フローティングコネクタ
【課題】フローティングコネクタの接点間の摺動磨耗を抑える。
【解決手段】コンタクト25とコンタクト25を支持するハウジング20とを有するレセプタクル2と、コンタクト15とコンタクト15を支持するハウジング10とを有するプラグ1と、プラグ1とレセプタクル2の嵌合時の位置ずれを吸収する位置ずれ吸収機構PAとを備え、ハウジング10,20の嵌合時に、各コンタクト15,25の端子部153,253が互いに当接するフローティングコネクタ100であって、コンタクト15,25の少なくとも一方は、その端子部253をその支持用のハウジング20に対して相対移動可能に支持する支持部252を有する。
【解決手段】コンタクト25とコンタクト25を支持するハウジング20とを有するレセプタクル2と、コンタクト15とコンタクト15を支持するハウジング10とを有するプラグ1と、プラグ1とレセプタクル2の嵌合時の位置ずれを吸収する位置ずれ吸収機構PAとを備え、ハウジング10,20の嵌合時に、各コンタクト15,25の端子部153,253が互いに当接するフローティングコネクタ100であって、コンタクト15,25の少なくとも一方は、その端子部253をその支持用のハウジング20に対して相対移動可能に支持する支持部252を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に固定されるコネクタの固定ハウジングに対して移動可能に可動ハウジングを設け、レセプタクル(雌コネクタ)とプラグ(雄コネクタ)の嵌合時の位置ずれを吸収するようにしたフローティングコネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。この種のフローティングコネクタは、レセプタクルとプラグが嵌合部の接圧により嵌合固定され、嵌合部においてレセプタクルとプラグの各接点同士が当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−103189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レセプタクルとプラグは嵌合部の接圧により嵌合固定されるため、フローティングコネクタを自動車等の振動を伴う機器に使用した場合に、各接点間に摺動磨耗が発生し、コネクタの寿命を低減するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、レセプタクル用コンタクトと、このレセプタクル用コンタクトを支持するレセプタクル用ハウジングとを有するレセプタクルと、プラグ用コンタクトと、このプラグ用コンタクトを支持するプラグ用ハウジングとを有するプラグと、レセプタクルおよびプラグの少なくとも一方に設けられ、レセプタクル用ハウジングとプラグ用ハウジングの嵌合時の位置ずれを吸収する位置ずれ吸収機構とを備え、レセプタクル用ハウジングとプラグ用ハウジングの嵌合時に、レセプタクル用コンタクトの端子部とプラグ用コンタクトの端子部とが互いに当接するフローティングコネクタであって、レセプタクル用コンタクトおよびプラグ用コンタクトの少なくとも一方は、その端子部をその支持用のハウジングに対して相対移動可能に支持する支持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レセプタクル用コンタクトおよびプラグ用コンタクトの少なくとも一方に、その端子部をその支持用のハウジングに対して相対移動可能に支持する支持部を設けるようにしたので、各端子部間の摺動磨耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るフローティングコネクタの斜視図である。
【図2】(a),(b)は、それぞれ図1の矢視a図および矢視b図である。
【図3】図1のプラグの斜視図である。
【図4】(a),(b)は、それぞれ図3の矢視a図および矢視b図である。
【図5】図4(b)のV−V線断面図である。
【図6】図4(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のレセプタクルの斜視図である。
【図8】(a),(b)は、それぞれ図7の矢視a図および矢視b図である。
【図9】図8(b)のIX−IX線断面図である。
【図10】図8(a)のX−X線断面図である。
【図11】図2(b)のXI−XI線断面図である。
【図12】図2(a)のXII−XII線断面図である。
【図13】第2の実施の形態に係るプラグの斜視図である。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】第2の実施の形態に係るレセプタクルの斜視図である。
【図16】図15のXVI−XVI線断面図である。
【図17】第2の実施の形態に係るフローティングコネクタの斜視図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX線断面図である。
【図20】コネクタの嵌合時の動作を説明する図である。
【図21】第2の実施の形態の変形例を示す図である。
【図22】図21(b)のカム溝の拡大図である。
【図23】図13の変形例を示す斜視図である。
【図24】図23のa−a線断面図である。
【図25】図23のフローティングコネクタに用いられる板ばね部材の構成を示す斜視図である。
【図26】図23のフローティングコネクタの動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図12を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るフローティングコネクタ100の斜視図であり、図2(a),(b)は、それぞれその側面図(図1の矢視a図)および正面図(図1の矢視b図)である。フローティングコネクタ100は、互いに嵌合可能なプラグ1とレセプタクル2とを備える。
【0009】
図2に示すようにプラグ1とレセプタクル2は、それぞれ基板3の表面に実装され、その実装面の反対側で互いに嵌合固定される。図1,2はそれぞれコネクタ100の嵌合状態を示しており、プラグ1とレセプタクル2の嵌合により基板3同士が電気的に接続される。なお、本実施の形態に係るフローティングコネクタ100は、後述するように振動吸収機能を有するため、自動車等、とくに振動の発生する機器に用いて好適である。
【0010】
図3は、プラグ1の斜視図であり、図4(a),(b)は、それぞれその側面図(図3の矢視a図)および正面図(図3の矢視b図)である。プラグ1は、電気絶縁性の樹脂成形品であるハウジング10と、一体成形によりハウジング10に固定された導電性の複数のコンタクト15とを有する。コンタクト15は、弾性変形可能な金属により構成され、ハウジング10の長手方向に沿って等間隔に多数配設されている。ハウジング10は、略ボックス状に細長に形成された固定ハウジング11と可動ハウジング12とを有する。
