説明

フロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法

【課題】 1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)から医薬および農薬の中間体に有用なフロロアクリル酸誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】 HCFC−124と、下記式(III)の化合物とを、リチウム化合物(IV)(R−SO−Cl)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応液中で反応させる工程1;
【化1】


(R、Rは、H、アルキル基、低級アルケニル基、アリール基、アル低級アルキル基、アル低級アルケニル基、複素環基で、R、Rは、結合して−(CH−(n:2〜5)を形成してよい。)
工程1の生成物と前記リチウム化合物(IV)またはスルホニウムクロリド(VI)(R−SO−Cl)を反応させる工程2;
および
工程2の反応生成物を加水分解する工程3
からなるフロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は医薬および農薬の中間体として有用なフロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1〜3程度の比較的少ない数のフッ素と適当な官能基を含む化合物は、様々な有用物質を調製するためのビルディング・ユニットとして広く用いられている。しかしながら、含フッ素有機化合物は、ほぼ全てが人工の化合物であるため、天然に広く存在する非フッ素化物と比較すると、その構造上の多様性は極めて限られたものとなっている。フロン代替物であるハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)やハイドロフルオロカーボン(HFC)は、一般的に、炭素数が1〜3程度の含フッ素有機化合物であり、これまでに、1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−134:特許文献1〜4参照)や1−クロロ−2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−133:非特許文献5および6参照)を利用した合成反応については、複数例の報告がある。
【0003】
しかしながら、その類似物質である1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)については、ペンタフルオロエタン調製用の中間体としての利用が提案されている(特許文献1および2参照)が、他の有機化学的利用に関しては提案されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−171806号公報
【特許文献2】特開2000−355559号公報
【非特許文献1】Chem.Commun.,49(1996)
【非特許文献2】J.Fluorine Chem.,100,45(1999)
【非特許文献3】Tetrahedron Lett.,41,971(2000)
【非特許文献4】Tetrahedron Lett.,41,2453(2000)
【非特許文献5】J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,2541(1998)
【非特許文献6】Tetrahedron Lett.,41,5269(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)の利用について鋭意研究を行った結果、その有機化学的利用を見い出すに至り、本発明に到達したものである。
本発明は、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を原料として、医薬および農薬の中間体として有用なフロロアクリル酸誘導体またはその塩を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(II)で示される1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、下記式(III)で示される化合物(III)とを、式(IV)で示されるリチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させる工程1;
CFCHClF (II)
【0007】
【化1】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)
【0008】
−Li (IV)
(式中、Rは、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基を表す。)
【0009】
工程1の反応生成物を前記リチウム化合物(IV)または下記式(VI)で示されるスルホニウムクロリド(VI)を含む反応系中で反応させる工程2;
−SO−Cl (VI)
(式中、Rは、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表す。)
【0010】
および
工程2の反応生成物を加水分解する工程3
からなる下記(I)で示されるフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法を提供する。
【0011】
【化2】

(式中、RおよびRは、各々、前と同じ意味を表す。)
【0012】
前記工程2が、工程1の反応生成物から単離した下記(V)で示される化合物(V)を、前記リチウム化合物(IV)を含む反応系中で反応させる工程である、前記したフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法は本発明の好ましい態様である。
【0013】
【化3】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して、−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)
【0014】
前記工程2が、工程1の反応生成物を単離することなく、前記リチウム化合物(IV)を含む反応系中で反応させる工程である、前記したフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法は本発明の好ましい態様である。
【0015】
前記工程2が、工程1の反応生成物を単離することなく、前記スルホニウムクロリド(VI)を含む反応系中で反応させる工程である、前記したフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法は本発明の好ましい態様である。
【0016】
本発明はまた、下記式(II)で示される1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、下記式(III)で示される化合物(III)とを、式(IV)で示されるリチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させて前記式(V)で示される化合物(V)を製造する方法を提供する。
