説明

ブレーキディスク検査装置

【課題】 ブレーキディスクの上面又は下面の平坦度を測定し、測定結果が前記平坦度の仕様要求を判断するブレーキディスク検査装置を提供する。
【解決手段】 ブレーキディスク18の上面181又は下面182の直交方向に昇降自在に支持され、下端又は上端を前記上面又は下面に当接させる探査ロッド136と、この探査ロッド136を測定部本体134に対してブレーキディスク18の上面181又は下面182の直交方向に弾性支持する板バネ135と、測定部本体134に支持され、下端をブレーキディスク18の上面181に当接させた探査ロッド136の上端、又は上端をブレーキディスク18の下面182に当接させた探査ロッド136の下端に当接させ、探査ロッド136の昇降に比例した測定値を出力する変位センサ138とからなる接触式測定部13を備えたブレーキディスク検査装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ラインにおいてディスクブレーキ装置のブレーキディスクの平坦度を検査するためのブレーキディスク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置は、車輪と一体に回転しているブレーキディスクに制動パッドを押し当てることにより、車輪の運動エネルギーをブレーキディスクに対する制動パッドの摩擦エネルギー(主に熱エネルギー)に転換して、制動を図る装置である。このとき、ブレーキディスクの全周に対して制動パッドが不均一に押し当てられると、前記摩擦エネルギーの発生がブレーキディスクの周方向に不均一となり、制動力が安定して発揮されないばかりか、ブレーキディスクが偏って摩耗し、制動力が低下することにもなりかねない。これから、ディスクブレーキ装置においては、ブレーキディスクの全周に対して制動パッドが均一に押し当てられること、すなわちブレーキディスクの平坦度が仕様要求として挙げられる。
【0003】
ブレーキディスクは円板状部材であり、上記平坦度は前記円板状部材における円形の上面又は下面の平坦度が、仕様要求を満足する必要がある。ここで、ブレーキディスクに似た円板状部材の平坦度を測定する測定装置として、例えば特許文献1が開示する測定装置を挙げることができる。この特許文献1の測定装置は、円板状部材(被測定円板)を水平回転自在に保持する円板保持装置と、前記円板状部材の半径方向に進退自在で上面又は下面に対向して配された接触式測定部(微小変位形状検出器)と、前記接触式測定部の変位センサが検出した測定値から平坦度を算出する処理部(増幅演算器)とから構成されている。接触式測定部の変位センサは、探査針からなる機械的センサ(検出器)である。
【0004】
【特許文献1】実全昭55-133316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレーキディスクを円板状部材とみなせば、特許文献1に見られる測定装置を利用して検査装置を構成できるように見える。しかし、特許文献1に見られる測定装置は、ハードディスク装置における磁気ディスクの平坦度測定用であり、ブレーキディスクの平坦度を測定し、仕様要求満足の有無を判断する検査装置として、そのまま利用できない。なぜなら、磁気ディスクの上面又は下面は平滑面であるのに対し、通常鋳造製のブレーキディスクの上面又は下面は粗雑面であるため、接触式測定部の変位センサをブレーキディスクの上面又は下面に直接押し当てると、接触式測定部が粗雑面の凹凸に追従しきれず、正確な平坦度が計測できなくなるからである。
【0006】
これから、ブレーキディスクの平坦度を判断する検査装置では、特許文献1に見られる接触式測定部に代えて、非接触式測定部を用いることも考えられる。この非接触式測定部の代替性については、特許文献1も触れている。しかし、非接触式測定部が変位センサとして光学的なセンサを用いた場合、粗雑面である上面又は下面で測定光が不均一に散乱してしまい、前記上面又は下面の平坦度を正確に測定できない。また、非接触式測定部が変位センサと渦電流を利用した電磁的なセンサを用いた場合、鋳造製であるブレーキディスクの内部組織が均一でないためにノイズが測定されやすく、前記上面又は下面の平坦度をやはり正確に測定できない。
【0007】