【0011】
図5は、図4(b)のV−V線断面図であり、図6は、図4(a)のVI−VI線断面図である。固定ハウジング11は、基板3に固定され、固定ハウジング11の収容部110内に可動ハウジング12が移動可能に収容されている。可動ハウジング12の収容部120内には、その幅方向中央に中央壁121が可動ハウジング12の底面から突設され、収容部120は中央壁121を囲むように溝状に形成されている。なお、13は、固定ハウジング11を基板3に固定するための固定用金具である。固定用金具13は断面略L字状をなし、その一端部は、固定ハウジング11の側端部中央に貫通して設けられた嵌合溝11aに圧入され、他端部は、固定ハウジング11の側端面から突出している。
【0012】
図6に示すように、ハウジング10の幅方向には、中央壁121の両側に一対のコンタクト15が分離して設けられている。すなわち、コンタクト15は、固定ハウジング11の側壁111から可動ハウジング12の側壁122および中央壁121にかけて設けられ、中央壁121を挟んで幅方向対称に配設されている。より詳細に言うと、各コンタクト15は、固定ハウジング11の側壁111を高さ方向に貫通する基部151と、固定ハウジング11の側壁111の一端(図の上端)から可動ハウジング12の側壁122の底部にかけて略S字状に折り曲げられるS字部152と、可動ハウジング12の側壁122と中央壁121の間に配設される端子部153とを有する。
【0013】
基部151の一端部(図の下端部)は、固定ハウジング11の底面に沿って側壁111の外側に突出し、基板3に接続されている。端子部153は、いわゆるフォーク型であり、その先端部(図の上端部)はフォーク状に二股に形成されフォーク部154が設けられている。フォーク部154の一方は側壁122に、他方は中央壁121にそれぞれ固定されている。各フォーク部154の先端には、幅方向内側に突出する突起部155がそれぞれ設けられている。
【0014】
本実施の形態では、弾性変形可能なコンタクト15を介して可動ハウジング12が固定ハウジング11から支持されている。このため、可動ハウジング12はコンタクト15のS字部152の弾性変形により固定ハウジング11に対して水平方向および高さ方向に相対移動可能である。すなわち、本実施の形態のプラグ1は位置ずれ吸収機構PAを有し、コネクタ100はフローティング構造をなす。
【0015】
図7は、レセプタクル2の斜視図であり、図8(a),(b)は、それぞれその側面図(図7の矢視a図)および正面図(図7の矢視b図)である。レセプタクル2は、電気絶縁性の樹脂成形品であるハウジング20と、ハウジング20に固定された導電性の複数のコンタクト25とを有する。コンタクト25は、弾性変形可能な金属により構成され、ハウジング20の長手方向に沿って等間隔に多数配設されている。ハウジング20は、プラグ1のハウジング10に対応して略ボックス状に細長に形成されている。
【0016】
図9は、図8(b)のIX−IX線断面図であり、図10は、図8(a)のX−X線断面図である。ハウジング20は、ベース21と、ベース21の上方に突設された側壁22とを有し、側壁22の内側に収容部23が形成されている。収容部23には、プラグ1の可動ハウジング12の中央壁121が嵌合可能であり、側壁22は、プラグ1の収容部120内に嵌合可能である。なお、24は、ハウジング20を基板3に固定するための固定用金具である。
【0017】
図10に示すように、ハウジング20には、一対のコンタクト25が分離して設けられ、各コンタクト25は、収容部23を挟んで幅方向対称に配設されている。すなわち、コンタクト25は、ハウジング20のベース21を貫通する基部251と、側壁22内に配置された端子部253と、基部251と端子部253を接続するばね部252とを有する。
【0018】
基部251は、ハウジング20のベース21に一体に固定され、その一端部(図の下端部)は、ハウジング20の底面に沿ってベース21の外側に突出し、基板3に接続されている。これに対し、端子部253およびばね部252は、側壁22に形成された孔22a内に隙間22bを空けて配置され、孔22a内を高さ方向および幅方向に移動可能である。ばね部252は、略S字状に細長に形成され、基部251の幅方向内側の端部(図の上端部)と端子部253の幅方向外側の端部(図の下端部)とがばね部252により接続されている。ばね部252の弾性変形により、基部251に対して端子部253が相対移動する。
【0019】
次に、第1の実施の形態に係るフローティングコネクタ100の動作を説明する。プラグ1が実装された基板3とレセプタクル2が実装された基板3とを嵌合する場合には、プラグ1の可動ハウジング12の収容部120に、レセプタクル2のハウジング20の側壁22を押し込む。この際、位置ずれ吸収機構PAにより、プラグ1の可動ハウジング12は固定ハウジング11に対し移動可能であるため、プラグ1とレセプタクル2の嵌合時の位置ずれを修正することができる。なお、嵌合状態にあるプラグ1とレセプタクル2を互いに離間する方向に引っ張れば、プラグ1とレセプタクル2を分離可能である。
【0020】
図11,12は、それぞれプラグ1とレセプタクル2の嵌合状態を示す図2(b)のXI−XI線断面図および図2(a)のXII−XII線断面図である。図12に示すように、コネクタ100の嵌合状態では、端子部153の先端の一対のフォーク部154の間に端子部253が挟まれ、これによりコンタクト15,25同士が当接している。このとき互いに対向するプラグ1の可動ハウジング12の端面とレセプタクル2のハウジング20の端面の間には、隙間sが空いている。
【0021】
この状態で、何らかの振動が基板3に作用すると、コンタクト15,25の端子部153,253同士の当接を保ったまま、ばね部252が弾性変形する。これにより、プラグ1の可動ハウジング11に対しレセプタクル2のハウジング20が相対移動し、プラグ1とレセプタクル2間での振動の伝達が抑えられるとともに、ばね部252の作用により振動が減衰され、コネクタ全体の振動を抑えることができる。
【0022】
第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)レセプタクル2のコンタクト25の基部251と端子部253の間にばね部252を設け、ばね部252を介して端子部253をハウジング20に対し相対移動可能とした。このため、プラグ1とレセプタクル2の間の振動がばね部252で吸収されるので、振動が発生する環境下でコネクタ100を使用した場合においても、コンタクト15,25の端子部153,253同士が当接したままの状態を維持できる。その結果、端子部153,253の摺動磨耗が抑えられ、コネクタ100を高寿命化することができる。
