説明

フロントフォーク

【課題】 フォーク本体に内装の懸架バネにおけるバネ力を調整する際に、リヤクッションあるいは対となる他方のフロントフォークにおける懸架バネと独立するバネ力調整を可能にする。
【解決手段】 車体側チューブ1と車輪側チューブ2とからなるフォーク本体に内装の懸架バネSにおける上端位置をフォーク本体に内装のジャッキ機構の伸縮駆動で昇降させて懸架バネSにおけるバネ力の調整を可能にする単独のフロントフォークにおいて、車体側チューブ1における上端開口を閉塞するキャップ部材11が軸芯部あるいは軸芯から偏芯する部位にジャッキ機構に連通する透孔11aを有すると共に、この透孔11aがフォーク本体の外に配設される単一の専用通路Lを介して同じくフォーク本体の外に配設される単一の専用流体圧給排源100に連通し、この専用流体圧給排源100の作動でジャッキ機構を伸縮駆動させ、懸架バネSにおけるバネ力の調整を可能にしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに関し、特に、二輪車の前輪側に架装されて下端部で二輪車における前輪を懸架しながらその前輪に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器たるフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の前輪側に架装されて下端部で二輪車における前輪を懸架しながらその前輪に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器たるフロントフォークとしては、これまでに種々の提案がある。
【0003】
その中で、たとえば、特許文献1には、内装される懸架バネにおけるバネ力を調整して、このバネ力に基づく反力で二輪車における車高を高低調整し得るとするフロントフォークの提案が開示されている。
【0004】
すなわち、この特許文献1に開示されているところは、二輪車の前輪側に架装されるフロントフォークと二輪車の後輪側に架装されるリヤクッションユニットにおける各懸架バネのバネ力を単一の圧力源たる圧力部に対する操作で調整して、二輪車における車高を高低調整し得るとする。
【0005】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案にあっては、いわゆる単一の操作でフロントフォークとリヤクッションユニットにおける各懸架バネのバネ力を調整し得て、二輪車における車高を高低調整し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4‐8934公報(特許請求の範囲,第2図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、単一の操作でフロントフォークとリヤクッションユニットにおける各懸架バネのバネ力を調整し得る点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些か不具合があると指摘される可能性がある。
【0008】
すなわち、上記の提案にあって、圧力源たる圧力部が単一とされるから、この圧力部の圧力は、フロントフォークの懸架バネにおけるバネ上荷重およびリヤクッションユニットの懸架バネにおけるバネ上荷重に釣り合うようになる。
【0009】
それゆえ、二輪車における荷重が異なる場合、すなわち、たとえば、前輪側より後輪側の方がバネ上荷重を大きくする場合には、上記の圧力部で各懸架バネのバネ力を調整する結果、たとえば、フロントフォークを架装する前輪側の方が後輪側に比較して車高を高くする不具合がある。
【0010】
その結果、二輪車において、後輪側の荷重を大きくする場合には、前輪側の車高が高くなり、二輪車の発進の際にスクウォート現象が発現され易くなって、乗り心地を悪くする不具合を招く。
【0011】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、フォーク本体に内装の懸架バネにおけるバネ力を調整する際に、リヤクッションあるいは対となる他方のフロントフォークにおける懸架バネと独立するバネ力調整を可能にして、二輪車における乗り心地を改善し、その汎用性の向上を期待するのに最適となるフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明によるフロントフォークの構成を、基本的には、車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体に内装の懸架バネにおける上端位置を上記のフォーク本体に内装のジャッキ機構の伸縮駆動で昇降させて上記の懸架バネにおけるバネ力の調整を可能にするフロントフォークにおいて、上記の車体側チューブにおける上端開口を閉塞するキャップ部材が軸芯部あるいは軸芯から偏芯する部位に上記のジャッキ機構に連通する透孔を有すると共に、この透孔が上記のフォーク本体の外に配設される単一の専用通路を介して同じくこのフォーク本体の外に配設される単一の専用流体圧給排源に連通し、この専用流体圧給排源の作動で上記のジャッキ機構を伸縮駆動させ、上記の懸架バネにおけるバネ力の調整を可能にしてなるとする。
【発明の効果】
【0013】
それゆえ、この発明にあっては、単独のフロントフォークを構成するフォーク本体に内装のジャッキ機構がこのフォーク本体の外に配設の単一の専用通路を介して同じくこのフォーク本体の外に配設の単一の専用流体圧給排源に連通するから、この専用流体圧給排源の作動でその単独のフロントフォークにおける懸架バネのバネ力のみを調整し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態によるフロントフォークを一部破断して示す縦断面図である。
【図2】図1のフロントフォークに内装されるダンパにおける減衰部たるピストン部を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】図1のフロントフォークにおける車体側チューブの上端部分を示す部分拡大縦断面図である。
【図4】専用流体圧給排源が駆動機構に組み込まれた状態を示す縦断面図である。
【図5】他の実施形態による駆動機構を図4と同様に示す図である。
【図6】この発明の他の実施形態によるフロントフォークにおける車体側チューブの上端部分を図3と同様に示す図である。
【図7】一対のフロントフォークがブリッジ機構で連結された状態を示す部分正面図である。
【図8】図7のブリッジ機構を構成するアンダーブラケットを示す平面図である。
【図9】他の実施形態によるフロントフォークにおける車体側チューブの上端部分を図3と同様に示す図である。
