説明

フロアパネル補強構造

【課題】本発明は、フロアパネルを通して車室と車外とが連通することを抑制できるフロアパネル補強構造を提供する。
【解決手段】フロアパネル補強構造10は、フロアトンネル34を有するフロアパネル33と、フロアトンネル34との間にフロアトンネルとともに囲まれた第1,2の空間S1,S2を形成するフロアトンネル補強プレート40およびクロスメンバ36と、フロアトンネル34内に収容されるととともにフロアパネル33とクロスメンバ36とよりも、およびフロアパネル33とフロアトンネル補強プレート40とよりも車外に配置される補強部材50とを備える。補強部材50をフロアトンネル34内に固定する固定部X,101,102は、フロアトンネル34とフロアパネル33またはフロアトンネル34とクロスメンバ36とにおいて第1,2の空間S1,S2を形成する部分のうち、車外側に配置される方に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアパネルを補強する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FR(Front engine Rear drive)式の自動車では、エンジンの駆動力を駆動車輪である後輪に伝達するパワートレイン(トランスミッションやプロペラシャフトなど)を収容するフロアトンネルがフロアパネルに形成されている。
【0003】
この種のフロアトンネルには、車両が前突した場合などの衝撃に対する剛性を向上すべく、補強構造が施されている。この種の補強構造としては、フロアトンネルの上壁部に、板状の補強部材を取り付ける構造が提案されている。補強部材は、上壁部に面接触するように、フロアトンネルに固定されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−315440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、FR式の車両では、上記したように、フロアトンネル内には、トランスミッションやプロペラシャフトなどのパワートレインが収容されている。トランスミッションは、固い装置である。
【0005】
このため、車両が前突するなど車両前方から荷重が入力され、当該荷重がエンジンに入力されると、当該荷重がエンジンを介してトランスミッションに作用するようになる。トランスミッションに荷重が入力されると、当該荷重によってフロアトンネル内でのトラスにミッションの姿勢が変化する。
【0006】
フロアトンネル内でトランスミッションの姿勢が変化すると、トランスミッションがフロアトンネルの内面にぶつかることが考えられる。このため、フロアパネルを補強する構造が求められる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される補強構造では、補強部材がフロアトンネルの上壁部に面接触するように固定される構造である。このため、トランスミッションが補強部材にぶつかると、その衝撃は、補強部材を介して直ぐにフロアトンネルに作用するようになり、それゆえ、フロアパネルに作用する衝撃が大きくなることが考えられる。この衝撃によってフロアパネルに亀裂や孔が形成されることが考えられる。フロアパネルを通して車室と車外とが連通することは好ましくない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、フロアパネルを通して車室と車外とが連通することを抑制できるフロアパネル補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフロアパネル補強構造は、フロアトンネルが形成されるフロアパネルと、前記フロアパネルの前記フロアトンネルと重ねられるとともに、前記フロアトンネルとの間の少なくとも一部に前記フロアトンネルとともに囲まれた空間を形成する空間形成部材と、前記フロアトンネル内に収容されるととともに、前記フロアパネルと前記空間形成部材とよりも車外に配置される補強部材とを備える。前記補強部材を前記フロアトンネル内に固定する固定部は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち、車外側に配置される方に設けられる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記補強部材は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち、車外側に配置される方に固定される。前記固定部は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち車外側に配置される方と、前記補強部材との固定部である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記補強部材は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち、車外側に配置される方にブラケットを介して固定される。