このように、ブレーキディスクの平坦度を測定するには、接触式測定部が好ましいものの、特許文献1の測定装置のように、単純に接触式測定部の変位センサを上面又は下面に押し当てることができない。そこで、ブレーキディスクの上面又は下面の平坦度を測定し、測定結果が前記平坦度の仕様要求について合否判定するブレーキディスク検査装置において、特に前記上面又は下面に押し当てる接触式測定部について、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果、ブレーキディスクの略半径方向に進退自在でこのブレーキディスクの上面又は下面の一方又は両方に押し当てられる接触式測定部を備え、この接触式測定部の測定値から前記ブレーキディスクの平坦度が仕様要求を満足しているか否かを処理部が判断するブレーキディスク検査装置において、接触式測定部は、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に昇降自在に支持され、下端又は上端を前記上面又は下面に当接させる探査ロッドと、この探査ロッドを測定部本体に対してブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に弾性支持する弾性支持部と、測定部本体に支持され、下端をブレーキディスクの上面に当接させた探査ロッドの上端、又は上端をブレーキディスクの下面に当接させた探査ロッドの下端に当接させ、探査ロッドの昇降に比例した測定値を出力する変位センサとからなるブレーキディスク検査装置を開発した。
【0009】
本発明のブレーキディスク検査装置は、例えばブレーキディスクを水平回転自在に支持するディスク支持部と、前記ブレーキディスクを水平回転させるディスク回転部と、前記ブレーキディスクの略半径方向に進退自在でこのブレーキディスクの上面又は下面の一方又は両方に押し当てられる接触式測定部と、この接触式測定部の測定値から前記ブレーキディスクの平坦度が仕様要求を満足しているか否かを判断する処理部とから構成され、ディスク支持部に支持されたブレーキディスクをディスク回転部により回転させながら、接触式測定部によりブレーキディスクの上面又は下面の一方又は両方の平坦度を測定する。
【0010】
本発明は、ブレーキディスクの上面又は下面に直接変位センサを押し当てるのではなく、測定部本体に弾性支持された探査ロッドをブレーキディスクの上面又は下面に押し当て、この探査ロッドの昇降を前記上面又は下面の凹凸として変位センサが測定し、測定値を出力する。本発明の探査ロッドは、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向の昇降方向にのみ変位を制限することで、変位センサに正確なブレーキディスクの上面又は下面の凹凸を伝達する役割を有している。また、本発明の変位センサは、探査ロッドの昇降を測定できればよいため、接触式センサのほか、非接触式センサも用いることができる。
【0011】
弾性支持部は、測定部本体に対して探査ロッドを弾性支持できればよく、例えば測定部本体に一端を係合し、他端を探査ロッドに係合するコイルバネを用いることができる。しかし、通常探査ロッドも小さくなるため、ブレーキディスクの上面又は下面の凹凸に追従するのに適当な弾性力を探査ロッドに付加するコイルバネの選択は難しい。そこで、本発明の弾性支持部は、測定部本体から突出した複数の板バネで、各板バネはそれぞれの弾性変形を互いに抑制する位置関係で突出し、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に向けた探査ロッドを前記板バネに支持させる構成にする。
【0012】
好ましい弾性支持部は、測定部本体から突出した2枚の板バネで、各板バネはそれぞれの弾性変形を互いに抑制する平行関係で突出し、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に向けた探査ロッドを前記板バネに架設した構成である測定部本体から突出した2枚の板バネであり、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に向けた探査ロッドを前記板バネに架設した構成にするとよい。板バネが2枚あることにより、互いが相手の弾性変形を抑制し、探査ロッドを安定してブレーキディスクの上面又は下面に押し当てることができる。
【0013】
厳密に言えば、各板バネによる探査ロッドの変位方向は、測定部本体の板バネの固着部位から探査ロッドの架設部位までの長さを半径とする円周方向になる。しかし、ブレーキディスクの上面又は下面の凹凸は数10μmオーダであるため、板バネに従う探査ロッドの昇降は直線とみなし、また前記板バネによる探査ロッドの変位方向は、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向とみなすことができる。