説明

フレキシブルプリント配線板、その製造方法、フレキシャ、および電子機器

【課題】 複数の端子が高密度に配列された接続パッド部において、端子間の絶縁性を確保できる、フレキシブルプリント配線板等を提供する。
【解決手段】 接続パッド部Kの各端子3において、カバー絶縁層4は、該端子の終端部、および該端子の根元側の配線パターン11を、その周りのベース絶縁層2とともに被覆しており、カバー絶縁層が該端子に対応する位置で開口する開口部7においてのみ、該端子は露出し、該開口部の底面7bは該端子の上面3aのみで構成され、カバー絶縁層4の端面とベース絶縁層2の端面とは揃っており、接続パッド部の端面Eを形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)、その製造方法、フレキシャ、および電子機器に関し、より具体的には、高密度に接続端子が配列された接続パッドを有するフレキシブルプリント配線板、その製造方法、ハードディスクドライブの磁気素子の信号を伝達するためのフレキシャ、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯端末等の電子機器には、多数のフレキシブルプリント配線板が用いられ、その電子機器に適合した特性を有するものが開発されている。なかでもハードディスクドライブ(HDD)に用いられ、磁気ヘッドからの信号を伝達するフレキシブルプリント配線板であるフレキシャについては、多くの開発がなされている(たとえば特許文献1〜3)。フレキシャでは、電気的性質だけでなく、磁気ヘッドとCD等との微小スペースを流れる気流などを利用するための機械的性質などについて微妙な弾性特性等が求められる。また、これらの微妙な特性を付与した上で、電子機器内においてHDDは、常に小型化が求められる。このため、磁気ヘッドの配列は高密度化の一途をたどっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−287835号公報
【特許文献2】特開2009−223977号公報
【特許文献3】特開2011−49316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシャは、所定の弾性をもって支えるサスペンション金属板と、ベース絶縁層と、配線や端子を形成する導電層と、カバー絶縁層とから構成される。フレキシブルプリント配線板において接続パッドでは、端子を露出させるために開口部が形成される。その開口部では、上記端子が露出され、その露出された端子にNi層およびAu層を含む2層のめっき層が形成されて、磁気ヘッドが配置されるヘッドスライダなどの端子と半田接続されることになる。
図5は従来のフレキシャの接続パッド部Kを示し、(a)は平面図であり、また(b)はVB−VB線に沿う断面図である。接続パッド部Kでは、端子103は、すべてカバー絶縁層104から露出されて、金属板101/ベース絶縁層102上においてヘッドスライダ側の端子に向かうように平行に延在する構成をとる。この構造では、カバー絶縁層104は極端にいえば端子103に連なる配線パターン111のみを覆っている。Ni/Au2層めっき103aはカバー絶縁層104から露出する端子103の全体に形成される。
図6に、図5のフレキシャの製造方法を示す。従来の端子構造では、図6(a)に示すように、ベース絶縁層102とカバー絶縁層104とが相互に接触する箇所があった。その箇所において、図6(b)に示すように、カバー絶縁層104のみを除去してベース絶縁層102を残して一定の長さの端子103を露出させるために、特殊な手法を用いていた。すなわち、図6(a)〜(b)の状態において、カバー絶縁層104を形成する絶縁樹脂層を、架橋が完成する前の化学的に不安定な前駆体の状態にしておき、一方ベース絶縁層102は架橋を完成させて化学的に安定した樹脂層とする。そして、図6(b)の状態にするために、露光/現像によってカバー絶縁層104のみを除去していた。この手法によって、各端子103は、ベース絶縁層102上、図示しないヘッドスライダに向かうように平行に延在する構造が実現されていた。製造方法については、後で本発明と比較しながら説明する。
しかしながら、HDDの小型化が推進された結果、上記のフレキシャにおける接続パッド部の構造を採用したのでは、絶縁性を確保できない場合が生じる事態にいたった。
【0005】