前記固定部は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち車外側に配置される方と、前記ブラケットとを固定する固定部である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、フロアパネルを通して車室と車外とが連通することを抑制できるフロアパネル補強構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るフロアパネル補強構造を、図1〜6を用いて説明する。図1は、本実施形態のフロアパネル補強構造10を備える自動車20を示す概略図である。なお、自動車20は、本発明が用いられる車両の一例である。自動車20は、FR(Front engine Rear drive)式の自動車である。
【0014】
図1に示すように、自動車20は、エンジン21と、パワートレイン22と、前輪23と、後輪24となどを備えている。図1は、エンジン21とパワートレイン22と前輪23と後輪24とを実線で示している。また、図1は、上記構成要素の車体25での位置関係を示すべく、前席26と後席27とを2点鎖線で示している。前席26は、運転席26aと助手席26bである。
【0015】
自動車20は、FR式であるので、車体25において車室28よりも前方にエンジンルーム29が形成されている。エンジンルーム29内には、エンジン21が収容されている。
【0016】
パワートレイン22は、エンジン21の駆動力を、駆動輪である後輪24に伝達する。パワートレイン22は、トランスミッション30と、プロペラシャフト31と、ディファレンシャルギヤ32などを備えている。
【0017】
トランスミッション30は、フロアパネル33に形成されるフロアトンネル34内に収容されている。フロアトンネル34は、図中2点鎖線で示されている。なお、図中、フロアトンネル34は、後端部が省略されている。フロアトンネル34は、車幅方向W1の中央に配置されており、車体前後方向W2に延びている。トランスミッション30は、縦置きである。
【0018】
ディファレンシャルギヤ32は、車体25の後部に配置されている。プロペラシャフト31は、トランスミッション30とディファレンシャルギヤ32とを連結している。プロペラシャフト31は、フロアトンネル34内に収容されている。
【0019】
図2は、フロアパネル33の一部を示す概略的に示す斜視図である。図2に示すように、フロアトンネル34は、フロアトンネル34の平面部(略平な部分のこと)35に対して、車体下方(フロアパネル33を挟んで車外側)に向かって開口する凹形状である。フロアトンネル34は、車体前後方向W2にその断面形状(車幅方向W1に沿って断面される断面形状)を変化させながら、車体前後方向W2に延びている。
【0020】
図3は、図1に示されたF3の範囲を拡大して示す平面図である。なお、図中、前席26と後席27とは、省略されている。図3では、フロアパネル33とフロアトンネル補強プレート40とが2点鎖線で示されている。図3に示すように、車体25は、前席26の近傍に配置されるクロスメンバ36を備えている。クロスメンバ36は、フロアパネル33の下方に配置されており、車幅方向W1に延びている。クロスメンバ36は、車幅方向W1両側に1つずつ配置されて車体前後方向W2に延びる図示しないサイドメンバ間に渡されている。
【0021】
フロアパネル33には、フロアパネル補強構造10が施されている。フロアパネル補強構造10は、フロアパネル33と、フロアトンネル補強プレート40と、補強部材50と、ブラケット60と、クロスメンバ36とを備えている。
【0022】
図2に示すように、フロアトンネル補強プレート40は、フロアトンネル34に固定されている。フロアトンネル補強プレート40は、例えば板状部材から形成されており、フロアトンネル34において開口部と反対側の部分(凹部状に形成される頂上部近傍)と略重なる形状であって、車体前後方向に延びている。フロアトンネル補強プレート40は、フロアトンネル34の開口部と反対側に、車室28側から重ねられており、周縁が例えば溶接にされることよってフロアトンネル34に固定されている。
【0023】
補強部材50は、フロアトンネル34内に配置される。補強部材50は、フロアトンネル34内においてトランスミッション30とフロアトンネル34の内面34aとの間に介装されている。
【0024】
図3は、補強部材50の配置位置を示している。図3に示すように、補強部材50は、フロアトンネル34において前席26の近傍、つまりクロスメンバ36の近傍に配置されている。
【0025】
