説明

フレームクランプ装置

【課題】接地面積の極小化を測ったフレームクランプ装置を提供することである。
【解決手段】環状フレームを支持するフレーム支持部38と、該環状フレームを該フレーム支持部38と協働して挟持するフレーム押さえ部46と、該フレーム押さえ部46を挟持位置と解放位置に位置付けるロータリーアクチュエータとを具備し、該ロータリーアクチュエータは、上端を切り取られた平面を有する円筒形状のエアシリンダ40と、該エアシリンダ40を貫通するように装着された回転軸42と、該チャンバー内に収容され該回転軸42に固定されたベーンと、一端が該回転軸42に固定され他端が該フレーム押さえ部46に固定されたアーム44とを含んだクレームクランプ装置で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートを介して環状フレームに支持された被加工物を保持するチャックテーブルの外周に配設されて、環状フレームを固定するフレームクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC,LSI等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、切削装置(ダイシング装置)によって分割予定ラインを切削して個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
ウエーハを切削する切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを有する切削ユニットと、ウエーハの分割予定ラインを検出して分割予定ラインに切削ブレードを位置づけるアライメントユニットとを少なくとも備えていて、ウエーハを高精度に切削することができる。
【0004】
切削装置では、半導体ウエーハは半導体ウエーハの外径よりも数センチメートル大きい内径(開口)を有する環状フレームにダイシングテープを介して支持されたウエーハユニットの形態でハンドリングされる。
【0005】
ウエーハユニットの環状フレームをチャックテーブルの外周に設けられたフレームクランプ装置によりクランプし、ダイシングの妨げにならないように環状フレームを押し下げた状態でウエーハのダイシングが実施される。
【0006】
ダイシング装置は年々小型化が進んでおり、フットプリント(接地面積)の縮小が各装置メーカーの課題となっている(例えば、特開2001−358093号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−341040号公報
【特許文献2】特開2008−205277号公報
【特許文献3】特開2001−358093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
あらゆる箇所の省スペース化によって装置を極限まで小型化したいという要求に反し、大きさが規格化されている環状フレームを固定するため、チャックテーブル周辺部は小型化が非常に難しい箇所である。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接地面積の極小化を図ったフレームクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、チャックテーブルの外周に配設され、粘着シートを介して被加工物を開口内に支持した環状フレームを固定するフレームクランプ装置であって、該環状フレームを支持するフレーム支持部と、該環状フレームを該フレーム支持部と協働して挟持するフレーム押さえ部と、該フレーム押さえ部を挟持位置と解放位置に位置付けるロータリーアクチュエータとを具備し、該ロータリーアクチュエータは、内部にチャンバーを有する円筒形状のシリンダと、該シリンダを貫通するように該シリンダに装着された回転軸と、該チャンバー内に収容され該回転軸に固定されたベーンと、一端が該回転軸に固定され他端が該フレーム押さえ部に固定されたアームとを含み、該シリンダは該チャンバーに達しない程度まで上端を切り取られた平面を有し、該平面は該チャックテーブルの保持面及び該回転軸と平行であり、該フレーム押さえ部が挟持位置に回動されたとき、該アームの上端は該平面と同等程度の高さに設定されており、該フレーム押さえ部は、該解放位置に回動されたとき該シリンダが嵌合する切欠きを有していることを特徴とするフレームクランプ装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフレームクランプ装置によると、ロータリーアクチュエータのシリンダの上端を平面状に削り取った形状にし、フレーム押さえ部が解放位置に回動してもシリンダと緩衝しないようにフレーム押さえ部に切り欠きを設け、フレーム押さえ部を支持するアームを従来より短くしたことにより、フレーム押さえ部が解放位置に位置付けられたときのフレーム押さえ部の位置がチャックテーブルの中央により近くなり、チャックテーブル周囲のフレームクランプ装置が必要とする接地面積が小さくなるという効果を奏する。
【0012】
ロータリーアクチュエータは、内部のチャンバーに至らない程度にシリンダの上部を削って平坦にするだけなので大幅な改造は必要なく、フレーム押さえ部も解放位置でシリンダに噛み合う切欠きを形成するだけなので、簡単な改造で大きな効果を生むことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】切削装置の斜視図である。
【図2】ウエーハユニットの斜視図である。
【図3】本発明実施形態に係るフレームクランプ装置を具備したチャックテーブル機構の斜視図である。
【図4】図4(A)はフレーム押さえ部が解放位置に位置付けられた状態のチャックテーブルに保持されたウエーハユニットの一部断面側面図、図4(B)はフレーム押さえ部が挟持位置に位置付けられて環状フレームをクランプした状態のチャックテーブルに保持されたウエーハユニットの一部断面側面図である。