【0017】
本発明はさらに、前記式(V)で示される化合物(V)を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を原料とする医薬および農薬の中間体として有用なフロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法が提供される。
本発明によって、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を有効利用することが可能となる。
本発明によって提供されるフロロアクリル酸誘導体またはその塩は、医薬および農薬の中間体として有用な化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を原料として医薬および農薬の中間体として有用なフロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法を提供するものである。
【0020】
本発明で使用される用語の定義、好適な例および具体例を以下に説明する。
「低級」なる語は、特に断わりのない限り、1〜6個の炭素原子を有する基を意味する。
「高級」なる語は、特に断わりのない限り、7〜20個の炭素原子を有する基を意味する。
「1個以上」の好適な例としては、1〜6の整数が挙げられ、それらのうちでも好ましいのは1〜4の整数である。
【0021】
「ハロゲン」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
「低級アルキル基」は、炭素数1〜6の直鎖および分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、n−ペンチル基、第三級ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特に好ましくは、メチル基、エチル基およびn−ブチル基が挙げられる。
【0023】
「高級アルキル基」は、炭素数7〜20の直鎖および分枝鎖アルキル基であり、例えば、ヘプチル基、オクチル基、3,5−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数7〜10のアルキル基が挙げられ、特に好ましくは、ノニル基が挙げられる。
【0024】
「低級アルケニル基」は、炭素数2〜6の直鎖および分枝鎖アルケニル基であり、例えば、ビニル基、1−(または2−)プロペニル基、1−(または2−または3−)ブテニル基、1−(または2−または3−または4−)ペンテニル基、1−(または2−または3−または4−または5−)ヘキセニル基等が挙げられる。
【0025】
アル低級アルキル等における「アル」部分はアリール基を意味し、その好適な例としては、1個以上の低級アルキルで置換されていてもよいフェニル(例えば、フェニル基、メシチル基、トリル基等)、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル基、トリル基およびナフチル基が挙げられる。
【0026】
「アリール基」の好適な例としては、上記アリール基で例示したものを挙げることができ、好ましくは、フェニル基、トリル基およびナフチル基が挙げられる。
【0027】
「アル低級アルキル基」としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基等のフェニル(C1−C6)アルキル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、ナフチルヘキシル基等のナフチル(C1−C6)アルキル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル(C1−C4)アルキル基が挙げられ、特に好ましくは、フェネチル基が挙げられる。
【0028】
「アル低級アルケニル基」としては、フェニルビニル基、フェニル−1−(または2−)プロペニル基、フェニル−1−(または2−または3−)ブテニル基、フェニル−1−(または2−または3−または4−)ペンテニル基、フェニル−1−(または2−または3−または4−または5−)ヘキセニル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル(C2−C4)アルケニル基が挙げられ、特に好ましくは、フェニルビニル基が挙げられる。
【0029】
「複素環基」の好適な例をとしては以下のような基を挙げることができる。
(1)1〜4個の窒素原子を含有する不飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ジヒドロピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基(例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル基、1H−1,2,3−トリアゾリル基、2H−1,2,3−トリアゾリル基等)、テトラゾリル基(例えば、1H−テトラゾリル基、2H−テトラゾリル基等)などが挙げられる。
(2)1〜4個の窒素原子を含有する飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基などである。
(3)1〜4個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基。例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリニル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基などが挙げられる。
【0030】
(4)1または2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、1,2,5−オキサジアゾリル基等)などが挙げられる。
(5)1または2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、モルホリニル基、シドノニル基、モルホリノ基などが挙げられる。
(6)1または2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基。例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基などが挙げられる。
【0031】
(7)1または2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基(例えば、1,2,3−チアジアゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,5−チアジアゾリル基等)、ジヒドロチアジニル基などが挙げられる。
(8)1または2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、チアゾリジニル基、チオモルホリニル基、チオモルホリノ基などが挙げられる。
(9)1または2個の硫黄原子を含有する不飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、チエニル基、ジヒドロジチイニル基、ジヒドロジチオニル基などが挙げられる。