補強部材50は、トランスミッション30が例えばフロアトンネル34に対して車体前後方向W2に相対的に移動した際、具体的には、トランスミッション30がフロアトンネル34に対して相対的に後方に移動した際に、トランスミッション30と接触することによって、トランスミッション30がフロアトンネル34の内面34aにぶつかることを防止する。このため、補強部材50は、トランスミッション30と接触しても孔があいたり、亀裂が生じないなど、破損しないだけの強度を有している。具体的には、補強部材50の厚みなどが考慮されている。
【0026】
本実施形態の自動車20では、トランスミッション30と、フロアトンネル34において前席26の近傍の内面34aとの距離が短く、それゆえ、当該内面34aに接触しやすい。このため、補強部材50は、フロアトンネル34において前席26の近傍に配置されている
なお、補強部材50は、フロアトンネル34において、前席26の近傍に配置されることに限定されない。自動車によっては、トランスミッションとフロアトンネルとの間の距離が短く(車体の設計により)それゆえ、互いに接触しやすい箇所が異なる。補強部材50は、互いに接触しやすい部位に設けられる。
【0027】
図2,3に示すように、補強部材50は、一対設けられている。各補強部材50は、フロアトンネル34に対して車幅方向に対称に配置されている。また、補強部材50は、車体25に取り付けられた状態において、フロアトンネル34を挟んで対称な形状である。このため、車幅方向一方に配置される補強部材50を代表して、補強部材50および補強部材50の車体25への固定構造を説明する。他方の補強部材50における固定構造、形状などは、一方の補強部材50に対して車幅方向W1に対称であってよい。
【0028】
図3に示すように、補強部材50は、車体25に取り付けられた状態において車幅方向W1に沿って延びる第1の部分51と、車体25に取り付けられた状態において車体前後方向W2に沿って延びる第2の部分52とを有しており、平面形状が略L字状である。
【0029】
また、図2に示すように、補強部材50は、フロアトンネル34内に収容されるので、フロアトンネル34の形状に合わせて湾曲したり折り曲げられた形状である。補強部材50は、フロアトンネル34の縦壁部34bを覆っている。
【0030】
フロアトンネル34の断面形状は、略矩形状である。フロアトンネル34の縦壁部34bは、フロアトンネル34を構成する壁部のうち車体上下方向に略沿う部分である。
【0031】
補強部材50の車体25への固定構造について、説明する。補強部材50は、フロアトンネル34においてクロスメンバ36よりも後方の第1の位置P1と、クロスメンバ36とに固定されている。第1の位置P1は、フロアトンネル34の上壁部100に位置している。上壁部100は、縦壁部34bと連続するとともに、フロアトンネル34の開口と反対側の部分である。
【0032】
まず、補強部材50の第1の位置P1への固定構造を説明する。補強部材50は、第2の部分52の後端部(車体25に取付られた際に車体前後方向W2に沿って後端の部位)53が、第1の位置P1にブラケット60を介して固定される。
【0033】
図4は、図3に示されるF4−F4線に沿って示す車体25の断面図である。図4は、フロアパネル33において、第1の位置P1での補強部材50の固定構造を示している。図4は、補強部材50の固定構造を、第1の位置P1を通るよう車幅方向W1に断面している。
【0034】
図5は、図3に示されるF5―F51−F52−F5線に沿って示す車体25の断面図である。図5は、第1の位置P1での補強部材50の固定構造を、車体前後方向W2に沿って断面している。
【0035】
図4,図5に示すように、第1の位置P1での補強部材50の固定構造では、補強部材50は、フロアパネル33の第1の位置P1に、ブラケット60を介して固定されている。図5に示すように、ブラケット60は、車体前後方向W2に沿う前部と後部とにフロアパネル33に溶接されて固定される前フランジ61と後フランジ62が形成されている。前・後フランジ61,62の間の平面部63は、フロアトンネル34から離れる方向(例えば車体下方)に向かって突出している。このため、平面部63とフロアパネル33との間には、若干の隙間が規定されている。
【0036】
平面部63には、ウェルドボルト64が固定されている。ウェルドボルト64は、当該ウェルドボルト64のボルトヘッド65が平面部63に溶接されて固定されている。ウェルドボルト64のねじ部66(雄ねじが形成される棒状部分)は、平面部63を貫通しており、前・後フランジ61,62と反対側に突出している。ブラケット60の前・後フランジ61,62がフロアパネル33に溶接されて固定された状態では、ねじ部66は、フロアパネル33と反対側に突出する。
【0037】
補強部材50の端部53には、ねじ部66が貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔にねじ部66が挿通されて、ナット67がねじ部66にら合することによって、補強部材50は、ブラケット60に締結し固定される。固定された状態では、補強部材50は、ブラケット60の平面部63に例えば面接触している。それゆえ、補強部材50は、ブラケット60を介してフロアパネル33に固定される。
