説明

ブラシホルダ装置及びワイパモータ

【課題】小さな占有スペースで、ブラシホルダ部材をホルダベースに良好に(がたつかないように)固定することができるブラシホルダ装置を提供すること。
【解決手段】ブラシホルダ装置21は、ホルダベース22と、金属板材よりなり、ホルダベース22上に立設される一対の側壁36a,36b〜38a,38bとそれらの上端を繋ぐ上壁36c〜38cとを有し一対の側壁36a,36b〜38a,38bの下端からそれぞれ突出する固定片36d,36e〜38d,38eがホルダベース22を貫通して該ホルダベース22の底面側で互いに対向する側に折り曲げられた状態とされることで固定されるブラシホルダ部材36〜38とを備える。一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dと他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eとは、ブラシ39〜41の移動方向の異なる位置に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシを保持するブラシホルダ装置、及びブラシホルダ装置を備えたワイパモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモータとしては、略四角筒状のブラシホルダ部を有するブラシホルダ装置を備え、ブラシホルダ部の内部にブラシが整流子の径方向に沿って移動可能に収容保持されたものがある。
【0003】
このようなブラシホルダ装置としては、例えば、金属板材よりなる略四角筒状のブラシホルダ部材をホルダベース上に配置し、ブラシホルダ部材の底壁のブラシ移動方向(径方向)から突出する固定片をホルダベースの上面から底面側に到達させて折り曲げた状態とすることで固定したものがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このようなブラシホルダ部材がホルダベースに固定されたブラシホルダ装置では、モータ回転時に整流子と摺接してブラシがブラシホルダ部材の一方の側壁の内側面に押し付けられた際に、ブラシホルダ部材がホルダベースに対して傾き易いという問題がある。
【0004】
これに対する他のブラシホルダ装置としては、金属板材よりなる一対の側壁とそれら側壁の上端を繋ぐ上壁とを有するブラシホルダ部材をホルダベース上に配置し、一対の側壁の下端からそれぞれ突出する固定片を、ホルダベースを貫通させて該ホルダベースの底面側で折り曲げた状態とすることで固定したものがある(例えば、特許文献2参照)。このブラシホルダ装置では、一方の側壁と他方の側壁とに対向するように2対の固定片が設けられ、それら各対の固定片にてホルダベースを抱きかかえるようにしてブラシホルダ部材が固定される。しかしながら、このようなブラシホルダ装置では、ブラシの周方向幅が整流子のセグメント幅(整流子片の幅)に基づいて狭くなると、一対の側壁間隔も狭くなる。そのため、固定片を対向方向(径方向と直交する内側)に折り曲げて固定する場合、互いが重なってしまうため十分な固定片の長さを確保することができない。尚、固定片が重なるとブラシホルダ部材はホルダベースに対してがたつきを生じてしまう(しっかり固定されない)。又、十分な固定片の長さが無い場合も、折り曲げ固定した際に生じる固定片のスプリングバック等によって固定片がホルダベースをしっかり抱きかかえることができず、ブラシホルダ部材がホルダベースに対してがたつきを生じてしまう。
【0005】
そこで、充分な固定片の長さを得るために、ブラシホルダ部材の一対の側壁から固定片を一旦外側に折り曲げた後にホルダベースを貫通させて対向方向に折り曲げて固定するものがある(例えば、特許文献3参照)。このブラシホルダ装置では、対向する固定片の曲げ代を長く取ることができるので、固定片がホルダベースをしっかり抱きかかえることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−199299号公報
【特許文献2】特開2002−238204号公報
