説明

ブレーキペダルの支持構造

【課題】車両の前方が衝突した場合であっても、簡素な構成でブレーキペダルが後退することを抑制できるようにする。
【解決手段】ブレーキペダル15とブレーキブースタ18とを接続する回動軸16と、ブレーキペダル15の近傍でダッシュパネル12に固定されて回動軸16の一端部側を回転可能に支持する第1支持部材14Cと、ブレーキブースタ18の近傍でダッシュパネル12に固定されて回動軸16の他端部側を回転可能に支持する第2支持部材14Bと、一側部23Aが第1支持部材14Cに接続されるとともに他側部23Bが第2支持部材14Bに接続され且つ前端部23Cがダッシュパネル12に接続された補強部材23とを備え、この補強部材23に、車両1の後方へ開放した後方切り欠き部23Dを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられて好適な、ブレーキペダルの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の前方が衝突した場合に、ブレーキペダルが後方へ変位(後退)することを抑制する機構や構造が知られており、このような技術の一例として、以下の特許文献1の技術が挙げられる。
この特許文献1においては、その図1において符号5で示すペダルサポート部材に、符号15,16で示すビードが形成されており、車両前方が衝突した場合には、このビードを変形させることによって符号8で示すブレーキペダルが後退することを防ぐようになっている。
【特許文献1】特開2004−157792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、図7および図8を用いて、ブレーキペダル103を支持する構造について説明する。この車両100のダッシュパネル101には、壁部102a,102bを有するサポートメンバブラケット102が固定され、また、これらの壁部102a,102bによりブレーキペダル103が軸支されている。さらにサポートメンバブラケット102後端部には、車両100の前方が衝突した場合にブレーキペダル103の後退を規制するストッパ部109が設けられている。
【0004】
また、サポートメンバブラケット102には干渉用ブラケット104が固着され、さらに、車両100の幅方向に延在するダッシュクロスメンバ105には、干渉用ブラケット104の後端部と近接したガイドプレート106が固定されている。また、このサポートメンバブラケット102には、剛性を低く形成した部分である座屈ポイント102cが形成されている。
【0005】
さらに、この車両100には、ブレーキブースタ107がブレーキペダル103の操作方向(図7中矢印A100参照)の延長線上に設けられており、このブレーキブースタ107とブレーキペダル103とはリンク部材108によって接続されている。
そして、図7中矢印A101で示すように、この車両100の前方が衝突した場合、ダッシュパネル101がブレーキブースタ107とともに車両後方へ変位することとなり、これにより、サポートメンバブラケット102が後方へ変位するとともに、ブレーキペダル103もアーム部材108に押されて車両後方側へ回動しようとする。
このとき、サポートメンバブラケット102に固着された干渉用ブラケット104も後方へ変位するが、
干渉用ブラケット104の後端部がガイドプレート106に当接すると同時に、ガイドプレート106に沿って、車両の後下方向へ変位するようになっている(図7中矢印A102参照)。
【0006】
さらに、このとき、干渉用ブラケット104およびサポートメンバブラケット102に対して、ガイドプレート106とダッシュパネル101との間で生じた圧縮力が作用するが、この圧縮力を利用してサポートメンバブラケット102の座屈ポイント102cで座屈を生じさせることができるようになっている。
そして、この座屈により、サポートメンバブラケット102の後端部側が車両100の前方側に変位するとともに、ブレーキペダル103がストッパ部109に当接し、ブレーキペダル103の車両後方側への回動が抑制される。
【0007】
このような構造により、従来は、車両100の前方で衝突が生じた場合に、ブレーキペダル103が後退することを防ぐようになっている。
しかしながら、車両の種類によっては、そのレイアウトスペース上、あるいは機能上、ブレーキブースタの配設位置が制限される場合があり、これらの図7および図8に示すように、ブレーキブースタ107をブレーキペダル103の操作方向の延長線上に配設できない場合がある。