【0023】
(2)プラグ1に位置ずれ吸収機構PAを設け、レセプタクル2にばね部252を設けるようにしたので、コネクタ100のフローティング構造と振動吸収構造とが別々の部材に設けられ、構成が容易である。
(3)コンタクト15の端子部153をフォーク型として、コンタクト25の端子部253の両側を挟み込むようにしたので、端子部153,253同士が強固に接続され、端子部153,253における摺動磨耗を抑えることができる。
【0024】
−第2の実施の形態−
図13〜図22を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、図1〜図12と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。第2の実施の形態のフローティングコネクタ100は、第1の実施の形態の構成に加え、以下に示すようにプラグ1とレセプタクル2を係合する係合部、およびレセプタクル2をプラグ1から離間する方向に付勢する付勢部材を設けている。
【0025】
図13は、第2の実施の形態に係るプラグ1の斜視図であり、図14は、図13のXIV−XIV線断面図である。可動ハウジング12の中央壁121の長手方向両側に位置する側壁123には、それぞれ係合部14が設けられている。係合部14は、側壁123に形成された溝141内に、長手方向外側に弾性変形可能に取り付けられている。係合部14の端部(図の上端部)には、長手方向内側に向けて収容部120内に突出した突起部142が形成されている。突起部142の上方の角部143は、収容部120への側壁22の嵌合が容易なように面取りされている。
【0026】
図15は、第2の実施の形態に係るレセプタクル2の斜視図であり、図16は、図15のXVI−XVI線断面図である。レセプタクル2の長手方向両端部には、その幅方向中央部において、ベース217の底面から側壁22の端部(図の上端部近傍)にかけてそれぞれスリット孔26(図17参照)が開口され、各スリット孔26内にそれぞれ金属製の細長のフック27が配設されている。
【0027】
フック27は、例えば固定用金具24を細長に延在して構成され、その一端部はハウジング20のベース21に固定されている。フック27の他端部にはR状の折り曲げ部270が形成され、折り曲げ部270は、側壁23の底面23aよりも外側(図の上方)に突出している。すなわちフック27はベース21で片持ち支持され、その支持部を支点に図の矢印で示す方向に弾性変形可能である。
【0028】
第2の実施の形態においても、フローティングコネクタ100は、プラグ1の収容部120にレセプタクル2の側壁22を押し込むことにより嵌合される。図17は、第2の実施の形態に係るフローティングコネクタ100の嵌合状態を示す斜視図であり、図18,19は、それぞれ図17のXVIII−XVIII線断面図およびXIX−XIX線断面図である。図18,19に示すように、コネクタ100の嵌合状態では、プラグ1の係合突起部142がスリット孔26に挿入され、係合部14が側壁22の端部に係合している。また、フック27の折り曲げ部270がプラグ1の中央壁121の端面(図の上端面)に当接し、レセプタクル2はフック27のばね力により図の上方に押し上げられている。
【0029】
コネクタ100の嵌合時の動作を図20を用いてさらに説明する。レセプタクル2とプラグ1を嵌合する際は、まず、図20(a)に示すように、係合突起部142が側壁22の端部を乗り越えてスリット孔26に挿入されるまで、レセプタクル2の側壁22をフック27のばね力に抗して収容部120内に押し込む。このとき、コンタクト25のばね部252には圧縮力が作用し、コンタクト25が高さ方向に圧縮される。
【0030】
係合突起部142がスリット孔26に挿入された後、レセプタクル2の押し込み力を除去すると、図20(b)に示すようにレセプタクル2はフック27のばね力により押し戻され、係合突起部142が側壁22の端面に当接する。この状態では、プラグ1の可動ハウジング12とレセプタクル2のハウジング20の間の隙間Sが最大となる。このため、コンタクト25のばね部252に作用した圧縮力が除去され、ばね部252は初期状態に復帰する。
【0031】
このように第2の実施の形態では、プラグ1の可動ハウジング12に係合部14を設けるとともに、この係合部14に対応してレセプタクル2にスリット孔26を設け、コネクタ100の嵌合時に、係合部14をレセプタクル2の側壁22に係合するようにした。これによりコネクタ100の使用時の嵌合部の脱落を確実に防止することができる。また、プラグ1とレセプタクル2を離間する方向に付勢する付勢部材としてフック27を設けるようにしたので、コネクタ100の嵌合時にコンタクト25のばね部252を初期状態に復帰させることができ、ばね部252が正常に作用することにより良好な振動吸収効果を得ることができる。
【0032】
なお、係合部および付勢部材の構成は上述したものに限らない。例えば図21(a),(b)に示すように、プラグ1の係合部14に、係合突起部142の代わりに円形状あるいは半球形状の突起部145を設けるとともに、これに対応してレセプタクル2の側壁22にハート形状のカム溝28(いわゆるハートカム)を設け、突起部145をカム溝28に係合させるようにしてもよい。図22に示すようにカム溝28の底面には周知のように段差が設けられており、これによりレセプタクル2をプラグ1に押し込んだ際に、突起部145をカム溝28の奥部に固定することができる。
【0033】
図23は、他の係合部の構成を有するフローテイングコネクタの斜視図であり、図24は、その要部断面図(図23のa−a線断面図)である。図23,24において、プラグ1のハウジング10(固定ハウジング11)の側端部の嵌合溝11aには、板ばね部材50が圧入されて取り付けられている。レセプタクル2のハウジング20の両端部には、略円柱状の突出部29が嵌合方向に対して略垂直に突設され、ハウジング10,20の嵌合時に、板ばね部材50に突出部20が係合している。
【0034】
図25は、板ばね部材50の斜視図である。板ばね部材50は、例えばばね鋼等のばね性を有する板材を所定形状に打ち抜いて折り曲げることにより形成され、固定ハウジング11に圧入される圧入部51と、固定ハウジング11の側端面から突出する突出部52とを一体に有する。突出部52は、圧入部51の一端部(図の下端部)から略垂直に折り曲げられ、固定用金具13(図5)と同様、固定ハウジング11を基板3に固定するために用いられる。
【0035】
