説明

ブレーキ制御システム

【課題】 鋳鉄製のブレーキシューを用いたブレーキ装置であっても、非常ブレーキ動作時に減速度が大きくなってしまうことを防止することができ、安全性を高めることのできるブレーキ制御システムを提供する。
【解決手段】 列車1に搭載され車輪3の制動を行うためのブレーキ装置4と、ブレーキ装置4を駆動制御するためのブレーキ制御装置5と、非常ブレーキ時に動作されブレーキ制御装置5に非常ブレーキ動作信号を出力する非常ブレーキ装置9とを備えてなり、ブレーキ制御装置5により、非常ブレーキ装置9から非常ブレーキ動作信号が入力された場合に、ブレーキ装置4による列車1の減速度が大きくなる前に、エア圧力を調整させてブレーキ力を弱くするように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレーキ制御システムに係り、特に、鋳鉄製のブレーキシューを用いたブレーキ装置であっても、ブレーキ動作後、停車まで手動緩解できないブレーキ動作時に停車直前に減速度が大きくなってしまうことを防止することを可能としたブレーキ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、列車または車両においては、運転士によるブレーキ操作に応じてブレーキ装置のブレーキ動作が行われる常用ブレーキ動作が行われている。このブレーキ装置は、車輪やブレーキディスクなどにブレーキシューを押圧させてその摩擦力により減速させるようになっている。
【0003】
そして、このようなブレーキ装置において、従来から、指令部により、速度信号により与えられる走行速度が現示信号により与えられる制限速度を超えている時に、実減速度と目標の減速度との偏差に応じてブレーキ力の一つを決定し、決定されたブレーキ力に応じてブレーキ指令信号を出力することにより、乗り心地の向上を図るようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−205317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、例えば、ATC装置などによる通常のブレーキを動作させた場合における制御であり、ATC装置などの列車制御システムを設置していない路線では、適用することができないという問題を有している。
【0006】
ここで、一般に、ブレーキシューの材質には、主として鋳鉄製とレジン製とがある。それぞれの材質のブレーキシューには、それぞれ利点と欠点があり、鋳鉄製のブレーキシューは、熱耐量が大きく、車輪の粘着を促進させる特性があるため、急勾配線区、寒冷地などを走行する列車に対しては、特に有効となっている。しかしながら、鋳鉄製ブレーキシューにおいては、速度によって摩擦係数が変化し、停車直前に減速度が上昇するという特徴がある。そのため、このような鋳鉄製ブレーキシューを用いて、常用ブレーキ動作を行う場合は、停車直前に運転士の操作によりブレーキ力を弱めることが可能であるが、例えば、非常ブレーキ動作などブレーキ動作後、停車まで手動緩解できないブレーキ動作を行う場合は、列車が停止するまで、ブレーキ力を弱めることができないため、停車直前に大きな減速度が働き、車内にいる乗客の転倒や荷物の落下などを招き、極めて危険であるという問題を有している。そのため、鋳鉄製のブレーキシューを用いた列車において、手動緩解不可ブレーキ動作時に減速度を一定若しくは低減させて、安全に列車を停止させることのできる技術が要望されていた。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、鋳鉄製のブレーキシューを用いたブレーキ装置であっても、手動緩解不可ブレーキ動作時に減速度が大きくなってしまうことを防止することができ、安全性を高めることのできるブレーキ制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るブレーキ制御システムは、列車に搭載され、車輪の制動を行うためのブレーキ装置と、
前記ブレーキ装置を駆動制御するためのブレーキ制御装置と、を備え、
前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記ブレーキ装置による前記列車の減速度が大きくなる前に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記列車に設けられた速度検出器からの出力信号に基づいて列車の現在の速度を判定してブレーキ制御装置に出力する速度演算部をさらに備え、
前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記速度演算部から送られる速度情報に基づいて、この速度情報により前記列車の速度が減速度が大きくなる直前まで低減された時に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記列車に設けられた速度検出器からの出力信号に基づいて列車の現在の速度を判定してブレーキ制御装置に出力する速度演算部をさらに備え、
