説明

フレキシブル回路基板用途に有用な接着剤組成物およびそれに関連する方法

【課題】ハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物及び、そうした接着剤組成物を使用するカバーレイフィルムを提供する。
【解決手段】(1)エラストマー成分、(2)レゾール型フェノール樹脂、および(3)(2)レゾール型フェノール樹脂ではない難燃性樹脂を有する接着剤組成物を対象とする。さらに、(1)エラストマー成分、および(2)レゾール型フェノール樹脂を含み、(2)レゾール型フェノール樹脂の含有率は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して20から50重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、フレキシブル回路基板用途、例えばカバーレイフィルムの接着成分として有用な接着剤組成物に関する。より詳細には、本発明の接着剤組成物は、難燃性かつハロゲンフリーである。
【背景技術】
【0002】
近年のフレキシブルプリント回路(FPC)の開発は、設計自由度の増加に伴って電子デバイスを小型化する要求が高まっていることから、著しい進歩をとげている。特に携帯電話用のFPCの開発が盛んになっている。回路がその上に形成された基板は、回路を保護するために絶縁フィルムによって保護されることがしばしばである。絶縁フィルムと基板は通常、難燃性の接着剤によって結合される。絶縁フィルムは一般に、接着剤層と回路が接触しないように貼り合わされる。
【0003】
FPCに使用される接着剤の例は、特許文献1に、(A)エポキシ基を有し、ガラス転位温度が5から30℃である100質量部のアクリル系重合体、(B)1から20質量部のレゾール型フェノール樹脂、および(C)0.1から3質量部の促進剤を含むアクリル系接着剤組成物からなるアクリル系接着剤であることが開示されている。エポキシ樹脂を使用するエポキシ系接着剤も、広く使用されている。
【0004】
エポキシ系接着剤の利点は、架橋結合密度が比較的制御しやすく、エポキシ系接着剤が、ハロゲンフリー難燃性を含めた様々な要求に適合していることである。しかし、エポキシ樹脂は貯蔵安定性の問題を有する傾向があり、しばしば低温貯蔵または他の予防策を必要とする。
【0005】
これに対してアクリル系接着剤は、エポキシ系に比べて十分な貯蔵安定性を有し、かつ広範な基板に対して安定した接着強度を有することが知られている。しかし、アクリル系接着剤は一般に可燃性である。ハロゲン原子の導入は、難燃性を改善するための広く知られた技術である。しかし、環境に関する問題から、ハロゲンフリーの接着剤に対する要求が高まりつつある。
【0006】
難燃性充填剤の添加は、難燃性を改善するためのもう1つの技術である。しかし、従来型のアクリル系接着剤は、必要なレベルの難燃性を得るために、望ましくない多量の難燃性充填剤の添加を必要とする。多量の充填剤の添加は費用がかかる場合があり、またフィルムの接着性、柔軟性および強度を低下させる傾向がある。
【0007】
FPCに使用されるハロゲンフリーのアクリル系接着剤に関する技術の例は、特許文献2に、(A)熱可塑性樹脂、(B)熱硬化性樹脂、および(C)リン系難燃剤を少なくともそれぞれ1種類含み、さらに(D)水酸化マグネシウムを含むことを特徴とする熱硬化型の接着剤である、半導体デバイス用の接着剤組成物があることが開示されている。また、特許文献3にも、(A)リン系難燃剤、および(B)窒素系難燃剤を必須成分とし、樹脂組成物のリン含有率をX重量%、窒素含有率をY重量%としたとき、XおよびYが、7≦2X+Y≦16かつ2≦X≦5かつY≧1となること特徴とする難燃性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−139391公報
【特許文献2】特開2002−088338公報
【特許文献3】特開2003−119392公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を対象とし、またそうした接着剤組成物を使用するカバーレイフィルムも対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書中に開示された接着剤組成物は、およそ、i.12〜48重量部のエラストマー成分、ii.2〜55重量部のレゾール型フェノール樹脂、およびiii.20〜70重量部の難燃性芳香族系樹脂を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者等は、エラストマー成分の比率を下げること、ならびに
i.レゾール型フェノール樹脂以外の接着性の芳香族系樹脂を加えること、および/または
ii.レゾール型フェノール樹脂の割合を高めること
によって、エラストマー系のレゾール型フェノール接着剤の難燃性を改善すると同時に、(エレクトロニクス用途に対する)所望の接着特性も維持できることを見出した。驚くべきことに、本発明者らは、そうした配合物に比較的少量の難燃性充填剤を加え、同時に、所望の接着特性も維持しながら、優れた難燃性を得ることができることも見出した。
【0012】
一実施形態では、本開示による接着剤組成物は、(1)エラストマー成分と、(2)i.レゾール型フェノール樹脂、およびii.レゾール型フェノール樹脂以外の難燃性芳香族系樹脂を含む芳香族系樹脂とを含む。「難燃性芳香族系樹脂」とは、少なくとも50重量パーセントの芳香族重合体を含み、それによって、簡易版のUL94(以下では「UL94−SV」と呼ぶ、または「UL94−SV燃焼試験」と呼ぶこともある)に合格できる樹脂を意味することを意図している。UL94−SV燃焼試験の手順は、以下のとおりである。
【0013】
1.樹脂を溶媒に溶かす、
2.溶液を厚さ25ミクロンのポリイミドフィルム上でキャストする、
3.溶媒を完全に揮発させ除去する、
4.得られた試験片を20cm×5cmの試料に切断する、
5.試験片を曲げ、13mmの直径を有し、ポリイミドフィルムが外側を向いた縦軸方向の円筒構造にする、
6.構造を維持するために、円筒の一端をステープルで留める、
7.3秒間、試験片を縁部から炎で燃焼させる、
8.試験片が反対側の縁部まで燃焼したかどうかを測定する(試験片の反対側の縁部が燃焼した場合、燃焼試験には不合格であり、そうでなければ試験片は合格である)。