【0032】
(10)1または2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基。例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、イミダゾチアジアゾリル基などが挙げられる。
(11)酸素原子を含有する不飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、フリル基などが挙げられる。
(12)酸素原子を含有する飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基などが挙げられる。
【0033】
(13)酸素原子および1または2個の硫黄原子を含有する不飽和3〜8員、より好ましくは5〜6員の複素単環基。例えば、ジヒドロオキサチイニル基などが挙げられる。
(14)1または2個の硫黄原子を含有する不飽和縮合複素環基。例えば、ベンゾチエニル基、ベンゾジチイニル基などが挙げられる。
(15)酸素原子および1または2個の硫黄原子を含有する不飽和縮合複素環基。例えば、ベンゾオキサチイニル基)などが挙げられる。
【0034】
本発明における「1個以上の置換基」における置換基としては、ニトロ基、ハロ低級アルキル基、低級アルキル基、モノまたはジ低級アルキルアミノ基、アシル基、低級アルコキシ基およびハロゲンが挙げられる。
【0035】
上記置換基おけるハロ低級アルキル基としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、2−ヨードエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられ、好ましくは、トリハロ(C1−C3)アルキル基が挙げられ、特に好ましくは、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0036】
上記置換基おける低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、n−ペンチル基、第三級ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、好ましくは、(C1−C4)アルキル基が挙げられ、特に好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0037】
上記置換基おけるモノまたはジ低級アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられ、好ましくは、ジ(C1−C4)アルキルアミノ基が挙げられ、特に好ましくは、ジメチルアミノ基が挙げられる。
【0038】
上記置換基おけるアシル基としては、以下のものが例示される。
脂肪族アシル基、例えば、低級または高級アルカノイル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、イコサノイル基等)、低級または高級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、第三級ブトキシカルボニル基、第三級ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基等)、低級または高級アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、低級または高級アルコキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等)等;
【0039】
芳香族アシル基、例えば、アロイル基(例えば、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基等)、アル低級アルカノイル基(例えば、フェニルアセチル基、フェニルプロパノイル基、フェニルブタノイル基、フェニルイソブタノイル基、フェニルペンタノイル基、フェニルヘキサノイル基等のフェニル(C1−C6)アルカノイル基、ナフチルアセチル基、ナフチルプロパノイル基、ナフチルブタノイル基等のナフチル(C1−C6)アルカノイル基等)、アル低級アルケノイル基(例えば、フェニルプロペノイル基、フェニルブテノイル基、フェニルメタクリロイル基、フェニルペンテノイル基、フェニルヘキセノイル基等のフェニル(C3−C6)アルケノイル基、ナフチルプロペノイル基、ナフチルブテノイル基等のナフチル(C3−C6)アルケノイル基等)、アル低級アルコキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基等のフェニル(C1−C6)アルコキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基等のフルオレニル(C1−C6)アルコキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシ低級アルカノイル基(例えば、フェノキシアセチル基、フェノキシプロピオニル期等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル基等)、アリールチオカルバモイル基(例えば、フェニルチオカルバモイル基等)、アリールグリオキシロイル基(例えば、フェニルグリオキシロイル基、ナフチルグリオキシロイル基等)、1〜4個の低級アルキルを有していてもよいアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、p−トリルスルホニル基等)等;
【0040】
複素環アシル基、例えば、複素環カルボニル基、複素環低級アルカノイル(例えば、複素環アセチル基、複素環プロパノイル基、複素環ブタノイル基、複素環ペンタノイル基、複素環ヘキサノイル基等)、複素環低級アルケノイル基(例えば、複素環プロペノイル基、複素環ブテノイル基、複素環ペンテノイル基、複素環ヘキセノイル基等)、複素環グリオキシロイル基等。ここで、「複素環カルボニル基」、「複素環低級アルカノイル基」、「複素環低級アルケノイル基」および「複素環グリオキシロイル基」における「複素環」としては、上述の「複素環」を参照することができ、好ましくは、「低級アルカノイル基」が挙げられ、特に好ましくは、アセチル基が挙げられる。
【0041】
上記置換基おける低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、第二級ブトキシ基、第三級ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、第三級ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0042】
次に、本発明のフロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法を詳細に説明する。
「工程1」