【0008】
そして、このような場合であっても、できるだけ簡素な構成でブレーキペダルの後退を抑制することが望まれている。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、車両の前方が衝突した場合であっても、簡素な構成でブレーキペダルが後退することを抑制することができる、ブレーキペダルの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のブレーキペダル支持構造(請求項1)は、車両の車室前壁を構成するダッシュパネルと、前記車両のドライバによって操作されるブレーキペダルと、前記ブレーキペダルよりも前記車両の車幅中心部側に離間して配設されたブレーキブースタと、前記ブレーキペダルと前記ブレーキブースタとを接続する回動軸と、前記ブレーキペダル近傍で前記ダッシュパネルに固定され、前記回動軸の一端部側を回転可能に支持する第1支持部材と、前記ブレーキブースタ近傍で前記ダッシュパネルに固定され、前記回動軸の他端部側を回転可能に支持する第2支持部材と、一側部前記第1支持部材に接続されるとともに他側部が第2支持部材に接続され且つ前端部が前記ダッシュパネルに接続された補強部材とを備え、前記補強部材には、前記車両の後方へ開放した後方切り欠き部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の本発明のブレーキペダル支持構造は、請求項1記載の内容において前記ダッシュパネルよりも後方で車幅方向に延在するデッキクロスメンバと、前記デッキクロスメンバに固定されたガイド部材と、前記第1支持部材の後端部に設けられ、前記デッキクロスメンバと前記ブレーキペダルの回動軸との間に位置して、前記車両の衝突時に前記ガイド部材に当接する当接部材とを備え、前記ガイド部材は、前記車両の前後方向に延在して立設し且つ前記車両の後方側ほど前記車両の車幅外側へ位置するように形成された傾斜壁部を有することを特徴としている。
【0011】
また、請求項3記載の本発明のブレーキペダル支持構造は、請求項1または2記載の内容において、前記補強部材の前記前端部は、前記支持第1部材と前記支持第2部材との間で前記ダッシュパネルに沿って上方へ立設するとともに、上方へ開放して形成された上方切り欠き部を有していることを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明のブレーキペダル支持構造は、請求項1〜3いずれか1項記載の内容において、前記回動軸には、前記ブレーキブースタと接続されたレバー部材が設けられ、前記ブレーキペダルは、前記第1支持部材に近接し且つ前記第1支持部材よりも前記他端部側における前記回動軸に固設され、前記レバー部材は、前記第2支持部材に近接し且つ前記第2支持部材よりも前記一端部側における前記回動軸に固設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブレーキペダルの支持構造によれば、補強部材によりブレーキペダルの操作に耐えうる剛性が確保されつつも、車両の前方が衝突した場合においては、補強部材に形成された後方切り欠き部により補強部材の両側に接続された第1支持部材と第2支持部材との間の距離が広がることが許容されるので、第1支持部材および第2支持部材で支持されていたブレーキペダルの回動軸を積極的に脱落させることが可能となり、簡素な構成でブレーキペダルの後退を抑制することができる。(請求項1)
また、車両の前方が衝突した場合に、車両前方からダッシュパネルに入力された力を利用して、ブレーキペダルを捩り、ブレーキペダルが後退することを防ぐことができる。(請求項2)
また、補強部材の剛性を前端部により向上させながらも、この前端部に形成された上方切り欠き部により局所的に補強部材の剛性を低減させることで、車両の前方が衝突した場合においては、補強部材が変形することが許容され、第1支持部材および第2支持部材で支持されていたブレーキペダルの回動軸を脱落させることができる。(請求項3)
また、ブレーキペダルおよび第1支持部材と、レバー部材および第2支持部材とによって回動軸がその軸線方向に変位することを規制することで、通常時においては、確実なブレーキペダル操作を可能としながら、車両前方が衝突した場合においては、回動軸が第1支持部材や第2支持部材から外れることが阻害されないようにすることができる。(請求項4)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造について説明すると、図1はその全体構成を示す模式的な側面図、図2はその全体構成を示す模式的な正面図、図3はその全体構成を示す模式的な斜視図、図4はその要部構成を示す模式的な側面図、図5は図4の模式的なX−X断面図、図6はその当接部材を示す模式的な正面図であって図4中矢印VIで示す方向から見た場合を示す。