また、電子機器において、フレキシブルプリント配線板の接続構造を小型化する要求は常にあり、上記のフレキシャに限らず、接続パッド部において、各配線間の絶縁性を確保することは重要である。すなわち、一般的に、フレキシブルプリント配線板において、接続パッド部の端子間の絶縁性を確実に保つことが可能な構造が求められている。
【0006】
本発明は、複数の端子が高密度に配列された接続パッド部において、端子間の絶縁性を確保することができる、フレキシブルプリント配線板、その製造方法、フレキシャ、および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、接続パッド部を備える。このフレキシブルプリント配線板は、金属板と、ベース絶縁層と、該ベース絶縁層に接する配線等を形成するための配線パターンと、配線パターンを覆うカバー絶縁層とを備え、接続パッド部には、ベース絶縁層上において配線パターンから延在して終端する端子が、複数、配列される。そして、各端子において、カバー絶縁層は、該端子の終端部、および該端子の根元側の配線パターンを、その周りのベース絶縁層とともに被覆しており、カバー絶縁層が該端子に対応する位置で開口する開口部においてのみ、該端子は露出し、該開口部の底面は該端子の上面のみで構成される。また、カバー絶縁層の端面とベース絶縁層の端面とは揃っており、接続パッド部の端面を形成していることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、接続パッド部では共通の開口部というものは存在せず、端子ごとに開口部(窓)が設けられる。このため、1つの開口部に1つの端子が位置して、その1つの端子の上面がその開口部の底面をなす。接続相手は、たとえば電極ごとに、この開口部の底面に半田付けされる。したがって接続パッド部では、1つの端子に1つ設けられる開口部が、並んでいる。
この結果、端子の間隔が小さくなって、高密度配列になっても、隣の端子と短絡を生じることが防止される。また、接続パッド部の全体の耐久性を向上させることができる。
また、カバー絶縁層は、従来のように、たとえばベース絶縁層との間で架橋状態(重合の進行状態)に相違を生じさせて、カバー絶縁層のみを現像によってパターニングする必要がなくなる。すなわちカバー絶縁層の除去(パターニング)に、ベース絶縁層を除去(現像)ストッパとしなくてもよくなる。本発明では、接続パッド部の端は、カバー絶縁層とベース絶縁層とをまとめてエッチングによって除去すればよい。このため、カバー絶縁層のパターニングに、感光性ポリイミドや特別な現像液を用いなくてもよくなり、材料の費用を低減することができる。工数的にも大きな工数削減を得ることができる。
【0009】
接続パッド部の端において、金属板の端は、該接続パッド部の端面から離れて位置し、ベース絶縁層の裏面を、該接続パッド部の裏面の端で露出させるのがよい。
これによって、接続相手と半田等で接続するとき、半田の制御不具合が生じた場合でも、金属板と端子等とが半田で導電接続される事態を避けることができる。
【0010】
開口部は、配列のピッチが150μm以下、開口部の配線の延在方向に沿う長さが75μm以下とすることができる。
近年の信号配線の高密度化を反映して接続パッド部の端子配列も高密度化し、端子も微小化している。このような微小な端子の高密度配列において、端子間の絶縁性を確保する上で、上述の構造の接続パッド部を備えるフレキシブルプリント配線板はきわめて効果的である。すなわち、上記の配列ピッチ、端子長さの接続パッドの場合、本発明のフレキシブルプリント配線板において良好な絶縁性を確保して、好適に適用される。
【0011】
カバー絶縁層を形成する樹脂層の主成分を、非感光性樹脂とすることができる。
上記接続パッド部の構造によれば、カバー絶縁層のパターニングにおいてベース絶縁層を現像液によるそのカバー絶縁層除去のストッパにする必要がない。これにより、感光性樹脂をカバー絶縁層に用いなくてすむ。カバー絶縁層に非感光性樹脂を用いて簡単明瞭な工程で、カバー絶縁層およびベース絶縁層をエッチングによってパターニングすることができる。この結果、高価な、感光性樹脂やその現像液などを用いる必要がなく、かつ製造工程も簡単化できるので、材料コスト、工数削減、および製造期間の短縮などを得ることができる。
【0012】