本発明の工程1は、下記式(II)で示される1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、下記式(III)で示される化合物(III)とを、式(IV)で示されるリチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させる工程である。
CFCHClF (II)
【0043】
【化4】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)
【0044】
−Li (IV)
(式中、Rは、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基を表す。)
【0045】
工程1では、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンを溶媒およびリチウム化合物(IV)もしくは、カリウム tert−ブトキシドの混合物に投入してもよく、溶媒および1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンの混合物にリチウム化合物(IV)もしくは、カリウム tert−ブトキシドを投入してもよい。こうして得られたアニオン種を含む溶液に、所定の温度で化合物(III)を投入してもよいし、その逆に、化合物(III)と溶媒からなる混合物中に、得られたアニオン種を含む溶液を投入してもよい。
【0046】
工程1に用いられるリチウム化合物(IV)としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが挙げられ、好ましくは、n−ブチルリチウムが挙げられる。
【0047】
工程1に用いられる溶媒としては、非プロトン性の溶媒が好ましく、例えば、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル等のエーテル、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素といった非プロトン性極性溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン1モルに対して必要となるリチウム化合物(IV)またはカリウム tert−ブトキシドの理論量は1モルであるが、1〜1.5モルの量で使用することが好ましい。また、こうして発生するアニオン種1モルに対して、化合物(III)は0.5〜5モルであるのが好ましく、さらに好ましくは0.8〜1.5モルである。
溶媒量は特に制限はないが、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン1モルに対して、溶媒0.1〜30Lが好ましく、さらに好ましくは、1〜5Lである。
【0049】
工程1の反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下で行うのが好ましい。
【0050】
反応温度は、特に限定されないが、通常は、冷却下ないし加温下で行われ、−100℃〜100℃で可能であるが、リチウム化合物(IV)の場合には、−80℃〜0℃が好ましく、カリウム tert−ブトキシドの場合には、−20〜0℃が好ましい。
【0051】
反応圧力は、特に限定されないが、通常は、減圧下ないし加圧下で行われ、0〜0.20MPa(ゲージ圧力)が好ましい。反応器は大気開放型の反応器、またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。
【0052】
工程1の反応によって下記式(V)で示される化合物(V)が生成する。化合物(V)
は、慣用の方法、例えば、常圧下または減圧下での蒸留、粉砕、粉末化、再結晶、カラムクロマトグラフィー、高速液体カラムクロマトグラフィー(HPLC)、中圧分取HPLC、脱塩樹脂カラムクロマトグラフィー、再沈澱等の常法によって、単離、精製することができる。
【0053】
【化5】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して、−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)
【0054】
工程1の反応生成物は、化合物(V)を単利してそれを工程2に使用してもいいし、化合物を単利することなく反応混合物を工程2で使用してもよい。
【0055】
「工程2」
本発明の工程2は、工程1で得られた反応生成物を、下記式(IV)で示されるリチウム化合物(IV)または下記式(VI)で示されるスルホニウムクロリド(VI)を含む反応系中で反応させることによって行われる。
【0056】
−Li (IV)
(式中、Rは、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基を表す。)
【0057】
−SO−Cl (VI)
(式中、Rは、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表す。)
【0058】
ここで、Rの好ましいものとしては、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアリール基が挙げられ、特に好ましくは、メチル基またはp-トリル基が挙げられる。
【0059】
工程2では、工程1で得られた反応性生物を溶媒およびリチウム化合物(IV)またはスルホニウムクロリド(VI)の混合物に投入してもよく、溶媒および化合物(V)の混合物にリチウム化合物(IV)またはスルホニウムクロリド(VI)を投入してもよい。
【0060】
工程2におけるリチウム化合物(IV)の好ましい例としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウムル、sec−ブチルリチウムなど挙げることができるが、中でも好ましいものとしては、n−ブチルリチウムが挙げられる。
【0061】
工程2におけるスルホニウムクロリド(VI)の好ましい例としては、メタンスルホニルクロリドを挙げることができる。
【0062】
工程2に用いられる溶媒としては、非プロトン性の溶媒が好ましく、例えば、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、メチル 第三級ブチルエーテル等のエーテル、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素といった非プロトン性極性溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
工程2の反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下で行うのが好ましい。
【0064】
反応温度は、特に限定されないが、通常は、冷却下ないし加温下で行われ、−100℃〜100℃で可能であるが、−80℃〜0℃が好ましい。
【0065】
反応圧力は、特に限定されないが、通常は、減圧下ないし加圧下で行われ、0〜0.20MPa(ゲージ圧力)が好ましい。反応器は大気開放型の反応器、またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。
【0066】