【0014】
「難燃性芳香族系樹脂」は、UL94−SV燃焼試験に合格する任意の芳香族系樹脂を意味することを意図している。本発明の接着剤組成物を用いて、カバーレイフィルムを製造することができる。カバーレイフィルムに適合させるときには、接着剤組成物をシートの形にするが、本発明における「接着剤組成物」の概念は、シートの形だけではなく、シートに成形される前の液体も含む。接着剤組成物の構造上の要素について以下に説明する。
【0015】
(1)エラストマー成分
本発明では、柔軟性を与えるためにエラストマー成分を加える。エラストマー成分は、一般に接着性の改善にも寄与する。エラストマー成分とは、分子鎖のからみ合いによって生じた弾性を有する成分を指す。温度に応じて、重合体は、固体(<Tg)、ガラス(Tg< <Tm)または液体(Tm<)の形をとることができる。本発明のエラストマー成分は、一般に室温(25℃)においてガラス状である。いくつかの実施形態では、エラストマー成分は、i.アクリル系重合体、ii.ブタジエン系エラストマー、iii.ポリアミド、iv.ポリエステル、またはv.iからivの任意のものの混合物である。いくつかの実施形態では、エラストマー成分は、i.酸成分含有エチレン/アクリル系共重合体、ii.酸成分含有アクリル系エラストマー、iii.酸成分含有ブタジエン系エラストマー、またはiv.i.からiiiの任意のものの混合物である。これらをエラストマー成分として含むことよって、一般に接着性および柔軟性が改善されよう。
【0016】
いくつかの実施形態では、酸成分には、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基およびフェノール性水酸基が含まれる。いくつかの実施形態では、安定性を改善するためにカルボキシル基が好ましい。酸成分は、エラストマー成分末端の酸処理によって、または単量体の形の酸成分含有化合物の併用によって導入することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、エチレン/アクリル系共重合体は、エチレン−アクリル酸アルキル−アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸モノエステル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−スチレン共重合体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。市販の製品には、Bond Fast(商標)7M(住友化学)、Elvaloy(登録商標)4051、Vamac(登録商標)GおよびVamac(登録商標)GLS(いずれも三井・デュポンポリケミカル製)が含まれる。いくつかの実施形態では、エチレン/アクリル系共重合体は、2種類以上のエチレン/アクリル系共重合体の混合物として使用される。
【0018】
アクリル系エラストマーは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする重合体である。それらは、溶液重合、乳化重合、懸濁重合またはバルク重合の任意のものによって調製することができる。アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルは、アクリル系接着剤組成物に柔軟性を付与することになろう。いくつかの実施形態では、アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、メタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸イソデシル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ブタジエン系エラストマーには、アクリロニトリルとブタジエンの共重合によって得られる、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体エラストマーが含まれる。いくつかの実施形態では、酸成分を導入するために、末端をカルボキシル化することができる。酸成分は、アクリロニトリルおよびブタジエンと共に、アクリル酸などのカルボキシル基を含有する重合可能な単量体を三元共重合することによって導入することもできる。いくつかの実施形態では、ブタジエン系エラストマーには、Nipol(商標)1072およびNipol(商標)1072J(どちらも日本ゼオン製)、Krynac(商標)X7.5(Bayer)、Hycar CTBN1300XB、CTBN1300X15およびCTBNX1300XB(いずれもBF Goodrich Chemical製)、ならびにPHR−1H(JSR製)が含まれる。いくつかの実施形態では、ブタジエン系エラストマーは2種類以上の混合物として使用される。
【0019】
いくつかの実施形態では、エラストマー成分は、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55から60重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合される。他の実施形態では、エラストマー成分は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、15、20、25、30、35、40、45および48重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合される。
【0020】
別の実施形態では、エラストマー成分、レゾール型フェノール樹脂および難燃性芳香族系樹脂の総量を基準として用いると、エラストマー成分は、40、45、50、55、60、65、70および75重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合される。別の実施形態では、エラストマー成分は、50、55および60重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合される。
【0021】
(2)レゾール型フェノール樹脂
