、15μmピッチも視野に入ってきた。
【0004】
このような高精細配線へ対応するに当たり、最近では、セミアディティブ(Semi−Additive)法による超ファインピッチ配線パターンの形成技術が注目されているが、コストの上昇をいかに抑えるか、また、累積ピッチ精度をいかに確保するか等の課題が残っている。
【0005】
一方、プリント配線板を2メタル構造にして裏側にも配線パターンを配置することで、ファインピッチ化に対応する方法も検討されている。
【0006】
例えば、両面銅張り積層体に金型又はドリルなどで貫通孔を形成し、貫通孔の内周壁面に無電解銅めっきを施してさらに電気銅めっきを施して表裏銅層の導通を図り、その後、フォトリソグラフィーによりパターンを形成する方法が検討されているが、スルーホールランド間の配線の引き回しがファインピッチとなってしまい、2メタル構造とする意味が小さいという課題がある。
【0007】
そこで、貫通孔内を銅めっきで埋め込む方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は絶縁層にレーザーやエッチングにより開口部を形成した後、導通化処理をした後、電解銅めっきを行うことにより開口部に銅めっきを充填する方法であるが、配線パターンを形成しながら開口部を形成して積層するプロセスであるため、プロセスが複雑となるという課題がある。
【0008】
一方、接着剤層を有する絶縁性フィルムに両面導通用のビアホールを形成して銅箔を貼り合わせた後、ビアホールに充填めっきを行ってブラインドビアホールを形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、この方法では、ビアホールの1/2程度の深さまで埋めてめっきした後、一方面の銅めっき層を形成する際にビアホールの半分を埋めるので、銅めっき層の表面が完全に平坦にはならず、ファインピッチの配線の形成の妨げになるという課題がある。
【0010】
【特許文献1】特開2001−156453号公報
【特許文献2】特開2005−217216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み、超ファインピッチの配線を効率よく形成でき、超ファインピッチのCOFフィルムキャリアテープなどに用いることができるフレキシブルプリント配線基板用積層体及びフレキシブルプリント配線基板並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成する本発明の第1の態様は、導通用貫通孔が形成された絶縁基材と、この絶縁基材の一方面に接着された導電体層とを具備し、前記導通用貫通孔には埋設導電体めっき層がその上面が前記絶縁基材の表面と面一になるように設けられ、前記絶縁基材の表面及び前記埋設導電体めっき層の上面を覆う導電体めっき層が設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体にある。
【0013】
かかる第1の態様では、導通用貫通孔を打ち抜き等により容易に形成した絶縁基材を用いて2メタル構造を形成でき且つ導通用貫通孔に埋め込まれた埋設導電体めっき層の上面が絶縁基材の表面と面一なので、その上に形成された導電体めっき層も平坦であり、プリント配線基板とした場合、導通用貫通孔間にファインピッチの配線を効率的に配置した配線パターンを形成することが可能となる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記導通用貫通孔が、30〜800μmの径で、60〜1600μmのピッチで設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体にある。
【0015】
かかる第2の態様では、所定の径、所定のピッチで設けられた導通用貫通孔が埋設導電体めっき層により上面が面一となるように埋め込まれた導通配線が形成された2メタル構造のフレキシブルプリント配線基板用積層体となる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層が、硫酸銅五水和物の濃度が50〜90g/Lで硫酸濃度が180〜210g/Lのめっき液を用い、印加するパルスの電流密度比を正:負=1:1.2〜1:1.8の範囲のめっき条件とするPPR(周期的逆電流パルス)めっき法で形成されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体にある。
【0017】
かかる第3の態様では、埋設導電体めっき層となる銅めっき層を所定の条件のPPRめっきで形成することにより、上面がより確実に平坦となり、絶縁基材の表面と面一になった埋設導電体めっき層をより簡便に形成することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層の形成で印加するパルスの印加時間を、正を18〜22msec、負を0.5〜1.5msecとしたことを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体にある。
【0019】
かかる第4の態様では、PPR法のパルスを所定のパルスとすることにより、さらに確実に上面が平坦な埋設導電体めっき層とすることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れか1つの態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層が、めっき後の上面が研磨処理により平坦化されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体にある。
【0021】
