説明

フレームラミネート用ポリウレタンフォーム

【課題】熱融着性と通気性を兼ね備えたフレラミネート用ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、整泡剤及び熱融着剤を含むポリウレタンフォーム形成組成物から形成されるフレームラミネート用のポリウレタンフォームであって、前記ポリオール成分は、ポリエステルブロックを有するブロック共重合体ポリオールを含み、該ブロック共重合体ポリオールの配合量は、前記ポリオール成分の合計量100重量部に対して20〜60質量部であることを特徴とするポリウレタンフォーム;及びポリウレタンフォームの表面に、通気孔を有する表皮が融着されていることを特徴とする積層体(特に、車両用シートパッド又は車両用シートに取り付けられるシートカバーに用いられる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームラミネート用ポリウレタンフォームに関し、特に、車両用シートの表面部への適用に好適な高通気性のフレームラミネート用ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームと平坦な布等を積層したラミネート材は、敷物等のインテリア材や、ソファ又は車両用シートの表面部材として広く用いられている。
【0003】
ここで、長尺の軟質ポリウレタンフォームを、平坦な布等と接着して接着積層体とする方法には、主に2つの方法がある。一つは、フレームラミネートによるものであり、もう一つは、接着剤を用いる方法である。
【0004】
フレームラミネートによる方法は、主に軟質ポリウレタンフォームのみに適用できる方法であり、軟質ポリウレタンフォームが火焔で溶融する性質を利用したものである。すなわち、長尺のウレタンフォームの表面に火焔を接触させ、ウレタンフォームの表面が溶融しているうちに表皮材を積層し、この積層体を圧着放置して接着、積層させるものである。この方法の最大の利点は、フォームと表皮との間に接着剤層が形成されないため、表皮面の風合い(感触、肌触り)が良いということである。
【0005】
このようなフレームラミネート法に用いられる軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分として、通常三官能のポリオールを用いて製造される。軟質ポリウレタンフォームは、樹脂化反応と発泡反応の競争反応により三次元樹脂化する(或いは硬化する)が、この三次元樹脂化(硬化)過程でセル膜が破れ、連通化することにより収縮現象もなく良好なフォームが得られるものの、一般的には、少なからずセル膜が残るので、フォームの通気性は低くなる。
【0006】
そこで、フォームにセル膜が残らないようにする手段としては、(1)軟質ウレタンフォームの製造後、熱、アルカリ等により後処理を行う方法がある。この方法によると、通気性のばらつきの少ない、良好な通気性を有するフォームが得られるが、熱処理の場合は後処理を密封室内で行う必要があり、フォーム形状もブロック形状のものに限定され、従ってサイズも限定される。アルカリ処理の場合はこの処理によるフォームの劣化のおそれがあり好ましくない。
【0007】
上記後処理工程を必要としない方法として、(2)ポリオール成分に対して50重量%以上100重量%未満の単一ジオール又はポリオール成分に対して総量で50重量%以上の複数の単一ジオールを含むポリエーテルポリオール、イソシアネート、水、触媒並びに発泡剤を含む配合を使用する方法(特許文献1)等が提案されている。この方法を利用してセル膜の問題を解決される。
【0008】
そして、上記方法の配合に対し、フレームラミネート性を付与する熱融着剤を添加することにより、フレームラミネート法に使用可能なロール状(シート状)の高通気性ウレタンフォームの製造が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−2970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載の配合に添加する熱融着剤の種類と量によっては、軟質ポリウレタンフォームの熱融着性は向上するが通気性が低下するとの不具合が生じる場合がある。これでは、セル膜の問題を解決した特許文献1に記載の配合の効果が十分に得られないことから、通気性を有する布等とフレームラミネート性が付与された軟質ポリウレタンフォームとにより製造される積層体においては、この布等の通気性までも軟質ポリウレタンフォームにより阻害される場合がある。例えば、車両用シート表面部の構成生地としてこの積層体を用い、このシートに腰掛けた場合にシート表面部に発汗等に起因する湿気がこもり、使用感が不快になるおそれがある。
【0011】
従って、本発明は、熱融着性と通気性を兼ね備えたフレラミネート用ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するための請求項1に記載の発明は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、整泡剤及び熱融着剤を含むポリウレタンフォーム形成組成物から得られるフレームラミネート用のポリウレタンフォームであって、前記ポリオール成分は、ポリエステルブロックを有するブロック共重合体ポリオールを含み、且つ該ブロック共重合体ポリオールを、前記ポリオール成分の合計量100質量部に対して20〜60質量部含んでいることを特徴とする。
【0013】
本発明のフレームラミネート用のポリウレタンフォームの好ましい態様を以下に列記する。
【0014】
(1)ブロック共重合体ポリオールが、ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体である。これにより、熱融着性に優れるウレタンフォームが得られる。
