説明

ブラケット取付装置

【課題】簡易な構造でブラケットを確実に固定することを可能にするとともに、作業効率や安全性を向上すること。
【解決手段】本発明では、機器本体の両側面には横溝と、この溝に非平行な縦溝とを形成し、ブラケットには、内側に凸出して横溝に挿通し得るレール状の凸条と、縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き抜かれた係合解除状態とに移動可能な縦溝係合部材とを設け、機器本体をブラケットに固定するときには、ブラケットの凸条を機器本体の横溝に挿通した後、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝に挿入して係合状態とし、機器本体をブラケットから取り外すときには、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝から引き抜いて係合解除状態とした後、ブラケットの凸条から機器本体の横溝を引き抜いて取り外すように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器本体などの機器本体を、ブラケットを用いて所定の取付け部に取り付けるための取付機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器を固定部に取り付けるための取り付け機構としては、例えば、電子機器の筐体の両側面を、固定部に取り付けられたブラケットで挟み、前記ブラケットに遊挿したネジを、前記筐体の両側面に形成されたネジ孔にねじ込むことによって、前記電子機器を前記固定部に取り付けるように構成された取り付け機構が考えられる。
【0003】
しかし、上述したような構成の取付機構の場合は、確かに、比較的大型の電子機器を取り付けるに十分な強度を持っているが、着脱に際して前記ネジを締めたり緩めたりするために、ブラケットの両側からドライバーを操作する必要がある。したがって、このようなドライバーを操作空間が確保しにくい乗用車のダッシュボードの下部空間などに採用することは望ましくない。
そこで、ブラケットの両側から操作することに代えて、ブラケットもしくは電子機器の正面側から取り付け、取り外しの作業が行える取付機構が好ましい。このような機構の場合には、電子機器の重さを支えるために、電子機器の両側面にレール状の溝を形成し、ブラケットの内側に形成した凸条を、前記溝に通すことによって、電子機器の重さを支えるように構成したものが、例えば特許文献1、2に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の機器のブラケット取付装置は、ブラケットの機器本体への取付作業を容易にし、かつ機器全体の横幅寸法を小さくできる機器のブラケット取付装置を提供することを目的とするものであり、機器本体の両側面に形成した突条と、該突条にその長手方向に沿って形成した溝と、前記突条と連続するように前記両側面に前記突条の長手方向と略直角方向に形成されたリブと、前記溝に嵌合する係合片を両端部に有するコ字状のブラケットと、前記溝の内面及び該内面と対面するブラケットの外面とに形成された微少突部とを備えるものである。
【0005】
特許文献2に記載のセット取付け装置は、車体に対し略筒状のブラケットを固定し、該ブラケットに車載用のセットを挿入して取付けるセット取付け装置において、該セットにはピンまたは凹部を有するロックレバーを設け、また該ブラケットには該ロックレバーのピンまたは凹部と係合する凹部またはピンを設け、前記凹部は、該凹部の弾性により前記ピンに係合する構造としたものである。
また、特許文献2には、従来技術として、車載用の無線機等のセットをブラケットに取り付ける構造に関し、セットの側部に形成された溝と、ブラケットの下端を嵌合させることによりセットの上下方向の動きを規制し、ブラケットの耳部とのセットの耳部とをネジ止めすることでセットの前後方向の動きを規制する構成が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のものでは、ブラケットの前後方向への移動を完全に規制する構造ではないので、電子機器を確実に固定することはできない。
また、特許文献2に従来技術として記載された前記構成では、確かにネジを用いて確実に固定することができるようになるが、前記ネジを着脱するときにネジを落としてしまう危険性があり、また、作業に手間がかかり、電子機器本体を片手で持って作業をしなければならないので、安全性の問題が発生する。また、特許文献2の構造では、回動式のロックレバーや弾性的な係合構造が記載されているが、非常に複雑な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−185874号公報