ここで、2枚の板バネは互いの弾性変形を抑制するため、同じ材質及び大きさの板バネを2枚平行に設けることが好ましいが、2枚の板バネの材質や大きさを異ならせたり、また2枚を非平行にしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ブレーキディスクの上面又は下面の平坦度を正確に測定し、仕様要求との比較により、前記平坦度が満足するか否かを判断できるブレーキディスク検査装置を提供できる。ここで、本発明に言う正確な測定とは、測定値そのものの精度及び信頼性が高いことのほか、繰り返し測定における再現性が高いことを意味する。本発明のブレーキディスク検査装置は、平坦度の測定原理そのものは特許文献1の測定装置と変わらない。しかし、本発明のブレーキディスク検査装置は、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に昇降する探査ロッドの前記昇降を変位センサで測定することにより、例えばブレーキディスクを1回転させれば全周における平坦度を正確に測定できるほか、測定対象が粗雑面であることの影響を受けないために再現性よく平坦度を測定でき、製造ラインにおけるブレーキディスクの平坦度の合否判定に利用可能になっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態ついて図を参照しながら説明する。図1は本発明に基づくブレーキディスク検査装置1の一例の全体を表す部分破断正面図、図2は本例のブレーキディスク検査装置1の全体を表す部分破断右側面図、図3は本例のブレーキディスク検査装置1における接触式測定部13を中心とした主要部を表す部分破断正面図、図4は接触式測定部13における探査ロッド136及び変位センサ138の組付関係を表す部分拡大正面図、図5は本例のブレーキディスク検査装置1のディスク支持部11を表す平面図であり、図6は本例のブレーキディスク検査装置1における接触式測定部13を中心とした主要部を表す右側面図である。本例のブレーキディスク検査装置1は、例えば生産ラインに設置し、ハブ等を装着する前、すなわち製造直後のブレーキディスク18の上面181及び下面182の平坦度を測定し、仕様要求に対する合否判定に利用する。
【0016】
本例のブレーキディスク検査装置1は、図1及び図2に見られるように、装置ケース19の上段区画191に処理部14(図1及び図2中破線で代表)、表示画面15及び主操作部16を設け、装置ケース19の中段区画192にディスク支持部11、ディスク回転部12及び接触式測定部13からなる主要部を設け、そして装置ケース19の下段区画193に各部駆動手段の前後用エアーシリンダ111、昇降用エアーシリンダ121に加圧エアーを供給するエアー配管等(図示略)を内蔵した構成である。主要部のディスク支持部11へのブレーキディスク18の搬入及び搬出は、例えばロボットアーム等を用いて自動化することもできるが、前記搬入及び搬出を作業者が担う場合、主要部を一定の高さに位置する中段区画192に配することで、作業者に係る負担を軽減できる。
【0017】
処理部14は、装置ケース19の上段区画191に内蔵されるコンピュータや各種制御手段(図示略)から構成される。上段区画191の前面には、接触式測定部13による測定結果や処理部による測定値の処理結果又は判定結果等を表示する表示画面15と、ブレーキディスク検査装置1全体の始動及び停止、ディスク回転部12の進退やディスク回転部12における支持プレート122の昇降等を操作する主操作部16の各ボタンを配置している。主操作部16により、本例のブレーキディスク検査装置1は、作業者により測定手順を一つずつ進められるようになっている。通常は、装置ケース19の中段区画192に設けられる補助操作部194により、ディスク回転部12の進退やディスク回転部12における支持プレート122の昇降等を一連の手順として実行する測定開始ボタン195や、緊急停止ボタンのみを操作すればよい。
【0018】
主要部は、図3〜図6に見られるように、ブレーキディスク18を水平回転自在に支持するディスク支持部11と、前記ブレーキディスク18を水平回転させるディスク回転部12と、前記ブレーキディスク18の略半径方向に進退自在でこのブレーキディスク18の上面181及び下面182の両方に探査ロッド136,136を押し当てる接触式測定部13とから構成される。本例では、ディスク支持部11に対するブレーキディスク18の搬入及び搬出のため、この主要部を設ける装置ケース19の中段区画192は、前面に開閉扉等を設けず、開放している。これにより、ディスク支持部11に対するブレーキディスク18の搬入及び搬出が容易になる。
【0019】