圧入部51は、突出部52が連設された基部53と、基部53から立ち上がる第1板ばね部54と、略U字状の貫通孔57を介して第1板ばね部54の内側に形成された第2板ばね部55とを有する。基部53は、突出部52よりも幅広に、かつ第1板ばね部54よりも幅広に形成されている。第1板ばね部54の端部(図の上端部)は円弧状に形成されるとともに、突出部52に向けて斜めに折り曲げられ、折り曲げ部54aが形成されている。第2板ばね部55は、基部53から立ち上がり、その端部(図の上端部)は、突出部52に向けて斜めに折り曲げられ、折り曲げ部55aが形成されている。折り曲げ部55aは、第2板ばね部55の基端側よりも幅広に形成され、かつ、突出部52側に向けて幅方向に湾曲されている。折り曲げ部54aと折り曲げ部55aの間には、ハウジング20の突出部29が収容する収容空間56が形成されている。収容空間56の高さは、突出部29の外径とほぼ等しく、収容空間56の幅は突出部29の外径よりも大きい。このため収容空間56において突出部29は幅方向に摺動可能である。
【0036】
図23に示すように、プラグ1の固定ハウジング11の端部には切り欠き11bが設けられ、切り欠き部11bを介して板ばね部材50の折り曲げ部54a,55aは、ハウジング10と干渉することなくハウジング10の外側に弾性変形可能となっている。プラグ1のハウジング10にレセプタクル2のハウジング20を嵌合するため、ハウジング10をハウジング20に押し込むと、板ばね部材50の第1折り曲げ部54aは突出部29により外側に押し広げられ、突出部29は折り曲げ部54aを乗り越えて収容空間56に収容される。突出部29が収容空間56に収容されると、折り曲げ部54aは自己のばね力により復帰し、突出部29の上下両端が折り曲げ部54a,55aにより挟まれ、突出部29は板ばね部材50により弾性支持される。
【0037】
このような構成では、収容空間56における突出部29のある程度の移動が許容され、ハウジング10,20間の位置ずれを吸収した状態でハウジング10,20同士を嵌合できる。例えば、図26(a)に示すようにハウジング20がハウジング10に対して幅方向にフローティングした状態で、あるいは図26(b)に示すようにハウジング20がハウジング10に対して回転した状態で、あるいはハウジング20がハウジング10に対して長手方向に移動した状態で、それぞれハウジング10,20同士を嵌合できる。ハウジング嵌合時における突出部29の移動は、板ばね部材50のばね力により制限される。このように板ばね部材50を介してハウジング10,20を係合することで、ハウジング10,20間の位置ずれを吸収しつつ、フローティング位置におけるハウジング10,20の相対移動を制限できる。これによりコンタクト15,25の端子部153,253における上下方向の摺動を防止することができ、端子部153,253の微摺動磨耗を防止することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、レセプタクル2のコンタクト25の基部251と端子部253の間に、細長のばね部252を形成するようにしたが、端子部253をハウジング20に対して相対移動可能に支持する支持部の構成はこれに限らない。レセプタクル2のコンタクト25に支持部を設けるようにしたが、プラグ1のコンタクト15に設けてもよく、レセプタクル2とプラグ1の各コンタクト25,15に支持部を設けてもよい。位置ずれ吸収機構PAをプラグ1に設けたが、レセプタクル2に設けてもよく、プラグ1とレセプタクル2の両方に設けてもよい。
【0039】
上記実施の形態では、プラグ1とレセプタクル2の各コンタクト15,25を幅方向2列ずつ配設するようにしたが、幅方向2列以外に配設してもよく、プラグ1とレセプタクル2の構成は上述したものに限らない。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態のフローティングコネクタに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1 プラグ
2 レセプタクル
10,20 ハウジング
14 係合部
15,25 コンタクト
22 側壁
26 スリット溝
27 フック
29 突出部
50 板ばね部材
153,253 端子部
252 ばね部
PA 位置ずれ吸収機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に固定されるコネクタの固定ハウジングに対して移動可能に可動ハウジングを設け、レセプタクル(雌コネクタ)とプラグ(雄コネクタ)の嵌合時の位置ずれを吸収するようにしたフローティングコネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。この種のフローティングコネクタは、レセプタクルとプラグが嵌合部の接圧により嵌合固定され、嵌合部においてレセプタクルとプラグの各接点同士が当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−103189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レセプタクルとプラグは嵌合部の接圧により嵌合固定されるため、フローティングコネクタを自動車等の振動を伴う機器に使用した場合に、各接点間に摺動磨耗が発生し、コネクタの寿命を低減するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、レセプタクル用コンタクトと、このレセプタクル用コンタクトを支持するレセプタクル用ハウジングとを有するレセプタクルと、プラグ用コンタクトと、このプラグ用コンタクトを支持するプラグ用ハウジングとを有するプラグと、レセプタクルおよびプラグの少なくとも一方に設けられ、レセプタクル用ハウジングとプラグ用ハウジングの嵌合時の位置ずれを吸収する位置ずれ吸収機構とを備え、レセプタクル用ハウジングとプラグ用ハウジングの嵌合時に、レセプタクル用コンタクトの端子部とプラグ用コンタクトの端子部とが互いに当接するフローティングコネクタであって、レセプタクル用コンタクトおよびプラグ用コンタクトの少なくとも一方は、その端子部をその支持用のハウジングに対して相対移動可能に支持する支持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レセプタクル用コンタクトおよびプラグ用コンタクトの少なくとも一方に、その端子部をその支持用のハウジングに対して相対移動可能に支持する支持部を設けるようにしたので、各端子部間の摺動磨耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るフローティングコネクタの斜視図である。
【図2】(a),(b)は、それぞれ図1の矢視a図および矢視b図である。
【図3】図1のプラグの斜視図である。