工程2で得られる反応生成物は、そのまま工程3で用いることができるが、化合物(V)を慣用の方法、例えば、常圧下または減圧下での蒸留、粉砕、粉末化、再結晶、カラムクロマトグラフィー、高速液体カラムクロマトグラフィー(HPLC)、中圧分取HPLC、脱塩樹脂カラムクロマトグラフィー、再沈澱等の常法によって、単離、精製することができる。
【0067】
工程3には、工程2の生成物から化合物を単離することなく反応生成物として用いてもいいし、生成物から単離した化合物を反応生成物として用いてもよい。
【0068】
「工程3」
本発明の工程3は、工程2で得られた反応性生成物を加水分解反応に付すことによって行われる。
【0069】
加水分解反応は、好ましくは、ルイス酸を含む酸の存在下で実施することができる。
適当な酸としては、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)および無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、塩化水素、臭化水素等)が挙げられる。
【0070】
工程3に用いられる溶媒としては、通常、慣用の溶媒、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたは反応に悪影響を及ぼさないその他の任意の有機溶媒、またはその混合物が挙げられる。
工程2の反応生成物を単離せずに工程3を行う場合、溶媒は必然的に工程2の溶媒と同じである。
【0071】
反応温度は、特に限定されないが、通常は、冷却下ないし加温下で行われ、−100℃〜100℃で可能であるが、0℃〜30℃が好ましい。
【0072】
反応圧力は、特に限定されないが、通常は、減圧下ないし加圧下で行われ、0〜0.20MPa(ゲージ圧力)が好ましい。反応器は大気開放型の反応器、またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。
【0073】
工程3で得られる化合物(I)は、慣用の方法、例えば、常圧下または減圧下での蒸留、粉砕、粉末化、再結晶、カラムクロマトグラフィー、高速液体カラムクロマトグラフィー(HPLC)、中圧分取HPLC、脱塩樹脂カラムクロマトグラフィー、再沈澱等の常法によって、単離、精製することができる。
【0074】
本発明のフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩を製造する方法の好ましい具体的態様としては以下のような態様を挙げることができる。
【0075】
態様1:
1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、化合物(III)とを、リチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させ、化合物(V)を単離する工程1;
工程1の反応生成物である化合物(V)にリチウム化合物(IV)を反応させる工程2;および
工程2の反応性生物を単離するか、もしくは単離せずに加水分解する工程3
からなるフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法。
【0076】
態様1において、工程2におけるリチウム化合物(IV)の使用量は、化合物(V)1モルに対して必要となるリチウム化合物(IV)の理論量は2モルであるが、2〜3モルであるのが好ましい。
溶媒量は特に制限はないが、化合物(V)1モルに対して、溶媒0.1〜30Lが好ましく、さらに好ましくは、1〜5Lである。
【0077】
態様2:
1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、化合物(III)とを、リチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させる工程1;
工程1の反応生成物から化合物を単離することなく、反応生成物にリチウム化合物(IV)を反応させる工程2;および
工程2の反応性生物から化合物を単離することなく加水分解する工程3
からなるフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法。
【0078】
態様2において、工程2におけるリチウム化合物(IV)の使用量は、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン1モルに対して必要となるリチウム化合物(IV)理論量は1モルであるが、1〜1.5モルであるのが好ましい。
【0079】
態様2において、工程2および工程3は、工程1の反応生成物にスルホニウムクロリド(VI)を加えて、続いて加水分解することによって実施することができる。
【0080】
態様3:
1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、化合物(III)とを、リチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させる工程1;
工程1の反応生成物から化合物を単離することなく、反応生成物にスルホニウムクロリド(VI)を反応させる工程2;および
工程2の反応生成物から化合物を単離することなく加水分解する工程3
からなるフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法。
【0081】
態様3において、工程2におけるスルホニウムクロリド(VI)の使用量は、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン1モルに対して必要となるメタンスルホニルクロリドの理論量は1モルであるが、1〜2モルであるのが好ましい。
【0082】
態様3において、工程2および工程3は、工程1の反応性生物にスルホニウムクロリド(VI)を加えて、続いて加水分解することによって実施することができる。
【0083】
本発明の製造方法によって得られるフロロアクリル酸誘導体(I)の塩としては、無機塩基との塩:アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基との塩:有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等)との塩等の塩基との塩が挙げられる。
【0084】
本発明の製造方法によって得られる化合物は、互変異性体、不斉炭素原子および二重結合に基づく光学異性体、幾何異性体などの立体異性体を1種以上包含することもあるが、当該異性体およびそれらの混合物もすべて本発明の範囲に包含される。
【0085】
本発明は、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を原料とする医薬および農薬の中間体として有用なフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法であり、フロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の代表例としては、例えば、医薬品CD437の類縁体である下記の化合物(VIII)が挙げられる。化合物(VIII)は、CD437と同等もしくはそれ以上の活性を示すことが既に報告されている(J.Med.Chem.48,4931(2005).)