カバー絶縁層が、非感光性樹脂液として非感光性ポリイミド前駆体インクを含み、酸成分として、ピロメリト酸二無水物(PMDA)を主成分に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)を含み、またジアミン成分として、p-フェニレンジアミン(PDA)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(mTBHG)、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)を含むことができる。
これによって、柔軟性に富むポリイミド樹脂を用いた上で、熱膨張係数を所定範囲(15ppm/℃〜20ppm/℃)として、本製造方法において必須の良好なエッチング性を付与することができる。いずれの性質も硬化処理後のポリイミド樹脂の性質である。エッチング性は、同じエッチング機会に、カバー絶縁層に開口部を設け、カバー絶縁層/ベース絶縁層の終端面を形成するので、非常に重要である。とくに開口部は、上記モノマー組成による良好なエッチング性、および金属(端子)によるエッチングストッパを確保して、高い精度で端子上に形成することができる。
【0013】
非感光性ポリイミド前駆体インクに、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(APDS)を含むことができる。
これによって、密着力を高くすることができ、開口部のずれなどを防止して高精度な開口部とするのに貢献できる。
【0014】
本発明のフレキシャは、上述のいずれかのフレキシブルプリント配線板であって、接続パッド部においてハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドに接続されることを特徴とする。
上記の構成によって、磁気ヘッドの小型化、信号の高密度化等に対応して、高密度配列された磁気ヘッドの接続パッドと、フレキシャの接続パッド部とを、対応する端子どうし、絶縁性を確保しながら接続することができる。また、経済性に優れたフレキシャとすることができる。
【0015】
本発明の電子機器は、上記のいずれかのフレキシブルプリント配線板を備えることを特徴とする。
上記のいずれかのフレキシブルプリント配線板を用いることで、高密度に配列された端子間の絶縁性を保持しながら、良好な耐久性を得ることができる。また、接続パッド部の構造そのもの及び製造工程が簡単化されるので、高い経済性を得ることができる。
【0016】
本発明のプリント配線板の製造方法は、接続パッド部を備えるフレキシブルプリント配線板を製造する。この製造方法は、金属板上にベース絶縁層を備える基材シートを準備する工程と、ベース絶縁層に接して、端子を含む配線パターンを形成する工程と、端子を含む配線パターンを覆うカバー絶縁層を形成するために、非感光性樹脂液をベース絶縁層に重ねるように塗工する工程と、塗工された非感光樹脂液を、乾燥し、次いで熱硬化する工程と、ベース絶縁層および熱硬化したカバー絶縁層を、エッチングする工程とを備え、エッチング工程では、端子がエッチングストッパとなるようにカバー絶縁層に開口部をあけ、該端子が該開口部の底面を形成し、かつ、該カバー絶縁層の端面およびベース絶縁層の端面が揃って、接続パッド部の端面を形成するように、金属板がエッチングストッパとなるように該カバー絶縁層およびベース絶縁層をエッチングすることを特徴とする。
【0017】
上記の製造方法では、カバー絶縁層に対する端子上の開口部の形成、およびベース絶縁層/カバー絶縁層のパターニング、を並行させてエッチングによって行う。開口部のエッチングのストッパは端子により、また、ベース絶縁層/カバー絶縁層のエッチングのストッパは金属板により、担当される。これらストッパは金属であり、エッチングの金属/樹脂の選択性は高いので、高精度でベース絶縁層およびカバー絶縁層をパターニングすることができる。このため、端子ごとにカバー絶縁層に開口部を形成する微細加工(微細パターニング)を高精度で行うことが可能になる。上述した、配列ピッチ200μm以下、各端子長さ75μm以下の接続パッド部の場合、このような金属/樹脂の高い選択性を有するエッチング法を用いてパターニングしない限り、狙い通りの接続パッド部を得ることは難しい。