本発明では、エラストマー成分を3次元的に架橋し、耐熱性を改善するために、レゾール型フェノール樹脂を配合する。レゾール型フェノール樹脂は3次元の網状構造を有する樹脂であり、一般にフェノールおよびホルムアルデヒドの出発原料を用いて合成される。レゾール型フェノール樹脂の分子量、軟化点およびOH当量は、特に制限されない。
【0022】
いくつかの実施形態では、レゾール型フェノール樹脂には、フェノール、ビスフェノールA、p−t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、p−クミルフェノールおよび他のそうしたアルキルフェノール類、p−フェニルフェノール、ならびにクレゾールからなる群から選択された出発原料から調製されるものが含まれる。
【0023】
市販のレゾール型フェノール樹脂の例には、Nikanol(商標)(フドー株式会社)、Shonol(商標)(昭和高分子株式会社)、Sumilite(商標)樹脂(住友ベークライト)、Phenolite(商標)(大日本インキ)、およびBKS(商標)樹脂(Georgia−Pacific Resin)が含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、レゾール型フェノール樹脂は、固体または液体の形とすることができる。他の実施形態では、架橋結合密度の観点から液体が好ましい。
【0025】
いくつかの実施形態では、レゾール型フェノール樹脂は、0.6、1、5、10、15、20、25、30、35、40および44重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合されることが好ましい。別の実施形態では、レゾール型フェノール樹脂は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、1.5、2.5、3.5、4.5、5、5.5、10、10.5、15、15.5、20、20.5、30、30.5および40重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合されることが好ましい。この範囲によって、良好な接着特性が保証されよう。
【0026】
いくつかの実施形態では、エラストマー成分、レゾール型フェノール樹脂および難燃性芳香族系樹脂の総量を基準として用いると、レゾール型フェノール樹脂は、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50から55重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合されることが好ましい。この範囲によって、良好な接着特性が保証されよう。
【0027】
(3)レゾール型フェノール樹脂以外の難燃性芳香族系樹脂
本発明において、レゾール型フェノール樹脂以外の難燃性芳香族系樹脂とは、燃焼試験に従って燃焼させたとき、反対側の縁部まで燃焼しないものである。燃焼試験は、簡易版のUL94である(本明細書ではUL94−SVまたはUL94−SV燃焼試験と呼ぶ)。UL94−SV燃焼試験の手順は以下のとおりである。
【0028】
1.樹脂を溶媒に溶かす、
2.溶液を厚さ25ミクロンのポリイミドフィルム上でキャストする、
3.溶媒を完全に揮発させ除去する、
4.得られた試験片を20cm×5cmの試料に切断する、
5.試験片を曲げ、13mmの直径を有し、ポリイミドフィルムが外側を向いた縦軸方向の円筒構造にする、
6.構造を維持するために、円筒の一端をステープルで留める、
7.3秒間、試験片を縁部から炎で燃焼させる、
8.試験片が反対側の縁部まで燃焼したかどうかを測定する(試験片の反対側の縁部が燃焼した場合、燃焼試験には不合格であり、そうでなければ試験片は合格である)。
【0029】
炎の大きさ、およびどのように炎をあてるかについての条件は、UL94、「11.5 Procedure of Thin Material Vertical Burning Test、VTM-0 (p.26)」に記載された方法に従う。試験片は、ASTM D618(ISO291)に従って、最低48時間、23±2℃および相対湿度50±5パーセントであらかじめ調整される。すべての試験片は、15〜35℃および相対湿度45〜75パーセントの実験室環境において、UL94「6. Conditioning (p.9)」に記載された方法によって試験される。
【0030】
本発明において、難燃性芳香族系樹脂は、接着性および難燃性を与えるために配合される。
【0031】
いくつかの実施形態では、難燃性芳香族系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PPT)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などの芳香族ポリエステル類、芳香族ウレタン樹脂、芳香族ポリアミド類(PA)、ポリカーボネート類(PC)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂、ポリフェニレンエーテル類(PPE)、変性PPE、芳香族ポリイミド類(PI)、芳香族ポリアミドイミド類(PAI)、芳香族ポリエーテルイミド類(PEI)、芳香族ポリスルホン類(PSU)、変性芳香族PSU、ポリエーテルスルホン類(PES)、芳香族ポリケトン類(PK)、芳香族ポリエーテルケトン類(PEK)、ノボラックフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ならびにエポキシ樹脂からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、難燃性芳香族系樹脂を2種類以上の混合物として使用することができる。他の実施形態では、エラストマー成分との適合性の観点から、ノボラックフェノール樹脂およびキシレン変性フェノール樹脂が好ましい難燃性芳香族系樹脂である。フェノール樹脂も一般にこうした特性を有し、広い範囲のフェノール樹脂を本発明に採用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、難燃性芳香族系樹脂は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、6.9、7.5、8.5、10.5、12.5、14.5、16.5、18.5、20.5、22.5、24.5、26.5、28.5、30.5、32.5、34.5、36.5、38.5、40.5、42.5、44.5および47.4重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合される。