【0086】
【化6】

【0087】
【化7】

【0088】
本発明で得られる前記式(V)で示される化合物(V)は、本発明のフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の中間体としての有用性を有する化合物である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
ドライアイスコンデンサーを備えた50ml二口フラスコ内をアルゴン置換し、10mlの乾燥ジエチルエーテルを加え、−80℃に冷却した。ここに、液化させた1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン0.6ml(6.0mmol)をガスとして導入し、−80℃に冷却したドライアイスコンデンサーで液化させてフラスコ内に加えた。そこに1.57mol/Lのヘキサン溶液であるn−ブチルリチウムを3.82ml(6.0mmol)をゆっくり加え、その温度で30分撹拌を続けた。ここに、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を加えて30分撹拌した後、氷浴を用いて反応温度を0℃とし、さらに1時間攪拌した。1mol/L塩酸水溶液を15mlの反応容器に加えて反応を停止させた。この溶液を30mlのジエチルエーテルで2度抽出し、この有機層を50mlの30%亜硫酸水素ナトリウム水溶液と30mlの水でそれぞれ洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別後、濃縮し、塩化メチレンでカラムクロマトグラフィー精製を行って、0.810g(3.34mmol)の2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−フェニルプロパン−1−オールを得た。ジアステレオ選択性は59:41であった。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.14(1H,bs),5.23(1H,q,J=6.3Hz),7.38〜7.43(5H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.07(1H,bs),5.12(1H,q,J=15.6Hz),7.38〜7.43(5H,m)
【0091】
(実施例2)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を4−ニトロベンズアルデヒド0.76g(5.03mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン−1−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.84(3H,s)3.94(1H,s),5.56(1H,d,J=6.9Hz),6.92〜7.05(2H,m),7.33〜7.42(2H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.85(3H,s)3.94(1H,s),5.44(1H,d,J=18.6Hz),6.92〜7.05(2H,m),7.33〜7.42(2H,m)
【0092】
(実施例3)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド0.87g(5.00mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−(4−トリフルオロフェニル)プロパン−1−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.60(1H,d,J=5.7Hz),5.32(1H,t,J=6.0Hz),7.56〜7.59(2H,m),7.63〜7.67(2H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.68(1H,d,J=4.8Hz),5.21(1H,dd,J=4.8,14.7Hz),7.56〜7.59(2H,m),7.63〜7.67(2H,m)
【0093】
(実施例4)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を4−トルアルデヒド0.60g(5.00mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−(4−トリル)プロパン−1−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ2.35(3H,s),3.03(1H,d,J=5.4Hz),5.18(1H,t,J=6.0Hz),7.16〜7.20(2H,m),7.32(2H,dd,J=2.1,8.1Hz)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ2.35(3H,s),3.06(1H,d,J=5.1Hz),5.07(1H,dd,J=5.1,15.4Hz),7.16〜7.20(2H,m),7.32(2H,dd,J=2.1,8.1Hz)
【0094】
(実施例5)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を4−ジメチルアミノベンズアルデヒド0.75g(5.03mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン−1−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ2.98(6H,s),5.17(1H,d,J=6.9Hz),6.69〜6.73(2H,m),7.25〜7.33(2H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ2.98(6H,s),5.07(1H,d,J=15.9Hz),6.69〜6.73(2H,m),7.25〜7.33(2H,m)
【0095】
(実施例6)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を1−ナフトアルデヒド0.78g(4.99mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−ナフチルプロパン−1−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ2.64(1H,d,J=5.1Hz),6.26(1H,dd,J=3.9,4.5Hz),7.25〜8.11(7H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ2.71(1H,d,J=5.1Hz),6.09(1H,dd,J=5.3,18.1Hz),7.25〜8.11(7H,m)
【0096】
(実施例7)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を4−メトキシベンズアルデヒド0.68g(4.99mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−(4−メトキシフェニル)プロパン−1−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.62(1H,s),3.70(3H,s),5.12(1H,t,J=6.0Hz),6.81〜6.86(2H,m),7.30(2H,d,J=8.4Hz)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.62(1H,s),3.70(3H,s),5.01(1H,dd,J=4.8,15.3Hz),6.81〜6.86(2H,m),7.30(2H,d,J=8.4Hz)
【0097】