前記速度演算部は、前記速度検出器から送られる速度情報に基づいて、前記列車が停止するまでの時間を予測し、前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記速度演算部による停車予測時間に基づいて、列車の減速度が大きくなると予測される直前の時間となった場合に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記ブレーキ装置は、エア圧力で動作されるものであり、
前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記ブレーキ装置による前記列車の減速度が大きくなる前に、前記エア圧力を調整させてブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項において、前記手動緩解不可ブレーキ動作は、非常ブレーキ動作であり、非常ブレーキ動作が行われた場合に、前記ブレーキ装置による前記列車の減速度が大きくなる前に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項において、前記ブレーキ装置は、前記列車の車輪に鋳鉄製のブレーキシューを押圧させて制動するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ブレーキ制御装置により、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、ブレーキ装置による列車の減速度が大きくなる前に、ブレーキ力を弱くするように制御するようにしているので、減速度を一定に保持するか、または減速度を低減させることができ、その結果、車内の乗客や荷物に大きな負荷が生じなくなり、乗客の転倒や荷物の落下などを確実に防止することができ、極めて安全に非常停止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、ブレーキ制御装置により、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、速度演算部から送られる速度情報に基づいて、この速度情報により列車の速度が減速度が大きくなる直前まで低減された時に、ブレーキ力を弱くするように制御するようにしているので、列車の速度に応じて、減速度を一定に保持するか、または減速度を低減させることができ、その結果、車内の乗客や荷物に大きな負荷が生じなくなり、乗客の転倒や荷物の落下などを確実に防止することができ、極めて安全に非常停止することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、速度演算部により、速度検出器から送られる速度情報に基づいて、列車が停止するまでの時間を予測し、ブレーキ制御装置により、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、速度演算部による停車予測時間に基づいて、列車の減速度が大きくなると予測される直前の時間となった場合に、ブレーキ力を弱くするように制御するようにしているので、列車の停車予測時間に応じて、減速度を一定に保持するか、または減速度を低減させることができ、その結果、車内の乗客や荷物に大きな負荷が生じなくなり、乗客の転倒や荷物の落下などを確実に防止することができ、極めて安全に非常停止することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、ブレーキ装置はエア圧力で動作されるものであり、ブレーキ制御装置により、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、ブレーキ装置による列車の減速度が大きくなる前に、エア圧力を調整させてブレーキ力を弱くするように制御するようにしているので、エア圧力を調整することにより、減速度を一定に保持するか、または減速度を低減させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、手動緩解不可ブレーキ動作は、非常ブレーキ動作であり、非常ブレーキ動作が行われた場合に、ブレーキ装置による列車の減速度が大きくなる前に、ブレーキ力を弱くするように制御するようにしているので、非常ブレーキ動作時に、減速度を一定に保持するか、または減速度を低減させることができ、その結果、車内の乗客や荷物に大きな負荷が生じなくなり、乗客の転倒や荷物の落下などを確実に防止することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、ブレーキ装置を列車の車輪に鋳鉄製のブレーキシューを押圧させて制動するものとしているので、鋳鉄製のブレーキシューは、熱耐量が大きく、車輪の粘着を促進させる特性を有する鋳鉄製のブレーキシューを用いた場合でも、確実に減速度を一定に保持するか、または減速度を低減させることができ、その結果、乗客の転倒や荷物の落下などを確実に防止することができ、極めて安全に非常停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るブレーキ制御システムを適用した列車の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】従来のブレーキ制御システムによるブレーキ力に対する減速度の関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係るブレーキ制御システムによるブレーキ力に対する減速度の関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係るブレーキ制御システムの第1実施形態における動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るブレーキ制御システムの第2実施形態における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るブレーキ制御システムを適用した列車の第1実施形態を示す概略構成図であり、列車1には、エアの圧力でブレーキシュー2を車輪3の外周面に押圧動作させて車輪3の制動を行うためのブレーキ装置4が設けられている。ブレーキ装置4には、ブレーキ装置4を駆動制御するためのブレーキ制御装置5が接続されており、ブレーキ制御装置5には、所定圧力のエアを供給するためのエア供給装置6が接続されている。そして、ブレーキ装置4へのエアの供給圧力を調整することにより、ブレーキシュー2による車輪3の押圧力を可変させてブレーキ力を調整することができるように構成されている。なお、本実施形態における列車1には、車両も含むものとする。
【0023】
また、ブレーキ制御装置5には、エア供給装置6から供給されるエアを外部に逃がすためのエア排出配管7が接続されており、エア排出配管7の中途部には、ブレーキ制御装置5により開閉制御される減圧弁8が設けられている。さらに、ブレーキ制御装置5には、手動緩解不可ブレーキ動作を行うための非常ブレーキ装置9が接続されており、緊急時において、非常ブレーキ装置9が動作された場合に、非常ブレーキ動作信号をブレーキ装置4に送るように構成されている。なお、本実施形態においては、手動緩解不可ブレーキ動作として非常ブレーキ動作を行う場合について説明するが、例えば、常用ブレーキにおいて、ブレーキ動作が行われた後、列車1が停車するまで、手動緩解することができないブレーキ動作であれば、いずれのブレーキ動作についても適用することが可能である。
【0024】
また、列車1には、速度検出器10が設けられており、速度検出器10には、速度検出器10からの出力信号に基づいて列車1の現在の速度を判定してブレーキ制御装置5に出力する速度演算部11が接続されている。
【0025】
そして、ブレーキ制御装置5は、通常の運転時において、列車1の運転士によりブレーキ装置4の駆動操作が行われた場合に、エア供給装置6からのエアをブレーキ装置4に送り、ブレーキ装置4を動作させる常用ブレーキ動作を行うように構成されている。また、列車1の運転士によりブレーキ装置4の解除操作が行われた場合には、ブレーキ制御装置5は、減圧弁8を動作させてブレーキ装置4に供給されているエアをエア排出配管7を介して排出してブレーキシュー2による押圧動作を解除させるように構成されている。
【0026】
また、本実施形態においては、緊急時などに非常ブレーキ装置9が動作された場合には、非常ブレーキ装置9から非常ブレーキ動作信号がブレーキ制御装置5に送られ、これにより、ブレーキ制御装置5は、エア供給装置6からのエアをブレーキ装置4に送り、ブレーキ装置4を動作させるものである。このような非常ブレーキ時には、ブレーキ制御装置5は、列車1が停止するまで、ブレーキ装置4を動作させるものであるが、本実施形態においては、ブレーキ制御装置5は、速度演算部11から送られる速度情報に基づいて、この速度情報により列車1の速度が減速度が大きくなる直前の速度まで低減された時に、減圧弁8を開動作させてエア供給装置6からのエアをわずかに排出させ、ブレーキシュー2によるブレーキ力を弱くするように制御するように構成されている。
【0027】
次に、本実施形態の作用について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0028】
まず、本実施形態においては、ブレーキ制御装置5に、非常ブレーキ装置9から非常ブレーキ動作信号がブレーキ制御装置5に送られたか否かを判断し(ST1)、非常ブレーキ動作信号が入力されていない場合は、運転士のブレーキ操作に応じて、ブレーキ装置4を動作させて常用ブレーキによる動作が行われる(ST2)。
【0029】