【0033】
エラストマー成分、レゾール型フェノール樹脂および難燃性芳香族系樹脂の総量を基準として用いると、エラストマー成分は、40、45、50、55、60、65および75重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)量で配合されることが好ましい。この範囲によって、一般に良好な接着特性が保証されよう。
【0034】
本発明の一実施形態では、レゾール型フェノール樹脂および難燃性芳香族系樹脂が組み合わされ、レゾール型フェノール樹脂および難燃性の芳香族系樹脂の合計の含有率が、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、0.6、1、1.5、5、10、15、20、25、30、35、40および44重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内であることが好ましい。エラストマー成分、レゾール型フェノール樹脂および難燃性芳香族系樹脂の総量を基準として用いると、レゾール型フェノール樹脂および難燃性芳香族系樹脂の合計の含有率が、25、30、35、40、45、50、55および60重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内であることが好ましい。この範囲によって、一般に良好な接着特性が保証されよう。
【0035】
(4)難燃性充填剤
本発明では、難燃性を助ける、剥離安定性(接着剤の密着および剥離)ならびに吸湿性を安定化するなどの目的で、難燃性充填剤を配合することができる。任意の難燃性充填剤を用いることができるが、さらに難燃性を高める観点から、FPCの特性に悪影響を及ぼす恐れのない範囲で加えることが好ましい。レゾール型フェノール樹脂の量を増やしたとき、または難燃性芳香族系樹脂も加えたときには、少量の難燃性充填剤によって接着剤の難燃性を著しく高めることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、難燃性充填剤は有機成分でも無機成分でもよい。いくつかの実施形態では、難燃性充填剤は、リン系難燃剤であるポリリン酸メラミンの誘導体、ホスホン酸アルミニウム、窒素系難燃剤であるシアヌル酸メラミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態では、難燃性の有効度の観点から、ポリリン酸メラミンの誘導体、ホスホン酸アルミニウムおよび混合物が好ましい。
【0037】
一実施形態では、リン系難燃剤であるホスホン酸アルミニウムおよびポリリン酸メラミンの誘導体を用いるとき、リン原子に換算した含有率は、すべての溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して少なくとも3重量%である。別の実施形態では、リン原子に換算した含有率は、すべての溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して4.5重量%以上である。一般的には、含有率が大きいほど難燃性の効果が大きくなる。したがって、少量の添加で難燃性を高めることができる。リン原子に換算した最大含有率は、特に制限されないが、難燃性以外の特性に対する効果を考慮すると、含有率は通常、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して5重量%である。
【0038】
換言すれば、本発明の第2の態様は、従来型の接着剤組成物よりレゾール型フェノール樹脂の含有率が高い接着剤組成物に関する。これによって、接着剤組成物の難燃性が高まる傾向になることが明らかになった。特に難燃性充填剤を用いる場合、少量の難燃性充填剤によって難燃性を著しく高めることができる。
【0039】
(1)エラストマー成分
本発明では、柔軟性を与えるためにエラストマー成分を加える。エラストマー成分は通常、接着性の改善にも寄与する。エラストマー成分とは、分子鎖のからみ合いによって生じた弾性を有する成分を指す。温度に応じて、重合体は、固体(<Tg)、ガラス(Tg< <Tm)または液体(Tm<)の形をとる。エラストマー成分は、室温(25℃)においてガラス状である。エラストマー成分の例には、アクリル系重合体、ブタジエン系エラストマー、ポリアミド類およびポリエステル類が含まれる。特に望ましいものは、酸成分含有エチレン/アクリル系共重合体、酸成分含有アクリル系エラストマー、および酸成分含有ブタジエン系エラストマーである。これらをエラストマー成分として含むことよって、接着性および柔軟性が改善される。
【0040】
いくつかの実施形態では、酸成分として含まれる官能基には、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基およびフェノール性水酸基が含まれる。いくつかの実施形態では、安定性の観点からカルボキシル基が好ましい。酸成分は、エラストマー成分末端の酸処理によって、または単量体の形の酸成分含有化合物を組み合わせて使用することによって導入するこいくつかの実施形態では、無機充填剤を前述の難燃剤と組み合わせることができる。一実施形態では、無機充填剤は、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩;ケイ酸カルシウムなどの金属ケイ酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリコーンオキサイド(silicone oxide)、酸化モリブデンなどの金属酸化物;窒化アルミニウムなどの金属窒化物;ホウ酸アルミニウムウィスカー、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウムなどのホウ酸塩化合物;窒化ホウ素、および結晶質または非晶質のシリカからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、無機充填剤は2種類以上の組合せとして使用される。
【0041】