(実施例8)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)をノナナール0.71g(4.99mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロドデカン−3−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.20〜1.44(13H,m),1.52〜1.83(3H,m),1.86(1H,d,J=8.7Hz),4.04〜4.16(1H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.20〜1.44(13H,m),1.52〜1.83(3H,m),2.08(1H,d,J=8.7Hz),4.04〜4.16(1H,m)
【0098】
(実施例9)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を3−フェニルプロピオンアルデヒド0.67g(4.99mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−5−フェニルペンタン−3−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ1.86〜2.02(2H,m),2.09(1H,d,J=8.4Hz),2.68〜2.79(2H,m),4.04〜4.12(1H,m),7.20〜7.33(5H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ2.07〜2.19(2H,m),2.30(1H,d,J=6.9Hz),2.90〜3.01(2H,m),4.04〜4.12(1H,m),7.20〜7.33(5H,m)
【0099】
(実施例10)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)をケイ皮アルデヒド0.66g(4.99mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、(E)−4−クロロ−4,5,5,5−テトラフルオロ−1−フェニル−1−ペンテン−3−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.24(1H,bs),4.71〜4.82(1H,m),6.25(1H,dd,J=6.5,15.8Hz),6.74(1H,d,J=6.3Hz),7.26〜7.40(5H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ3.42(1H,bs),4.71〜4.82(1H,m),6.17(1H,dd,J=6.9,14.8Hz),6.79(1H,d,J=5.9Hz),7.26〜7.40(5H,m)
【0100】
(実施例11)
実施例1において、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)をアセトフェノン0.60g(4.99mmol)に代えるほかは、実施例1と同様な方法で、3−クロロ−3,4,4,4−テトラフルオロ−2−フェニルブタン−2−オールを得た。
主ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ1.88(3H,bs),2.88(1H,s),7.31〜7.39(3H,m),7.54〜7.59(2H,m)
副ジアステレオマー:
H NMR(CDCl,内部基準TMS)δ1.88(3H,bs),2.79(1H,s),7.31〜7.39(3H,m),7.54〜7.59(2H,m)
【0101】
(実施例12)
50ml二口フラスコ内をアルゴン置換し、5mlの乾燥テトラヒドロフランと実施例1で得られた2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−フェニルプロパン−1−オール(1.02mmol)を加え、−80℃に冷却した。ここに、1.20mol/Lのヘキサン溶液であるn−ブチルリチウムを1.0ml(1.2mmol)をゆっくり加え、その温度で30分撹拌を続け、さらにn−ブチルリチウムを1.0ml(1.2mmol)を滴下した後、その温度で2時間撹拌した。
ここに、65%(濃硫酸:水=1:1(容積比))硫酸水溶液を3.0ml加え、室温で24時間攪拌を行った。2mol/L水酸化ナトリウム塩酸水溶液を10ml加えて、塩基性にして反応を停止させた。この溶液を30mlのジエチルエーテルで2度抽出し、得られた水層に6mol/L塩酸水溶液を10ml加えて酸性とし、これを30mlの酢酸エチルで3度抽出後、有機層を食塩水で洗浄した。こうして得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別後、濃縮したところ、3−フェニル−2−フロロアクリル酸を0.110g(0.66mmol)得た。収率は65%であり、E:Z=0:100であった。
H NMR((CDCO,内部基準TMS)δ7.05(1H,d,J=35.7Hz),7.39〜7.49(3H,m),7.70〜7.75(2H,m)
【0102】
(実施例13)
実施例12において、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−フェニルプロパン−1−オールを、実施例6で得られた2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−ナフチルプロパン−1−オール(1.00mmol)に代えるほかは、実施例12と同様な方法で、(Z)−3−(1−ナフチル)−2−フロロアクリル酸を得た。
H NMR((CDCO,内部基準TMS)δ7.54〜7.67(3H,m),7.75(1H,d,J=33.3Hz),7.92〜8.01(3H,m),8.15(1H,d,J=8.4Hz),8.64(1H,bs)
【0103】
(実施例14)
実施例12において、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−フェニルプロパン−1−オールを、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−(4−トリル)プロパン−1−オール(1.00mmol)に代えるほかは、実施例12と同様な方法で、(Z)−3−(4−トリル)−2−フロロアクリル酸を得た。
H NMR((CDCO,内部基準TMS)δ2.32(3H,s),6.96(1H,d,J=36.0Hz),7.22(2H,d,J=8.1Hz),7.57(2H,d,J=8.4Hz),10.23(1H,brs)
【0104】
(実施例15)
実施例12において、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−フェニルプロパン−1−オールを、3−クロロ−3,4,4,4−テトラフルオロ−2−フェニルブタン−2−オール(1.00mmol)に代えるほかは、実施例12と同様な方法で、3−フェニル−2−フロロクロトン酸を、(E):(Z)=38:62の混合物として得た。
H NMR((CDCO,内部基準TMS)δ2.15(3H,d,J=4.8Hz;(E)体),2.46(3H,d,J=3.6Hz;(Z)体),7.20〜7.60(5H,m)
【0105】
(実施例16)
ドライアイスコンデンサーを備えた50ml二口フラスコ内をアルゴン置換し、そこに1.57mol/Lのヘキサン溶液であるn−ブチルリチウムを3.82ml(6.0mmol)加え、減圧下にヘキサンの大部分を除去した。これに10mlの乾燥ジエチルエーテルを加えて−80℃に冷却し、液化させた1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン0.6ml(6.0mmol)をガスとして導入し、−80℃に冷却したドライアイスコンデンサーで液化させてフラスコ内に加え、その温度で30分撹拌を続けた。ここに、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を加えて30分撹拌した後、氷浴を用いて反応温度を0℃とし、さらに1時間攪拌した。この段階で、減圧下に溶媒であるエーテルの大部分を除去し、テトラヒドロフラン10ml加え、そこに1.57mol/Lのヘキサン溶液であるn−ブチルリチウムを3.82ml(6.0mmol)導入して、−80℃で2時間攪拌を続けた。ここに、65%(濃硫酸:水=1:1(容積比))硫酸水溶液を3.0ml加え、室温で24時間攪拌を行った。2mol/L水酸化ナトリウム塩酸水溶液を10ml加えて、塩基性にして反応を停止させた。この溶液を30mlのジエチルエーテルで2度抽出し、得られた水層に6mol/L塩酸水溶液を10ml加えて酸性とし、これを30mlの酢酸エチルで3度抽出後、有機層を食塩水で洗浄した。こうして得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別後、濃縮したところ、3−フェニル−2−フロロアクリル酸を0.578g(3.48mmol)得た。収率は58%であり、E:Z=0:100であった。