【0014】
図1,図2および図3に示すように、車両1には、車体の一部であって車室11の前面を形成するダッシュパネル12が設けられるとともに、車両1の幅方向に延在し車体を形成するパイプ材であるデッキクロスメンバ13がダッシュパネル12よりも後方において設けられている。
また、このダッシュパネル12にはサポートメンバブラケット(回動支持部材)14が固設され、さらに、このサポートメンバブラケット14により後述するパイプ(ブレーキペダルの回動軸)16が軸支されている。そして、このパイプ16にはブレーキペダル15が固設され、このブレーキペダル15は、ドライバによる踏み込み操作により、このパイプ16を回動軸として所定の範囲で回動することができるようになっている。
【0015】
また、このサポートメンバブラケット14は、ブースタ側ブラケット(第2支持部材)14Bとペダル側ブラケット(第1支持部材)14Cとから構成され、それぞれ、その一端部14aがダッシュパネル12に対して固設されている。
また、これらのブースタ側ブラケット14Bおよびペダル側ブラケット14Cには、それぞれ、円形の穴部14dが形成されている。そして、この穴部14dには、ブッシュ14fが内嵌めされ、さらに、このブッシュ14fに対してパイプ16が挿入されることで、パイプ16の左端部(他端部)がブースタ側ブラケット14Bにより回動可能に支持され、他方、右端部(一端部)がペダル側ブラケット14Cにより回動可能に支持されている。
【0016】
また、このペダル側ブラケット14Cには、ブースタ側ブラケット14Bの反対側(図4中紙面手前側)へ向けてくぼんだ溝状の座屈部(低剛性部)14eが形成され、ペダル側ブラケット14Cの剛性を部分的に低下させている。なお、この座屈部14eは、パイプ16の径方向の剛性よりも低くなるように形成されるとともに、且つ、後述する干渉用ブラケット(当接部材)19の剛性よりも低くなるように形成されている。
【0017】
また、この座屈部14eは、ペダル側ブラケット14Cの上下方向中央近傍から下方に向けて扇型に広がるように形成され、車両1の前方が衝突した場合には、この溝部14eが変形し座屈を生じさせることができるようになっている。
また、図2に示すように、ブースタ側ブラケット14Bとペダル側ブラケット14Cとの間にはステー部材(補強部材)23が介装され、ブースタ側ブラケット14Bおよびペダル側ブラケット14Cの剛性を高めつつ、車両1の前方で衝突が生じた場合には、適切に変形することで、ペダル側ブラケット14Cおよびブースタ側ブラケット14Bの変形を許容し、ブレーキペダル15が後退することを防ぐことができるようになっている。
【0018】
このステー部材23についてもう少し詳しく説明すると、ステー部材23は、ペダル側ブラケット14Cに沿って上方に立設したペダル側フランジ(一側部)23Aと、ブースタ側ブラケット14Bに沿って上方に立設したブースタ側フランジ(他側部)23Bと、ダッシュパネル12に沿って上方に立設した前側フランジ(前端部)23Cとを有している。また、ペダル側フランジ23Aはペダル側ブラケット14Cに接続され、ブースタ側フランジ23Bはブースタ側ブラケット14Bに接続され、前端部23Cはダッシュパネル12に接続されている。
【0019】
さらに、このステー部材23には、水平方向に配設された平板状の水平フランジ部23Fが設けられ、この水平フランジ23Fは、ペダル側フランジ23Aの下端,ブースタ側フランジ23Bの下端および前端部23Cの下端を接続している。
そして、この水平フランジ部23Fには、車両1の後方へ開放した後方切り欠き部23Dが形成されている。さらに、前端部23Cには、上方へ開放した上方切り欠き部23Eが形成されている。
【0020】
換言すれば、水平フランジ部23Fは略U字状に形成されており、このU字の開口が後方切り欠き部23Dに相当するようになっている。同様に、前側フランジ部23Cも略U字状に形成されており、このU字の開口が上方切り欠き部23Eに相当するようになっている。
また、このパイプ16は、図2に示すように、ペダル側ブラケット14Cの穴部14dから右側へ僅かに突出するように配設されている。なお、パイプ16のうち、ペダル側ブラケット14Cよりも右側へ突出した部分を突出部16aという。