いくつかの実施形態では、防水性および樹脂マトリックスに対する無機充填剤の接着性を改善するために、充填剤は、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤などの処理剤を用いた疎水化処理を受けていることが好ましかろう。そうした疎水化処理によって、樹脂に対する充填剤の接着性が改善され、また結果として得られるフレキシブルプリント配線用の基板の耐熱性および耐吸湿性も改善されよう。
【0042】
難燃剤を加える量は、難燃性充填剤が難燃性の改善に及ぼす効果に従って調節することができる。いくつかの実施形態では、難燃性を高めるのにきわめて効果的なポリリン酸メラミンやアルミニウムホスフィン(aluminum phosphine)などの充填剤を用いるとき、その量は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39および40重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内である。いくつかの実施形態では、高い比重を有する水酸化アルミニウムなどの充填剤を用いるとき、その量は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69および70重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内である。難燃性を高めるのに異なる効果を有する2種類以上の充填剤を組み合わせて用いるときには、その添加量を充填剤の能力によって決めることができる。
【0043】
(5)他の成分
いくつかの実施形態では、前述の成分に加えて、顔料、レベリング剤、脱泡剤、イオン捕捉剤、シランカップリング剤、それらの混合物などを接着剤組成物に加えることもできる。シランカップリング剤は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
接着剤組成物の成分は通常、その組成物の適用を可能にする溶媒に溶解される。いくつかの実施形態では、溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、エタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される。これらは、単独で、または意図される用途に適した任意の割合に組み合わせて用いることができる。いくつかの実施形態では、溶解度の観点から、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエンおよびキシレンが好ましい。
【0045】
本発明の第2の態様は、(1)エラストマー成分、および(2)レゾール型フェノール樹脂を含む接着剤組成物であり、(2)レゾール型フェノール樹脂の量は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、7.5、10、15、20、25、30、35、40、45および48重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内である。
【0046】
いくつかの実施形態では、エチレン/アクリル系共重合体は、エチレン−アクリル酸アルキル−アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−マレイン酸モノエステル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−スチレン共重合体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。市販の製品には、Bond Fast(商標)7M(住友化学)、Elvaloy(登録商標)4051、Vamac(登録商標)GおよびVamac(登録商標)GLS(いずれも三井・デュポンポリケミカル製)が含まれる。
【0047】
アクリル系エラストマーは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする重合体である。それらは、溶液重合、乳化重合、懸濁重合またはバルク重合の任意のものによって調製することができる。アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルは、アクリル系接着剤組成物に柔軟性を付与する。いくつかの実施形態では、アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、メタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸イソデシル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アクリル系エラストマーを2種類以上の混合物として使用することができる。
【0048】
ブタジエン系エラストマーの例には、アクリロニトリルとブタジエンの共重合によって得られる、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体エラストマーが含まれる。こうした例では、酸成分を導入するために、末端をカルボキシル化することができる。酸成分は、アクリロニトリルおよびブタジエンと共に、アクリル酸などのカルボキシル基を含有する重合可能な単量体を三元共重合することによって導入することもできる。ブタジエン系エラストマーの例には、Nipol(商標)1072およびNipol(商標)1072J(どちらも日本ゼオン製)、Krynac(商標)X7.5(Bayer)、Hycar CTBN1300XB、CTBN1300X15およびCTBNX1300XB(いずれもBF Goodrich Chemical製)、ならびにPHR−1H(JSR製)が含まれる。いくつかの実施形態では、ブタジエン系エラストマーを2種類以上の混合物として使用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、エラストマー成分は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、12、15、20、22、25、28、30、32、35、38、40、42、45、48、50、52、55、58および60重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内で配合されることが好ましい。
【0050】