かかる第5の態様では、埋設導電体めっき層となる銅めっき層をめっきした後、研磨処理することにより、上面をより確実に平坦とすることができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れか1つの態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記絶縁基材が、放熱用貫通孔を具備し、当該放熱用貫通孔には前記埋設導電体めっき層と一緒に形成された埋設放熱用めっき層が設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体にある。
【0023】
かかる第6の態様では、放熱用貫通孔に埋設めっき層を設けることにより、配線から発生する熱を裏面側へ放熱することができる。
【0024】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れか1つの態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体を用いて形成され、前記導電体層及び前記導電体めっき層のそれぞれに配線パターンが形成されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板にある。
【0025】
かかる第7の態様では、導通用貫通孔を打ち抜き等により容易に形成した絶縁基材を用いて形成され且つ導通用貫通孔に埋め込まれた埋設導電体めっき層の上面が絶縁基材の表面と面一な2メタル構造の積層体を用いているので、導通用貫通孔間にファインピッチの配線を効率的に配置した配線パターンを有するフレキシブルプリント配線基板となる。
【0026】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板において、前記配線パターンの端子部の配線のピッチ(ラインアンドスペース)が30μm以下、線幅(ライン)が6μm以上、配線間の間隔(スペース)が15μm以下であることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板にある。
【0027】
かかる第8の態様では、所定範囲のファインピッチの配線を有するフレキシブルプリント配線基板となる。
【0028】
本発明の第9の態様は、絶縁基材に導通用貫通孔を形成する工程と、この絶縁基材の一方面に導電体層を接着する工程と、前記導通用貫通孔に埋設導電体めっき層をその上面が前記絶縁基材の表面と面一となるように形成する工程と、前記絶縁基材の表面及び前記埋設導電体めっき層の上面を覆うように導電体めっき層を設ける工程とを具備することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法にある。
【0029】
かかる第9の態様では、導通用貫通孔を打ち抜き等により容易に形成した絶縁基材を用いて2メタル構造を比較的簡便に形成でき且つ導通用貫通孔に埋め込まれた埋設導電体めっき層の上面が絶縁基材の表面と面一なので、その上に形成された導電体めっき層も平坦であり、プリント配線基板とした場合、導通用貫通孔間にファインピッチの配線を効率的に配置した配線パターンを形成することが可能なプリント配線基板用積層体を製造できる。
【0030】
本発明の第10の態様は、第9の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記導通用貫通孔が、30〜800μmの径で、60〜1600μmのピッチで設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法にある。
【0031】
かかる第10の態様では、所定の径で所定のピッチで設けられた導通用貫通孔が埋設導電体めっき層により上面が面一となるように埋め込まれた導通配線が形成された2メタル構造のフレキシブルプリント配線基板用積層体を製造できる。
【0032】
本発明の第11の態様は、第9又は10の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記埋設導電体めっき層を、硫酸銅五水和物の濃度が50〜90g/Lで硫酸濃度が180〜210g/Lのめっき液を用い、印加するパルスの電流密度比を正:負=1:1.2〜1:1.8の範囲のめっき条件とするPPR(周期的逆電流パルス)めっき法で形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法にある。
【0033】
かかる第11の態様では、埋設導電体めっき層となる銅めっき層を所定の条件のPPRめっきで形成することにより、上面がより確実に平坦となり、絶縁基材の表面と面一になった埋設導電体めっき層をより簡便に形成することができる。
【0034】
本発明の第12の態様は、第11の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層の形成で印加するパルスの印加時間を、正を18〜22msec、負を0.5〜1.5msecとしたことを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法にある。
【0035】
かかる第11の態様では、PPR法のパルスを所定のパルスとすることにより、さらに確実に上面が平坦な埋設導電体めっき層とすることができる。
【0036】
本発明の第13の態様は、第9〜12の何れかの1つの態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記埋設導電体めっき層を、めっき後の上面を研磨処理により平坦化して形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法にある。
【0037】
かかる第13の態様では、埋設導電体めっき層となる銅めっき層をめっきした後、研磨処理することにより、上面をより確実に平坦とすることができる。
【0038】