【0038】
ブラケット60とフロアトンネル34との溶接箇所Xは、本発明で言う固定部の一例である。
【0039】
ここで、第1の位置P1近傍でのフロアパネル33とフロアトンネル補強プレート40とについて説明する。図4に示すように、第1の位置P1近傍では、フロアトンネル34とフロアトンネル補強プレート40との間には、第1の空間S1が形成されている。
【0040】
フロアトンネル補強プレート40は、第1の位置P1と対向する部位には、フロアトンネル34に向かって開口する凹状部41が設けられている。凹状部41は、フロアトンネル34の縁部42と対向している。縁部42は、フロアトンネル34の縦壁部34bの上端部とその近傍であり、角となっている部分である。
【0041】
凹状部41の開口は、フロアトンネル34(縁部42とその近傍の部分)に略覆われている。なお、図4中では、凹状部41の開口の縁とフロアトンネル34の縁部42とが接触していないが、別の位置(車体前後方向W2にずれた位置)では、凹状部41の縁とフロアトンネル34とが互いに当接し、溶接して固定されており閉断面を形成している。
【0042】
このように、凹状部41とフロアトンネル34との間には、第1の空間S1が形成されている。第1の空間S1は、凹状部41を形成する周壁部とフロアトンネル34とによって囲まれており、略閉じた空間である。
【0043】
図5に示すように、第1の空間S1は、車体前後方向W2に所定距離延びている。言い換えると、フロアトンネル補強プレート40の凹状部41とフロアトンネル34とによって略閉じた空間状に囲まれる第1の空間S1は、第1の位置P1を挟んで車体前後方向W2に所定距離形成されている。ブラケット60の前・後フランジ61,62とフロアトンネル34との溶接箇所Xは、第1の空間S1と対向している。
【0044】
フロアパネル33は、第1の空間S1を挟んでフロアトンネル補強プレート40よりも車外200側に位置している。フロアパネル33とフロアトンネル補強プレート40との関係において、フロアパネル33は、本発明でいう車外側に位置する方の一例である。
【0045】
つぎに、補強部材50クロスメンバ36との固定構造を説明する。図6は、図3に示されるF6−F6線に沿って示される車体25の断面図である。図6は、クロスメンバ36と補強部材50との固定構造を示している。また、図5も、クロスメンバ36と補強部材50との固定構造を示している。
【0046】
図5に示すように、クロスメンバ36は、フロアパネル33に向かって開口する凹状形状である。クロスメンバ36の開口縁のうち、車体前方に位置する前縁36aには、車体前方に延びる前フランジ36bが形成されている。開口縁のうち、車体後方に位置する後縁36cには、車体後方に延びる後フランジ36eが形成されている。
【0047】
クロスメンバ36は、車幅方向一端から他端まで図5に示すようにフロアパネル33に向かって開口する形状であり、同様に車幅方向一端から他端まで前フランジ36bと後フランジ36eとが形成されている。
【0048】
前フランジ36bと後フランジ36eとは、車幅方向一端から他端までフロアパネル33の下面(車室28と反対側の面)に当接されており、溶接されて固定されている。このため、クロスメンバ36とフロアパネル33との間には、閉じた閉空間である第2の空間S2が形成される。第2の空間S2は、クロスメンバ36の一端から他端の範囲(フロアトンネル34も含む)において形成される。
【0049】
また、図6に示すように、クロスメンバ36においてフロアトンネル34内を通る部分は、フロアトンネル34の形状に合わせて形成されている。具体的には、クロスメンバ36においてフロアトンネル34内を通る部分は、フロアトンネル34と反対側に開口する凹状形状である。このため、クロスメンバ36は、フロアトンネル34の縦壁部34bと対向する縦壁部37を有している。
【0050】
図3,5,6に示すように、補強部材50は、第1の部分51がクロスメンバ36の第2の位置P2と、第3の位置P3との2箇所固定されている。第2の位置P2は、クロスメンバ36の車幅方向W1の略中央の位置である。第3の位置P3は、クロスメンバ36において、フロアトンネル34の縦壁部34bに対向する縦壁部37に配置されている。
【0051】
第2の位置P2は、車幅方向の中央に位置しており、それゆえ、もう一方の補強部材50とともにクロスメンバ36に共締めされて固定されている。具体的には、図6に示すように、クロスメンバ36の第2の位置P2においてフロアパネル33側には、ウェルドナット70が溶着されて固定されている。クロスメンバ36の第2の位置P2には、ウェルドナット70に連通する貫通孔が形成されている。
【0052】