別の実施形態では、エラストマー成分およびレゾール型フェノール樹脂の総量を基準として用いると、エラストマーは、40、45、50、55、60、65、70および75重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内で配合されることが好ましい。この範囲によって、良好な接着特性が保証されよう。
【0051】
(2)レゾール型フェノール樹脂
本発明では、エラストマー成分を3次元的に架橋し、耐熱性を改善するために、レゾール型フェノール樹脂を配合する。レゾール型フェノール樹脂は3次元の網状構造を有する樹脂であり、一般にフェノールおよびホルムアルデヒドの出発原料を用いて合成される。レゾール型フェノール樹脂の分子量、軟化点およびOH当量は、特に制限されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、レゾール型フェノール樹脂には、フェノール、ビスフェノールA、p−t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、p−クミルフェノール、および他のそうしたアルキルフェノール類、p−フェニルフェノール、ならびにクレゾールからなる群から選択された出発原料から調製されるものが含まれる。
【0053】
市販のレゾール型フェノール樹脂の例には、Nikanol(商標)(フドー株式会社)、Shonol(商標)(昭和高分子株式会社)、Sumilite(商標)樹脂(住友ベークライト)、Phenolite(商標)(大日本インキ)、およびBKS(商標)樹脂(Georgia−Pacific Resin)が含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、レゾール型フェノール樹脂は、固体または液体の形とすることができる。いくつかの実施形態では、架橋結合密度の観点から液体が好ましい。
【0055】
本発明の第2の態様では、接着剤組成物は比較的多量のレゾール型フェノール樹脂を含む。いくつかの実施形態では、レゾール型フェノール樹脂は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、7.5、10、12、15、20、22、25、30、32、35、40、42、45および48重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内で配合される。
【0056】
別の実施形態では、エラストマー成分およびレゾール型フェノール樹脂の総量を基準として用いると、レゾール型フェノール樹脂は、25、30、35、40、45、50、55および60重量%の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内で配合されることが好ましい。
【0057】
本発明の第2の態様に関連する接着剤組成物も、必要に応じて、無機充填剤、顔料、レベリング剤、脱泡剤、イオン捕捉剤、シランカップリング剤などを含むことができる。接着剤組成物の成分は通常、その組成物の適用を可能にする溶媒に溶解される。これらは本発明の第1の態様において説明したので、ここではこれ以上詳しく述べない。
【0058】
以下では、液体の接着剤組成物を用いてカバーレイフィルムを形成する方法について説明する。
【0059】
本発明の接着剤組成物は、剥離紙またはポリイミドフィルムに塗布され、乾燥させると、シートの形の接着剤組成物が得られる。コーティング法は特に限定されない。例には、コンマコーターおよびリバースロールコーターが含まれる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶媒が1%以下であることが好ましい。1%を超えると、FPCの加圧中に残留溶媒が泡立ち、膨らみが生じることがある。乾燥条件は、使用した溶媒に応じて、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135および140℃の任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内の温度における迅速な加熱および乾燥を伴うことが好ましい。
【0060】
乾いた接着フィルムの厚さは、必要に応じて変えることができる。いくつかの実施形態では、乾いた接着フィルムの厚さは、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190および200ミクロンの任意の2つの間の(任意選択で任意の2つを含む)範囲内である。接着フィルムが5ミクロン未満であると、層間絶縁の信頼性が低下する。フィルムの厚さが200ミクロンを超えると、十分に乾燥させることができず、残留溶媒の量が増え、FPC製造の際、加圧中に残留溶媒が膨れを起こすことがある。
【0061】
シートの形の接着剤組成物をポリイミドフィルム上に成形するときには、必要に応じて反対側の面上に剥離紙が適用される。シートの形の接着剤組成物を剥離紙上に成形するときには、必要に応じて反対側の面上にポリイミドフィルムを適用することができる。カバーレイフィルムは一般に、それだけには限らないが、ポリイミドフィルム、接着シートおよび剥離紙を備えた3層構造を有し、また他の構造を有することもできる。
【0062】
本発明に使用することができる剥離紙の例には、それだけには限らないが、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのシーラーを設け、次いで適用された層の上に、シリコーン、フッ素またはアルキド樹脂ベースの剥離剤が塗布されたもの、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などの様々なオレフィンフィルム単独、および前述の剥離剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが含まれる。
【実施例】
【0063】
各実施例では、以下の材料を用いた。
【0064】
(エラストマー成分)
エラストマー成分A:エチレンアクリル系エラストマー Vamac(登録商標)MR(E.I.du Pont de Nemours and Company)
エラストマー成分B:アクリル樹脂(酢酸ブチル:アクリロニトリル:メタクリル酸=55:40:5)