本発明の第14の態様は、第9〜13の何れか1つの態様に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記絶縁基材に、前記導通用貫通孔と共に放熱用貫通孔を形成し、前記埋設導電体めっき層の形成の際に前記放熱用貫通孔を埋設するように埋設放熱用めっき層を形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法にある。
【0039】
かかる第14の態様では、放熱用貫通孔に埋設放熱用めっき層を設けることにより、埋設放熱用めっき層上に実装したチップ部品から発生する熱を裏面側へ放熱することができるフレキシブルプリント配線基板用積層体を製造できる。
【0040】
本発明の第15の態様は、第9〜14の何れか1つの態様に記載の製造方法により得られたフレキシブルプリント配線基板用積層体の前記導電体層及び前記導電体めっき層のそれぞれに配線パターンを形成する工程をさらに具備することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板の製造方法にある。
【0041】
かかる第15の態様では、導通用貫通孔を打ち抜き等により容易に形成した絶縁基材を用いて形成でき且つ導通用貫通孔に埋め込まれた埋設導電体めっき層の上面が絶縁基材の表面と面一な2メタル構造の積層体を用いて製造するので、導通用貫通孔間にファインピッチの配線を効率的に配置した配線パターンを有するフレキシブルプリント配線基板を製造できる。
【0042】
本発明の第16の態様は、第15の態様に記載のフレキシブルプリント配線基板の製造方法において、前記配線パターンの形成の際に、端子部の配線のピッチ(ラインアンドスペース)が30μm以下、線幅(ライン)が6μm以上、配線間の間隔(スペース)が15μm以下である配線パターンを形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板の製造方法にある。
【0043】
かかる第16の態様では、所定範囲のファインピッチの配線を有するフレキシブルプリント配線基板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板用積層体及びフレキシブルプリント配線基板の一例を実施例に基づいて説明する。
【0045】
図1には、一実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板用積層体の断面図、図2には、フレキシブルプリント配線基板の断面図を示す。
【0046】
図1に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線基板用積層体10は、フレキシブルな絶縁基材11と、絶縁基材11の一方面に接着剤層12を介して接着された金属箔からなる導電体層14と、絶縁基材11に形成された複数の導通用貫通孔13に埋設された埋設導電体めっき層15と、絶縁基材11の他方面側に設けられた第1の導電体めっき層及び第2の導電体めっき層からなる導電体めっき層18とを具備する積層構造を有する。
【0047】
ここで、埋設導電体めっき層15の上面は、絶縁基材11の表面と面一となっており、絶縁基材11の表面及び埋設導電体めっき層15の上面に設けられた第1のめっき層16及び第2のめっき層17は、埋設導電体めっき層15と完全に導通し且つ絶縁基材11と埋設導電体めっき層15との境界付近においても平坦に形成されている。また、第1のめっき層16及び第2のめっき層17が、本実施例の導電体めっき層18となる。
【0048】
図2は、このようなフレキシブルプリント配線基板用積層体10を用いて製造されたフレキシブルプリント配線基板の断面図である。フレキシブルプリント配線基板20は、導電体層14と、導電体めっき層18とを、フォトグラフィープロセスによりパターニングし、絶縁基材11の両面に第1の配線パターン21及び第2の配線パターン22を形成したものであり、第1及び第2の配線パターン21、22は、埋設導電体めっき層15を介して適宜接続されて一体となる配線パターンを構成している。
【0049】
以下、フレキシブルプリント配線基板用積層体10及びフレキシブルプリント配線基板20について、製造方法を例示しながら、さらに詳細に説明する。
【0050】
図3及び図4に、フレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法の一例を示す。同図(a)に示すように、まず、絶縁基材11の一方面に接着剤層12を設けた積層体を用意する。
【0051】
ここで絶縁基材11は、絶縁性樹脂からなる板、フィルム、シート、プリプレグなど、通常の絶縁基材として使用されているものであれば特に限定することなく使用することができる。ただし、本発明のプリント配線基板をリール・トゥ・リール方式で連続的に製造するためには、この絶縁基材11が長尺であり、可撓性を有してフレキシブルであることが望ましく、また、プリント配線基板を製造する工程において、この絶縁基材11は、酸性溶液あるいはアルカリ性溶液と接触することがあることから耐薬品性に優れていることが望ましく、さらに、高温に晒されることがあることから耐熱性に優れていることが望ましい。また、この絶縁基材11を用いてメッキ工程により配線パターンを製造することから、水との接触により、変性あるいは変形しないものであることが望ましい。こうした観点から本発明で使用する絶縁基材11としては、耐熱性の合成樹脂フィルムを使用することが好ましく、特にポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルムなど、プリント配線基板の製造に通常使用されている樹脂フィルムを使用することが好ましく、これらの中でも耐熱性、耐薬品性、耐水性などの特性に優れるポリイミドフィルムが特に好ましい。また、本発明において絶縁基材11は上記のようなフィルム状である必要性はなく、例えば繊維状物とエポキシ樹脂などの複合体からなる板状の絶縁基材であっても良い。