上記のエッチング法を用いる場合、従来のように、ベース絶縁層とカバー絶縁層とが接する領域で、カバー絶縁層のみをパターニングする必要がない。すなわち、カバー絶縁層を感光性樹脂で形成して重合が完成しない前駆体とし、ベース絶縁層は重合が完成した安定状態としておき、カバー絶縁層のみを現像によってパターニングする必要がない。このときベース絶縁層は現像のストッパとして機能させる。この従来の製造方法では、感光性樹脂たとえば感光性ポリイミドは高価であり、また現像液も高価である。製造工程についても、カバー絶縁層を前駆体の段階で現像するので、工程の時間的な制約が強く、かつ工程数も多くなる。この結果、従来の接続パッド部の構造を備えるフレキシブルプリント配線板は高価とならざるを得なかった。上記のように、金属/樹脂の選択性の高いエッチングを用いることで、微細で高密度配列の開口部を精度よく形成しながら、材料コストおよび製造コスト、製造期間等を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフレキシブルプリント配線板等によれば、複数の端子が高密度に配列された接続パッド部において、端子間の絶縁性を確保することができる。また、材料コスト、製造コストを低減し、かつ製造期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態におけるフレキシャを示す平面図である。
【図2】図1のフレキシャのヘッドスライダ側の接続パッド部を示し、(a)は平面図、(b)はIIB−IIB線に沿う断面図、である。
【図3】ヘッドスライダおよびフレキシャの接続パッドを示し、(a)はヘッドスライダおよびフレキシャの接続パッドの配置関係等を示す斜視図、(b)は半田滴を滴下して導電接続した状態を示す断面図、である。
【図4】本実施の形態のフレキシャの製造方法を示し、(a)は、金属板/ベース絶縁層上に配線パターンを形成した状態、(b)はカバー絶縁層を形成するための非感光性ポリイミドインクを塗工した状態、(c)はカバー絶縁層およびベース絶縁層を同じエッチング工程よりパターニングした状態、(d)は金属板をエッチングした状態、を示す断面図である。
【図5】従来のフレキシャの接続パッド部を示し、(a)は平面図、(b)はVB−VB線に沿う断面図、である。
【図6】従来の製造方法を示し、(a)はカバー絶縁層を形成するための感光性ポリイミドインクを塗工した状態、(b)カバー絶縁層を露光および現像によってパターニングした状態、(c)はエッチングによってベース絶縁層をパターニングした状態、を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態におけるフレキシャ10および該フレキシャが含まれるヘッドサスペンションアセンブリ50を示す図である。HDDのトラックに沿って磁気ヘッドを回動させるキャリッジアーム19に、ヘッドサスペンションアセンブリ50は取り付けられている。フレキシブルプリント配線板であるフレキシャ10は、磁気ヘッドが入力して電磁変換した信号を伝達するために用いられる。このためフレキシャ10は、磁気ヘッドが配置されるヘッドスライダ20から、図示しないキャリッジアーム根元の支軸の外周面に設けられ、外部と接続するための接続用基板ユニットにわたって配置される。フレキシャ10には、一定のばね弾性を有する金属板1が用いられ、その上に上記の信号伝達のための配線11が絶縁層中に含まれている。図示しない磁気ディスクが回転して気流が流れるとき、ヘッドスライダ20は所定高さ安定して浮上するように、フレキシャ10、その他のヘッドサスペンションアセンブリ50の部品は一定の弾性を有する金属材を備えている。フレキシャ10は、ヘッドスライダ20に面する端において、磁気ヘッドにおける電極と接続するための接続パッド部Kを備える。本実施の形態における特徴は、フレキシャ10の磁気ヘッド側の接続パッド部Kの構造および製造方法にある。
【0021】
図2は、本実施の形態におけるフレキシャ10の接続パッド部Kを示し、(a)は平面図、(b)はIIB−IIB線に沿う断面図である。接続パッド部Kは、開口部7以外はカバー絶縁層4で覆われている。すなわち小さい窓7以外はカバー絶縁層4で覆われている。配線11の先端には、幅が拡大された端子3が位置している。一つの端子3には一つの開口部(窓)7があけられているが、平面的に見て、開口部7の全領域は端子3の領域内に収まるようにする。これは、このあと製造方法において説明するが、端子3が、カバー絶縁層4をエッチングする際にエッチングストッパとして用いられるためである。開口部7に露出する端子3の上面3aにはNi/Auの2層のめっき層が設けられている。本発明の説明では、端子の上面とその面に形成されためっき層とは、とくに断らない限り、区別しないで、上面3aまたはそのめっき層3a、のように特定する。
接続パッド部Kにおけるサイズは、次のように例示される。あくまで一例である。より高密度配列でもよい。