【図10】他の実施形態による減衰部たるピストン部を図2と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるフロントフォークは、二輪車の前輪側に架装されて下端部で二輪車における前輪を懸架しながらその前輪に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器として機能する。
【0016】
そして、このフロントフォークにあっては、図1に示すように、車体側チューブ1と車輪側チューブ2とからなるフォーク本体に内装の懸架バネSにおける上端位置をこのフォーク本体に内装のジャッキ機構(符示せず)の駆動で昇降させて、懸架バネSにおけるバネ力の調整を可能にする。
【0017】
なお、このフロントフォークにあって、図示するところでは、フォーク本体は、車体側チューブ1をアウターチューブにすると共に車輪側チューブ2をインナーチューブにする倒立型に設定されている。
【0018】
しかし、この発明の具現化にあって、図示しないが、上記と逆に、フォーク本体が車体側チューブ1をインナーチューブにすると共に車輪側チューブ2をアウターチューブにする正立型に設定されても良い。
【0019】
図1に示すフロントフォークについて少し説明すると、このフロントフォークは、車体側チューブ1と車輪側チューブ2とからなるフォーク本体が懸架バネSと、ジャッキ機構と、ダンパ(符示せず)とを内装してなる。
【0020】
そして、このフロントフォークにあって、懸架バネSは、下端が後述するダンパにおけるシリンダ体3側に担持され、上端が筒状に形成のスペーサS1を介して、ジャッキ機構に係止されて、車体側チューブ1内から車輪側チューブ2を突出させる方向に、すなわち、フォーク本体を伸長方向に附勢している。
【0021】
具体的には、懸架バネSの下端がシリンダ体3の上端に連設されるオイルロックケース5の上端に担持され、懸架バネSの上端を係止させるスペーサS1の上端がジャッキ機構を構成するピストン部材12の下端に係止される。
【0022】
なお、ジャッキ機構を構成するピストン部材12は、後述するが、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の下端側部に摺接状態に昇降可能に介装されている。
【0023】
また、上記のオイルロックケース5には、ダンパにおけるロッド体4に保持されたオイルロックピース41が対向すると共に、このオイルロックピース41がフォーク本体の最収縮作動時にオイルロックケース5内に嵌入して、クッション効果を発揮すると共にオイルロック現象を発現させる。
【0024】
一方、このフロントフォークにあって、ダンパは、車輪側チューブ2内に立設される下端側部材たるシリンダ体3と、車体側チューブ1内に垂設されて上端側部材とされると共に図中で下端部となる先端部がシリンダ体3内に出没可能に挿通されるロッド体4とを有してなる。
【0025】
シリンダ体3の下端部は、図示しないが、車輪側チューブ2の下端開口を閉塞するボトム部材21に結合され、ロッド体4の上端部は、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11にロックナット42の配在下に螺着され、したがって、このダンパにあっては、フォーク本体に一体的に連結されてフォーク本体の伸縮作動に同期して伸縮作動する。
【0026】
それゆえ、この発明によるフロントフォークにあっては、ダンパにおける伸縮方向たる軸線方向とフォーク本体における伸縮方向たる軸線方向が一致し、したがって、伸縮するフォーク本体に対するダンパの円滑な伸縮作動を保障し易くなる。
【0027】
また、このダンパにあっては、ロッド体4の先端部に保持されながらシリンダ体3内に摺動可能に収装されるピストン部Pを有し、このピストン部Pは、図2に示すように、ロッド体4における先端部を構成する先端部材43に保持されながらシリンダ体3内に摺動可能に収装されてこのシリンダ体3内に上方室R1と下方室R2を画成するピストン体6を有してなる。
【0028】
そして、このピストン部Pにあって、ピストン体6は、伸側ポート6aと圧側ポート6bとを有すると共に、伸側ポート6aの下流側端を開放可能に閉塞する伸側減衰バルブ6cと、圧側ポート6bの下流側端を開放可能に閉塞する圧側減衰バルブ6dとを有してなる。
【0029】
ちなみに、各側の減衰バルブ6c,6dは、環状リーフバルブからなり、内周端固定で外周端自由の態様に配設され、外周端が撓むことでそこに出現する隙間を作動油が通過し得るとして、所定の減衰作用を具現化する。
【0030】
その一方で、上記のダンパにあっては、図示しないが、シリンダ体3の下端部内にベースバルブ部を有すると共に、シリンダ体3の外側をリザーバ室R(図1参照)にしており、このリザーバ室Rにシリンダ体3内の下方室R2がベースバルブ部を介して連通可能とされている。
【0031】
このとき、ベースバルブ部は、同じく図示しないが、シリンダ体3内の下方室R2の作動油がリザーバ室Rに向けて流出するのを許容する圧側減衰バルブを有すると共に、この圧側減衰バルブに並列してリザーバ室Rからの作動油のシリンダ体3内の下方室R2への流入を許容するチェック弁を有してなる。
【0032】
それゆえ、上記のダンパにあっては、フォーク本体の収縮作動に同期してシリンダ体3内でピストン部Pが下降する収縮作動時に、シリンダ体3内の下方室R2の作動油がピストン部Pの圧側減衰バルブ6dを介して上方室R1に流入する。
【0033】
そして、このとき、下方室R2で余剰となるロッド侵入体積分に相当する量の作動油がベースバルブ部における圧側減衰バルブを介してリザーバ室Rに流出し、所定の圧側減衰作用を具現化する。
【0034】
そして、上記のダンパにあっては、フォーク本体の伸長作動に同期してシリンダ体3内でピストン部Pが上昇する伸長作動時に、シリンダ体3内の上方室R1の作動油がピストン部Pの伸側減衰バルブ6cを介して下方室R2に流出する。
【0035】
このとき、下方室R2で不足するロッド退出体積分に相当する量の作動油がベースバルブ部におけるチェック弁を介してリザーバ室Rから補充され、所定の伸側減衰作用を具現化する。
【0036】
ちなみに、前記したロッド体4が、図中に仮想線図で示すように、軸芯部に透孔4aを有するパイプ体で形成される場合には、このロッド体4における重量を軽減できると共に、断面係数を大きくでき、曲げ強度大きくできる点で有利となる。
【0037】
また、前記した先端部材43にあっても、図中に仮想線図で示すように、透孔からなる通路43aを有する場合には、このピストン部Pにおいて、この通路43aをバイパス路に設定し得る。