【特許文献3】特開2006−211750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したブラシホルダ装置(特許文献3参照)では、ブラシホルダ部材の一対の側壁よりも外側に固定片が張り出すことになるため、ブラシホルダ部材のホルダベースに対する占有スペースが大きくなってしまうという問題があり、ひいては配置自由度が制限されることになる。又、ブラシホルダ部材の展開形状から材料の歩留まりも悪くなる。又、充分な固定片の長さを確保するために、固定片をホルダベースの底面側で互いに外側に折り曲げて固定することも考えられるが、この場合でもブラシホルダ部材のホルダベースに対する占有スペースが大きくなるといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、小さな占有スペースで、ブラシホルダ部材をホルダベースに良好に(がたつかないように)固定することができるブラシホルダ装置及びワイパモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明では、ホルダベースと、金属板材よりなり、前記ホルダベース上に立設される一対の側壁とそれら側壁の上端を繋ぐ上壁とを有し一対の前記側壁の下端からそれぞれ突出する固定片が前記ホルダベースを貫通して該ホルダベースの底面側で互いに対向する側に折り曲げられた状態とされることで固定されるブラシホルダ部材とを備え、前記ホルダベース及び前記ブラシホルダ部材によって形成される略四角筒状のブラシホルダ部の内部にブラシが整流子の径方向に沿って移動可能に収容保持されるブラシホルダ装置であって、一方の前記側壁の前記固定片と他方の前記側壁の前記固定片とは、前記ブラシの移動方向の異なる位置にそれぞれ形成されたことを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、一方の側壁の固定片と他方の側壁の固定片とは、前記ブラシの移動方向の異なる位置にそれぞれ形成されるため、互いに対向する内側に折り曲げてもぶつかる(重なる)ことが無く、その長さを長く(例えば、共に一対の側壁の間隔の半分よりも長く)することができる。よって、ブラシの周方向の幅寸法が小さい(一対の側壁の間隔が狭い)場合でも、特に占有スペースを大きくすることなく、小さな占有スペースで、ブラシホルダ部材をホルダベースに良好に(がたつかないように)固定することができる。又、例えば、ブラシホルダ部材の一対の側壁から固定片を一旦外側に折り曲げた後にホルダベースを貫通させて対向方向に折り曲げて固定するものに比べて展開形状が簡素となり材料の歩留まりがよい。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のブラシホルダ装置において、一方の前記側壁の前記固定片と他方の前記側壁の前記固定片は、共に一対の前記側壁の間隔の半分より長く形成されたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、一方の側壁の固定片と他方の側壁の固定片は、共に一対の側壁の間隔の半分より長く形成されるため、例えば、一対の固定片を一対の側壁の間隔の半分以下の長さとした場合等に比べて、ブラシホルダ部材をホルダベースに強固に固定することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載のブラシホルダ装置において、前記整流子の回転方向にある一方の前記側壁の前記固定片は、他方の前記側壁の前記固定片より多く形成されたことを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、モータ回転時においてブラシが押し付けられる側である整流子の回転方向にある一方の側壁の固定片は、他方の側壁の固定片より多く形成されるため、モータ回転時にブラシを強固に支持することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のブラシホルダ装置において、前記整流子の回転方向にある一方の前記側壁の前記固定片は、他方の前記側壁の前記固定片よりも前記ブラシの移動方向の両端側に位置してそれぞれ形成されたことを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、モータ回転時においてブラシが押し付けられる側である整流子の回転方向にある一方の側壁の固定片は、他方の前記側壁の前記固定片よりも前記ブラシの移動方向(径方向)の両端側に位置してそれぞれ形成されるため、モータ回転時にブラシを強固にバランス良く支持することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブラシホルダ装置を備えたワイパモータであって、前記ブラシは、低速での回転駆動に使用される低速用のブラシと、前記低速用のブラシに対して前記整流子の回転方向に電気的に所定角度ずれて配置され高速での回転駆動に使用される高速用のブラシと、前記低速用のブラシと前記高速用のブラシとに共通して使用される共通ブラシとを有し、前記低速用のブラシ又は前記高速用のブラシに択一的に電源が供給されて、ワイパを低速又は高速にて払拭駆動することを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、ワイパモータの低速用のブラシ又は高速用のブラシに択一的に電源が供給されて駆動力を供給し、ワイパを低速又は高速にて払拭駆動する。