【0021】
さらに、このパイプ16には、ブースタ側ブラケット14Bに近接し且つこのブースタ側ブラケット14Bよりもペダル側ブラケット14C側で、ブースタ連結アーム(レバー部材)17が固設されている。そして、このブースタ連結アーム17はブレーキブースタ18に連結されている。なお、このブレーキブースタ18は、ダッシュパネル12よりも車両1の前方において、ブレーキペダル15に対して左方(ブースタ側ブラケット14B側)へオフセットして設けられている。
【0022】
また、このパイプ16には、ペダル側ブラケット14Cに近接し且つこのペダル側ブラケット14Cよりもブースタ側ブラケット14B側で、上述のブレーキペダル15が固設されている。
したがって、図2中矢印A16Lで示すようにパイプ16が車幅中心側(図2中左側)へ変位しようとしても、ブースタ側ブラケット14Bとブースタ連結アーム17とが干渉することで、かかるパイプ16の変位を規制することができるようになっている。また、図2中矢印A16Rで示すようにパイプ16が車幅外方側(図2中右側)へ変位しようとしても、ブレーキペダル15とペダル側ブラケット14Cとが干渉することで、かかるパイプ16の変位を規制することができるようになっている。
【0023】
そして、ブースタ側ブラケット14Bよりも車幅中心側のパイプ16の表面には何の部品も設けられておらず、これにより、車両1の前方が衝突し、ペダル側ブラケット14Cとブースタ側ブラケット14Bとの距離(図2中符号L1参照)が拡がった場合に、パイプ16はブースタ側ブラケット14Bから抜けて外れることが阻害されないようになっている。
【0024】
また、図5に示すように、ペダル側ブラケット14Cの後端部14C1には干渉用ブラケット19の後端部(一端部)19aが固設され、また、パイプ16の突出部16a近傍には干渉用ブラケット19の前端部(他端部)19bが配設されている。また、図4に示すように、干渉用ブラケット19の前端部19bは、パイプ16の周方向の形状に沿った形状に形成されている。
【0025】
そして、この干渉用ブラケット19には、図4中紙面手前方向に隆起して形成された補強用のリブ19dが設けられている。さらに、この干渉用ブラケット19の下端部19cは、衝突時にブレーキペダル15に当設して回動を規制するストッパ部を兼用しており、この下端部19cには、ブレーキランプスイッチ22が設けられている。
また、ダッシュクロスメンバ13にはガイドプレート(ガイド部材)21が固設されており、このガイドプレート21は、ダッシュクロスメンバ13と干渉用ブラケット19との間に介装されている。また、このガイドプレート21は、ダッシュクロスメンバ13に対して固設された固定部材21Aと、この固定部材21Aと一体に形成され干渉用ブラケット19の後端部19aと近接する位置から車両1の後下方向へ斜めに延在する摺動部材21Bとから構成されている。
【0026】
また、図5に示すように、摺動部材21Bは、互いに対向して立設する中心側壁部21B1および車幅外側壁部21B3と、これらの壁部21B1,21B3を接続する底部21B2とによりその断面が略U字形状で一体に形成されている。そして、この摺動部材21Bは、壁部21B1,21B3との間の開口が干渉用ブラケット19に向くように配設されている。また、中心側壁部21B1は摺動部材21Bのうち車両1の車幅中心側で車両1の前後方向に延在して立設しており、また、車幅外側壁部21B3は摺動部材21のうち車両1の車幅外側で車両1の前後方向に延在して立設している。
【0027】
また、図6に示すように、中心側壁部21B1には、車両1の後方側ほど車両1の車幅外側(図6中右側)へ近づくように(即ち、車幅中心から離れるように)斜めに形成された傾斜部(傾斜壁部)21B1Aと、車両1の前後方向に延在して形成された直線部21B1Bとから形成されている。したがって、車両1の前方で衝突が生じた場合、干渉用ブラケット19は、ガイドプレート21の摺動部材21Bに当接し(図5中矢印A19BACK参照)、その後、この摺動部材21Bに対して摺動しながら下方へ強制的に押し下げられ、(図1中矢印A19DOWN参照)、さらに、中心側壁部21B1の傾斜部21B1Aに当接して車幅外側へ捩じられる(図2中矢印A15参照)ようになっている。
【0028】
本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