【0038】
そして、このバイパス路を利用して上記の上方室R1と下方室R2との連通を許容すると共に、このバイパス路中にこのバイパス路における作動油の通過流量の多少を制御するコントロールバルブ(図示せず)を配置する場合には、上記の各側の減衰バルブ6c,6dによる減衰作用の高低制御を可能にし得る。
【0039】
このとき、上記したように、ロッド体4が軸芯部の透孔4aを有してなる場合には、この透孔4aに上記の図示しないコントロールバルブに連結されるコントロールロッド(図示せず)を収装し得る。
【0040】
そしてまた、このコントロールロッドを車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11などに収装したアクチュエータで駆動し得る。
【0041】
ところで、この発明にあっては、前記したように、フォーク本体に内装の懸架バネSにおけるバネ力をジャッキ機構で調整し得るが、以下には、このジャッキ機構について少し説明する。
【0042】
先ず、ジャッキ機構は、図3に示すように、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11における下端側部11aと、このキャップ部材11における下端側部11aに摺動可能に連結されてこの下端側部11aとの間に膨縮する圧力室R3を画成するピストン部材12とを有してなる。
【0043】
そして、このジャッキ機構にあっては、フォーク本体の外に配設の単一となる専用流体圧給排源100(図1参照)からの圧力室R3に対する流体の給排でこの圧力室R3を膨縮させてピストン部材12をキャップ部材11に対して昇降させ、懸架バネSにおける上端位置を昇降させる。
【0044】
そのため、キャップ部材11は、軸芯部に透孔11bを有し、この透孔11bがジャッキ機構における圧力室R3に連通すると共にフォーク本体の外に配設の専用通路Lを介して上記の専用流体圧給排源100に連通してなる。
【0045】
一方、このキャップ部材11にあっては、下端側部11aから下方に向けて突出する下端軸部11cを有してなり、図示するところでは、この下端軸部11cの軸芯部に前記したロッド体4の上端部をロックナット42の配在下に螺着させている。
【0046】
このことからも、前記したように、ダンパにあっては、ロッド体4の上端部が車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11に螺着され、したがって、シリンダ体3が車輪側チューブ2に結合されることと併せて、フォーク本体に一体的に連結される。
【0047】
そして、このことから、ダンパにおける伸縮方向たる軸線方向とフォーク本体における伸縮方向たる軸線方向が一致し、それゆえ、伸縮するフォー本体に対するダンパの円滑な伸縮作動を保障し易くなる。
【0048】
ちなみに、上記のキャップ部材11における言わば本体部の外周にはシール11dが介装されていて車体側チューブ1との間における液密性を保障している。
【0049】
ところで、キャップ部材11における下端側部11aとの間に圧力室R3を画成するピストン部材12は、キャップ部材11における下端側部11aの外周に摺接する上方筒部12aを有すると共に、上方筒部12aを上端に連設させる下方部12bを有してなる。
【0050】
そして、このピストン部材12にあって、下方部12bは、キャップ部材11における下端側部11aから下方に向けて突出して、ロッド体4の上端部を軸芯部に螺着させる前記の下端軸部11cの外周に摺接し、この状態で、その下端にバネシートS2を介して前記した筒状に形成のスペーサS1の上端を係止させる。
【0051】
ちなみに、上記のキャップ部材11における下端側部11aの外周にはシール11eが介装されていて、ピストン部材12における上方筒部12aとの間における液密性を保障し、ピストン部材12における下方部12bの内周にはシール12cが介装されていて、上記のキャップ部材11における下端軸部11cとの間における液密性を保障する。
【0052】
それゆえ、以上のように形成されたジャッキ機構にあっては、ピストン部材12における外径がインナーチューブからなる車輪側チューブ2の内径より小さく設定され、フォーク本体が最収縮するときに、車体側チューブ1内に侵入してくる車輪側チューブ2に干渉しないから、ジャッキ機構の駆動が妨げられることを危惧しなくて済む。
【0053】
そして、このジャッキ機構にあっては、ピストン部材12の上方筒部12aにおける外径を車輪側チューブ2の内径より小さくする一方で、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11における下端側部11aの外周に摺接させる。
【0054】
それゆえ、このジャッキ機構にあっては、キャップ部材11とピストン部材12との間に画成される圧力室R3を、たとえば、前記した特許文献1に開示の提案の場合に比較して、たとえば、車輪側チューブ2の内径を同一にするとき、圧力室R3における受圧面積を大きくでき、供給圧に対する作動効率を良くし得る。
【0055】
また、このジャッキ機構にあっては、前記した特許文献1に開示の提案に比較して、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11と、これに連結するピストン部材12とで構成されるから、部品点数を少なくすると共に、既存のキャップ部材11に対する僅かな改変で足りるから、いたずらなコスト高を招来しない。
【0056】
一方、前記した専用流体圧給排源100は、図3に示すように、前記したキャップ部材11の軸芯部に開穿の透孔11bに単一となる専用通路Lを介して連通し、したがって、この専用流体圧給排源100の作動で言わば単独となるフロントフォークにおけるフォーク本体に内装の前記したジャッキ機構の伸縮駆動が可能とされる。
【0057】
少し説明すると、専用流体圧給排源100は、図示するところでは、フォーク本体の外に配設の単一の専用通路Lに連通する流体室R4を有する有頭筒状に形成のハウジング101と、このハウジング101内に摺動可能に収装されて上記の流体室R4を画成するピストン102とを有してなる。
【0058】
そして、この専用流体圧給排源100にあっては、ピストン102が、図中に矢印で示すように、外部からの外力の入力で前進してハウジング101内に没入するとき、流体室R4の流体をジャッキ機構に向けて流出する。
【0059】
そしてまた、この専用流体圧給排源100にあって、上記の外力が解消されるとき、ピストン102がジャッキ機構における圧力作用で、ハウジング101内から抜け出るようになって、ジャッキ機構に供給された流体を流体室R4に流入させるように戻す。