【0052】
絶縁基材11の厚さは、10〜100μm、好ましくは、20〜40μmであり、耐熱樹脂フィルムとして製造されているものを用いるのがコスト、取り扱いの面で好ましく、フレキシブルプリント配線基材の基材として市販されているポリイミド系フィルム又はポリアミドイミド系フィルムを用いるのが好ましい。特に、ピロメリット酸2無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの重合によって得られる全芳香族ポリイミド(例えば、商品名:カプトン;東レ・デュポン社製)や、ビフェニルテトラカルボン酸−2無水物とパラフェニレンジアミン(PPD)との重合物(例えば、商品名:ユーピレックスS;宇部興産社製)、アピカル(商品名;カネカ社製)などを用いるのが好ましい。
【0053】
接着剤層12は、例えば、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの絶縁性の接着剤を用いて形成すればよく、厚さは、例えば、5〜25μm、好ましくは、8〜12μmである。
【0054】
次に、図3(b)に示すように、絶縁基材11と接着剤層12との積層体に、複数の導通用貫通孔13を所定の配置で形成する。かかる導通用貫通孔13は、ドリルによる穿孔、金型を用いたパンチング法、レーザー穿設法などによって形成すればよいが、パンチング法により形成するのがコスト的にも好ましい。
【0055】
なお、図示は省略するが、絶縁基材11の幅方向両側には、搬送用又は位置決め用のスプロケットホール(又はパーフォレーション孔)が形成されるが、かかるスプロケットホールは、導通用貫通孔13と同時に形成するようにしてもよいが、この工程に先立って又はこの工程の後の別工程で形成してもよく、特に限定されない。
【0056】
次に、図3(c)に示すように、絶縁基材11の接着剤層12が設けられた一方面側に、導電体層14を貼り付ける。この貼り付けは、例えば、熱ロールなどによる仮圧着を行った後、加熱処理による接着処理を行うことにより実施する。
【0057】
ここで、導電体層14は、金属箔からなり、フレキシブルプリント配線基材として使用できる厚さ、品質を有していれば、特に限定されない。一般的には、5〜35μm程度の厚さのものが用いられる。また、製造工程での取り扱い性の点から、製造過程ではキャリア付き金属箔を用い、最後にキャリアを除去するようにしてもよい。また、金属箔としては、銅箔、アルミ箔などを挙げることができ、キャリアとしては銅箔やアルミ箔などを挙げることができる。
【0058】
次に、図3(d)に示すように、導通用貫通孔13を埋設するように埋設導電体めっき層15を形成する。埋設導電体めっき層15は、電気めっき法などにより形成すればよいが、最終的に、上面が絶縁基材11の表面と面一となるように形成する必要がある。
【0059】
よって、図4(a)に示すように、絶縁基材11の表面より盛り上がるようにめっき層15Aを形成したのち、図4(b)に示すように、化学研磨やバフ研磨により上面が面一となるめっき層15Bとしてもよい。なお、かかる研磨工程はめっき層15A上に導電体めっき層を形成した後、行ってもよいが、全体に亘って平坦な状態を形成するためには、埋設導電体めっき層15の上面が絶縁基材と面一になるように研磨した後、導電体めっき層を設けるのが好ましい。
【0060】
また、PPR(周期的逆電流パルス)めっき法により、上面が面一となるようにめっきして研磨工程を行わなくてもよい。
【0061】
ここで、埋設導電体めっき層15を銅めっき層として、PPRめっき法により形成する場合、硫酸銅五水和物の濃度が50〜90g/Lで硫酸濃度が180〜210g/Lのめっき液を用い、印加するパルスの電流密度比を正:負=1:1.2〜1:1.8の範囲のめっき条件でめっきするのが好ましい。これにより、上面が平坦で絶縁基材11の表面と面一となるように埋設導電体めっき層15を形成することができる。本件において、正とは銅めっきが試料に付着する方向であり、負とは銅めっきが溶解する方向を意味する。
【0062】
また、特に、印加するパルスを、正が18〜22msec、負が0.5〜1.5msecとなるようなパルスとするのが好ましく、電流密度は1〜4A/dmとするのが好ましい。このようなめっき条件とすることにより、より確実に表面が平坦な配線を形成できる。
【0063】
次いで、図3(e)に示すように、絶縁基材11の表面及び埋設導電体めっき層15の上面を覆うように、例えば、ニッケルからなる無電解めっき層16を、例えば、0.01〜0.2μmの厚さで設ける。かかる無電解めっき層16をより確実に且つ密着性よく形成するために、無電解めっきに先だってめっき前処理を行うのが好ましい。このめっき前処理は、例えば、絶縁基材11の上面を脱脂、アルカリ処理などを行った後、必要に応じて触媒などを含有する下地層を形成するものである。例えば、絶縁基材11がポリイミドの場合、脱脂し、アルカリ改質することにより、ポリイミド環を開環させ、その後、触媒化処理した後、還元するような前処理を行うのが好ましい。
【0064】
次に、図3(f)に示すように、無電解めっき層16の上に、例えば、銅からなる電気めっき層17を、例えば、1〜15μmの厚さで形成する。これにより、無電解めっき層16及び電気めっき層17からなる導電体めっき層18を形成する。
【0065】
なお、無電解めっき層16及び電気めっき層17を形成する際には、裏面側はレジストなどでマスクしておく必要があるが、無電解めっき層16及び電気めっき層17の何れか又は両方と同時に裏面にもめっき層を設けるようにしてもよい。
【0066】
また、上述したプロセスでは、導電体めっき層18が無電解めっき層16及び電気めっき層17からなるものとしたが、全体を無電解めっきで形成してもよい。