(1)端子3間のピッチP:150μm以下、たとえば100μm程度。これはHDDの設計サイドから求められる。図3に示すように、当然、ヘッドスライダの端子配列に適合する。
(2)開口部7のピッチP:端子と同じピッチであり、150μm以下、たとえば100μm程度。
(3)端子3:ピッチ方向に直交する方向である長手(延在)方向の長さは例えば100μm程度、幅は50μm程度。
(4)開口部7:長手方向の長さは50μm程度、幅方向の長さは40μm。
端子3および開口部7のピッチ150μm以下の配列は、非常に高密度であり、半田で導電接続する電子機器の接続パッドどうしの接続としては希である。
図2(a)から分かるように、端子3は開口部7においてのみ露出するので、高密度配列にも拘わらず、端子3の間の絶縁性を高めることができる。また、ヘッドスライダ20と導電接続する際、たとえば隣り合う端子間に短絡を生じにくくすることができる。また、図5に示す従来の接続パッド部に比べて、格段に接続パッド部Kそのものの耐久性を向上させることができる。
【0022】
図2(b)の断面図から次の特徴が分かる。
(F1)カバー絶縁層4に開口部7をあける際に、エッチングにより、金属からなる導電層の端子3をエッチングストッパとして用いることができる。一般に、エッチングにおいて金属/樹脂は高い選択度でエッチングできるので、高精度のエッチングができる。
(F2)接続パッド部Kの終端面Eでは、カバー絶縁層4およびベース絶縁層2の端面が揃っている。金属板1は、製品とされた最終段階では終端面Eから内側に引っ込んだ位置にあるが、製造途中では、終端面Eよりも先に延在していたはずである。従って、終端面Eについても、金属板1をエッチングストッパに用いてエッチングによって、カバー絶縁層4およびベース絶縁層2の端面を揃えて、終端面Eとすることができる。
上記の終端面Eの形成、および開口部7の形成、は同じエッチングの機会に同時並行的に行うことができる。このエッチングプロセルについては、あとで詳しく説明する。
(F3)図2(b)に示すように、Ni/Auの2層めっきは、開口部7の底面に限定される。このため高価な金めっきの材料コストを大幅に減らすことができる。
上記の他に、本実施の形態のフレキシャ10は、製造方法として、上記(F1)〜(F3)も含めて多くの利点を有する。
【0023】
図3は、フレキシャ10の接続パッド部Kと、ヘッドスライダ20の接続パッド20kとの導電接続の一例を説明する図である。(a)はヘッドスライダ20の接続パッド20kと、フレキシャ10の接続パッド部Kとの位置および姿勢の関係を示す斜視図であり、(b)は、半田によって両者の端子3,23どうしを導電接続した状態の断面図である。ヘッドスライダ20とフレキシャ10の接続の形態は多くあり、図3はあくまで一例を示す。
図3(a)に示すように、本実施の形態におけるヘッドスライダ20の接続パッド20kは、フレキシャ10の接続パッド部Kに面する側面に設けられている。ヘッドスライダ20の接続パッド20kの端子23と、フレキシャ10の開口部7の底面7bまたは端子3(3a)とは、直角に近い交差角をなすように配置するのがよい。これは図3(b)に示すように、半田滴を滴下する際、その交差角をなすコーナー凹部を天側にして、そのコーナー凹部に溶融した半田滴を滴下して、端子3(3a)とヘッドスライダ20kの端子23とを導電接続する。半田滴を、上記のコーナー凹部に滴下する際に、その滴下対象の端子に集中するロート状の滴下具、または開口部7の間に遮断壁が挿入されて、隣の開口部に部分的にでも半田滴が入る余地のない治具、等を用いるのがよい。
【0024】
図4は、本実施の形態のフレキシャの製造方法、とくに接続パッド部Kの形成方法を示す図である。まず、金属板1にベース絶縁層2が配置された積層体を準備して、そのベース絶縁層2上に端子3を含む配線パターン層を形成する。
金属板1には、金属箔または金属薄板を用い、例えばステンレススチール、42アロイ(Fe−Ni合金)を用いるのがよい。金属板の厚みは、たとえば10μm〜60μm、とくに15μm〜30μmとするのがよい。
ベース絶縁層2には、柔軟性、熱膨張率等を重視して、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂を用いるのがよい。ベース絶縁層2の厚みは、たとえば2μm〜30μm、好ましくは5μm〜20μmとする。