【0060】
このとき、この専用流体圧給排源100に利用される流体としては、たとえば、フォーク本体内に収容される作動油とされても良いが、フォーク本体で利用される作動油量を減らすためには、異なる油が利用され、あるいは、油に代わる水が利用され、さらには、気体が利用されるとしても良く、特に、流体として気体を利用する場合には、ジャッキ機構の伸縮駆動によるエアバネ効果の発揮を期待できる。
【0061】
それゆえ、上記の専用流体圧給排源100にあっては、単独のフロントフォークにおける懸架バネSのバネ力のみを調整するから、前記した特許文献1に開示の提案のように、単一の圧力源たる圧力部で二本の油圧緩衝器、すなわち、フロントフォークとリヤクッションユニットにおける各懸架バネのバネ力を同時に調整する場合に比較して、懸架バネSにおける所定のバネ力調整を設定通りに具現化でき、二輪車における乗り心地を損なうことがない。
【0062】
ところで、上記の専用流体圧給排源100の作動については、この発明では、図4および図5に示す駆動機構200を利用することで、左右で一対となる各フロントフォークにおけるフォーク本体に内装の懸架バネSにおけるそれぞれのバネ力を同時に調整することを可能にしている。
【0063】
つまり、二輪車にあって、前輪を懸架するフロントフォークは、多くの場合に、左右となる一対とされるもので、その限りには、フロントフォークにおける懸架バネSのバネ力が調整されるのは、二本同時でないと不合理となる。
【0064】
一方、前記した特許文献1に開示の提案にあっては、言わば一つの圧力源たる圧力部で二本の油圧緩衝器における懸架バネのバネ力を調整できるから、この特許文献1に開示の提案によっても左右で一対となるフロントフォークにおける懸架バネのバネ力を調整することが可能になると言い得る。
【0065】
しかし、前記したところであるが、特許文献1に開示の提案にあっては、二本のフロントフォークに一つの圧力部が連結された構造になるから、フロントフォークの搬送時や二輪車への架装時に二本のフロントフォークが言わば繋がった状態のまま、搬送されたり二輪車に架装されたりすることになり、不便であり、作業に迅速性を欠くことになる不具合がある。
【0066】
そこで、この発明では、各フロントフォークには単一の専用流体圧給排源100が接続されるとし、それぞれの専用流体圧給排源100を作動させることで、各懸架バネSにおけるバネ力の調整を実現可能にする。
【0067】
そして、基本的には、二輪車に架装されるフロントフォークは、左右一対とされるから、この発明にあっては、図4および図5に示すように、各フロントフォークが有する専用流体圧給排源100を駆動機構200の利用で同時作動させるようにする。
【0068】
以上のような背景の下に、この駆動機構200は、図4および図5に示すように、共に、ケーシング201に各専用流体圧給排源100を連結させると共に、ケーシング201に保持される単一の主駆動軸202と、同じくケーシング201に保持されながら主駆動軸202の駆動に連動して駆動する一対の従駆動軸203,203とを有してなり、この従駆動軸203,203がそれぞれの専用流体圧給排源100におけるピストン102をハウジング101内で摺動させる。
【0069】
少し説明すると、図4に示す駆動機構200にあって、主駆動軸202は、ケーシング201に螺装されていて、その回動時にケーシング201に対して進退する。
【0070】
そして、この主駆動軸202は、回転力の入力端部となる後端部にケーシング201に回動不能に収装される基板204を連結させ、この主駆動軸202の回動によるケーシング201に対する出没時に、この基板204をケーシング201に対して出没させる。
【0071】
一方、各従駆動軸203,203は、ロッド状体に形成されてケーシング201に対して進退するように構成され、先端を各専用流体圧給排源100におけるピストン102に当接させている。
【0072】
そして、各従動軸203,203は、基端部を上記の基板204を連結させており、それゆえ、主駆動軸202の回動時にケーシング201に対して出没して、上記のピストン102を各専用流体圧給排源100におけるハウジング101内で摺動させて進退させる。
【0073】
それに対して、図5に示す駆動機構200では、先ず、主駆動軸202は、ケーシング201に回動可能に保持され、その回動時に従駆動軸203を内装するガイドロッド205,205を歯車構造(符示せず)下に連動させる。
【0074】
そして、各ガイドロッド205,205は、図示するところでは、内側を六角穴(符示せず)とし、この六角穴にボルト状に形成された各従駆動軸203,203をそれぞれ嵌装させる。
【0075】
ちなみに、ガイドロッド205は、その回動で従駆動軸203を回動し得る限りには、上記した六角穴とボルト状体による連結に代えて任意の構造下に従駆動軸203に連結されて良く、また、図示しないが、たとえば、倍速構造や減速構造の介在下に連結されても良い。
【0076】
そしてまた、各従駆動軸203,203は、先端部をケーシング201に抜け止め構造(符示せず)下に螺合させると共に、先端を各専用流体圧給排源100におけるピストン102に当接させる。
【0077】
それゆえ、以上のように形成された各駆動機構200にあっては、主駆動軸202の回動操作で二つとなる各専用流体圧給排源100におけるハウジング101内でのピストン102の摺動を可能にし、流体室R4からのジャッキ機構における圧力室R3に対する流体の給排を可能にする。
【0078】
そして、図4に示すところでは、図5に示すところと比較して、駆動機構200における構成部品を少なくする利点があり、図5に示すところでは、図4に示すところに比較して、円滑な駆動を望める利点あがる。
【0079】
ところで、上記したところでは、各専用流体圧給排源100が駆動機構200に連結されるとし、具体的に如何なる態様で連結されるかについてまでは言及しなかったが、図示するところでは、各専用流体圧給排源100におけるハウジング101が駆動機構200におけるケーシング201に螺着されている。
【0080】
つまり、専用流体圧給排源100におけるハウジング101が駆動機構200におけるケーシング201に螺着される場合には、その実際を鑑みると、他に連結部材を要しない点で有利となることはもちろんであるが、連結作業を迅速に実践し得る点でも有利となる。
【0081】
そこで、この発明では、専用流体圧給排源100におけるハウジング101が駆動機構200におけるケーシング201に螺着されるが、そのため、専用流体圧給排源100におけるハウジング101が下端部の外周に螺条101a(図3参照)を有してなる。