ディスク支持部11は、ブレーキディスク18にハブを取り付ける取付凹部184を外嵌し、前記取付凹部184を摺接させるディスク支持台112からなり、このディスク支持台112の上面には略半径方向へ螺旋状に延びる溝113を刻設している(図5参照)。この溝113は、取付凹部184に対するディスク支持台112の上面の摩擦を低減するほか、ディスク支持台112の上面と取付凹部184との間に介在するゴミをかき取り、ゴミによりブレーキディスク18の回転が波打つことを防止する。このディスク支持部11は、中段区画192の前後方向に延在する前後用スライダ114に載せられ、中段区画192に固定した駆動手段である前後用エアーシリンダ111を接続している。これにより、本例のディスク支持部11は、中段区画192の手前側を待機位置としてディスク支持台112にブレーキディスク18を載置し、例えば補助操作部194の測定開始ボタン195を押すことにより、中段区画192の奥側である測定位置へと前記ディスク支持台112を移動させる。
【0020】
本例のディスク支持部11は、ベアリング等を用いた回転自在なテーブル等を用いず、ディスク支持台112にブレーキディスク18を載せ、摺接させている。ベアリング等を用いたテーブル等は、ブレーキディスクを取り付ける毎に周方向の位置関係が異なる可能性があり、テーブル等の回転によるノイズが測定値に与える影響を変化させて、測定の再現性を損なわせる。これに対し、回転しないディスク支持台112は、ブレーキディスク18を取り付ける周方向の位置関係が一様に定まるため、ディスク支持台112の上面の平坦度によるノイズが測定値に与える影響が一様になるため、仮にディスク支持台112の上面の平坦度が測定値に影響を与えても補正が容易であり、結果として正確なブレーキディスク18の平坦度を測定できる。こうした摺接状態の支持でも安定してブレーキディスク18が回転できるのは、ブレーキディスク18が重量物であり、回転によってディスク支持台112の上面からブレーキディスク18が離脱する虞がないからである。
【0021】
ディスク回転部12は、装置ケース19の中段区画192内に立設した左右一対のガイド支柱123,123に対し、支持プレート122を上下方向へ摺動自在に取り付け、前記支持プレート122に駆動モータ124を固着し、また支持プレート122に回転軸125を回転自在に取り付けて、前記回転軸125下端に係合アタッチメント126を装着して構成される。回転軸125は、駆動モータ124と駆動ベルト127で連結されたベルトドライブ方式で回転させられる。これにより、駆動モータ124を下方に突出させて支持プレート122に固着でき、主要部の全高を抑えることができる。主要部が高くなっても構わなければ、回転軸直上に駆動モータを設け、回転軸を駆動モータで直接駆動してもよい。
【0022】
ガイド支柱123,123は、測定位置に移動したディスク支持部11が支持するブレーキディスク18の中心点と、係合アタッチメント126の回転中心とが一致するように、立設している。支持プレート122は、駆動手段である昇降用エアーシリンダ121により支持され、この昇降用エアーシリンダ121の伸縮に従い、ガイド支柱123,123に沿って上下に昇降する。この支持プレート122は、中段区画192の上側を待機位置として、ブレーキディスク18を載置したディスク支持部11が測定位置に移動してきた後、係合アタッチメント126の係合爪1261,1261がブレーキディスク18に接触するまで下降して回転位置となり、駆動モータ124を始動させて回転軸125、そして係合アタッチメント126を回転させる。
【0023】
本例のディスク回転部12における係合アタッチメント126は、ブレーキディスク18に設けられるボルト孔183に対応した周方向の間隔で2つの係合爪1261,1261を設けてあり、各係合爪1261は下方に向けて付勢した状態で係合アタッチメント126に対して個別に弾性支持されている。この係合爪1261は、支持プレート122が回転位置にまで下降した状態で、ブレーキディスク18のボルト孔183と直ちに係合する必要はなく、初めは前記ボルト孔183と同一円周上にそれぞれ縮退した状態で圧接していればよい。この縮退状態にある係合爪1261が回転を始めると、回転方向の直近に位置するボルト孔183に達した各係合爪1261はそれぞれ前記ボルト孔183に向けて突出し、係合する。こうして、係合爪1261が係合したブレーキディスク18は、係合アタッチメント126の回転に従って回転する。
【0024】
接触式測定部13は、ブレーキディスク18の略半径方向に進退自在な支持テーブル131と、この支持テーブル131へ平行に立設したガイド軸132及びラック軸133と、前記ガイド軸132及びラック軸133に沿って昇降する上下一対の測定部本体134,134と、各測定部本体134からブレーキディスク18の略半径方向に突出する2枚の平行な板バネ135,135に弾性支持された探査ロッド136と、各測定部本体134から前記板バネ135に沿って突出する剛性アーム137に支持された変位センサ138とから構成され、各変位センサ138は各探査ロッド136の上端及び下端それぞれに当接させ、ブレーキディスク18の上面181又は下面182に倣って上下動する探査ロッド136の変位を検出する。