端子3を含む配線パターン層を形成する導体層としては、たとえば銅、ニッケル(Ni)、金、はんだ、またはこれらの合金等を用い、好ましくは銅を用いるのがよい。銅層の配線パターンを形成するには、サブトラクティブ法でもアディティブ法でもよいが、微細なパターンを高精度で形成するためにはアディティブ法で形成するのがよい。アディティブ法では、図示しない導体薄膜からなるシード膜(種膜)をスパッタリング法などでベース絶縁膜2に成膜する。シード膜はクロムや銅などが好ましく用いられる。とくにクロム薄膜と銅薄膜とを、順次スパッタリング法で積層するのがよい。ここで、クロム薄膜の厚みは例えば10nm〜60nm程度、銅薄膜の厚みは例えば50nm〜200nm程度とするのがよい。
上記シード膜上に配線パターンと逆パターンのめっき用のレジストパターンを形成する。めっきレジストは、例えばドライフィルムレジスト等を用いて公知の方法によりレジストパターンとして形成する。次いで、めっきレジストが形成されていない領域に、めっきによって端子3を含む配線パターンを形成する。めっきは、電解めっきでも無電解めっきでもよいが、電解めっきがよく、とりわけ電解銅めっきが好ましい。めっきによる端子を含む配線パターン層、すなわち銅層の厚みは、例えば2μm〜25μm、好ましくは5μm〜20μmとする。また、配線の幅は、例えば10μm〜500μm、好ましくは30μm〜300μmとする。配線間の間隙は、例えば10μm〜1000μm、好ましくは10μm〜500μmとする。
図6に示す従来のフレキシャの製造方法においても、この段階までは、本実施の形態の製造方法と同じである。
【0025】
上記のめっきレジストを公知のエッチング法で除去した後、配線パターン層を被覆するためのカバー絶縁層4を形成する。カバー絶縁層3には、従来、感光性ポリイミドが用いられてきた。しかし、本実施の形態では、カバー絶縁層4に非感光性ポリイミドを用いる。まず非感光性ポリイミドインクを、端子3を含む配線パターン11およびベース絶縁層(ポリイミド層)2に塗工する。この非感光性ポリイミドインクから、乾燥および硬化(加熱)処理を経て形成されるポリイミド層(カバー絶縁層4)は、次の特徴を有する。
(A1)熱膨張係数(CTE:Coefficient of thermal expansion):15ppm/℃〜20ppm/℃
(A2)良好な、エッチング性および密着力
上記の熱膨張係数および良好なエッチング性を実現。
上記(A1)および(A2)を得るために、次のポリイミドのモノマー組成を合成してポリイミドインクを調合した。
<モノマー組成>:
(1)酸成分:PMDA(ピロメリト酸二無水物)を主成分として、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物)を追加。
(2)ジアミン成分:PDA(p-フェニレンジアミン)およびmTBHG(2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル)。
(3)密着力向上のための成分:APDS(1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン)を追加。
上記のポリイミドインクを、図4(b)に示すように、塗工した後、乾燥し、熱硬化処理を行う。熱効果処理は、250℃以上に加熱することで行い、例えば350℃に加熱する。その後、ドライフィルムレジストを用いて、エッチングによって、同じエッチングにより、開口部7をあけ、かつ接続パッド部Kの終端面Eを形成する。このエッチングでは、プラズマエッチング、RIE(Reactive Ion Etching)、スパッタリングなどのドライエッチング、薬液を用いるウエットエッチング、およびレーザ加工などいずれも用いることができる。
【0026】
従来のフレキシャの製造方法では、本実施の形態の図4(b)に対応する工程では、図6(a)に示すように、感光性ポリイミドインクを塗工して乾燥してカバー絶縁層104とする。乾燥では、ポジティブ型およびネガティブ型に応じて、除去対象の所定領域においてポリイミドの架橋(重合)が完成しないように、130℃〜150℃程度に加熱する。次の露光および現像処理で除去対象領域を除去してカバー絶縁層104をパターニングする(図6(b))。この露光/現像によって、カバー絶縁層104は、図5(a)に示すように配線パターン111以外の領域はほとんど除去される。端子103は、すべてが露出される。現像液は、有機系のものを用い、パターニングの鮮明度が高くなるように調合を調整するのがよい。