車両1の前方が衝突し、ダッシュパネル12が後方へ変位すると、サポートメンバブラケット14も後方へ変位し、さらに、図5中矢印A19BACKで示すように、干渉用ブラケット19も後方へ変位する。
【0029】
そして、干渉用ブラケット19の後端部19aがガイドプレート21の摺動部材21Bの底部21B2に当接し、車両1の前方で生じた衝撃はダッシュクロスメンバ13に伝達される。
これにより、ダッシュクロスメンバ13とダッシュパネル12との間に介装されたガイドプレート21,干渉用ブラケット19,ペダル側ブラケット14Cには圧縮力が作用する。
【0030】
そして、このとき、干渉用ブラケット19の前端部19bが、パイプ16の突出部16aに当接し、力をペダル側ブラケット14C前方側に伝達させる。つまり、ダッシュクロスメンバ13とダッシュパネル12との間で作用する圧縮力を、ペダル側ブラケット14C後端部側だけでなく、干渉用ブラケット19とパイプ16を介して応力を伝達できるようにしたので、ペダル側ブラケット14Cの座屈部14eが座屈する前にペダル側ブラケット14Cの後端部側が変形することを防ぐことができるのである。
【0031】
そして、この圧縮力が作用したペダル側ブラケット14Cは、その座屈部14eが他の部品よりも優先的に座屈し変形する。
また、このとき、ガイドプレート21の摺動部材21Bの底部21B2に当接した干渉用ブラケット19は、図1中矢印A19DOWNで示すように、この摺動部材21Bの底部21B2に沿って、車両1斜め下後方へ押し下げ、座屈部14eの座屈を促進しながら、ブレーキペダル15の下端部15aを積極的に前進させる。そして、座屈部14eの座屈変形により、ペダル側ブラケット14Cの後端部側は前方に変位されるので、ストッパを兼用する下端部19Cがブレーキペダル15に当設して、ブレーキペダル15の後退を抑制する。
【0032】
さらに、干渉用ブラケット19は、図6中矢印A19SIDEで示すように中心側壁部21B1の傾斜部21B1Aに当接して車幅外側へ強制的に変位させられる。これにより、図2中矢印A15で示すように、ペダル側ブラケット14Cの近傍でパイプ16に固定されたブレーキペダル15が捩じられる。
また、このとき、車両1の前方で生じた衝突により、パイプ16のブレーキブースタ18側の端部(左端部)は、ブースタ側ブラケット14Bの穴部14dから抜け出ているため、上述したブレーキペダル15の捩じり(図2中矢印A15参照)が阻害されることはない。これは、車両1の前方が衝突した際に、ステー部材23の水平フランジ部23Fに形成された後方切り欠き部23Dにより、ペダル側ブラケット14Cとブースタ側ブラケット14Bとの距離L1が拡がることが許容されるようになっていることによるものであり、さらに、ブースタ側ブラケット14Bよりも車幅中心側のパイプ16の表面には何の部品も設けられていないことによるものでもある。
【0033】
また、ステー部材23の前端部23Cには、上方へ開放した上方切り欠き部23Eが形成されているので、図2中矢印A23Aに示すように、ペダル側フランジ23Aの後端部が下方へ変位し、また、図2中矢印A23Bに示すように、ブースタ側フランジ23Bの後端部が上方へ変位することが許容されるようになっている。これにより、車両1の前方で生じた衝突により、図1中矢印A19DOWNで示すように、干渉用ブラケット19がガイドプレート21により車両1の斜め下後方へ押し下げられることが阻害されることを防ぎ、ブレーキペダル15の下端部15aを積極的に前進させる。
【0034】
このように、本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造によれば、ステー部材23により、ペダル側ブラケット14C,ダッシュパネル12,ブースタ側ブラケット14Bが結合されているので、ブレーキペダル15の操作に対して必要な剛性を確保することができる。そして、このステー部材23には、車両1の後方へ開放した後方切り欠き部23Dが形成されているので、車両1の前方が衝突した場合に、ブレーキペダル15の回動軸であるパイプ16をペダル側ブラケット14Cやブースタ側ブラケット14Bから積極的に脱落させることができる。これにより、ブレーキペダル15がブレーキブースタ18により後方へ押し出されることを防ぐことが可能となり、車両前方での衝突発生時におけるブレーキペダル15の後退を抑制することができる。
【0035】