(2)熱融着剤は、亜リン酸エステルであり、当該亜リン酸エステルを、ポリオール成分の合計量100質量部に対して2〜8質量部含んでいることを特徴とする。亜リン酸エステルを上記配合量で使用することにより、更に十分な熱融着性と通気性とを得ることができる。
(3)ポリイソシアネート成分としては、2,4−TDI/2,6−TDIが70/30以下、特に60/40〜70/30の範囲にあるトリレジンイソシアネート(TDI)を含んでいることを特徴とする。このようなポリイソシアネート成分を使用することにより、さらに良好な通気性が得られやすい。
【0015】
本発明は、上記本発明のフレームラミネート用のポリウレタンフォームの表面に、通気孔を有する表皮が融着されていることを特徴とする積層体(特に、車両用シートの背もたれ面の構成生地として用いられる)にもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフレームラミネート用のポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム形成組成物において、ポリオール成分としてポリエステルブロックを有するブロック共重合体ポリオールを配合し、その割合を調整することにより、熱融着剤を含みながらも高い通気性を維持するポリウレタンフォームを形成することができる。すなわち、本発明のポリウレタンフォームは、良好なフレームラミネート性と高い通気性を兼ね備えたものである。
【0017】
従って、このフォームを用いることにより通気性に優れた積層体も容易に得ることができる。例えば、車両用シートの背もたれ面の構成生地としてこの積層体を用いた場合、背もたれ面の通気性が向上する。従って、雨や発汗により湿った衣類を着たままの状態でこのシートに腰掛けた場合、このシートの背もたれ面越しに衣類から蒸発した水分が背もたれ面を介して拡散可能であるので、快適な使用感が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の高い通気性と良好な熱融着性を兼ね備えたフレームラミネート用のポリウレタンフォームは、基本的に、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、整泡剤、触媒及び熱融着剤を主成分とするウレタンフォーム形成組成物から形成されている。
【0019】
ポリオール成分としては、本発明のポリエステルブロックを有する共重合体ポリオール(以下、ポリオールAと記す。)に加えて、ポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)又はポリエステルポリオール(これらポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールを合わせて、以下、ポリオールBと記す。)を使用する。
【0020】
ポリオールBとして使用可能なポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールを開始剤としたアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド等)付加体;ビスフェノールAのような多価フェノール類のアルキレンオキシド(同上)付加体を挙げることができる。さらに、リン酸、ポリリン酸(例えば、トリポリリン酸およびテトラポリリン酸)等の多価ヒドロキシ化合物、フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド縮合生成物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、メチレンビスオルソクロロアニリン、4,4’−及び2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン等のポリアミン類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド等の1種又は2種以上を付加させて得られるポリエーテルポリオール類;またはポリテトラメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。
【0021】
ポリオールBに用いられるポリエーテルポリオールを製造するために用いられる開始剤としては、上記の中では、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミンが好ましく、多価アルコール、及び多価フェノールがさらに好ましく、特に多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましい。とりわけジエチレングリコールが好ましい。
【0022】
また、ポリオールBにおけるポリエーテルポリオール成分には、上記ジオールを用いたもの以外に、例えば、前述のグリセリンベースにアルキレンオキシド(例えばプロピレンオキシド)を付加させたもの、2種のアルキレンオキシド(例えばプロピレンオキシドとエチレンオキシド)とランダム若しくはブロックで付加させたもの、多官能のものとしては、例えばサッカロースベースに上記と同様のものを付加させたポリエーテルポリオールも使用することができる。
【0023】
また、ポリオールBとして使用可能なポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビット等の少なくとも2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の1種又は2種以上と、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の少なくとも2個以上のカルボキシル基を有する化合物の1種又は2種以上から得られるポリエステルポリオールを挙げることができる。また、ポリカプロラクトンなどの環状エステルの開環重合体類等も使用することができる。