【図4】(a),(b)は、それぞれ図3の矢視a図および矢視b図である。
【図5】図4(b)のV−V線断面図である。
【図6】図4(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のレセプタクルの斜視図である。
【図8】(a),(b)は、それぞれ図7の矢視a図および矢視b図である。
【図9】図8(b)のIX−IX線断面図である。
【図10】図8(a)のX−X線断面図である。
【図11】図2(b)のXI−XI線断面図である。
【図12】図2(a)のXII−XII線断面図である。
【図13】第2の実施の形態に係るプラグの斜視図である。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】第2の実施の形態に係るレセプタクルの斜視図である。
【図16】図15のXVI−XVI線断面図である。
【図17】第2の実施の形態に係るフローティングコネクタの斜視図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX線断面図である。
【図20】コネクタの嵌合時の動作を説明する図である。
【図21】第2の実施の形態の変形例を示す図である。
【図22】図21(b)のカム溝の拡大図である。
【図23】図13の変形例を示す斜視図である。
【図24】図23のa−a線断面図である。
【図25】図23のフローティングコネクタに用いられる板ばね部材の構成を示す斜視図である。
【図26】図23のフローティングコネクタの動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図12を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るフローティングコネクタ100の斜視図であり、図2(a),(b)は、それぞれその側面図(図1の矢視a図)および正面図(図1の矢視b図)である。フローティングコネクタ100は、互いに嵌合可能なプラグ1とレセプタクル2とを備える。
【0009】
図2に示すようにプラグ1とレセプタクル2は、それぞれ基板3の表面に実装され、その実装面の反対側で互いに嵌合固定される。図1,2はそれぞれコネクタ100の嵌合状態を示しており、プラグ1とレセプタクル2の嵌合により基板3同士が電気的に接続される。なお、本実施の形態に係るフローティングコネクタ100は、後述するように振動吸収機能を有するため、自動車等、とくに振動の発生する機器に用いて好適である。
【0010】
図3は、プラグ1の斜視図であり、図4(a),(b)は、それぞれその側面図(図3の矢視a図)および正面図(図3の矢視b図)である。プラグ1は、電気絶縁性の樹脂成形品であるハウジング10と、一体成形によりハウジング10に固定された導電性の複数のコンタクト15とを有する。コンタクト15は、弾性変形可能な金属により構成され、ハウジング10の長手方向に沿って等間隔に多数配設されている。ハウジング10は、略ボックス状に細長に形成された固定ハウジング11と可動ハウジング12とを有する。
【0011】
図5は、図4(b)のV−V線断面図であり、図6は、図4(a)のVI−VI線断面図である。固定ハウジング11は、基板3に固定され、固定ハウジング11の収容部110内に可動ハウジング12が移動可能に収容されている。可動ハウジング12の収容部120内には、その幅方向中央に中央壁121が可動ハウジング12の底面から突設され、収容部120は中央壁121を囲むように溝状に形成されている。なお、13は、固定ハウジング11を基板3に固定するための固定用金具である。固定用金具13は断面略L字状をなし、その一端部は、固定ハウジング11の側端部中央に貫通して設けられた嵌合溝11aに圧入され、他端部は、固定ハウジング11の側端面から突出している。
【0012】
図6に示すように、ハウジング10の幅方向には、中央壁121の両側に一対のコンタクト15が分離して設けられている。すなわち、コンタクト15は、固定ハウジング11の側壁111から可動ハウジング12の側壁122および中央壁121にかけて設けられ、中央壁121を挟んで幅方向対称に配設されている。より詳細に言うと、各コンタクト15は、固定ハウジング11の側壁111を高さ方向に貫通する基部151と、固定ハウジング11の側壁111の一端(図の上端)から可動ハウジング12の側壁122の底部にかけて略S字状に折り曲げられるS字部152と、可動ハウジング12の側壁122と中央壁121の間に配設される端子部153とを有する。
【0013】
基部151の一端部(図の下端部)は、固定ハウジング11の底面に沿って側壁111の外側に突出し、基板3に接続されている。端子部153は、いわゆるフォーク型であり、その先端部(図の上端部)はフォーク状に二股に形成されフォーク部154が設けられている。フォーク部154の一方は側壁122に、他方は中央壁121にそれぞれ固定されている。各フォーク部154の先端には、幅方向内側に突出する突起部155がそれぞれ設けられている。
【0014】
本実施の形態では、弾性変形可能なコンタクト15を介して可動ハウジング12が固定ハウジング11から支持されている。このため、可動ハウジング12はコンタクト15のS字部152の弾性変形により固定ハウジング11に対して水平方向および高さ方向に相対移動可能である。すなわち、本実施の形態のプラグ1は位置ずれ吸収機構PAを有し、コネクタ100はフローティング構造をなす。
【0015】
図7は、レセプタクル2の斜視図であり、図8(a),(b)は、それぞれその側面図(図7の矢視a図)および正面図(図7の矢視b図)である。レセプタクル2は、電気絶縁性の樹脂成形品であるハウジング20と、ハウジング20に固定された導電性の複数のコンタクト25とを有する。コンタクト25は、弾性変形可能な金属により構成され、ハウジング20の長手方向に沿って等間隔に多数配設されている。ハウジング20は、プラグ1のハウジング10に対応して略ボックス状に細長に形成されている。
【0016】
図9は、図8(b)のIX−IX線断面図であり、図10は、図8(a)のX−X線断面図である。ハウジング20は、ベース21と、ベース21の上方に突設された側壁22とを有し、側壁22の内側に収容部23が形成されている。収容部23には、プラグ1の可動ハウジング12の中央壁121が嵌合可能であり、側壁22は、プラグ1の収容部120内に嵌合可能である。なお、24は、ハウジング20を基板3に固定するための固定用金具である。
【0017】
図10に示すように、ハウジング20には、一対のコンタクト25が分離して設けられ、各コンタクト25は、収容部23を挟んで幅方向対称に配設されている。すなわち、コンタクト25は、ハウジング20のベース21を貫通する基部251と、側壁22内に配置された端子部253と、基部251と端子部253を接続するばね部252とを有する。