このようにワイパモータでは、限られたスペースのホルダベース上に、低速用のブラシと共通ブラシのほかに速度切換えされて使用される高速用のブラシや、その高速用のブラシが存在するために発生する雑音を抑止するための電気素子などが配置されているなかで、各ブラシの配置自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小さな占有スペースで、ブラシホルダ部材をホルダベースに良好に(がたつかないように)固定することができるブラシホルダ装置及びワイパモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態におけるモータの一部断面図。
【図2】本実施の形態におけるブラシホルダ装置の斜視図。
【図3】本実施の形態におけるブラシホルダ装置の平面図。
【図4】本実施の形態におけるブラシホルダ装置の一部分解斜視図。
【図5】本実施の形態におけるブラシホルダ部の一部断面図。
【図6】本実施の形態におけるブラシホルダ装置の底面図。
【図7】(a)本実施の形態におけるブラシの平面図。(b)本実施の形態におけるブラシホルダ部を径方向内側から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、モータ1は、車両のフロントガラスに付着した雨滴等を払拭する車両用ワイパ装置の駆動源として用いられるワイパモータ(以下、単にモータと称す)である。このモータ1は、モータ本体2及び減速部3から構成されている。
【0022】
モータ本体2のヨークハウジング4は、導電性金属材料からなり、略有底円筒状に形成されている。ヨークハウジング4の内周面には対向する二対(計4つ)のマグネット5が固定され、各マグネット5の内側にはアーマチャ(回転子)6が回転可能に収容されている。ヨークハウジング4の底部には、アーマチャ6の回転軸7の基端部を回転可能に支持する軸受8が設けられている。ヨークハウジング4の開口部4aには、減速部3のギヤハウジング10が、突出した回転軸7の先端側を収容するように組み付けられている。
【0023】
ギヤハウジング10は、アルミニウム合金等の導電性金属材料からなり、ヨークハウジング4の開口部4aとほぼ同形状をなす開口部10aを有している。そして、ギヤハウジング10は、回転軸7の先端側及び図示しないウォームホイール等を収容可能な形状に形成されている。ギヤハウジング10内には、回転軸7の中央部を回転可能に支持する軸受11が設けられるとともに、回転軸7の先端部を回転可能に支持する軸受(図示略)が設けられている。前記軸受11より先端側の回転軸7にはウォーム(図示略)が形成され、そのウォームはウォームホイールと噛合されている。ウォームホイールの軸中心には出力軸(図示略)が設けられ、減速部3では回転軸7の回転を減速して出力可能とされている。尚、このギヤハウジング10は、導電性金属材料からなる図示しない取付ブラケットを介して車両のボディに対して取り付けられて電気的にグランド接続されている。そして、出力軸には、車両用ワイパ装置のリンク機構を介してワイパ(ワイパアーム及びワイパブレード)が駆動連結されることになり、出力軸が回転することにより、ワイパが所定の払拭動作を行うことになる。
【0024】
又、ギヤハウジング10の開口部10a内には、前記モータ本体2の一部を構成するブラシホルダ装置21(図2〜図4及び図6参照)が組み付けられている。このブラシホルダ装置21は、絶縁材からなり略円環状をなすホルダベース22を備えている。このホルダベース22(ブラシホルダ装置21)は、その中央部に回転軸7及び該回転軸7に固定された整流子6aが挿通されるように配置される。
【0025】
ホルダベース22には、2つのノイズ防止用のチョークコイル31,32と、3つのブラシ支持ターミナル33〜35と、3つのブラシホルダ部材36〜38と、正極側の低速用のブラシ39及び高速用のブラシ40と、低速用及び高速用のブラシ39,40と共にして使用される負極側のグランド接続された共通用の共通ブラシ41と、3つの捩りコイルばね42〜44と、アースターミナル45と、サーキットブレーカ46とが組付けられる。