【0067】
図5には、フレキシブルプリント配線基板20の製造方法の一例を示す。
図5(a)に示すようなフレキシブルプリント配線基板用積層体10を用意し、図5(b)に示すように、導電体層14全体を覆うマスクレジスト層101を設けると共に導電体めっき層18上に所定の形状にパターニングしたレジストパターン層102を形成する。
【0068】
次に、図5(c)に示すように、マスクレジスト層101及びレジストパターン層102をマスクとして導電体めっき層18をエッチングし、マスクレジスト層101及びレジストパターン層102を除去することにより、第1の配線パターン21を形成する。なお、第1の配線パターン21は、必要な箇所の埋設導電体めっき層15と導通したものとすることができる。
【0069】
次に、図5(d)に示すように、第1の配線パターン21を覆うマスクレジスト層103を設けると共に、導電体層14上に所定の形状にパターニングしたレジストパターン層104を形成する。
【0070】
続いて、図5(e)に示すように、マスクレジスト層103及びレジストパターン層104をマスクとして導電体層14をエッチングし、マスクレジスト層103及びレジストパターン層104を除去することにより、第2の配線パターン22を形成する。かかる第2の配線パターン22は、所定の箇所の埋設導電体めっき層15を介して第1の配線パターン21と導通されており、第1の配線パターン21及び埋設導電体めっき層15と共に配線パターンを構成するものとなる。
【0071】
なお、このようにして配線パターン21、22の少なくとも一部を覆うようにソルダーレジスト層を形成してフレキシブルプリント配線基板20とすることができる。
【0072】
図6及び図7には、フレキシブルプリント配線基板の製造方法の他の例を示す。この製造方法は、セミアディティブ法によるものであるので、図6(a)に示すように、厚さが比較的薄い導電体めっき層19を有するフレキシブルプリント配線基板用積層体10Aを用意した。
【0073】
次に、図6(b)に示すように、導電体層14全体を覆うマスクレジスト層111を設けると共に導電体めっき層19上に所定の形状にパターニングしたレジストパターン層112を形成する。
【0074】
次に、図6(c)に示すように、マスクレジスト層111及びレジストパターン層112をマスクとして導電体めっき層19が露出した領域にセミアディティブめっき層31を形成し、その後、図6(d)に示すように、マスクレジスト層111及びレジストパターン層112を除去する。
【0075】
次に、図7(a)に示すように、セミアディティブめっき層31をマスクとして導電体めっき層19をフラッシュエッチングしてセミアディティブめっき層31と、その下層となる同一パターンの導電体めっき層パターン19Aとからなる第1の配線パターン32を形成する。なお、第1の配線パターン32は、必要な箇所の埋設導電体めっき層15と導通したものすることができる。
【0076】
次に、図7(b)に示すように、第1の配線パターン32を覆うマスクレジスト層113を設けると共に、導電体層14上に所定の形状にパターニングしたレジストパターン層114を形成する。
【0077】
続いて、図7(c)に示すように、マスクレジスト層113及びレジストパターン層114をマスクとして導電体層14をエッチングし、マスクレジスト層113及びレジストパターン層114を除去することにより、第2の配線パターン33を形成する。かかる第2の配線パターン33は、所定の箇所の埋設導電体めっき層15を介して第1の配線パターン32と導通されており、第1の配線パターン32及び埋設導電体めっき層15と共に配線パターンを構成するものとなる。
【0078】
なお、このようにして配線パターン32、33の少なくとも一部を覆うようにソルダーレジスト層を形成してフレキシブルプリント配線基板20とすることができる。
【0079】
以上説明したフレキシブル配線基板用積層体及びフレキシブル配線基板では、導通用貫通孔とこれに埋設された埋設導電体めっき層について説明したが、本発明では、絶縁基材に導通用貫通孔と共にそれより大径の放熱用貫通孔を形成すると共に埋設導電体めっき層の形成の際に放熱用貫通孔を埋設するように埋設放熱用めっき層を形成することもできる。この場合には、例えば、表面側の配線パターン(埋設放熱用めっき層を含む)に実装されたICチップなどからの熱を、ICチップ実装領域及びその周辺にある放熱用貫通孔に設けられた埋設めっき層を介して裏面側へ放熱することができるという効果を奏する。
【実施例】
【0080】
次に本発明の実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
絶縁基材としての厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン)にポリアミド系接着剤をロールコーターで10μm厚に塗布し、乾燥した後、35mm幅にスリットし、金型を用いたパンチングにより、0.8mmピッチで直径0.4mmの放熱用貫通孔を81個、0.17mmピッチで直径0.08mmの導通用貫通孔を100個、合計181個の孔を形成した。これと同時に、同じ金型でフィルム両端に、直径1.42mmのパーフォレーション孔を4.75mmピッチで形成して送りガイドとした。
【0082】
このような絶縁基材に導電体層として厚さ15μm、幅30mmの電解銅箔(三井金属鉱業(株)製NA−DFF)を接着剤層側に仮圧着し、その後、加熱して完全に接着した。
【0083】
次に、絶縁基材と導電体層との積層体を塩酸で処理して酸性脱脂し、カバーグリーム入り銅めっき液(メルテックス社製;CuSO・5HO:110gr/L、硫酸190gr/L、Cl50ppm)を用い、温度25℃、電流密度4A/dmで57分間、めっき厚50μmでめっきし、放熱用貫通孔及び導通用貫通孔を埋設銅めっき層により埋設した。埋設銅めっき層は絶縁基材の表面より約2μm程度高くなった。