一方、緊急時などに非常ブレーキ装置9が動作され、ブレーキ制御装置5に、非常ブレーキ装置9から非常ブレーキ動作信号がブレーキ制御装置5に送られた場合には、ブレーキ制御装置5により、ブレーキ装置4を動作させて非常ブレーキによる動作が行われる(ST3)。そして、速度演算部11により速度検出器10からの検出結果に基づいて列車1の速度を検出し(ST4)、ブレーキ装置4は、速度検出器10からの速度演算部11から送られる速度情報に基づいて、この速度情報により列車1の速度が減速度が大きくなる直前の速度まで低減されたか否かを判断する(ST5)。そして、減速度が大きくなる直前の速度まで減速された場合には、(ST5:YES)減圧弁8を開動作させてエア供給装置6からのエアを排出させ、ブレーキ力を弱くするように制御する(ST6)。
【0030】
一般には、非常ブレーキ装置9が動作された場合には、図2に示すように、ブレーキ力は一定であり、列車1の減速度も一定であり、列車1の速度は徐々に減速していき、一定の速度まで減速されると、列車1の減速度が大きく上昇してしまう。しかしながら、図3に示すように、本実施形態においては、ブレーキ制御装置5により、一定速度まで減速された場合に、ブレーキシュー2によるブレーキ力を弱くするように制御することで、列車1が停車するまで、減速度を一定に保持するか、または、減速度を低減させることができるものである。このとき、ブレーキ力を弱めるのは停車直前のみなので、ブレーキ距離が大きく伸びることなく、適正に停車させることができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、一定速度まで減速された場合に、エアを排出させてブレーキ力を弱くするようにしているが、例えば、列車1が上り勾配の路線を走行中、あるいは下り勾配の路線を走行中、さらに、勾配の傾斜度に応じて、排出させるエアの量を調整するようにしてもよい。すなわち、列車1が上り勾配の路線を走行中の場合は、比較的短時間で停車することから、エアの排出量を多く調整し、列車1が下り勾配の路線を走行中の場合は、比較的停車に時間がかかることから、エアの排出量を少なく調整するようにすればよい。
【0032】
以上述べたように、本実施形態においては、非常ブレーキ装置9が動作された場合に、列車1の速度が大きくなる直前の速度まで低減された時に、減圧弁8を開動作させてエア供給装置6からのエアを排出させ、ブレーキ力を弱くするように制御するようにしているので、減速度を一定に保持するか、減速度を低減させることができ、その結果、車内の乗客や荷物に大きな負荷が生じなくなり、乗客の転倒や荷物の落下などを確実に防止することができ、極めて安全に非常停止することができる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0034】
本実施形態においては、図1に示す前記第1実施形態における構成と同様であるが制御内容が異なるものである。すなわち、本実施形態においては、速度検出器10により検出される列車1の速度情報に基づいて、速度演算部11は、列車1が停止するまでの時間を予測し、この速度演算部11による停車予測時間に基づいて、列車1の減速度が大きくなると予測される直前の時間となった場合に、ブレーキ制御装置5により減圧弁8を開動作させてエア供給装置6からのエアを排出させ、ブレーキシュー2によるブレーキ力を弱くするように制御するようにしたものである。
【0035】
次に、本実施形態の作用について、図5示すフローチャートを参照して説明する。
【0036】
まず、本実施形態においては、ブレーキ制御装置5に、非常ブレーキ装置9から非常ブレーキ動作信号がブレーキ制御装置5に送られたか否かを判断し(ST10)、非常ブレーキ動作信号が入力されていない場合は、運転士のブレーキ操作に応じて、ブレーキ装置4を動作させて常用ブレーキによる動作が行われる(ST11)。
【0037】
一方、緊急時などに非常ブレーキ装置9が動作され、ブレーキ制御装置5に、非常ブレーキ装置9から非常ブレーキ動作信号がブレーキ制御装置5に送られた場合には、ブレーキ制御装置5により、ブレーキ装置4を動作させて非常ブレーキによる動作が行われる(ST12)。そして、ブレーキ装置4は、速度検出器10からの速度演算部11から送られる速度情報に基づいて、列車1が停止するまでの時間を予測する(ST13)。そして、この速度演算部11による停車予測時間に基づいて、列車1の減速度が大きくなると予測される直前の時間になったか否かを判断し(ST14)、列車1の減速度が大きくなると予測される直前の時間になったら(ST15:YES)、ブレーキ制御装置5により減圧弁8を開動作させてエア供給装置6からのエアを排出させ、ブレーキ力を弱くするように制御する(ST15)。
【0038】
このとき、列車1が上り勾配の路線を走行中、あるいは下り勾配の路線を走行中、さらに、勾配の傾斜度によって、非常ブレーキ時における列車1の速度勾配が変化するが、本実施形態においては、列車1の速度情報に基づいて停車予測時間を算出するようにしているので、列車1が走行する路線に応じた停車予測時間を取得することができ、列車1の路線に応じた適正なブレーキ力の調整を行うことが可能となる。