【0106】
(実施例17)
ドライアイスコンデンサーを備えた50ml二口フラスコ内をアルゴン置換し、そこに1.57mol/Lのヘキサン溶液であるn−ブチルリチウムを3.82ml(6.0mmol)加え、減圧下にヘキサンの大部分を除去した。これに10mlの乾燥ジエチルエーテルを加えて−80℃に冷却し、液化させた1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン0.6ml(6.0mmol)をガスとして導入し、−80℃に冷却したドライアイスコンデンサーで液化させてフラスコ内に加え、その温度で30分撹拌を続けた。ここに、ベンズアルデヒド0.47g(4.99mmol)を加えて30分撹拌した後、氷浴を用いて反応温度を0℃とし、さらに1時間攪拌した。この段階で、減圧下に溶媒であるエーテルの大部分を除去し、テトラヒドロフラン10ml加え、そこに1.57mol/Lのヘキサン溶液であるn−ブチルリチウムを3.82ml(6.0mmol)導入して、−80℃で2時間攪拌を続けた。ここに、メタンスルホニルクロリド1.24g(10.8mmol)を加えて、0℃で1時間攪拌を続けた。ここへ更に、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.14g(0.61mmol)と6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を6ml加えて、室温で1時間攪拌を続けた。この溶液を30mlのジエチルエーテルで2度抽出し、得られた水層に6mol/L塩酸水溶液を10ml加えて酸性とし、これを30mlの酢酸エチルで3度抽出後、有機層を食塩水で洗浄した。こうして得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別後、濃縮したところ、3−フェニル−2−フロロアクリル酸を0.598g(3.60mmol)得た。収率は60%であり、E:Z=0:100であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、今まで、ペンタフルオロエタン調製用の中間体としての利用がほとんどであり、他の有機化学的利用に関してはまったくと言っていいほど手つかずの状態であった1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を原料とする医薬および農薬の中間体として有用なフロロアクリル酸誘導体またはその塩の製造方法を提供する。
本発明によって、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を有効利用することが可能となる。
本発明によって提供されるフロロアクリル酸誘導体またはその塩は、医薬および農薬の中間体として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で示される1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、下記式(III)で示される化合物(III)とを、下記式(IV)で示されるリチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させる工程1;
CFCHClF (II)
【化1】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)
−Li (IV)
(式中、Rは、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、または1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基を表す。)
工程1の反応生成物を前記リチウム化合物(IV)または下記式(VI)で示されるスルホニウムクロリド(VI)を含む反応系中で反応させる工程2;
−SO−Cl (VI)
(式中、Rは、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表す。)
および
工程2の反応生成物を加水分解する工程3
からなる下記(I)で示されるフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法。
【化2】

(式中、RおよびRは、各々、前と同じ意味を表す。)
【請求項2】
前記工程2が、工程1の反応生成物から単離した下記(V)で示される化合物(V)を、前記リチウム化合物(IV)を含む反応系中で反応させる工程である請求項1に記載のフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法。
【化3】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して、−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記工程2が、工程1の反応生成物を単離することなく、前記リチウム化合物(IV)を含む反応系中で反応させる工程である請求項1に記載のフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法。
【請求項4】
前記工程2が、工程1の反応生成物を単離することなく、前記スルホニウムクロリド(VI)を含む反応系中で反応させる工程である請求項1に記載のフロロアクリル酸誘導体(I)またはその塩の製造方法。
【請求項5】
前記式(II)で示される1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンと、前期式(III)で示される化合物(III)とを、前記式(IV)で示されるリチウム化合物(IV)またはカリウムtert−ブトキシドを含む反応系中で反応させて下記式(V)で示される化合物(V)を製造する方法。
【化4】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)
【請求項6】
下記式(V)で示される化合物。
【化5】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、水素原子、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい高級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよい低級アルケニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルキル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアル低級アルケニル基、または1個以上の置換基で置換されていてもよい複素環基を表し、RおよびRは、結合して−(CH−(nは、2〜5の整数を表す。)を形成していてもよい。)

【公開番号】特開2009−286762(P2009−286762A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143899(P2008−143899)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月12日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第88春季年会2008年 講演予稿集2」に発表
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】