【0082】
一方、専用流体圧給排源100におけるハウジング101が駆動機構200におけるケーシング201に螺着された態勢でピストン102がハウジング101内で摺動し得るとする構成上、ピストン102がハウジング101内から抜け出すことになっては、駆動機構200への組み込みを実現できない。
【0083】
そこで、専用流体圧給排源100におけるハウジング101が駆動機構200におけるケーシング201に螺着されるまでの間、ピストン102のハウジング101内からの抜け出しを適宜の手段で阻止することが望ましい。
【0084】
このとき、適宜の手段としては、任意の構成を選択でき、たとえば、図示しないが、ハウジング101の開口端をポンチ加締めして抜け止め変形させる方策の他、たとえば、図6に示すように、上記した螺条101aに蓋部材たる仮キャップ300を螺装、すなわち、装着する方策などがある。
【0085】
ところで、専用流体圧給排源100において、ハウジング101内からのピストン102の脱け出しを阻止するために、上記の蓋部材たる仮キャップ300を利用する場合には、この仮キャップ300の装着が爾後のこのフロントフォークにおける組立作業を妨げないように配慮する必要がある。
【0086】
すなわち、この種フロントフォークは、製品として供給されるとき、左右のフロントフォークが、たとえば、図7に示すように、ブリッジ機構400の利用下に一体化されて、左右で一対となる仕様とされる。
【0087】
このとき、ブリッジ機構400は、アッパーブラケット401と、アンダーブラケット402と、ステアリングシャフト403とを有してなるが、これをフロントフォークに連結するのには次の手順による。
【0088】
すなわち、まず、アンダーブラケット402をフロントフォークにおける上端側部に固着するが、このときには、あらかじめステアリングシャフト403をアンダーブラケット402に一体的に連結しておく。
【0089】
そして、このステアリングシャフト403を一体的に連結してなるアンダーブラケット402にフロントフォークにおける上端側部を挿通させるようにして連結する。
【0090】
ついで、アッパーブラケット401にフロントフォークにおける上端部に挿通させるようにして連結し、このとき、ステアリングシャフト403の上端部をアッパーブラケット401に連結する。
【0091】
ちなみに、ステアリングシャフト403は、図示しないが、二輪車における車体の先端部を構成するヘッドパイプ内に回動可能に導通され、これによって、一対のフロントフォークが二輪車の前輪側で前輪を挟むようにして左右方向に転舵可能とされる。
【0092】
一方、上記のブリッジ機構400を構成するアッパーブラケット401およびアンダーブラケット402は、たとえば、アッパーブラケット401を表示する図8に示すように、両側端部にフロントフォークの上端側部を挿通させる取付孔401aを有してなる。
【0093】
そして、この取付孔401aは、フロントフォークの上端側部をいたずらな抵抗なく挿通させることを可能にする割り401bを有して形成され、爾後にするボルト利用による締め付けでフロントフォークを固定的に連結させる。
【0094】
それゆえ、アンダーブラケット402にあっても同様であるが、アッパーブラケット401におけるこの取付孔401aの内径W2(図8参照)は、フロントフォークを構成するアウターチューブ1の外径W(図6参照)より大きくなるが、必要以上には拡開しない。
【0095】
したがって、フロントフォークの上端から外部に延びる専用流体圧給排源100にあっても、これがアッパーブラケット401における取付孔401aをいわゆる抵抗なく挿通し得る外径となるように設定されることが肝要となる。
【0096】
そして、図6に示すように、専用流体圧給排源100が前記した仮キャップ300を有してなる場合には、この仮キャップ300における外径W1がフロントフォークを構成するアウターチューブ1の外径Wより小さくなるのはもちろんだが、アッパーブラケット401における取付孔401aの内径W2より小さくなるように設定さることが肝要となる。
【0097】
前記した図1、すなわち、図3に示すところでは、フロントフォークがジャッキ機構を有して懸架バネSのバネ力調整を可能にするとしたが、上記した図6および後述の図9に示すところでは、フロントフォークがジャッキ機構に加えて減衰作用の制御を可能にするアクチュエータAを有してなる。
【0098】
そして、この図6および図9に示すフロントフォークにあって、アクチュエータAは、ダンパにおけるシリンダ体3に内装のピストン部P(図10参照)における減衰作用を高低制御する。
【0099】
なお、この図6および図9に示す各実施形態にあって、その構成が前記した図3に示す実施形態の場合と同様となるところについては、要する場合を除き、図中に同一の符号を付するのみとして、その詳しい説明を省略する。
【0100】
以下に、説明すると、アクチュエータAは、図6および図9に示す各実施形態にあって、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の軸芯部に収装され、このアクチュエータAに接続するリード線A1は、キャップ部材11を径方向に挿通してこのキャップ部材11の外に延在される。
【0101】
このとき、リード線A1は、図6に示すところでは、斜め上方に向けて延在され、図9に示すところでは、水平方向に延在されるが、各図中に仮想線図で示すように、上方に折り曲げられる場合には、前記したアッパーブラケット401におけるこの取付孔401aの挿通を可能にする設定とされている。
【0102】
なお、アクチュエータAがキャップ部材11の軸芯部に配設されることからして、前記したジャッキ機構における圧力室R3に連通すべくキャップ部材11に開穿される透孔11bについては、図示するところでは、これが軸芯から偏芯する部位に設けられている。
【0103】
ところで、この発明にあって、キャップ部材11は、カバー部材13を有し、このカバー部材13の着脱で、キャップ部材11内へのアクチュエータAの配設を容易にすると共に、カバー部材13によるアクチュエータAの所定位置への定着とアクチュエータAを覆うことによる防水性の保障を容易にしている。
【0104】
まず、図6に示すところから説明すると、キャップ部材11は、軸芯部に上端を開口にする凹部11fを有し、この凹部11fにアクチュエータAを収装し、この凹部11fを形成する周壁部11gに開穿の斜め孔11hに上記のリード線A1を挿通させている。
【0105】