【0084】
その後、耐水性シリコンカーバイドペーパー(丸本ストルアス社製、FEPA P #2400)により絶縁基材の表面から突出した埋設銅めっき層の上面を、360回/分の回転型研磨装置で研磨し、絶縁基材の表面と面一となるようにした。
【0085】
次に、絶縁基材の表面をアルカリ脱脂処理してアルカリで開環処理し、触媒化処理してさらに還元処理した後、無電解ニッケルめっき(荏原電産社製)を38℃で5分間実施し、絶縁基材及び埋設銅めっき層の表裏全体に100nmの厚さのニッケルめっき層を形成した。
【0086】
さらに、130℃で5分間加熱して水分を除去し、さらに銅置換処理を行った後、カバーグリーム入り銅めっき液(メルテックス社製;CuSO・5HO:110gr/L、硫酸190gr/L、Cl50ppm)を用いて、液温24℃、電流密度3A/dmで15分間めっきし、ニッケルめっき層上に10μmの厚さの銅めっき層を形成し、フレキシブルプリント配線基板用積層体とした。なお、このとき、裏面の銅箔面は塩化ビニル製バックプレートに押しつけてテーピングすることにより保護してめっき液が回り込まないようにし、銅めっきが付着しないようにした。
【0087】
次に、このように製造したフレキシブルプリント配線基板用積層体の表裏面に、15μmの厚さのネガ型ドライフィルムレジスト(旭化成社製、M−50B)を、ラミネーターを用いて105℃で貼り付けた。
【0088】
次いで、表面側とした電解銅箔側のドライフィルムレジストを、20μmピッチから460μmピッチの配線パターンを描画したガラスマスクを用いて露光装置により180mJ/cmの露光量で紫外線露光し、裏面側のドライフィルムレジストは180mJ/cmの露光量で全面紫外線露光した。その後、炭酸ソーダ溶液により現像して未露光部分を溶解し、各ピッチのフォトレジストパターンを形成した。
【0089】
現像後フォトレジストパターンから露出した電解銅箔をエッチング液でエッチングし、続いて、剥離液で表裏両面のレジスト層を剥離し、表面側の第1の配線パターンを形成した。
【0090】
次に、同様に両面にドライフィルムレジストをラミネートし、表面側のドライフィルムレジストを全面露光すると共に、裏面側のドライフィルムレジストを所定のパターンに露光し且つ現像し、裏面側のめっき層を塩化第2銅エッチング液によりエッチングして第2の配線パターンを形成し、その後、剥離液で表裏のレジストを剥離し、マイクロエッチング液に浸漬してフラッシュエッチングにより裏面の配線パターンの上面のニッケルめっき層を除去した。このフラッシュエッチングは、無電解ニッケルめっき層が100nmと薄いため短時間ですむので、配線パターンの線幅への影響はほとんどない。
【0091】
そして、配線パターン上に無電解すずめっきを0.5μm厚に形成し、フレキシブルプリント配線基板とした。
【0092】
[実施例2]
実施例1と同様に絶縁基材として厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン)を用い、実施例1と同様に処理して電解銅箔との積層体を形成した後、同様に導通用貫通孔に埋設銅めっき層を形成し、同様に上面を研磨し、実施例1と同様に前処理した後、無電解ニッケルめっき(荏原電産社製)を38℃で5分間実施し、絶縁基材及び埋設銅めっき層の表裏全体に100nmの厚さのニッケルめっき層を形成した。
【0093】
続いて、130℃で5分間加熱して水分を除去し、さらに銅置換処理を行った後、カバーグリーム入り銅めっき液(メルテックス社製;CuSO・5HO:75gr/L、硫酸200gr/L、Cl50ppm)を用いて、液温24℃、電流密度2A/dmで30秒間めっきし、表裏両面のニッケルめっき層上に0.2μmの厚さの銅めっき層を形成し、フレキシブルプリント配線基板用積層体とした。
【0094】
次に、このように製造したフレキシブルプリント配線基板用積層体の表裏面に、15μmの厚さのネガ型ドライフィルムレジスト(旭化成社製、M−50B)を、ラミネーターを用いて105℃で貼り付けた。
【0095】
次いで、表面側とした0.2μm厚銅めっき層側のドライフィルムレジストを、20μmピッチから460μmピッチの配線パターンを描画したガラスマスクを用いて露光装置により180mJ/cmの露光量で紫外線露光し、裏面側のドライフィルムレジストは180mJ/cmの露光量で全面紫外線露光した。その後、炭酸ソーダ溶液により現像して未露光部分を溶解し、各ピッチのフォトレジストパターンを形成した。
【0096】
続いて、ST901を添加した銅めっき液(メルテックス社製;CuSO・5HO:75gr/L、硫酸200gr/L)を用いて、液温24℃、電流密度2A/dmで20分間めっきし、セミアディティブ法による8μm厚の銅めっき配線パターンを得た。
【0097】
次に、剥離液で表裏両面のレジスト層を剥離し、さらに、硫酸+過酸化水素系エッチング液で35℃、45秒の条件で処理し、水洗することなく、13%硫酸+13%塩酸混合溶液で13秒間処理して両面の無電解ニッケルめっき層を溶解し、表面はレジストを除去した領域の絶縁基材を露出させて所定の表面側の第1の配線パターンを形成し、裏面側は電解銅箔が露出した状態を得る。
【0098】
次に、同様に両面にドライフィルムレジストをラミネートし、表面側のドライフィルムレジストを全面露光すると共に、裏面側のドライフィルムレジストを所定のパターンに露光し且つ現像し、裏面側のめっき層を塩化第2銅エッチング液によりエッチングして第2の配線パターンを形成し、その後、剥離液で表裏のレジストを剥離し、配線パターン上に無電解すずめっきを0.5μm厚で形成し、フレキシブルプリント配線基板とした。
【0099】
[実施例3]