【特許文献2】実公平06−001486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明においては、簡易な構造でブラケットを確実に固定することを可能にするとともに、作業効率や安全性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るブラケット取付装置は、
機器本体を所定位置に取り付けるためにブラケットを用いる取付け装置において、
機器本体の両側面には横溝と、この溝に非平行な縦溝とを形成し、
ブラケットには、内側に凸出して横溝に挿通し得るレール状の凸条と、縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き抜かれた係合解除状態とに移動可能な縦溝係合部材とを設け、
機器本体をブラケットに固定するときには、ブラケットの凸条を機器本体の横溝に挿通した後、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝に挿入して係合状態とし、
機器本体をブラケットから取り外すときには、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝から引き抜いて係合解除状態とした後、ブラケットの凸条から機器本体の横溝を引き抜いて取り外すように構成したことを特徴としている。
請求項2では、
前記縦溝係合部材を前記縦溝に挿入した係合状態で固定する係合状態固定手段を備えている。
請求項3では、
前記縦溝係合部材は、縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き抜かれた係合解除状態とに横方向にスライド移動可能に設けられている。
請求項4では、
前記縦溝係合部材には、横長の長孔が設けられているとともに、前記長孔に挿入されて締め付けることによって前記縦溝係合部材を固定し、緩めることによって前記縦溝係合部材をスライド可能に支持するネジが備えられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係るブラケット取付装置によれば、
機器本体をブラケットに固定するときには、ブラケットの凸条を機器本体の横溝に挿通した後、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝に挿入して係合状態とし、
機器本体をブラケットから取り外すときには、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝から引き抜いて係合解除状態とした後、ブラケットの凸条から機器本体の横溝を引き抜いて取り外すように構成したので、簡易な構造と簡単な手間で、機器本体を取付けたり、取り外したりすることができる。
請求項2によれば、
前記縦溝係合部材を前記縦溝に挿入した係合状態で固定する係合状態固定手段を備えたので、機器本体が動かないように確実な状態で取り付けることができる。
請求項3によれば、
前記縦溝係合部材は、縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き抜かれた係合解除状態とに横方向にスライド移動可能に設けられているので、横方向のスライド移動だけで、取り付けたり取り外したりできるようになり、作業効率や安全性が向上する。
請求項4によれば、
前記縦溝係合部材には長孔を設けネジで固定したり緩めたりするので、機器本体の取付け取り外しが、簡易な構造を用いて簡単な作業で可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のブラケット取付装置を構成する機器とブラケットを説明する斜視図である。
【図2】前記ブラケットの斜視図である。
【図3】前記機器の一部の側面図である。
【図4】前記ブラケットの一部の正面図である。
【図5】前記ブラケット取付装置の使用状態を説明する一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかるブラケット取付装置は、
電子機器本体の両側面には横溝と、この溝に非平行な縦溝とを形成し、ブラケットには、内側に凸出して前記横溝に挿通し得るレール状の凸条と、前記縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き出されて係合解除状態とに移動可能な縦溝係合部材とを設けた形態である。
そして、電子機器をブラケットに固定するときには、ブラケットの凸条を電子機器の横溝に挿通した後、ブラケットの縦溝係合部材を、電子機器の縦溝に挿入して係合状態とし、電子機器をブラケットから取り外すときには、ブラケットの縦溝係合部材を、電子機器の縦溝から引き出して係合解除状態とした後、ブラケットの凸条から電子機器の横溝を引き抜いて取り外すように構成したものである。