【0026】
チョークコイル31,32は、例えば棒状のフェライト磁心31a,32aにコイルが巻かれたものであり、ホルダベース22に立設された収容部22a内にそれぞれ収容され、その下端部が、ギヤハウジング10のコネクタ部10b(図1参照)にそれぞれ電気的に接続され、このコネクタ部10bには図示しない外部電源の外部コネクタ(その正極側ターミナル)が接続される。
【0027】
ブラシ支持ターミナル33〜35及びアースターミナル45は、導電性金属板材からプレス装置等により打ち抜かれて折曲形成されてなる。そして、低速用のブラシ39に対応したブラシ支持ターミナル33は、一方のチョークコイル31の上端部に接続されるとともに、低速用のブラシ39と対応した位置まで延びてブラシ支持部33aがホルダベース22の上面に敷設されている。又、高速用のブラシ40に対応したブラシ支持ターミナル34は、他方のチョークコイル32の上端部に接続されるとともに、高速用のブラシ40と対応した位置まで延びてブラシ支持部34aがホルダベース22の上面に敷設されている。又、負極側の共通ブラシ41に対応したブラシ支持ターミナル35は、ホルダベース22のブレーカ保持部22bと対応した位置から負極側の共通ブラシ41と対応した位置まで延びてブラシ支持部35aがホルダベース22の上面に敷設されている。尚、低速用のブラシ39と対応した位置のブラシ支持部33aは、前記チョークコイル31,32から機械的にほぼ180°離間した負極側の共通ブラシ41と対応した位置のブラシ支持部35aに対して回転方向(図3において時計回り方向)に機械的に90°離間した位置に設けられる。又、高速用のブラシ40と対応した位置のブラシ支持部34aは、前記負極側の共通ブラシ41と対応した位置のブラシ支持部35aに対して、前記低速用のブラシ39と対応した位置のブラシ支持部33aの反対側で反回転方向(図3において反時計回り方向)に機械的に90°より大きな角度離間した位置に設けられる。
【0028】
ブラシホルダ部材36〜38は、導電性金属板材からプレス装置等により打ち抜かれて折曲形成されてなり、ホルダベース22上に立設される一対の平行な側壁36a,36b〜38a,38bとそれらの上端を繋ぐ上壁36c〜38cとからなる。そして、ブラシホルダ部材36〜38は、一対の側壁36a,36b〜38a,38bの下端から突出する固定片36d,36e〜38d,38e(図6参照)が前記ブラシ支持部33a〜35a及びホルダベース22を貫通して該ホルダベース22の底面側で互いに対向する側に折り曲げられた状態とされる(かしめられる)ことで固定されている。ここで、本実施の形態の一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dと他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eとは、図6に示すように、径方向の異なる位置に形成されている。詳しくは、整流子6aの回転方向にある一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dは、径方向の両端側にそれぞれ1つずつ形成され、他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eは、径方向の中間部に1つのみ形成されている。又、一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dと他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eは、共に一対の側壁36a,36b〜38a,38bの間隔(回転方向の幅)の半分より長く形成されている。詳しくは、図6に示すように、一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dと他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eのホルダベース22の底面側における長さの和(m+n)は、一方の側壁36a〜38aと他方の側壁36b〜38bとの間隔寸法wよりも大きく(即ち(m+n)>wに)設定されている。そして、各固定片36d,36e〜38d,38eがホルダベース22を貫通して該ホルダベース22の底面側で互いに径方向と直交する内側(互いに対向する側)に折り曲げられた状態とされる(かしめられる)ことでブラシホルダ部材36〜38がホルダベース22に固定されている。そして、各ブラシ39〜41は、図3に示すように、ブラシ支持部33a〜35a(ホルダベース22)とブラシホルダ部材36〜38とで形成される略四角筒状のブラシホルダ部BH1〜BH3内部に径方向に移動可能に収容保持される。