実施例1と同様に絶縁基材として厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン)を用い、実施例1と同様に処理して電解銅箔との積層体を形成した。
【0100】
次に、実施例1とは異なり、カバーグリームPPRを添加した銅めっき液(メルテックス社製;CuSO・5HO:75gr/L、硫酸200gr/L)を用い、温度25℃、電流密度4A/dm、FR電流密度比(正:負=1:1.5)、FRパルス時間(正側20msec、負側1msec)で57分間PPR(周期的逆電流パルス)めっきし、導通用貫通孔及び放熱用貫通孔内に48μm厚さの銅めっき層を形成した。孔内の埋設銅めっき層及び埋設放熱用めっき層の上面は絶縁基材の表面と面一となり、研磨による平坦化は実施しなかった。なお、電源には、(株)中央製作所製の高速極性反転パルス電流出力整流器(PPS−050−1)を用いた。また、アノードには、チタンに酸化イリジウムを被覆した不溶性電極を用いた。以下、実施例1と同様にしてフレキシブルプリント配線基板用積層体とした。
【0101】
また、このフレキシブルプリント配線基板用積層体を用い、実施例1と同様にしてフレキシブルプリント配線基板を製造した。
【0102】
[実施例4]
実施例1と同様に絶縁基材として厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン)を用い、実施例1と同様に処理して電解銅箔との積層体を形成した。
【0103】
次に、実施例3と同様にPPRめっきを行ったが、めっき時間を60分間とし、導通用貫通孔及び放熱用貫通孔内に50μm厚さの銅めっき層を形成した。孔内の埋設銅めっき層及び埋設放熱用めっき層の上面は絶縁基材の表面より2.5μm程度盛り上がっていたが、上面は平坦であった。
【0104】
この埋設銅めっき層及び埋設放熱用めっき層を実施例1と同様に研磨して絶縁基材の表面と面一にした後、実施例1と同様にしてフレキシブルプリント配線基板用積層体を得た。
【0105】
また、このフレキシブルプリント配線基板用積層体を用い、実施例1と同様にしてフレキシブルプリント配線基板を製造した。
【0106】
[実施例5]
実施例1と同様に絶縁基材として厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン)を用い、実施例1と同様に処理して電解銅箔との積層体を形成した。
【0107】
次に、実施例3と同様にPPRめっきを行い、導通用貫通孔及び放熱用貫通孔内に48μm厚さの銅めっき層を形成した。孔内の埋設銅めっき層及び埋設放熱用めっき層の上面は絶縁基材の表面と面一となっていたので、研磨を行わない以外は実施例2と同様にして、フレキシブルプリント配線基板用積層体を得た。
【0108】
また、このフレキシブルプリント配線基板用積層体を用い、実施例2と同様にしてフレキシブルプリント配線基板を製造した。
【0109】
[実施例6]
実施例1と同様に絶縁基材として厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン)を用い、実施例1と同様に処理して電解銅箔との積層体を形成した。
【0110】
次に、実施例4と同様にPPRめっきを60分間行い、導通用貫通孔及び放熱用貫通孔内に50μm厚さの銅めっき層を形成した。孔内の埋設銅めっき層及び埋設放熱用めっき層の上面は絶縁基材の表面より2.5μm程度盛り上がっていたが、上面は平坦であった。
【0111】
この埋設銅めっき層を実施例1と同様に研磨して絶縁基材の表面と面一にした後、実施例2と同様にしてフレキシブルプリント配線基板用積層体を得た。
【0112】
また、このフレキシブルプリント配線基板用積層体を用い、実施例2と同様にしてフレキシブルプリント配線基板を製造した。
【0113】
(まとめ)
実施例1〜6のフレキシブルプリント配線基板用積層体を用いると、導電体めっき層の表面が平坦となり、フォトレジストを均一な厚さで塗布できるので、露光紫外線はレジスト面に直角に照射されることになり、露光精度が良好で均一な線幅で且つ位置合わせ精度の高い配線パターンを有するフレキシブルプリント配線基板となる。
【0114】
したがって、導通用貫通孔の埋設銅めっき層と配線との接続部となるランドは貫通孔の直径と同一径とすることが可能であり、孔間隔0.09mmピッチの直径0.08mmの導通用貫通孔の間に、線幅10μm(ピッチ20μm)の配線を4本配置することが可能となる。
【0115】
なお、従来の配線基板用積層体のように導通用貫通孔上の導電体めっき層が平坦でなければ、接続用のランドは、例えば、直径0.12mm程度に拡げる必要があり、このような条件では、線幅10μm(ピッチ20μm)の配線を2本配置するのが限界であった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板用積層体の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造工程を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造工程の変形例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板の製造工程を示す概略断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板の製造工程を示す概略断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るフレキシブルプリント配線基板の製造工程を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0117】
10 フレキシブルプリント配線基板用積層体
11 絶縁基材
12 接着剤層
13 導通用貫通孔
14 導電体層
15 埋設導電体めっき層
16 無電解めっき層