【0024】
ポリエステルブロックを有する共重合体ポリオール(ポリオールA)としては、ポリエステルブロックを含むどのようなポリオールでも良いが、例えば、ポリエーテルポリエステルブロック共重合体、ポリカーボネートポリエステルブロック共重合体、ポリカプロラクトンポリエステルブロック共重合体が挙げられる。中でも、ポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)とポリエステルポリオールの共重合体であるポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0025】
ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体ポリオールは、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールに、ポリカルボン酸無水物とアルキレンオキシドを反応させることにより得ることができる。ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体のポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)部分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールを開始剤としたアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド等)付加体;ビスフェノールAのような多価フェノール類のアルキレンオキシド(同上)付加体を挙げることができる。さらに、リン酸、ポリリン酸(例えば、トリポリリン酸およびテトラポリリン酸)等の多価ヒドロキシ化合物、フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド縮合生成物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、メチレンビスオルソクロロアニリン、4,4’−及び2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン等のポリアミン類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド等の1種又は2種以上を付加させて得られるポリエーテルポリオール類;またはポリテトラメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。更に、上記ジオールを用いたもの以外に、例えば、前述のグリセリンベースにアルキレンオキシド(例えばプロピレンオキシド)を付加させたもの、2種のアルキレンオキシド(例えばプロピレンオキシドとエチレンオキシド)とランダム若しくはブロックで付加させたもの、多官能のものとしては、例えばサッカロースベースに上記と同様のものを付加させたポリエーテルポリオールも使用することができる。
【0026】
ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体のポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)部分に対し、ポリエステルブロック部分を重合するための反応には、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド等)と、少なくとも2個以上のカルボキシル基を有する化合物(例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等)が用いられる。
【0027】
ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体中のポリエステルブロックの含有量は、一般に通常20〜60%、好ましくは35〜50%である。ポリエステルブロックの含有量が60%より多いとフォームの加水分解性が低下する。逆に20%より少ないと熱融着性が低下する。
【0028】
ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体は、配合するポリオール成分、すなわち、ポリオールAとポリオールBの合計量100質量部に対し一般に20〜60質量部、好ましくは30〜50質量部、とりわけ35〜50質量部の割合で添加される。配合するポリオール成分の合計量100質量部に対してこの共重合体の配合量が20質量部より少ないと樹脂強度の低下のために発泡性が低下し、良好なフォームが形成されなくなる。逆に、この共重合体の配合量が50質量部より多いと連通化が抑制されるために通気性が低下し、目的とする高い通気性と良好な熱融着性を兼ね備えたフォームが得られなくなる。
【0029】
ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体の平均官能基数は、通常2〜5、好ましくは2.5〜3.5であり、水酸基価は通常20〜60mg−KOH/g、好ましくは30〜60mg−KOH/gである。アルキレンオキシド含量は通常5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%である。
【0030】
ポリオールBは、上述のように、ポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)とポリエステルポリオールの何れか、又は両方ともを用いることができるが、好ましくはポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)が用いられる。ポリオールBの平均官能基数は、通常1〜4、好ましくは1.5〜2.5であり、水酸基価は通常100〜135mg−KOH/g、好ましくは110〜125mg−KOH/gである。