【0029】
ブラシ39〜41は、図5に示すように、整流子6aの回転方向にある一方の側壁36a〜38aと対向する側が径方向に沿って段差Dのない平面とされつつ他方の側壁36b〜38bと対向する側が径方向に沿って段差Dを有することで、整流子6a側(径方向内側)の回転方向の幅が反整流子6a側(径方向外側)の幅より小さく形成されている。この各ブラシ39〜41の幅の広い反整流子6a側(径方向外側)にはピッグテール39a〜41aの基端側が埋設されて固定接続され、それら各ブラシ39〜41は、それぞれピッグテール39a〜41aを介してブラシ支持部33a〜35aに電気的に確実に接続される。又、各ブラシ39〜41は、ホルダベース22に立設されたばね支持柱22cに外嵌されて支持された捩りコイルばね42〜44によって整流子6a側(径方向内側)に付勢されている。
【0030】
又、図5に示すように、前記段差Dと対向する側の他方の側壁36b〜38bの整流子6a側(径方向内側)には、ブラシ39〜41の整流子6a側の回転方向の幅を許容して前記ブラシ39〜41を加圧しない間隔を有するように(即ち、自然状態で一対の側壁36a,36b〜38a,38b間の寸法を狭く(小さく)しつつもブラシ39〜41に押圧力を付勢してしまわない間隔に)一方の側壁36a〜38a側に向けて延びる抑制部36f〜38fが形成されている。詳しくは、図7(a)に示すように、ブラシ39〜41の整流子6a側の回転方向の幅は、基準値Aを用いて公差を含む最大許容値がA+aで、公差を含む最小許容値がA+b(但しa>b)に形成されている。又、図7(b)に示すように、前記間隔(抑制部36f〜38fと一方の側壁36a〜38aとの間隔)は、ブラシ39〜41と共通の基準値Aを用いて公差を含む最大許容値がA+cで、公差を含む最小許容値がA+d(但しc>d)に形成されている。そして、前記間隔の公差を含む最小許容値A+dが、ブラシ39〜41の整流子6a側の回転方向の幅の公差を含む最大許容値A+aよりも大きくなるように((A+d)>(A+a)、即ちd>aとなるように)、前記抑制部36f〜38fが形成されている。尚、a〜dは、(A+d)>(A+a)を満たせば、0や負の値でもよく、例えば、dの値が0の場合ではaは負の値となる。この抑制部36f〜38fは、導電性金属板材からプレス装置等により打ち抜かれる際に、側壁36b〜38bに対して独立して折り曲げ可能に形成され、一方の側壁36a〜38a側に折曲形成されてなる。又、この抑制部36f〜38fは、先端側(一方の側壁36a〜38a側)に向かうほど整流子6a側(径方向内側)に向かう傾斜面36g〜38gを有している。
【0031】
アースターミナル45は、ホルダベース22の前記ブレーカ保持部22bと対応した位置からホルダベース22の取付け部22d(図3参照)と対応した位置まで延びて配置されている。
【0032】
詳しくは、まず本実施の形態のブレーカ保持部22bは、図2に示すように、ホルダベース22における前記グランド用の共通ブラシ41と前記高速用のブラシ40との間であって負極側の共通ブラシ41寄りで下方が開口した有底四角筒状に上方に膨出するように形成されている。そして、ブレーカ保持部22bには、サーキットブレーカ46が下方から挿入されて保持される。又、この状態で、サーキットブレーカ46の第1及び第2端子46a,46bは、ブレーカ保持部22bの底部(上方を覆う面)を貫通して上方に突出して配置される。又、この第1端子46aには、前記ブラシ支持ターミナル35の端子35bが電気的に接続される。又、前記サーキットブレーカ46は、内部にバイメタルスイッチを収容してなり、過電流により温度が第1設定温度(例えば、170度)まで上昇するとオフ状態となり回路を遮断し、前記第1の設定温度より低い第2設定温度(例えば、130度)まで下降するとオン状態に復帰するものである。
【0033】
又、取付け部22dは、図3に示すように、ホルダベース22における前記負極側の共通ブラシ41と前記高速用のブラシ40との間であって高速用のブラシ40寄りで上下(表裏)に貫通するとともに径方向外側が開口した形状に形成されている。この取付け部22dには、上下方向に貫通する筒状のゴムブッシュ47が径方向外側から嵌着される。尚、ホルダベース22における前記負極側の共通ブラシ41と前記低速用のブラシ39との間にも、図3に示すように、同様の取付け部22eが形成され、同様のゴムブッシュ48が嵌着されている。