【実施例1】
【0013】
以下に、実施例1のブラケット取付装置Aを、図1、2を参照して説明する。
1は例えば車載用無線通信機などの電子機器本体であり、ほぼ直方体の基本形状とされ、取付け状態において前面側となる一面には、操作ボタンや表示パネルなどが配設されており、取付け状態において左右の両側面となる面には、ブラケット5の凸条6、6が挿入される横溝2、2が両側面に沿って取付け状態においてほぼ水平方向となるように形成されている。この横溝2、2は直線状に形成されており、その深さは前記凸条に合わせて、例えば深さ1ミリ以上5ミリ以下程度で、幅は前記凸条を容易に挿入できるように十分な余裕を持った幅とされている。
【0014】
前記前記電子機器本体1の両側面において、前記横溝2、2より前面側には、前記横溝2、2に直交する縦溝3、3が形成されている。この縦溝3、3は、前記横溝2、2に対して直交することに限定されるものではなく、また、直線状である必要もなく、非平行な部分があれば良い。
前記縦溝3、3は、例えば図1、3に示したように”Z”字状とするか、もしくは”L”字状にしてもよい。
そして、前記電子機器本体1の取付け状態において背面側となる一面には、アンテナや電源ケーブルなどが接続し得るように構成されている。
【0015】
ブラケット5は、前記電子機器本体1を所定の取付け位置に固定するためのものであり、図示しない固定手段で、乗用車のダッシュボードの下部などの所定の取付け位置に固定されるように構成されている。
ブラケット5は、上に開いた”コ”字状の断面形状を持ち、その内部空間に前記電子機器本体1を収納し得るように構成されている。
具体的には、前記ブラケット5の両側面には内側に突出した凸条6、6が形成されている。また、前記ブラケット5の両側面と底面には補強用のリブが形成されている。
さらに、前記ブラケット5の前面側の端部には、外側に突出した舌片7、7が形成されており、この舌片7、7には縦溝係合部材としての板状のスライド部材8、8が外側から内側方向にスライド可能に配設されている。スライド部材8、8の先端の形状も、縦溝3、3の形状に合わせた形状とする。例えば、縦溝3、3の形状を図1、3に示したように”Z”字状とした場合には、スライド部材8、8の先端の形状も同様のZ”字状とする。
以上に説明した電子機器本体1の横溝2、2と、縦溝3、3と、ブラケット5の凸条6、6と、スライド部材8、8によって、本発明に係るブラケット取付装置Aが構成されている。
【0016】
以下においては、前記スライド部材8、8の詳細構造を、一方のスライド部材8とその近傍のブラケット5の一部を図示した図4を参照して説明する。
スライド部材8には、それぞれ2つの横長の長孔81、81が設けられ、これらの長孔81、81に差し込んだネジ82、82を前記舌片7に設けたネジ孔にねじ込むことによって、前記ネジ82、82の頭部で前記長孔81、81の周囲を押さえて、当該スライド部材8を前記舌片7に固定し得るように構成されている。
前記長孔81、81の形状はカギ型に形成されており、図上横方向の横孔部分811、811と、図上縦方向の縦穴部分812、812とが連結された状態に形成されている。
【0017】
このように、前記長孔81、81はカギ型に形成されているので、前記スライド部材8を外側にスライド移動させた図4の状態(スライド部材8と電子機器本体1の縦溝とは係合解除状態)で、電子機器本体1の横溝2、2に前記凸条6、6を差し込み、電子機器本体1を押し込んでスライドさせたあと、
図4に示したように、スライド部材8を矢印1のように外側から内側へスライド移動させて、図5に示したように、その先端を電子機器本体1の縦溝3に差し込む。その後、電子機器本体1を下方へ少し落としこむと、”Z”字状の縦溝3と係合状態のスライド部材8は下方へ押し下げられて、ネジ82が、長孔81の縦穴部分812に嵌まった状態になり左右横方向にずれなくなる。この係合状態で、さらに前記ネジ82を締め付けることにより、スライド部材8はブラケット5に確実に固定されるので、電子機器本体1もブラケット5に対して確実に固定される。また、縦溝3とスライド部材8の先端を”Z”字状とすることによって、縦溝3は縦方向も横方向も規制されるので、電子機器本体1のぐらつきがなくなる。
なお、前記長孔81とネジ82とで、特許請求の範囲に記載された係合状態固定手段を構成している。
【0018】
図5に示したような固定状態において、電子機器本体1の重量は主にブラケット5の凸条6、6と電子機器本体1の横溝2、2との係合によって支えられている。このとき、前記凸条6、6と横溝2、2との係合部分は、電子機器本体1の側面に沿った長い領域であるので、電子機器本体1の重量は広く分散されて確実に支えられるのである。
【0019】