【0031】
ポリオール成分の平均分子量は、一般に1000〜3000であり、1000〜2000が好ましく、特に1300〜1700が好ましい。この値が1000未満或は3000を越える場合では、十分な通気量のポリウレタンフォームを得られず、またフォームを形成し得ない。本発明では、上記平均分子量を満たすように少なくとも2種以上のポリオール成分を用いることが好ましい。これにより発泡時の泡の連通化(破泡)を容易にすることができる。2種以上のポリオールの平均分子量の差(少なくとも一方との差)が400以上であることがより好ましい。
【0032】
また、ポリオール成分には、前述の開始剤に用いられた多価アルコールも含んでいても良い。
【0033】
ポリオール成分の平均水酸基価は50〜200mgKOH/gであることが好ましい。ポリオール成分の平均水酸基価が50mgKOH/gより低いと、フォームが柔らかく、また硬化速度も遅くなるため生産性が低下する傾向があり、一方、混合ポリオールの平均水酸基価が200mgKOH/gより高いと、フォームが硬くなり易い。
【0034】
ポリオール成分は、ウレタンフォーム形成組成物に対して、一般に30〜70質量%であり、40〜60質量%が好ましい。
【0035】
ポリイソシアネート成分としては、一般に、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等が、単体若しくは混合して使用される。本発明では、トリレンジイソシアネートが好ましい。熱融着性と通気性の両方を確保するためには、トリレンジイソシアネートの中でも、特に2,4−TDI/2,6−TDIが、70/30以下であることが、特に60/40〜70/30の範囲にあることが好ましい。これにより、熱融着性を確保しながら、本発明の特定の通気度が得られやすい。2,4−TDIは、2位と4位のイソシアネート基を有するTDIであり、2,6−TDIは、2位と6位のイソシアネート基を有するTDIである。
【0036】
ポリイソシアネート成分は、ウレタンフォーム形成組成物に対して、一般に30〜70質量%であり、40〜60質量%が好ましい。
【0037】
ポリイソシアネートとしては、上記以外に、例えば、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、及びシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族系ポリイソシアネートを、副成分として使用しても良い。
【0038】
本発明では、熱融着剤としては亜リン酸エステルが使用される。上記ポリオール成分配合と合わせて、この亜リン酸エステルの配合割合を調整することにより、さらに高い通気性を保持しつつ良好な熱融着性を有するポリウレタンフォームを得ることができる。亜リン酸エステルを一定の配合量で使用することにより、ポリウレタンフォームの融解温度が低下し、火焔であぶった際昇華せず糊状になり易いためであると考えられる。亜リン酸エステルとしては、亜リン酸アルキルエステル、亜リン酸アリールエステルを挙げることができ、上記アルキル基は一般に炭素原子数1〜12、好ましくは2〜10を有する基であり、またハロゲン(好ましくは塩素)で置換されていても良い。上記アリール基は一般に炭素原子数6〜16、好ましくは6〜10を有する基であり、またハロゲン(好ましくは塩素)で置換されていても良い。亜リン酸エステルとしては、モノエステル、ジエステルでも良いが、トリエステルが好ましい。
【0039】
亜リン酸エステルの好ましい例としては、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(クロロエチル)ホスファイトを挙げることができる。
【0040】
熱融着剤は、ポリオール成分の合計量100重量部に対し、一般に2〜8質量部、好ましくは2〜6質量部、特に好ましくは4〜6質量部の割合で添加する。熱融着剤の添加量が2質量部より少ないと、得られるポリウレタンフォームの融解温度が上昇し、ポリウレタンフォームシートを布等にフレームラミネートした際の剥離強度が低下する。逆に、添加量が8質量部より多いとポリウレタンフォームの融解温度が低下しすぎとなり、ポリウレタンフォームの通気性が低下する。
【0041】
触媒に用いられる化合物は、その種類及び使用量に特に制限はなく、公知のものが使用される。触媒としては、例えば、3級アミン類(トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等)、4級アンモニウム(テトラエチルヒドロキシルアンモニウム等)、イミダゾール類(イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等)等のアミン系触媒、有機スズ化合物(酢酸スズ、オクチル酸スズ、2−エチルヘキシル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズクロライド等)、有機鉛化合物(オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛)、有機ニッケル化合物(ナフテン酸ニッケル)等の有機金属系触媒等を挙げることができる。
【0042】
本発明では、3級アミン類と有機スズ化合物との併用が好ましい。
【0043】