【0025】
支持テーブル131は、嵩上げ用の支持枠1311上に、ブレーキディスク18の略半径方向に延びる左右用スライダ1312へ摺動自在に載せられ、前記左右用スライダ1312に従ってブレーキディスク18に接近又は離反できる。本例は、探査ロッド136がブレーキディスク18の上面181及び下面182の検査位置(例えば各ブレーキディスク18の外周から内側5mmの円周上)に当接するように支持テーブル131を位置づける位置合わせ定規1313を支持テーブル131に設け、支持枠1311にマーク1314を設けている。これにより、ブレーキディスク18の大きさに合わせ、マーク1314に対して位置合わせ定規1313に合わせることにより、各探査ロッド136を前記検査位置でブレーキディスク18の上面181及び下面182に当接させることができる。
【0026】
ここで、支持テーブル131は、一度位置合わせをすると、ブレーキディスク18の種類が変更にならない限り、動かす必要はない。各探査ロッド136は、2枚の板バネ135により測定部本体134に弾性支持されているため、測定位置へ移動してくるディスク支持部11が支持したブレーキディスク18は、一対の各探査ロッド136の間に問題なく進入させることができるからである。これから、接触式測定部13における支持テーブル131や測定部本体134は位置合わせが必要なものの、一度位置合わせをするとその後位置合わせをする必要がなく、続けて複数のブレーキディスク18について測定できるため、特に生産ラインでの平坦度の合否判定に適したブレーキディスク検査装置1を提供できる。
【0027】
各測定部本体134は、上記支持テーブル131から立設したガイド軸132を挿通し、同じく支持テーブル131から立設したラック軸133にピニオン(図示略)を噛み合わせ、前記ピニオンを昇降用ノブ1341の操作により回して、ガイド軸132及びラック軸133に沿って個別に昇降する。各測定部本体134は、探査ロッド136がブレーキディスク18の上面181及び下面182に当接すれば昇降用ノブ1341による昇降を終え、押圧チャック1342をガイド軸132に押し付けて、位置固定する。ここで、各測定部本体134の昇降により、各探査ロッド136がブレーキディスク18の上面181及び下面182に当接する程度は同じにならない場合も考えられるが、変位センサ138は測定開始時の測定値を基準とした探査ロッド136の変位から平坦度を測定するため、上下一対の探査ロッド136の当接具合が異なっていても、特に問題は生じない。
【0028】
各探査ロッド136は、図4に見られるように、測定部本体134からブレーキディスク18の略半径方向に突出した2枚の板バネ135,135に弾性支持され、それぞれブレーキディスク18の上面181及び下面182に下端及び上端を当接させる。2枚の板バネ135,135は、両端にそれぞれ本体側スペーサ1351及びロッド側スペーサ1352を介装している。これにより、前記2枚の板バネ135,135は、本体側スペーサ1351に挿通して測定部本体134に螺着する固定ボルト1353により測定部本体134に固定する。また、前記2枚の板バネ135,135は、ロッド側スペーサ1352に挿通して、このロッド側スペーサ1352の上下に雌ネジ部を突出する探査ロッド136の前記雌ネジ部にそれぞれナット1354,1354を螺着することにより、探査ロッド136を取り付ける。こうして、各探査ロッド136は、測定部本体に対して2枚の平行な板バネ135,135に弾性支持される。
【0029】
ここで、板バネが1枚であると、ブレーキディスクの上面及び下面に当接する探査ロッドを、前記上面及び下面の凹凸に追従する弾性支持は可能であるものの、板バネの捩れが影響して、探査ロッドの変位方向を特定できず、正確な平坦度の測定ができなくなる。そこで、本発明は互いの弾性変形を抑制するように、2枚の板バネ135を用いている。これから、微小な探査ロッド136の変位を許容しながら、前記変位方向をブレーキディスク18の上面181及び下面182の直交方向に限定するため、2枚の板バネ135,135の弾性は同じである、すなわち同じ素材で同じ大きさ及び形状が好ましく、また弾性変形する測定部本体134から探査ロッド136までの板バネ135の長さは6cm〜10cm程度にし、2枚の板バネ135の間隔は0.5cm〜1.5cm程度にすることが望ましい。