そして、スライド部材8、8をネジ82でブラケット5に固定することにより、前記電子機器本体1の縦溝3、3には、奥へ押しこまれる力が加えられた状態となるので、電子機器本体1が前後方向へぐらつくなどの問題はなくなり確実にロックすることができる。
前記電子機器本体1の左右方向の動きは前記両側のスライド部材8、8で規制されるので、横方向のぐらつきもなくなり確実にロックすることができる。
以上のように、電子機器本体1のぐらつきを防ぐために、前記縦溝3、3の幅は、前記スライド部材8、8の先端の厚みに対して余裕があり過ぎると好ましくないので、出し入れ可能なぎりぎりの幅にすることが好ましい。
【0020】
スライド部材8をスライド可能な状態に緩めたり、スライド不可能な状態にロックしたりする作業は、ネジ82を緩めたり締め付けたりするだけで良く、ネジ82を完全に取り外す必要はないので、ネジ82を紛失する心配もない。
【0021】
縦溝係合部材としては、横方向に平行移動するスライド部材に限らず、回転移動によって、縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き抜かれた係合解除状態とに移動可能な回転板を用いることも可能である。
【0022】
このようにして、電子機器本体1はブラケット5を介して、所定の取付け位置に確実に固定できるので、本発明に係るブラケット取付装置は、車載用の無線通信機などに限らず、種々の機器を所定の取付け位置に固定するに適した取付け装置となる。
特に、機器本体1の固定作業や取り外し作業においては、ネジ82を締めたり緩めたりする作業と、スライド部材8、8を外側から内側へスライドさせたり内側から外側へスライドさせたりする正面側からの作業だけでよいので、従来のように、ブラケットの両側面方向からドライバを操作するというような作業が不要となり、狭いスペースであっても、作業効率や安全性が向上するとともに、簡易な構造でブラケットを確実に固定することが可能になるので、低コストで機能に優れた取付け装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、車載用の無線通信機などの電子機器に限らず、種々の機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0024】
A ブラケット取付装置
1 電子機器本体、機器本体
2 横溝
3 縦溝
5 ブラケット
6 凸条
7 舌片
8 縦溝係合部材、スライド部材
81 長孔
811 横穴部分
812 縦穴部分
82 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体を所定位置に取り付けるためにブラケットを用いる取付け装置において、
機器本体の両側面には横溝と、この溝に非平行な縦溝とを形成し、
ブラケットには、内側に凸出して横溝に挿通し得るレール状の凸条と、縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き抜かれた係合解除状態とに移動可能な縦溝係合部材とを設け、
機器本体をブラケットに固定するときには、ブラケットの凸条を機器本体の横溝に挿通した後、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝に挿入して係合状態とし、
機器本体をブラケットから取り外すときには、ブラケットの縦溝係合部材を、機器本体の縦溝から引き抜いて係合解除状態とした後、ブラケットの凸条から機器本体の横溝を引き抜いて取り外すように構成したことを特徴とするブラケット取付装置。
【請求項2】
前記縦溝係合部材を前記縦溝に挿入した係合状態で固定する係合状態固定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のブラケット取付装置。
【請求項3】
前記縦溝係合部材は、縦溝に挿入されて係合された係合状態と縦溝から引き抜かれた係合解除状態とに横方向にスライド移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載のブラケット取付装置。
【請求項4】
前記縦溝係合部材には、横長の長孔が設けられているとともに、前記長孔に挿入されて締め付けることによって前記縦溝係合部材を固定し、緩めることによって前記縦溝係合部材をスライド可能に支持するネジが備えられていることを特徴とする請求項1、2、3の何れか1項に記載のブラケット取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−27170(P2011−27170A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173275(P2009−173275)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】