発泡剤に用いられる化合物には、その種類及び使用量に特に制限はなく、公知のものが使用される。また発泡剤としては、水及び/又はハロゲン置換脂肪族炭化水素系発泡剤(例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、塩化メチレン、トリクロロトリフルオロエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、四塩化炭素等)を挙げることができる。これらの中で、水が好ましい。
【0044】
また、整泡剤としては、各種のシロキサン、ポリアルキレンオキシドブロック共重合体等を使用することができる。そのようなシロキサンとしては、例えば、日本ユニカー社製のL−520、L−532、L−540、L−544、L−3550、L−5740S、L−5740M、L−6202等;トーレシリコーン社製のSH−190、SH−192、SH−193、SH−194、SRX−294A、SRX−298等;信越シリコーン社製のF−114、F−121、F−122、F−242T、F−230、F−258、F−260B、F−317、F−341、F−601、F−606等を挙げることができる。
【0045】
また、本発明のポリウレタンフォームは、この他に、各種の添加剤、例えば難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜配合することができる。
【0046】
難燃剤としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、ブロモホスフェート等のリン酸エステル;塩素化パラフィン、四臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;ジンクボレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化モリブテン、モリブテン酸亜鉛等の無機系難燃剤等が使用することができる。
【0047】
酸化防止剤としては、アルキルフェノール、アルキレンビスフェノール、アルキルフェノールチオエーテル、β,β’−チオプロピオン酸エステル等を挙げることができる。
【0048】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリロニトリル置換体等を挙げることができる。
【0049】
本発明のポリウレタンフォーム製造方法は、従来の連続気泡性のポリウレタンフォーム製造方法に基づいて行うことができ、例えばプレポリマー法、ワンショット法、部分プレポリマー法等が適用され得る。
【0050】
本発明の積層体は、上記本発明のフレームラミネート用のポリウレタンフォ−ムの表面に、通気孔を有する表皮をフレームラミネート法により融着することにより製造することができる。即ち、ポリウレタンフォームの表面を火焔であぶり、ウレタンが融解したところに布等の表皮とロール等を用いて圧着し、貼り合わせ、接着する。表皮の材料としては、各種織物、編物、毛織物、天然皮革に微細な通気孔が形成されたもの等を使用することができる。本発明の表皮は、一般に通気孔を有する。
【0051】
本発明の積層体を連続的に製造する場合は、例えば、ポリウレタンフォーム形成組成物(ポリオール成分等とイソシアネート成分)を混合し、この混合物をコンベア等の支持体上に吐出し、次いで発泡、硬化させる(必要により加熱する)。得られたポリウレタンフォームをカッター等により薄くスライスしてシート状にした後、例えば、ロール状に巻き取られる。その後、ポリウレタンフォームシートと表皮とロールの間隙に誘導し、ここで2枚のシートは圧着される。ポリウレタンフォームシートの一方の表面はロールの間隙にはいる前に火焔であぶられ溶融状態にされ、これによりポリウレタンフォームシートと布との接着一体化が可能となる。
【0052】
或いは、ポリウレタンフォームシートの製造は、ポリウレタンフォーム形成組成物(ポリオール成分等とイソシアネート成分)を混合し、型に流し込み、発泡、硬化させた後、得られたブロックをシート状にスライスして行っても良い。
【0053】
一般に、フレームラミネートにより得られる積層体は、クッション性や吸音性という機能面と、素材の伸縮性を損なわないことや立体感があることから外観の仕上がり品質の向上という特性を持ち合わせているが、本発明の積層体によると、さらに高い通気性という特性が付与される。従って、例えば、車両用シートの表面を覆う被覆体として本発明の積層体を用いると、車両用シート表面の通気性が向上する。従って、例えば、雨や発汗により湿った衣類を着たままの状態でこの積層体がシート表面の構成生地として採用された車両用シートに腰掛けた場合、このシートの背もたれ面越しに衣類から蒸発した水分が背もたれ面を介して拡散するので、車両用シートのクッション性が良いばかりでなく、背もたれ面の湿りによる不快感が低減される。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を表1の各配合処方により、次に示す方法でポリウレタンフォームを製造した。所定の容器中にポリオールを計量して入れ、そこに水、アミン触媒、整泡剤を計量して加え、攪拌機により攪拌混合する。更に、各種添加剤及び錫触媒を計量し、攪拌混合しポリオール成分を用意する。次に、計量したイソシアネートを上記ポリオール成分の混合液の入った容器中に、表記のイソシアネート吐出圧の条件にて加え攪拌した後、室温で発泡、硬化させ、ブロック状のポリウレタンフォームを得た。発泡後24時間室温で放置した。これをスライスしてシート状のポリウレタンフォーム(厚さ5mm)を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の配合及び物性についての説明を以下に記す。
【0057】
[配合](数値の単位:質量部)