【0039】
以上述べたように、本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、非常ブレーキ装置9が動作された場合に、列車1の速度情報に基づく停止予測時間に基づいて、列車1の減速度が大きくなると予測される直前に、減圧弁8を開動作させてエア供給装置6からのエアを排出させ、ブレーキ力を弱くするように制御するようにしているので、減速度を一定に保持するか、減速度を低減させることができ、その結果、車内の乗客や荷物に大きな負荷が生じなくなり、乗客の転倒や荷物の落下などを確実に防止することができ、極めて安全に非常停止することができる。
【0040】
なお、前記各実施形態においては、ブレーキ装置4をエア圧力により動作させる場合について説明したが、その他、例えば、ブレーキ装置4を油圧により動作させるようにしてもよい。
【0041】
また、前記各実施形態の他、例えば、列車1に加速度センサを搭載しておき、加速度センサにより列車1の加速度を検出し、列車1の加速度が上昇し始めたら、ブレーキ制御装置5により減圧弁8を開動作させてエア供給装置6からのエアを排出させ、ブレーキシュー2によるブレーキ力を弱くするように制御するようにしてもよい。
【0042】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 列車
2 ブレーキシュー
3 車輪
4 ブレーキ装置
5 ブレーキ制御装置
6 エア供給装置
7 エア排出配管
8 減圧弁
9 非常ブレーキ装置
10 速度検出器
11 速度演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載され、車輪の制動を行うためのブレーキ装置と、
前記ブレーキ装置を駆動制御するためのブレーキ制御装置と、を備え、
前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記ブレーキ装置による前記列車の減速度が大きくなる前に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とするブレーキ制御システム。
【請求項2】
前記列車に設けられた速度検出器からの出力信号に基づいて列車の現在の速度を判定してブレーキ制御装置に出力する速度演算部をさらに備え、
前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記速度演算部から送られる速度情報に基づいて、この速度情報により前記列車の速度が減速度が大きくなる直前まで低減された時に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御システム。
【請求項3】
前記列車に設けられた速度検出器からの出力信号に基づいて列車の現在の速度を判定してブレーキ制御装置に出力する速度演算部をさらに備え、
前記速度演算部は、前記速度検出器から送られる速度情報に基づいて、前記列車が停止するまでの時間を予測し、
前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記速度演算部による停車予測時間に基づいて、列車の減速度が大きくなると予測される直前の時間となった場合に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御システム。
【請求項4】
前記ブレーキ装置は、エア圧力で動作されるものであり、
前記ブレーキ制御装置は、手動緩解不可ブレーキ動作が行われた場合に、前記ブレーキ装置による前記列車の減速度が大きくなる前に、前記エア圧力を調整させてブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のブレーキ制御システム。
【請求項5】
前記手動緩解不可ブレーキ動作は、非常ブレーキ動作であり、非常ブレーキ動作が行われた場合に、前記ブレーキ装置による前記列車の減速度が大きくなる前に、ブレーキ力を弱くするように制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のブレーキ制御システム。
【請求項6】
前記ブレーキ装置は、前記列車の車輪に鋳鉄製のブレーキシューを押圧させて制動するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のブレーキ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−30672(P2012−30672A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171195(P2010−171195)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【出願人】(505144739)神戸電鉄株式会社 (1)
【Fターム(参考)】