上記の現像によるカバー絶縁層104のパターニングでは、ベース絶縁層102は重合が完成した安定したポリイミド層であるのに対して、カバー絶縁層104が不安定な前駆体であることを利用して、パターニングする。このとき、現像ストッパとして機能するベース絶縁層102と、除去対象のカバー絶縁層104の選択度は、金属と樹脂との間のエッチング選択度ほど十分高くない。この結果、パターニングにおいて、十分高い寸法精度を追求することはできなかった。換言すれば、この従来の方式によっては、近年の高密度な端子配列の傾向に対応することが難しかった。
さらに、上記の感光性ポリイミドインクおよび上記現像液は、本実施の形態における非感光性ポリイミドインクおよびエッチング液よりも相当高価であり、本実施の形態の方式では、材料コストはカバー絶縁層等に限定すれば、従来の材料コストの数分の一程度に低減することができる。
【0027】
従来の製造方法では、このあと、図6(c)に示すように、金属板101をエッチングストッパとして、ベース絶縁層102をエッチングによりパターニングする。この金属板101をエッチングストッパとするベース絶縁層102のパターニングは、本実施の形態におけるベース絶縁層2のパターニングと同じである。従来は、露光/現像によるカバー絶縁層104のパターニングと、エッチングによるベース絶縁層102のパターニング、の2段階のパターニングを行っていた。しかし、本実施の形態では、開口部7の形成のためのカバー絶縁層4のパターニングと同じエッチング機会にベース絶縁層2もエッチングして終端面Eを形成する。
したがって、本実施の形態によれば、材料コストだけでなく、製造工程を削減して、製造期間を短縮することができる。
【0028】
<絶縁層のエッチング精度>
上述のように、開口部7のエッチングストッパは銅層など金属層から形成される端子3であり、終端面Eのエッチングストッパはステンレス鋼などからなる金属板1である。金属と樹脂とのエッチング選択度は高いので、高い精度でエッチングすることができる。
図2(a)を参照して、本実施の形態では、開口部(窓)7は、例えば、幅50μmの端子3の上に、幅40μmの開口部(窓)7を、中心を合わせてあける。すなわち誤差なく開口部7をあけたとして、幅方向の許容できるずれは5μmしかない。このような高精度のカバー絶縁層3のパターニングは、従来のような、ベース絶縁層をストッパとする現像による除去では不可能である。金属をエッチングストッパとするエッチングによりはじめて可能となる。
【0029】
カバー絶縁層4およびベース絶縁層2をエッチングして終端面Eを形成した後、余分に延在する金属板1をエッチングによって除去する。このエッチングにより、金属板1の端面1eを絶縁層2,4の終端面Eよりも開口部7に近い位置とする。これによって、ヘッドスライダとの半田接続の際に、短絡等の不具合を避けやすくできる。
【0030】
上記の実施の形態では、フレキシブルプリント配線板としてフレキシャのみを例示して説明した。しかし、本発明は、構成要件を備えるものであればフレキシャに限定されず、任意の他のフレキシブルプリント配線板であってもよい。
【0031】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のフレキシブルプリント配線板等によれば、複数の端子が高密度で配列された接続パッド部において、端子間の絶縁性を確保し、かつ接続パッド部そのものの耐久性を高めることができる。また、感光性ポリイミドやそれに対応する現像液を用いずに、通常の非感光性ポリイミド、エッチング法を用いるので、材料コストを大きく低減できる。かつ製造工程の省略も実現するので、製造コストを低減し、かつ製造期間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 金属板、1e 金属板の端面、2 ベース絶縁層、3 端子または銅箔、3a 端子の上面(またはNi/Auめっき層)、4 カバー絶縁層、7 開口部、7b 開口部の底面、10 フレキシャ、11 配線パターン、19 キャリッジアーム、20 ヘッドスライダ、20k ヘッドスライダの接続パッド、23 ヘッドスライダの端子、25 半田、50 ヘッドサスペンションアセンブリ、E 絶縁層の終端面、K 接続パッド部、P 接続パッド部の配列ピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続パッド部を備えるフレキシブルプリント配線板であって、