【0018】
基部251は、ハウジング20のベース21に一体に固定され、その一端部(図の下端部)は、ハウジング20の底面に沿ってベース21の外側に突出し、基板3に接続されている。これに対し、端子部253およびばね部252は、側壁22に形成された孔22a内に隙間22bを空けて配置され、孔22a内を高さ方向および幅方向に移動可能である。ばね部252は、略S字状に細長に形成され、基部251の幅方向内側の端部(図の上端部)と端子部253の幅方向外側の端部(図の下端部)とがばね部252により接続されている。ばね部252の弾性変形により、基部251に対して端子部253が相対移動する。
【0019】
次に、第1の実施の形態に係るフローティングコネクタ100の動作を説明する。プラグ1が実装された基板3とレセプタクル2が実装された基板3とを嵌合する場合には、プラグ1の可動ハウジング12の収容部120に、レセプタクル2のハウジング20の側壁22を押し込む。この際、位置ずれ吸収機構PAにより、プラグ1の可動ハウジング12は固定ハウジング11に対し移動可能であるため、プラグ1とレセプタクル2の嵌合時の位置ずれを修正することができる。なお、嵌合状態にあるプラグ1とレセプタクル2を互いに離間する方向に引っ張れば、プラグ1とレセプタクル2を分離可能である。
【0020】
図11,12は、それぞれプラグ1とレセプタクル2の嵌合状態を示す図2(b)のXI−XI線断面図および図2(a)のXII−XII線断面図である。図12に示すように、コネクタ100の嵌合状態では、端子部153の先端の一対のフォーク部154の間に端子部253が挟まれ、これによりコンタクト15,25同士が当接している。このとき互いに対向するプラグ1の可動ハウジング12の端面とレセプタクル2のハウジング20の端面の間には、隙間sが空いている。
【0021】
この状態で、何らかの振動が基板3に作用すると、コンタクト15,25の端子部153,253同士の当接を保ったまま、ばね部252が弾性変形する。これにより、プラグ1の可動ハウジング11に対しレセプタクル2のハウジング20が相対移動し、プラグ1とレセプタクル2間での振動の伝達が抑えられるとともに、ばね部252の作用により振動が減衰され、コネクタ全体の振動を抑えることができる。
【0022】
第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)レセプタクル2のコンタクト25の基部251と端子部253の間にばね部252を設け、ばね部252を介して端子部253をハウジング20に対し相対移動可能とした。このため、プラグ1とレセプタクル2の間の振動がばね部252で吸収されるので、振動が発生する環境下でコネクタ100を使用した場合においても、コンタクト15,25の端子部153,253同士が当接したままの状態を維持できる。その結果、端子部153,253の摺動磨耗が抑えられ、コネクタ100を高寿命化することができる。
【0023】
(2)プラグ1に位置ずれ吸収機構PAを設け、レセプタクル2にばね部252を設けるようにしたので、コネクタ100のフローティング構造と振動吸収構造とが別々の部材に設けられ、構成が容易である。
(3)コンタクト15の端子部153をフォーク型として、コンタクト25の端子部253の両側を挟み込むようにしたので、端子部153,253同士が強固に接続され、端子部153,253における摺動磨耗を抑えることができる。
【0024】
−第2の実施の形態−
図13〜図22を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、図1〜図12と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。第2の実施の形態のフローティングコネクタ100は、第1の実施の形態の構成に加え、以下に示すようにプラグ1とレセプタクル2を係合する係合部、およびレセプタクル2をプラグ1から離間する方向に付勢する付勢部材を設けている。
【0025】
図13は、第2の実施の形態に係るプラグ1の斜視図であり、図14は、図13のXIV−XIV線断面図である。可動ハウジング12の中央壁121の長手方向両側に位置する側壁123には、それぞれ係合部14が設けられている。係合部14は、側壁123に形成された溝141内に、長手方向外側に弾性変形可能に取り付けられている。係合部14の端部(図の上端部)には、長手方向内側に向けて収容部120内に突出した突起部142が形成されている。突起部142の上方の角部143は、収容部120への側壁22の嵌合が容易なように面取りされている。
【0026】
図15は、第2の実施の形態に係るレセプタクル2の斜視図であり、図16は、図15のXVI−XVI線断面図である。レセプタクル2の長手方向両端部には、その幅方向中央部において、ベース217の底面から側壁22の端部(図の上端部近傍)にかけてそれぞれスリット孔26(図17参照)が開口され、各スリット孔26内にそれぞれ金属製の細長のフック27が配設されている。
【0027】
フック27は、例えば固定用金具24を細長に延在して構成され、その一端部はハウジング20のベース21に固定されている。フック27の他端部にはR状の折り曲げ部270が形成され、折り曲げ部270は、側壁23の底面23aよりも外側(図の上方)に突出している。すなわちフック27はベース21で片持ち支持され、その支持部を支点に図の矢印で示す方向に弾性変形可能である。
【0028】
第2の実施の形態においても、フローティングコネクタ100は、プラグ1の収容部120にレセプタクル2の側壁22を押し込むことにより嵌合される。図17は、第2の実施の形態に係るフローティングコネクタ100の嵌合状態を示す斜視図であり、図18,19は、それぞれ図17のXVIII−XVIII線断面図およびXIX−XIX線断面図である。図18,19に示すように、コネクタ100の嵌合状態では、プラグ1の係合突起部142がスリット孔26に挿入され、係合部14が側壁22の端部に係合している。また、フック27の折り曲げ部270がプラグ1の中央壁121の端面(図の上端面)に当接し、レセプタクル2はフック27のばね力により図の上方に押し上げられている。
【0029】
コネクタ100の嵌合時の動作を図20を用いてさらに説明する。レセプタクル2とプラグ1を嵌合する際は、まず、図20(a)に示すように、係合突起部142が側壁22の端部を乗り越えてスリット孔26に挿入されるまで、レセプタクル2の側壁22をフック27のばね力に抗して収容部120内に押し込む。このとき、コンタクト25のばね部252には圧縮力が作用し、コンタクト25が高さ方向に圧縮される。
【0030】