補強部材50の第1の部分51において車体25に取り付けられた際に車体内側に位置する端部51aが第2の位置P2と対向する。一方の補強部材50の端部51aがクロスメンバ36に当接する。他方の補強部材50の端部51aが一方の補強部材50の端部51aに当接している。両端部51aには、ウェルドナット70に連通する貫通孔101が形成されている。各補強部材50の端部51aは、ボルト71が貫通孔101を貫通してウェルドナット70にら合して固定されることによって、クロスメンバ36に締結され固定される。貫通孔101は、本発明で言う固定部の一例である。
【0053】
クロスメンバ36の第3の位置P3には、ウェルドボルト72が固定されている。ウェルドボルト72は、例えばボルトヘッド72aがクロスメンバ36においてフロアパネル33(縦壁部34b)と対向する面に溶接して固定されており、ねじ部72b(雄ねじが形成される棒状部分)がクロスメンバ36を貫通してフロアパネル33と反対側に突出している。
【0054】
補強部材50の第1の部分51において車体25に取り付けられた際に車幅方向外側に位置する端部51bが第3の位置P3に対向している。端部51bには、ボルト72のねじ部72bが挿通する貫通孔102が形成されている。ねじ部72bが端部51bの貫通孔102を貫通するとともにナット73にら合することによって、端部51bは、クロスメンバ36に締結固定される。なお、図6に示すように、クロスメンバ36の第3の位置P3と端部51bとの間には、スペーサ74などが介装されてもよい。補強部材50の端部51bは、スペーサ74に接触している。スペーサ74は、クロスメンバ36に接触している。貫通孔102は、本発明で言う固定部の一例である。
【0055】
このように構成されるフロアパネル補強構造10では、補強部材50の第2の部分52の後端部53は、フロアパネル33の第1の位置P1にブラケット60を介して固定されている。ブラケット60は、フロアトンネル34においてフロアトンネル補強プレート40との間に第1の空間S1を形成する部位に溶接によって固定されている(前・後フランジ61,62が溶接されて固定されている。)。
【0056】
また、補強部材50の端部51a,51bは、クロスメンバ36にボルトとナットとによって固定されている。クロスメンバ36とフロアトンネル34との間には、第2の空間S2が形成されている。
【0057】
このため、トランスミッション30に荷重が入力された場合などにトランスミッション30と補強部材50とが接触したことに起因して、車室28内と車外200とがフロアパネル33を通して連通することが抑制される。
【0058】
この点について具体的に説明する。自動車20が例えば衝突するなどして前方から荷重が入力されと、当該荷重は、エンジン21を介してトランスミッション30に作用する。トランスミッション30は、剛性が高い装置であるのであまり変形することなく、それゆえ、荷重によってトランスミッション30のフロアトンネル34内での位置と姿勢とが変化する。
【0059】
このとき、トランスミッション30が補強部材50に接触する。上記したように補強部材50は、トランスミッション30との接触に対して孔があいたり破損しないように十分な強度を有している。トランスミッション30が補強部材50に衝突した際の衝撃は、ブラケット60とフロアパネル33との溶接箇所X(第1の位置P1)と、補強部材50とクロスメンバ36とを固定するボルト71,72が通る貫通孔101,102の縁(第2,3の位置P2,P3)とに作用する。
【0060】
このとき、万が一、フロアパネル33においてブラケット60との溶接箇所が破れるなどしても、当該溶接箇所は、第1の空間S1と対向している。つまり、フロアパネル33がやぶれるなどしても、フロアトンネル補強プレート40がやぶれた箇所を覆う機能を有するようになる。
【0061】
また、同様に、クロスメンバ36と補強部材50との固定箇所は、第2の空間S2と対向している。このため、クロスメンバ36において補強部材50との固定箇所が破れるなどしても、当該破れた箇所は、フロアパネル33に覆われる。
【0062】
このように、補強部材50に荷重が作用することに起因して補強部材との固定箇所が破れるなどしても、当該破れた箇所を通して車室28内と車外200とが連通しにくくなる。
【0063】
さらに、第1の空間S1が形成されることによって、フロアトンネル34の変形代(フロアトンネル34の変形できる空間)が確保されるので、ブラケット60を介してフロアトンネル34に入力された荷重がフロアトンネル補強プレート40にすぐに入力されず、フロアトンネル34で吸収されるようになる。この結果、フロアトンネル34とフロアトンネル補強プレート40とが同時にやぶれるなどの破損することが抑制される。
【0064】
さらに、第2の空間S2によって、クロスメンバ36の変形代が確保されるので、補強部材50を介してクロスメンバ36に入力された荷重がすぐにフロアパネル33に入力されることが抑制される。この結果、クロスメンバ36とフロアトンネル34とが同時にやぶれるなど破損することが抑制される。