そして、カバー部材13は、上記のキャップ部材11における凹部11fの上端側部に形成の内側螺条11iに螺合する螺条13aを有し、このカバー部材13の上記のキャップ部材11への螺着でアクチュエータAの所定位置への定着を実現している。
【0106】
このとき、凹部11fの底部とアクチュエータAの下端との間に環状に形成のクッション部材A2が配設され、上記のカバー部材13の下端とアクチュエータの上端との間に同じく環状に形成のシール部材A3が配設されて、アクチュエータAに対する防水性を保障しながらアクチュエータAの定着性を保障し、特に、クッション部材A2の配設は、アクチュエータAの作動時の振動を打ち消す上で有利になる。
【0107】
一方、リード線A1は、前記したように、キャップ部材11における凹部11fを形成する周壁部11gに開穿の斜め孔11hを挿通するが、このリード線A1が挿通する斜め孔11hには、爾後に、図示しないが、多くの場合に、たとえば、モールド材が充填されて防水が図られるであろう。
【0108】
そして、この斜め上方に向けて延在されるリード線A1については、図6中に仮想線図で示すように、上方に折り曲げられるとき、前記したアンダーブラケット402におけるこの取付孔402aの挿通を可能にするのは前述した通りである。
【0109】
なお、上記のアクチュエータAは、リード線A1を介しての信号たる電力の入力時に後述するプッシュロッド73(図10参照)を図中で下降するように前進させ、上記の電力の解消時にプッシュロッド73を図中で上昇するように後退させるもので、たとえば、ソレノイドを有してなる。
【0110】
つぎに、図9に示すところを説明すると、キャップ部材11は、軸芯部に上端を開口にする凹部11fを有し、この凹部11fにアクチュエータAを収装し、この凹部11fを形成する周壁部11gに径方向に形成の切欠溝11jに上記のリード線A1を臨在させている。
【0111】
そして、上記の凹部11fの開口をカバー部材13の圧入で閉塞すると共に、このカバー部材13の圧入で上記のアクチュエータAを上記の凹部11fに定着させている。
【0112】
以上からすると、キャップ部材11は、金属材料からなるが、この図9に示すカバー部材13については、圧入操作を容易にすると共に、キャップ部材11に対する定着性を良くし、また、キャップ部材11に対して気密性を得易くするために、たとえば、軟質合成樹脂材で形成され、したがって、交換する場合を含めて安価にして防水性および耐久性を期待できる。
【0113】
また、カバー部材13の圧入によるアクチュエータAの下端との間に環状に形成のクッション部材A2を配設するのが好ましく、このクッション部材A2が機能するところについては、前述した通りである。
【0114】
なお、上記のキャップ部材11における周壁部11gの外周にはシール11dが介装されていて車体側チューブ1との間における液密性が保障されているのは前述した通りである。
【0115】
一方、リード線A1は、前記したように、キャップ部材11における凹部11fを形成する周壁部11gに径方向に形成の切欠溝11iに臨在されるが、このリード線A1が臨在される切欠溝11iには、爾後に、図示しないが、多くの場合に、たとえば、モールド材が充填されて防水が図られる。
【0116】
ちなみに、この図9に示す実施形態の場合には、キャップ部材11を車体側チューブ1に螺着させるとき、リード線A1が切欠溝11iから撤去されており、したがって、キャップ部材11の螺合操作は、なんら不具合なく実践できる。
【0117】
なお、この図9におけるアクチュエータAにあっても、リード線A1を介しての信号たる電力の入力時に後述するプッシュロッド73を図中で下降するように前進させ、上記の電力の解消時にプッシュロッド73を図中で上昇するように後退させるもので、たとえば、ソレノイドを有してなる。
【0118】
以上のように形成された図6および図9に示すフロントフォークにあっては、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11の軸芯部に収装されるアクチュエータAから延びるリード線A1がキャップ部材11を径方向に挿通してこのキャップ部材11の外に延在されるから、このリード線A1が車体側チューブ1の上端から上方に向けて延在される場合に比較して、雨水がリード線A1周りを介して内部に浸入する危険性を大幅に低減させ得る。
【0119】
このとき、リード線A1がキャップ部材11を挿通するのではなく、車体側チューブ1と共に、あるいは、車体側チューブ1のみを径方向に貫通する場合に比較して、車体側チューブ1に言わば余計な加工を施さなくて済むから、車体側チューブ1の耐久性をいたずらに低下させないのはもちろんのこと、いわゆる加工数の増大を招かない。
【0120】
さらに、上記のリード線A1がキャップ部材11を径方向に貫通してこのキャップ部材11の外に延在されるから、このリード線A1が車体側チューブ1の上端から上方に向けて延在される場合に比較して、いわゆる横力を受けて倒れることがなく、このリード線A1の倒れや、このリード線A1の起立および倒れの繰り返しによる内部での断線の危惧がない。
【0121】
その結果、フォーク本体に内装されて遠隔操作によって減衰作用を電気的に制御するアクチュエータAを有するフロントフォークにあって、アクチュエータAに接続されるリード線A1における電気的故障が発現され難くなる。
【0122】
一方、前記した図6および上記した図9に示す各実施形態のフロントフォークにあっては、リード線A1を介してのアクチュエータAに対する信号たる電力の入力時に、ダンパにおけるシリンダ体3に内装のピストン部P(図10参照)における減衰作用を高低制御する。
【0123】
図10は、前記した図1に示すフロントフォークが内装するダンパにおける減衰部たるピストン部Pを図2に示すのと同様に、図6および図9に示すフロントフォークが内装するダンパにおける減衰部たるピストン部Pを示す。
【0124】
そこで、以下には、この図10に示す減衰部たるピストン部Pについて少し説明するが、アクチュエータAをいわゆるオン作動させてプッシュロッド73を前進させ、このプッシュロッド73と連動するニードル弁体71からなるコントロールバルブ7が作動して減衰部を迂回するバイパス路における作動油の通過流量を少なくし、減衰部による減衰作用を大きくする。
【0125】
そして、上記と逆に、リード線A1を介しての信号たる電力の解消時に、アクチュエータAがいわゆるオフ作動してプッシュロッド73を後退させ、このプッシュロッド73と連動するコントロールバルブ7が減衰部を迂回するバイパス路における作動油の通過流量を多くし、減衰部による減衰作用を小さくする。