17 電気めっき層
18 導電体めっき層
20 フレキシブルプリント配線基板
21 第1の配線パターン
22 第2の配線パターン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通用貫通孔が形成された絶縁基材と、この絶縁基材の一方面に接着された導電体層とを具備し、前記導通用貫通孔には埋設導電体めっき層がその上面が前記絶縁基材の表面と面一になるように設けられ、前記絶縁基材の表面及び前記埋設導電体めっき層の上面を覆う導電体めっき層が設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記導通用貫通孔が、30〜800μmの径で、60〜1600μmのピッチで設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層が、硫酸銅五水和物の濃度が50〜90g/Lで硫酸濃度が180〜210g/Lのめっき液を用い、印加するパルスの電流密度比を正:負=1:1.2〜1:1.8の範囲のめっき条件とするPPR(周期的逆電流パルス)めっき法で形成されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体。
【請求項4】
請求項3に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層の形成で印加するパルスの印加時間を、正を18〜22msec、負を0.5〜1.5msecとしたことを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層が、めっき後の上面が研磨処理により平坦化されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記絶縁基材が、放熱用貫通孔を具備し、当該放熱用貫通孔には前記埋設導電体めっき層と一緒に形成された埋設放熱用めっき層が設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体を用いて形成され、前記導電体層及び前記導電体めっき層のそれぞれに配線パターンが形成されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板。
【請求項8】
請求項7に記載のフレキシブルプリント配線基板において、前記配線パターンの端子部の配線のピッチが30μm以下、線幅が6μm以上、配線間の間隔が15μm以下であることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板。
【請求項9】
絶縁基材に導通用貫通孔を形成する工程と、この絶縁基材の一方面に導電体層を接着する工程と、前記導通用貫通孔に埋設導電体めっき層をその上面が前記絶縁基材の表面と面一となるように形成する工程と、前記絶縁基材の表面及び前記埋設導電体めっき層の上面を覆うように導電体めっき層を設ける工程とを具備することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記導通用貫通孔が、30〜800μmの径で、60〜1600μmのピッチで設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記埋設導電体めっき層を、硫酸銅五水和物の濃度が50〜90g/Lで硫酸濃度が180〜210g/Lのめっき液を用い、印加するパルスの電流密度比を正:負=1:1.2〜1:1.8の範囲のめっき条件とするPPR(周期的逆電流パルス)めっき法で形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体において、前記埋設導電体めっき層の形成で印加するパルスの印加時間を、正を18〜22msec、負を0.5〜1.5msecとしたことを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記埋設導電体めっき層を、めっき後の上面を研磨処理により平坦化して形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項9〜13の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法において、前記絶縁基材に、前記導通用貫通孔と共に放熱用貫通孔を形成し、前記埋設導電体めっき層の形成の際に前記放熱用貫通孔を埋設するように埋設放熱用めっき層を形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板用積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項9〜14の何れか1項に記載の製造方法により得られたフレキシブルプリント配線基板用積層体の前記導電体層及び前記導電体めっき層のそれぞれに配線パターンを形成する工程をさらに具備することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載のフレキシブルプリント配線基板の製造方法において、前記配線パターンの形成の際に、端子部の配線のピッチが30μm以下、線幅が6μm以上、幅線間の間隔が15μm以下である配線パターンを形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線基板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−141216(P2010−141216A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317748(P2008−317748)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】