また、ダッシュクロスメンバ13に固設されたガイドプレート21に傾斜部21B1Aが形成されているので、車両1の前方が衝突した場合に、車両前方からダッシュパネル12に入力された力を、車幅外側への捩りモーメントとしてペダル側ブラケット14Cに伝達することが可能となる。これにより、ブレーキペダル15の下端部15aが車幅外側に向くようにブレーキペダル15を捩り、ブレーキペダル15が後退することを防止することができる。
【0036】
また、ステー部材23の前側フランジ23Cに形成された上方切り欠き部23Eにより、車両1の前方が衝突した場合においては、局所的にステー部材23の剛性を低減させることで、ステー部材23が変形することを許容するので、簡素な構造で、ペダル側ブラケット14Cおよびブースタ側ブラケット14Bにより支持されていたブレーキペダル15の回動軸であるパイプ16を脱落させることが可能となる。
【0037】
また、ブレーキペダル15およびペダル側ブラケット14Cと、ブースタ側ブラケット14Bおよびブースタ連結アーム17とによってパイプ16がその軸線方向に変位することが規制されるので、通常時においては確実なブレーキペダル15操作を可能としながら、車両1の前方が衝突した場合においては、ペダル側ブラケット14Cやブースタ側ブラケット14Bからパイプ16が外れることを可能としている。
【0038】
また、ペダル側ブラケット14Cとブースタ側ブラケット14Bとの間の距離L1が離れている場合でも、ダッシュパネル12とダッシュクロスメンバ13との間で生じる圧縮力を、コンパクトな干渉用ブラケット19およびパイプ16を介してペダル側ブラケット14Cの座屈部14eまで確実に伝達でき、座屈部14eを座屈変形させて、ブレーキペダル15の後退を抑制することができる。
【0039】
また、この座屈部14eは、下方ほど幅広に形成されているので、車両1の前方で衝突が生じた場合には、溝部14eの下方の変形量を大きくすることが可能となり、ブレーキペダル15、特にその下端部15aを積極的に前進させることで、より効果的に、ブレーキペダル15の後退を抑制することができる。
また、ブレーキペダル15の回動軸であるパイプ16において、ペダル側ブラケット14Cとブースタ側ブラケット14Bとの間で干渉用ブラケット19の前端部19bを近接させるスペースがないような場合であっても、ペダル側ブラケット14Cから突出した突出部16aに対して干渉用ブラケット19の前端部19bを近接して配設することで、車両1の前方衝突時にダッシュパネル12とダッシュクロスメンバ13との間で生じる圧縮力を、干渉用ブラケット19およびブレーキペダル15の回動軸であるパイプ16の突出部16aを介して、ペダル側ブラケット14Cの座屈部14eに確実に伝達させることが可能となる。
【0040】
また、ブレーキブースタ18がブレーキペダル15に対して車幅方向にオフセットして設けられているので、車両1の前方が衝突することにより後退量の大きいブレーキブースタ18がブレーキペダル15を直接押す事態を回避することができ、さらなる安全性の向上に寄与することもできる。
また、ブレーキペダル15の回動軸であるパイプ16にブースタ接続部材17を一体に固設したので、ブレーキブースタ18がオフセットされた位置にあっても、ブレーキペダル15の操作力を確実にブレーキブースタ18に伝達することができる。
【0041】
また、車両1の前方が衝突し、干渉用ブラケット19が後方へ変位した際に、この干渉用ブラケット19の後端部19aを、摺動部材21Bの底部21B2に沿って車両1の後方斜め下方向へ強制的に変位させることが可能となり、ブレーキペダル15の後退をさらに確実に抑制をすることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0042】
上述の実施形態においては、ペダル側ブラケット14Cの後端部14C1には干渉用ブラケット19の後端部19aが固設され、また、パイプ16の突出部16a近傍には干渉用ブラケット19の前端部19bが配設されている場合を例にとって説明したが、このような構成に限定するものではない。
例えば、干渉用ブラケット19の前端部19bをパイプ16の突出部16aではなく、ペダル側ブラケット14Cとブースタ側ブラケット14Bとの間でパイプ16に近接するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の全体を示す模式的な側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の全体を示す模式的な正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の全体を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の要部を示す模式的な側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の要部を示す模式的な断面図であって、図4のX−X断面を示す。