ポリオール1(ポリオールA):ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体(ポリオール平均官能基数約3、水酸基価56mg−KOH/g、ポリエステルブロック37.5%(組成);アクトコール3P56B、武田薬品工業(株)製)
ポリオール2(ポリオールB):ポリオキシアルキレンポリオール(ポリオール平均官能基数2、水酸基価118mg−KOH/g;サンニックスPP−950、三洋化成工業(株)製)
ポリオール3(ポリオールB):ポリオキシアルキレンポリオール(ポリオール平均官能基数2、水酸基価57.5mg−KOH/g;EXCENOL 2020T、旭硝子ウレタン(株)製)
TDI(T65):2,6TDI/2,4TDI=65/35(コスモートT−653、三井武田ケミカル工業(株)製)
発泡剤:水
アミン:DABCO(登録商標)CS−90(エアープロダクツジャパン(株)製)
整泡剤:Niax Silicone L−638(ジーイー東芝シリコーン(株)製)
銅触媒:2−エチルヘキシル酸第1錫(ニッカオクチックス錫28%、日本化学産業(株)製)
熱融着剤:亜リン酸エステルFLE−200(ジーイー東芝シリコーン(株)製)
【0058】
[物性]
通気度(cc/cm2/sec):
ポリウレタンフォームの高さ(3辺の内最小の辺)方向で上部、中間部及び下部について、JIS−K−6400(1977)のB法に従って測定し、その平均を通気度とした。
剥離強度(N):
得られたポリウレタンフォームシートと布(DR109)とを、ポリウレタンフォ−ムシートに火焔であぶって溶融させた後、ロールの間隙に誘導し、ここで2枚のシートは圧着した(これによりカバーシートを得た)。
セル数(個/25mm):
顕微鏡を用いてポリウレタンフォームシートの断面を観察し測定した。
発泡性:
発泡状態を観察し、フォーム状態、ライズタイムを考慮し、工場での生産が可能な場合に○とし、そうでない場合×とした。ここで、データは示していないが、ライズタイムとはポリオールとイソシアネートを混合後、連通化する(健康泡が出る)までの時間をいう。
【0059】
[結果]
先ず、実施例2〜6で示されるように、ポリウレタンフォーム形成組成物中において、ポリオール成分の合計量100質量部に対し、ポリエステルブロックを有するブロック共重合体ポリオールを20〜60質量部配合することにより、高い通気性と良好なフレートラミネート性を兼ね備えたフレームラミネート用ポリウレタンフォームが得られた。更に、このブロック共重合体ポリオールをポリオール成分の合計量100質量部に対して30〜50質量部配合することにより、通気性とフレームラミネート性がより向上し(実施例3〜6)、35〜50質量部配合することが最も良好であった(実施例4〜6)。一方、ポリオール成分の合計量100質量部に対し、ポリエステルブロックを有するブロック共重合体ポリオールを10質量部以下にした場合は発泡性が低下し(比較例1)、このブロック共重合体ポリオールを70質量部以上配合すると通気度が低下し(比較例2、3)、良好なフレームラミネート用ポリウレタンフォームを得ることはできなかった。
【0060】
次に、実施例7〜10に示されるように、ポリウレタンフォーム形成組成物中において、ポリオール成分の合計量100質量部に対し、熱融着剤を2〜8質量部添加することにより、高い通気性と良好なフレームラミネート性を兼ね備えたフレームラミネート用ポリウレタンフォームとなった。更に、この熱融着剤をポリオール成分の合計量100質量部に対して2〜6質量部配合することにより、通気性がより向上し(実施例7〜9)、4〜6質量部配合することで通気性とフレームラミネート性が最も良好となった(実施例8、9)。一方、ポリオール成分の合計量100質量部に対し、熱融着剤を10質量部添加した場合は通気性が低下し、高い通気性と良好なフレームラミネート性を兼ね備えたフレームラミネート用ポリウレタンフォームとはならなかった(比較例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、整泡剤及び熱融着剤を含むポリウレタンフォーム形成組成物から得られるフレームラミネート用のポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分は、
ポリエステルブロックを有するブロック共重合体ポリオールを含み、且つ
該ブロック共重合体ポリオールを、前記ポリオール成分の合計量100質量部に対して20〜60質量部含んでいることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記ブロック共重合体ポリオールが、ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記熱融着剤は、亜リン酸エステルであり、
該亜リン酸エステルを、前記ポリオール成分の合計量100質量部に対して2〜8質量部含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート成分としては、2,4−TDI/2,6−TDIが70/30以下の範囲にあるトリレジンイソシアネート(TDI)を含んでいることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの表面に、通気孔を有する表皮が融着されていることを特徴とする積層体。
【請求項6】
背もたれ面の構成生地の少なくとも一部に、請求項5に記載の積層体が用いられた車両用シートパッド、又は車両用シートに取り付けられるシートカバー。

【公開番号】特開2013−6947(P2013−6947A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140123(P2011−140123)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】