【図5】エアシリンダの縦断面図である。
【図6】図6(A)はフレーム押さえ部が解放位置に位置付けられた状態の実施形態に係るフレームクランプ装置の側面図、図6(B)はフレーム押さえ部が挟持位置に位置付けられた状態の実施形態に係るフレームクランプ装置の側面図である。
【図7】図7(A)はフレーム押さえ部が解放位置に位置付けられた状態の従来のフレームクランプ装置の側面図、図7(B)はフレーム押さえ部が挟持位置に位置付けられた状態の従来のフレームクランプ装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明実施形態のフレームクランプ装置を具備し、半導体ウエーハをダイシングして個々のチップ(デバイス)に分割することができる切削装置2の外観斜視図を示している。
【0015】
切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像ユニットによって撮像された画像が表示されるCRT等の表示ユニット6が設けられている。
【0016】
図2に示すように、ダイシング対象の半導体ウエーハWの表面においては、第1のストリートS1と第2のストリートS2とが直交して形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画された各領域にデバイスDが形成されている。
【0017】
ウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部が環状フレームFに貼着されてウエーハユニット15が形成される。ウエーハユニット15では、ウエーハWはダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、図1に示した収容カセット8中にウエーハユニット15が複数枚(例えば25枚)収容される。収容カセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。
【0018】
収容カセット8の後方には、収容カセット8から切削前のウエーハWを搬出するとともに、切削後のウエーハWを収容カセット8に搬入する搬出入ユニット10が配設されている。
【0019】
搬出入ユニット10はクランプ11を有しており、クランプ11がウエーハユニット15の環状フレームFを把持して、収容カセット8に対してウエーハユニット15を搬出及び搬入する。搬出入ユニット10はY軸方向に直線移動される。
【0020】
収容カセット8と搬出入ユニット10との間には、搬出入対象のウエーハユニット15が一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウエーハユニット15の環状フレームFをセンタリングする一対の位置決め部材14が配設されている。
【0021】
仮置き領域12の近傍には、ウエーハユニット15を吸着して搬送する旋回アームを有する搬送ユニット16が配設されており、仮置き領域12に搬出されたウエーハユニット15は、搬送ユニット16により吸着されてチャックテーブル19上に搬送され、このチャックテーブル19に吸引保持されるとともに、複数のフレームクランプ装置21により環状フレームFがクランプされて固定される。
【0022】
チャックテーブル19は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル19のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWの切削すべきストリートを検出するアライメントユニット20が配設されている。
【0023】
アライメントユニット20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像素子及び顕微鏡を有する撮像ユニット22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像ユニット22によって取得された画像は、表示ユニット6に表示される。
【0024】
アライメントユニット20の左側には、チャックテーブル19に保持されたウエーハWに対して切削加工を施す切削ユニット24が配設されている。切削ユニット24はアライメントユニット20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0025】
切削ユニット24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像ユニット22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0026】
25は切削加工の終了したウエーハユニット15を吸着してスピンナ洗浄ユニット27まで搬送する搬送ユニットであり、スピンナ洗浄ユニット27ではウエーハユニット15がスピン洗浄及びスピン乾燥される。
【0027】
図3を参照すると、本発明実施形態に係るフレームクランプ装置21を備えたチャックテーブル機構18の斜視図が示されている。チャックテーブル機構18の支持基台30上にはチャックテーブル19が搭載されている。チャックテーブル19は環状の枠体32と、枠体32に囲繞されたポーラスセラミックス等から形成された吸引保持部34を有している。
【0028】
支持基台30の中心部には図示しない負圧吸引源に接続された吸引路が形成されており、負圧吸引源を作動することにより、チャックテーブル19は吸引保持部34でウエーハWを吸引保持する。
【0029】
支持基台30には、円周方向に90度離間して4個のフレームクランプ装置21が取り付けられている。図4に示されるように、各フレームクランプ装置21は、支持基台30に一端が固定された一対のロッド36を有している。
【0030】