エラストマー成分C:アクリル樹脂(酢酸ブチル:アクリロニトリル:メタクリル酸=85:5:10)
エラストマー成分D:変性アクリルブタジエン系エラストマー Nipol1072J(日本ゼオン)
(レゾール型フェノール樹脂)
レゾール型フェノール樹脂A:PR−1440M(フドー)
レゾール型フェノール樹脂B:GRL(フドー)
レゾール型フェノール樹脂C:BLS−722(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂D:BKS−2710C(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂E:CKM−912(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂F:CKM−983(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂G:BRE−174(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂H:CRM0803(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂I:BKS−355(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂J:BKS−2750(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂K:CKM−1282(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂L:CKM−1634(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂M:BRS−324(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂N:BLS−3122(昭和高分子)
レゾール型フェノール樹脂O:PR−175(住友ベークライト)
レゾール型フェノール樹脂P:PR−23(住友ベークライト)
レゾール型フェノール樹脂Q:PR−50232(住友ベークライト)
レゾール型フェノール樹脂R:PR−14170(住友ベークライト)
レゾール型フェノール樹脂S:TD−773(大日本インキ)
レゾール型フェノール樹脂T:TD−2615(大日本インキ)
レゾール型フェノール樹脂U:TD−2266(大日本インキ)
レゾール型フェノール樹脂V:J−325(大日本インキ)
レゾール型フェノール樹脂W:GP−2600(Georgia−Pacific Chem.)
レゾール型フェノール樹脂X:GP−2900(Georgia−Pacific Chem.)
レゾール型フェノール樹脂Y:GP−2901(Georgia−Pacific Chem.)
(難燃性芳香族系樹脂)
難燃性芳香族系樹脂A:ノボラックフェノール樹脂 Y−50(フドー)
難燃性芳香族系樹脂B:ノボラックフェノール樹脂 Y−100(フドー)
難燃性芳香族系樹脂C:ノボラックフェノール樹脂 Y−1000(フドー)
難燃性芳香族系樹脂D:ノボラックフェノール樹脂 H(フドー)
難燃性芳香族系樹脂E:ノボラックフェノール樹脂 HP−150(フドー)
難燃性芳香族系樹脂F:ノボラックフェノール樹脂 HP−120(フドー)
難燃性芳香族系樹脂G:ノボラックフェノール樹脂 HP−100(フドー)
難燃性芳香族系樹脂H:ノボラックフェノール樹脂 HP−210(フドー)
難燃性芳香族系樹脂I:ノボラックフェノール樹脂 P−100(フドー)
難燃性芳香族系樹脂J:ノボラックフェノール樹脂 CKM−1634(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂K:ノボラックフェノール樹脂 CKM−1636(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂L:ノボラックフェノール樹脂 CKM−1737(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂M:ノボラックフェノール樹脂 CKM−1282(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂N:ノボラックフェノール樹脂 CKM−908(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂O:ノボラックフェノール樹脂 CRM−0909(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂P:ノボラックフェノール樹脂 CKM−2400(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂Q:ノボラックフェノール樹脂 CKM−2620(昭和高分子)
難燃性芳香族系樹脂R:ノボラックフェノール樹脂 PR−12686R(住友ベークライト)
難燃性芳香族系樹脂S:ノボラックフェノール樹脂 PR−13349(住友ベークライト)
難燃性芳香族系樹脂T:ノボラックフェノール樹脂 PR−50235A(住友ベークライト)
難燃性芳香族系樹脂U:ノボラックフェノール樹脂 PR−19900(住友ベークライト)
難燃性芳香族系樹脂V:ノボラックフェノール樹脂 TD−2645(大日本インキ)
難燃性芳香族系樹脂W:ノボラックフェノール樹脂 TD−1090(大日本インキ)
難燃性芳香族系樹脂X:ノボラックフェノール樹脂 TD−2640(大日本インキ)
難燃性芳香族系樹脂Y:ノボラックフェノール樹脂 TD−3130(大日本インキ)
以上の難燃性芳香族系樹脂はすべて、燃焼試験に合格している。例えば、この燃焼試験に基づいて燃焼させたとき、ポリイミドフィルム上のレゾール型フェノール樹脂A、レゾール型フェノール樹脂F、レゾール型フェノール樹脂O、レゾール型フェノール樹脂V、レゾール型フェノール樹脂Wは反対側の縁部まで燃焼しない。
【0065】
(難燃性充填剤)
難燃性充填剤A:ポリリン酸メラミン PHOSMEL−100(日産化学工業)リン原子ベースの含有率=15重量%
難燃性充填剤B:ポリリン酸メラミン PHOSMEL−200(日産化学工業)リン原子ベースの含有率=12重量%