【0030】
探査ロッド136は、ブレーキディスク18の上面181及び下面182の凹凸を、このブレーキディスク18の上面181又は下面182の直交方向の昇降方向の変位として変位センサ138に伝達できるものであればよく、素材又は大きさは問わない。しかし、厳密には、各探査ロッド136は回転するブレーキディスク18の上面181及び下面182に下端及び上端を摺接させるため、単なる金属棒から探査ロッドを構成した場合、ブレーキディスクの回転に摩擦抵抗を与えるほか、探査ロッド自体が摩耗して、ブレーキディスクの上面及び下面の凹凸を正確に変位センサへ伝達できなくなる。そこで、本例の探査ロッド136は、回転するブレーキディスク18に摺接させる下端及び上端に、低摩擦かつ低摩耗部材、例えばルビー(図示略)を嵌め込んでいる。
【0031】
変位センサ138は、測定部本体134から突出した剛性アーム137にそれぞれ固定し、測定信号を処理部14へと伝達する信号ケーブル1381を上方向及び下方向に延在させている。本発明の接触式測定部13は、相対的に位置固定された変位センサ138に、相対的に位置変位する探査ロッド136を介してブレーキディスク18の上面181及び下面182の凹凸を伝達することにより、変位センサ138による正確なブレーキディスク18の平坦度を測定する。
【0032】
本例の変位センサ138は、機械的な接触式センサを用いている。しかし、探査ロッド136を介した間接的に測定する変位センサ138は、ブレーキディスク18を直接測定する場合に比べて測定手法の制約を受けないため、前記機械的な接触式センサのほか、探査ロッドの変位を検知できる光学的又は電磁的な非接触式センサを用いることもできる。変位センサ138は、探査ロッド136の昇降を電気信号の強弱に変えて信号ケーブル1381から処理部14へ送り込み、AD変換した後、ディジタル信号として処理されて平坦度が算出され、必要により表示画面15に測定結果が表示される。この変位センサ138からの電気信号は、測定開始から測定終了までの間だけ処理部14に送信されれば十分であるが、電気信号の有無を制御するより、変位センサ138から常時電気信号を送信し続け、測定開始から測定終了までの電気信号のみを、処理部14がディジタル信号として取り込み、平坦度の算出に利用するようにする方が簡単である。
【0033】
各変位センサ138は、剛性アーム137に挟持されており、挟持用ボルト1371を弛めることにより、着脱自在になっている。これにより、剛性アーム137に取り付けた際、各探査ロッド136に対する各変位センサ138の当接具合が同じにならない場合も考えられる。しかし、上述したように、変位センサ138は測定開始時の測定値を基準とし、前記基準とした測定からの変位により平坦度を測定するため、上下一対の探査ロッド136に対する各変位センサ138の当接具合が異なっていても、特に問題は生じない。
【0034】
本例のブレーキディスク検査装置1は、例えば次の手順に従ってブレーキディスク18の平坦度を測定し、処理部14において仕様要求と比較され、合否が判定される。まず、待機位置にあるディスク支持部11のディスク支持台112にブレーキディスク18の取付凹部184を外嵌して載せる。次に、補助操作部194の測定開始ボタン195を押すと、先行してディスク支持部11が測定位置に進出する。ここで、接触式測定部13の支持テーブル131及び上下の各測定部本体134,134は位置合わせが終了していれば、前記ディスク支持部11の移動により、測定位置に達したブレーキディスク18の上面181及び下面182それぞれの検査位置に探査ロッド136が当接した状態になっている。よって、この段階において、既に変位センサ138はブレーキディスク18の上面181及び下面182の凹凸に応じた電気信号を処理部14に送信している。
【0035】
上記ディスク支持部11の進出に続いて、今度はディスク回転部12の係合アタッチメント126が下降し、この係合アタッチメント126が回転を始める。そして、ブレーキディスク18のボルト孔183に前記係合アタッチメント126の各係合爪1261,1261が係合すると、ブレーキディスク18が係合アタッチメント126に従って回転を始める。上述したように、変位センサ138は既に電気信号を送信しているため、ブレーキディスク18が前記係合アタッチメント126に従った回転を始めた時点から平坦度の測定を開始できる。しかし、回転初期はブレーキディスク18の回転が不安定であることや、係合アタッチメント126の回転角度による測定開始位置の特定を図るため、係合アタッチメント126が所定角度以上回転し、かつ係合アタッチメント126が所定角度に達した時点から測定を開始し、前記時点からブレーキディスク18の1回転の間における変位センサ138からの電気信号を測定値とする。