係合突起部142がスリット孔26に挿入された後、レセプタクル2の押し込み力を除去すると、図20(b)に示すようにレセプタクル2はフック27のばね力により押し戻され、係合突起部142が側壁22の端面に当接する。この状態では、プラグ1の可動ハウジング12とレセプタクル2のハウジング20の間の隙間Sが最大となる。このため、コンタクト25のばね部252に作用した圧縮力が除去され、ばね部252は初期状態に復帰する。
【0031】
このように第2の実施の形態では、プラグ1の可動ハウジング12に係合部14を設けるとともに、この係合部14に対応してレセプタクル2にスリット孔26を設け、コネクタ100の嵌合時に、係合部14をレセプタクル2の側壁22に係合するようにした。これによりコネクタ100の使用時の嵌合部の脱落を確実に防止することができる。また、プラグ1とレセプタクル2を離間する方向に付勢する付勢部材としてフック27を設けるようにしたので、コネクタ100の嵌合時にコンタクト25のばね部252を初期状態に復帰させることができ、ばね部252が正常に作用することにより良好な振動吸収効果を得ることができる。
【0032】
なお、係合部および付勢部材の構成は上述したものに限らない。例えば図21(a),(b)に示すように、プラグ1の係合部14に、係合突起部142の代わりに円形状あるいは半球形状の突起部145を設けるとともに、これに対応してレセプタクル2の側壁22にハート形状のカム溝28(いわゆるハートカム)を設け、突起部145をカム溝28に係合させるようにしてもよい。図22に示すようにカム溝28の底面には周知のように段差が設けられており、これによりレセプタクル2をプラグ1に押し込んだ際に、突起部145をカム溝28の奥部に固定することができる。
【0033】
図23は、他の係合部の構成を有するフローテイングコネクタの斜視図であり、図24は、その要部断面図(図23のa−a線断面図)である。図23,24において、プラグ1のハウジング10(固定ハウジング11)の側端部の嵌合溝11aには、板ばね部材50が圧入されて取り付けられている。レセプタクル2のハウジング20の両端部には、略円柱状の突出部29が嵌合方向に対して略垂直に突設され、ハウジング10,20の嵌合時に、板ばね部材50に突出部20が係合している。
【0034】
図25は、板ばね部材50の斜視図である。板ばね部材50は、例えばばね鋼等のばね性を有する板材を所定形状に打ち抜いて折り曲げることにより形成され、固定ハウジング11に圧入される圧入部51と、固定ハウジング11の側端面から突出する突出部52とを一体に有する。突出部52は、圧入部51の一端部(図の下端部)から略垂直に折り曲げられ、固定用金具13(図5)と同様、固定ハウジング11を基板3に固定するために用いられる。
【0035】
圧入部51は、突出部52が連設された基部53と、基部53から立ち上がる第1板ばね部54と、略U字状の貫通孔57を介して第1板ばね部54の内側に形成された第2板ばね部55とを有する。基部53は、突出部52よりも幅広に、かつ第1板ばね部54よりも幅広に形成されている。第1板ばね部54の端部(図の上端部)は円弧状に形成されるとともに、突出部52に向けて斜めに折り曲げられ、折り曲げ部54aが形成されている。第2板ばね部55は、基部53から立ち上がり、その端部(図の上端部)は、突出部52に向けて斜めに折り曲げられ、折り曲げ部55aが形成されている。折り曲げ部55aは、第2板ばね部55の基端側よりも幅広に形成され、かつ、突出部52側に向けて幅方向に湾曲されている。折り曲げ部54aと折り曲げ部55aの間には、ハウジング20の突出部29が収容する収容空間56が形成されている。収容空間56の高さは、突出部29の外径とほぼ等しく、収容空間56の幅は突出部29の外径よりも大きい。このため収容空間56において突出部29は幅方向に摺動可能である。
【0036】
図23に示すように、プラグ1の固定ハウジング11の端部には切り欠き11bが設けられ、切り欠き部11bを介して板ばね部材50の折り曲げ部54a,55aは、ハウジング10と干渉することなくハウジング10の外側に弾性変形可能となっている。プラグ1のハウジング10にレセプタクル2のハウジング20を嵌合するため、ハウジング10をハウジング20に押し込むと、板ばね部材50の第1折り曲げ部54aは突出部29により外側に押し広げられ、突出部29は折り曲げ部54aを乗り越えて収容空間56に収容される。突出部29が収容空間56に収容されると、折り曲げ部54aは自己のばね力により復帰し、突出部29の上下両端が折り曲げ部54a,55aにより挟まれ、突出部29は板ばね部材50により弾性支持される。
【0037】
このような構成では、収容空間56における突出部29のある程度の移動が許容され、ハウジング10,20間の位置ずれを吸収した状態でハウジング10,20同士を嵌合できる。例えば、図26(a)に示すようにハウジング20がハウジング10に対して幅方向にフローティングした状態で、あるいは図26(b)に示すようにハウジング20がハウジング10に対して回転した状態で、あるいはハウジング20がハウジング10に対して長手方向に移動した状態で、それぞれハウジング10,20同士を嵌合できる。ハウジング嵌合時における突出部29の移動は、板ばね部材50のばね力により制限される。このように板ばね部材50を介してハウジング10,20を係合することで、ハウジング10,20間の位置ずれを吸収しつつ、フローティング位置におけるハウジング10,20の相対移動を制限できる。これによりコンタクト15,25の端子部153,253における上下方向の摺動を防止することができ、端子部153,253の微摺動磨耗を防止することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、レセプタクル2のコンタクト25の基部251と端子部253の間に、細長のばね部252を形成するようにしたが、端子部253をハウジング20に対して相対移動可能に支持する支持部の構成はこれに限らない。レセプタクル2のコンタクト25に支持部を設けるようにしたが、プラグ1のコンタクト15に設けてもよく、レセプタクル2とプラグ1の各コンタクト25,15に支持部を設けてもよい。位置ずれ吸収機構PAをプラグ1に設けたが、レセプタクル2に設けてもよく、プラグ1とレセプタクル2の両方に設けてもよい。
【0039】
上記実施の形態では、プラグ1とレセプタクル2の各コンタクト15,25を幅方向2列ずつ配設するようにしたが、幅方向2列以外に配設してもよく、プラグ1とレセプタクル2の構成は上述したものに限らない。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態のフローティングコネクタに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1 プラグ