【0126】
ちなみに、この図10に示すところにあって、ピストン部Pは、基本的には、前記した図2に示すところと同様の構成を有してなるので、その構成が同一となるところについては、要する場合を除き、図中に同一の符号を付するのみとして、その詳しい説明を省略する。
【0127】
まず、ピストン部Pは、シリンダ体3内においてピストン体6を保持するロッド体4の先端部43にバイパス路(符示せず)を有すると共に、このバイパス路における通過流量を制御するコントロールバルブ7を有してなる。
【0128】
このバイパス路は、前記した図2に示すところで開示した透孔からなる通路43aに相当するが、ピストン部Pにあって、伸側減衰バルブ6cと圧側減衰バルブ6dとを迂回して上方室R1と下方室R2との連通を許容する。
【0129】
そして、コントロールバルブ7は、上記の各側の減衰バルブ6c,6dによる減衰作用を制御するもので、図示するところでは、ニードル弁体71を有し、このニードル弁体71における尖端部71aがバイパス路を構成する流路(符示せず)で進退してこの流路における作動油の通過流量を大小制御する。
【0130】
そして、このコントロールバルブ7におけるニードル弁体71は、その基端側に介装された附勢バネ72の附勢力によって図中での上昇方向となる後退方向に附勢されており、具体的には、前述したアクチュエータAからの推力であるが、外力の入力時に図中で下降するように前進して、上記したバイパス路における作動油の通過流量を大小させる。
【0131】
なお、上記のニードル弁体71の基端部71bは、外周にシール71cを有する隔壁部とされ、この隔壁部の背面には、アクチュエータAからの推力を伝達させるコントロールロッドたるロッド体4の軸芯部に開穿の透孔4aを挿通するプッシュロッド73の図中で下端となる先端が隣接されている。
【0132】
それゆえ、上記のダンパにあっては、フォーク本体の収縮作動に同期してシリンダ体1内でピストン部Pが下降する収縮作動時に、シリンダ体1内の下方室R2の作動油がピストン部Pの圧側減衰バルブ6dを介して上方室R1に流入すると共に、下方室R2で余剰となるロッド侵入体積分に相当する量の作動油がベースバルブ部における圧側減衰バルブを介してリザーバ室R(図1参照)に流出し、所定の圧側減衰作用を具現化する。
【0133】
そして、上記のダンパにあっては、フォーク本体の伸長作動に同期してシリンダ体1内でピストン部Pが上昇する伸長作動時に、シリンダ体1内の上方室R1の作動油がピストン部Pの伸側減衰バルブ6cを介して下方室R2に流出すると共に、下方室R2で不足するロッド退出体積分に相当する量の作動油がベースバルブ部におけるチェック弁を介してリザーバ室Rから補充され、所定の伸側減衰作用を具現化する。
【0134】
以上のように形成されたこの図6に示すフロントフォークにあっても、内装するジャッキ機構における圧力室R3には、単一の専用通路Lを介して単一の専用流体圧給排源100が設続されるとしており、この専用流体圧給排源100は、前記したように、駆動機構200に組み込まれ(図4および図5参照)、この駆動機構200における主駆動軸202に対する回動操作で作動するのは前記した通りである。
【0135】
前記したところでは、この発明を具現化する油圧緩衝器が二輪車の前輪側に架装されて二輪車の前輪を懸架する左右のフロントフォークとされるから、この左右のフロントフォークが内装する懸架バネSのバネ力の調整については、それぞれが同時に調整されるのが好ましいとして説明した。
【0136】
しかし、凡そこの種の左右で一対とされるフロントフォークにあっては、前記したように、上端側がブリッジ機構400たるアッパーブラケット401およびアンダーブラケット402で固定的に連結される(図7参照)と共に、図示しないが、下端部が前輪の車軸を介して固定的に連結される。
【0137】
このことからすると、左右のいずれか一方のフロントフォークにおいてジャッキ機構を作動させれば、他方のフロントフォークにおいてジャッキ機構が作動しなくても、見掛け上、左右のフロントフォークにおけるロッド反力を変更し得ることになる。
【0138】
それゆえ、この発明によるフロントフォークが利用される実際を鑑みると、左右のフロントフォークのいずれか一方のフロントフォークにおいてジャッキ機構が作動すれば足り、このことからして、この発明にあっては、左右のフロントフォークのいずれか一方のフロントフォークにおいてジャッキ機構が故障する場合にも、車高長性を具現化できる利点がある。
【0139】
また、前記したところでは、この発明を具現化する油圧緩衝器が二輪車の前輪側に架装されて二輪車の前輪を懸架するフロントフォークとされる場合を例にしたが、この発明が意図するところからすると、上記に代えて、四輪車両における四輪各部に配設されて懸架装置とされるショックアブソーバに具現化されても良く、その場合に作用効果が異ならないこともちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0140】
フロントフォークを構成するフォーク本体に内装の懸架バネにおけるバネ力を調整する際に、リヤクッションあるいは対となる他方のフロントフォークにおける懸架バネと独立するバネ力調整を可能にして、二輪車における乗り心地を改善し、その汎用性の向上を期待するのに向く。
【符号の説明】
【0141】
1 車体側チューブ
2 車輪側チューブ
3 シリンダ体
4 ロッド体
11 キャップ部材
11a 下端側部
11b 透孔
11c 下端軸部
11h 斜め孔
11j 切欠溝
12 ピストン部材
12a 上方筒部
12b 下方部
13 カバー部材
100 専用流体圧給排源
101 ハウジング
102 ピストン
200 駆動機構
202 主駆動軸
203 従駆動軸
300 蓋部材たる仮キャップ
400 ブリッジ機構
402a 取付孔
R3 圧力室
R4 流体室
S 懸架バネ
S1 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体に内装の懸架バネにおける上端位置を上記のフォーク本体に内装のジャッキ機構の伸縮駆動で昇降させて上記の懸架バネにおけるバネ力の調整を可能にするフロントフォークにおいて、上記の車体側チューブにおける上端開口を閉塞するキャップ部材が軸芯部あるいは軸芯から偏芯する部位に上記のジャッキ機構に連通する透孔を有すると共に、この透孔が上記のフォーク本体の外に配設される単一の専用通路を介して同じくこのフォーク本体の外に配設される単一の専用流体圧給排源に連通し、この専用流体圧給排源の作動で上記のジャッキ機構を伸縮駆動させ、上記の懸架バネにおけるバネ力の調整を可能にしてなることを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