【0034】
そして、アースターミナル45は、図2及び図4に示すように、サーキットブレーカ46の第2端子46bに接続されるブレーカ側端子45aと、前記ゴムブッシュ47の上面に面接触するグランド側端子45bと、ブレーカ側端子45aとグランド側端子45bとを繋ぐ迂回路部45cとを備える。尚、迂回路部45cは、サーキットブレーカ46(ブレーカ側端子45a)とグランド側(グランド側端子45b)の放熱部品(本実施の形態ではギヤハウジング10)との間の熱伝導を抑制して回路の復帰を遅延すべく迂回した形状とされている。
【0035】
そして、ホルダベース22(ブラシホルダ装置21)は、前記取付け部22d,22e及びゴムブッシュ47,48を貫通してギヤハウジング10の雌ねじ10c(図1に片方のみ図示)に螺合されるネジ49,50によってギヤハウジング10に固定されている。この際、アースターミナル45のグランド側端子45bは、ネジ49の頭によって締結され、グランド接続された放熱部品としてのギヤハウジング10に接続される(押圧接触されるとともに電気的にも接続される)ことになる。
【0036】
上記モータ1では、例えば、ワイパスイッチで低速モードが選択されると、外部電源からチョークコイル31、ブラシ支持ターミナル33、低速用のブラシ39を介して整流子6a(アーマチャ6の巻線)に駆動電流が供給され、更にグランド用の共通ブラシ41、ブラシ支持ターミナル35、サーキットブレーカ46、アースターミナル45、ギヤハウジング10の順に電流が流れることになる。すると、ワイパモータとしてのモータ1は、低速で回転駆動されて不図示のリンク機構などを介してワイパが低速で払拭駆動される。
【0037】
一方、ワイパスイッチで高速モードが選択されると、外部電源からチョークコイル32、ブラシ支持ターミナル34、高速用のブラシ40を介して整流子6a(アーマチャ6の巻線)に駆動電流が供給され、更にグランド用の共通ブラシ41、ブラシ支持ターミナル35、サーキットブレーカ46、アースターミナル45、ギヤハウジング10の順に電流が流れることになる。すると、ワイパモータとしてのモータ1は、高速で回転駆動されて不図示のリンク機構などを介してワイパが高速で払拭駆動される。
【0038】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dと他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eとは、ブラシ39〜41の移動方向(径方向)の異なる位置にそれぞれ形成されるため、互いに対向する内側に折り曲げてもぶつかる(重なる)ことが無く、その長さを長くすることができる。よって、ブラシ39〜41の周方向の幅寸法が小さい(一対の側壁36a,36b〜38a,38bの間隔が狭い)場合でも、特に占有スペースを大きくすることなく、小さな占有スペースで、ブラシホルダ部材36〜38をホルダベース22に良好に(がたつかないように)固定することができる。又、例えば、ブラシホルダ部材の一対の側壁から固定片を一旦外側に折り曲げた後にホルダベースを貫通させて対向方向に折り曲げて固定するものに比べて、展開形状が簡素となり材料の歩留まりがよい。
【0039】
(2)一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dと他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eは、共に一対の側壁36a,36b〜38a,38bの間隔(回転方向の幅)の半分より長く形成される。よって、例えば、一対の固定片を一対の側壁36a,36b〜38a,38bの間隔の半分以下の長さとした場合等に比べて、ブラシホルダ部材36〜38をホルダベース22に強固に固定することができる。
【0040】
(3)モータ回転時においてブラシ39〜41が押し付けられる側である整流子6aの回転方向にある一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dは、他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eより多く形成されるため、モータ回転時にブラシ39〜41を強固に支持することができる。
【0041】