【0036】
各変位センサ138は、連続的に電気信号、すなわちアナログ信号を処理部14に送信するが、処理部14では所定のサンプリング間隔でサンプリングし、断続的なディジタル信号を取得する。実際には、係合アタッチメント126によるブレーキディスク18の回転速度から、ブレーキディスク18の周方向に等間隔に設定される測定点が測定されるように、前記サンプリング間隔を設定する。例えば、ブレーキディスク18の周方向に3600点の測定点を想定した場合、ブレーキディスク18の回転速度が1回転/10秒であれば、サンプリング間隔は10/3600秒となり、処理部14は前記サンプリング間隔で変位センサ138からの電気信号をディジタル信号に変換して、測定値として取得することになる。
【0037】
本発明はブレーキディスク検査装置1であるから、上記測定値から、ブレーキディスク18の平坦度が仕様要求を満足しているか合否判定する必要がある。この合否判定は、処理部14が取得した測定値の平均値やこの測定値の最大値及び最小値と、予め処理部14に記憶させた仕様要求である設計値とを比較することにより、容易に実行できる。測定結果や合否判定の結果は、上段区画191の前面に設けた表示画面15に表示させ、作業員に不良品の取り扱いを決定させる。
【0038】
具体的には、測定終了後、ブレーキディスク18の回転が停止すると、まずディスク回転部12が上昇して係合アタッチメント126を待避させ、続いてディスク支持部11が前進して手前側の待避位置に復帰することで、ブレーキディスク18が手前に取り出させるようになる。後は、測定結果や合否判定の結果に従って、ディスク支持部11から回収したブレーキディスク18を作業員が生産ラインに戻す、又は不良品として取り除く。このほか、例えばロボットアームによりブレーキディスクを搬入及び搬出させていれば、前記合否判定によって、不良品をロボットアームにより生産ラインと別な回収ラインへ取り除くことができる。
【0039】
図7は別例のブレーキディスク検査装置2の主要部を表す正面図であり、図8は別例のブレーキディスク検査装置2の主要部を表す右側面図である。本発明のディスク検査装置2は、制動パッドが摺接するブレーキディスク18の上面181及び下面182の平坦度を測定し、測定結果により処理部14が合否判定するものであり、ブレーキディスク18の支持及び回転に関わる構成は自由である。すなわち、ブレーキディスク18にハブ185を装着した状態でも、本発明を利用してブレーキディスク18の平坦度を測定し、合否判定することができる。これは、車両への組付状態を想定し、できるだけ使用状態に近い状態でのブレーキディスク18の平坦度を合否を判定する場合に相当する。
【0040】
別例のブレーキディスク検査装置2は、図7及び図8に明らかなように、接触式測定部13の構成は上記例示(図1〜図6)と同様であるが、測定対象がハブ185を装着したブレーキディスク18になっているため、前記ブレーキディスク18を支持するディスク支持部21や、ハブ185を利用してブレーキディスク18を回転させるディスク回転部12の構成が異なっている。実際には、装置構成が全く違うのではなく、ディスク支持部21のディスク支持台212の構成や、ディスク回転部22に係合円板2261を有する係合アタッチメント226を用いているだけであり、それぞれディスク支持台212や係合アタッチメント226をモジュール化して、交換により装置構成を適宜変更するだけでよい。これは、本発明のブレーキディスク検査装置の汎用性を表す。
【0041】
別例のブレーキディスク検査装置2におけるディスク支持部21は、ハブ185を装着したブレーキディスク18の前記ハブ185を摺接させ、ブレーキディスク18の取付凹部184を嵌合させるディスク支持台212から構成される。ハブ185を装着したため、前記取付凹部184が浅くなり、またハブ185に設けられた段差に対応した上面を形成するほか、ほとんど上記のディスク支持台112(図3参照)と構造的に変わりはない。このため、上述同様、ディスク支持部21全体は前後用スライダ214に載せられ、駆動手段である前後用エアーシリンダにより、待機位置及び測定位置の間で移動させることができる。また、図示を省略するが、この円柱状ブロックも上面にゴミをかき取る溝を設けている。
【0042】