ロッド36の他端部はフレーム支持部38に取付位置が調整可能に連結されている。フレーム支持部38にはエアシリンダ40が固定されている。図5に示すように、エアシリンダ40はチャンバー48を有しており、チャンバー48内には回転軸42が挿入されている。回転軸42にはベーン50が固定されている。
【0031】
チャンバー48にはエア源に伝通された図示しない二つのポートが接続されており、一方のポートにエアを導入することによりベーン50がストッパ52に当接するまで時計回り方向に回転し、他方のポートにエアを導入することによりベーン50がストッパ52に当接するまで反時計回り方向に回転する。54はボルト穴である。
【0032】
図6に示されるように、エアシリンダ40の端面から突出した回転軸42にはアーム44が固定されており、このアーム44にはL形状のフレーム押さえ部46が固定されている。エアシリンダ40の反対側の端面からも回転軸42が突出しており、同様なアーム44が固定されている。
【0033】
図5に最もよく示されるように、エアシリンダ40の上端部はチャンバー48に達しない程度まで切り取られて平面40aに形成されている。また、図3に示されるように、フレーム押さえ部46には、フレーム押さえ部46が解放位置に位置付けられた状態でエアシリンダ40を嵌合する切欠き46aが形成されている。
【0034】
エアシリンダ40のチャンバー48内に挿入された回転軸42、回転軸42に固定されたベーン50、回転軸42の両端部に固定されたアーム44でロータリーアクチュエータを構成する。
【0035】
図4(A)を参照すると、フレームクランプ装置21のフレーム押さえ部46が解放位置に位置付けられた状態の一部断面側面図が示されている、この状態のフレームクランプ装置21は図6(A)に示された状態に対応する。
【0036】
図4(B)はフレームクランプ装置21のフレーム押さえ部46は挟持位置に回動されて環状フレームFをクランプした状態の一部断面側面図を示している。図4(B)に示されたフレームクランプ装置21の状態は図6(B)に対応する。
【0037】
図7を参照すると、従来のフレームクランプ装置の側面図が示されている。図7(A)は図6(A)に対応し、図7(B)は図6(B)に対応する。図7に示した従来のフレームクランプ装置においては、図6に示した本発明実施形態のフレームクランプ装置21と実質的に同一構成部分については同一符号を付している。
【0038】
フレーム押さえ部46が解放位置に位置付けられた状態の図6(A)と図7(A)を比較すると明らかなように、本実施形態のフレームクランプ装置21では、アーム44の長さを従来のアーム44Aに比べて短くしたことにより、フレーム押さえ部46をエアシリンダ40の外径内に収めることができ、フレームクランプ装置21の外周側への出っ張りをエアシリンダ40の半径L1に抑えることができる。
【0039】
これに対して、図7(A)に示された従来のフレームクランプ装置では、エアシリンダ40の上端部に切り欠かれた平坦部が形成されていないため、フレーム押さえ部46が挟持位置に回動された際にフレーム押さえ部46とエアシリンダ40との緩衝を避けるために、アーム44Aを長く形成する必要がある。
【0040】
よって、フレーム押さえ部46が解放位置に位置付けられた状態において、フレーム押さえ部46はエアシリンダ40の外周から更に外側方向に出っ張ることなり、L1<L2となる。
【0041】
即ち、本発明のフレームクランプ装置21では、フレーム押さえ部46を支持するアーム44の長さを従来より短くしたことにより、解放位置に位置付けられたときのフレーム押さえ部46の位置がチャックテーブル19の中央により近くなり、チャックテーブル19周囲のフレームクランプ装置21が必要とする接地面積を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0042】
W 半導体ウエーハ
T 粘着シート(ダイシングテープ)
F 環状フレーム
15 ウエーハユニット
18 チャックテーブル機構
19 チャックテーブル
21 フレームクランプ装置
35 エアシリンダ
36 ピストンロッド
38 フレーム支持部
40 エアシリンダ
40a 平坦面
44 アーム
46 フレーム押さえ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルの外周に配設され、粘着シートを介して被加工物を開口内に支持した環状フレームを固定するフレームクランプ装置であって、
該環状フレームを支持するフレーム支持部と、
該環状フレームを該フレーム支持部と協働して挟持するフレーム押さえ部と、
該フレーム押さえ部を挟持位置と解放位置に位置付けるロータリーアクチュエータとを具備し、
該ロータリーアクチュエータは、内部にチャンバーを有する円筒形状のシリンダと、該シリンダを貫通するように該シリンダに装着された回転軸と、該チャンバー内に収容され該回転軸に固定されたベーンと、一端が該回転軸に固定され他端が該フレーム押さえ部に固定されたアームとを含み、
該シリンダは該チャンバーに達しない程度まで上端を切り取られた平面を有し、該平面は該チャックテーブルの保持面及び該回転軸と平行であり、
該フレーム押さえ部が挟持位置に回動されたとき、該アームの上端は該平面と同等程度の高さに設定されており、
該フレーム押さえ部は、該解放位置に回動されたとき該シリンダが嵌合する切欠きを有していることを特徴とするフレームクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−33883(P2013−33883A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169936(P2011−169936)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】