(4)モータ回転時においてブラシ39〜41が押し付けられる側である整流子6aの回転方向にある一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dは、他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eよりもブラシ39〜41の移動方向(径方向)の両端側に位置してそれぞれ形成されるため、モータ回転時にブラシ39〜41を強固にバランス良く支持することができる。詳しくは、本実施の形態では、他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eは、ブラシ39〜41の移動方向(径方向)の中間部に1つのみ形成されるが、一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dは、その他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eよりもブラシ39〜41の移動方向(径方向)の両端側に位置してそれぞれ1つずつ形成されるため、モータ回転時にブラシ39〜41を強固にバランス良く支持することができる。
【0042】
(5)モータ1はワイパモータであり、ホルダベース22上に配置されたブラシ39〜41は、低速での回転駆動に使用される低速用のブラシ39と、その低速用のブラシ39に対して整流子6aの回転方向に電気的に所定角度ずれて配置され高速での回転駆動に使用される高速用のブラシ40と、低速用のブラシ39と高速用のブラシ40とに共通して使用される共通ブラシ41とを有し、低速用のブラシ39又は高速用のブラシ40に択一的に電源が供給されて、ワイパを低速又は高速にて払拭駆動する。このようにワイパモータでは、限られたスペースのホルダベース22上に、低速用のブラシ39と共通ブラシ41のほかに速度切換えされて使用される高速用のブラシ40や、その高速用のブラシ40が存在するために発生する雑音を抑止するための電気素子(チョークコイル31,32)などが配置されているなかで、各ブラシ39〜41(ブラシホルダ部材36〜38)の配置自由度を向上させることができる。
【0043】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、全ての固定片36d,36e〜38d,38eは、一対の側壁36a,36b〜38a,38bの間隔(回転方向の幅)の半分より長く形成されるとしたが、これに限定されず、例えば、一方の固定片を一対の側壁の間隔の半分より長く形成し他方の固定片を一対の側壁の間隔の半分と同じ長さとしてもよい。
【0044】
・上記実施の形態では、整流子6aの回転方向にある一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dは、他方の側壁36b〜38bの固定片36e〜38eより多く形成されるとしたが、これに限定されず、例えば、一方の側壁の固定片と他方の側壁の固定片とを同じ数としてもよい。尚、勿論、この場合も、一方の側壁の固定片と他方の側壁の固定片とをブラシ39〜41の移動方向(径方向)の異なる位置に(例えば、径方向に交互に)形成する。
【0045】
・上記実施の形態では、整流子6aの回転方向にある一方の側壁36a〜38aの固定片36d〜38dは、ブラシ39〜41の移動方向(径方向)の両端側にそれぞれ形成されるとしたが、これに限定されず、例えば、一方の側壁の固定片をブラシ39〜41の移動方向(径方向)の中間部に1つのみ形成し、他方の側壁の固定片をブラシ39〜41の移動方向(径方向)の両端側にそれぞれ1つずつ形成してもよい。
【0046】
・上記実施の形態では、ブラシ39〜41は、段差Dを有することで、整流子6a側(径方向内側)の回転方向の幅が反整流子6a側(径方向外側)の幅より小さく形成されるとしたが、これに限定されず、単なる略四角柱状の(段差Dを有さない)ものとしてもよい。又、勿論、このような場合等、他方の側壁36b〜38bの抑制部36f〜38fを削除した構成としてもよい。
【0047】
・上記実施の形態では、正極側の低速用のブラシ39と高速用のブラシ40とを備えたモータ1に具体化したが、正極側のブラシが1個のモータに具体化してもよい。又、上記実施の形態では、車両用ワイパ装置の駆動源として用いられるモータ1、即ちワイパモータに具体化したが、これに限定されず、他の装置に用いられるモータに具体化してもよい。
【0048】
上記実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項1又は2に記載のブラシホルダ装置において、前記整流子の回転方向にある一方の前記側壁の前記固定片は、ブラシの移動方向(径方向)の両端側に位置してそれぞれ1つずつ形成され、他方の前記側壁の前記固定片は、ブラシの移動方向(径方向)の中間部に1つのみ形成されたことを特徴とするブラシホルダ装置。