ディスク回転部22は、昇降用エアーシリンダを駆動手段としてガイド支柱に沿って昇降する支持プレート222に、駆動モータによるベルトドライブ方式の回転軸225を有する構成は上記例示と同じであるが、前記回転軸225下端に係合円板2261からなる係合アタッチメント226を装着している点が異なる。係合円板2261は、ブレーキディスク18に装着されたハブ185から突出する固着ボルト186の間に対応した周方向の間隔で2つ設けてあり、各係合円板2261は下方に向けて付勢した状態で係合アタッチメント226に対して個別に弾性支持されている。これにより、支持プレート222の下降により固着ボルト186に当接して縮退状態にある係合円板2261は、回転方向の直近に位置する固着ボルト186を越えた時点で固着ボルト186,186間に突出し、回転方向前方に位置する固着ボルト186に係合する。こうして、係合円板2261が係合したブレーキディスク18は、係合アタッチメント226の回転に従って回転する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に基づくブレーキディスク検査装置の一例の全体を表す部分破断正面図である。
【図2】本例のブレーキディスク検査装置の全体を表す部分破断右側面図である。
【図3】本例のブレーキディスク検査装置における接触式測定部を中心とした主要部を表す部分破断正面図である。
【図4】接触式測定部における探査ロッド及び変位センサの組付関係を表す部分拡大正面図である。
【図5】本例のブレーキディスク検査装置のディスク支持部を表す平面図である。
【図6】本例のブレーキディスク検査装置における接触式測定部を中心とした主要部を表す右側面図である。
【図7】別例のブレーキディスク検査装置の主要部を表す正面図である。
【図8】別例のブレーキディスク検査装置の主要部を表す右側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ブレーキディスク検査装置
11 ディスク支持部
12 ディスク回転部
126 係合アタッチメント
1261 係合爪
13 接触式測定部
134 測定部本体
135 板バネ
136 探査ロッド
137 剛性アーム
138 変位センサ
14 処理部
15 表示画面
16 主操作部
18 ブレーキディスク
181 上面
182 下面
19 装置ケース
2 ブレーキディスク検査装置
21 ディスク支持部
212 ディスク支持台
22 ディスク回転部
226 係合アタッチメント
2261 係合円板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキディスクの略半径方向に進退自在で該ブレーキディスクの上面又は下面の一方又は両方に押し当てられる接触式測定部を備え、該接触式測定部の測定値から前記ブレーキディスクの平坦度が仕様要求を満足しているか否かを処理部が判断するブレーキディスク検査装置において、接触式測定部は、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に昇降自在に支持され、下端又は上端を前記上面又は下面に当接させる探査ロッドと、該探査ロッドを測定部本体に対してブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に弾性支持する弾性支持部と、測定部本体に支持され、下端をブレーキディスクの上面に当接させた探査ロッドの上端、又は上端をブレーキディスクの下面に当接させた探査ロッドの下端に当接させ、探査ロッドの昇降に比例した測定値を出力する変位センサとからなることを特徴とするブレーキディスク検査装置。
【請求項2】
弾性支持部は、測定部本体から突出した複数の板バネであり、各板バネはそれぞれの弾性変形を互いに抑制する位置関係で突出し、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に向けた探査ロッドを前記板バネに支持させた請求項1記載のブレーキディスク検査装置。
【請求項3】
弾性支持部は、測定部本体から突出した2枚の板バネであり、各板バネはそれぞれの弾性変形を互いに抑制する平行関係で突出し、ブレーキディスクの上面又は下面の直交方向に向けた探査ロッドを前記板バネに架設した請求項1記載のブレーキディスク検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−17292(P2007−17292A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199299(P2005−199299)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(594105637)井原精機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】