金属板と、ベース絶縁層と、該ベース絶縁層に接する配線等を形成するための配線パターンと、
前記配線パターンを覆うカバー絶縁層とを備え、
前記接続パッド部には、前記ベース絶縁層上において前記配線パターンから延在して終端する端子が、複数、配列され、
各端子において、前記カバー絶縁層は、該端子の終端部、および該端子の根元側の前記配線パターンを、その周りの前記ベース絶縁層とともに被覆しており、前記カバー絶縁層が該端子に対応する位置で開口する開口部においてのみ、該端子は露出し、該開口部の底面は該端子の上面のみで構成され、
前記カバー絶縁層の端面と前記ベース絶縁層の端面とは揃っており、前記接続パッド部の端面を形成していることを特徴とする、フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記接続パッド部の端において、前記金属板の端は、該接続パッド部の端面から離れて位置し、前記ベース絶縁層の裏面を、該接続パッド部の裏面の端で露出させていることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記開口部は、配列のピッチが150μm以下、該開口部の前記配列ピッチ方向に直交する方向の長さが75μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記カバー絶縁層を形成する樹脂層の主成分が、非感光性樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記カバー絶縁層が、非感光性樹脂液として非感光性ポリイミド前駆体インクを含み、酸成分として、ピロメリト酸二無水物(PMDA)を主成分に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)を含み、またジアミン成分として、p-フェニレンジアミン(PDA)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(mTBHG)、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)を含むことを特徴とする、請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
前記非感光性ポリイミド前駆体インクに、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(APDS)を含むことを特徴とする、請求項5に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板であって、前記接続パッド部においてハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドに接続されることを特徴とする、フレキシャ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板を備えることを特徴とする、電子機器。
【請求項9】
接続パッド部を備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
金属板上にベース絶縁層を備える基材シートを準備する工程と、
前記ベース絶縁層に接して、端子を含む配線パターンを形成する工程と、
前記端子を含む配線パターンを覆うカバー絶縁層を形成するために、非感光性樹脂液を前記ベース絶縁層に重ねるように塗工する工程と、
前記塗工された非感光樹脂液を、乾燥し、次いで熱硬化する工程と、
前記ベース絶縁層および熱硬化したカバー絶縁層を、エッチングする工程とを備え、
前記エッチング工程では、前記端子がエッチングストッパとなるようにカバー絶縁層に開口部をあけ、該端子が該開口部の底面を形成し、かつ、該カバー絶縁層の端面および前記ベース絶縁層の端面が揃って、前記接続パッド部の端面を形成するように、前記金属板がエッチングストッパとなるように該カバー絶縁層およびベース絶縁層をエッチングすることを特徴とする、フレキシブルプリント配線板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−20667(P2013−20667A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151974(P2011−151974)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】