【0065】
また、第1の位置P1のように、ブラケット60を介して補強部材50をフロアパネル33に固定することによって、フロアパネル33側にウェルドボルトやウェルドナットを設ける必要がなくなり、比較的容易に補強部材50を車体25に固定することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、補強部材50は、フロアトンネル34(第1の位置P1)にブラケット60を介して固定され、クロスメンバ36(第2,3の位置P2,P3)にボルトとナットとを用いて固定されている。
【0067】
しかしながら、これに限定されない。補強部材50は、第1の位置P1に、例えば上記第2,3の位置P2,P3のようにボルトとナットと用いて直接固定されてもよい。また、補強部材50は、第2,3の位置P2,P3に、例えばブラケット60のようなブラケットを介して固定されてもよい。
【0068】
また、補強部材50は、フロアトンネル34の第1の位置P1と、クロスメンバ36の第2,3の位置P2,P3とに固定されることに限定されない。例えば、フロアトンネル34と、当該フロアトンネル34とともに第1,2の空間S1,S2のような空間を形成する空間形成部材とのうち、この空間を挟んで車外側に配置される方に固定されることによって、上記と同様の効果をえることができる。
【0069】
また、本実施形態では、補強部材50は、トランスミッション30とフロアトンネル34との接触を防止する機能を有しているが、これに限定されない。例えば補強部材50は、他のパワートレインとフロアトンネル34との接触を防止すべく設けられてもよい。例えば、補強部材50は、プロペラシャフト31とフロアトンネル34との接触を防止すべく設けられてもよい。
【0070】
また、補強部材50は、パワートレイン22ではなく、フロアトンネル34内に収容される他の部品などとフロアトンネル34との接触を防止すべく設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態のフロアパネル補強構造を備える自動車を示す概略図。
【図2】図1に示されたフロアパネルの一部を概略的に示す斜視図。
【図3】図1に示されたF3の範囲を拡大して示す平面図。
【図4】図3に示されるF4−F4線に沿って示す車体の断面図。
【図5】図3に示されるF5―F5線に沿って示す車体の断面図。
【図6】図3に示されるF6−F6線に沿って示される車体の断面図。
【符号の説明】
【0072】
10…フロアパネル補強構造、33…フロアパネル、34…フロアトンネル、36…クロスメンバ(空間形成部材)、40…フロアトンネル補強プレート(空間形成部材)、50…補強部材、60…ブラケット、101…貫通孔(固定部)、102…貫通孔(固定部)、X…溶接箇所(固定部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアトンネルが形成されるフロアパネルと、
前記フロアパネルの前記フロアトンネルと重ねられるとともに、前記フロアトンネルとの間の少なくとも一部に前記フロアトンネルとともに囲まれた空間を形成する空間形成部材と、
前記フロアトンネル内に収容されるととともに、前記フロアパネルと前記空間形成部材とよりも車外に配置される補強部材と
を具備し、
前記補強部材を前記フロアトンネル内に固定する固定部は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち、車外側に配置される方に設けられることを特徴とするフロアパネル補強構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち、車外側に配置される方に固定され、
前記固定部は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち車外側に配置される方と、前記補強部材との固定部である
ことを特徴とする請求項1に記載のフロアパネル補強構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち、車外側に配置される方にブラケットを介して固定され、
前記固定部は、前記フロアトンネルと前記空間形成部材とにおいて前記囲まれた空間を形成する部分のうち車外側に配置される方と、前記ブラケットとを固定する固定部である
ことを特徴とする請求項1に記載のフロアパネル補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−6285(P2010−6285A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169450(P2008−169450)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】