上記の懸架バネが下端を上記の車輪側チューブ側に担持させながら上端に筒状に形成のスペーサにおける下端を当接させ、このスペーサにおける上端が上記のジャッキ機構に係止されてなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
上記の専用流体圧給排源が上記の専用通路に連通する流体室を有するハウジングと、このハウジング内に摺動可能に収装されて上記の流体室を画成するピストンとを有し、このピストンが外力の入力およびその解除で上記のハウジングに対して出没して作動するときに、上記の流体室における流体を上記のジャッキ機構に供給しあるいはジャッキ機構における流体を流体室に戻してなる請求項1または請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
上記の専用流体圧給排源が上記の専用通路に連通する流体室を有するハウジングと、このハウジング内に摺動可能に収装されて上記の流体室を画成するピストンとを有し、上記のハウジングに対する蓋部材の装着で上記のピストンの上記のハウジング内からの脱け出しが阻止されてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
上記の専用流体圧給排源が上記の専用通路に連通する流体室を有するハウジングと、このハウジング内に摺動可能に収装されて上記の流体室を画成するピストンとを有する一方で、上記の専用流体圧給排源が上記のフォーク本体の外に配設されて他の専用流体圧給排源の組み込みを許容する駆動機構に組み込まれると共に、この駆動機構が単一の主駆動軸の駆動に連動して駆動する一対の従駆動軸を有してなり、この従駆動軸がそれぞれの専用流体圧給排源における上記のピストンを上記のハウジング内で摺動させてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載のフロントフォーク。
【請求項6】
上記のジャッキ機構が上記のキャップ部材と、このキャップ部材に連結されてこのキャップ部材との間に膨縮する圧力室を画成するピストン部材とを有し、上記の圧力室に対する流体の給排でこの圧力室を膨縮させて上記のピストン部材を上記のキャップ部材に対して昇降させ、上記の懸架バネにおける上端位置を昇降させる伸縮駆動してなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載のフロントフォーク。
【請求項7】
上記のジャッキ機構が上記のキャップ部材と、このキャップ部材に連結されてこのキャップ部材との間に膨縮する圧力室を画成するピストン部材とを有し、このピストン部材が上記のキャップ部材の外周に摺接する上方筒部を有すると共に、この上方筒部の外径が車体側チューブ内に挿通される車輪側チューブの内径より小さく設定されてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5または請求項6に記載のフロントフォーク。
【請求項8】
上記のジャッキ機構が上記のキャップ部材と、このキャップ部材に連結されてこのキャップ部材との間に膨縮する圧力室を画成するピストン部材とを有し、このピストン部材が上記のキャップ部材の外周に摺接する上方筒部を上端に連設させる下方部を有すると共に、この下方部が上記のキャップ部材における下端軸部に摺接してなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6または請求項7に記載のフロントフォーク。
【請求項9】
上記の車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体を一対としながら一体化するブリッジ機構が両端部に上記の車体側チューブにおける上端側部の挿通を許容する取付孔を有する一方で、上記の専用流体圧給排源が上記の専用通路に連通する流体室を有するハウジングと、このハウジング内に摺動可能に収装されて上記の流体室を画成するピストンとを有しながら上記のハウジングに対する蓋部材の装着で上記のピストンの上記のハウジング内からの脱け出しを阻止し、あるいは、上記の専用流体圧給排源が上記の専用通路に連通する流体室を有するハウジングと、このハウジング内に摺動可能に収装されて上記の流体室を画成するピストンとを有しながら上記のフォーク本体の外に配設されて他の専用流体圧給排源の組み込みを許容する駆動機構に組み込まれ、この駆動機構あるいは上記の蓋部材における外径さらには上記のハウジングにおける外径が上記の取付孔に挿通される上記の車体側チューブにおける上端側部の外径より小さく設定されてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6,請求項7または請求項8に記載のフロントフォーク。
【請求項10】
上記のフォーク本体が軸芯部にダンパを有し、このダンパがシリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体を有し、このロッド体の上端部が上記のキャップ部材に螺着されてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6,請求項7,請求項8または請求項9に記載のフロントフォーク。
【請求項11】
上記のフォーク本体が軸芯部にダンパを有し、このダンパがシリンダ体内に出没可能に挿通されるロッド体を有し、このロッド体の上端部が上記のキャップ部材に螺着され、このキャップ部材が軸芯部に上端を開口にする凹部を有し、この凹部にフォーク本体の伸縮時における減衰作用を制御するアクチュエータを収装し、この凹部を形成する周壁部に形成の孔あるいは切欠溝に上記のアクチュエータから延びるリード線を挿通あるいは臨在させ、上記の開口をカバー部材の螺着あるいは圧入で閉塞すると共に、このカバー部材の螺着あるいは圧入で上記のアクチュエータを上記の凹部に定着させてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6,請求項7,請求項8,請求項9または請求項10に記載のフロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−107034(P2010−107034A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162920(P2009−162920)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】