難燃性充填剤C:ホスホン酸アルミニウム OP935(Clariant)リン原子ベースの含有率=23重量%
難燃性充填剤D:ホスホン酸アルミニウム OP930(Clariant)リン原子ベースの含有率=23重量%
難燃性充填剤E:ポリリン酸メラミン Melapure*200/70(Ciba Specialty Chemicals)リン原子ベースの含有率=13重量%
難燃性充填剤F:水酸化アルミニウム BF013S(日本軽金属)リン原子ベースの含有率=0重量%
(溶媒)
メチルエチルケトン
【0066】
[実施例1]
溶媒を除く接着剤組成物の総量に基づき、樹脂成分としてVamac(登録商標)MR(E.I.du Pont de Nemours and Company)35g、レゾール型フェノール樹脂としてPR−1440M(フドー)17g、難燃性芳香族系樹脂としてY−50(フドー)19g、難燃性充填剤としてPHOSMEL−100(日産化学工業)30g、および溶媒としてメチルエチルケトン100gを、すべて一緒に500mLのガラスのセパラブルフラスコに入れた。内容物を、室温で12時間激しく攪拌した。攪拌後、内容物を周囲圧力で濾過し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物を以下の方法で評価した。
難燃性:UL規格94に基づく(VTM−0に合格するかを評価)。
接着特性:JIS C6481に基づいて90°剥離強さ(銅箔)を測定した。
エッジング後の接着特性:接着性を評価するのに用いたのと同じ試験片を、85℃および85RH%のオーブン内で24時間処理し、前述の接着特性の評価と同じ方法で特性を決定した。
【0067】
[実施例2から34、および比較例1から5]
表1および2の成分および量を用いることを除き、実施例1と同じ方法で各接着剤樹脂組成物を調製および評価した。
【0068】
表1および2に示すように、エラストマー成分65重量%、レゾール型フェノール樹脂5重量%、および難燃性充填剤30重量%(比較例1、2、3および5)の場合には、難燃性の基準であるVTM−0を満足させることができなかった。難燃性を改善するために、エラストマー成分55重量%、レゾール型フェノール樹脂5重量%、および比率を高めた難燃性充填剤40重量%を混合すると、難燃性は合格となったが、接着性は低下した(比較例4)。それに対して、本発明の接着剤組成物は、難燃性および接着性に優れ、しかもハロゲンフリーであった。
【0069】
【表1−1】

【0070】
【表1−2】

【0071】
【表1−3】

【0072】
【表2−1】

【0073】
【表2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、
A.12〜48重量部のエラストマー成分、
B.2〜55重量部のレゾール型フェノール樹脂、および
C.20〜70重量部の難燃性芳香族系樹脂
を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
20〜70重量部の難燃性充填剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記エラストマー成分は、アクリル系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、およびそれらの混合物からなる群から選択された合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記難燃性芳香族系樹脂は、ノボラックフェノール樹脂、キシレン変性フェノール樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記難燃性充填剤は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対してリンの含有率が少なくとも3重量パーセントである、ポリリン酸メラミン系の難燃性充填剤、ホスホン酸アルミニウムのリン系難燃性充填剤、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
接着剤はシートの形であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
接着剤組成物であって、
A.エラストマー成分、および
B.溶媒を除く接着剤組成物の総量に対して、7.5から48重量%の量のレゾール型フェノール樹脂
を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項8】
難燃性充填剤をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記エラストマー成分は、エチレン/アクリル系共重合体、アクリル系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、およびそれらの混合物からなる群から選択された合成樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
ノボラックフェノール樹脂、キシレン変性フェノール樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択された難燃性芳香族系樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記難燃性充填剤は、溶媒を除く接着剤組成物の総量に対してリン原子ベースの含有率が少なくとも3重量パーセントである、ポリリン酸メラミンの誘導体、ホスホン酸アルミニウムのリン系難燃性充填剤、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記接着剤はシートの形であり、前記シートを難燃性の絶縁フィルムの上に貼り合わせて、カバーレイフィルムを形成することを特徴とする請求項6に記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−249637(P2009−249637A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94176(P2009−94176)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】