【図6】本発明の一実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の当接部材を示す模式的な正面図であって、図4中矢印VIで示す方向から見た場合を示す。
【図7】従来のブレーキペダルの支持構造の要部を示す模式的な正面図である。
【図8】従来のブレーキペダルの支持構造の要部を示す模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
12 ダッシュパネル
13 デッキクロスメンバ
14B ブースタ側ブラケット(第2支持部材)
14C ペダル側ブラケット(第1支持部材)
14e 座屈部(低剛性部)
15 ブレーキペダル
16 パイプ(回動軸)
16a 突出部
17 ブレーキブースタレバー(レバー部材)
18 ブレーキブースタ(ブレーキ倍力装置)
19 干渉用ブラケット(当接部材)
19b 干渉用ブラケットの前端部(当接部材の他端部)
19c 干渉用ブラケットの下端部(ストッパ部材)
21 ガイドプレート(ガイド部材)
21B1A 傾斜部(傾斜壁部)
23 ステー部材(補強部材)
23A ペダル側フランジ(一側部)
23B ブースタ側フランジ(他側部)
23C 前側フランジ(前端部)
23D 後方切り欠き部(後方切り欠き部)
23E 上方切り欠き部(上方切り欠き部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室前壁を構成するダッシュパネルと、
前記車両のドライバによって操作されるブレーキペダルと、
前記ブレーキペダルよりも前記車両の車幅中心部側に離間して配設されたブレーキブースタと、
前記ブレーキペダルと前記ブレーキブースタとを接続する回動軸と、
前記ブレーキペダル近傍で前記ダッシュパネルに固定され、前記回動軸の一端部側を回転可能に支持する第1支持部材と、
前記ブレーキブースタ近傍で前記ダッシュパネルに固定され、前記回動軸の他端部側を回転可能に支持する第2支持部材と、
一側部が前記第1支持部材に接続されるとともに他側部が第2支持部材に接続され且つ前端部が前記ダッシュパネルに接続された補強部材とを備え、
前記補強部材には、前記車両の後方へ開放した後方切り欠き部が形成されている
ことを特徴とするブレーキペダル支持構造。
【請求項2】
前記ダッシュパネルよりも後方で車幅方向に延在するデッキクロスメンバと、
前記デッキクロスメンバに固定されたガイド部材と、
前記第1支持部材の後端部に設けられ、前記デッキクロスメンバと前記ブレーキペダルの回動軸との間に位置して、前記車両の衝突時に前記ガイド部材に当接する当接部材とを備え、
前記ガイド部材は、前記車両の前後方向に延在して立設し且つ前記車両の後方側ほど前記車両の車幅外側へ位置するように形成された傾斜壁部を有する
ことを特徴とする請求項1記載のブレーキペダル支持構造。
【請求項3】
前記補強部材の前記前端部は、前記支持第1部材と前記支持第2部材との間で前記ダッシュパネルに沿って上方へ立設するとともに、上方へ開放して形成された上方切り欠き部を有している
ことを特徴とする、請求項1または2記載のブレーキペダル支持構造。
【請求項4】
前記回動軸には、前記ブレーキブースタと接続されたレバー部材が設けられ、
前記ブレーキペダルは、前記第1支持部材に近接し且つ前記第1支持部材よりも前記他端部側における前記回動軸に固設され、
前記レバー部材は、前記第2支持部材に近接し且つ前記第2支持部材よりも前記一端部側における前記回動軸に固設されている
ことを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項記載のブレーキペダル支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−185990(P2007−185990A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3549(P2006−3549)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】