2 レセプタクル
10,20 ハウジング
14 係合部
15,25 コンタクト
22 側壁
26 スリット溝
27 フック
29 突出部
50 板ばね部材
153,253 端子部
252 ばね部
PA 位置ずれ吸収機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レセプタクル用コンタクトと、このレセプタクル用コンタクトを支持するレセプタクル用ハウジングとを有するレセプタクルと、
プラグ用コンタクトと、このプラグ用コンタクトを支持するプラグ用ハウジングとを有するプラグと、
前記レセプタクルおよび前記プラグの少なくとも一方に設けられ、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時の位置ずれを吸収する位置ずれ吸収機構とを備え、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に、前記レセプタクル用コンタクトの端子部と前記プラグ用コンタクトの端子部とが互いに当接するフローティングコネクタであって、
前記レセプタクル用コンタクトおよび前記プラグ用コンタクトの少なくとも一方は、その端子部をその支持用のハウジングに対して相対移動可能に支持する支持部を有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記支持部は、弾性変形可能なばね構造を有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記位置ずれ吸収機構は、前記レセプタクルと前記プラグのいずれか一方に設けられ、
前記支持部は、前記レセプタクルと前記プラグのいずれか他方に設けられることを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記レセプタクル用ハウジングおよび前記プラグ用ハウジングは、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に互いに係合する係合部をそれぞれ有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングを互いに離間する方向に付勢する付勢部材をさらに有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項6】
請求項4に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記係合部は、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングのいずれか一方に設けられ、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合方向に対して略垂直に突設された突出部と、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングのいずれか他方に取り付けられ、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に前記突出部が係合する板ばね部材とを有ことを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項1】
レセプタクル用コンタクトと、このレセプタクル用コンタクトを支持するレセプタクル用ハウジングとを有するレセプタクルと、
プラグ用コンタクトと、このプラグ用コンタクトを支持するプラグ用ハウジングとを有するプラグと、
前記レセプタクルおよび前記プラグの少なくとも一方に設けられ、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時の位置ずれを吸収する位置ずれ吸収機構とを備え、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に、前記レセプタクル用コンタクトの端子部と前記プラグ用コンタクトの端子部とが互いに当接するフローティングコネクタであって、
前記レセプタクル用コンタクトおよび前記プラグ用コンタクトの少なくとも一方は、その端子部をその支持用のハウジングに対して相対移動可能に支持する支持部を有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記支持部は、弾性変形可能なばね構造を有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記位置ずれ吸収機構は、前記レセプタクルと前記プラグのいずれか一方に設けられ、
前記支持部は、前記レセプタクルと前記プラグのいずれか他方に設けられることを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記レセプタクル用ハウジングおよび前記プラグ用ハウジングは、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に互いに係合する係合部をそれぞれ有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングを互いに離間する方向に付勢する付勢部材をさらに有することを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項6】
請求項4に記載のフローティングコネクタにおいて、
前記係合部は、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングのいずれか一方に設けられ、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合方向に対して略垂直に突設された突出部と、
前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングのいずれか他方に取り付けられ、前記レセプタクル用ハウジングと前記プラグ用ハウジングの嵌合時に前記突出部が係合する板ばね部材とを有ことを特徴とするフローティングコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−249076(P2011−249076A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119435(P2010−119435)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】
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