【0049】
同構成によれば、モータ回転時においてブラシが押し付けられる側である整流子の回転方向にある一方の側壁の固定片は、ブラシの移動方向(径方向)の両端側に位置してそれぞれ1つずつ形成され、他方の側壁の固定片は、ブラシの移動方向(径方向)の中間部に1つのみ形成されるため、モータ回転時にブラシを強固にバランス良く支持することができる。
【0050】
(ロ)請求項1に記載のブラシホルダ装置において、前記ブラシホルダ部材は、一方の前記側壁の前記固定片と他方の前記側壁の前記固定片の前記ホルダベースの底面側における長さの和(m+n)が、前記一方の前記側壁と前記他方の前記側壁との間隔寸法wよりも大きいことを特徴とするブラシホルダ装置。
【0051】
同構成によれば、ブラシホルダ部材は、一方の側壁の固定片と他方の側壁の固定片のホルダベースの底面側における長さの和(m+n)が、一方の側壁と他方の側壁との間隔寸法wよりも大きく形成されるため、ブラシの整流子の回転方向の幅が小さい場合に、それに伴ってブラシホルダ部材の一対の側壁の間隔が狭く形成されても、ホルダベースの底面側で十分な長さの固定片が互いに重なることなく対向する側に折り曲げられてしっかりと固定できる。
【符号の説明】
【0052】
6a…整流子、22…ホルダベース、36〜38…ブラシホルダ部材、36a〜38a…一方の側壁、36b〜38b…他方の側壁、36c〜38c…上壁、36d,36e〜38d,38e…固定片、39〜41…ブラシ、BH1〜BH3…ブラシホルダ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダベースと、
金属板材よりなり、前記ホルダベース上に立設される一対の側壁とそれら側壁の上端を繋ぐ上壁とを有し一対の前記側壁の下端からそれぞれ突出する固定片が前記ホルダベースを貫通して該ホルダベースの底面側で互いに対向する側に折り曲げられた状態とされることで固定されるブラシホルダ部材と
を備え、前記ホルダベース及び前記ブラシホルダ部材によって形成される略四角筒状のブラシホルダ部の内部にブラシが整流子の径方向に沿って移動可能に収容保持されるブラシホルダ装置であって、
一方の前記側壁の前記固定片と他方の前記側壁の前記固定片とは、前記ブラシの移動方向の異なる位置にそれぞれ形成されたことを特徴とするブラシホルダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシホルダ装置において、
一方の前記側壁の前記固定片と他方の前記側壁の前記固定片は、共に一対の前記側壁の間隔の半分より長く形成されたことを特徴とするブラシホルダ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブラシホルダ装置において、
前記整流子の回転方向にある一方の前記側壁の前記固定片は、他方の前記側壁の前記固定片より多く形成されたことを特徴とするブラシホルダ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のブラシホルダ装置において、
前記整流子の回転方向にある一方の前記側壁の前記固定片は、他方の前記側壁の前記固定片よりも前記ブラシの移動方向の両端側に位置してそれぞれ形成されたことを特徴とするブラシホルダ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブラシホルダ装置を備えたワイパモータであって、
前記ブラシは、低速での回転駆動に使用される低速用のブラシと、前記低速用のブラシに対して前記整流子の回転方向に電気的に所定角度ずれて配置され高速での回転駆動に使用される高速用のブラシと、前記低速用のブラシと前記高速用のブラシとに共通して使用される共通ブラシとを有し、
前記低速用のブラシ又は前記高速用のブラシに択一的に電源が供給されて、ワイパを低速又は高速にて払拭駆動することを特徴とするワイパモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234438(P2011−234438A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100142(P2010−100142)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】